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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1288004
審判番号 不服2013-2681  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-12 
確定日 2014-05-21 
事件の表示 特願2009-513067「MBMSにおけるモバイルテレビ情報の提供方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月 3日国際公開、WO2008/002061、平成21年11月12日国内公表、特表2009-539302〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2007年6月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年6月26日、英国)を国際出願日とする国際出願であって、平成23年6月28日付けで拒絶理由がなされ、平成23年12月5日付けで手続補正書が提出され、平成24年3月21日付けで拒絶理由がなされ、平成24年9月28日付けで拒絶査定がなされたのに対して、平成25年2月12日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。



第2.平成25年2月12日付けの手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年2月12日付けの手続補正書による補正(以下、「本件補正1」と呼ぶ。)を却下する。

[理由]
1.平成25年2月12日付けの手続補正書の補正の内容
本件補正1は、特許請求の範囲の請求項1において、
(1)「前記移動通信装置から選択されたMBMSと関連したグループ情報に基づいて前記選択されたMBMSが提供される伝送モードを決定する」を、
「前記移動通信装置の個数を周期的に再カウンティングした情報に基づいて前記選択されたMBMSが提供される伝送モードを決定する」とする補正(以下、「補正事項1」という。)、
(2)「前記ネットワークコントローラが、前記移動通信装置に前記グループ情報を伝送し、前記グループ情報と前記決定された伝送モードに基づいて前記移動通信装置に前記選択されたMBMSを提供する」を、
「前記ネットワークコントローラが、前記決定された伝送モードに基づいて前記移動通信装置に前記選択されたMBMSを提供する」、及び、「前記利用可能な複数のMBMSは、単一ビットのMBMS変更情報メッセージを通じて前記移動通信装置に指示される」とする補正(以下、「補正事項2」という。)
を含んでいる。
そして、上記手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりのものである(下線は、請求人が付与した。)。

「【請求項1】
MBMSをサポートする無線通信システムにおいて、ネットワークコントローラが移動通信装置にMBMSを提供するための方法であって、
前記ネットワークコントローラが、利用可能な複数のMBMSのうちで前記移動通信装置が選択したMBMSを確認するステップと、
前記ネットワークコントローラが、前記移動通信装置の個数を周期的に再カウンティングした情報に基づいて前記選択されたMBMSが提供される伝送モードを決定するステップと、
前記ネットワークコントローラが、前記決定された伝送モードに基づいて前記移動通信装置に前記選択されたMBMSを提供するステップと、
を有し、
前記利用可能な複数のMBMSは、単一ビットのMBMS変更情報メッセージを通じて前記移動通信装置に指示されることを特徴とする方法。」


2.補正の目的
本件補正1の補正事項1、2について、特許法第17条の2第5項の規定各号の目的に該当するかどうか検討する。

2-1.補正事項1について
(1)特許請求の範囲の減縮(特許法第17条の2第5項第2号)について
審判請求人は、平成25年2月12日付け審判請求書の「請求の理由」の中で、「これらの補正は、補正前の独立請求項の発明特定事項を限定するものであって、産業上の利用分野または解決課題を変更するものではありません。」と主張していることから、まず最初に、補正事項1が特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるかどうか検討する。

補正事項1における「前記移動通信装置の個数を周期的に再カウンティングした情報」は、「前記移動通信装置から選択されたMBMSと関連したグループ情報」を概念的に下位にしたものであるとはいえない。
そして、発明特定事項を直列的に付加したものともいえないことは明らかである。
このため、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものには該当しない。

(2)不明りょうな記載の釈明(特許法第17条の2第5項第4号)について
明りょうでない記載の釈明を目的とするためには、補正前の記載が明りょうでない記載であり、補正後の記載が釈明された記載になっていることが必要である。
ここで、「明りょうでない記載」とは、請求項の記載そのものが文理上、意味が不明りょうであること、請求項自体の記載内容が他の記載との関係において不合理を生じていること、又は、請求項自体の記載は明りょうであるが請求項に記載した発明が技術的に正確に特定されず不明りょうであること等であり、「釈明」とは、それらの不明りょうさを正して、「その記載本来の意味内容」を明らかにすることである。
さらに、明りょうでない記載の釈明は、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限られている。

そこで、補正前の記載が明りょうでない記載であるかどうかを検討する。

補正前の請求項1の「前記移動通信装置から選択されたMBMSと関連したグループ情報に基づいて前記選択されたMBMSが提供される伝送モードを決定する」なる記載事項に関し、「グループ情報」なる事項が示す技術的意味について、請求人は、以下のごとく主張している。
平成23年12月5日付け意見書では、「請求項1においての「グループ情報」は、UEが選択したサービス(即ち、MBMS)のグループ情報を意味し、これは上記の段落[0042]に該当します。ネットワークは前記UEが選択したサービスのグループ情報を通じてどのくらいのUEが該当サービスを希望するかをカウンティングして伝送モードを決定するようになります。([0047]参照)」と主張している。
そして、平成24年6月27日付け意見書では、「段落[0042]には、「グループ情報」は特定のグループ、即ち、SRSG(Selective Reception Service Group)を示し、前記グループ情報が、移動通信装置(UE)が加入したM-TVパッケージ(即ち、移動通信装置が選択したMBMS)と関連したサービスグループであることは、段落[0042]の下記箇所により裏付けられています。 (中略) そして、段落[0047]には、カウンティングはもとより前記グループ情報が伝送モード決定(p-t-p or p-t-m) に使用されることができることが記載されています。」と主張している。

請求人の主張を参酌すると、前者の主張では、「グループ情報」は、「UEが選択したサービス(即ち、MBMS)のグループ情報」を意味し、後者の主張では、「特定のグループ、即ち、SRSG(Selective Reception Service Group)」を意味するというものであって、請求人の主張は、「グループ情報」なる記載が複数の異なる技術的な意味に解釈可能であることを示しているに等しいから、その記載が明りょうとはいえないことは明らかである。
してみると、「グループ情報」なる記載を含む「前記移動通信装置から選択されたMBMSと関連したグループ情報に基づいて前記選択されたMBMSが提供される伝送モードを決定する」なる記載は、その記載が示す技術事項が不明りょうな記載であるといえる。

さらに、請求人の主張の内、前者の主張が正しく、後者の主張は誤っていると仮定して、以下、検討する。
請求人の前者の主張のごとく、「グループ情報」を「UEが選択したサービス(即ち、MBMS)のグループ情報」の意味であると仮定した場合、同請求項の「前記ネットワークコントローラが、前記移動通信装置に前記グループ情報を伝送し」なる記載中の「グループ情報」と矛盾する記載となるため、上記の仮定が正しくないことは明らかである。
即ち、同請求項の「前記ネットワークコントローラが、前記移動通信装置に前記グループ情報を伝送し」なる記載を参酌すると、「前記グループ情報」はネットワークコントローラが移動通信装置に伝送する情報となる。
ネットワークコントローラが移動通信装置に伝送する情報について、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面の記載としては、【請求項2】の「前記特定グループを識別する前記情報は、前記特定グループに関連した前記サービスが前記移動通信装置に利用可能であることを前記移動通信装置に示すこと」、【請求項3】の「前記特定グループを識別する情報は、前記移動通信装置に伝送された前記単一メッセージ内の単一ビットである」、及び、明細書の【0037】の「複数のモバイルテレビサービスを特定グループに配列するステップと、単一メッセージで特定グループを識別する情報をネットワークコントローラから移動通信装置に伝送するステップ」なる記載があり、
これらの記載に鑑みると、ネットワークコントローラが移動通信装置に伝送する情報、即ち、「前記グループ情報」は、「前記特定グループに関連した前記サービスが前記移動通信装置に利用可能であることを前記移動通信装置に示す」情報、即ち、「選択的な受信サービスグループ(Selective Reception Service Group:SRSG)」に関する情報であるといえる。
してみると、上記した「UEが選択したサービス(即ち、MBMS)のグループ情報」の意味であるとの仮定は、「前記ネットワークコントローラが、前記移動通信装置に前記グループ情報を伝送し」なる記載中の「グループ情報」の解釈である「選択的な受信サービスグループ(Selective Reception Service Group:SRSG)」に関する情報とは一致せず、その解釈において相矛盾するものとなるから、上記の仮定は正しくないといわざるを得ない。

次に、請求人の主張の内、後者の主張が正しく、前者の主張は誤っていると仮定して、以下、検討する。
請求人の後者の主張のごとく、「グループ情報」を「特定のグループ、即ち、SRSG(Selective Reception Service Group)」の意味であると仮定した場合、補正前の請求項1の「前記ネットワークコントローラが、前記移動通信装置から選択されたMBMSと関連したグループ情報に基づいて前記選択されたMBMSが提供される伝送モードを決定するステップ」なる記載からみて、SRSGが「前記選択されたMBMSが提供される伝送モードの決定」において基づく情報となる。
また、「伝送モードの決定」に関する技術事項を開示する、本願明細書の段落【0047】の「この情報は、そのセルでどのくらいのUEが利用可能なM-TVサービスを必要としているかを決定し、その伝送がp-t-m又はp-t-pとなるか否かをネットワークが決定できるように使用される。」なる記載を参酌すると、「伝送モードの決定」に利用される情報は、「この情報」であり、「この情報」は、「伝送モードの決定」に利用される、即ち、「その伝送がp-t-m又はp-t-pとなるか否かをネットワークが決定できるよう」に利用されるとともに、「そのセルでどのくらいのUEが利用可能なM-TVサービスを必要としているかを決定」する情報でなければならない。
しかしながら、SRSGは選択的受信サービスグループ、即ち、選択して受信し得るMBMSであるから、その情報を基にしても、「そのセルでどのくらいのUEが利用可能なM-TVサービスを必要としているかを決定し」得ないことは明らかであって、本願明細書の段落【0047】の記載と矛盾するものとなる。
してみると、上記の仮定は正しくないといわざるを得ない。

このため、「グループ情報」を、請求人が主張するいずれの意味に解釈したとしても、技術的な矛盾を奏して、正しい技術的な意味に解釈することができないことから、「グループ情報」なる事項は、その記載が示す技術事項が不明りょうな記載であるといえる。

よって、「グループ情報」なる記載は、複数の意味に解釈でき、一意の技術的な意味をとらえることができないとともに、その複数のいずれの解釈においても、正しい技術的な意味は把握することができないことから、不明りょうな記載であるといえ、また、このように不明りょうな記載である「グループ情報」を含む「前記移動通信装置から選択されたMBMSと関連したグループ情報に基づいて前記選択されたMBMSが提供される伝送モードを決定する」なる記載は、不明りょうな記載であるといえる。

次に、補正後の記載は不明りょうさが正され、「その記載本来の意味内容」が明らかにされているかどうかを検討する。

補正後の「前記移動通信装置の個数を周期的に再カウンティングした情報に基づいて前記選択されたMBMSが提供される伝送モードを決定する」なる記載事項は、本願明細書に開示された発明と技術的に対応する特定であるから、「その記載本来の意味内容」を明らかにするものとあるといえる。

さらに、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものかどうかを検討する。

平成24年3月21日付け拒絶理由通知では、理由3として、
「3.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


(1)請求項1には「MBMSと関連したグループ情報」との記載があるが、明細書には、M-TVパッケージ、SRSG、ユーザグループといった複数のグループといえるものが記載されており、その何れを表しているのか特定することができず、またMBMSに関連したグループといえるM-TVパッケージ、SRSG、ユーザグループの相互関係、違いを理解することができず、記載が不明確である。」
と通知されている。

このため、「MBMSと関連したグループ情報」なる記載を含む、「前記移動通信装置から選択されたMBMSと関連したグループ情報に基づいて前記選択されたMBMSが提供される伝送モードを決定する」を補正の対象とする補正事項1は、通知された拒絶の理由に示す事項についてするものであるといえる。

してみると、補正前の記載が明りょうでない記載であり、補正後の記載が不明りょうさが正されていて、「その記載本来の意味内容」が明らかにされているとともに、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてなされたものであるから、本件補正1の補正事項1は、明りょうでない記載の釈明を目的として補正されたものといえる。

(3)まとめ
してみると、補正事項1については、明りょうでない記載の釈明(特許法第17条の2第5項第4号)を目的として補正されたものといえる。

2-2.補正事項2について
補正事項2は、
「前記グループ情報と前記決定された伝送モードに基づいて前記移動通信装置に前記選択されたMBMSを提供する」を、「前記決定された伝送モードに基づいて前記移動通信装置に前記選択されたMBMSを提供する」とする補正(以下、「補正事項2-1」という。)、
「前記グループ情報」を「前記利用可能な複数のMBMS」とする補正(以下、「補正事項2-2」という。)、
「前記移動通信装置に・・・伝送し」を「単一ビットのMBMS変更情報メッセージを通じて前記移動通信装置に指示される」とする補正(以下、「補正事項2-3」という。)、及び、
指示(又は伝送)する主体が「前記ネットワークコントローラ」であることの特定を削除する補正(以下、「補正事項2-4」という。)
の4つの補正事項を含んでいる。

以下、補正事項2-1?2-4について、それぞれ、特許法第17条の2第5項の規定各号の目的に該当するかどうか検討する。

2-2-1.補正事項2-1について
(1)特許請求の範囲の減縮(特許法第17条の2第5項第2号)について
「前記移動通信装置に前記選択されたMBMSを提供する」ことの基づく要素が、「前記グループ情報と前記決定された伝送モード」から「前記決定された伝送モード」となり、基づく要素の数が減っており、発明の実質的に拡張となっていることから、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものには該当しない。

(2)不明りょうな記載の釈明(特許法第17条の2第5項第4号)について
明りょうでない記載の釈明を目的とするためには、補正前の記載が明りょうでない記載であることが必須であるとともに、補正後の記載が不明りょうさが正されていて、「その記載本来の意味内容」が明らかにされていることが必要である。
さらに、明りょうでない記載の釈明は、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限られている。

そこで、補正前の記載が明りょうでない記載であるかどうかを検討する。

補正前の請求項1の「前記グループ情報と前記決定された伝送モードに基づいて前記移動通信装置に前記選択されたMBMSを提供する」なる記載事項では、「前記選択されたMBMS」の「提供」は、「前記グループ情報」と「前記決定された伝送モード」に基づいて行われる。
ここで、該「前記グループ情報」は、前記された「グループ情報」が「前記移動通信装置から選択されたMBMSと関連したグループ情報」であることから、「前記移動通信装置から選択されたMBMSと関連したグループ情報」を意味するものといえる。
そして、「2-1.補正事項1について」の「(2)不明りょうな記載の釈明(特許法第17条の2第5項第4号)について」で検討した如く、「グループ情報」なる記載は、その記載が示す技術事項が不明りょうな記載であるといえる。
してみると、不明りょうな記載である「グループ情報」なる記載を実質的に含む「前記グループ情報と前記決定された伝送モードに基づいて前記移動通信装置に前記選択されたMBMSを提供する」なる記載は、技術的に正確に特定されず、不明りょうな記載であるといえる。

次に、補正後の記載は不明りょうさが正され、「その記載本来の意味内容」が明らかにされているかどうかを検討する。

補正後の請求項1の「前記決定された伝送モードに基づいて前記移動通信装置に前記選択されたMBMSを提供する」なる記載事項は、不明りょうな記載であった「グループ情報」なる記載が削除されているとともに、本願明細書に開示された発明と技術的に対応する、「前記選択されたMBMS」の「提供」を「前記決定された伝送モード」に基づいて行なうことが特定されていることから、「その記載本来の意味内容」を明らかにするものとあるといえる。

拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものかどうかを検討する。

「上記グループ情報」は「前記移動通信装置から選択されたMBMSと関連したグループ情報」を意味していることから、「2-1.補正事項1について」において示した平成24年3月21日付け拒絶理由通知の理由3として通知された拒絶の理由に示す事項についてするものであるといえる。
してみると、補正前の記載が明りょうでない記載であり、補正後の記載が不明りょうさが正されていて、「その記載本来の意味内容」が明らかにされているとともに、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてなされたものであるから、本件補正1の補正事項2-1は、明りょうでない記載の釈明を目的として補正されたものといえる。

(3)まとめ
してみると、補正事項2-1については、明りょうでない記載の釈明(特許法第17条の2第5項第4号)を目的として補正されたものといえる。

2-2-2.補正事項2-2について
(1)特許請求の範囲の減縮(特許法第17条の2第5項第2号)について
補正前の「前記グループ情報」なる記載は、「2-1.補正事項1について」の「(2)不明りょうな記載の釈明(特許法第17条の2第5項第4号)について」で検討した如く技術事項が不明りょうな「グループ情報」なる記載を含んでいる。
「前記グループ情報」なる記載が意味する技術概念が不明りょうであり、補正後の「前記利用可能な複数のMBMS」が補正前の「前記グループ情報」の技術概念的に下位にあるかどうかは特定できないために、補正事項2-2が技術的に下位概念化する補正であるとはいない。
また、発明特定事項を直列的に付加したものでもないことは明らかであるいえる。
してみると、補正事項2-2は、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものには該当しない。

(2)不明りょうな記載の釈明(特許法第17条の2第5項第4号)について
補正前の記載が明りょうでない記載であるかどうかを検討する。

「2-1.補正事項1について」の「(2)不明りょうな記載の釈明(特許法第17条の2第5項第4号)について」で検討した如く、補正前の「前記グループ情報」なる記載は、技術事項が不明りょうな「グループ情報」なる記載を含んでおり、技術的に正確に特定されず、不明りょうな記載であるといえる。

次に、補正後の記載は不明りょうさが正され、「その記載本来の意味内容」が明らかにされているかどうかを検討する。

補正後の「前記利用可能な複数のMBMS」は、前記された「利用可能な複数のMBMS」が「利用可能な複数のMBMSのうちで前記移動通信装置が選択したMBMS」との記載における「利用可能な複数のMBMS」であるから、「前記移動通信装置が選択したMBMS」をうちに含むものであるといえる。
このため、補正後の請求項1の「前記利用可能な複数のMBMSは、(中略)前記移動通信装置に指示される」なる記載で特定される、「前記利用可能な複数のMBMS」は、「前記移動通信装置が選択したMBMS」をうちに含む「利用可能な複数のMBMS」であるといえる。
これに対して、本願明細書の段落【0042】や【0047】など、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面のいずれの記載を参酌しても、「前記特定グループに関連した前記サービスが前記移動通信装置に利用可能であること」を示す情報を伝送することは開示されているものの、「前記移動通信装置が選択したMBMS」をうちに含む「利用可能な複数のMBMS」を伝送することは開示されていない。
してみると、上記の補正後の請求項1の記載事項についても、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面には開示されていないことから、補正事項2-2に関する補正後の「前記利用可能な複数のMBMS」との記載は、不明りょうさを正しておらず、「その記載本来の意味内容」が明らかにされているとはいえない。
このため、補正事項2-2は、不明りょうな記載の釈明を目的とする補正であるとはいえない。

(3)その他の目的(特許法第17条の2第5項第1号、第3号)について
請求項の削除を目的とするためには、その前提として、補正の後の請求項と同一の請求項が、補正の前にもなければならないが、補正の後の請求項1の発明特定事項、を含む請求項に係る発明が、補正の前にはない。
さらに、誤記の訂正も該当しないことは明らかである。
してみると、補正事項2-2は、請求項の削除、または、誤記の訂正を目的として補正されたものでないことは明らかである。

(4)まとめ
このため、補正事項2-2は、特許法第17条の2第5項各号の規定の何れを目的とする補正であるとはいえない。

2-2-3.補正事項2-3について
(1)特許請求の範囲の減縮(特許法第17条の2第5項第2号)について
「メッセージを通じて前記移動通信装置に指示される」ことは、「前記移動通信装置に伝送」されることに他ならないことから、実質的に、「単一ビットのMBMS変更情報メッセージを通じて」なる発明特定事項を直列的に付加する補正であることから、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものに該当し、特許請求の範囲の減縮(特許法第17条の2第5項第2号)を目的として補正されたものといえる。

(2)まとめ
このため、補正事項2-3は、特許請求の範囲の減縮(特許法第17条の2第5項第2号)を目的とする補正であるとはいえる。

2-2-4.補正事項2-4について
(1)特許請求の範囲の減縮(特許法第17条の2第5項第2号)について
指示(又は伝送)する主体を削除しており、実質的に発明の拡張となっているいることから、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものに該当しないことは明らかである。

(2)不明りょうな記載の釈明(特許法第17条の2第5項第4号)について
補正前に特定されていた指示(又は伝送)する主体が、ネットワークワークコントローラであるということは、記載として不明りょうさを有していないとともに、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面にはそれを裏付けとなる開示も記載されている。
してみると、補正前の記載が明りょうでない記載であるとはいえない。

このため、補正事項2-4は、不明りょうな記載の釈明を目的とする補正であるとはいえない。

(3)その他の目的(特許法第17条の2第5項第1号、第3号)について
指示(又は伝送)する主体を削除する補正が、請求項の削除或いは誤記の訂正を目的とする補正といえないことは明らかである。

(4)まとめ
このため、補正事項2-4は、特許法第17条の2第5項各号の規定の何れを目的とする補正であるとはいえない。

2-3.補足検討
上記「2-2.補正事項2について」では、補正事項2を、
「前記グループ情報と前記決定された伝送モードに基づいて前記移動通信装置に前記選択されたMBMSを提供する」を、「前記決定された伝送モードに基づいて前記移動通信装置に前記選択されたMBMSを提供する」とする補正(以下、「補正事項2-1」という。)、
「前記グループ情報」を「前記利用可能な複数のMBMS」とする補正(以下、「補正事項2-2」という。)、
「前記移動通信装置に・・・伝送し」を「単一ビットのMBMS変更情報メッセージを通じて前記移動通信装置に指示される」とする補正(以下、「補正事項2-3」という。)、及び、
指示(又は伝送)する主体が「前記ネットワークコントローラ」であることの特定を削除する補正(以下、「補正事項2-4」という。)
の補正事項を更に含んでいるとし、検討を行った。

しかしながら、補正事項2については、
「前記グループ情報と前記決定された伝送モードに基づいて前記移動通信装置に前記選択されたMBMSを提供する」を、「前記決定された伝送モードに基づいて前記移動通信装置に前記選択されたMBMSを提供する」とする補正(以下、「補正事項2-1」という。)、
「前記移動通信装置に前記グループ情報を伝送し、」なる発明特定事項を削除する補正(以下、「補正事項2-2’」という。)、
「前記利用可能な複数のMBMSは、単一ビットのMBMS変更情報メッセージを通じて前記移動通信装置に指示される」なる発明特定事項を追加する補正(以下、「補正事項2-3’」という。)
の3つの補正事項を含んでいるともいえるため、このように細分化した場合についても、特許法第17条の2第5項各号の規定の何れを目的とする補正であるといえるかどうかを補足的に検討する。

2-3-1.補正事項2-1について
(1)特許請求の範囲の減縮(特許法第17条の2第5項第2号)について
「2-2-1.補正事項2-1について」の「(1)特許請求の範囲の減縮(特許法第17条の2第5項第2号)について」で検討した如く、「前記移動通信装置に前記選択されたMBMSを提供する」ことの基づく要素が、「前記グループ情報と前記決定された伝送モード」から「前記決定された伝送モード」と、基づく要素の数が減っており、発明の実質的に拡張となっていることから、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものには該当しない。

(2)不明りょうな記載の釈明(特許法第17条の2第5項第4号)について
「2-2-1.補正事項2-1について」の「(2)不明りょうな記載の釈明(特許法第17条の2第5項第4号)について」で検討した如く、補正前の記載は、不明りょうな記載である「グループ情報」なる記載を実質的に含んでおり、技術的に正確に特定されず、不明りょうな記載であるといえる。補正後の記載は、不明りょうな記載であった「グループ情報」なる記載が削除されているとともに、本願明細書に開示された発明と技術的に対応する、「前記選択されたMBMS」の「提供」を「前記決定された伝送モード」に基づいて行なうことが特定されていることから、「その記載本来の意味内容」を明らかにするものとあるといえる。さらに、「上記グループ情報」は「前記移動通信装置から選択されたMBMSと関連したグループ情報」を意味していることから、「2-1.補正事項1について」において示した平成24年3月21日付け拒絶理由通知の理由3として通知された拒絶の理由に示す事項についてするものであるといえる。
してみると、補正前の記載が明りょうでない記載であり、補正後の記載が不明りょうさが正されていて、「その記載本来の意味内容」が明らかにされているとともに、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてなされたものであるから、本件補正1の補正事項2-1は、明りょうでない記載の釈明を目的として補正されたものといえる。

(3)まとめ
してみると、補正事項2-1については、明りょうでない記載の釈明(特許法第17条の2第5項第4号)を目的として補正されたものといえる。

2-3-2.補正事項2-2’について
(1)特許請求の範囲の減縮(特許法第17条の2第5項第2号)について
「前記移動通信装置に前記グループ情報を伝送し、」なる発明特定事項が削除されることで、発明の実質的に拡張となっていることから、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものには該当しない。

(2)不明りょうな記載の釈明(特許法第17条の2第5項第4号)について
補正前の記載は、不明りょうな記載である「グループ情報」なる記載を実質的に含んでおり、技術的に正確に特定されず、不明りょうな記載であるといえる。補正後の記載は、不明りょうな記載であった「グループ情報」なる記載が削除されているため、不明りょうさは正されているものの、記載自体がなくなっているため、「その記載本来の意味内容」を明らかにすることに該当するとはいえない。
このため、補正事項2-2’は不明りょうな記載の釈明を目的とする補正であるとはいえない。

(3)その他の目的(特許法第17条の2第5項第1号、第3号)について
請求項の削除、または、誤記の訂正に該当しないことは明らかである。
してみると、補正事項2-2’は、請求項の削除、または、誤記の訂正を目的として補正されたものとはいえない。

(4)まとめ
このため、補正事項2-2’は、特許法第17条の2第5項各号の規定の何れを目的とする補正であるとはいえない。

2-3-3.補正事項2-3’について
(1)特許請求の範囲の減縮(特許法第17条の2第5項第2号)について
「利用可能な複数のMBMS」なる発明特定事項に対して、「単一ビットのMBMS変更情報メッセージを通じて前記移動通信装置に指示される」なる特定事項を直列的に付加する補正であることから、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものに該当し、特許請求の範囲の減縮(特許法第17条の2第5項第2号)を目的として補正されたものといえる。

(2)まとめ
このため、補正事項2-3’は、特許請求の範囲の減縮(特許法第17条の2第5項第2号)を目的とする補正であるとはいえる。

2-4.むすび
補正事項2-2及び2-4が特許法第17条の2第5項各号の規定の何れを目的とする補正であるとはいえない。
また、補正事項2を補正事項2-1、2-2’、2-3’に細分化した場合であっても、補正事項2-2’が特許法第17条の2第5項各号の規定の何れを目的とする補正であるとはいえない。

したがって、本件補正1は、特許法第17条の2第5項の規定に違反する。


3.新規事項の追加(特許法第17条の2第3項)
上記「2.補正の目的」で検討したごとく、本件補正1は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるが、補正事項2が新規事項の追加(特許法第17条の2第3項の違反)に該当するかどうかについて、予備的に検討する。

上記「2.補正の目的」で検討した補正事項2は、「前記利用可能な複数のMBMSは、単一ビットのMBMS変更情報メッセージを通じて前記移動通信装置に指示される」なる記載を含んでいる。
そして、該記載中の「単一ビットの」なる事項が修飾する対象は、「MBMS変更情報メッセージ」の他にないため、該記載では、MBMS変更メッセージは単一ビットであることを特定していると解さざるを得ない。

これに対して、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面における「MBMS変更情報メッセージ」に関する記載としては、【請求項3】の「 前記特定グループを識別する情報は、前記移動通信装置に伝送された前記単一メッセージ内の単一ビットである」、【請求項5】の「前記単一ビットは、MBMSサービス変更情報メッセージに伝送される」、及び、段落【0054】の「本発明は、‘SRSGカウンティング’を示す‘MBMSサービス変更情報’メッセージ内に単一ビットを導入する。」なる記載のみであって、「MBMS変更情報メッセージ」が「単一ビット」であることは記載されていない。

してみると、補正事項2は、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面の記載の範囲内においてなされた補正であるとはいえない。

したがって、本件補正1は、特許法第17条の2第3項の規定に違反する。


4まとめ
よって、本件補正1は、特許法第17条の2第5項、及び、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3.本願発明について
1.本願発明
平成25年2月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成23年12月5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである(下線は、請求人が付与した。)。

「【請求項1】
MBMSをサポートする無線通信システムにおいて、ネットワークコントローラが移動通信装置にMBMSを提供するための方法であって、
前記ネットワークコントローラが、利用可能な複数のMBMSのうちで前記移動通信装置が選択したMBMSを確認するステップと、
前記ネットワークコントローラが、前記移動通信装置から選択されたMBMSと関連したグループ情報に基づいて前記選択されたMBMSが提供される伝送モードを決定するステップと、
前記ネットワークコントローラが、前記移動通信装置に前記グループ情報を伝送し、前記グループ情報と前記決定された伝送モードに基づいて前記移動通信装置に前記選択されたMBMSを提供するステップと、
を有することを特徴とする方法。」


2.平成23年12月5日付け手続補正書による補正の内容
平成23年12月5日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正2」という。)は、特許請求の範囲の請求項1において、
「前記ネットワークコントローラが、前記移動通信装置から選択されたMBMSと関連したグループ情報に基づいて前記選択されたMBMSが提供される伝送モードを決定するステップ」を追加する(以下、「補正事項3」という。)
補正を含んでいる。


3.拒絶査定の概要
平成24年9月28日付け拒絶査定は、平成24年3月21日付け拒絶理由通知書(以下、「第2拒絶理由通知」という。)に記載した理由1、2によって、本願を拒絶するというものである。
そして、理由1に関する当該拒絶査定の概要は、次のとおりである。

「出願人は「前記移動通信装置から選択されたMBMSと関連したグループ情報に基づいて前記選択されたMBMSが提供される伝送モードを決定するステップ」という請求項の記載に対し、意見書において「段落[0047]には、カウンティングはもとより前記グループ情報が伝送モード決定(p-t-p or p-t-m) に使用されることができることが記載されています。」と主張している。
この点について検討する。段落【0047】には「選択されたSRSGセットサービスに関する最新情報を維持するよりも、UTRANは、例えば所定の区間で周期的な再カウンティングを遂行する。この情報は、そのセルでどのくらいのUEが利用可能なM-TVサービスを必要としているかを決定し、その伝送がp-t-m又はp-t-pとなるか否かをネットワークが決定できるように使用される。」と記載されているが、以下に説明するように、当該記載がどのような技術的事項を表しているのか明確でないため、当該記載から、請求項に1記載のような「前記移動通信装置から選択されたMBMSと関連したグループ情報に基づいて前記選択されたMBMSが提供される伝送モードを決定する」点は明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてなされたものとはいえない。

まず、段落【0047】において、SRSGセットサービスに関する最新情報を「維持する」という記載の技術的意味が不明である。
また、同段落【0047】において、第二文における「この情報」の記載が、選択されたSRSGセットサービスに関する最新情報を表しているのか、再カウンティングを遂行することによって得られた情報を表しているのか、それ以外の何らかの情報を表しているのか、特定することができない。出願人は、「この情報」が「グループ情報」である旨主張するものであるが、「この情報は、そのセルでどのくらいのUEが利用可能なM-TVサービスを必要としているかを決定し」との記載から、「この情報」とは、UEの数に関連する情報であると類推されるものである点(逆に、SRSGセットサービスに関する情報が、UEの数に関連するものと読み取れる記載がない点)、SRSGセットサービスに関する最新情報を維持すること「よりも」、周期的な再カウンティングを遂行すると記載されている点を考慮すれば、上記段落【0047】の記載は、グループ情報に基づくのではなく、再カウンティングした情報に基づいて、p-t-m又はp-t-pのいずれかの伝送モードを決定することを表すものと考えられる。
よって、請求項1に記載された「「前記移動通信装置から選択されたMBMSと関連したグループ情報に基づいて前記選択されたMBMSが提供される伝送モードを決定するステップ」という記載を裏付ける十分な記載は、段落【0047】には存在せず、請求項1に係る発明及びこれに従属する請求項2、3に係る発明は、明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてなされたものとはいえない。」

そして、第2拒絶理由通知に記載された理由1の概要は、次のとおりである。

「1.平成23年12月 5日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


当該手続補正によりなされた請求項1の「前記移動通信装置から選択されたMBMSと関連したグループ情報に基づいて前記選択されたMBMSが提供される伝送モードを決定するステップ」という記載は、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には何ら記載されておらず、また当初明細書等に記載されていた事項からみて自明な事項であるとは認められない(意見書において「2つ目のステップは、段落[0047]の記載に基づきます。」と説明されているが、段落【0047】では「選択されたSRSGセットサービスに関する最新情報を維持するよりも、UTRANは、例えば所定の区間で周期的な再カウンティングを遂行する。この情報は、そのセルでどのくらいのUEが利用可能なM-TVサービスを必要としているかを決定し、その伝送がp-t-m又はp-t-pとなるか否かをネットワークが決定できるように使用される。」と記載されているのみであって、移動通信装置から選択されたMBMSと関連したグループ情報に基づいて、伝送モードを決定することは記載されていない。)
また、当該手続補正によりなされた請求項1の「移動通信装置に前記グループ情報を伝送」するステップという記載は、当初明細書等には何ら記載されておらず、また当初明細書等に記載されていた事項からみて自明な事項であるとは認められない(意見書において「三番目のステップは、前記2つ目のステップで決定された伝送モードによって最初のステップで移動通信装置が選択したMBMSを提供することであるから、発明の詳細な説明により当然裏付けられています。」と説明している。確かに、決定された伝送モードで、選択されたMBMSを提供することは自明のことと認められるが、MBMSを提供するだけでなく、移動通信装置にグループ情報を伝送する点については何ら記載されていない。)」


4.当審の判断
補正事項3の「前記ネットワークコントローラが、前記移動通信装置から選択されたMBMSと関連したグループ情報に基づいて前記選択されたMBMSが提供される伝送モードを決定するステップ」なる事項が、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であるかどうか以下で検討する。

願書に添付された明細書又図面における「伝送モードを決定する」なる事項についての開示は、本願明細書の段落【0047】に以下の記載である。
「【0047】
選択されたSRSGセットサービスに関する最新情報を維持するよりも、UTRANは、例えば所定の区間で周期的な再カウンティングを遂行する。この情報は、そのセルでどのくらいのUEが利用可能なM-TVサービスを必要としているかを決定し、その伝送がp-t-m又はp-t-pとなるか否かをネットワークが決定できるように使用される。このような手法で、UEが選択されたSRSGセットサービスを変える度に、UEがUTRANに通知することが防止される。」

該記載に基づくと、「この情報」は、「そのセルでどのくらいのUEが利用可能なM-TVサービスを必要としているか決定し」得る情報であるとともに、「その伝送がp-t-m又はp-t-pとなるか否かをネットワークが決定できるように使用される」情報であることになる。
そして、段落【0047】の記載の文脈上、「この情報」は、「選択されたSRSGセットサービスに関する最新情報」又は「所定の区間で周期的な再カウンティングを遂行する」ことで得られる情報のいずれかであると解するのが妥当である。
ここで、「選択されたSRSGセットサービスに関する最新情報」における「選択されたSRSGセットサービス」は、本願明細書の段落【0042】の「本発明は、選択的な受信サービスグループ(Selective Reception Service Group:SRSG)を提供する。本発明のSRSGにおいて、UEは、UEが加入したM-TVパッケージのような関連サービスのグループと関係のある一つのSRSGのみを有する。また、UEは、他のサービス領域と関連した他のSRSGを有する。ここで、UEに関連したSRSGに含まれたサービスのグループは、UEのSRSGセットと称する。UEは、SRSGセットからせいぜい一つのサービスを受信し、そのサービスはUEによって選択され、ここでは、選択されたSRSGセットサービスと呼ばれる。」なる記載を参酌すると、「選択されたSRSGセットサービス」は、UEがSRSGセットから選択したサービスであり、「SRSGセット」は、UEに関連したSRSGに含まれたサービスのグループであるから、「選択されたSRSGセットサービスに関する最新情報」は、「移動通信装置に関連したSRSGに含まれたサービスのグループから該移動通信装置が選択したサービスに関する最新情報」を意味するものと解される。
また、「所定の区間で周期的な再カウンティングを遂行する」ことで得られる情報は、本願明細書の段落【0038】の「本発明の他の態様によれば、ネットワークコントローラによって制御される遠隔通信ネットワークの特定の伝送領域で特定のモバイルテレビ伝送を受信することが可能な複数の移動通信装置をカウントする方法であって、ネットワークコントローラによって、移動通信装置の個数をカウンティングするステップと、ネットワークコントローラによって、規則的な間隔で移動通信装置の個数を再カウンティングするステップとを有することを特徴とする。」の記載を参酌すると、特定のモバイルテレビ伝送を受信することが可能な複数の移動通信装置の個数を意味するものと解される。

本願明細書の段落【0047】の「この情報」を、「選択されたSRSGセットサービス」、即ち、「移動通信装置に関連したSRSGに含まれたサービスのグループから該移動通信装置が選択したサービスに関する最新情報」を意味するものと解した場合、補正事項3の「グループ情報」は、移動通信装置が選択したサービスに関する最新情報となる。
移動通信装置が選択したサービスを把握することで、そのサービスがどのくらいの移動通信装置により選択され、必要とされているかを把握することができるため、「そのセルでどのくらいのUEが利用可能なM-TVサービスを必要としているか決定し」得る情報であるといえるとともに、そのサービスが選択する移動体通信装置の数を把握することができるため、その数に応じて、そのサービスの伝送をp-t-m伝送とするか、p-t-p伝送とするかの決定が可能であり、「その伝送がp-t-m又はp-t-pとなるか否かをネットワークが決定できるように使用される」情報であるといえる。
請求項1には、補正事項3の記載事項の他、「前記ネットワークコントローラが、前記移動通信装置に前記グループ情報を伝送し」なる事項も記載されており、該記載中の「グループ情報」と同一の技術的意味に補正事項3の「グループ情報」を解釈でなければならない。
しかしながら、ネットワークコントローラが移動通信装置に伝送する情報について、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面の記載としては、【請求項2】の「前記特定グループを識別する前記情報は、前記特定グループに関連した前記サービスが前記移動通信装置に利用可能であることを前記移動通信装置に示すこと」、【請求項3】の「前記特定グループを識別する情報は、前記移動通信装置に伝送された前記単一メッセージ内の単一ビットである」、及び、明細書の【0037】の「複数のモバイルテレビサービスを特定グループに配列するステップと、単一メッセージで特定グループを識別する情報をネットワークコントローラから移動通信装置に伝送するステップ」なる記載があり、これらの記載に鑑みると、ネットワークコントローラが移動通信装置に伝送する情報、即ち、「前記グループ情報」は、「前記特定グループに関連した前記サービスが前記移動通信装置に利用可能であることを前記移動通信装置に示す」情報、即ち、「選択的な受信サービスグループ(Selective Reception Service Group:SRSG)」に関する情報であるといえる。
してみると、補正事項3の「グループ情報」を、移動通信装置が選択したサービスに関する情報の意味であると仮定した場合には、「前記ネットワークコントローラが、前記移動通信装置に前記グループ情報を伝送し」なる記載中の「グループ情報」の解釈である「選択的な受信サービスグループ(Selective Reception Service Group:SRSG)」に関する情報とは相違する解釈をせざるを得なくなり、上記の仮定は正しくないといわざるを得ない。

そして、本願明細書には、上記記載以外に、移動通信装置が選択したサービスに関する情報を、ネットワークコントローラから移動通信装置に伝送する発明は開示されていない。
このため、「前記ネットワークコントローラが、前記移動通信装置に前記グループ情報を伝送し」なる事項における「グループ情報」を移動通信装置が選択したサービスに関する情報と解釈し得ない。
してみると、補正事項3の「グループ情報」を移動通信装置が選択し受信するサービスに関する情報を解釈した場合には、同一の請求項中の「前記ネットワークコントローラが、前記移動通信装置に前記グループ情報を伝送し」なる記載における「グループ情報」と同一の技術的意味に解釈し得なくなることから、上記解釈は誤りであって、補正事項3の「グループ情報」を移動通信装置が選択し受信するサービスに関する情報との意味に解し得ないといわざるを得ない。

次に、本願明細書の段落【0047】の「この情報」を、「所定の区間で周期的な再カウンティングを遂行する」ことで得られる情報、即ち、特定のモバイルテレビ伝送を受信することが可能な複数の移動通信装置の個数を意味するものと解した場合、補正事項3の「グループ情報」は、特定のモバイルテレビ伝送を受信することが可能な複数の移動通信装置の個数の情報となる。
特定のモバイルテレビ伝送を受信することが可能な複数の移動通信装置の個数の情報は、特定のモバイルテレビ伝送を選択して受信する複数の移動通信装置の個数を示す情報ではないことから、「そのセルでどのくらいのUEが利用可能なM-TVサービスを必要としているかを決定し」得る情報にも、「その伝送がp-t-m又はp-t-pとなるか否かをネットワークが決定できるように使用される」情報にも該当しない。
してみると、補正事項3の「グループ情報」を「所定の区間で周期的な再カウンティングを遂行する」ことで得られる情報との意味に解し得ないといわざるを得ない。

このため、補正事項3の「前記ネットワークコントローラが、前記移動通信装置から選択されたMBMSと関連したグループ情報に基づいて前記選択されたMBMSが提供される伝送モードを決定するステップ」は、本願明細書の段落【0047】を、補正の根拠として、その技術事項を正しく把握することができない。
また、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面における他の記載を補正の根拠としても、補正事項3については、その技術事項を正しく把握することができない。
よって、補正事項3の「前記ネットワークコントローラが、前記移動通信装置から選択されたMBMSと関連したグループ情報に基づいて前記選択されたMBMSが提供される伝送モードを決定するステップ」なる記載事項は、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項であるとはいえない。

してみると、本件補正2は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


5.請求人の主張
5-1.平成23年12月5日付け意見書における主張
請求人は、平成23年12月5日付け意見書において、以下のごとく、主張している。

「1.補正について
請求項1に対し、本願特徴を明確にする補正をいたしました。
請求項2?9を削除するとともに、新たな従属請求項2、3を追加いたしました。
以上の補正は、本願明細書段落[0042]、[0047]などの記載に基づきます。

なお、上記請求項1に対する補正は、発明の特別な技術的特徴を変更する補正ではありません。
また、上記補正に関する内容は、全て明細書中に記載されていますので、新規事項を追加するものではありません。

(中略)

以下(2)-(4)において補正の根拠につきさらに詳述します。

(中略)

(4)上記補正後の請求項1における「グループ情報」について
請求項1においての「グループ情報」は、UEが選択したサービス(即ち、MBMS)のグループ情報を意味し、これは上記の段落[0042]に該当します。ネットワークは前記UEが選択したサービスのグループ情報を通じてどのくらいのUEが該当サービスを希望するかをカウンティングして伝送モードを決定するようになります。([0047]参照)」

5-2.平成24年6月27日付け意見書における主張
請求人は、平成24年6月27日付け意見書において、以下のごとく、主張している。

「2.[理由1]について
現在の請求項1は、下記のようです。
[請求項1]
MBMSをサポートする無線通信システムにおいて、ネットワークコントローラが移動通信装置にMBMSを提供するための方法であって、
前記ネットワークコントローラが、利用可能な複数のMBMSのうちで前記移動通信装置が選択したMBMSを確認するステップと、
前記ネットワークコントローラが、前記移動通信装置から選択されたMBMSと関連したグループ情報に基づいて前記選択されたMBMSが提供される伝送モードを決定するステップと、
前記ネットワークコントローラが、前記移動通信装置に前記グループ情報を伝送し、前記グループ情報と前記決定された伝送モードに基づいて前記移動通信装置に前記選択されたMBMSを提供するステップと、
を有することを特徴とする方法。

先ず、発明の詳細の説明の段落[0024]には、下記のようにM-TVパッケージがMBMSを含むことを開示しています。
[0024]
モバイルTV(Mobile TV:以下、“M-TV”と称する)は、一つ又はそれ以上の、典型的には5乃至10個のM-TVパッケージを含むオファリング(offering)を提供し、各々は、例えば5又は6個の複数のMBMSサービスを含む。・・・

そして、段落[0037]には、下記のようにモバイルテレビサービス(mobile television service;即ち、M-TV)に関連した特定グループ(specified group)を示す情報がRNCから端末(UE)に伝送される特徴が開示されています。
[0037]
上記のような目的を達成するために、本発明の一態様によれば、遠隔通信ネットワークにおいてネットワークコントローラから移動通信装置に利用可能なモバイルテレビサービスに関連した情報を提供するための方法であって、複数のモバイルテレビサービスを特定グループに配列するステップと、単一メッセージで特定グループを識別する情報をネットワークコントローラから移動通信装置に伝送するステップとを有することを特徴とする。

そして、段落[0042]には、「グループ情報」は特定のグループ、即ち、SRSG(Selective Reception Service Group)を示し、前記グループ情報が、移動通信装置(UE)が加入したM-TVパッケージ(即ち、移動通信装置が選択したMBMS)と関連したサービスグループであることは、段落[0042]の下記箇所により裏付けられています。
[0042]
本発明は、選択的な受信サービスグループ(Selective Reception Service Group:SRSG)を提供する。本発明のSRSGにおいて、UEは、UEが加入したM-TVパッケージのような関連サービスのグループと関係のある一つのSRSGのみを有する。また、UEは、他のサービス領域と関連した他のSRSGを有する。ここで、UEに関連したSRSGに含まれたサービスのグループは、UEのSRSGセットと称する。UEは、SRSGセットからせいぜい一つのサービスを受信し、そのサービスはUEによって選択され、ここでは、選択されたSRSGセットサービスと呼ばれる。・・・

そして、段落[0047]には、カウンティングはもとより前記グループ情報が伝送モード決定(p-t-p or p-t-m) に使用されることができることが記載されています。
[0047]
選択されたSRSGセットサービスに関する最新情報を維持するよりも、UTRANは、例えば所定の区間で周期的な再カウンティングを遂行する。この情報は、そのセルでどのくらいのUEが利用可能なM-TVサービスを必要としているかを決定し、その伝送がp-t-m又はp-t-pとなるか否かをネットワークが決定できるように使用される。このような手法で、UEが選択されたSRSGセットサービスを変える度に、UEがUTRANに通知することが防止される。

以上説明したように、上記詳細な説明の記載から、請求項1は、明細書の詳細な説明の記載により支持されていることが分かります。」


6.請求人の主張に対する当審の判断
6-1.平成23年12月5日付け意見書の主張に対する当審の判断
上記意見書において、請求人は、「請求項1においての「グループ情報」は、UEが選択したサービス(即ち、MBMS)のグループ情報を意味」するとした上で、「上記補正に関する内容は、全て明細書中に記載されていますので、新規事項を追加するものではありません。」と主張している。

しかしながら、「第2.平成25年2月12日付けの手続補正書による補正についての補正却下の決定」、「2.補正の目的」の「2-1.補正事項1について」、「(2)不明りょうな記載の釈明(特許法第17条の2第5項第4号)について」で検討したごとく、「グループ情報」を「UEが選択したサービス(即ち、MBMS)のグループ情報」の意味であると仮定した場合、同請求項の「前記ネットワークコントローラが、前記移動通信装置に前記グループ情報を伝送し」なる記載中の「グループ情報」と矛盾する記載となるため、上記の仮定が正しくないことは明らかである。

してみると、「請求項1においての「グループ情報」は、UEが選択したサービス(即ち、MBMS)のグループ情報を意味」することを前提とした「上記補正に関する内容は、全て明細書中に記載されていますので、新規事項を追加するものではありません。」との主張は失当である。

6-2.平成24年6月27日付け意見書の主張に対する当審の判断
上記意見書において、請求人は、「「グループ情報」は特定のグループ、即ち、SRSG(Selective Reception Service Group)を示し、前記グループ情報が、移動通信装置(UE)が加入したM-TVパッケージ(即ち、移動通信装置が選択したMBMS)と関連したサービスグループであることは、段落[0042]の下記箇所により裏付けられています。」とした上で、「上記詳細な説明の記載から、請求項1は、明細書の詳細な説明の記載により支持されていることが分かります。」と主張している。

しかしながら、「第2.平成25年2月12日付けの手続補正書による補正についての補正却下の決定」、「2.補正の目的」の「2-1.補正事項1について」、「(2)不明りょうな記載の釈明(特許法第17条の2第5項第4号)について」で検討したごとく、「グループ情報」を「特定のグループ、即ち、SRSG(Selective Reception Service Group)」の意味であると仮定した場合、補正前の請求項1の「前記ネットワークコントローラが、前記移動通信装置から選択されたMBMSと関連したグループ情報に基づいて前記選択されたMBMSが提供される伝送モードを決定するステップ」なる記載からみて、SRSGが「前記選択されたMBMSが提供される伝送モードの決定」において基づく情報となる。
また、「伝送モードの決定」に関する技術事項を開示する、本願明細書の段落【0047】の「この情報は、そのセルでどのくらいのUEが利用可能なM-TVサービスを必要としているかを決定し、その伝送がp-t-m又はp-t-pとなるか否かをネットワークが決定できるように使用される。」なる記載を参酌すると、「伝送モードの決定」に利用される情報は、「この情報」であり、「この情報」は、「伝送モードの決定」に利用される、即ち、「その伝送がp-t-m又はp-t-pとなるか否かをネットワークが決定できるよう」に利用されるとともに、「そのセルでどのくらいのUEが利用可能なM-TVサービスを必要としているかを決定」する情報でなければならない。
しかしながら、SRSGは選択的受信サービスグループ、即ち、選択して受信し得るMBMSであるから、その情報を基にしても、「そのセルでどのくらいのUEが利用可能なM-TVサービスを必要としているかを決定し」得ないことは明らかであって、本願明細書の段落【0047】の記載と矛盾するものとなり、このような意味に解し得ないことは明らかである。

してみると、「「グループ情報」は特定のグループ、即ち、SRSG(Selective Reception Service Group)を示し、前記グループ情報が、移動通信装置(UE)が加入したM-TVパッケージ(即ち、移動通信装置が選択したMBMS)と関連したサービスグループであることは、段落[0042]の下記箇所により裏付けられてい」ることを前提として、「上記詳細な説明の記載から、請求項1は、明細書の詳細な説明の記載により支持されていることが分かります。」との主張は失当である。

よって、平成23年12月5日付け意見書、及び、平成24年6月27日付け意見書における請求人の主張は採用することはできない。


7.まとめ
以上のとおりであるから、平成23年12月5日付け意見書、及び、平成24年6月27日付け意見書の記載をみても、本件補正2は、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面の記載の範囲内で行われた補正であるということはできない。



第4.むすび
以上のとおり、平成23年12月5日付けでした手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

したがって、他の拒絶の理由を検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり、審決する。
 
審理終結日 2013-12-12 
結審通知日 2013-12-17 
審決日 2014-01-07 
出願番号 特願2009-513067(P2009-513067)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 574- Z (H04W)
P 1 8・ 572- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 廣川 浩  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 佐藤 聡史
吉田 隆之
発明の名称 MBMSにおけるモバイルテレビ情報の提供方法  
代理人 実広 信哉  
代理人 渡邊 隆  

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