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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B66B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B66B
管理番号 1288288
審判番号 不服2013-15017  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-05 
確定日 2014-06-06 
事件の表示 特願2010-529716「エレベーター群管理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月25日国際公開、WO2010/032625〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年9月3日(特許法第41条に基づく国内優先権主張 平成20年9月19日)を国際出願日とする出願であって、平成23年1月13日に手続補正書が提出され、平成25年2月13日付けで拒絶理由が通知され、平成25年4月10日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年5月28日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年8月5日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において平成25年10月4日付けで書面による審尋がされ、平成25年11月29日に回答書が提出されたものである。

第2 平成25年8月5日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成25年8月5日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正
(1)本件補正の内容
平成25年8月5日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1について、下記Aに示す本件補正前の(すなわち、平成25年4月10日に提出された手続補正書により補正された)請求項1を、下記Bに示す請求項1へと補正するものである。
A 「【請求項1】
複数のかごからなるエレベーター群において、乗客の要望に応えて前記複数のかごのいずれかを乗客に割り当てて管理するエレベーター群管理装置であって、
エレベーター乗場またはその近辺に設置され、乗客が行先階を登録する乗場呼び登録が可能な乗場呼び登録部と、
前記乗場呼び登録毎に乗客を同乗グループに割り当て、その同乗グループ情報を前記乗場呼び登録部の近傍に配置された同乗グループ表示部に表示させる同乗グループ割当部と、
少なくとも一つの前記同乗グループを前記複数のかごのいずれかに割当かごとして割り当て、前記同乗グループと前記割当かごとの対応関係を少なくとも示す乗客案内指令を発生するかご割当処理を実行する同乗グループかご割当部と、
前記乗客案内指令に基づき、前記同乗グループ及び前記割当かごに関する情報を乗客が参照可能な態様で表示する同乗グループ割当かご表示処理を行う同乗グループ割当かご表示部とを備え、
前記同乗グループ割当かご表示処理は、かごの実際の位置に対応した態様の表示処理を含む、
エレベーター群管理装置。」

B 「【請求項1】
複数のかごからなるエレベーター群において、乗客の要望に応えて前記複数のかごのいずれかを乗客に割り当てて管理するエレベーター群管理装置であって、
エレベーター乗場またはその近辺に設置され、乗客が行先階を登録する乗場呼び登録が可能な乗場呼び登録部と、
前記乗場呼び登録毎に乗客を同乗グループに割り当て、その同乗グループ情報を前記乗場呼び登録部の近傍に配置された同乗グループ表示部に表示させる同乗グループ割当部と、
少なくとも一つの前記同乗グループを前記複数のかごのいずれかに割当かごとして割り当て、前記同乗グループと前記割当かごとの対応関係を少なくとも示す乗客案内指令を発生するかご割当処理を実行する同乗グループかご割当部と、
前記乗客案内指令に基づき、前記同乗グループ及び前記割当かごに関する情報を乗客が参照可能な態様で一の表示盤に集約して表示する同乗グループ割当かご表示処理を行う同乗グループ割当かご表示部とを備え、
前記同乗グループ割当かご表示処理は、かごの実際の位置に対応した態様の表示処理を含む、
エレベーター群管理装置。」
(下線は、本件補正箇所を示すために、請求人が付したものである。)

(2)本件補正の目的要件について
本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1における「前記同乗グループ及び前記割当かごに関する情報を乗客が参照可能な態様で表示する同乗グループ割当かご表示処理を行う同乗グループ割当かご表示部」という発明特定事項について、本件補正後に、「一つの表示盤に集約して」という具体化手段を付加して「表示する」ことを限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

2 刊行物
(1)引用文献の記載
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2007/070054号(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が記載されている。
(なお、翻訳文として引用文献のパテントファミリーである特表2009-519876号公報を援用し、摘記箇所に対応する記載を『』内に示す。)

ア 「Technical Field
・・・ or calls were entered.」(1ページ2ないし9行)
(訳)
『技術分野
本発明は、エレベータシステムにおいて、登録された全ての行き先呼びを文字などの記号によって一意的に識別することに関し、前記記号はこれによって応答されるべき呼びを除く他の未対応の呼びのいずれとも異なり;呼びは必要に応じて何回でも他のかごに再割り当てされてよく、このような呼びに割り当てられたかごは、呼びが入力された階に接近しつつあるときに、かごが応答中の1つまたは複数の呼びの固有の記号を、そのかごの昇降路に隣接する指示装置に表示させる。』

イ 「Referring to Fig. 1 ・・・ rather than the lower right car.」(3ページ13行ないし5ページ12行)
(訳)
『 図1を参照すれば、昇降路およびその中の位置によって示された4台のエレベータ、すなわち左上(UL)、左下(LL)、右上(UR)、および右下(LR)が、左昇降路(LF)および右昇降路(RT)内に配置されている。階2?9の他にピット(P)およびロビー(L)を含む10個の階が示されている。
各々の階(ピットを除く)には呼びボタン21?29があり、その中にボタンを押すことによって入力された行き先階の記号が示されている。各階に1つの呼びボタン21?29のみが示されているが、本発明はNキーシステムまたはテンキーシステムのような行き先呼び入力システムを有するシステムに関して説明され、呼びは乗客の所望の行き先を指示することによって入力される。すなわち、図1?図4の構成におけるボタン21?29は、図8の呼び入力パネル21aと同様な、キーおよび呼び識別記号のための表示装置を有する呼び入力パネルを表すものと理解されるべきである。呼びボタン21は2階への運行を要求しており、呼びボタン25はロビーへの運行を要求しており、呼びボタン27はロビーへの運行を要求しており、呼びボタン29は4階への運行を要求している。各々の呼びボタン21、25、27、29の上方には本発明による、その呼びの識別を示す文字がある。
左昇降路の各々の運行階は複数のかご識別標識31?39を有し、右昇降路の各々の運行階は同様な複数のかご識別標識41?49を有する。該当する一部のエレベータかごの底部に、制御装置53などによって現在そのかごに割り当てられている呼びを示す文字がある。かくして図1に示される時点において、左上のかごは呼びA(7階からロビーへ)および呼びD(5階からロビーへ)の両方が割り当てられている。左下のかごは呼びC(ロビーから2階へ)が割り当てられており;右上のかごは呼びB(9階から4階へ)が割り当てられており;右下のかごはこの時点で呼びが割り当てられていない。各々のかご内の矢印はかごの走行方向を示す。
図2は図1より遅い時間を示している;しかしながら図2に示される事象が全て同時に起こるとは限らず、図1?図4の実施例は本発明を単に例示するものであり、事象の時系列を示すとは限らない。
図2において左上のかごが呼びAに応答して7階に到着しており、かごが呼びに応答して7階に接近するにつれて標識37にAが表示されるが、これはこの呼びが呼びボタン27で入力されたときに7階にいる乗客に対して表示されたものである。右上のかごが呼びBに応答して9階に到着しており、標識49が文字Bを表示しているが、これは呼びボタン29が押されて呼びが入力されたときに、9階にいる乗客に対して表示されたものである。
図2において、左下のかごはロビーにおいて2階を行き先として入力された呼びCに割り当てられたままであり;右下のかごは依然として呼びが割り当てられていない。
図2において、左上のかご内で停止ボタンが押され、これによって制御装置53の呼び割り当て機能に、左上のかごが7階で足留めされていることが指示されたと仮定する。図3において、左上のかごは7階に停止したままであり、その結果として、5階においてロビーへの運行を要求して入力された呼びDは右上のかごに再割り当てされている。左下のかごが呼びCに応答し、その後ピットに走行して左上のかごを退避することができる以前に、左上のかごがロビーに到着する可能性があるために、呼びCは右下のかごに再割り当てされている。これはこのかごが呼びCに応答して2階に走行し、次いで右上のかごがロビーに到着する時点以前にピットに走行することができることを想定している。あるかごが他のかごと衝突する危険にあるときは、かごを減速または停止させる処置が取られることが前提とされる。しかしながらこれは本発明に対して重要ではない。
図4において、右下のかごはロビーに到着しており、標識41がCを表示して、このかごが、乗客がボタン21で呼びを入力したときにCで識別された呼びに対して応答中であることを、ロビー階にいる乗客に示している。
左下のかごはピットに到着しており、左上のかごが7階においてロビーを行き先として入力された呼びAに対する運行を終えてロビーを離れるまで、ここに留まることになる。右上のかごは5階における呼びDに応答するために下降中であり、このかごが5階に到着したならば標識45がDを表示することになるが、これは乗客が5階においてボタン25で呼びを入力したときに乗客に対して表示された記号と同じである。
図1?図4の実施例において、最初に割り当てられたかごの昇降路とは異なる昇降路内のかごへの、呼びの再割り当てが示されている。本発明はまたある昇降路内の1つのかごから、同じ昇降路内の他のかごへの再割り当てを可能にする。図3および図4において、5階で入力された呼びDが左下のかごに再割り当てされた可能性が大いにある。その後、呼びCが右下のかごではなく右上のかごに再割り当てされた可能性がある。』

ウ 「Another illustration ・・・ rather than indicating a car.」(5ページ13行ないし6ページ27行)
(訳)
『 本発明の利用を示すもう1つの実施例は、図5?図7に示されるような、朝のアップピーク交通おける群集のまとめ方である。人々をその行き先によってグループ分けすることは、アップピーク交通において人を上の各階に迅速に移送するための、最良の方法である。行き先呼び入力が利用されている場合は、各々の乗客は彼らが一人ずつ、または本人と一、二人の同伴者のために行き先を入力しなければならないことを知っている。したがって呼びの背後にある群衆の人数は、行き先呼び入力のない従来のシステムにおけるよりも、はるかに正確である。乗客のグループは全て同じ行き先に向かうものである必要はなく;“セクタリング”または“チャネリング”におけるように、同じかごの応答を受けるようにまとめて割り当てられればよい。すなわち例えばグループCは5階から7階までの乗客を含み;グループDは2階から5階までの乗客を含み;などであればよい。
図5において、左下のかごはピット内にあり、左上のかごは2階を通って下降中であり、右上のかごは6階を通って上昇中であり、右下のかごは“C”として表示された呼びの乗客たちを乗せるためにロビーに到着している。標識41が、グループCから発する点線が示すように、その呼びによって識別された乗客たちがこれから右下のかごに乗り込もうとしていることを示している。他の3つのグループ、E、D、Bもまた呼びを待っている。
図6において、右下のかごは乗客を降ろすために2階に到着しており、右上のかごは7階および8階を通って上昇中である。左下のかごは依然としてピット内にあり、左上のかごはロビーに到着しており、標識31が、点線の矢印が示すように、その呼びがDに指定された乗客たちがこれから左上のかごに乗り込まなければならないことを指示している。グループBおよびEは依然として彼等に割り当てられたかごを待っている。
図7において、左上のかごが2階を通って上昇中であり、左下のかごがロビーに到着しており、その呼びがEに指定された乗客たちが、点線の矢印で示されるように、これから左下のかごに乗り込まなければならないことを標識31が指示している。右上のかごは乗客を降ろすために9階に到着している。右下のかごはロビー階に戻ったところであり、その呼びがBで識別される乗客たちが、点線の矢印で示されるように、これから右下のかごに乗り込まなければならないことを標識41が指示している。このように、右下のかごは図5においてはCで識別される呼びに応答中のものとして表示されていたが、図7においては同じ右下のかごが、その短時間後にBで識別される呼びに応答中のものとして識別されている。その後の時点において、下のかごの片方または両方がピットにあり、上のかごのうち1つがAで識別される呼びに応答中のものとして示されるかもしれない。左上のかごは図6においてはDで識別される呼びに応答中のものとして識別されていた。以上は、(割り当てられたかごを識別するのではなく)呼びを識別することによって、かごが到着してドアを開けたときに、図5において右下のかごに関連するグループBのような一部の乗客がこれに反応せず、その一方で図7におけるグループBのように、同じ右下のかごが同じ階に到着してドアを開けたときに、標識に異なる呼び識別があればこれに反応する、ということが可能になることを示している。
図1?図4の実施例において、最初に呼びが割り当てられたかごの昇降路とは異なる昇降路内のかごへの、呼びの再割り当てが示されている。
簡単な実施例によって本発明を説明したが、各々の呼びを固有の記号によって区別することによって、かごの間での呼びの再割り当て(図1?図4)、および同じかごの同じ階への連続した割り当て(図5?図7)が、運行に悪影響を及ぼさないことが示された。なぜならば、かごが呼びに対して運行されて乗場に接近したときに、各々の乗場に設けられた標識が乗客に対してかごを指示するのではなく、現在応答されている呼びを指示するからである。』

エ 「Another embodiment of the invention ・・・ for simplicity. 」(6ページ28行ないし7ページ10行)
(訳)
『 図8に示された本発明の他の実施例は、応答を受けるべきドアの近傍に乗客を集合させることを可能にする。この場合呼び入力パネル21a上でボタン58を選択することによって呼びが入力されたときに、かごが応答中の呼びを識別する記号が表示装置59上で識別されるのに加えて、乗客がそれを通って(かごに)乗り込むべき昇降路の乗場ドアもまた、表示装置60上で識別される。すなわち図8において、右下のかごが右の昇降路2内でロビーに到着しており、乗場ドア61が開いて、Bで識別される呼びに応答している。この実施例においては、呼びは同じ昇降路内の2つまたはそれ以上のかごの間で再割り当てすることしかできない。なぜなら乗客はこの昇降路で乗車できることを保証されているからである。本発明のこの実施例の利点は、適切に識別されたかごを目指す乗客のぶつかり合いが少なくなり、より整然としたロビーが提供されることである。ドア1を通って乗り込むべき乗客はドア1の近傍におり、ドア2を通って乗り込むべき乗客はドア2の近傍にいるので、標識31a、41aに指示された適切なかごが到着したときに、互いに押し合う必要がない。』

オ 「 1. An elevator system ・・・ be answered. 」(請求項1ないし6)
(訳)
『 1. 1つまたは複数の昇降路(LF、RT)と;
前記1つまたは複数の昇降路内を走行する少なくとも2つのエレベータかご(UL?LR)と;
乗客が所望の行き先階を入力して該所望の行き先階への運行の呼びを登録することができる呼びボタン(58)を各々有する、各々の前記階に設けられた呼び入力パネル(21?29、21a)と;を有するビルディングの複数の階(P、L、2?9)に運行するエレベータシステムにおいて:
前記呼び入力パネルは、複数の異なる記号のうちの任意の選択された1つの記号を表示することによって各々の登録された呼びを識別するための表示装置(59)を各々有し;
各々の呼びの登録に応答する手段(53)を有し、この手段は、前記制御パネルのうち対応する1つに、前記記号のうち選択された1つの記号を直ちに表示させ、前記選択された1つの記号が(a)対応する呼びのみを、または(b)同じ階で入力され、かつ前記かごのうち同じ1つのかごによって同時に応答されるべき複数の呼びを、一意的に識別し;
前記手段(53)は、前記対応する呼びが登録された時点での割り当て方針に従って、前記システムの初期条件によって決定されるように、各々の未応答の登録された呼びを前記エレベータかごの1つに割り当て、次いで前記初期条件に後続する前記システムの条件の下で前記方針に従うように、必要に応じて各々の登録された呼びを次のかごに順次再割り当てし;
各々の前記階の各々の前記1つまたは複数の昇降路に隣接する標識(31?39、41?49)を有し、各々の前記標識が任意の前記記号を表示するように作動可能であり、
前記手段(53)は、現在割り当てられているかごが前記呼びの1つに応答して乗客を乗せるために前記行き先階に接近しているときに、前記呼びに対応する前記選択された1つの記号を、前記呼びの行き先階の、前記呼びに現在割り当てられているかごが走行する昇降路に隣接する前記標識の1つに表示させることを特徴とする、エレベータシステム。
2. 各々の昇降路にそれぞれ1つだけのかごがあることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
3. 各々の昇降路にそれぞれ複数のかごがあることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
4. ビルディングの複数の階(P、L、2?9)に運行するエレベータシステムの運転方法であって、1つまたは複数の昇降路(LF、RT)を有し、少なくとも2つのエレベータかご(UL?LR)が前記1つまたは複数の昇降路内を走行し、各々の前記階に呼び入力パネル(21?29、21a)を有し、呼び入力パネルが各々有する呼びボタン(58)によって乗客が所望の行き先階を入力可能であり、これによって前記所望の行き先階への運行の呼びが登録される;エレベータシステムの運転方法において:
各々の呼びの登録に応答して、前記制御パネルのうち対応する1つに、複数の記号(A?E)のうち選択された1つの記号を表示(59)し、前記選択された1つの記号によって(a)対応する呼びのみ、または(b)同じ階で入力され、かつ前記かごのうち同じ1つのかごによって同時に応答されるべき複数の呼びが、一意的に識別され;
前記対応する呼びが登録された時点での割り当て方針に従って、前記システムの初期条件によって決定されるように、前記エレベータかごの1つに各々の未応答の登録された呼びを割り当て(53)、次いで前記初期条件に後続する前記システムの条件の下で前記方針に従うように必要に応じて、各々の登録された呼びを次の前記かごに順次再割り当てし;
現在割り当てられているかごが前記呼びの1つに応答して乗客を乗せるために前記行き先階に接近しているときに、前記呼びに対応する前記選択された1つの記号を、前記呼びの行き先階の、前記呼びに現在割り当てられているかごが走行する昇降路に隣接する前記標識の1つに表示する(31?39、41?49)ことを含むことを特徴とする、エレベータシステムの運転方法。
5. アップピーク交通(図5?図7)において、連続する少数の階の範囲内の行き先階に対して互いに短時間のうちになされた任意の呼びの登録に応答して、前記記号(E、D、C、B)のうち同じ選択された1つの記号を表示することをさらに特徴とする、請求項2記載の方法。
6. 乗場ドア(1、2)を有する複数の昇降路を有するエレベータシステムを運転する請求項2記載の方法であって、
前記選択された記号(A?E)とともに、対応する呼びに応答する前記複数の昇降路乗場ドアの1つを示す第2の記号(1、2)を表示することをさらに特徴とする、方法。』

(2)引用文献の記載から分かること
上記(1)ア、イ、オ及び図1ないし4の記載におけるエレベータシステムの全体構成及び制御装置53による割り当て態様、上記(1)ウ及び図5ないし7の記載におけるグループ分けに係る実施例、及び、上記(1)エ及び図8の記載における昇降路ドア識別に係る態様から次のことが分かる。

ア 特に、上記(1)エの記載、図5ないし7における標識31及び標識41におけるグループの「B」、「C」、「D」及び「E」の表示、及び、図8における呼び入力パネル21a内の表示装置59の「CAR B」の表示から、グループのB、C、D及びEを、呼び入力パネル上におけるボタンの近傍に配置された表示装置に表示させることが分かる。

イ グループに割り当てられたかごは、「割当かご」といえるから、図8(図5ないし7)における右側のかご(ドア)の右上に配置された標識41a(41)及び左側のかご(ドア)の左上に配置された標識31a(31)の配置、並びに図5ないし8における標識31、41及び41aにおけるグループの「B」、「C」、「D」及び「E」の表示は、グループ及び割当かごに関する情報を乗客が参照可能な態様で2つの標識により表示するグループ割当かご表示処理を行う標識であることが分かる。

(3)引用文献に記載された発明
上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「複数のかごからなるエレベータにおいて、乗客の要求に応答して複数のかごのいずれかを乗客に割り当てるエレベータシステムであって、
乗場に設けられ、乗客が行き先階を登録する呼び登録が可能なボタンと、
呼び登録毎に乗客をグループに割り当て、グループのB、C、D及びEを呼び入力パネル上におけるボタンの近傍に配置された表示装置に表示させる制御装置と、
グループを複数のかごのいずれかに割当かごとして割り当て、
グループ及び割当かごに関する情報を乗客が参照可能な態様で2つの標識により表示するグループ割当かご表示処理を行う標識とを備える、
エレベータシステム。」

3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「複数のかごからなるエレベータ」、「乗客の要求に応答して」、「乗客に割り当てる」、「エレベータシステム」、「乗場に設けられ」、「行き先階」、「呼び登録」、「ボタン」、「グループ」、「B、C、D及びE」、「表示装置」、「制御装置53」は、その配置構成、機能又は技術的意義からみて、本願補正発明の「複数のかごからなるエレベーター群」、「乗客の要望に応えて」、「乗客に割り当てて管理する」、「エレベーター群管理装置」、「エレベーター乗場またはその近辺に設置され」、「行先階」、「乗場呼び登録」、「乗場呼び登録部」、「同乗グループ」、「同乗グループ情報」、「同乗グループ表示部」、「同乗グループ割当部」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「グループを複数のかごのいずれかに割当かごとして割り当て、グループ及び割当かごに関する情報を乗客が参照可能な態様で2つの標識により表示するグループ割当かご表示処理を行う標識とを備える」は、本願補正発明における「少なくとも一つの前記同乗グループを前記複数のかごのいずれかに割当かごとして割り当て、前記同乗グループと前記割当かごとの対応関係を少なくとも示す乗客案内指令を発生するかご割当処理を実行する同乗グループかご割当部と、前記乗客案内指令に基づき、前記同乗グループ及び前記割当かごに関する情報を乗客が参照可能な態様で一の表示盤に集約して表示する同乗グループ割当かご表示処理を行う同乗グループ割当かご表示部とを備え、前記同乗グループ割当かご表示処理は、かごの実際の位置に対応した態様の表示処理を含む」に、「グループを複数のかごのいずれかに割当かごとして割り当て、グループ及び割当かごに関する情報を乗客が参照可能な態様で表示するグループ割当かご表示処理を行う表示手段とを備える」という限りにおいて一致する。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「複数のかごからなるエレベーター群において、乗客の要望に応えて複数のかごのいずれかを乗客に割り当てて管理するエレベーター群管理装置であって、
エレベーター乗場またはその近辺に設置され、乗客が行先階を登録する乗場呼び登録が可能な乗場呼び登録部と、
乗場呼び登録毎に乗客を同乗グループに割り当て、その同乗グループ情報を乗場呼び登録部の近傍に配置された同乗グループ表示部に表示させる同乗グループ割当部と、
グループを複数のかごのいずれかに割当かごとして割り当て、グループ及び割当かごに関する情報を乗客が参照可能な態様で表示するグループ割当かご表示処理を行う表示手段とを備える、
エレベーター群管理装置。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
本願補正発明においては、同乗グループ表示部が乗場呼び登録部の近傍に配置されるのに対し、引用発明においては、呼び入力パネル上におけるボタン(本願補正発明の「乗場呼び登録部」に相当。)の近傍に配置された表示装置(本願補正発明の「同乗グループ表示部」に相当。)に表示させる点(以下、「相違点1」という。)。
(相違点2)
グループを複数のかごのいずれかに割当かごとして割り当て、グループ及び割当かごに関する情報を乗客が参照可能な態様で表示するグループ割当かご表示処理を行う表示手段とを備えることについて、
本願補正発明においては、「少なくとも一つの前記同乗グループを前記複数のかごのいずれかに割当かごとして割り当て、前記同乗グループと前記割当かごとの対応関係を少なくとも示す乗客案内指令を発生するかご割当処理を実行する同乗グループかご割当部と、前記乗客案内指令に基づき、前記同乗グループ及び前記割当かごに関する情報を乗客が参照可能な態様で一の表示盤に集約して表示する同乗グループ割当かご表示処理を行う同乗グループ割当かご表示部とを備え、前記同乗グループ割当かご表示処理は、かごの実際の位置に対応した態様の表示処理を含む」のに対し、
引用発明においては、「グループを複数のかごのいずれかに割当かごとして割り当て、グループ及び割当かごに関する情報を乗客が参照可能な態様で2つの標識により表示するグループ割当かご表示処理を行う標識とを備える」点(以下、「相違点2」という。)。

4 判断
(1)相違点1について
引用発明は、呼び入力パネル上における配置であるものの、表示装置(本願補正発明の「同乗グループ表示部」に相当。)がボタン(本願補正発明の「乗場呼び登録部」に相当。)の近傍に配置されるものであるから、本願補正発明の「乗場呼び登録部の近傍に配置された同乗グループ表示部」と対比して、実質的な差異はないといえる。
また、引用発明におけるボタン及び表示装置を、それぞれ独立した機器として分離し、その独立した機器を近傍配置とすることは、当業者が適宜なし得る設計事項である。

(2)相違点2について
最初に、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項である「少なくとも一つの前記同乗グループを前記複数のかごのいずれかに割当かごとして割り当て、前記同乗グループと前記割当かごとの対応関係を少なくとも示す乗客案内指令を発生するかご割当処理を実行する同乗グループかご割当部と、前記乗客案内指令に基づき」「同乗グループ割当かご表示処理」を行うことに関して検討する。
引用文献の上記2(1)イの記載及び図5ないし7における制御装置53の記載によれば、グループとかごとの割り当て処理、及び、その割り当てに関する情報を標識に表示させることは、制御装置53により行われることである。そして、当該割り当てに係る対応関係などについて指令を用いることは、(機器が接続される)制御装置を備えるシステム一般において、通常採用し得る程度の技術的事項であるから、引用発明において、制御装置により指令の発生及び指令に基づく表示処理を行うことに当業者の格別の創意は要しないといえる。
次に、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項である「前記同乗グループ及び前記割当かごに関する情報を乗客が参照可能な態様で一の表示盤に集約して表示する同乗グループ割当かご表示処理を行う同乗グループ割当かご表示部とを備え、前記同乗グループ割当かご表示処理は、かごの実際の位置に対応した態様の表示処理を含む」について検討する。
当該発明特定事項の「前記同乗グループ及び前記割当かごに関する情報を乗客が参照可能な態様」に関して、本願の明細書には、「乗客は、同乗グループ及び(確定)割当かごとに関する情報を乗客が参照可能な態様で表示する同乗グループ割当かご表示器(D1(1)?D3(1),D1(2)?D3(2))」(段落【0092】)と記載されており、この説明に対応する本願の図4、6及び7におけるD1ないしD3の表示は、割り当てられたかごのかご開閉扉の上部に設置された表示部において、同乗グループに係る「A」及び「B」という表示を行うものである。
これに対し、引用文献には、図8(図5ないし7)の右側のかご(ドア)の右上に配置された右側のかごに係るグループを表示する標識41a(41)、及び、同図の左側のかご(ドア)の左上に配置された左側のかごに係るグループを表示する標識31a(31)について記載されており、この2つの標識が、グループ及び割当かごに関する情報を乗客が参照可能な態様で表示するものであることは明らかであるし、右側のかごに対応する標識41a(41)及び左側のかごに対応する標識31a(31)は、かごの実際の位置に対応した態様の表示処理といえるものである。
そして、表示を分かり易く且つ見やすくすること、省資源化及び省スペース化などの課題は、エレベータ装置を含む機械一般において、普遍的な技術課題であるから、引用発明における「グループ及び割当かごに関する情報を乗客が参照可能な態様」で「表示する」こと、及び、かごの実際の位置に対応した態様の表示処理とすることができる範囲内で、2つの「標識」のレイアウトを適宜変更すること、例えば左右のかご(ドア)の間に2つの標識を配置して一つの表示盤に集約すべく構成することは、当業者が適宜なし得る設計事項であるといえる。

また、エレベータの技術分野において、一つの集約した表示盤とすることは周知技術(以下、「周知技術」という。例として、特開2000-272851号公報[段落【0026】ないし【0032】並びに図6ないし10。以下、「周知例1」という。]、又は、特開平4-169484号公報[3ページ左上欄1行ないし右上欄14行並びに第1及び2図。以下、「周知例2」という。]参照。)であり、上記したとおりの普遍的な技術課題を解決すべく、引用発明及び周知技術を適宜組み合わせることに当業者の格別の創意は要しないといえる。

なお、仮に、本願補正発明の「かごの実際の位置に対応した態様の表示処理」が、例えば、本願の明細書におけるかごの実際の位置と対応するように地図形式で四角の記号を並べて表示すること(例えば、段落【0104】、【0109】、【0115】及び【0127】)を意味するとしても、一つの集約した表示盤において、かごの実際の位置と対応するように地図形式で四角の記号を並べて表示することは周知技術(例として、上記周知例1又は周知例2を参照。)であり、上記したとおりの普遍的な技術課題を解決すべく、引用発明と当該周知技術とを適宜組み合わせることに当業者の格別の創意は要しないといえる。

以上によれば、引用発明に基づき、又は、引用発明及び周知技術に基づき、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願補正発明を全体として検討しても、その作用効果は、引用発明、又は、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明に基いて、又は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
平成25年8月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)Aのとおりのものである。

1 刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である引用文献については、上記第2[理由]2に記載したとおりである。

2 対比・判断
本願発明については、上記第2で検討した本願補正発明から、「一の表示盤に集約して」という限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明を特定する事項をすべて含む本願補正発明が、上記第2[理由]4で述べたとおり、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基づいて、又は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、又は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-04-07 
結審通知日 2014-04-08 
審決日 2014-04-21 
出願番号 特願2010-529716(P2010-529716)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B66B)
P 1 8・ 575- Z (B66B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武井 健浩  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 金澤 俊郎
藤原 直欣
発明の名称 エレベーター群管理装置  
代理人 吉竹 英俊  
代理人 有田 貴弘  

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