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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01B
管理番号 1288347
審判番号 不服2012-25311  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-20 
確定日 2014-06-03 
事件の表示 特願2000-600296「液体前駆体溶液の混合液及び前駆体蒸気」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 8月24日国際公開、WO00/49646、平成15年 5月27日国内公表、特表2003-517703〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成12年2月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:平成11年2月19日、米国)を国際出願日とする出願であって、原審にて、平成23年8月18日付けの拒絶理由が通知され、これに対し同年11月24日付けの誤訳訂正がされたが、平成24年8月15日付けの拒絶査定がされたものである。
本件審判は、この査定を不服として、同年12月20日付けの手続補正とともに請求されたものであり、当審にて、平成25年7月19日付けの拒絶理由が通知され、これに対し同年11月21日付けの意見書の提出と手続補正がされている。

2.本願発明の認定

本願の請求項1,2に係る発明は、平成25年11月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1,2に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

【請求項1】
溶媒媒体に溶解若しくは懸濁させた鉛、ジルコニウム及びチタンの前駆体を含む液体前駆体溶液の混合液であって、
(i)鉛前駆体が、鉛ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)及び鉛ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)N,N’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミンからなる群から選択され、(ii)ジルコニウム前駆体が、ジルコニウムテトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、ジルコニウムビス(イソプロポキシド)ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)及びZr_(2)(O-i-Pr)_(6)(thd)_(2)からなる群から選択され、(iii)チタン前駆体が、Ti(O-i-Pr)_(2)(thd)_(2)であり、
前記溶媒媒体が、オクタン、デカン及びポリアミンを含み、
前記鉛、ジルコニウム及びチタンの前駆体が、リガンド交換を受けていない、混合液。
【請求項2】
A/B比がPb/(Zr+Ti)であり、A/B比として0.612?1.53を有する、
請求項1に記載の液体前駆体溶液の混合液。

3.当審拒絶の理由

当審拒絶理由通知の理由の一つは、
「発明の詳細な説明(段落0072,0073)には、本発明の前駆体溶液のA/B比が1.02±25%以内の場合に優れたPZT材料が生成されると記載されている。
これに対して、請求項1にはA/B比が記載されていないし、請求項2に記載のA/B比は、1.02±25%を超える範囲を含む。
したがって、請求項1,2に係る発明は、発明の詳細な説明において、その課題を解決することが記載された発明ではない。
よって、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」
(以下、「サポート要件違反」という。)というものであり、
他の一つは、
国際公開第98/51837号 (以下、「引用例1」という。)
国際公開第99/00530号 (以下、「引用例2」という。)
を引用し、
「本願の請求項1に係る発明は、その優先権主張の基礎とされた先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆利用可能となった発明に基いて、その優先権主張の基礎とされた先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
(以下、「進歩性要件違反」という。)というものである。

4.サポート要件違反について

4-1.発明の詳細な説明

本願明細書には、次の記載がある。

【発明の詳細な説明】
・・・(中略)・・・
【0007】
幾つかの調査により、?150nmまでの薄さであるPZT膜の厚さスケーリングデータが提示されている。例えば、P.K. Larsen、G.J.M. Dormans、およびP.J. Veldhoven、J. Appl. Phys.、(4)、1994、および、A.K. Tagantsev、C. Pawlaczyk、K. Brooks、およびN. Setter、Integrated Ferroelectrics、4、(1)、1994を参照されたい。これらの調査は、膜厚が低減するにしたがって抗電界が増加し、分極が減少することを示している。このような効果は、デプリーションおよび脱分極現象によるものである(A.K. Tagantsev、C. Pawlaczyk、K. Brooks、M. Landivar、E. Colla、およびN. Setter、Integrated Ferroelectrics、6、309(1995))。
【0008】
上述した効果は、当該技術分野では薄膜PZTに固有のものであると考えられてきており、したがって、PZTの低電圧および厚さスケーリングは奨励されなかった。
【0009】
(他の材料に比べて)PZTの高い強誘電性分極および低い処理温度は、その材料を低動作電圧にスケーリングすることを可能にするPZTの形態と堆積プロセスを特定する強力な動機付けを与える。
【0010】
したがって、PZT材料を低動作電圧にスケーリングすることを可能にするPZTの形態および堆積プロセスを提供することは、当該技術分野において大きな進展となり、かつ、したがってこれを本発明の目的とする。
・・・(中略)・・・
【0016】
以下に用いるように、以下の用語は以下の定義を有する。
・・・(中略)・・・
【0028】
「プラトー(Plateau)効果決定」とは、温度、圧力、および液体前駆体溶液A/B比(A/B比はPb対(Zr+Ti)の比率)のそれぞれの関数として、強誘電性分極、漏れ電流密度、およびPZT膜における鉛の原子百分率のぞれぞれを示すプロットの相関実験的マトリクスを確立して、温度、圧力、および液体前駆体溶液A/B比の独立プロセス変数に対して動作の領域を定義する各プロットの「ニー(knee)」、すなわち、変曲点を特定して、後述するように、そのような動作の領域から選択される温度、圧力、および液体前駆体溶液A/B比の対応値においてMOCVDプロセスを行うことを意味する。
・・・(中略)・・・
【0038】
別の態様では、本発明は、基板上に強誘電体PZT膜を製作する方法であって、タイプ1および/またはタイプ2特徴を有する強誘電体膜を基板上に生成するMOCVD条件下での基板上への液体供給MOCVDにより膜を形成することを含む方法に関する。
【0039】
本発明の更なる態様は、基板上に強誘電体PZT膜を製作する方法であって、寸法的にスケーラブルで、パルス長スケーラブルで、および/または電界スケーラブルのPZT膜を基板上に生成する核形成条件を含むMOCVD条件下での基板上への液体供給MOCVDにより膜を形成することを含む方法に関する。
【0040】
本発明の更なる態様は、基板上に強誘電体PZT膜を製作する方法であって、温度、圧力、および液体前駆体溶液A/B比(A/B比はPb対(Zr+Ti)の比率)のそれぞれの関数として、強誘電性分極、漏れ電流密度、およびPZT膜における鉛の原子百分率のそれぞれを示すプロットの相関実験的マトリクスからのプラトー効果決定によって決められる温度、圧力、および液体前駆体溶液A/B比を含むMOCVD条件下での基板上への液体供給MOCVDにより膜を形成することを含む方法に関する。
・・・(中略)・・・
【0063】
主要な態様では、本発明は、優れた特性を有するPZT膜をもたらすCVD条件の選択のための方法論に関する。この方法論は、「A/Bプラトー効果」を利用して、その電気特性が、強誘電体ランダムアクセスメモリ(FeRAM)といった強誘電体不揮発性(NV)メモリの最適要件と合致する容量性PZT膜の製作を実現する。この「A/Bプラトー効果」は後述するが、平滑度と粒径は、特定の核形成および成長現象を修正することによって制御可能であるという概念に基づいている。後述するように、堆積条件と処理パラメータを選択するための原理の完全なる集合によって、当該技術分野において実現不可能と前は考えられていたPZT膜特性、特に、非ドープPZTに対する低インプリント、および、低厚(例えば、20nmまでの厚さ)への電界スケーリングがもたらされる。
・・・(中略)・・・
【0071】
マトリクスからのモデルデータは、従属変数:膜におけるPbの原子%、強誘電性分極(PSW)、および漏れ電流密度(log J)に対する独立(プロセス変数)P、T、および(A/B)_(solution)の基本的な関係を示す。これらの独立変数のうち、(A/B)_(solution)は、前駆体液体試薬溶液が前駆体の溶液中にあるように同じ気相組成を実現するように蒸発させられるので、(A/B)_(gas)に等しい。
【0072】
従属変数(図2のモデルデータマトリクスにおける強誘電体膜の中心領域および端領域の平均値を含む)に対して生成された様々な曲線を見てみると、「ニー(knee)」または変曲点が示され、この点以降は、曲線は、所与の独立プロセス変数P、T、(A/B)_(solution)の値が増加する方向において平らになる。このニー点またはその付近において動作させることによって、本発明の優れたPZT材料が生成される。ニー点の「付近」とは、独立プロセス変数に応じて異なる。溶液A/B比および圧力の場合、付近は、好適にはニー点の±25%内にあり、また、温度については、付近は、好適にはニー点の±5%内にある。
【0073】
図2に示す具体的なデータについて、この「ニー」点は、溶液A/B比では1.02であり、堆積圧では1750ミリトールであり、堆積温度では575℃である。これらの独立変数値を選択することによって、かかるA/B溶液比、圧力、および温度で生成される、本発明の優れたPZT材料を生成する対応する従属値が容易に決定されうる。この従属値には、動作電圧において1平方センチメートルあたり-4.35アンペアであるLog J_(ave)中心値、動作電圧において1平方センチメートルあたり-6.77アンペアであるLog J_(ave)端値、1平方センチメートルあたり35.1μCであるPSW端値、1平方センチメートルあたり33.7μCであるP_(SW)中心値、および52.3%であるPbの原子%が含まれる。
【0074】
したがって、本発明は「プラトー効果決定」を包含し、この「プラトー効果決定」は、後述するように、温度、圧力、および液体前駆体溶液A/B比(A/B比はPb対(Zr+Ti)の比率である)のそれぞれの関数として、強誘電性分極、漏れ電流密度、およびPZT膜における鉛の原子百分率のそれぞれを示すプロットの相関実験的マトリクスを確立するステップと、温度、圧力、および液体前駆体溶液A/B比の独立プロセス変数に対して動作の領域を定義する各プロットの「ニー(knee)」、すなわち、変曲点を特定する
ステップと、後述するように、そのような動作の領域から選択される温度、圧力、および液体前駆体溶液A/B比の対応値においてMOCVDプロセスを行うステップを含む。
・・・(中略)・・・
【0097】
例2
様々なPb/(Zr+Ti)比を有する溶液を、一連の堆積ランに用いた。この比率は、以下、(A/B)_(g)として定義され、これは、ペロブスカイトセル、ABO_(3)における、Pbの「A」部位への、および、ZrならびにTiそれぞれの「B」部位への従来の割当てを示す。下付き文字gは反応チャンバにおける気相濃度を示し、その一方で(A/B)_(f)は膜における当量比を示す。
【0098】
Zr/(Zr+Ti)の気相比は0.612で一定に保たれた。例1において上述した条件下で、かつ、用いられた特定のCVD反応器に対して、Zr/(Zr+Ti)=0.612の気相比は、Zr/Tiが?40/60である膜をもたらし、これは、バルク材では正方結晶構造および強誘電特性をもたらした。この気相比は、その高いPrと、低いZr/Ti比ではペロブスカイト相を形成することが比較的簡単であることによってFeRAM応用に選択される一般的な組成である。
【0099】
次に、一連のPZT膜が固定の堆積時間で、下記の表1に記載するプロセス条件下で堆積された。この実験に基づく研究において決められる(A/B)_(g)の(A/B)_(f)への効果を図1に示す。公称膜厚は100nmであった。低(A/B)_(g)では、(A/B)_(f)は気相の鉛のモル分率とともに単調に増加した。0.93<(A/B)_(g)<1.53の範囲では、(A/B)_(f)において、1.10から1.15の範囲でプラトーが観察された。これらの膜については、ペロブスカイト相は存在する唯一の結晶相であった。
・・・(中略)・・・
【0107】
X線回折分析によって、(A/B)_(g)>0.83で堆積された膜については単ペロブスカイト相が明らかとなった。(A/B)_(g)<0.83では、2Θ=29.9°において追加のピークが観察された。このピークの強度は(A/B)_(g)が増加すると減少し、鉛が不足した堆積条件下での望ましくないパイロクロア相の形成に因るものである。
・・・(中略)・・・
【0109】
最良の電気特性は、図1に示す曲線のニーの直ぐ上の(A/B)_(g)を有する膜に対して見出された。もっと高いまたはもっと低い(A/B)_(g)を有する膜では電気的に短絡してしまった。3Vの動作では、(A/B)_(g)=0.93で堆積された150nmの厚さを有する膜では、残留分極(2Pr)および抗電圧(V_(c))が、それぞれ、85μC/cm^(2)および0.77Vであると測定された。残留分極のこの高い値は、強い優先(001)配向と、Ir基板において得られる高度の結晶化に因るものである。

【図1】 フィルム組成 対 気相組成


【図2】


4-2.当審の判断

本願の発明の詳細な説明には、段落0007?0010に、本発明の解決しようとする課題(目的)が、膜厚が低減するにしたがって抗電界が増加し分極が減少する薄膜PZTにおいて、高い分極と低電圧動作が可能なPZTの堆積プロセスを提供することにあると記載されている。
そして、段落0038,0039には、当該堆積プロセスとして、液体供給MOCVDにより膜を形成することが記載され、段落0040,0063には、当該MOCVDにおいては、プラトー効果決定によって決められる液体前駆体溶液A/B比(=Pb対(Zr+Ti)の比率)で基板上へ膜を形成すると記載されている。
以上の記載によれば、液体前駆体溶液においては、プラトー効果決定によって決められるA/B比を有することにより、本発明は、その課題を解決したものと認められる。

次に、上記の「プラトー効果決定によって決められるA/B比」について、段落0028,0071?0074,図2には、液体前駆体溶液A/B比の関数として、強誘電性分極、漏れ電流密度、およびPZT膜における鉛の原子百分率のそれぞれをプロットし、生成された曲線に示される変曲点(ニー/knee)の液体前駆体溶液A/B比が1.02となるモデルデータにおいて、その±25%内にあるA/B比であると記載され、当該変曲点の溶液A/B比で得られる本発明の優れたPZT材料の特性値も記載されている。
以上の記載によれば、発明の詳細な説明には、プラトー効果決定によって決められるA/B比の一例として、「1.02±25%以内」は記載されていると認められるが、他の数値範囲について記載はないし、技術常識から自明なことでもない。

してみると、液体前駆体溶液の発明であるにもかかわらず、A/B比を特定していない請求項1に係る発明はもちろん、A/B比を0.612?1.53と特定している請求項2に係る発明も、発明の詳細な説明において、その課題を解決することが記載された発明ではない。

なお、請求人は意見書で、請求項2に記載されたA/B比「0.612」と「1.53」は、それぞれ段落0098,0099に記載されていると主張しているので検討する。
段落0098記載の「0.612」は、実施例2における「Zr/(Zr+Ti)」すなわちB原子中のZr比であってA/B比ではない。一方、段落0099記載の「1.53」は、段落0071で、溶液A/B比に等しいと記載された気相A/B比であるが、この値は、実施例2においてフィルム組成のプラトーが観察される上限値にすぎず、当該A/B比において優れたPZT材料が得られるとは記載されていない。
むしろ、段落0109には、実施例2における最良の電気特性が、変曲点(0.93)直ぐ上のA/B比を有する膜で得られた一方で、それより高い膜も低い膜も短絡してしまったことが記載されており、段落0107には、A/B比が0.83未満では、望ましくないパイロクロア相が形成されることも記載されている。強誘電性を示さないパイロクロア相が形成されたPZT材料(要すれば、特開平6-349324号公報段落0033等参照)が、本発明の課題を解決するものでないことは明らかである。
すなわち、この実施例2の記載は、請求項2に記載された数値範囲を裏付けるものではない。
したがって、上記主張は採用できない。

5.進歩性要件違反について

5-1.引用例の記載

引用例1
(訳文は、パテントファミリー特表2001-524981号公報による。)
摘示1-1(明細書2頁19行?3頁10行)
Available metal alkoxide and metal β-diketonate precursors generally have only very low vapour pressures, so that high source temperatures are required for MOCVD. For example, Pb(thd)_( 2) is typically transported at above 130 ℃ and Zr(thd)_( 4) at above 160 ℃. In conventional MOCVD in which a carrier gas is passed through a precursor held at a high temperature for the duration of the deposition process, this can lead to thermal ageing, i.e. decomposition of the precursor prior to transport into the reactor.
One way of avoiding this problem has been to use liquid injection MOCVD, in which a solution of the precursor(s) in an appropriate solvent, e.g. tetrahydrofuran, is evaporated and then transported to the substrate. In this way the precursor is only subjected to heating during evaporation rather than for the duration of the MOCVD process.
For ease of handling and volatility, toxicity and decomposition characteristics, the optimum precursor combination for MOCVD of PZT is Pb(thd)_( 2) , Zr(thd)_( 4) and either Ti(OPr^(i))_(4) or Ti(OPr^(i))_(2)(thd)_(2).
(訳文)
有効な金属アルコキシドや金属β-ジケトネート前駆物質の蒸気圧は、一般的には非常に低いのでMOCVDには高ソース温度が必要である。例えば、Pb(thd)_(2)は典型的には130℃より高い温度で輸送され、Zr(thd)_(4)は160℃より高い温度で輸送される。堆積工程の期間中高温に保たれる前駆物質をキャリヤガスが通過する従来のMOCVDにおいては、熱老化することがある。即ち、リアクタに輸送する前に前駆物質を分解することがある。
この問題を回避する方法は、液体注入MOCVDを用いるものであり、適切な溶媒、例えば、テトラヒドロフラン中前駆物質の溶液を蒸発させてから基板に輸送する方法である。この方法では、前駆物質をMOCVD工程の期間中ではなく蒸発中にだけ加熱する。
取り扱いの容易さや揮発性、毒性及び分解性に対してPZTのMOCVDに最適な前駆物質の組合わせは、Pb(thd)_(2)、Zr(thd)_(4)とTi(OPr^(i))_(4)かTi(OPr^(i))_(2)(thd)_(2)である。

引用例2
(訳文は、パテントファミリー特表2001-521584号公報による。)
摘示2-1(明細書6頁5行?7頁24行)
In another aspect, the present invention relates to a method of forming an SBT film on a substrate by chemical vapor deposition from precursors for the strontium, bismuth and tantalum constituents, wherein the bismuth precursor comprises a bismuth tris (β-diketonate) complex, preferably an anhydrous mononuclear bismuth β-diketonate. The strontium and tantalum precursors may be of any suitable precursor types as source materials for such metal components, but strontium (2,2,6,6-tetramethyl-3,5-heptanedionato)_( 2) (L), wherein the ligand L is tetraglyme or pentamethyldiethylenetriamine, is a preferred Sr precursor, and the tantalum precursor most preferably comprises Ta(OiPr)_( 4) (2,2,6,6-tetramethyl-3,5-heptanedionate).

For liquid delivery, the above-discussed SBT precursors may be mixed with any suitable solvent medium, e.g., an 8:2:1 mixture of tetrahydrofuran/isopropanol/tetraglyme, or, more preferably, a 5:4: 1 ratio mixture of octane, decane and pentamethyldiethylenetriamine, with the respective Sr, Bi and Ta precursors being individually stored (in solution) in separate reservoirs or supply vessels.

Prior to delivery, the three precursor solutions may be mixed in a liquid delivery system such as that disclosed in U.S. Patent 5,204,314 issued April 20, 1993 in the names of Peter S. Kirlin, et al., the disclosure of which hereby is incorporated herein by reference in its entirety. The resulting precursor liquid mixture then may be vaporized at suitable temperature in the range of for example 150-240℃, optionally with argon or other carrier gas to transport the resulting multicomponent precursor vapor to the CVD reactor for contacting with the hot substrate.
・・・(中略)・・・
The solvent mixture of 8:2.1 tetrahydrofuran/isopropanol/tetraglyme desc#bed above is illustrative, and other solvent mixtures may be employed. A particularly preferred solvent mixture for the precursors is a 5:4:1 octane/decane/pentamethyldiethylenetnarnine mixture.

While the method of the invention is primarily addressed herein in relation to formation of ferroelectric SBT films and device structures on a substrate, the invention is also generally applicable to the formation of other ferroelectric films, including bismuth-containing strontium-based materials, bismuth-containing titanium-based materials and other bismuth- containing film materials including other metallic and oxide components.
(訳文)
別の局面において、この発明は、ストロンチウム成分、ビスマス成分およびタンタル成分に対する前駆物質から化学蒸着によって基板上にSBT膜を形成する方法であって、そのビスマス前駆物質が、ビスマストリス(β-ジケトネート)錯体、好ましくは無水単核ビスマスβ-ジケトネートを含む方法に関する。ストロンチウム前駆物質およびタンタル前駆物質は、そのような金属成分に対する原料として適当な前駆物質のタイプであればどのようなものであってもよいが、ストロンチウム(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト)_(2)(L)(ここで配位子Lはテトラグリムまたはペンタメチルジエチレントリアミンである)が好ましいSr前駆物質であり、タンタル前駆物質はより好ましくはTa(OiPr)_(4)(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)を含む。
液配達のため、上述のSBT前駆物質は、たとえば、テトラヒドロフラン/イソプロパノール/テトラグリムの8:2:1混合物、またはより好ましくは、オクタン、デカンおよびペンタメチルジエチレントリアミンの5:4:1比の混合物等の任意の適当な溶媒と混合され、それぞれのSr前駆物質、Bi前駆物質およびTa前駆物質は別個の貯蔵容器または供給容器に(溶液の状態で)個別に貯蔵される。
配達に先立って、これら3つの前駆物質溶液は、Peter S.Kirlinらの名のもと1993年4月20日に発行された米国特許第5,204,314号に開示されるような液体配達システムにおいて混合されてもよく、この開示の全体をここに引用により援用する。得られた前駆物質液体混合物を、次いで、たとえば150?240℃の範囲の適当な温度で、必要に応じてアルゴンまたは他の担体(キャリア)ガスとともに、気化させ、生ずる複数成分前駆物質蒸気をCVD反応器に輸送して高温の基板に接触させてもよい。
・・・(中略)・・・
上述した8:2:1のテトラヒドロフラン/イソプロパノール/テトラグリムの溶媒混合物は例示的なものであり、他の溶媒混合物を用いてもよい。上記の前駆体に対し特に好まれる溶媒混合物は、5:4:1のオクタン/デカン/ペンタメチルジエチレントリアミンの混合物である。
この発明の方法はここでは基板上に強誘電性SBT膜および装置構造を形成することに関して主に記載されるものであるが、この発明は一般に他の強誘電性膜の形成にも適用可能であり、これには、ビスマス含有ストロンチウム系材料、ビスマス含有チタン系材料、ならびに他の金属および酸化物成分を含む他のビスマス含有膜材料が含まれる。

5-2.引用発明の認定

引用例1(摘示1-1)には、PZTの液体注入MOCVDに適した前駆物質の溶液として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「溶媒中に前駆物質の組合わせを含む溶液であって、
該前駆物質が、Pb(thd)_(2)、Zr(thd)_(4)とTi(OPri)_(2)(thd)_(2)であり、
溶媒がテトラヒドロフランである溶液。」

5-3.発明の対比

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用発明とを対比すると、引用発明の「溶媒」「前駆物質」「組合せを含む溶液」「Pb(thd)_(2)」「Zr(thd)_(4)」「Ti(OPri)_(2)(thd)_(2)」が、それぞれ本願発明の「溶媒媒体」「前駆体」「混合液」「鉛ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)」「ジルコニウムテトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)」「Ti(O-i-Pr)_(2)(thd)_(2)」に相当するから、本願発明のうち、
「溶媒媒体に溶解させた鉛、ジルコニウム及びチタンの前駆体を含む液体前駆体溶液の混合液であって、
(i)鉛前駆体が、鉛ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、(ii)ジルコニウム前駆体が、ジルコニウムテトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、(iii)チタン前駆体が、Ti(O-i-Pr)_(2)(thd)_(2)である混合液。」
の点は、引用発明との差異にはならず、両者は、次の点で相違する。

相違点1:本願発明の溶媒媒体が、オクタン、デカン及びポリアミンを含むのに対し、引用発明の溶媒は、テトラヒドロフランである点、

相違点2:本願発明の鉛、ジルコニウム及びチタンの前駆体が、リガンド交換を受けていないのに対し、引用発明の各前駆物質が、リガンド交換を受けているか否か不明である点。

5-4.相違点の判断

相違点1について
引用例2(摘示2-1)には、ストロンチウム成分、ビスマス成分およびタンタル成分に対するβ-ジケトネート錯体の前駆物質から化学蒸着によって基板上にSBT膜を形成する方法において、前駆物質液体混合物の溶媒として、8:2:1のテトラヒドロフラン/イソプロパノール/テトラグリムの混合物よりも、5:4:1のオクタン/デカン/ペンタメチルジエチレントリアミンの混合物の方が好ましいことや、当該方法が、他の強誘電性膜の形成にも適用可能であることが記載されている。さらに、同様のMOCVD法を適用してSBT膜とPZT膜を形成することは、本願優先権主張の基礎とされた先の出願前周知(要すれば、特開平8-340086号公報段落0063、特開平10-182300号公報段落0002,0023、特開平10-195656号公報段落0008等参照)である。
してみると、SBT膜と共に周知の強誘電体膜であるPZT膜の形成のための前駆物質液体混合物であって(摘示1-1)、β-ジケトネート錯体を前駆物質として含む引用発明において、テトラヒドロフラン溶媒に換え、オクタン、デカン及びポリアミンを含む溶媒を使用すること、すなわち、相違点1を解消することは、引用例2の記載や周知技術に基づき当業者が容易になし得たことである。

相違点2について
本願発明の「リガンド(配位子)交換を受けていない」について、本願明細書の段落0093には、引用発明と同一の前駆物質の組合せを用いた実施例1において、リガンド(配位子)交換が生じないことが記載されている。
すなわち、相違点2は実質的な差異ではない。

6.むすび

以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36第6項第1号に規定する要件を満たしていない。また、本願発明は、引用例1,2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、当審拒絶の理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-01-07 
結審通知日 2014-01-08 
審決日 2014-01-22 
出願番号 特願2000-600296(P2000-600296)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01B)
P 1 8・ 537- WZ (H01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山下 裕久  
特許庁審判長 山田 靖
特許庁審判官 大橋 賢一
小柳 健悟
発明の名称 液体前駆体溶液の混合液及び前駆体蒸気  
代理人 稲葉 良幸  
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