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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1288062
審判番号 不服2011-22724  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-21 
確定日 2014-05-21 
事件の表示 特願2004-535791「白血病の処置のためのa)N-{5-[4-(4-メチル-ピペラジノ-メチル)-ベンゾイルアミド]-2-メチルフェニル}-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミンおよびb)ヒストンデアセチラーゼインヒビターの組合せ剤」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月25日国際公開、WO2004/024160、平成18年 1月12日国内公表、特表2006-501267〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2003年 9月10日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2002年 9月13日及び同年同月18日、アメリカ合衆国(US))を国際出願日とする出願であって、以降の手続の経緯は、以下のとおりのものである。

平成18年 9月 8日 手続補正
平成22年 1月18日付け 拒絶理由通知
平成22年 4月26日 意見・手続補正
平成23年 1月25日付け 拒絶理由通知
平成23年 5月30日 意見・手続補正
平成23年 6月17日付け 拒絶査定
平成23年10月21日 審判請求
平成23年12月 7日 手続補正(審判請求)

第2 本願発明
この出願の発明は、平成23年 5月30日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、下記のとおりのものである。
「活性成分として、(a)式I

で示されるN-{5-[4-(4-メチル-ピペラジノ-メチル)-ベンゾイルアミド]-2-メチルフェニル}-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジンまたは医薬上許容されるその塩および(b)遊離の形態またはその医薬上許容される塩の形態の少なくとも1つのヒストンデアセチラーゼインヒビター、および所望により少なくとも1つの医薬上許容される担体を含んでなる、白血病の処置における、同時的、個別的または逐次的使用のための組合せ剤であって、活性成分(b)が酪酸ナトリウム(SB)、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、式II

で示される化合物もしくは医薬上許容されるその塩および式III

で示される化合物もしくは医薬上許容されるその塩からなる群から選択される、組合せ剤。」
なお、上記式Iの化合物名は、式Iの化学構造式及び発明の名称の記載からみて、「N-{5-[4-(4-メチル-ピペラジノ-メチル)-ベンゾイルアミド]-2-メチルフェニル}-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン」の誤記と認める。
上記請求項1に記載された事項により特定される発明を、「本願発明」という。

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、この出願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、また、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許法第36条6項に規定する要件を満たしていないという理由を含むものである。

第4 当審の判断
当審は、原査定のとおり、この出願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、また、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許法第36条6項に規定する要件を満たしていないと判断する。
その理由を以下に述べる。

1 発明の詳細な説明の記載
本願発明に対し、平成18年 9月 8日付けの手続補正書及び平成23年 5月30日付けの手続補正書により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
ア「【0003】近年、CMLの処置は、化合物I、すなわちBcr/Abl、c-Kit、PDGFおよび他のキナーゼを阻害する経口で活性なチロシンキナーゼインヒビターの導入により激変した。化合物Iは、インビトロで、Bcr/Abl-陽性白血病細胞の増殖を妨げ、そしてBcr/Abl-陽性白血病細胞のアポトーシスを誘導する。有意に、CML患者に対する化合物Iの経口投与は90%を超える患者において臨床応答をもたらす。しかしながら、初期にはこの剤に応答したCML患者における化合物I耐性の出現、ならびに移行期(accelerated phase)のCMLまたは急性転化の患者はあまり化合物Iに応答しないという観察は、この疾患の処置に対するさらなるアプローチの探索を刺激した。
【0004】化合物Iに対する耐性のメカニズムは、とりわけ、薬物の取り込みの減少、Bcr/Ablの増幅、およびBcr/Ablキナーゼドメインの変異を含む。この問題に対する1つの可能性のあるアプローチは、抗白血病活性を示す他の剤と化合物Iの組合せ剤を含む。これに関して、化合物Iを慣用的な細胞毒性薬物、三酸化ヒ素、ゲルダナマイシン(geldanamycin)、または腫瘍ネクローシス因子アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)と組み合わせた場合、Bcr/Abl^(+)白血病細胞に対する活性の増加が記載されている。さらに最近、Bcr/Ablタンパク質の発現の増加による化合物Iに対する耐性を含む、Bcr/Abl^(+)細胞における化合物Iおよび薬理学的MEK1/2インヒビター、たとえばPD184351、U0126またはサイクリン依存性キナーゼインヒビター、フラボピリドールの間の相乗的相互作用が記載されている。
・・・
【0006】化合物IはBcr/Abl^(+)細胞の分化応答を修飾し得、そして、驚くべきことに、化合物IとHDIの組合せは変異を促進するか、または白血球細胞の生存率を変え得ることが見いだされた。この問題に対処するため、化合物Iおよび臨床上関係のあるHDI、すなわち酪酸ナトリウムおよびSAHAの間の相互作用を試験する。いくつかのCML細胞株、たとえばK562、LAMA 84におけるHDIと化合物Iの共投与は、複数のシグナル伝達経路の途絶、ミトコンドリア損傷の誘導、およびアポトーシスの劇的な増強作用をもたらす。さらに、この薬物の組合せは、増加したBcr/Abl発現を示す化合物I-耐性Bcr/Abl^(+)細胞における細胞死を強力に誘導する。同時に、これらの知見は、臨床的に関連するHDIと化合物Iの組合せのストラテジーがCMLおよび関連する血液悪性疾患における考察を保証することを示唆している。
【0007】ヒストンの可逆的アセチル化は、DNAの転写因子の接近可能性を変えることにより作用する遺伝子発現の主要なレギュレーターである。正常細胞において、ヒストンデアセチラーゼ(HDA)およびヒストンアセチルトランスフェラーゼは、ともに、均衡を維持するためにヒストンのアセチル化のレベルを制御する。HDAの阻害は、過剰にアセチル化されたヒストンの蓄積をもたらし、これは多様な細胞応答をもたらす。
【0008】HDAのインヒビターは、癌細胞に対する治療効果について研究されてきた。たとえば、酪酸および誘導体、たとえばフェニル酪酸ブチルは、インビトロでヒト結腸カルシノーマ、白血病および網膜芽腫細胞系においてアポトーシスを誘導することが報告されている。しかしながら、酪酸およびその誘導体は有用な薬理学的剤ではない。なぜなら、それらはインビボで急速に代謝され、そして非常に短い半減期を有する傾向があるからである。抗癌活性について広く研究されたHDAの他のインヒビターは、トリコスタチンAおよびトラポキシンである。トリコスタチンAは抗真菌性および抗菌性であり、そして哺乳類HDAの可逆的インヒビターである。トラポキシンは環状テトラペプチドであり、これは哺乳類HDAの不可逆的インヒビターである。トリコスタチンおよびトラポキシンは抗癌活性について研究されてきたが、該化合物のインビボでの不安定性のため、これらは抗癌性薬物としてあまり適していない。腫瘍(癌性腫瘍を含む)の処置に適し、非常に有効および安定である活性化合物の必要性が未だ存在する。
【0009】驚くべきことに、今回、白血病の処置における、(a)少なくとも1つのヒストンデアセチラーゼインヒビターおよび(b)化合物Iまたは医薬上許容されるその塩を含んでなる組合せ剤の効果が、いずれかのタイプの組合せパートナー単独で得られる効果よりも大きい、すなわち本明細書において定義した組合せパートナー(a)および(b)の一方のみを用いる単剤療法の効果よりも大きいことが見いだされた。」

2 実施可能要件について
(1)特許法第36条第4項第1号の規定について
特許法第36条第4項第1号は、「発明の詳細な説明は、経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載しなければならない。」と規定する。この規定を受けて、特許法施行規則第24条の2は、「特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」と規定する。
つまり、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号の規定に適合するといえるためには、特許を受けようとする発明について、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載したものでなければならず、その記載内容としては、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術分野の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することが求められているといえる。

(2)特許法第36条第4項第1号への適合性の検討
請求項1の記載からみて、本願発明は、「組合せ剤」の発明であり、請求項1に記載の活性成分(a)と活性成分(b)とを同時的、個別的または逐次的に組み合わせて投与して、白血病を処置するために用いる点に技術的特徴を有する用途発明であると認められる。
このような疾病の処置をその用途とする医薬用途発明について、その技術上の意義を理解するためには、当然、その医薬がどのような治療効果を示すものであるか理解できることが必要である。また、医薬用途発明を実施することができるためには、それは医薬として使用できるものでなければならない。このことは、言い換えれば、医薬用途発明については、それが医薬としてどのような治療効果を示すものであるか理解することができるとともに、実際に医薬としての所期の治療効果を発揮できるものでなければ、その発明を使用することができるとはいえない、ということになる。
したがって、医薬としての治療効果を発揮させるための組合せ剤としての医薬用途発明である本願発明について、発明の詳細な説明に当業者がその実施をすることができる程度に記載されているというためには、その組合せ剤がどのような治療効果を示すものであるかを当業者が理解できる程度の記載及びその組合せ剤が実際にその用途に用いられた際に所期の治療効果を発揮することができると当業者が認識し得る程度の記載がされている必要があるといえる。

(3)上記の点を踏まえ、明細書の発明の詳細な説明に、本願発明が組合せ剤としてどのような治療効果を示すものであるかを当業者が理解できる程度の記載及びその組合せ剤が実際にその用途に用いられた際に所期の治療効果を発揮することができると当業者が認識し得る程度の記載がされているといえるかを検討する。
本願発明の治療効果について、発明の詳細な説明の摘示アに「化合物Iは、インビトロで、Bcr/Abl-陽性白血病細胞の増殖を妨げ、そしてBcr/Abl-陽性白血病細胞のアポトーシスを誘導する。有意に、CML患者に対する化合物Iの経口投与は90%を超える患者において臨床応答をもたらす。しかしながら、初期にはこの剤に応答したCML患者における化合物I耐性の出現、ならびに移行期(accelerated phase)のCMLまたは急性転化の患者はあまり化合物Iに応答しないという観察は、この疾患の処置に対するさらなるアプローチの探索を刺激した。」「(a)少なくとも1つのヒストンデアセチラーゼインヒビターおよび(b)化合物Iまたは医薬上許容されるその塩を含んでなる組合せ剤の効果が、いずれかのタイプの組合せパートナー単独で得られる効果よりも大きい、すなわち本明細書において定義した組合せパートナー(a)および(b)の一方のみを用いる単剤療法の効果よりも大きいことが見いだされた。」と記載されているから、本願発明は、CMLなどの白血病の治療に従来から化合物Iが用いられてきたところ、耐性の問題を克服し、十分な効果を得ることを目的として、活性成分(a)である化合物I又は活性成分(b)の一方のみを用いる単剤療法の効果よりも大きい治療効果を得るためのものであると理解できる。
次に、発明の詳細な説明に、本願発明が実際に白血病の治療に用いられた場合に、白血病に対して、活性成分(a)又は活性成分(b)の一方のみを用いる単剤療法の効果よりも大きい治療効果が得られると当業者が認識し得る程度の記載がされているかを検討する。本願明細書の発明の詳細な説明の実施例1には、活性成分(b)としてスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)及び酪酸ナトリウム(SB)を用いた場合について、K562細胞及びLAMA 84細胞をはじめとする各種白血病細胞に対するアポトーシス誘導効果等を確認した試験結果が記載されている。しかし、本願発明は、活性成分(b)として式IIの化合物又は式IIIの化合物を用いる場合を含むものであるが、発明の詳細な説明には、活性成分(a)とともに、式IIの化合物又は式IIIの化合物を組み合わせた効果を確認した試験結果は記載されていない。式IIの化合物又は式IIIの化合物は、SAHA及びSBと同様、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤であり、化学構造上はSAHAと同様にヒドロキサム酸部分構造を有するものである点で、SAHA及びSBと共通点を有するものであるということはできる。しかし、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤であることが、活性成分(a)との組合せ剤として白血病の処置に用いた場合の効果にどのような影響を与えるのかが、本願出願日時点の当業者に明らかであったとはいえず、また、発明の詳細な説明には、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤であれば、SAHA及びSBに限らず、活性成分(a)との組合せ剤として白血病の処置に用いた場合に活性成分(a)又は活性成分(b)の一方のみを用いる単剤療法の効果よりも大きい治療効果が得られることを本願出願時の技術常識に基づいて理論的に論証した記載も見当たらない。式IIの化合物及び式IIIの化合物がSAHAと同様にヒドロキサム酸部分構造を有するものである点としても、ヒドロキサム酸部分構造は、これら化合物の化学構造中の小さな部分を占める置換基にずぎず、ヒドロキサム酸部分構造が活性成分(a)の作用増強に直接結びつく化学構造であるとの技術常識の存在も認められないから、技術常識を考慮しても、ヒドロキサム酸部分構造を共有しているということから、直ちには、式II及び式IIIの化合物を活性成分(b)として活性成分(a)と組み合わせた場合に、白血病に対して活性成分(a)又は活性成分(b)の一方のみを用いる単剤療法の効果よりも大きい治療効果が得られるということはできない。
そうすると、本願明細書の発明の詳細な説明には、活性成分(b)として式IIの化合物又は式IIIの化合物を用いる場合について、本願発明の目的とする効果が得られると当業者が認識し得る程度の記載がされているとはいえない。

(4)実施可能要件のまとめ
以上のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明には、活性成分(b)として式IIの化合物又は式IIIの化合物を用いる場合について、本願発明の目的とする効果が得られると当業者が認識し得る程度の記載がされているとはいえないから、本願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に適合するものでない。

3 サポート要件について
上記2(3)で検討したように、本願発明は、CMLなどの白血病の治療に化合物Iが用いられてきたところ、耐性の問題を克服し、十分な効果を得ることを目的として、活性成分(a)又は活性成分(b)の一方による単剤療法の効果よりも大きい治療効果を得るためのものであるから、本願発明の課題は、活性成分(a)又は活性成分(b)の一方による単剤療法の効果よりも大きい治療効果を得ることであると認められる。
これに対し、上記2(3)で検討したように、本願明細書の発明の詳細な説明には、活性成分(b)としてSAHA及びSBを用いた場合の試験結果が記載されている。しかし、活性成分(b)として式IIの化合物又は式IIIの化合物を用いる場合について、技術常識を考慮しても、本願発明の目的とする効果が得られると当業者が認識し得る程度の記載がされているとはいえない点は、既に上記2(3)で検討したとおりである。そうすると、本願発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。
したがって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえないから、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものでない。

4 請求人の主張について
請求人は、平成22年 4月26日付の意見書において、式Iの化合物と式IIの化合物とを併用した場合の試験結果を提示して、本願発明が、実施可能要件及びサポート要件を満たす旨の主張をしている。
しかし、記載要件の判断は、明細書の記載及び出願時の技術常識を前提とするものであるところ、上記1(3)で指摘したように、発明の詳細な説明に、式Iの化合物と組み合わせた効果を確認した試験の結果が記載されているのは、活性成分(b)としてSAHA及びSBを用いる場合についてのみであって、本願出願時の技術常識を考慮して発明の詳細な説明の記載をみても、式Iの化合物との組合せにおいて、SAHA及びSBと式II及び式IIIの化合物とが同様に作用すると当業者が認識するとはいえないのであるから、出願後に活性成分(b)として式IIの化合物を用いた場合の試験結果を提示することによって実施可能要件及びサポート要件に関する記載上の不備が解消するものではない。
また、仮に請求人が主張するように、式IIの化合物及び式IIIの化合物がヒドロキサム酸部分構造を有する化合物はSAHAと同様に同様の活性を示すことが技術常識から明らかであるとすれば、以下のように、審査段階で指摘された特許法第29条の2に基づく拒絶理由が残っていることとなり、請求人の上記主張は妥当性を欠くものである。
すなわち、請求人(出願人)は、審査段階での1回目の拒絶理由通知で特許法第29条の2に基づく拒絶理由が指摘されたのに応答して、平成22年 4月26日付の手続補正により、一旦は活性成分(b)から、先願明細書の請求項4など【0013】などにヒストン脱アセチル化酵素阻害剤として明示的に記載された化合物であるSAHAを用いる場合を除外する補正を行ったが、2回目の拒絶理由通知に応答期間内の平成23年 5月30日付の手続補正により、活性成分(b)からは一旦削除されていたSAHAを再度請求項1に記載している。その上で、請求人は、同日付の意見書において、以下の主張をしている。
「その他(前回の拒絶理由通知書において挙げられた特許法第29条の2)について 補正後の発明が、先願5(未審査請求によるみなし取り下げ)に開示されていないことを念のために記す。先願5は、BCR-ABLチロシンキナーゼ活性阻害剤とヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を組み合わせた抗腫瘍剤に係る発明を対象とするが、具体的に実施例において記載されている組合せは、メシル酸イマチニブおよびトリコスタチンAまたはバルプロ酸の組合せである。したがって、先願5は、本願発明の組合せ剤を開示するものではない。」
先願明細書に記載されたメシル酸イマチニブは、本願発明における化合物Iと同じものであり、トリコスタチンAはヒドロキサム酸部分構造を有するヒストン脱アセチル化酵素阻害剤である。もし、ヒドロキサム酸部分構造を有するヒストン脱アセチル化阻害剤であれば、化合物Iとの組合せにおいて同様に作用するといえることが技術常識から明らかであるならば、化合物IとSAHAの組み合わせについても先願明細書に記載されていることになり、本願は特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができな
いものであるという拒絶理由が解消していないことになる。
このように、記載要件についての請求人の主張は、特許法第29条の2の拒絶理由に対する上記の主張と矛盾するものであり、いずれにしても、審査において通知された拒絶の理由は解消しておらず、本願発明は特許を受けることができるものであるとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合しないから、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。また、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合しないから、特許法第36条第6項に規定する要件も満たしていない。
したがって、本願は、その余の点について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-19 
結審通知日 2013-12-24 
審決日 2014-01-07 
出願番号 特願2004-535791(P2004-535791)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (A61K)
P 1 8・ 537- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 守安 智櫛引 明佳  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 齋藤 恵
松浦 新司
発明の名称 白血病の処置のためのa)N-{5-[4-(4-メチル-ピペラジノ-メチル)-ベンゾイルアミド]-2-メチルフェニル}-4-(3-ピリ  
代理人 青山 葆  
代理人 田中 光雄  
代理人 田中 光雄  
代理人 岩崎 光隆  
代理人 青山 葆  
代理人 岩崎 光隆  
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