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審決分類 |
審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) H01L 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H01L 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 H01L 審判 全部無効 2項進歩性 H01L |
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管理番号 | 1287753 |
審判番号 | 無効2013-800093 |
総通号数 | 175 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-07-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2013-05-27 |
確定日 | 2014-03-31 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3157502号発明「太陽電池モジュール」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 請求のとおり訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 事案の概要 本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第3157502号(以下「本件特許」という。平成11年3月12日出願(優先日平成10年9月24日)、平成13年2月9日登録、請求項の数は9である。)の請求項1ないし9に係る発明についての特許を無効にすることを求める事案である。 第2 手続の経緯 本件審判の経緯は、以下のとおりである。 平成25年 5月27日 審判請求 平成25年 8月 9日 審判事件答弁書、訂正請求書 平成25年 9月 4日 手続補正書(訂正請求書について) 平成25年10月24日 審判事件弁駁書 平成26年 1月 8日 口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成26年 1月 9日 口頭審理陳述要領書(請求人) 平成26年 1月23日 口頭審理 第3 訂正請求 1 訂正請求の内容 被請求人が平成25年8月9日に提出した訂正請求(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)について、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを請求するものであって、次の事項をその訂正内容とするものである(下線は、平成25年8月9日付けの訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりである。)。 (1)訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1において、「該太陽電池群における電気的な一対の開放端が同一方向に配置されると共に、前記複数組の太陽電池群は、夫々の太陽電池群における前記一対の開放端が同一方向側となるように配列され」とあるのを、「該太陽電池群における電気的な一対の開放端が同一方向のみに配置されると共に、前記複数組の太陽電池群は、夫々の太陽電池群における前記一対の開放端が同一方向側のみとなるように配列され」と訂正する。 (2)訂正事項b 本件特許明細書の段落【0014】において、「該太陽電池群における電気的な一対の開放端が同一方向に配置されると共に、前記複数組の太陽電池群は、夫々の太陽電池群における前記一対の開放端が同一方向側となるように配列され」とあるのを、「該太陽電池群における電気的な一対の開放端が同一方向のみに配置されると共に、前記複数組の太陽電池群は、夫々の太陽電池群における前記一対の開放端が同一方向側のみとなるように配列され」と訂正する。 (3)訂正事項c 特許請求の範囲の請求項7において、「前記導電部材が、取付面を構成する取付部と、前記ベアチップダイオードの外方において該取付部と一体的に設けられた、放熱性に優れる材料からなる基体部とからなる」とあるのを、「前記導電部材が、取付面を構成する銅からなる取付部と、前記ベアチップダイオードの外方において該取付部と一体的に設けられた、前記取付部より厚みを有した銅からなる基体部とからなる」と訂正する。 (4)訂正事項d 本件特許明細書の段落【0020】において、「前記導電部材が、取付面を構成する取付部と、前記ベアチップダイオードの外方において該取付部と一体的に設けられた、放熱性に優れる材料からなる基体部とからなる」とあるのを、「前記導電部材が、取付面を構成する銅からなる取付部と、前記ベアチップダイオードの外方において該取付部と一体的に設けられた、前記取付部より厚みを有した銅からなる基体部とからなる」と訂正する。 2 訂正の適否 (1)訂正事項aについて ア 本訂正事項は、太陽電池群における電気的な一対の開放端の配置方向が「同一方向のみ」であることを特定するとともに、複数組の太陽電池群は、夫々の太陽電池群における一対の開放端の配列方向が「同一方向側のみ」であることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 イ そして、本件特許明細書には、「また、本実施形態にあっては、太陽電池群3A…を、2列に配列された24枚の太陽電池3…から構成していることから、1つの太陽電池群3Aにおいて各太陽電池3…を接続する電気配線の形状は平面コ字形状をなす。このため、該太陽電池群3Aの電気的な正負一対の開放端、即ち正側の開放端と負側の開放端とが、共に同一方向に配置されることとなる。従って、ダイオード21を太陽電池群3Aにおける、同一方向に配置された一対の開放端間に接続することができるため、ダイオード21を接続するための電気配線の距離を短縮できる。」(段落【0035】)、及び「本実施形態の太陽電池モジュールが、前述の第1実施形態の太陽電池モジュールと異なる点は、太陽電池群3A…を4列に配列された太陽電池3…から構成した点にある。斯かる太陽電池モジュールにおいても、各太陽電池群3Aの配線における一対の開放端は、同一方向に配置される。従って、夫々の太陽電池群3Aにおける一対の開放端が、同一方向に配置されるように各太陽電池群3Aを配列することで、導電材4A及びダイオード21…を太陽電池の行方向(紙面上下方向)における同じ側の外周部に配置し、直線状に接続することができる。」(段落【0041】)との記載があるから、本件特許明細書には、「太陽電池群における電気的な一対の開放端が同一方向のみに配置されると共に、複数組の太陽電池群は、夫々の太陽電池群における一対の開放端が同一方向側のみとなるように配列され」ることが記載されているものと認められる。 ウ したがって、本訂正事項は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項bについて ア 本訂正事項は、発明の詳細な説明の記載について、訂正事項aとの整合を図り、記載を明りょうにするために行うものと認められるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。 イ そして、上記(1)における訂正事項aについての検討と同様の理由により、本訂正事項は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項cについて ア 本訂正事項は、ダイオードの導電部材において、取付部が「銅」からなることを特定し、基体部の「放熱性に優れる材料」が「取付部より厚みを有した銅」であることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 イ そして、本件特許明細書には、「ベアチップダイオード30は内部にn層31及びp層32を有しており、n層31の下面とp層32の上面とに夫々半田等の導電性を有する接着層33,33を介して、銅薄板からなる導電部材34,34が取付けられている。」(段落【0045】)、「導電部材34がベアチップダイオード30に取り付けられる取付部34Dと,ベアチップダイオード30の外方において該取付部34Dと一体的に設けられた、放熱性に優れる材料からなる基体部34Eとからなる。尚、斯かる導電部材34は別々に形成した取付部34Dと基体部34Eとを貼り合わせて形成しても良いし、或いは一体物として形成しても良い。」(段落【0054】)、及び「また、ベアチップダイオード30で生じた熱は取付部34Dを介して基体部34Eで放熱される。基体部34Eの厚みはベアチップダイオード30の厚み程度とすることができるため、取付部34Dの厚みを図6,7の構造よりも薄くできる。例えば、ベアチップダイオードの厚みが0.35mm程度の場合、基体部34Eの厚みを0.5mm程度とでき、取付部34Dの厚みを0.15mm程度とできる。」(段落【0056】)との記載があり、「銅薄板からなる導電部材」及び「放熱性に優れる材料からなる基体部を取付部と一体に形成してよいこと」が記載されており、銅が放熱性に優れる材料であることは技術常識であることを踏まえると、本件特許明細書には、「導電部材が、取付面を構成する銅からなる取付部と、ベアチップダイオードの外方において取付部と一体的に設けられた、取付部より厚みを有した銅からなる基体部とからなる」ことが記載されているものと認められる。 (4)訂正事項dについて ア 本訂正事項は、発明の詳細な説明の記載について、訂正事項cとの整合を図り、記載を明りょうにするために行うものと認められるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。 イ そして、上記(1)における訂正事項cについての検討と同様の理由により、本訂正事項は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (5)本件訂正に対する請求人の主張について 審判事件弁駁書(2頁?3頁)において、請求人は、本件特許明細書の「さらに、図8の構成によれば、導電部材34がベアチップダイオード30に取り付けられる取付部34Dと、ベアチップダイオード30の外方において該取付部34Dと一体的に設けられた、放熱性に優れる材料からなる基体部34Eとからなる。尚、斯かる導電部材34は別々に形成した取付部34Dと基体部34Eとを貼り合わせて形成しても良いし、或いは一体物として形成しても良い。」(段落【0054】)の記載によれば、取付部34Dと「一体的」に設けられた基体部34Eには、取付部34Dと別々に形成した基体部34Eと、取付部34Dと一体物として形成した基体部34Eとが含まれることは明らかであるところ、「放熱性に優れる材料からなる基体部34E」との記載は、取付部34Dにない材料限定がなされていることからみて、基体部34Eが取付部34Dと異なる材料であることを前提としており、また、基体部34Eの具体的材料は本件特許明細書に明記されていないから、訂正された請求項7における「取付部と一体的に設けられた、前記取付部より厚みを有した銅からなる基体部」との記載は、本件特許明細書に記載されたものではない旨主張するが、上記(3)のとおりであって、採用できない。 3 本件訂正についてのむすび 以上のとおりであるから、本件訂正を認める。 第4 本件訂正発明 上記第3のとおり、本件訂正が認められたので、本件特許の請求項1ないし9に係る発明(以下、「請求項1」ないし「請求項9」に係る各発明を、それぞれ「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明9」といい、これらを総称して「本件訂正発明」という。)は、次の各請求項に記載したとおりのものと認められる。 「【請求項1】 互いに電気的に直列接続された複数組の太陽電池群と、各太陽電池群の夫々と電気的に並列接続された逆方向電圧印加防止手段とを備え、 前記太陽電池群は互いに電気的に接続された複数個の太陽電池からなり、該太陽電池群における電気的な一対の開放端が同一方向のみに配置されると共に、前記複数組の太陽電池群は、夫々の太陽電池群における前記一対の開放端が同一方向側のみとなるように配列され、 且つ前記逆方向電圧印加防止手段と、前記複数組の太陽電池群を互いに電気的に直列接続するための導電材とが直線状に配列されると共に、 前記逆方向電圧印加防止手段が前記複数組の太陽電池群と共に表面部材と裏面部材との間に封止されてなることを特徴とする太陽電池モジュール。 【請求項2】 前記太陽電池群が偶数列に配列された前記複数個の太陽電池から構成され、且つ複数組の太陽電池群が列方向に配列されことを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュール。 【請求項3】 前記逆方向電圧印加防止手段と前記導電材とは、予め交互に接続されてなる線状或いは帯状物とされて前記太陽電池群に接続されていることを特徴とする請求項1又は2記載の太陽電池モジュール。 【請求項4】 前記逆方向電圧印加防止手段の厚みが、前記太陽電池の厚みと略同程度又はそれ以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の太陽電池モジュール。 【請求項5】 前記逆方向電圧印加防止手段が、ダイオードであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の太陽電池モジュール。 【請求項6】 前記ダイオードは、ベアチップダイオードと、該ベアチップダイオードの両面に夫々取り付けられた導電部材とを有し、且つ前記導電部材の少なくとも一方が、取付面を構成する第1平坦部と、該平坦部から下方に立ち下がる支持部と、該支持部から前記平坦部と略平行に折れ曲かってなる第2平坦部と、を有することを特徴とする請求項5記載の太陽電池モジュール。 【請求項7】 前記ダイオードは、ベアチップダイオードと、該ベアチップダイオードの両面に夫々取り付けられた導電部材とを有し、且つ前記導電部材が、取付面を構成する銅からなる取付部と、前記ベアチップダイオードの外方において該取付部と一体的に設けられた、前記取付部より厚みを有した銅からなる基体部とからなることを特徴とする請求項5記載の太陽電池モジュール。 【請求項8】 前記裏面部材が透光性を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の太陽電池モジュール。 【請求項9】 前記太陽電池が、表裏両側からの光の入射により発電可能な太陽電池であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の太陽電池モジュール。」 第5 請求人の主張の概要及び証拠方法 1 無効理由1 (1)審判請求書(17頁?23頁)における主張 ア 本件特許の請求項1ないし請求項9に係る発明は、本件特許の優先日前に頒布された甲第1号証に記載された発明と同一、または甲第1号証に記載された発明、甲第2、3、5、6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号または第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1ないし請求項9に係る特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。 イ 甲第1号証の図6において、各ストリングはそれぞれが直列接続された7つのセルからなり、奇数行目のストリングは右側開放端がプラス出力で左側開放端がマイナス出力、偶数行目のストリングは右側開放端がマイナス出力で左側開放端がプラス出力となるよう、配列され、さらに各ストリングが左右交互に直列接続され、全体の7×8の太陽電池セルが、「十(プラス)」出力と「-(マイナス)」出力との間で電気的に直列接続されていると解釈される。甲第5号証に記載のように、マトリクス状(アレイ状)に配列された複数の太陽電池セルを、各行(ストリング)ごとに直列に接続し、さらに各行(ストリング)を左右交互に隣接する行(ストリング)と接続して、全体の太陽電池セルが電気的に直列接続された構成とすることが、従来より採用されていた太陽電池パネルの接続形態であることからも、この解釈が正しいことが裏付けされる。 甲第1号証の図6におけるタブリード及びバイパスダイオードの配置から、甲第1号証に記載のサブモジュールは、甲参考図1の回路構成を有していると認められる。 ウ 甲参考図1は、次のものである。 (2)答弁書に対する反論 ア 甲第1号証に記載された発明について(審判事件弁駁書(4頁?6頁)) (ア)乙参考図1(後記第6,1(1)エを参照。)は、図6からはその存在を全く読み取ることができない導電材を前提とするものである。一般に、電気的に同じ電位となる導電材とタブリードは、同一の導電部材で形成することが自然であり、導電材とタブリードとをわざわざ別の部材で平行に配置することは、当業者であれば採用しない構成である。仮に、被請求人の主張のように、図6には見えない導電材が存在するとしても、被請求人の乙参考図1は、甲参考図1の(電気的な)回路構成を裏付けるものであり、タブリードは、本件訂正発明1の「前記複数組の太陽電池群を互いに電気的に直列接続するための導電材」と等価なものである。 (イ)乙参考図2(後記第6,1(1)エを参照。)は、図6にはその存在を全く読み取ることができない導電材の存在を前提とするものである。乙参考図2は、甲第1号証には全く開示されていないばかりか、図6に示された回路配置から逸脱するものと言わざるを得ない。さらに、被読求人は、乙第1号証を引用して、乙参考図2に示すようなサブモジュールの配線構造は本件特許出願の出願当時において太陽電池モジュールの接続構造として当業者が一般的に知られている構成であったと主張するが、乙参考図2は、最下列の太陽電池群のみプラス(十)端子とマイナス(-)端子の位置が他の太陽電池群と反対になっており、このような配置は乙第1号証にも記載されていない不自然な且つ特殊なものであって、被請求人の主張は何ら根拠の無いものである。 イ 本件訂正発明1と甲第1号証に記載された発明の相違点について(審判事件弁駁書(7頁?9頁)、口頭審理陳述要領書(2頁?7頁)) (ア)甲第1号証に記載された発明は、本件訂正発明1の「太陽電池群における電気的な一対の開放端が同一方向のみに配置されると共に、複数組の太陽電池群は、夫々の太陽電池群における一対の開放端が同一方向側のみとなるように配列され」るとの構成を備えている。 (イ)太陽電池モジュールの1つの側(辺)のみに逆方向電圧印加防止手段を設けることは、周知の技術的事項であり、甲第1号証に記載された発明に周知の技術的事項を適用し、太陽電池モジュールの片側のみに逆方向電圧印加防止手段を備えるようにすることは、当業者が容易になし得ることである。 2 無効理由2 (1)審判請求書(23頁?28頁)における主張 本件特許の請求項1ないし請求項9に係る発明は、本件特許の優先日前に頒布された甲第3号証に記載された発明、甲第1、2、4、6、7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号または第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1ないし請求項9に係る特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。 (2)答弁書に対する反論(審判事件弁駁書(12頁?13頁)) 甲第3号証の図10において、ペレット状バイパスダイオード4Aを太陽電池セル2の前面電極2a上に接合しているのは、一つの実施例としての構造であり、甲第3号証には、他の実施例として、ペレット状の薄いダイオードをインタコネクタ間に接合する構造も記載されており、バイパスダイオードを接続する電極構造には、様々な選択肢があることが開示されているから、図10に記載された電極構造に限定されることなく、甲第3号証に記載された発明と甲第2号証記載の技術的事項から、当業者が本件訂正発明1を容易に発明することができる。 3 無効理由3(審判請求書(28頁?29頁)における主張) 本件特許の請求項7の記載において、「放熱性に優れる」とは定性的表現であって、比較の基準が明らかではなく、その程度が不明確な表現である。よって、請求項7に係る発明は明確ではないから、特許法第36条6項2号の規定により特許を受けることができないものであり、請求項7に係る特許は特許法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきものである。 4 証拠方法 請求人が提出した甲号証は、以下のとおりである。 (1)甲第1号証 P. G. Carey他、“A SOLAR MODULE FABRICATION PROCESS FOR HALE SOLAR ELECTRIC UAVs”、Proceedings of 1994 IEEE 1st World Conference on Photovoltaic Energy Conversion、Volume 2、1994年、p. 1963-1969 (2)甲第2号証 特開平5-291602号公報 (3)甲第3号証 特開平5-160425号公報 (4)甲第4号証 実願昭55-69009号(実開昭56-169287号)のマイクロフイルム (5)甲第5号証 実願昭60-58104号(実開昭61-174756号)のマイクロフイルム (6)甲第6号証 特開昭61-84874号公報 (7)甲第7号証 特開平2-12878号公報 なお、請求人は、審判事件弁駁書に添付して、以下の参考資料を提出した。 (8)参考資料1 David Panico他、“BACKTRACKING: A NOVEL STRATEGY FOR TRACKING PV SYSTEMS”、Twenty Second IEEE Photovoltaic Specialists Conference - 1991、Volume 1、1991年、p. 668-673 (9)参考資料2 特開平6-216287号公報 第6 被請求人の主張の概要及び証拠方法 1 無効理由1に対して (1)審判事件答弁書(5頁?12頁)における主張 ア 甲第1号証の図6には、太陽電池セルが横7×縦8に行列配置されていることが記載されているだけであり、これらのセルが具体的にどのように相互に接続されているかはなんら記載されていない。 イ 請求人が審判請求書の甲参考図1において示す構成は、甲第1号証の記載から導き出されるものではなく、請求人が自らの主張を有利とするために勝手に想像したものに過ぎない。 ウ 甲第1号証の記載に基づけば、甲第1号証の図6に示された太陽電池モジュールとしては、例えば乙参考図1のような構成となる。また、甲第1号証の図6に記載の太陽電池モジュールとしては、例として乙参考図2のような構成も考えられる。 エ 乙参考図1及び乙参考図2は、次のものである オ 本件訂正発明1は、「複数組の太陽電池群は、夫々の太陽電池群における一対の開放端が同一方向のみとなるように配列されて」いることを特定しており、太陽電池モジュールの1つの側のみに逆方向電圧印加防止手段と複数組の太陽電池群を互いに電気的に直列接続するための導電材とを設けることになり、太陽電池モジュールにおける発電に寄与しない領域の面積を小さくすることができる。 カ よって、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明と同一ではなく、甲第1号証及び甲第2号証の記載に基づいて容易に想到できるものでもない。 (2)弁駁書に対する反論(口頭審理陳述要領書(4頁?6頁)) ア 被請求人の主張は、甲第1号証の図6から乙参考図1や乙参考図2のような構成が一意的に読み取れることを主張するものではなく、甲第1号証の図6では太陽電池群(個々の太陽電池を直列に接続したストリング)間がどのように配線接続されているのか全く読み取れないのであるから甲参考図1のような構成が開示されているとする請求人の主張が不当であるというものである。 イ 甲第1号証には「7つのバイパスダイオードがヒートシンキング導電性タブリードに接続される」と記載されており、熱の放出性を高めるために、太陽電池群(ストリング)間を接続する配線とは別にヒートシンキング導電性タブリードを設けた解釈とすることが自然であり、甲第1号証の説明する内容に何ら矛盾した点はない。 2 無効理由2に対して (1)審判事件答弁書(16頁?21頁)における主張 ア 甲第3号証には、バイパスダイオードを太陽電池セルの表面に直接載置し、バイパスダイオードと太陽電池セルとの間に配線を設けないことによって、配線や接続を簡素化し、製造コストの低減を可能とすることが記載されており、甲第2号証に記載されたバイパスダイオードと太陽電池素子を直列接続するための導電材とを予め直線状に接続した帯状物との組み合わせを積極的に除外するものである。 イ よって、本件訂正発明1は、甲第3号証及び甲第2号証の記載に基づいて容易に想到できるものではない。 3 無効理由3に対して(審判事件答弁書(21頁)における主張) 本件訂正後の請求項7では、請求人が不明確であると主張する「放熱性が優れる」との表現は削除され、より具体的な構成に限定されている。よって、本件訂正発明7は、明確である。 4 証拠方法 被請求人が提出した乙号証は、以下のとおりである。 (1)乙第1号証 特開平10-319851号公報 第7 無効理由についての当審の判断 1 無効理由1について (1)甲号証の記載 ア 本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第1号証(「A SOLAR MODULE FABRICATION PROCESS FOR HALE SOLAR ELECTRIC UAVs」)には、以下の記載がある。 (ア)「The solar cells are interconnected into strings of 7 cells per row with 0. 51mm a spacing between cells and 8 rows per submodule (1 submodule=7×8 array of cells) as shown in Fig. 6. Seven bypass diodes have been attached to heat sinking electrical tab leads and solderd into both sides of each submodule for redundant protection against open circuit failures.」(1965頁右欄30行?1966頁左欄3行) (翻訳:ソーラーセルは、図6に示すとおり、セル間隔が0.51mmである7セルを1行とするストリングが、8行で1サブモジュールとなるように相互接続される(1サブモジュール=7×8セルアレイ)。7個のバイパスダイオードがヒートシンクする電気的タブリードに取り付けられ、回路断線に対する冗長保護のため各サブモジュールの両端に半田付けされる。) (イ)「This process involves: (i) electrically interconnecting the solar cells with a flexible interconnect, (ii) soldering bypass diodes along both sides to protect against open circuit failures, and (iii) laminating the resulting solar cell array between two Tedlar/silicone adhesive sandwiched layers.」(1968頁右欄23行?29行) (翻訳:このプロセスは、(i)ソーラーセルを可撓性接続部材で電気的に相互接続すること、(ii)回路断線に対する保護のため両サイドに沿ってバイパスダイオードを半田付けすること、(iii)得られたソーラーセルアレイを2つのTedlar/silicone接着挟持層の間にラミネートすること、を含む。) (ウ)「This is because Tedlar has a higher transmission of light for λ<700nm.」(1965頁左欄2行?4行) (翻訳:Tedlarはλ<700nmに対し高い透光性を有するためである。) (エ)「The solar cells are made single crystal Cz silicon that is thinned to 150μm for the monofacial cells and 110μm for the bifacial cells.」(1964頁左欄33行?35行) (翻訳:ソーラーセルは単結晶Czシリコンで生成され、片面セルは150μm、両面セルには110μmに薄膜化される。) (オ)「Bifacial response is desired for some of the solar modules because the transparent wing will transmit Albedo to the cell backside.」(1964頁右欄6行?9行) (翻訳:透過的な翼はアルベドを裏面セルに伝えるため、両面反応が好ましいソーラーモジュールもある。) (カ)図4及び図6は、次のものである。 (キ)上記(ア)及び(イ)を踏まえて、図6をみると「サブモジュールの右側において、上段から数えて1行目と2行目のストリングの間、3行目と4行目のストリングの間、5行目と6行目のストリングの間、及び7行目と8行目のストリングの間にバイパスダイオードが配置され、サブモジュールの左側において、2行目と3行目のストリングの間、4行目と5行目のストリングの間、及び6行目と7行目のストリングの間にバイパスダイオードが配置され、1行目と2行目のストリングの左側、2行目と3行目のストリングの右側、3行目と4行目のストリングの左側、4行目と5行目のストリングの右側、5行目と6行目のストリングの左側、6行目と7行目のストリングの右側、及び7行目と8行目のストリングの左側に、それぞれタブリードが配置され、左右のそれぞれの側において、バイパスダイオードとタブリードとが直線状に配列されている」ことがみてとれる。 イ 本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第2号証(特開平5-291602号公報)には、以下の記載がある。 (ア)「【0014】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述の従来の欠点を解決し、高品質で、安価な、長期信頼性の高い太陽電池モジュールを提供することにある。」 (イ)「【請求項1】 導電性基板上に、金属電極層、半導体層、透明電極層を順次形成した太陽電池素子を複数個直列接続し、各太陽電池素子の上部電極と下部電極に、逆方向電圧印加防止用バイパスダイオードを接続した太陽電池モジュールにおいて、各太陽電池素子を直列接続するための良導電材と逆方向電圧印加防止用バイパスダイオードが、予め交互に複数個接続された線状あるいは帯状物であることを特徴とする太陽電池モジュール。」 (ウ)「【0023】本発明に使用される逆方向電圧印加防止用バイパスダイオードの性能および形状は、太陽電池素子の大きさや起電力、使用電流、接続形態などによって決定されるが、太陽電池モジュール表面の凹凸をなくすために、できるだけ厚みがうすく、小さな形状が好ましい。特に好ましくは、逆方向電圧印加防止用バイパスダイオードの厚みが0.1ミリメートル以下である。このような逆方向電圧印加防止用バイパスダイオードの例としては、チップダイオードやフラットダイオードが挙げられる。」 (エ)「【0024】本発明に0.1ミリメートル以下の逆方向電圧印加防止用バイパスダイオードを用いた場合には、後工程でEVA(エチレンビニルアセテート)などのような充填材で太陽電池素子を封入した際、逆方向電圧印加防止用バイパスダイオードの部分だけが表面から盛り上がり、太陽電池モジュールの平面性が悪くなる、ということがなくなり、また、充填材で太陽電池素子を封入する際、逆方向電圧印加防止用バイパスダイオードの周辺に気泡が残るという問題を解決することも可能となる。また、チップダイオードやフラットダイオードと直列接続のための導電材が連続的に交互に配列されたものは、帯状やテープ状にするのに適しているため、配線の連続自動化が容易となり、製造工程の短縮およびコストの低減を可能にすることができる。」 (オ)「【0033】太陽電池の製造には、まず、洗浄した厚さ0.1ミリメートルのロール状ステンレス基板上にロール・ツー・ロール法でSiを1%含有するAlをスパッタ法により膜厚5000Å蒸着し、次いでSiH_(4),PH_(3),B_(2)H_(6),H_(2)ガス等のプラズマCVDにより、膜厚4000Åのn,i,p/n,i,pのタンデム型非晶質シリコン層を形成した後、膜厚800ÅのITOを抵抗加熱蒸着で形成した。」 (カ)「【0034】次に成膜されたロール状ステンレス基板を切断して、3枚の太陽電池素子300を得た。次に、ITOのエッチング材(FeCl_(3),HCl)含有ペーストを必要とするパターンにスクリーン印刷したあと洗浄することによりITO層の一部を除去した部分301を設け、上部電極と下部電極の電気的な分離を確実にした。」 (キ)「【0036】次に、縦2.5ミリ、横2.5ミリ、高さ0.2ミリのシリコンダイオード(ジェネラルインストルメントオブタイワン社製、タイプ:GPP)305を幅5ミリ、厚さ0.1ミリの銅箔306ではさみ込むように半田付けし、図7に示すダイオードテープを作製した。ここで、ダイオードに半田付けされる部分の銅箔の幅は1.5ミリにした。ここで作製したダイオードテープ(図3)を太陽電池素子図6の上に図8のように載置したあと、露出されたステンレス基板303と銅箔306とをスポット溶接した309。」 (ク)図7及び図12は、次のものである。 ウ 本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第3号証(特開平5-160425号公報)には、以下の記載がある。 (ア)「【請求項1】 電気的に直列接続された複数の太陽電池セルと、 前記太陽電池セルの出力電流を1以上の前記太陽電池セルについてバイパスさせ得る1以上のバイパスダイオードとを含み、 前記バイパスダイオードは、ペレット状の薄いダイオードであり、前記太陽電池セルの電極上に接合されていることを特徴とする太陽電池モジュール。」 (イ)「【0041】図10を参照して、さらにもう1つの実施例が図解されている。図10(A)の太陽電池モジュール10においては、4行4列のマトリクス状に配置された16個の太陽電池セル2が2つの出力端子1aの間で直列接続されている。図10(B)は、図10(A)中の丸印で囲まれた部分の拡大断面図を示している。1つの太陽電池セル2の前面電極2a上に接合されたペレット状バイパスダイオード4Aは、ダイオード用インタコネクタ3cによって隣の行の太陽電池セル2の背面電極に接続されている。すなわち、図10(A)の太陽電池モジュールにおいては、逆バイアス電圧が生じたときに、2行(8個)ずつの太陽電池セル2がダイオード4Aとダイオード用インタコネクタ3cを介してバイパスされることになる。この場合、ダイオード用インタコネクタ3cは隣接して配置された太陽電池セル2に接続されるので、図9(B)に示されたバイパス用インタコネクタ3bよりはるかに短くすることができ、また絶縁シート7を必要としない。図10(A)の太陽電池モジュールも、図7と関連して説明されたのと同様に保護層とともにラミネートされる。」 (ウ)「【0035】図7(A)において、図6の太陽電池モジュールが保護層によって挟まれてラミネートされる。図7(B)は図7(A)中の線7B-7Bに沿った拡大断面図を示しており、太陽電池セル2はEVA樹脂などの充填樹脂層5とその外側の透明フィルム6によって挟まれる。」 (エ)「【0028】【実施例】図1を参照して、本発明の一実施例による太陽電池モジュールに用いられる太陽電池セルの一例が概略的に図解されている。……太陽電池セル2は、たとえば100×100×0.4mm^(3)の寸法を有する薄板形状である。」 (オ)「【0030】このペレット状ダイオード4Aは、たとえば3×3×0.4mm^(3)の寸法を有する薄板形状である。すなわち、ペレット状ダイオード4Aは、図19(D)に示された従来のダイオード4の太さの3?4mmに比べてはるかに薄い0.4mmの厚さを有している。」 (カ)図10は、次のものである。 (キ)上記(イ)を踏まえて、図10(A)をみると「4行4列のマトリクス状に配置された16個の太陽電池セル2が、1行目と2行目の右端の太陽電池セル2、2行目と3行目の左端の太陽電池セル2、及び3行目と4行目の右端の太陽電池セル2を相互にインタコネクタ3で接続することにより、2つの出力端子1aの間で直列接続され、2行目の左端の太陽電池セル2の前面電極2a上に接合されたペレット状バイパスダイオード4Aは、インタコネクタ3cによって1行目の左端の太陽電池セル2の背面電極に接続され、4行目の左端の太陽電池セル2の前面電極2a上に接合されたペレット状バイパスダイオード4Aは、インタコネクタ3cによって3行目の左端の太陽電池セル2の背面電極に接続される」ことがみてとれる。 エ 本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第5号証(実願昭60-58104号(実開昭61-174756号)のマイクロフイルム)には、以下の記載がある。 (ア)「[従来の技術] 一般の太陽電池パネルは、複数個の太陽電池セルを直列に接続し、プラスチックまたはガラスの板にシリコンなどの充填樹脂や透明接着剤で固着し、取付枠を装着し、正極と負極の外部取出し端子を設けた構造となっている。」(明細書2頁4行?9行) (イ)「第5図はこのような太陽電池パネルの斜視図、第7図はその局部断面図である。多数の太陽電池セル1は、リード線2により直列に接続され、ガラス板6へ、EVA(エチレン・ビニル・アセテート)やPVB(ポリビニルブチラル)などの透明加熱融着接着剤7,7’および防湿用乳白色テドラーフィルム8を積層固着し、絶縁ゴム9を介して取付枠3へ固定されてスーパーストレート構造の太陽電池パネルが構成される。」(明細書2頁10行?18行) (ウ)「第6図は、第5図の太陽電池パネルの接続図を示し、従来の太陽電池パネルでは、太陽電池セル1が34個から48個程度直列接続されている。なお、4は正の出力端子、5は負の出力端子である。さらには、上記のような太陽電池パネルを多数直列接続して、150V?500Vの高い電流出力電圧で発電するよう設計されたものも実現されている。」(明細書2頁19行?3頁6行) (エ)第5図及び第6図は、次のものである。 オ 本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第6号証(特開昭61-84874号公報)には、以下の記載がある。 (ア)「本発明は一般に多数の個々の光電池ストリップを包含する光電池モジュールに関するものである。特に本発明は、光電池モジュール用バイパスダイオード電気回路構成要素(circuitry)に関する。さらに本発明は各ダイオードが他のダイオードと電気的に直列に連絡し、かつ各ダイオードが光電池モジュールの1つの光電池ストリップと電気的に相互連結することができるように多数の個々のダイオードが電気伝導性ストリップによって運ばれるバイパスダイオード電気回路構成要素に関する。」(2頁右上欄3?13行) (イ)「そういうものとして多数の相互連結電池について1つのバイパスダイオードを用いた、すなわちサブモジュールが実用されている。」(3頁左上欄17?19行) (ウ)「連続導電性ストリップ12の重複の間に挿入されたものはウェハーまたはチップダイオード21であり、それによってそうでなければ相互に物理的接触をしていない相応する導電性ストリップ12の間の実質的に一方向性の電流の流れ道を規定する。そのようなダイオード21は、図2に描いたように、ダイオードテープ10を相対的に薄い形状に保持することを可能にすることを理解すべきである。このことは、個々の電池ストリップ16の基板層15によって定義されるような全モジュール11の実質的に平坦な表面に好ましくない影響を与えることなしに、電池ストリップ16にダイオードテープ10を確保することを可能にする。さらに、もし必要ならばそのような相対的に薄い形状は、保護被膜を有するモジュール11の効果的カプセル化を保証する。ダイオードテープ10が相対的に薄い物質であり、従って本来的にデリケートであるので、非導電性補強用テープ22を用いてそれらを強化することが好ましい。」(4頁右上欄17行?左下欄15行) (エ)FIG.1及びFIG.2は、次のものである。 (2)本件訂正発明1について ア 甲第1号証に記載された発明 (ア)上記(1)アによれば、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認められる。 「7セルを1行とするストリングが、8行で1サブモジュールとなるように相互接続され、 7個のバイパスダイオードがヒートシンクする電気的タブリードに取り付けられ、回路断線に対する冗長保護のためサブモジュールの両端に半田付けされ、 サブモジュールの右側において、上段から数えて1行目と2行目のストリングの間、3行目と4行目のストリングの間、5行目と6行目のストリングの間、及び7行目と8行目のストリングの間にバイパスダイオードが配置され、サブモジュールの左側において、2行目と3行目のストリングの間、4行目と5行目のストリングの間、及び6行目と7行目のストリングの間にバイパスダイオードが配置され、1行目と2行目のストリングの左側、2行目と3行目のストリングの右側、3行目と4行目のストリングの左側、4行目と5行目のストリングの右側、5行目と6行目のストリングの左側、6行目と7行目のストリングの右側、及び7行目と8行目のストリングの左側に、それぞれタブリードが配置され、左右のそれぞれの側において、バイパスダイオードとタブリードとが直線状に配列され、 λ<700nmに対し高い透光性を有する2つのTedlar/silicone接着挟持層の間にラミネートされ、 セルは両面セルであるサブモジュール。」(以下「甲1発明」という。)。 (イ)甲第1号証に記載された発明について、請求人は、甲第1号証に記載のサブモジュールは、甲参考図1の回路構成を有していると認められる旨主張する。 そこで、上記主張について検討する。 a 甲第1号証には、各ストリング相互がどのように接続されているか、及び各ストリングとタブリードに取り付けられたバイパスダイオードがどのように接続されているかについての具体的な記載はない。 b 請求人の主張に係る甲参考図1(上記第5,1(1)ウを参照。)の回路構成は、上記図6の回路構成としてあり得るものと考えられるが、被請求人の主張に係る乙参考図1及び乙参考図2(上記第6,1(1)エを参照。)の回路構成も上記図6の回路構成として必ずしも不自然のものとまではいえない。 c してみると、甲第1号証に記載されたサブモジュールの回路構成が甲参考図1のものであるとまではいえないから、上記請求人の主張は採用できない。 イ 本件訂正発明1と甲1発明との対比 (ア)甲1発明の「セル」、及び「サブモジュール」は、それぞれ本件訂正発明1の「太陽電池」及び「太陽電池モジュール」に相当する。 (イ)甲1発明は、「7セルを1行とするストリングが、8行で1サブモジュールとなるように相互接続され」るから、甲1発明の「ストリング」は本件訂正発明1の「太陽電池群」に相当し、甲1発明は、本件特許発明の「互いに電気的に」「接続された複数組の太陽電池群」との特定事項を備えるものといえる。 (ウ)甲1発明の「バイパスダイオード」は、「タブリードに取り付けられ、回路断線に対する冗長保護のためサブモジュールの両端に半田付けされ」るので、甲1発明の「バイパスダイオード」及び「タブリード」は、それぞれ本件訂正発明1の「逆方向電圧印加防止手段」及び「導電材」に相当し、甲1発明は、本件訂正発明1の「太陽電池群」と「電気的に」「接続された逆方向電圧印加防止手段とを備え」と特定事項及び「逆方向電圧印加防止手段と」「導電材とが直線状に配列される」との特定事項を備えるものといえる。 (エ)甲1発明の「サブモジュール」は、「2つのTedlar/silicone接着挟持層の間にラミネートされ」るから、甲1発明の「2つのTedlar/silicone接着挟持層」は、本件訂正発明1の「表面部材と裏面部材」に相当し、甲1発明は、本件特許発明の「前記逆方向電圧印加防止手段が前記複数組の太陽電池群と共に表面部材と裏面部材との間に封止されてなる」との特定事項を備えるものといえる。 (オ)以上によれば、両者は、 「互いに電気的に接続された複数組の太陽電池群と、各太陽電池群の夫々と電気的に接続された逆方向電圧印加防止手段とを備え、 前記太陽電池群は互いに電気的に接続された複数個の太陽電池からなり、 且つ前記逆方向電圧印加防止手段と導電材とが直線状に配列されると共に、 前記逆方向電圧印加防止手段が前記複数組の太陽電池群と共に表面部材と裏面部材との間に封止されてなる太陽電池モジュール。」 である点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。 「本件訂正発明1では、複数組の太陽電池群が互いに電気的に直列接続され、逆方向電圧印加防止手段が各太陽電池群の夫々と電気的に並列接続され、太陽電池群における電気的な一対の開放端が同一方向のみに配置されると共に、複数組の太陽電池群は、夫々の太陽電池群における一対の開放端が同一方向側のみとなるように配列され、導電材は複数組の太陽電池群を互いに電気的に直列接続するのに対し、甲1発明では、各ストリングが互いに電気的に直列接続されているか不明であり、各バイパスダイオードが各ストリングの夫々と電気的に並列接続されているか不明であり、タブリードが各ストリングを互いに電気的に直列接続するか不明であり、ストリングの電気的な一対の開放端は同一方向のみに配置されていない点」(以下「相違点1」という。)。 (カ)甲第1号証に記載された発明と本件訂正発明1の一致点について、請求人は、甲第1号証に記載された発明は、本件訂正発明1の「太陽電池群における電気的な一対の開放端が同一方向のみに配置されると共に、複数組の太陽電池群は、夫々の太陽電池群における一対の開放端が同一方向側のみとなるように配列され」るとの構成を備えている旨主張する。 そこで、上記主張について検討する。 上記請求人の主張は、甲第1号証に記載のサブモジュールの回路構成が甲参考図1(上記第5,1(1)ウを参照。)のものであることを前提とするが、甲第1号証に記載されたサブモジュールの回路構成が甲参考図1のものであるとまではいえないことは、上記ア(イ)のとおりであるから、前提において採用できない。 なお、甲参考図1を想定しても、同図の回路構成は、モジュールの両側にバイパスダイオードを備えるものであって、「太陽電池群における電気的な一対の開放端が同一方向のみに配置される」とはいえないものである。 ウ 検討 (ア) 相違点1について a 上記(1)ウ(イ)、(カ)及び上記(1)エ(ウ)、(エ)によれば、太陽電池モジュールにおいて、マトリクス状(アレイ状)に配列された複数の太陽電池セルを、各行(ストリング)ごとに直列に接続し、さらに各行(ストリング)を左右交互に隣接する行(ストリング)と接続して、全体の太陽電池セルが電気的に直列接続された構成とすることは、本件特許の優先日当時において周知技術であったと認められる。 b そうすると、甲1発明において、各ストリングを左右交互に隣接するストリングと接続して、セル全体が電気的に直列接続された構成とすることは、当業者が適宜なし得ることと認められる。 c 甲第3号証には、「以上のような太陽電池モジュールや太陽電池システムにおいては、それらが接続されている外部回路によっては、影になった太陽電池セルに大きな逆バイアス電圧が加わってそのセルが破壊されることがある。さらに極端な場合には、その逆バイアスによって太陽電池セルが過熱し、屋根に設置する太陽電池モジュールの場合には火災を引き起こすおそれもある。」(段落【0006】)、「以上のような太陽電池モジュールの出力低下やセルの破損の問題を改善するために、バイパスダイオードを備えた太陽電池モジュールが先行技術において知られている。」(段落【0007】)と記載されている。また、甲第5号証には、「部分的日照で陰になった太陽電池セルへ逆バイアスが印加され、以上温度上昇による破損を防ぐには、太陽電池セルの直列数が12個程度以下ごとにバイパスダイオードを接続しなければならない。」(明細書4頁7行?11行)、「第1図および第2図に示すように、太陽電池セル1の直列個数を12個以下(本例では8個)になるよう直列接続群を構成し、この発電方向と逆極性となる向きに並列に、太陽電池セル1と同一形状、同一性能を持つバイパスダイオード11を接続し、該直列接続群内の任意の太陽電池セルが陰になっても逆バイアス印加による温度上昇が無視できるようにした。更に、太陽電池セル1と同一形状、同一性能をもつ逆流防止用ダイオード12を接続し、太陽電池単位構体を構成する。……次に、第1図に示す太陽電池単位構体を2組を直列接続する場合を説明する。一方の太陽電池単位構体のT1端子と他方の太陽電池単位構体のT2端子を接続し、一方の太陽電池単位構体の端子T3と他方の太陽電池単位構体の端子T3間へ支持基板を兼ねた新たなコンデンサ10の電極端子103,104を接続する。……同様にして複数組の太陽電池単位構体を直列に接続して構成することができる。」(明細書7頁7行?9頁7行)と記載されている。かかる記載を踏まえると、上記aのように直列接続された太陽電池モジュールにおいて、日陰となった太陽電池セルが逆バイアス電圧により破損することを防止するために、太陽電池セルの2行ごとにバイパスダイオードを並列に接続して、太陽電池モジュールの1つの側(辺)のみにバイパスダイオードを配置することは、本件特許の優先日当時において周知技術であったと認められる。 d さらに、請求人が提出した参考資料1の 「For ideal reduction of shading losses, a bypass diode would exist for every cell string, but cost often requires bypass diodes to be limited to multiple strings or every multiple modules.」 (669頁右欄12行?15行)(翻訳:日陰損失を理想的に低減するには、バイパスダイオードを各セルストリングに設けることになる。しかしながら、コスト面から、バイパスダイオードを複数のストリングごとや複数のモジュールごとに制限することがしばしば求められる。)との記載によれば、日陰損失を理想的に低減するには、バイパスダイオードを各セルストリングに設けることになるが、コスト面から、バイパスダイオードを複数のストリングごとや複数のモジュールごとに制限することは、本件特許の優先日当時においてしばしば行われていたと認められる。 e 他方、甲第1号証のタイトル「A SOLAR MODULE FABRICATION PROCESS FOR HALE SOLAR ELECTRIC UAVs (翻訳:HALE太陽発電無人飛行機のための太陽電池モジュールの製造プロセス)」、及び「7個のバイパスダイオードがヒートシンクする電気的タブリードに取り付けられ、回路断線に対する冗長保護のため各サブモジュールの両端に半田付けされる。」(上記1(1)ア)との記載によれば、甲1発明におけるバイパスダイオードは、無人飛行機のための太陽電池モジュールの回路断線に対する冗長保護のためのものであると認められる。 f そして、無人飛行機のための太陽電池モジュールにおいて、日陰となった太陽電池セルが逆バイアス電圧により破損することを防止するとの課題が生じるとは認められないから、甲1発明において、上記周知のバイパスダイオードの配置を適用して、相違点1に係る本件訂正発明1の構成とすることが当業者にとって容易になし得ることであるとすることはできない。 g また、上記(1)イ及びオ(甲第2及び6号証)の記載事項も、甲1発明において、相違点1に係る本件訂正発明1の構成とすることを教示するものではない。 (イ)請求人は、太陽電池モジュールの1つの側(辺)のみに逆方向電圧印加防止手段を設けることは、周知の技術的事項であり、甲1発明に周知の技術的事項を適用し、太陽電池モジュールの片側のみに逆方向電圧印加防止手段を備えるようにすることは、当業者が容易になし得ることである旨主張しているが、上記(ア)のとおりであって、採用できない。 エ 小括 以上の検討によれば、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明ということはできず、また、甲第1号証に記載された発明、甲第2、3、5、6号証に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (3)本件訂正発明2ないし9について 本件訂正発明2ないし9は、本件訂正発明1の特定事項をすべて含むものであるから、上記(2)のとおり、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明ということはできず、また、甲第1号証に記載された発明、甲第2、3、5、6号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない以上、本件訂正発明2ないし9は、甲第1号証に記載された発明ということができず、また、甲第1号証に記載された発明、甲第2、3、5、6号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないことは明らかである。 2 無効理由2について (1)甲号証の記載 ア 甲第1、2、3及び6号証の記載事項は、上記1(1)のとおりである。 イ 本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第4号証(実願昭55-69009号(実開昭56-169287号)のマイクロフイルム)には、以下の記載がある。 「2.実用新案登録請求の範囲 1)透明な基板上に形成され両面からの入射光で発電する非晶質太陽電池を電源として取り付けたことを特徴とする電子時計。」(実用新案登録請求の範囲) ウ 本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第7号証(特開平2-12878号公報)には、以下の記載がある。 (ア)「(4)太陽電池積層体はその両方の表面に当る太陽光により発電を行なう両面型であり、接続箱が何れの表面もカバーしないことを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の光電池モジュール」(特許請求の範囲第4項) (イ)「接続箱を光電池モジュールの裏面に取付ける場合のもう1つの問題は接続箱により裏面の一部が覆われることである。これは両面型太陽電池を用いた太陽電池パネルにとっては特に重要である。両面型太陽電池は、その前面および裏面の両方に当る光により励起される、即ち、直流の電圧および電流を発生する電池である。両面型太陽電池を光電池モジュールに用いる場合、太陽電池の裏面が覆われないようにすることが肝要である。」(2頁右上欄7?15行) (2)本件訂正発明1について ア 甲第3号証に記載された発明 (ア)上記1(1)ウ(イ)及び(カ)によれば、図10に記載の実施例は、ペレット状バイパスダイオード4Aが太陽電池セル2の前面電極2a上に接合されているから、上記1(1)ウ(ア)の請求項1に係る発明の実施例と認められる。 (イ)上記1(1)ウ及び上記(ア)によれば、甲第3号証には、次の発明が記載されているものと認められる。 「電気的に直列接続された複数の太陽電池セルと、 太陽電池セルの出力電流を1以上の前記太陽電池セルについてバイパスさせ得る1以上のバイパスダイオードとを含み、 バイパスダイオードは、ペレット状の薄いダイオードであり、太陽電池セルの電極上に接合されている太陽電池モジュールであって、 4行4列のマトリクス状に配置された16個の太陽電池セル2が、1行目と2行目の右端の太陽電池セル2、2行目と3行目の左端の太陽電池セル2、及び3行目と4行目の右端の太陽電池セル2を相互にインタコネクタ3で接続することにより、2つの出力端子1aの間で直列接続され、 2行目の左端の太陽電池セル2の前面電極2a上に接合されたペレット状バイパスダイオード4Aは、インタコネクタ3cによって1行目の左端の太陽電池セル2の背面電極に接続され、4行目の左端の太陽電池セル2の前面電極2a上に接合されたペレット状バイパスダイオード4Aは、インタコネクタ3cによって3行目の左端の太陽電池セル2の背面電極に接続され、 太陽電池セル2はEVA樹脂などの充填樹脂層5とその外側の透明フィルム6によって挟まれてラミネートされる太陽電池モジュール。」(以下「甲3発明」という。)。 イ 本件訂正発明1と甲3発明との対比 本件訂正発明1と甲3発明とを対比する。 (ア)甲3発明は、「4行4列のマトリクス状に配置された16個の太陽電池セル2が」、「電気的に直列接続され」、「1行目と2行目の」「太陽電池セル2」及び「3行目と4行目の」「太陽電池セル2」は、「右端の太陽電池セル2を相互にインタコネクタ3で接続」されているから、甲3発明の「太陽電池セル」は、本件訂正発明1の「太陽電池」に相当し、甲3発明の「『相互にインタコネクタ3で接続』された『1行目と2行目の』『太陽電池セル2』及び『3行目と4行目の』『太陽電池セル2』」は、本件訂正発明1の「複数組の太陽電池群」に相当し、甲3発明は、本件訂正発明1の「互いに電気的に直列接続された複数組の太陽電池群」及び「前記太陽電池群は互いに電気的に接続された複数個の太陽電池からなり、該太陽電池群における電気的な一対の開放端が同一方向のみに配置されると共に、前記複数組の太陽電池群は、夫々の太陽電池群における前記一対の開放端が同一方向側のみとなるように配列され」るとの特定事項を備えている。 (イ)甲3発明の「2行目の左端の太陽電池セル2の前面電極2a上に接合された」「バイパスダイオード4A」は、「1行目の左端の太陽電池セル2の背面電極に接続され」、「4行目の左端の太陽電池セル2の前面電極2a上に接合された」「バイパスダイオード4A」は、「3行目の左端の太陽電池セル2の背面電極に接続される」から、これらの「バイパスダイオード4A」は、「『相互にインタコネクタ3で接続』された『1行目と2行目の』『太陽電池セル2』及び『3行目と4行目の』『太陽電池セル2』」と電気的に並列接続されているといえるから、甲3発明の「バイパスダイオード4A」は、本件訂正発明1の「逆方向電圧印加防止手段」に相当し、甲3発明は、本件訂正発明1の「各太陽電池群の夫々と電気的に並列接続された逆方向電圧印加防止手段とを備え」るとの特定事項を備えている。 (ウ)甲3発明の「2行目と3行目の左端の太陽電池セル2」を「相互に接続する」「インタコネクタ3」は、「『相互にインタコネクタ3で接続』された『1行目と2行目の』『太陽電池セル2』及び『3行目と4行目の』『太陽電池セル2』」を「直列接続」するから、本件訂正発明1の「導電材」に相当し、甲3発明は、本件訂正発明1の「『前記複数組の太陽電池群を互いに電気的に直列接続するための導電材』が『配列される』」との特定事項を備えている。 (エ)甲3発明の「太陽電池セル2」は、「充填樹脂層5とその外側の透明フィルム6によって挟まれてラミネートされる」から、甲3発明の「透明フィルム6」は、本件訂正発明1の「『表面部材』及び『裏面部材』」に相当し、甲3発明は、本件訂正発明1の「前記逆方向電圧印加防止手段が前記複数組の太陽電池群と共に表面部材と裏面部材との間に封止されてなる」との特定事項を備えている。 (オ)以上によれば、両者は、 「互いに電気的に直列接続された複数組の太陽電池群と、各太陽電池群の夫々と電気的に並列接続された逆方向電圧印加防止手段とを備え、 前記太陽電池群は互いに電気的に接続された複数個の太陽電池からなり、該太陽電池群における電気的な一対の開放端が同一方向のみに配置されると共に、前記複数組の太陽電池群は、夫々の太陽電池群における前記一対の開放端が同一方向側のみとなるように配列され、 且つ前記複数組の太陽電池群を互いに電気的に直列接続するための導電材が配列されると共に、 前記逆方向電圧印加防止手段が前記複数組の太陽電池群と共に表面部材と裏面部材との間に封止されてなる太陽電池モジュール。」 である点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。 「本件訂正発明1では、逆方向電圧印加防止手段と導電材とが直線状に配列されるのに対し、甲3発明では、バイパスダイオードは、太陽電池セルの電極上に接合されており、インタコネクタと直線状に配列されていない点」(以下「相違点2」という。) ウ 検討 (ア)相違点2について a 上記1(2)イによれば、甲第2号証には、「各太陽電池素子を直列接続するための良導電材と逆方向電圧印加防止用バイパスダイオードが、予め交互に複数個接続された線状あるいは帯状物」が記載されていると認められる。 b 他方、甲第3号証の「また、太陽電池セル以外の部分にダイオード4をもってくればダイオード4の設置分だけ太陽電池モジュール全体のサイズが大きくなり、モジュール変換効率(モジュールの外寸に対するモジュールの光電変換効率)が低下するとともに、製品の見栄えが悪くなって商品性をも低下させるという課題がある。」(段落【0018】)及び「本発明による太陽電池モジュールにおいては、バイパスダイオードとして太陽電池セルと同程度に薄いペレット状のダイオードが直接に太陽電池セルの電極上またはインタコネクタ上に接合されているので、薄い太陽電池セルを破損することなく保護層とともに容易に低コストで薄くラミネートすることができ、かつ見栄えもよくて商品性が高い太陽電池モジュールを提供することができる。」(段落【0026】)との記載によれば、甲3発明は、上記課題解決のために、太陽電池セル2の前面電極2a上にバイパスダイオード4Aを接合する構成を前提とするものと認められる。 c そして、かかる構成を前提とする甲3発明において、バイパスダイオード及びインタコネクタの構成として、上記aの「線状あるいは帯状物」を採用することはできないから、相違点2に係る本件訂正発明1の構成とすることが、当業者にとって容易に想到し得たとはいえない。 d そして、甲3発明において、相違点2に係る本件訂正発明1の構成とすることが、当業者にとって容易に想到し得ると認めるに足る根拠は、本件各証拠を通じてみても見いだせない。 (イ)請求人は、甲第3号証の図10において、ペレット状バイパスダイオード4Aを太陽電池セル2の前面電極2a上に接合しているのは、一つの実施例としての構造であり、甲第3号証には、他の実施例として、ペレット状の薄いダイオードをインタコネクタ間に接合する構造も記載されており、バイパスダイオードを接続する電極構造には、様々な選択肢があることが開示されているから、図10に記載された電極構造に限定されることなく、甲3発明と甲第2号証記載の技術的事項から、当業者が本件訂正発明1を容易に発明することができる旨主張するが、上記(ア)のとおりであって、採用できない。 エ 小括 以上の検討によれば、本件訂正発明1は、甲第3号証に記載された発明、甲第1、2、4、6、7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (3)本件訂正発明2ないし9について 本件訂正発明2ないし9は、本件訂正発明1の特定事項をすべて含むものであるから、上記(2)のとおり、本件訂正発明1は、甲第3号証に記載された発明、及び甲第1、2、4、6、7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない以上、本件訂正発明2ないし9は、甲第3号証に記載された発明、及び甲第1、2、4、6、7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないことは明らかである。 3 無効理由3について (1)請求人の主張 請求人は、本件訂正前の請求項7の「放熱性に優れる材料からなる基体部」との記載について、「放熱性に優れる」とは定性的表現であって、比較の基準が明らかではなく、その程度が不明確な表現であるから、請求項7に係る発明は明確ではない旨主張する。 (2)判断 本件訂正前の請求項7の記載は、本件訂正により上記第4の請求項7のとおり訂正され、「放熱性に優れる材料からなる基体部」との表現は削除され、「銅からなる基体部」との表現に訂正された。そして、本件訂正後の請求項7の記載において、請求人が主張するような明確でない記載は認められない。 よって、上記請求人の主張は採用できない。 (3)小括 以上によれば、本件訂正後の請求項7に係る発明は、明確でないということはできない。 第8 むすび 以上のとおりであって、本件訂正発明についての特許は、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定に違反してなされたものではなく、同法第123条第1項第2号に該当するものではない。 また、本件訂正発明についての特許は、特許法第36条6項2号の規定に違反してなされたものではなく、同法第123条第1項第4号に該当するものでもない。 したがって、請求人が主張する無効理由によっては、本件訂正発明についての特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 太陽電池モジュール (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 互いに電気的に直列接続された複数組の太陽電池群と、各太陽電池群の夫々と電気的に並列接続された逆方向電圧印加防止手段とを備え、 前記太陽電池群は互いに電気的に接続された複数個の太陽電池からなり、該太陽電池群における電気的な一対の開放端が同一方向のみに配置されると共に、前記複数組の太陽電池群は、夫々の太陽電池群における前記一対の開放端が同一方向側のみとなるように配列され、 且つ前記逆方向電圧印加防止手段と、前記複数組の太陽電池群を互いに電気的に直列接続するための導電材とが直線状に配列されると共に、 前記逆方向電圧印加防止手段が前記複数組の太陽電池群と共に表面部材と裏面部材との間に封止されてなることを特徴とする太陽電池モジュール。 【請求項2】 前記太陽電池群が偶数列に配列された前記複数個の太陽電池から構成され、且つ複数組の太陽電池群が列方向に配列されことを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュール。 【請求項3】 前記逆方向電圧印加防止手段と前記導電材とは、予め交互に接続されてなる線状或いは帯状物とされて前記太陽電池群に接続されていることを特徴とする請求項1又は2記載の太陽電池モジュール。 【請求項4】 前記逆方向電圧印加防止手段の厚みが、前記太陽電池の厚みと略同程度又はそれ以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の太陽電池モジュール。 【請求項5】 前記逆方向電圧印加防止手段が、ダイオードであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の太陽電池モジュール。 【請求項6】 前記ダイオードは、ベアチップダイオードと、該ベアチップダイオードの両面に夫々取り付けられた導電部材とを有し、且つ前記導電部材の少なくとも一方が、取付面を構成する第1平坦部と、該平坦部から下方に立ち下がる支持部と、該支持部から前記平坦部と略平行に折れ曲がってなる第2平坦部と、を有することを特徴とする請求項5記載の太陽電池モジュール。 【請求項7】 前記ダイオードは、ベアチップダイオードと、該ベアチップダイオードの両面に夫々取り付けられた導電部材とを有し、且つ前記導電部材が、取付面を構成する銅からなる取付部と、前記ベアチップダイオードの外方において該取付部と一体的に設けられた、前記取付部より厚みを有した銅からなる基体部とからなることを特徴とする請求項5記載の太陽電池モジュール。 【請求項8】 前記裏面部材が透光性を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の太陽電池モジュール。 【請求項9】 前記太陽電池が、表裏両側からの光の入射により発電可能な太陽電池であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の太陽電池モジュール。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は太陽電池モジュールに係り、特に表面部材及び裏面部材に透光性の部材を用いることにより、表裏両側からの光入射を可能とした両面入射型の太陽電池モジュールに関する。 【0002】 【従来の技術】 太陽電池は、クリーンで無尽蔵のエネルギー源である太陽から放出される光のエネルギーを直接電気に変換することができることから、石油・石炭等の化石エネルギーに代わる新しいエネルギー源として期待され、実用化が進められている。斯かる太陽電池を実際のエネルギー源として用いるにあたっては、通常複数枚の太陽電池を電気的に直列、或いは並列接続することにより出力を高めた太陽電池モジュールが使用されている。 【0003】 図9乃至12を参照して従来の太陽電池モジュールを説明する。ここで、図9は平面図、図10は図9におけるA-A’線の断面図、図11は背面図であり、後述する裏面部材を省略して示している。また、図12は、端子ボックスの内部構造を示す拡大平面図である。 【0004】 これらの図において、1はガラス、プラスチック等の透光性を有する材料からなる表面部材であり、2は裏面部材である。裏面部材2としては通常Al箔の両面を樹脂フィルムでサンドイッチした構造を有する3層構造の部材が用いられる。 【0005】 3…は太陽電池であり、例えば内部にpn接合を有する単結晶Si、多結晶Siからなる太陽電池を用いることができる。例えば72枚の太陽電池3…が8列×9行のマトリクス状に配列され、銅薄板等の金属薄板よりなる接続部材4…により互いに電気的に直列接続されている。そして、これらの太陽電池3…はEVA等の透光性且つ絶縁性を有する封止材5により表面部材1と裏面部材2との間に封止される。また、その外周にはアルミニウム等の加工し易い金属からなる枠体6が必要に応じて取り付けられている。 【0006】 太陽電池3…で発生した電力は、電力引き出し線11、11により裏面部材2の背面に設けられた端子ボックス10,10へ引き出され、そしてこの端子ボックス10,10から電力ケーブル(不図示)により外部に出力される。 【0007】 ところで、このように複数の太陽電池を直列接続して動作させる形態では、建物の影や降雪等の影響により一部の太陽電池への太陽光の入射が遮られた場合、その太陽電池での起電力が低下してしまう。この場合、正常に発電している他の太陽電池で発生した電圧が逆方向電圧という形で印加されることとなり、そしてこの逆方向電圧が太陽電池の耐圧を越えると、太陽電池が破壊されてしまう。或いは、逆方向電圧が印可された太陽電池が発熱し、この熱によりEVAの変色、発泡、又は太陽電池の破損等の不具合が生じる。 【0008】 このような問題を解決するため、通常は太陽電池を複数枚毎の太陽電池群に分割し、これらの太陽電池群と並列に逆方向電圧印加防止手段を設けている。 【0009】 例えば、上述した太陽電池モジュールでは72枚の太陽電池3…を18枚(2列)毎の太陽電池群の4組に分割する。そして、これらの太陽電池群に、逆方向電圧印加防止手段としてのダイオード21を接続用配線12により電気的に並列で且つ逆方向に接続している。このダイオード21は通常図12に示す如く端子ボックス10内に配置されており、このため、端子ボックス10の大きさは比較的大きなものとなっている。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】 ところで、近年、表面側ばかりでなく裏面側から入射した光を用いても発電することのできる両面入射型の太陽電池が開発されている。そして、斯かる両面入射型の太陽電池を用いて太陽電池モジュールとする場合には、従来光不透過性の部材を用いて構成していた裏面部材をガラス等の透光性の部材で構成し、この裏面部材を介して光が太陽電池の裏面側へも入射可能な構造とされている。 【0011】 然し乍ら、斯かる構造の太陽電池モジュールにあっては、裏面側から入射する光が端子ボックス10、10、電力引き出し線11、11及び接続用配線12…により遮られ、一部の太陽電池の裏面側には光が入射しない。このため、この一部の太陽電池の電流値が表面側からの光入射により生じるものだけとなり、他の太陽電池に比べて低くなる。太陽電池モジュールにおいては複数枚の太陽電池が電気的に直列接続されているために、モジュール全体の出力電流は裏面側に光が入射しない上記一部の太陽電池の低い電流値に大きな影響を受け、モジュールから出力される電流値が小さくなるために、裏面側からの光入射の効果が小さくなってしまう。 【0012】 また、上述のような両面入射型の太陽電池を用いるものに限らず、従来の太陽電池を用いた太陽電池モジュールにあっても、裏面部材を透光性の部材から構成し、表面側から入射した光の一部を裏面側に透過させるようにして意匠性を高めた太陽電池モジュールもある。斯かる太陽電池モジュールにあっても端子ボックス10,10や電力引き出し線11、11或いは接続用配線12…のために裏面側に透過する光量が減少し、本来の効果を奏することができない。 【0013】 本発明は、斯かる従来の課題を解決し、表裏両側からの光入射を可能とした両面入射型の太陽電池モジュールにおいて発電効率の向上を図ると共に、意匠性の優れた太陽電池モジュールを提供することを目的とする。 【0014】 【課題を解決するための手段】 上記従来の課題を解決するために、本発明太陽電池モジュールは、互いに電気的に直列接続された複数組の太陽電池群と、各太陽電池群の夫々と電気的に並列接続された逆方向電圧印加防止手段とを備え、前記太陽電池群は互いに電気的に接続された複数個の太陽電池からなり、該太陽電池群における電気的な一対の開放端が同一方向のみに配置されると共に、前記複数組の太陽電池群は、夫々の太陽電池群における前記一対の開放端が同一方向側のみとなるように配列され、且つ前記逆方向電圧印加防止手段と、前記複数組の太陽電池群を互いに電気的に直列接続するための導電材とが直線状に配列されると共に、前記逆方向電圧印加防止手段が前記複数組の太陽電池群と共に表面部材と裏面部材との間に封止されてなることを特徴とする。 【0015】 また、前記太陽電池群が偶数列に配列された前記複数個の太陽電池から構成され、且つ複数組の太陽電池群が列方向に配列されたことを特徴とする。 【0016】 さらに、前記逆方向電圧印加防止手段と前記導電材とは、予め交互に接続されてなる線状或いは帯状物とされて前記太陽電池群に接続されていることを特徴とする。 【0017】 加えて、前記逆方向電圧印加防止手段の厚みが、前記太陽電池の厚みと略同程度又はそれ以下であることを特徴とする。 【0018】 前記逆方向電圧印加防止手段としては、ダイオードを用いると良い。 【0019】 また、前記ダイオードは、ベアチップダイオードと、該ベアチップダイオードの両面に夫々取り付けられた導電部材とを有し、且つ前記導電部材の少なくとも一方が、取付面を構成する第1平坦部と、該平坦部から下方に立ち下がる支持部と、該支持部から前記平坦部と略平行に折れ曲がってなる第2平坦部と、を有することを特徴とする。 【0020】 或いは、前記ダイオードは、ベアチップダイオードと、該ベアチップダイオードの両面に夫々取り付けられた導電部材とを有し、且つ前記導電部材が、取付面を構成する銅からなる取付部と、前記ベアチップダイオードの外方において該取付部と一体的に設けられた、前記取付部より厚みを有した銅からなる基体部とからなることを特徴とする。 【0021】 さらに、本発明太陽電池モジュールは、前記裏面部材が透光性を有することを特徴とする。 【0022】 加えて、前記太陽電池が、表裏両側からの光の入射により発電可能な太陽電池であることを特徴とする。 【0023】 【発明の実施の形態】 以下に、本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールについて、図1乃至図4を参照して説明する。 【0024】 図1は本実施形態に係る太陽電池モジュールの平面図であり、図2は図1に示した太陽電池モジュールの等価回路図である。また、図3は本実施形態において用いた両面入射型の太陽電池の一例を示す構造断面図である。尚、これらの図において前述の図9乃至12と同一の機能を呈する部分には同一の符号を付している。 【0025】 本実施形態にあっては、表面部材1として外寸法1300mm×875mmの透光性を有するガラスを用いる。また、裏面部材2としても同一寸法の透光性を有するガラスを用い、表裏両面から光入射の可能なモジュール構造としている。尚、裏面部材2はガラスに限る必要はなく透光性のプラスチック材料などを用いることもできる。このように透光性のプラスチック材料を用いる場合にあってはモジュールの防湿性を高めるために水蒸気透過率の低い材料を用いることが好ましく、水蒸気透過率が20g/m2・day以下の材料を用いることが好ましい。さらには、水蒸気透過率が0.1g/m2・day以下の材料を用いることがより好ましい。尚、この水蒸気透過率の値は、JISZ0208-73で規定されるモコン法により測定した値である。 【0026】 3…は太陽電池であり、本実施形態にあっては表裏両面からの光入射により発電することのできる両面入射型の太陽電池とした。 【0027】 図3は斯かる両面入射型の太陽電池の構造を示す構造断面図であり、同図において51はn型の単結晶シリコン基板である。該基板51の表面上には厚み約100Åの真性非晶質シリコンからなるi型層52及び厚み約100Åのp型非晶質シリコンからなるp型層53が順次積層され、該p型層53上にITO,ZnO,SnO2等の透光性導電膜からなる表面側透光性電極54及び櫛形状に形成された金属からなる表面側集電極55が順次形成されている。 【0028】 また、単結晶シリコン基板51の裏面上には厚み約100Åの真性非晶質シリコンからなるi型層56及び厚み約100Åのn型非晶質シリコンからなるn型層57が順次積層され、該n型層57上にITO,ZnO,SnO2等の透光性導電膜からなる裏面側透光性電極58及び櫛形状に形成された金属からなる裏面側集電極59が順次形成されている。 【0029】 斯かる構成の太陽電池によれば、表面側及び裏面側から入射する光が共に単結晶シリコン基板51に入射し、該基板51中で電子・正孔対を生成して発電に寄与する。 【0030】 尚、両面入射型の太陽電池としては斯様に結晶系半導体材料と非晶質半導体材料とを組合わせた太陽電池に限るものではなく、結晶系半導体材料或いは非晶質半導体材料を単独で用いたものであっても良い。 【0031】 本実施形態に係る太陽電池モジュールにあっては、太陽電池3…を行方向(紙面上下方向)に12個、列方向(紙面左右方向)に2個のマトリクス状に配列すると共に、これらの24個の太陽電池3…を銅箔等の金属製薄板からなる接続部材4…により電気的に直列接続して1組の太陽電池群3Aを構成している。そして、この太陽電池群3A…を列方向に4列配列すると共に、各太陽電池群3A…を金属製薄板かならる導電材4A…により互いに電気的に直列接続している。 【0032】 さらに、各太陽電池群3A…の夫々には逆方向電圧印加防止手段としてのダイオード21…が電気的に並列且つ逆方向に接続されており、このダイオード21…は上記導電材4A…と直線状に配列されている。 【0033】 以上のように、本発明にあっては従来端子ボックス内に配置されていたダイオード21…を、太陽電池群3A…と共に表面部材1と裏面部材2との間に封止する構造としたことから、太陽電池で発生した電力を外部に出力するための電力ケーブル7,7を従来のように端子ボックスを介して導出する必要がなく、表面部材1と裏面部材2との間から外部に導出することができる。 【0034】 従って、本発明太陽電池モジュールによれば、従来裏面側からの入射光を遮っていた端子ボックスが不要となるので、裏面側からの入射光を有効に発電に寄与させることが可能となると共に、安価な太陽電池モジュールを提供でき、意匠性にも優れている。 【0035】 また、本実施形態にあっては、太陽電池群3A…を、2列に配列された24枚の太陽電池3…から構成していることから、1つの太陽電池群3Aにおいて各太陽電池3…を接続する電気配線の形状は平面コ字形状をなす。このため、該太陽電池群3Aの電気的な正負一対の開放端、即ち正側の開放端と負側の開放端とが、共に同一方向に配置されることとなる。従って、ダイオード21を太陽電池群3Aにおける、同一方向に配置された一対の開放端間に接続することができるため、ダイオード21を接続するための電気配線の距離を短縮できる。 【0036】 さらに、本実施形態にあっては、各太陽電池群3A…の夫々における一対の開放端が、同一方向に配置されるように、各太陽電池群3A…を列方向に配列している。従って、太陽電池群3A同士を電気的に直列接続するための導電材4A…とダイオード21…とを図1、2に示す如く、直線状に配列することが可能となる。 【0037】 以上のことから、太陽電池モジュール内において、光入射に対して発電に寄与しない無効領域となる上記導電材4A…及びダイオード21…の占める面積を小さくすることができるので、発電効率の向上した太陽電池モジュールを提供することができる。 【0038】 尚、ダイオード21…を接続するにあたっては、太陽電池群3A…を導電材4A…により電気的に直列接続した後に、ダイオード21…を接続するようにしても良く、或いはこの逆の順序で接続しても良い。また、本実施形態におけるように、ダイオード21と導電材4Aとを直線状に配列して接続する場合には、予め導電材4A…とダイオード21…とを交互に接続して線条或いは帯状物を形成し、この線状或いは帯状物を各太陽電池群3A…に接続することにより、太陽電池群3A…同士の電気接続とダイオード21…の電気接続とを同時に行うようにすることができる。このようにすることで、配線作業に要する時間を短縮できる。 【0039】 また、該太陽電池群3Aの電気的な一対の開放端を、共に同一方向に配置するためには、太陽電池群3Aを上記のように2列に配列された複数の太陽電池3…から構成するに限らず、遇数列に配列された太陽電池3…から構成すれば良い。この例について次に説明する。 【0040】 図4及び図5は本発明の第2実施形態に係る太陽電池モジュールを説明するための図であり、図4は平面図、また図5は等価回路図である。 【0041】 本実施形態の太陽電池モジュールが、前述の第1実施形態の太陽電池モジュールと異なる点は、太陽電池群3A…を4列に配列された太陽電池3…から構成した点にある。斯かる太陽電池モジュールにおいても、各太陽電池群3Aの配線における一対の開放端は、同一方向に配置される。従って、夫々の太陽電池群3Aにおける一対の開放端が、同一方向に配置されるように各太陽電池群3Aを配列することで、導電材4A及びダイオード21…を太陽電池の行方向(紙面上下方向)における同じ側の外周部に配置し、直線状に接続することができる。従って、ダイオード21を接続するための配線をモジュール内で引き回す必要がなく、配線の長さを最短にできるので、光入射に対して無効領域となるダイオード21の面積を小さくすることができ、発電効率を向上させることができる。 【0042】 次に、本発明太陽電池モジュールで使用する逆方向電圧印加防止手段としてのダイオードについて説明する。 【0043】 図6は、本発明に係る逆方向電圧印加防止手段としてのダイオードの構造を説明するための断面図である。 【0044】 同図において、ダイオード21は単結晶Siからなるベアチップダイオード30の上下両面に、銅薄板等の導電性薄板からなる導電部材34,34を取付けた構造を有している。尚、導電部材34は前述の導電材4Aとの電気的接続用に取り付けたものであり、導電材4Aを導電部材34と兼用させて用いることもできる。 【0045】 ベアチップダイオード30は内部にn層31及びp層32を有しており、n層31の下面とp層32の上面とに夫々半田等の導電性を有する接着層33,33を介して、銅薄板からなる導電部材34,34が取付けられている。 【0046】 本実施形態にあっては、ベアチップダイオードとしては例えば3.5mm×3.5mmで厚み0.35mm程度の大きさのものを用い、そしてこのベアチップダイオードの上下両面に、4mm×39mm程度の大きさの導電部材34,34を取り付けている。 【0047】 導電部材34を含むダイオード21の厚みが、接続部材4を取り付けた太陽電池3の厚みよりも厚いと、太陽電池モジュールの製造時に、ダイオード21を接続した状態の太陽電池をEVAシートを介して表面部材と裏面部材との間に挟持し、加圧して一体化する際に、ダイオード21に集中的に圧力が加わり、ダイオード21の破損等が生じる。 【0048】 これを防止するために、ダイオード21の厚みは、太陽電池3の厚みと同程度或いはそれ以下の厚みとすることが好ましい。 【0049】 ところで、上記導電部材34,34は電気的な接続手段としての役割以外に、電流が流れた際に生じるベアチップダイオード30での発熱を放熱させる手段としての役割も有している。即ち、電流が流れるとベアチップダイオード30が発熱するが、この時の熱が高温であると接着層33、封止材5、太陽電池3等に悪影響を及ぼし、接着層33の導電性或いは接着性不良、封止材5或いは太陽電池3の劣化等の問題が生じる。 【0050】 斯かる問題を抑制するためには、上記導電部材34,34を介してベアチップダイオード30で生じた熱を放熱させることにより、ダイオード21の温度を80℃程度以下とする必要がある。このため導電部材34として上述したような長さ及び幅を有する銅薄板を用いた場合、厚みは0.5mm程度以上とする必要がある。 【0051】 然し乍ら、斯かる厚みの場合には、ダイオード21の厚みが1.35mm程度と厚くなるため、太陽電池モジュール製造時に、上述した太陽電池3の破損等が生じる。斯かる問題を低減するためのダイオード21の構成を図7及び図8の断面図に示す。 【0052】 まず、図7の構成にあっては、ベアチップダイオード30の上面又は下面に取付けられる導電性部材34の少なくとも一方の形状を、ベアチップダイオード30への取付面を構成する第1平坦部34Aと、該平坦部34Aの一端から下方に立ち下がる支持部34Bと、該支持部34Bから前記平坦部34Aと略平行に折れ曲がってなる第2平坦部34Cと、を有する構成としている。 【0053】 斯かる構成によれば、太陽電池モジュール製造時にダイオード21にかかる圧力を支持部34Bで支持することができるため、ダイオード21に破損が生じにくい。 【0054】 さらに、図8の構成によれば、導電部材34がベアチップダイオード30に取り付けられる取付部34Dと,ベアチップダイオード30の外方において該取付部34Dと一体的に設けられた、放熱性に優れる材料からなる基体部34Eとからなる。尚、斯かる導電部材34は別々に形成した取付部34Dと基体部34Eとを貼り合わせて形成しても良いし、或いは一体物として形成しても良い。 【0055】 斯かる構成によれば、太陽電池モジュール製造時にダイオード21にかかる圧力を基体部34Eで支持することができる。 【0056】 また、ベアチップダイオード30で生じた熱は取付部34Dを介して基体部34Eで放熱される。基体部34Eの厚みはベアチップダイオード30の厚み程度とすることができるため、取付部34Dの厚みを図6,7の構造よりも薄くできる。例えば、ベアチップダイオードの厚みが0.35mm程度の場合、基体部34Eの厚みを0.5mm程度とでき、取付部34Dの厚みを0.15mm程度とできる。 【0057】 従って、ダイオード21の厚みを0.35mm+0.15mm+0.15mm=0.65mm程度とすることができ、従来(1.35mm程度)の約半分程度と薄くすることができる。従って、ダイオード21の厚みを太陽電池3の厚みと略同程度以下にできるため、従来よりも太陽電池モジュール製造時にダイオード21に加わる圧力そのものを低減することができる。従って、本構成によれば、ダイオード21の破損を、図6,図7に示す構成よりも大幅に低減させることができる。 【0058】 以上のように、本発明の太陽電池モジュールによれば逆方向電圧印加防止手段を太陽電池群と共に表面部材と裏面部材との間に封止する構造としたので、安価な太陽電池モジュールを提供できる。また、本発明を、両面入射型の太陽電池を用いた太陽電池モジュールに適用した場合にあっては、裏面からの入射光を有効に利用できるため、発電効率を向上させることができる。さらに、通常の太陽電池を用いた両面入射型の太陽電池モジュールに本発明を適用した場合にあっては、意匠性の向上した太陽電池モジュールを提供できる。 【0059】 また、逆方向電圧印加防止手段としてのダイオードの構造を図7又は図8の構造とすることにより、モジュール製造時に生じるダイオードの破損を抑制することが可能となり、太陽電池モジュールの歩留を向上させることができる。 【0060】 尚、以上の説明においては電力ケーブルを表面部材1と裏面部材2との間から導出する構造としたが、導出する場所はこれに限らず、裏面部材の一部に設けた貫通孔から導出するようにしても良い。さらには、裏面部材の背面あるいは側面の一部に設けた端子部を介して電力ケーブルを導出するようにしても良い。斯かる場合にあっても、端子部の大きさを従来の端子ボックスよりも大幅に減少させることができるため、上述した効果と同様の効果を奏する。 【0061】 また、本発明における逆方向電圧印加防止手段は上述したようなダイオードに限らず、同様の効果を奏するものであればどのようなものであっても良い。 【0062】 【発明の効果】 以上のように、本発明によれば、安価で高い発電効率を有し、且つ意匠性に優れた太陽電池モジュールを提供できる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の第1実施形態に係る太陽電池モジュールの平面図である。 【図2】本発明の第1実施形態に係る太陽電池モジュールの電気回路図である。 【図3】両面入射型の太陽電池の構造断面図である。 【図4】本発明の第2実施形態に係る太陽電池モジュールの平面図である。 【図5】本発明の第2実施形態に係る太陽電池モジュールの電気回路図である。 【図6】本発明に係るダイオードの構造断面図である。 【図7】本発明に係る別のダイオードの構造断面図である。 【図8】本発明に係るさらに別のダイオードの構造断面図である。 【図9】従来の太陽電池モジュールの平面図である。 【図10】図6におけるB-B’線の断面図である。 【図11】従来の太陽電池モジュールの背面図である。 【図12】従来の端子ボックスの構造を説明するための説明図である。 【符号の説明】 …表面部材、2…裏面部材、3…太陽電池、3A…太陽電池群、4…接続部材、4A…導電材、5…封止材、6…枠体、7…電力ケーブル、21・・・ダイオード |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2014-01-31 |
結審通知日 | 2014-02-04 |
審決日 | 2014-02-19 |
出願番号 | 特願平11-66877 |
審決分類 |
P
1
113・
121-
YAA
(H01L)
P 1 113・ 113- YAA (H01L) P 1 113・ 832- YAA (H01L) P 1 113・ 537- YAA (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 濱田 聖司 |
特許庁審判長 |
服部 秀男 |
特許庁審判官 |
松川 直樹 中田 誠 |
登録日 | 2001-02-09 |
登録番号 | 特許第3157502号(P3157502) |
発明の名称 | 太陽電池モジュール |
代理人 | 大倉 昭人 |
代理人 | 五味 和泰 |
代理人 | 石田 純 |
代理人 | 堀江 哲弘 |
代理人 | 齋藤 恭一 |
代理人 | 堀江 哲弘 |
代理人 | 井口 和孝 |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 五味 和泰 |
代理人 | 井口 和孝 |
代理人 | 石田 純 |