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審決分類 審判 全部無効 1項2号公然実施  F24D
審判 全部無効 2項進歩性  F24D
管理番号 1288368
審判番号 無効2013-800115  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-07-01 
確定日 2014-06-02 
事件の表示 上記当事者間の特許第5176209号発明「温風床暖房システムおよびその設置方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5176209号の請求項1?11に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第5176209号は、平成20年10月30日に出願され、平成25年1月18日に設定登録がされたものであるところ、請求人は、平成25年7月1日に特許無効審判を請求し、被請求人に対し、期間を指定して答弁書を提出する機会を与えたが、被請求人からは何らの応答もなかったものである。

2.本件発明
本件特許第5176209号の請求項1?11に係る発明(以下それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明11」ともいう。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?11に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
床暖房対象居室の所定位置の床下のコンクリート層に温風発生装置を着脱可能に格納し閉蓋した箱体を設置し、上部の床面に点検口を設置することにより点検可能とした温風床暖房システムにおいて、前記の箱体は1側面に複数箇所の温風の吐出口と同数の戻り口を有し、吐出口から戻り口まで送風ダクトを空気抵抗が同等になるよう接合してなる温風循環通路が密閉空間を形成し、居室全体の前記床下のコンクリート層に偏りなく敷設埋設された前記温風循環通路に送風ファンによって温風を送り込み、前記床下のコンクリート層を均等に暖め、蓄熱し、床材を通じて居室全体を輻射伝熱により暖房することを特徴とする温風床暖房システム。
【請求項2】
温風が循環する区域は前記温風循環通路および前記温風発生装置内に限られ、前記温風発生装置は閉蓋されることにより、前記温風循環通路および前記温風発生装置内の空間がほぼ密閉され、温風が居室内に排出することはなく、また空気層が前記床下のコンクリート層と前記床材との間に存在する施工例においても前記空気層内の空気が前記居室内に排出することはないことを特徴とする、請求項1に記載の温風床暖房システム。
【請求項3】
前記温風による蓄熱は、1台で、蓄熱時間帯と放熱時間帯を区分けし、且つそれぞれに対応して蓄熱温度を設定し制御する機能を持つ床暖房コントローラを備えて行うことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の温風床暖房システム。
【請求項4】
方位別に蓄熱温度を設定することにより、当該方位の暖房能力を区分することを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の温風床暖房システム。
【請求項5】
前記温風発生装置は、温風に熱交換するヒーターの熱源により、同寸法の箱体に格納できるよう電気式温風発生装置と温水式温風発生装置を用意し、現況のエネルギー環境によりいずれかを選択し、将来のエネルギー環境の変化に対応し取り替えられることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の温風床暖房システム。
【請求項6】
前記電気式温風発生装置は、外部の加熱源である電源盤から電気を受け、前記電気式温風発生装置内の電気回路に電気を配電する端子台と、パワーリレーと、ファンモーター用コンデンサーと、前記送風ファンと、同装置内の空気を所定の温度に保つ可変式温度制御器と、温風に熱交換するヒーターシーズと、過熱防止のためのサーモスタットを有する集積装置であることを特徴とする、請求項5に記載の温風床暖房システム。
【請求項7】
前記温水式温風発生装置は、外部の前記加熱源である温水供給機から送られる温水を導く導管と、前記導管内の温水温度を検知する温度センサーと、送風ファン用サーモスタットと、ファンモーター用コンデンサーと、送風ファンと、前記導管内の温水流量を調節する電動弁と、温風に熱交換されるラジエーターと、前記温水式温風発生装置の電気回路に配電する端子台を有する集積装置であることを特徴とする請求項5に記載の温風床暖房システム。【請求項8】
前記温風循環通路を、窓開口部直下部位の居室の一部に設置されたカウンター内の立ち上げカウンター内の空気を暖め、カウンター上部の吹出口から上昇させ、コールドドラフト防止対策として利用することを特徴とする、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の温風床暖房システム。
【請求項9】
前記温風発生装置の運転休止中、前記密閉空間の湿気を外部に放出し、所定の相対湿度まで下げる湿度制御器と、前記密閉空間の湿気を外部に放出する電動弁および湿気放出管を前記温風発生装置に備えることを特徴とする、請求項2ないし請求項8のいずれに記載の温風床暖房システム。
【請求項10】
床下砕石の上部に、基礎床コンクリートに蓄熱された熱の還流損失を防止するための断熱材を敷設する工程と、前記断熱材の上に前記基礎床コンクリートの耐過重性向上のため組込む下部鉄筋を配筋する工程と、前記下部鉄筋の上部に、居室全体を均一に暖めるため特定された、温風発生装置を格納した箱体を設置する工程と、前記居室の室外から前記箱体に接続される加熱電源線を通線した管路または加熱源温水を供給する導管を納管した管路を設置する工程と、前記箱体に接続され、前記基礎床コンクリートを暖める温風循環通路を設置する工程と、前記温風発生装置と前記温風循環通路により形成される密閉空間の湿気を外部に放出する湿気放出管を設置する工程、前記基礎床コンクリート内の温度を検知する温度センサーを導入した管路および前記温度センサーで得た検知情報を、前記温風発生装置を蓄熱時間帯と放熱時間帯に対応して制御する機能を有する床暖房コントローラに伝達する電線を導入した管路を設置する工程と、前記温風発生機内の端子台に接続された電源が前記端子台の異なる部位から分岐され、前記床暖房コントローラに送られる電源線を導入した管路を設置する工程と、前記基礎床コンクリートの耐過重性向上のため組込む上部鉄筋を順次配筋する工程と、前記箱体の高さを超える厚さの前記基礎床コンクリートに蓄熱する場合においては、前記箱体にコンクリートが入らぬよう前記箱体の上端部を超える高さの仮蓋を取付ける工程と、前記温風循環通路の下端部から前記箱体の上端部まで前記基礎床コンクリートを打設する工程と、前記基礎床コンクリートの上部に取付ける床材を敷設する工程と、前記温風発生装置のメンテナンスのため、前記温風発生装置を格納した前記箱体に対応する大きさの点検口を、前記箱体の上部に取付ける工程と、熱源供給設備を据え付ける工程とを有することを特徴とする、温風床暖房システムの設置方法。
【請求項11】
床下砕石の上部に打設された基礎床コンクリート層の上部および周囲に断熱材を敷設する工程と、前記断熱材の上部に、居室全体を均一に暖めるため特定された、温風発生装置を格納した箱体を設置する工程と、前記居室の室外から前記箱体に接続される加熱電源線を通線した管路または加熱源温水を供給する導管を納管した管路を設置する工程と、前記箱体に接続され、床下コンクリートを暖める温風循環通路を設置する工程と、前記温風発生装置と前記温風循環通路により形成される密閉空間の湿気を外部に放出する湿気放出管を設置する工程と、前記床下コンクリート内の温度を検知する温度センサーを導入した管路および前記温度センサーで得た検知情報を、前記温風発生装置を蓄熱時間帯と放熱時間帯に対応して制御する機能を有する床暖房コントローラに伝達する電線を導入した管路を設置する工程と、前記温風発生機内の端子台に接続された電源が前記端子台の異なる部位から分岐され、前記床暖房コントローラに送られる電源線を導入した管路を設置する工程と、前記床下コンクリートの上端部直下に前記床下コンクリートを補強するためのメッシュを敷設する工程と、前記箱体の高さを超える厚さの前記床下コンクリートに蓄熱する場合においては、前記箱体にコンクリートが入らぬよう前記箱体の上端部を超える高さの仮蓋を取付ける工程と、前記温風循環通路の下端部から床材下端部まで前記床下コンクリートを打設する工程と、前記床下コンクリートの上部に取付ける床材を敷設する工程と、前記温風発生装置のメンテナンスのため、前記温風発生装置を格納した前記箱体に対応する大きさの点検口を、前記箱体の上部の床面に取付ける工程と、熱源供給設備を据え付ける工程とを有することを特徴とする、温風床暖房システムの設置方法。」

3.請求人の主張及び証拠方法
請求人は、「第5176209号の特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、無効理由の概要は以下のとおりであり、本件特許は無効とすべきであると主張している。

<無効理由1(特許法第36条第4項第1号違反)>
本件の発明の詳細な説明の記載は,当業者が請求項1,6,7,9,10,11に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、本件特許は特許法第36条第4項第1号規定の実施可能要件に違反するから、特許法特許法第123条第1項第4号の規定により、無効とすべきである。

<無効理由2(特許法第36条第6項第1号違反)>
本件特許における請求項1,6,7,10,11に係る発明は,本件の発明の詳細な説明に記載されておらず、特許法第36条第6項第1号に規定するサポート要件に違反するから、特許法第123条第1項第4号の規定により、無効とすべきである。

<無効理由3(特許法第36条第6項第2号違反)>
本件特許における請求項1?11に係る発明は、明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するから、特許法第123条第1項第4号の規定により、無効とすべきである。

<無効理由4(特許法第17条の2第3項違反)>
本件特許出願の審査の過程でなされた補正は、本件特許出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(甲第29号証)に記載されていない新規事項を導入するものであり、本件特許は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するから、特許法第123条第1項第1号の規定により、無効とすべきである。

<無効理由5(特許法第29条第1項第1号又は第3号違反)>
本件特許の請求項1,2に係る発明は、いずれも、その出願前に、松鹿設計製作所によって配布された甲第1号証(甲第2号証?甲第8号証によって補強)をもって示される温風式床暖房設備に係る発明と同じものであり、特許法第29条第1項第1号又は第3号の規定により特許を受けることができないから、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきある。

<無効理由6(特許法第29条第1項第2号違反)>
本件特許の請求項1,2に係る発明は、いずれも、その出願前に公然実施された特別養護老人ホーム「ハーモニーみどりケ丘」における温風式床暖房設備に係る発明と同じものであり、特許法第29条第1項第2号の規定により特許を受けることができないから、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。

<無効理由7(特許法第29条第2項違反)>
(i)本件特許の請求項1,2に係る発明は、いずれも、
(a)その出願前に頒布された甲第1号証(甲第2号証?甲第8号証によって補強)に記載された発明、
(b)その出願前に公然実施された特別養護老人ホーム「ハーモニーみどりケ丘」における温風式床暖房設備に係る発明、
のいずれかに基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項進歩性の規定に違反する。
(ii)本件特許の請求項1,2に係る発明は、いずれも、その出願前に頒布された甲第22号証?甲第24号証及び甲第7号証に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項進歩性の規定に違反する。
(iii)本件特許の請求項3?11に係る発明は、いずれも、
(a)その出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明、
(b)その出願前に公然実施された特別養護老人ホーム「ハーモニーみどりヶ丘」における温風式床暖房設備に係る発明、
のいずれかに、甲第25号証?甲第28号証を適宜、適用することにより、当業者が容易に発明することができたものであり、本件特許は特許法第29条第2項進歩性の規定に違反する。
また、本件特許の請求項4に係る発明については、上記(iii)(b)さらには甲第23号証、甲第5号証(又は甲第6号証)に基づき、当業者が容易に発明することができたものであり、本件特許は特許法第29条第2項進歩性の規定に違反する。
さらに、本件特許の請求項5に係る発明については、上記(iii)(b)さらには甲第22号証、甲第5号証及び甲第6号証、甲第23号証のいずれかに基づき、当業者が容易に発明することができたものであり、本件特許は特許法第29条第2項進歩性の規定に違反する。
また、本件特許の請求項7に係る発明については、上記(iii)(b)さらには甲第22号証及び甲第6号証に基づき、当業者が容易に発明することができたものであり、本件特許は特許法第29条第2項進歩性の規定に違反する。
(iv)本件特許の請求項3?11に係る発明は、その出願前に頒布された甲第22号証に、甲第23号証?甲第28号証及び甲第7号証を適宜、適用するとにより、当業者が容易に発明することができたものであり、本件特許は特許法第29条第2項進歩性の規定に違反する。
したがって、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。

また、上記各無効理由を立証するための証拠方法は、以下のとおりである。

[証拠方法]
(1)書証
甲第1号証-1:有限会社松鹿設計製作所 代表取締役 松鹿明生が社会福祉法人心愛会のために作成した特別養護老人ホーム「ハーモニーみどりヶ丘」における温風式床暖房設備の設計図(敷設図:2005年3月24日に作成)
甲第1号証-1(z1):甲第1号証-1の一部拡大図
甲第1号証-1(z2):甲第1号証-1の一部拡大図
甲第1号証-2:有限会社松鹿設計製作所 代表取締役 松鹿明生が社会福祉法人心愛会のために作成した特別養護老人ホーム「ハーモニーみどりヶ丘」における温風式床暖房設備の設計図(甲第1号証-1の仕様等を詳細に示す仕様図:2005年3月24日に作成)
甲第1号証-2(z1):甲第1号証-2の一部拡大図
甲第1号証-2(z2):甲第1号証-2の一部拡大図
甲第1号証-3:有限会社松鹿設計製作所 代表取締役 松鹿明生が社会福祉法人心愛会のために作成した特別養護老人ホーム「ハーモニーみどりヶ丘」における建築物の一部を示す設計図(甲第1号証-1に示された一部の領域(上段側建築物における領域であって、下段側建築物の左側外方に突き出している領域)における建築物の縦断面図)
甲第1号証-3(z1):甲第1号証-3の一部拡大図
甲第1号証-3(z2):甲第1号証-3の一部拡大図
甲第2号証:株式会社日興のウェブページ (http://www.yk.rim.or.jp/^(?)nikko/)
甲第3号証:有限会社北翔システムズから株式会社日興への注文書(発注日:平成19年1月9日)
甲第4号証:有限会社北翔システムズから株式会社日興への注文書(発注日:平成19年1月9日)
甲第5号証:LEGALETT社製ヒーティッグユニット4000Eを示すカタログ(発行日:2005年4月7日)
甲第6号証:LEGALETT社製ヒーティッグユニット4000Wを示すカタログ(発行日:2005年4月7日)
甲第7号証:ヒーティングユニット4000E又は4000Wを格納するためのLEGALETT社製ヒーティングユニットボックス4000A 100/100 を示すカタログ(発行日:2005年4月18日)
甲第8号証:甲第1号証-1に示す一部の領域(上段側建築物における領域であって、下段側建築物の左側外方に突き出している領域)を拡大して示す詳細拡大図
甲第9号証:福島県内における建設業界紙「建設福島」に掲載されるウェブページ「入札集計2005年10月」(http://www.kshinpo.com/member/nyusatu/n2005_10.html)
甲第10号証:有限会社松鹿設計製作所 代表取締役 松鹿明生と社会福祉法人心愛会 理事長 三瓶英才との間で結んだ建築設計・監理業務委託契約書
甲第11号証:特別養護老人ホーム(仮称)ハーモニーみどりヶ丘新築工事に関する建築物確認申請書
甲第12号証:有限会社松鹿設計製作所(代表取締役松鹿明生)による証明書
甲第13号証:有限会社松鹿設計製作所(代表取締役松鹿明生)による証明書
甲第14号証:建築基準法第7条の2第5項の規定による検査済証
甲第15号証:有限会社松鹿設計製作所(代表取締役松鹿明生)による証明書
甲第16号証:社会福祉法人心愛会(常務理事三瓶英司)による証明書
甲第17号証:特別養護老人ホーム「ハーモニーみどりヶ丘」における温風式床暖房設備の施工風景を示す写真(撮影日時:2006年1月26日)
甲第18号証:甲第17号証と同じ施工現場をその甲第17号証の写真とは異なる位置から撮影した写真(撮影日時:2006年1月26日)
甲第19号証:特別養護老人ホーム「ハーモニーみどりヶ丘」の施工図(株式会社日興 中川秀二氏及び草柳正博氏作成)
甲第20号証:甲第19号証の一部拡大図(株式会社日興 中川秀二氏及び草柳正博氏作成)
甲第21号証:社会福祉法人心愛会が作成した広報誌(発行日:平成20年4月1日)
甲第22号証:特開2004-162990号公報(平成16年6月10日公開)
甲第23号証:レガレット・ビッグシステム・エービーが作成した『基礎と、床暖房システム』と題するパンフレット(発行日:2005年6月15日)
甲第24号証:特許第5176209号(発行日:平成25年4月3日、本件特許公報)
甲第25号証:特開平2005-127536号公報(平成17年5月19日公開)
甲第26号証:特開平2001-248885号公報(平成13年9月14日公開)
甲第27号証:特開平2001-304594号公報(平成13年10月31日公開)
甲第28号証:特開平11-118365号公報(平成11年4月30日公開)
甲第29号証:特願2008-279743号(本件特許に係る明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書が添付された願書)
甲第30号証:検証物が設けられている特別養護老人ホーム「ハーモニーみどりヶ丘」における地域交流スペース(部屋名)の室内状況を示す写真(撮影日時:2013年6月17日)
甲第31号証:上記地域交流スペースにおける床点検口の蓋体が閉じられた状態を示す写真(撮影日時:2013年6月17日)
甲第32号証:上記地域交流スペースにおける床点検口の蓋体が取り外された状態を示す写真(撮影日時:2013年6月17日)
甲第33号証:上記地域交流スペースにおけるヒーティングユニットボックスの上蓋が開蓋された状態を示す写真(撮影日時:2013年6月17日)
甲第34号証:上記地域交流スペースにおけるヒーティングユニットボックス内からヒーティングユニットが取り外された状態を示す写真(撮影日時:2013年6月17日)
甲第35号証:上記地域交流スペースにおけるヒーティングユニットボックス内からヒーティングユニットが取り外された状態を別の角度から示す写真(撮影日時:2013年6月17日)

(2)人証
証人:松鹿明生(東京都世田谷区宮坂1-37-15、有限会社松鹿設計製作所代表取締役)
証人:三瓶英司(福島県郡山市緑ヶ丘東六丁目26-2(郡山東部ニュータウン内)、社会福祉法人心愛会常務理事)

(3)検証
検証物:特別養護老人ホーム「ハ-モニ-みどりヶ丘」において施工された温風式床暖房設備(福島県郡山市緑ヶ丘六丁目26-2(郡山東部ニュータウン内))

なお、請求人が上記人証及び検証により証明しようとする事実についての証拠調べは、必要ないものとした。
また、被請求人から答弁書の提出はなく、上記事実に対する反論はされていない。

4.甲第1号証-1?甲第28号証、甲第30号証?甲第35号証について
甲第1号証-1?甲第28号証、甲第30号証?甲第35号証には、それぞれ以下の事項が記載または開示されている。

[甲第1号証-1]
甲第1号証-1には、その一部拡大図である甲第1号証-1(Z1)、甲第1号証-1(Z2)と併せてみると、図面の下部中央及び右側に、「松鹿設計製作所 東京都世田谷区宮坂1-37-15」、「設計 NO. 0」、「月日 2005-03-24」、「縮尺 1/200」、「特別養護老人ホーム(仮称)ハ-モニ-みどりヶ丘新築工事」、「温風式床暖房設備 敷設図」と記載があり、これらの記載事項等を総合してみると、甲第1号証-1は、本件特許出願前の2005年3月24日頃に松鹿設計製作所が作成した特別養護老人ホーム(仮称)ハ-モニ-みどりヶ丘新築工事の温風式床暖房設備敷設図に関する設計図であると認めることができる。
また、温風式床暖房設備敷設図の設計図には、温風式床暖房設備の敷設が以下(以下の図は甲第1号証-1を一部抜粋したもの。)のように記載されている。
(a)


[甲第1号証-2]
甲第1号証-2には、その一部拡大図である甲第1号証-2(Z1)、甲第1号証-2(Z2)と併せてみると図面の下部中央及び右側に、「松鹿設計製作所 東京都世田谷区宮坂 1-37-15」、「月日 2005-03-24」、「縮尺 ---」、「特別養護老人ホーム(仮称)ハ-モニ-みどりヶ丘新築工事」、「温風式床暖房設備 仕様図」と記載されている。
また、「仕様及び特記事項」、「工事区分」、「施工断面図1/20」、「ヒーティングユニット姿図・仕様」、「ヒーティングユニット部」、「制御盤姿図」及び「温度コントローラETV姿図・仕様」の標題の下に、それぞれ以下の事項が記載されている。
(1a)

(1b)

(1c)

(1d)

(1e)


(1f)

(1g)


(1h)

これらの記載事項等を総合してみると、甲第1号証-2は、本件特許出願前の2005年3月24日頃に松鹿設計製作所が作成した特別養護老人ホーム(仮称)ハ-モニ-みどりヶ丘新築工事の温風式床暖房設備仕様図であると認めることができる。
また、上記記載事項1a?1hによると、以下の事項が記載されている。
温風式床暖房設備は、顕熱蓄熱方式であり、制御方式は24時間タイマ-及び床温センサ-による自動運転で、温度コントローラが夜間(22:00?8:00)の電力で蓄熱運転し、昼間(8:00?22:00)は設定温度-5℃になった場合のみ自動的に追焚き運転し、直径100mmのスパイラルダクト(床暖房工事)は土間コンクリートに埋設され、土間コンクリートには床点検口とヒーティングユニットが設けられ、使用するヒーティングユニットの型番は4000Eと3002Eで、それぞれの電気容量として4000W/3000Wが記載されている。
施工断面標準において、下方から砕石、防湿ポリエチレンフィルム、ポリスチレンフォーム、鉄筋が配置されて、土間コンクリートが打設されたものが記載されている。
ヒ-ティングユニット4000Eは、平面視で略正方形の部材であり、各側面に上部両端に2つの温風吹出し管口が設けられ、下部中央に2つの温風戻り管口が設けられている。
また、ヒーティングユニットは、ファンを備え、ヒーティングユニットの温風戻口、温風出口に管路が接続された態様が図示されている。また、電源は、4.170kw(3.350kw)とされている。

[甲第1号証-3]
甲第1号証-3には、その一部拡大図である甲第1号証-3(Z1)、甲第1号証-3(Z2)と併せてみると、下部の中央及び右側に、「松鹿設計製作所 東京都世田谷区宮坂 1-37-15」、「設計NO.」の下に、「D」及び「NO. 27」、「月日 2005-06-10」、「縮尺 1/30」、「特別養護老人ホーム(仮称)ハ-モニ-みどりヶ丘新築工事」、「断面詳細図8」と記載されている。
図中に、「地域交流スペース」及びその下方に「床:磁器質タイル貼300×300」、「喫茶ラウンジ」及びその下方に「床:フローリング貼(コンパネ下地)」、「理美容室」及びその下方に「床:フローリングD貼 コンパネt=12下地60×H20@455」と記載されている。
以上の記載事項を総合してみると、甲第1号証-3は、本件特許出願前の2005年6月10日頃に松鹿設計製作所が作成した特別養護老人ホーム(仮称)ハ-モニ-みどりヶ丘新築工事の温風式床暖房設備断面詳細図8であると認めることができる。

[甲第2号証]
甲第2号証は、株式会社日興のウェブページを出力したものであると認められる。そして、甲第2号証によると、株式会社日興がLEGALETTの日本総代理店であること、株式会社日興が温風式床暖房に関するレガレットシステムを扱っているものと認められ、第2?3ページには、「温風式床暖房(レガレットシステム)」と題した写真として、「LEGALETT」と付された略正方形の部材に、複数の赤色の管と黒色の管とが接続されたものが掲載されている。

[甲第3号証]
甲第3号証は、本件特許出願前の平成19年1月9日の日付で、有限会社北翔システムズが、株式会社日興に宛てた注文書であると認められる。
注文件名欄には「船岡保育所」が、注文金額欄には「¥10,694,250」が記載されている。
NO1の項目欄には「レガレット 箱体&ユニット」と、仕様欄には「4000E」と、数量欄には「5」と記載され、NO2の項目欄には「レガレットの箱体&ユニット」と、仕様欄には「3002E」と、数量欄には「11」と記載されている。
また、摘要欄には、「納入明細・・・4000E(外箱7個、ユニット8個)、3002E(外箱10個、ユニット11個)、ETV11個、温度センサー線11本」と記載とされている。

[甲第4号証]
甲第4号証は、本件特許出願前の平成19年1月9日の日付で、有限会社北翔システムズが、株式会社日興に宛てた注文書であると認められる。
注文件名欄には「チアフル保育園」が、注文金額欄には「¥5,499,500」が記載されている。
NO1の項目欄には「レガレット 箱体&ユニット」と、仕様欄には「4000W」、数量欄には「2」と記載され、摘要欄には「納入明細・・・4000W(外箱2個、ユニット2個)、3002W(外箱9個、ユニット9個)、ETV10個、温度センサー線10本」と記載とされている。

[甲第5号証]
甲第5号証には、第1ページ上部左上に「C-10 Japan 2005.04.07」と記載され、同上部中央に「Heateing unit 4000E」の表題とともに写真が掲載され、その直ぐ下側に「Heating-unit 4000E is installed in foundation slab or intermediate floor. and it contains a fan and four 1 kw electric elements, which are controlled by 1 to 4 room thermostats. Be used together with heating unit box 4000A 100/100(100mm spiral pipes) alternative together with Heating unit box 4000 A 50/50(50 mm plastic pipes).」(参考訳(以下同様。):ヒーティングユニット4000Eが基礎スラブ又は中間のフロアに設置される。ヒーティングユニット4000Eがファンと4つの1KW電気要素を有し、その4つの1KW電気要素は、1?4個のルームサーモスタットによりコントロールされる。ヒーティングユニット4000Eが箱体としてのヒーティングユニットボックス4000A100/100(100mmスパイラルパイプ)又は4000A50/50(50mmプラスチックパイプ)と一緒に使用するべきである。)が記載されている。
そして、第2ページには、「ASSEMBLY(組み立て)」と表記があり、「Heating unit box 4000A100/100」が図示されていると共に、「Heating unit box 4000A50/50」がその上部に「Heating unit cover(ヒーティングユニットカバー)」,「sound insulation mat(遮音マット)」,「Floor hatch(床のハッチ)」 を有することが図示されている。また、第2ページ右上に「It is the same for the heating unit 4000A100/100」と記載され、「4000A50/50」の構造は、「4000E100/100」と同じであるとされている。
以上の記載事項等を総合してみると、甲第5号証は、レガレット社が本件特許出願前の2005年4月7日に発行した「ヒーティングユニット4000E」に係るカタログであると認められる。

[甲第6号証]
甲第6号証には、第1ページ上部左上に「D-10 Japan 2005.04.07」と記載され、同上部中央に「Heateing unit 4000W」の表題とともに写真が掲載され、その直ぐ下側に「Heating-unit 4000W is installed in foundation slab or intermediate floor and contains a fan and four water/air-exchangers,with control shuntvalves, which are controlled by one till four external electric room thermostats. Be used together with heating unit box 4000A 100/100(100mm spiral pipes) alternative together with Heating unit box 4000 A 50/50(50 mm plastic pipes).」(ヒーティングユニット4000Wが基礎スラブ又は中間のフロアに設置される。ヒーティングユニット4000Wがファンと、コントロールシャットバルブを備えた4つの水/エアーエクスチェンジャとを有し、それらは、1?4個の外部電気ルームサーモスタットによりコントロールされる。ヒーティングユニット4000Wがヒーティングユニットボックス4000A100/100(100mmスパイラルパイプ)又はヒーティングユニット4000A50/50(50mmプラスチックパイプ)と一緒に使用するべきである。)が記載されている。
そして、第2頁には「ASSEMBLY(組み立て)」と表記があり、「Heating unit box 4000A100/100」が図示されていると共に、「Heating unit box 4000A50/50」がその上部に「Heating unit cover(ヒーティングユニットカバー)」,「sound insulation mat(遮音マット)」,「Floor hatch(床のハッチ)」を有することが図示されている。また、第2ページ右上に「It is the same for the heating unit 4000A100/100」と記載され、「4000A50/50」の構造は、「4000A100/100」と同じであるとされている。
以上の記載事項等を総合してみると、甲第6号証は、レガレット社が本件特許出願前の2005年4月7日に発行した「ヒーティングユニット4000W」に係るカタログであると認められる。

[甲第7号証]
甲第7号証には、第1ページ上部左上に「F-20 Japan 2005.04.18」と記載され、同上部中央に「Heateing unit box 4000A 100/100」の表題とともに写真が掲載され、その写真において、2つの側面の中央下側に2箇所、両側上側に2箇所の開口をそれぞれ備えた箱体が記載されている。
また、「INSTALLATION OF HEATING UNIT BOX(ヒーティングユニットボックスの設置)」と題した上で、

(7a) 「Before casting:
1. Place the heating unit box on the EPS Insulation according to dimensions on drawing for the project.
2. Mark outside shape of the heating unit box on the EPS insulation and the cement stabilized particle board.
3. Take away the heating unit box and cut out the EPS according to the markings.
NOTE! Be careful when you cut so the hole will not be larger than the EPS insulation under the box.
4. Put sufficient sand so the floor hatch will be 0-5 mm under finished concrete surface.
5. Place the heating unit box in the hole. Make sure that the connections on the sides for the water and electric correspond with the drawing for the procject.
6. Place wiring tubes from the heating unit box cable inlet to the circuit breaker and thermostats. See drawing for the project.
7. If water-air exchanger is used, install insulated inlet- and return hot water pipes.
If electric heating unit shall be used but possible future conversion to water-air exchanger shall be prepared, install inlet- and return hot water pipes.
100 mm pipe should be connected to the heating unit box for distribution of hot air to the concrete slab. Assemblage of the pipe system, see the drawing for the project.
8. The space around the heating box and connecting pipes shall be filled with concrete to upper edge of the pipe the day before pouring.」(設置前
1.設計図面上の寸法に応じて、ヒーティングユニットボックスをEPS断熱材上に配置する。
2.EPS断熱材上にあるヒーティングユニットボックスの外側と、セメントスタビライズドパーティクルボードの外側をマークする。
3.ヒーティングユニットボックスを取り除き、マーキングに従ってEPS断熱材を切断する(備考:ボックス下のEPS断熱材よりも、穴が大きくなることはないので、切断の際に注意する。)。
4.フロアハッチが、完成したコンクリート表面下0?5mmとなるように、十分な砂を入れる。
5.穴の中にヒーティングユニットボックスを配置する。水と電気のための両側の接続が計画図面に対応していることを確認する。
6.ヒーティングユニットボックスのケーブル導入口からサーキットブレーカーとサーモスタットまで、配線管を配管する。計画図面を参照する。
7.温水熱交換方式が使用される場合には、温水パイプの入り管及び戻り管に保温材が巻かれたものを用いる。
電気式のヒーティングユニットが使われるが、将来的に温水熱交換方式に変換されることが想定される場合には、あらかじめ温水パイプの入り管及び戻り管を付けておく。
100mmパイプは、コンクリートまで温風を分布させるため、ヒーティングユニットボックスと接続される必要がある。パイプシステムの組立ては、計画図面を参照する。
8.ヒーティングユニットボックスと配管の周りの空間は、注入の前日にパイプの上端までコンクリートが充填されなければならない。)と記載されている。

ヒーティングユニットボックス4000A100/100の施工を説明する断面図の下欄には、注意書きとして、次の内容が記載されている。

(7b)「DO NOT OPEN HEAING UNIT BOX BEFORE THE CONCRETE PLACEMENT HAS FINISHED」(コンクリート打設工事が終了する前に、ヒーティングユニットボックスを開けてはならない。)

以上の記載事項等を総合してみると、甲第7号証は、レガレット社が本件特許出願前の2005年4月18日に発行した「ヒーティングユニットボックス4000A100/100」に係るカタログであると認められる。

[甲第8号証]
甲第8号証は、甲第1号証-1に示す一部の領域を拡大して示す詳細拡大図であって、「地域交流スペース」、「喫茶ラウンジ」、「PX3」、「PX10」が表記されている。

<小括1>
ここで、上記各甲号証について検討する。
温風式床暖房設備に関する甲第1号証-2の記載事項1cを参酌すれば、土間コンクリートにはヒーティングユニットと直径100mmのスパイラルダクトとが設置されており、甲第1号証-1の記載事項aにおける左右対称に引き出された複数の線は、ヒーティングユニットとスパイラルダクトのうち線として表記し得る直径100mmのスパイラルダクトであると認められる。
そうすると、甲第1号証-1の温風式床暖房設備敷設図における多数の線は、直径100mmのスパイラルダクトの配置を表すもので、直径100mmのスパイラルダクトが床一面に配置され、また、各スパイラルダクトの配置において、左右対称と左右非対称のものが存在している。
また、甲第1号証-2の記載事項1eによるとヒーティングユニットが複数の温風吹出し管口、温風戻り管口を有していること、甲第1号証-2の記載事項1fによるとヒーティングユニットの温風戻口と温風出口に管が接続されていること、甲第1号証-2の記載事項1cによると土間コンクリートにスパイラルダクト以外に設置されているものはヒーティングユニットのみであることから、複数の線(スパイラルダクト)が集合して接続している部分は、ヒーティングユニットであると認められる。
そうすると、甲第1号証-1の温風式床暖房設備敷設図には、スパイラルダクトが接続した複数のヒーティングユニットが設置されていることが示され、複数のヒーティングユニットは、甲第1号証-2の記載事項1eを参酌すると、ヒーティングユニット4000Eを含むものといえるので、ヒーティングユニット4000Eの温風吹出し口から温風戻口まで直径100mmのスパイラルダクトが配置されたものが認められる。
また、甲第1号証-2の記載事項1eで示されるヒーティングユニット4000Eにおける温風吹出し管口及び温風戻り管口の配置は、甲第5号証の「ヒーティングユニット4000E」に係るカタログにおいて、ヒーティングユニット4000Eと一緒に使用されるヒーティングユニットボックス4000A100/100と一致していること、甲第2号証によると株式会社日興はレガレット社の日本総代理店をしていて、甲第3号証及び第4号証によると株式会社日興は、本件特許出願前に日本国内において、レガレット社のヒーティングユニット4000Eを販売していること、甲第5号証のレガレット社のカタログに「Heating unit 4000E」の記載があること等からみて、甲第1号証-1におけるヒーティングユニット4000Eは、レガレット社のヒーティングユニット4000Eと推認できる。
そして、甲第6号証には、ファンと、コントロールシャットバルブを備えた4つの水/エアーエクスチェンジャ(熱交換部分)を有するヒーティングユニット4000Wについて、ヒーティングユニット4000Wが箱体としてのヒーティングユニットボックス4000A100/100(又は4000A50/50)と一緒に使用するべきであることが記載され、甲第5号証のヒーティングユニットの写真及び一緒に使用するヒーティングユニットボックス4000A100/100の図とを併せてみると、記載事項1eのヒーティングユニット4000Eは、ヒーティングユニット4000Eがヒーティングユニットボックス4000A内に格納された状態のものと認められる。
また、ユニット構成を採用するのは、各ユニットを着脱自在として交換可能とするためであることが技術常識であるから、ヒーティングユニットボックス4000Aがヒーティングユニット4000Eを着脱可能に格納しているといえる。
さらに、レガレット社のヒーティングユニットについて、甲第7号証の記載事項7aによると、ヒーティングユニットボックスのケーブル導入口からサーキットブレーカーとサーモスタットまで、配線管を配管し、電気式のヒーティングユニットが使われるが、将来的に温水熱交換方式に変換されることが想定される場合には、あらかじめ温水パイプの入り管及び戻り管を付けるとされている。
加えて、甲第1号証-3より、特別養護老人ホーム(仮称)ハ-モニ-みどりヶ丘新築工事の建物は土間コンクリートの上部に床材を有することも明らかである。

以上、甲第1号証-1?甲第8号証の記載及び上記検討事項より、甲第1号証-1の特別養護老人ホーム(仮称)ハ-モニ-みどりヶ丘新築工事の温風式床暖房設備施設図に示された温風式床暖房設備は、以下の構成を備えるもの(以下「甲1-1発明」という。)と認められる。

「土間コンクリートには、ヒーティングユニットボックスと一緒に使用するヒーティングユニット4000Eとが設けられ、ヒーティングユニットボックスがヒーティングユニット4000Eを着脱可能に格納し、ヒーティングユニットボックスはその上部にヒーティングユニットカバー及び床のハッチを備えた温風式床暖房設備において、ヒ-ティングユニット4000Eと一緒に使用されるヒーティングユニットボックスの各側面には上部両端に2つの温風吹出し管口が、下部中央に2つの温風戻り管口が設けられ、前記温風吹出し口から前記温風戻口まで直径100mmのスパイラルダクトが配置され、床暖房の対象となる箇所においてスパイラルダクトが暖房対象の箇所の床一面に配置され、ヒーティングユニット4000Eは、ファンを有し、温風式床暖房設備の蓄熱方式は顕熱蓄熱方式であり、制御方式は24時間タイマ-及び床温センサ-による自動運転で、温度コントローラが夜間(22:00?8:00)の電力で蓄熱運転し、昼間(8:00?22:00)は設定温度-5℃になった場合のみ自動的に追焚き運転する温風式床暖房設備。」

さらに、甲第1号証-1?甲第8号証の記載及び上記検討事項より、甲第1号証-1の特別養護老人ホーム(仮称)ハ-モニ-みどりヶ丘新築工事の温風式床暖房設備施設図における温風式床暖房設備は、以下の工程を有する設置方法(以下「甲1-2発明」という。)により設置されたものと認められる。

「砕石の上部に、ポリスチレンフォームを敷設する工程と、ポリスチレンフォームの上にヒーティングユニットボックスと一緒に使用するヒーティングユニット4000Eとを設置する工程と、ヒーティングユニットボックスのケーブル導入口からサーキットブレーカーとサーモスタットまで配線管を配管し、電気式のヒーティングユニットが使われるが、将来的に温水熱交換方式に変換されることが想定される場合には、あらかじめ温水パイプの入り管及び戻り管を付ける工程と、ヒ-ティングユニット4000Eと一緒に使用されるヒーティングユニットボックスの各側面には上部両端に2つの温風吹出し管口が、下部中央に2つの温風戻り管口が設けられ、前記温風吹出し口から前記温風戻口まで直径100mmのスパイラルダクトを配置し、床暖房の対象となる箇所においてスパイラルダクトを暖房対象の箇所の床一面に配置する工程と、温風式床暖房設備の蓄熱方式は顕熱蓄熱方式であり、制御方式は24時間タイマ-及び床温センサ-による自動運転で、夜間(22:00?8:00)の電力で蓄熱運転し、昼間(8:00?22:00)は設定温度-5℃になった場合のみ自動的に追焚き運転する温度コントローラを設置する工程と、上部の鉄筋を配筋する工程と、ヒーティングユニットボックスにヒーティングカバーを取り付ける工程と、土間コンクリートを打設する工程と、土間コンクリートの上部に床材を取り付ける工程と、ヒーティングユニットボックスの上部に床のハッチを設ける工程とを有する温風式床暖房設備の設置方法。」

[甲第9号証]
甲第9号証を総合してみると、甲第9号証は建設業界紙「建設福島」のウェブページを出力したものと認められる。
甲9号証の第1ページの上部には「入札集計2005年10月」の表題、第2ページの下部には「2005/10/14 社会福祉法人心愛会 ▽特別養護老人ホーム(仮称)ハ-モニ-みどりヶ丘新築工事特別養護老人ホーム(仮称)「ハーモニーみどりヶ丘」建設 影山組・影山工務店JV 800000 消費税別」と記載されている。

[甲第10号証]
甲第10号証の第1ページには、「特別養護老人ホーム(仮称)ハ-モニ-みどりヶ丘 新築工事」、「建築設計・監理業務委託契約書」、「建築設計・監理業務委託契約約款」「建築設計・監理業務委託書」と記載されている。
第2ページに、「建築設計・監理業務委託契約書」と題して、「委託者 社会福祉法人 心愛会 理事長 三瓶英才」、「受託者 有限会社松鹿設計製作所 代表取締役松鹿明生」として「件名 特別養護老人ホーム(仮称)ハ-モニ-みどりヶ丘新築工事の建築設計・監理業務について、次の条項と添付の建築設計・監理業務委託契約約款、建築設計業務委託書及び建築監理業務委託書に基づいて、建築設計・監理業務委託契約を締結する。」と記載されている。
これらの記載より、有限会社松鹿設計製作所(代表取締役松鹿明生)が社会福祉法人心愛会(理事長三瓶英才)から特別養護老人ホーム(仮称)「ハーモニーみどりヶ丘」の建築設計・監理業務に関して、依頼を受けたことが認められる。

[甲第11号証]
甲第11号証を総合してみると、甲第11号証は、本件特許出願前の平成17年9月7日の日付で、申請者として社会福祉法人心愛会理事長三瓶英才、設計者として有限会社松鹿設計製作所代表取締役松鹿明生が、建築主事宛てに申請した確認申請書(建築物)であると認められる。

[甲第12号証]
甲第12号証は、有限会社松鹿設計製作所(代表取締役 松鹿明生)が、温風式床暖房設備を含む特別養護老人ホーム「ハ-モニ-みどりヶ丘」の設計図(添付)を作成したことを証明する、有限会社松鹿設計製作所 代表取締役 松鹿明生による平成25年6月4日付けの記名及び押印がなされた証明書(1)であると認められる。
また、甲第12号証に添付され設計図は、甲第1号証-1?甲第1号証-3(Z2)と同じ内容のものと認められる。

[甲第13号証]
甲第13号証は、有限会社松鹿設計製作所(代表取締役 松鹿明生)が、2005年10月14日に実施された入札に先立ち、温風式床暖房設備を含む特別養護老人ホーム「ハ-モニ-みどりヶ丘」の設計図(証明書(1)に添付の設計図)を入札参加資料として、入札参加予定者に守秘義務を課すことなく配布したことを証明する、有限会社松鹿設計製作所 代表取締役 松鹿明生による平成25年6月4日付けの記名及び押印がなされた証明書(2)であると認められる。

[甲第14号証]
甲第14号証を総合してみると、甲第14号証は、第H18確済建築BHC中支0392号の文書番号が付され、平成18年6月30日付で、財団法人ふくしま建築住宅センターが、社会福祉法人心愛会理事長三瓶英才に宛てた、建築基準法第7条の2第5項の規定による検査済証であると認められる。
検査済証の「4.建築場所、設置場所又は築造場所」欄には「福島県郡山市緑ヶ丘東六丁目26-2(郡山東部ニュータウン内)」、「5.検査を行った建築物、建築設備もしくは工作物又はその部分の概要(1)建築物の名称」欄には「特別養護老人ホーム(仮称)ハ-モニ-みどりヶ丘新築工事」、「6.検査年月日」欄には本件特許出願日前の「平成18年6月30日」が記載されている。

[甲第15号証]
甲第15号証は、有限会社松鹿設計製作所(代表取締役 松鹿明生)が特別養護老人ホーム「ハ-モニ-みどりヶ丘」において、温風式床暖房設備が入札参加予定者に配布した設計図(証明書(1)に添付の設計図)通りのものとなるように施工を監理したことを証明する、有限会社松鹿設計製作所 代表取締役 松鹿明生による平成25年6月4日付けの記名及び押印がなされた証明書(3)であると認められる。

[甲第16号証]
甲第16号証は、特別養護老人ホーム「ハ-モニ-みどりヶ丘に」おいて施工された温風式床暖房設備の引渡しを受けた本件特許出願前の平成18年6月30日(竣工日)から現在に至るまで、その温風式床暖房設備を改変していないことを証明する、社会福祉法人心愛会 常務理事 三瓶英司による平成25年6月17日付けの、記名及び押印がなされた証明書(4)であると認められる。

[甲第17号証]
甲第17号証は、撮影日時が本件特許出願前の2006年1月26日10時23分の、特別養護老人ホーム(仮称)ハ-モニ-みどりヶ丘新築工事における温風式床暖房設備の施工風景を示す建設現場の写真であると認められる。
この写真には、不特定人から見られないようにするための特別な措置がとられていない施工現場の状況が認識できる。

[甲第18号証]
甲第18号証は、撮影日時が本件特許出願前の2006年1月26日10時23分の、特別養護老人ホーム「ハ-モニ-みどりヶ丘」における温風式床暖房設備の施工風景を示す写真であると認められる。
この写真には、不特定人から見られないようにするための特別な措置がとられていない施工現場の状況が認識できる

[甲第19号証]
甲第19号証は、特別養護老人ホーム「ハ-モニ-みどりヶ丘」の施工図であって、図面において、甲第17号証、甲第18号証の各写真の撮影場所を赤○印で示されている。

[甲第20号証]
甲第20号証は、甲第19号証の一部拡大図であって、図面において、甲第17号証、甲第18号証の各写真の撮影場所を赤○印で示されている。

[甲第21号証]
甲第21号証は、その記載内容を総合してみると、社会福祉法人心愛会が、平成20年4月1日に発行した広報誌であると認められる。
その編集後記の欄に、「ハーモニーみどりケ丘の2度目の春は水のテラスに再び水が張られたことから始まりました。」と記載されている。
また、「平成19年度郡山市景観まちづくり賞優秀賞を頂きました!!3/25表彰式の模様です。」と題した写真が掲載され、その写真の下には、郡山市長ととにも、「設計者松鹿明生様」と記載されている。
これらの記載から、特別養護老人ホーム「ハ-モニ-みどりヶ丘」は、本件特許出願日前の平成18年春頃より使用されていたものと認められる。

[甲第22号証]
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第22号証には、図面とともに次の事項が記載されている。

(22a) 「【請求項1】床材の下に配設された温風管と、
前記温風管に温風を供給するヒーティングユニットと、
該ヒーティングユニットを制御する温度制御部と、
床温度を検出する温度センサーとを備え、
前記ヒーティングユニットは、熱源と送風ファンを備えると共に電気式ヒーティングユニットと温水式ヒーティングユニットが交換可能に設置されたことを特徴とする温風式床暖房装置。
【請求項2】
前記ヒーティングユニットは、前記温風管と接続されたケーシング内に着脱可能に配設されたことを特徴とする請求項1に記載の温風式床暖房装置。
【請求項3】
前記ケーシングは、前記温風管と接続された吐出口と戻り口とを備え、前記戻り口は空気溜チャンバーと連通しており、空気溜チャンバーから前記ヒーティングユニットの下を通って送風ファンに導かれ、ヒータで加熱された空気を再度吐出口から循環させることを特徴とする請求項1または2に記載の温風式床暖房装置。
【請求項4】
前記電気式ヒーティングユニットは、戻り口における戻り空気の温度が44℃以上になった場合にヒータ電源をOFFとし、44℃以下でヒータ電源をONとして温度制御を行うことを特徴とする請求項1?3の何れか1に記載の温風式床暖房装置。
【請求項5】
前記温水式ヒーティングユニットは、ヒータ内部温度が27℃以下になると送風ファンを停止し、30℃以上になると送風ファンを運転する温度制御を行うことを特徴とする請求項1?4の何れか1に記載の温風式床暖房装置。」(特許請求の範囲)

(22b) 「【0004】
このため、将来エネルギー事情が変化した場合に高価なエネルギーを使用するか、または床暖房装置を交換しなければならなかった。
本発明は、前記実情に鑑み提案されたもので、熱源であるヒーティングユニットを電気式と温水式とで交換可能とすることで、将来のエネルギー事情の変更にも拘わらず価格的に有利な熱源を使用することのできる温風式床暖房装置を提供することを目的とする。」

(22c) 「【0012】
図2は、本発明の温風式床暖房装置に使用される電気式ヒーティングユニット13Aの開蓋状態を示す斜視図である。電気式ヒーティングユニット13Aは、熱源であるヒータ16と送風ファン17を備えている。また、この電気式ヒーティングユニットは13Aは、前記温風管12と接続されたケーシング18内に着脱可能に配設されている。更に、ケーシング18は、温風管12と接続された吐出口19と戻り口20とを備え、戻り口20は空気溜チャンバー21と連通しており、この空気溜チャンバー21から前記電気式ヒーティングユニット13の下の空間22を通って送風ファン17に導かれた後、ヒータ16で加熱された空気を再度吐出口19から循環させる。」

(22d) 「【0013】
空気溜チャンバー21と電気式ヒーティングユニット13Aとは、区画されており、空間22及び送風ファン17を介して連通している。また、送風ファン17は、例えば120W、ヒータ16は2×1500Wで200Vの電源を使用している。安全装置としては、75℃と110℃の温度ヒューズをそれぞれ1個、過電流ヒューズを1個備えている。ケーシング18は、蓋体30を有しており、表面が床材11と同様のものとなっている。」

(22e) 「【0014】
次に、以上のように構成された本発明に係る温風式床暖房装置10の使用態様について説明する。先ず、本発明の温風式床暖房装置10において、電気式ヒーティングユニット13Aを使用した場合、温度制御部14のスイッチをONとすると、図外のリレーが作動してヒータ16と送風ファン17がONとなる。ヒータ16によって加熱された空気は、吐出口19から温風管12を送風される。温風管12に送風された空気は、床材11を暖めた後に戻り口20から空気溜チャンバー21内へ戻ってくる。」

(22f) 「【0015】
空気溜チャンバー21内へ戻った空気は、空間22を通って、送風ファン17の吸引側から吸引され、吐出側から吐出される。戻り空気の温度が44℃以上となった時、ヒータ16の電源がOFFとされる。しかし、送風ファン17の電源はONのままである。また、戻り空気の温度が44℃以下となった時、ヒータ16の電源がONとされる。また、温度制御部14の操作によって送風ファン17のON-OFFが可能である。更に、電気回路には、安全装置として75℃と110℃の温度ヒューズをそれぞれ1個、過電流ヒューズを1個備えているので、44℃でヒータ16の電源がOFFとされなかった場合でも安全である。」

(22g) 「【0016】
図5は、本発明の温風式床暖房装置に使用される温水式ヒーティングユニットの開蓋状態を示す平面図、図6は温水式ヒーティングユニットを示す縦断面図、図7は温水式ヒーティングユニットの組立図、図8は温水式ヒーティングユニットを示す斜視図である。温水式ヒーティングユニット13Bは、熱源であるラジエータ23と送風ファン24と熱動弁25及び温度センサー26等を備えており、ケーシング18内に収納されている。外部から供給される温水は、温水入口27から熱動弁25a、25bを介して左右のラジエータ23に供給される。また、温水入口27の近傍には温度センサー26が配置されている。ラジエータ23を循環した温水は、温水出口28から流出する。」

(22h) 「【0018】
以上のように構成した温風式床暖房装置は、電気代が高騰した場合には、温水式ヒーティングユニットを使用し、電気代が安価になった場合には、電気式ヒーティングユニットを使用し、エネルギー事情が変動した場合でも安定した床暖房の可能な温風式床暖房装置を提供することができる。」

上記記載事項及び図示内容を総合すると、甲第22号証には、次の装置の発明(以下「甲22-1発明」という。)が記載されている。

「床材の下に配設された温風管と、
前記温風管に温風を供給するヒーティングユニットとを備え、
前記ヒーティングユニットは、温風管と接続されたケーシング内に着脱可能に配設され、
前記ケーシングは、蓋体を有しており、表面が床材と同様のものとされ、前記温風管と接続された複数の吐出口と複数の戻り口とを別の側面に備え、前記戻り口は空気溜チャンバーと連通しており、空気溜チャンバーから前記ヒーティングユニットの下を通って送風ファン導かれ、ヒータによって加熱された空気は、吐出口から温風管に送風され、床材を暖めた後に戻り口から空気溜チャンバー内へ戻ってくるように循環する温風式床暖房装置。」

さらに、甲22-1発明において、甲22-1発明の「温風式床暖房装置」を設置する際に、各部材要素を設置する工程を有することは当業者であれば認識できるので、甲第22号証には、次の方法の発明(以下「甲22-2発明」という。)が記載されている。

「床材の下に配設されたケーシングに接続される温風管を設置する工程と、
前記温風管に温風を供給するヒーティングユニットを温風管と接続されたケーシング内に着脱可能に配設する工程と、
該ヒーティングユニットを制御する温度制御部を設置する工程と、
床温度を検出する温度センサーを設置する工程を備え、
前記ケーシングに、蓋体を設ける工程と、蓋体の表面が床材と同様のものとされる工程と、前記戻り口は空気溜チャンバーと連通しており、空気溜チャンバーから前記ヒーティングユニットの下を通って送風ファンに導かれ、ヒータによって加熱された空気は、吐出口から温風管に送風され、床材を暖めた後に戻り口から空気溜チャンバー内へ戻ってくるように循環させる工程と、
前記ヒーティングユニットは、熱源と送風ファンを備えると共に電気式ヒーティングユニットと温水式ヒーティングユニットが交換可能に設置する工程とを有する温風式床暖房装置の設置方法。」

[甲第23号証]
甲第23号証の第4ページ右下には、本件特許出願日前の日付「2005-06-15」が記載されている。
甲第23号証の第2頁の中段には、
(23a)

(参考訳(以下同様):市場で最も湿度に強い基礎及び床暖房システム
家屋の中で一番重要な部分は、疑いようもなく基礎です。基礎部分を交換することはありません。その為、選択した床暖房は半永久的に維持可能で、いかなる状況が生じても(周囲に)損傷を与えてはなりません。
これらの概念は我が社の経営理念の根幹を成しています。なぜならば我々が考案し、ご提供しているのは市場で最も湿度に強い基礎及び床暖房システムだからです。
家屋の基礎設計は、レガレット社にご安心してお任せください。レガレット社の設計士は住宅から保育園、各種の学校、教会、スポーツジム、企業、美術館等まで全てのタイプの建物に適応する基礎及び床暖房システムを設計・構築する専門家です。
お客様よりご検討中の建築情報をレガレット社が頂くと同時に、我が社の設計士は業務を開始致します。彼らはラドンや湿度に強く、お客様の家屋に最適な基礎及び床暖房システムを設計・構築致します。)と記載されている。

第3頁の上段において、
(23b)

(我が社の温風式床暖房システムは簡単で安全です。
レガレット社の床暖房に対応した基礎は、湿気やかびに強く安全な床暖房システムの組み合わせにより、市場を牽引するトータルソリューションを提供しています。
我が社の頑丈な床暖房チューブが、温風を循環し家屋全体を暖める密閉式の配管を形成します。またその温度は各部屋で調整が可能です。
どのような家屋でもレガレット社は、静的な事業計画及び暖房の必要性に関する最適な設計計画を作成致します。
その後私共は図面を含む実施設計図と、基礎及び工事に必要な建築資材のパッケージを送付させていただきます。
点検口のあるヒーティングユニットボックスをコンクリート平板に固定します。この床暖房設備は機能保持にほとんど手間が掛からず、また音がしません。
土壌部分及び家屋に対し、他に必要な条件がなければ、新たな50mmのプラスティックチューブダクトを使用することで、コンクリートの厚みを120mmに減らすことができます。レガレット50は多層階の家屋にも十分に対応致します。
レガレット床暖房システムは短時間で設置することができます。チューブシステムは事前にカットされ、建設現場のガイドワイヤーに取り付けられます。そのことにより実際の設置が容易になります。簡単で素早く独創的な方法です!)と記載されている。
その下側(中段)には、ヒーティングユニットを格納したヒーティングユニットボックスと、そのヒーティングユニットボックスから延びる温風循環通路とが居室全体の床下のコンクリート層に偏りなく敷設埋設され、その温風循環通路の上下に上部鉄筋と下部鉄筋とが配筋され、ヒーティングユニットボックスにはコンクリートが入らぬように蓋が取付けられて、コンクリートが打設される施工の様子を撮影した写真が掲載されている。

さらに、第3頁中段写真の左下側には、
(23c)

(電気ヒーターの素早い効き目
固定及び骨組みの組立後、レガレットの電気ヒーターをチューブシステムに接続します。害を与えるコンクリートの湿気は、通常の暖房システムが完成する前に乾燥させます。そのおかげで建設の期間を短縮でき、効果を素早く発揮します。
熱源選択時の柔軟性
我が社の床暖房システム中の空気は、様々な熱源により暖めることができます。例えばヒートポンプからの温水、地域暖房、或いはレガレットのヒーティングユニットから送られる電気等があります。
熱源を電気からお湯に交換する場合は、電気タイプのヒーティングユニットから温水タイプのヒーティングユニットに取り替えます。またはその逆も可能です。最適な熱源へと簡単に変更できます。)と記載されている。

さらにまた、第3頁下段において3つ並んだイラスト枠の真ん中の写真の上欄に
(23d)

(温水から変換した温風、或いは電気で暖められた温風が閉鎖式のチューブシステム内を循環します。)と記載されている。

その写真下欄には、
(23e)

(温水式或いは電気加熱式のユニット)と記載されている。

加えて、第3頁下段において3つ並んだイラスト枠の右側の写真の上欄に
(23f)

(お客様へ最大の快適と将来の柔軟性をご提供する安心で効果的な床暖房用基礎システム)と記載されている。

下欄には
(23g)

(レガレットヒーティングユニット)と記載されている。

以上の記載事項を総合してみると、甲第23号証は、レガレット社が本件特許出願前の2005年6月15日に発行した「基礎と、床暖房システム」と題するパンフレットであると認められる。

[甲第24号証]
甲第24号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
(24a)「【0003】
従来の床暖房は、温水パイプまたは電熱ヒーターを厚さ12?20mmのパネルに納め数種類の大きさのパネルを床面に敷き詰めその上に床材を配し床暖房とするか、温水パイプまたは電熱ヒーターを床下のコンクリート層内に埋設する方法が主流であった。」と記載され、熱媒体を流すパイプがコンクリート層に埋設されていることが一般化していることが示されている。

(24b)「【0015】
湿気の影響は温風を利用した床暖房装置を設置した直後や夏季の床暖房運転休止中、床下空気の相対湿度が上昇し、結露となってあらわれることがある。特開2004-162990公報におけるヒーティングユニット内にも結露が生じ、故障の原因となっている。結露はカビの発生を招き、ダニの生息にもつながり衛生上問題を生じる危険性が高いといわれている。」

[甲第25号証]
甲第25号証には、図面とともに
(25a)「【0037】
次に、上記の蓄熱構造を用いた室内暖房について説明する。まず、ヒートポンプ(5)を作動させて暖房運転を開始すると、床下空間(1)の空気が室内機(6)内に取り込まれて加熱されて温風となり、この温風が整流用ダクト(4)を介してダクト(3)の通気路(15)へ送り込まれる。通気路(15)において、温風は邪魔板(21)(21)…や土間コンクリート(2)の凹凸(22)に当たりながら蛇行して流れる。これによって、主要な蓄熱体であるダクト(3)と温風、補助的な蓄熱体である土間コンクリート(2)と温風との間でそれぞれ活発な熱交換がなされ、ダクト(3)及び土間コンクリート(2)に温風の温熱が蓄熱される。熱交換後の温風は、ダクト(3)の排気口(20)から床下空間(1)へ排出されて、床下空間(1)を直接暖める。そして、床下空間(1)の空気は、再びヒートポンプ(5)の室内機(6)内に取り込まれて加熱され、温風となってダクト(3)の通気路(15)へ送り込まれるといった循環を繰り返す。」、

(25b)「【0038】
このような蓄熱工程は、図5に示すように、例えば夜間の0時頃から翌朝の7時頃までの安価な深夜電力を利用できる時間帯に行う。この間、床下空間(1)の温度が上昇し、外気温度が低下しているにもかかわらず、室内温度は低下することなくほぼ一定に保たれる。」、

(25c)「【0039】
そして、例えば7時頃から15時頃までの間は、ヒートポンプ(5)の作動を停止して、ダクト(3)及び土間コンクリート(2)に蓄熱された熱を放熱させながら室内を暖房する放熱工程とする。このとき、ダクト(3)の外表面が断熱材(28)によって覆われているので、蓄熱した熱が過度に放熱することなく、長時間に亘って徐々に放熱して室内を暖房する。この放熱工程では、床下空間(1)の温度は一旦低下してからほぼ一定となり、室内温度は一旦低下してから上昇する。」、
と記載され、
蓄熱工程においては、ヒートポンプ(5)を作動させて蓄熱を行い、放熱工程においては、ヒートポンプ(5)の作動を停止させて土間コンクリート(2)等に蓄熱された熱を放熱することから、甲第25号証には、「割安な深夜電力料金が適用される深夜の時間帯の電力を利用すべく、夜間の蓄熱時間帯と朝方から昼間の放熱時間帯とに区分けし、蓄熱時間帯においては温風発生装置を作動させて蓄熱を行い、放熱時間帯においては温風発生装置を作動させないことにより蓄熱を行わない」ことが記載されている。

[甲第26号証]
甲第26号証には、図面とともに
(26a)「【0011】図1に於て、Aは本発明の蓄熱式暖房装置、Bは建物の窓、Cは外壁、Dは床壁を示し、蓄熱式暖房装置Aは、建物室内の窓際(ペリメータゾーンP)に設置されるものである。しかして、この蓄熱式暖房装置Aは、建物室内の窓際に設けられるカウンター部材1と、カウンター部材1に内設される蓄熱ユニット体2と、を備える。」、

(26b)「【0013】また、カウンター部材1の側壁3下部には吸気孔10が形成されると共に、上壁5には吹出孔11が形成されている。例えば、吸気孔10は前側壁3aの下端縁に沿って切欠形成され、吹出孔11は上壁5に長手方向スリット状に複数本形成される。なお、カウンター部材1の高さ寸法を窓枠8の高さ寸法と略等しく設定し、日射による窓枠8や外壁Cの影が上壁5の上面9に映らないようにするのが好ましいが、これについて詳しくは後述する。」、

(26c)「【0014】図1?図3に示すように、蓄熱ユニット体2は、上下方向の通気路13を有し、この通気路13を介して対面状に複数の蓄熱サブユニット12…が配設され、かつ、保持部材14にて複数の蓄熱サブユニット12…が保持されている。」、

(26d)「【0030】これにより、複数の蓄熱サブユニット12…の放熱にて通気路13内の空気が加熱されて上昇気流となり、温風吹出開口部19から温風Hがカウンター部材1内に吹出し、さらにカウンター部材1の吹出孔11…から温風Hが室内へ吹出す。一方、室内の空気はカウンター部材1下部の吸気孔10から蓄熱ユニット体2下部のエアー吸入部20を通って通気路13内に流入する。即ち、自然対流により温風Hがカウンター部材1の吹出孔11…から窓Bに沿って上方へ吹出し、それによりコールドドラフトを防止することができる。」、
と記載されていることから、甲第26号証には、「窓開口部直下部位の居室の一部にカウンター部材を設置し、そのカウンター部材内に蓄熱ユニット体を設けてカウンター部材内の空気を暖め、その空気をカウンター部材上部の吹出孔から上昇させ、コールドドラフト防止対策として利用する」ことが記載されている。

[甲第27号証]
甲第27号証には、図面とともに
(27a)「【0016】また図3に示すように1階の温風通路11Aと、2階の温風通路11Bとを連通する温風上昇管24が設けられ、この上部は2階の温風通路11B内に配管した送風ダクト14に接続されている。また2階の送風ダクト14の入り口側にも放熱器16が設けられ、これは通水管19により1階の温水ボイラー17に接続されている。」、

(27b)「【0017】また2階の温風通路11Bの温風流入側と反対側には、1階の送風機18の流入側と連通する冷風下降管25が設けられ、温風が密閉された1階の温風通路11Aと、2階の温風通路11Bとを循環するようになっている。」
と記載されていることから、甲第27号証には、「暖房のために、温風を循環させる温風循環通路を床下から床上に立ち上げ、その温風循環通路が、再び、床下に戻される」ことが示されている。

また、甲第27号証には、図面とともに次の事項も記載されている。
(27c)「【0035】図11および図12は本発明の他の実施の形態を示すもので、コンクリート土間基礎1の上に、発泡プラスチックで形成された断熱層2を設け、更にこの上に逆T形状の金属製熱伝導体31を格子状に配置し、この先端を露出させて蓄熱体となる床下コンクリート32が形成されている。更に支持台5…の上に根太を兼ねる逆T形状の鋼材で形成された支持金具6が設けられ、ここに床板と蓄熱体3を兼ねるコンクリート板9が取付けられている。このコンクリート板9には通気孔が設けられておらず、使用状態では床面となるコンクリート板9の上に、クッションマットなどを敷いて使用する。」

[甲第28号証]
甲第28号証には、図面とともに
(28a)「【0016】熱交換容器1の上部には、バルブ20を介して大気開放管21を取り付ける。バルブ20を開弁することにより熱交換容器1内を大気と連通し、閉弁することにより遮断することができるものである。」と記載されていることから、「密閉空間と大気とを放出管を介して連通し、その連通管にバルブを介装して、そのバルブの開閉により密閉空間内を大気に対して連通・遮断する」ことは本件特許出願前に周知の事項であると認められる。

[甲第30号証]
甲第30号証は、撮影日時が2013/06/17 13:31の特別養護老人ホーム「ハーモニーみどりヶ丘」の地域交流スペース(部屋名)の室内写真であると認められる。床面にタイルが貼られている態様が認識できる。

[甲第31号証]
甲第31号証は、撮影日時2013/06/17 13:26の特別養護老人ホーム「ハ-モニ-みどりヶ丘」の地域交流スペースにおける床の蓋体が閉じられた状態を示す写真であると認められる。

[甲第32号証]
甲第32号証は、撮影日時2013/06/17 13:55の特別養護老人ホーム「ハ-モニ-みどりヶ丘」の地域交流スペースにおける床の蓋体が取り外された状態を示す写真であると認められる。

[甲第33号証]
甲第33号証は、撮影日時2013/06/17 13:36の特別養護老人ホーム「ハーモニーみどりヶ丘」の地域交流スペースにおけるヒーティングユニットボックスの上蓋が開蓋された状態を示す写真であると認められる。

[甲第34号証]
甲第34号証は、撮影日時2013/06/17 13:44の特別養護老人ホーム「ハーモニーみどりヶ丘」の地域交流スペースにおけるヒーティングユニットボックス内からヒーティングユニットが取り外された状態を示す写真であると認められる。

[甲第35号証]
甲第35号証は、撮影日時2013/06/17 13:44の特別養護老人ホーム「ハーモニーみどりヶ丘」の地域交流スペースにおけるヒーティングユニットボックス内からヒーティングユニットが取り外された状態を示す写真であると認められる。

5.当審の判断
<無効理由7に関して>
5-1 甲第12?20号証に記載の建築物「特別養護老人ホーム(仮称)ハーモ二-みどりヶ丘」における温風式床暖房設備及びその設置方法の公然実施について

甲第14号証によると、「特別養護老人ホーム(仮称)ハ-モニ-みどりヶ丘」の建築物は、本件特許出願時に既に建設されていたと認められる。
そして、甲第12、13及び15号証によると、「特別養護老人ホーム(仮称)ハ-モニ-みどりヶ丘」の建築物は、甲第12号証の証明書(1)に添付された設計図で示される温風式床暖房設備を設置して建設されたものと認められる。
さらに、甲第17?20号証によると、「特別養護老人ホーム(仮称)ハ-モニ-みどりヶ丘」における温風式床暖房設備は、温風式床暖房設備が不特定人から見られないようにするための特別な措置がとられていない施工現場で施工されたものと認められ、また、施工現場のスパイラルダクトやヒーティングユニットの設置状況からみて、上記温風式床暖房設備の施工は、公然知られる状況又は公然知られるおそれのある状況で行われたものと認められる。
以上により、甲第12?20号証に記載の建築物「特別養護老人ホーム(仮称)ハーモ二-みどりヶ丘」における温風式床暖房設備の設置は、公然と行われた認められる。
そして、甲第12号証の証明書(1)に添付された設計図は、甲第1号証-1?甲第1-3(Z2)と同じ内容のものである。
すなわち、甲第1号証-1の設計図で示される温風式床暖房設備である甲1-1発明及びその設置方法である甲1-2発明は、本件特許出願前に日本国内において公然実施されたものと認められる。

5-2 本件特許発明1と甲1-1発明との対比・判断
本件特許発明1と甲1-1発明とを対比すると、各文言の意味、機能、または作用等からみて、後者の「土間コンクリート」、「ヒーティングユニットボックス」、「ヒーティングユニット4000E」、「ヒーティングユニットカバー」、「床のハッチ」、「温風式床暖房設備」、「温風吹出し管口」、「温風戻り管口」、「スパイラルダクト」及び「ファン」は、それぞれ前者の「床下のコンクリート層」、「箱体」、「温風発生装置」、「蓋」、「点検口」、「温風床暖房システム」、「吐出口」、「戻り口」、「送風ダクト」及び「送風ファン」に相当する。
後者の「土間コンクリートには、ヒーティングユニットボックスと一緒に使用するヒーティングユニット4000Eとが設けられ、ヒーティングユニットボックスがヒーティングユニット4000Eを着脱可能に格納し、ヒーティングユニットボックスはその上部にヒーティングユニットカバー」「を備え」ていることは、前者の「床暖房対象居室の所定位置の床下のコンクリート層に温風発生装置を着脱可能に格納し閉蓋した箱体を設置し」ていることに相当する。
また、後者の「床のハッチを備えた温風式床暖房設備」は、前者の「上部の床面に点検口を設置することにより点検可能とした温風床暖房システム」に相当する。
後者の「ヒ-ティングユニット4000Eと一緒に使用されるのヒーティングユニットボックスの各側面には上部両端に2つの温風吹出し管口が、下部中央に2つの温風戻り管口が設けられ」ていることは、前者の「箱体は1側面に複数箇所の温風の吐出口と同数の戻り口を有し」ていることといえる。
後者の「前記温風吹出し管口から前記温風戻り管口まで直径100mmのスパイラルダクトが配置され」ていると、ヒーティングユニットカバーを備えるヒーティングユニットボックスとスパイラルダクトとは温風が循環する通路として、密閉空間をなすことが明らかであるから、後者の「前記温風吹出し管口から前記温風戻り管口まで直径100mmのスパイラルダクトが配置され」ていることと、前者の「吐出口から戻り口まで送風ダクトを空気抵抗が同等になるよう接合してなる温風循環通路が密閉空間を形成」することとは、「吐出口から戻り口まで送風ダクトを」「接合してなる温風循環通路が密閉空間を形成」する点で共通するる。
後者の「床暖房の対象となる箇所においてスパイラルダクトが暖房対象の箇所の床一面に配置され」ることは、前者の「居室全体の前記床下のコンクリート層に偏りなく敷設埋設された前記温風循環通路」をなすことといえる。また、その結果、後者の「温風式床暖房設備」は、前者の「前記床下のコンクリート層を均等に暖め」る機能を有することとなる。
後者の「ヒーティングユニット4000Eは、ファンを有し」ていることは、当該ファンにより温風がスパイラルダクトに送り込まれることが明らかであるから、前者の「温風循環通路に送風ファンによって温風を送り込」むことといえる。
後者の「温風式床暖房設備の蓄熱方式は顕熱蓄熱方式であり、制御方式は24時間タイマ-及び床温センサ-による自動運転で、温度コントローラが夜間(22:00?8:00)の電力で蓄熱運転し、昼間(8:00?22:00)は設定温度-5℃になった場合のみ自動的に追焚き運転する」ことは、夜間に蓄熱し、昼間に蓄熱した熱を利用することとなり、その際に蓄熱した熱が床材を暖め、床を通じて輻射伝熱されて部屋の暖房に利用されることも技術常識といえるので、前者の「蓄熱し、床材を通じて居室全体を輻射伝熱により暖房すること」に相当する。

そこで本件特許発明1の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。

(一致点)

「床暖房対象居室の所定位置の床下のコンクリート層に温風発生装置を着脱可能に格納し閉蓋した箱体を設置し、上部の床面に点検口を設置することにより点検可能とした温風床暖房システムにおいて、前記の箱体は1側面に複数箇所の温風の吐出口と同数の戻り口を有し、吐出口から戻り口まで接合してなる温風循環通路が密閉空間を形成し、居室全体の前記床下のコンクリート層に偏りなく敷設埋設された前記温風循環通路に送風ファンによって温風を送り込み、前記床下のコンクリート層を均等に暖め、蓄熱し、床材を通じて居室全体を輻射伝熱により暖房する温風床暖房システム。」

そして、両者は、次の点で相違する。

(相違点1-1)
送風ダクトについて、本願発明は、吐出口から戻り口まで空気抵抗が同等になるよう接合しているのに対して、甲1-1発明は、そのような特定がなされていない点。

そこで、上記相違点について検討する。

(相違点1-1の判断)
甲1-1発明で用いられるスパイラルダクトは、甲第1号証-1の温風式床暖房設備敷設図を参酌すると、複数のスパイラルダクトが左右対称に配置される場所や、左右非対称に配置される場所がある。
そして、いずれの場所であっても、吐出口から戻り口まで空気抵抗が異なると、温風の流量に偏りが生じ、その結果、床の暖房温度についても場所により偏りが生じることは当業者にとって明らかであるので、スパイラルダクトを吐出口から戻り口まで空気抵抗が同等になるよう接合するようにすることは、当業者が当然考慮し得たことである。
そうすると、甲1-1発明において、相違点1-1に係る事項を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本件特許発明1の効果についてみても、甲1-1発明から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものではない。

5-3 以上のとおり本件特許発明1は、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

5-4 本件特許発明2と甲1-1発明との対比・判断
本件特許発明2と甲1-1発明とを比較すると、「5-2 本件特許発明1と甲1-1発明との対比・判断」で検討した点で一致し、相違点1-1に加えて、次の点で相違する。

(相違点1-2)
本件特許発明2は、「温風が循環する区域は前記温風循環通路および前記温風発生装置内に限られ、前記温風発生装置は閉蓋されることにより、前記温風循環通路および前記温風発生装置内の空間がほぼ密閉され、温風が居室内に排出することはなく、また空気層が前記床下のコンクリート層と前記床材との間に存在する施工例においても前記空気層内の空気が前記居室内に排出することはない」と特定しているのに対して、甲1-1発明は、そのような特定はなされていない点。

そこで、上記相違点について以下検討する。

(相違点1-2の判断)
甲1-1発明においても、温風が循環する区域はスパイラルダクトおよびヒーティングユニット4000E内に限られ、前記ヒーティングユニット4000Eはヒーティングユニットカバーにより閉蓋されることにより、前記スパイラルダクトおよび前記ヒーティングユニット4000E内の空間が密閉され、温風が居室内に排出することはなく、また空気層が前記床下の土間コンクリ-トと床材との間に存在する施工例の場合には前記空気層内の空気が前記居室内に排出することがないことは、明らかである。
そうすると、上記相違点1-2は、実質的な相違ではない。

5-5 以上のとおり本件特許発明2は、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

5-6 本件特許発明3と甲1-1発明との対比・判断
本件特許発明3と甲1-1発明とは、「5-2 本件特許発明1と甲1-1発明との対比・判断」で検討した点で一致し、相違点1-1に加えて、次の点で相違する。

(相違点1-3)
温風による蓄熱について、本件特許発明3は、1台で、蓄熱時間帯と放熱時間帯を区分けし、且つそれぞれに対応して蓄熱温度を設定し制御する機能を持つ床暖房コントローラを備えて行うのに対して、甲1-1発明は、温度コントローラを有しているものの、1台でそのような機能を持っているか不明である点。

そこで、上記相違点について以下検討する。

(相違点1-3の判断)
甲1-1発明は、昼間(8:00?22:00)は設定温度-5℃になった場合のみ自動的に追焚き運転することから、昼間は放熱時間帯といえ、その放熱時間帯に対応して設定温度が-5℃とされている。
また、甲1-1発明は、夜間(22:00?8:00)の電力で蓄熱運転するから、夜間は蓄熱時間帯といえる。そして、自動的に追い焚き運転する設定温度については特定がないが、昼間と同程度(-5℃)の場合には、ヒーティングユニット4000Eによる運転の停止が早まり、十分な蓄熱が得られないことは技術的に明らかであるから、設定温度を昼間より高めに設定すること、すなわち蓄熱時間帯に対応して蓄熱温度を設定し制御することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
さらに、温度コントローラを何台設けるかは当業者が適宜なし得た事項であって、1台で制御を行うことに格別なものはない。
そうすると、甲1-1発明において、相違点1-3に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本件特許発明3の効果についてみても、甲1-1発明から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものではない。

5-7 以上のとおり本件特許発明3は、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

5-8 本件特許発明4と甲1-1発明との対比・判断
本件特許発明4と甲1-1発明とは、「5-2 本件特許発明1と甲1-1発明との対比・判断」で検討した点で一致し、相違点1-1に加えて、次の点で相違する。

(相違点1-4)
本件特許発明4は、方位別に蓄熱温度を設定することにより、当該方位の暖房能力を区分しているのに対して、甲1-1発明はそのような特定はなされていない点。

そこで、上記相違点について以下検討する。

(相違点1-4の判断)
甲第23号証には、「我が社の頑丈な床暖房チューブが、温風を循環し家屋全体を暖める密閉式の配管を形成します。またその温度は各部屋で調整が可能です。」と記載されていて、部屋毎に温度を調整することが示されており、また、一般に南向きの部屋が北向きの部屋と比較して暖かいことは普通に経験することであり、部屋の向きに応じて必要とされる暖房能力が異なることも本件特許発明の出願前に周知の事項であるといえる。
そうすると、甲1-1発明においても、各部屋の方位に応じて必要とされる暖房能力が異なるから、甲第23号証に記載の事項及び周知の事項に基づいて、方位別に蓄熱温度を設定することにより、当該方位の暖房能力を区分するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本件特許発明4の効果についてみても、甲1-1発明、甲第23号証の記載及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものではない。

5-9 以上のとおり本件特許発明4は、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明、甲第23号証に記載の事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

5-10 本件特許発明5と甲1-1発明との対比・判断
本件特許発明5と甲1-1発明とは、「5-2 本件特許発明1と甲1-1発明との対比・判断」で検討した点で一致し、相違点1-1に加えて、次の点で相違する。

(相違点1-5)
温風発生装置について、本件特許発明5は、温風に熱交換するヒーターの熱源により、同寸法の箱体に格納できるよう電気式温風発生装置と温水式温風発生装置を用意し、現況のエネルギー環境によりいずれかを選択し、将来のエネルギー環境の変化に対応し取り替えられるのに対して、甲1-1発明は、そのような特定はなされていない点。

そこで、上記相違点について以下検討する。

(相違点1-5の判断)
甲第22号証の「本発明は、前記実情に鑑み提案されたもので、熱源であるヒーティングユニットを電気式と温水式とで交換可能とすることで、将来のエネルギー事情の変更にも拘わらず価格的に有利な熱源を使用することのできる温風式床暖房装置を提供する」(記載事項22b)との記載並びに、甲第22号証の記載事項22c、甲第5号証、甲第6号証及び甲第23号証の記載事項からすると、温風を発生するヒーティングユニットにおいて、温風に熱交換するヒーターの熱源により、同寸法の箱体に格納できるよう電気式温風発生装置と温水式温風発生装置を用意し、現況のエネルギー環境によりいずれかを選択し、将来のエネルギー環境の変化に対応し取り替えられるようにすることは、本件特許出願前に周知の事項であるといえる。
そうすると、甲1-1発明において、エネルギー環境を考慮することは当然であって、そのために上記周知の事項を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本件特許発明5の効果についてみても、甲1-1発明及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものではない。

5-11 以上のとおり本件特許発明5は、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

5-12 本件特許発明6と甲1-1発明との対比・判断
本件特許発明6と甲1-1発明とは、「5-10 本件特許発明5と甲1-1発明との対比・判断」で検討した点で一致し、相違点1-1及び1-5に加え、次の点で相違する。

(相違点1-6)
電気式温風発生装置について、本件特許発明6は、外部の加熱源である電源盤から電気を受け、前記電気式温風発生装置内の電気回路に電気を配電する端子台と、パワーリレーと、ファンモーター用コンデンサーと、送風ファンと、同装置内の空気を所定の温度に保つ可変式温度制御器と、温風に熱交換するヒーターシーズと、過熱防止のためのサーモスタットを有する集積装置であるのに対して、甲1-1発明は、そのような特定はなされていない点。

そこで、上記相違点について以下検討する。

(相違点1-6の判断)
甲1-1発明の「温度コントローラ」、「ファン」が、それぞれ本件特許発明6の「同装置内の空気を所定の温度に保つ可変式温度制御器」、「送風ファン」に相当する。
また、甲1-1発明は、記載事項1fの電源とヒーティングユニットとの配線から、外部の加熱源である電源盤から電気を受けていることは明らかである。
また、記載事項1fの「ヒーティングユニット内が44℃以上になるとヒータへの通電を停止する」ことより、甲1-1発明は、本件特許発明6の「過熱防止のためのサーモスタットを有」しているといえる。
さらに、記載事項1fより、甲1-1発明のヒーティングユニットは、ヒーターを有していて、当該ヒータの種類として、本件特許発明6の「ヒーターシーズ」を選択することに格別なものはない。
そして、モータを備える電気機器において、装置内の電気回路に電気を配電する端子台、パワーリレー、モータ用コンデンサーを含む集積装置とすることは、普通に採用されることであり、甲1-1発明は、ファンを有しているからモータを有することも明らかであり、甲1-1発明のヒーティングユニットにおいても、端子台、パワーリレー、ファンモータ用コンデンサーを含む集積装置を採用することは、当業者が適宜なし得た事項というほかない。
そうすると、甲1-1発明において、相違点1-6に係る構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。
そして、本件特許発明6の効果についてみても、甲1-1発明及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものではない。

5-13 以上のとおり本件特許発明6は、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

5-14 本件特許発明7と甲1-1発明との対比・判断
本件特許発明7と甲1-1発明とは、「5-10 本件特許発明5と甲1-1発明との対比・判断」で検討した点で一致し、相違点1-1及び1-5に加え、次の点で相違する。

(相違点1-7)
温水式温風発生装置について、本件特許発明7は、外部の加熱源である温水供給機から送られる温水を導く導管と、前記導管内の温水温度を検知する温度センサーと、送風ファン用サーモスタットと、ファンモーター用コンデンサーと、送風ファンと、前記導管内の温水流量を調節する電動弁と、温風に熱交換されるラジエーターと、前記温水式温風発生装置の電気回路に配電する端子台を有する集積装置であるのに対して、甲1-1発明は、そのような特定はなされていない点。

そこで、上記相違点について以下検討する。

(相違点1-7の判断)
甲第22号証の「温水式ヒーティングユニット13B」は、本件特許発明7の「温水式温風発生装置」に相当する。
また、甲第22号証の「熱動弁25a」は、その機能において本件特許発明7の「導管内の温水流量を調節する電動弁」と共通する。そして、甲第22号証の「温水式ヒーティングユニット」は、本件特許発明7でいう外部の加熱源である温水供給機から送られる温水を導く導管を備えることも明らかであり、各装置は集積されたものであるので集積装置ということができる。
そうすると、甲第22号証には、「温水式温風発生装置が、外部の加熱源である温水供給機から送られる温水を導く導管と、前記導管内の温水流量を調節する弁と、前記導管内の温水温度を検知する温度センサーと、送風ファンと、温風に熱交換されるラジエーターと、を有する集積装置」が記載されている。
また、甲第6号証には、レガレット社の温水式ヒーティングユニット4000Wの回路図が第2ページに示され、その回路図において、送風ファン用サーモスタットと、ファンモーター用コンデンサーCと、外部の加熱源である電源盤から電気を受け、電気式ヒーティングユニット4000E内の電気回路に電気を配電する端子台と、が示されている。
そして、甲1-1発明のヒーティングユニットとして、相違点1-5で検討したように、エネルギーコストを考慮して、温水式温風発生装置を選択するに際して、甲第22号証に記載の温水式発生装置を選択することは当業者が容易になし得たことである。また、甲1-1発明におけるヒーティングユニットは、上記甲第1号証?甲第8号証についての<小活1>において述べたように、レガレット社のものであり、甲第6号証のヒーティングユニットと同様に、送風ファン用サーモスタット、ファンモータ用コンデンサー、端子台を当然に備えるものと認められる。
さらに、導管内の温水流量を調節する弁として熱動弁や電動弁を用いることはいずれも周知の事項であるので、甲第22号証の温水式温風発生装置の熱動弁に換えて、電動弁を採用することも、当業者が適宜なし得た事項である。
そうすると、甲1-1発明において、相違点1-7に係る構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。
そして、本件特許発明7の効果についてみても、甲1-1発明、甲第22号証の記載、甲第6号証の記載及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものではない。

5-15 以上のとおり本件特許発明7は、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明、甲第22号証の記載事項、甲第6号証の記載事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

5-16 本件特許発明8と甲1-1発明との対比・判断
本件特許発明8と甲1-1発明とは、「5-10 本件特許発明5と甲1-1発明との対比・判断」で検討した点で一致し、相違点1-1及び1-5に加えて、次の点で相違する。

(相違点1-8)
本件特許発明8は、温風循環通路を、窓開口部直下部位の居室の一部に設置されたカウンター内の立ち上げカウンター内の空気を暖め、カウンター上部の吹出口から上昇させ、コールドドラフト防止対策として利用しているのに対して、甲1-1発明は、そのような特定はなされていない点。

そこで、上記相違点について以下検討する。

(相違点1-8の判断)
甲第26号証には、窓開口部直下部位の居室の一部にカウンター部材を設置し、そのカウンター部材内に蓄熱ユニット体を設けてカウンター部材内の空気を暖め、その空気をカウンター部材上部の吹出孔から上昇させ、コールドドラフト防止対策として利用することが記載されている。
そして、甲1-1発明が設けられる各居室において、窓は当然に存在し、その窓近辺においてコールドドラフトの対策が求められるものであるから、そのために甲第26号証の技術を適用することは当業者が容易になし得たことである。その際に、甲第26号証のカウンター部材内部に設けられる加熱体として、蓄熱ユニット体に換えて、甲1-1発明において加熱要素として機能しているスパイラルダクトを用いることに格別困難性はない。
そうすると、甲1-1発明において、相違点1-8に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本件特許発明8の効果についてみても、甲1-1発明及び甲第26号証の記載から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものではない。

5-17 以上のとおり本件特許発明8は、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明及び甲第26号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

5-18 本件特許発明9と甲1-1発明との対比・判断
本件特許発明9と甲1-1発明とは、「5-4 本件特許発明2と甲1-1発明との対比・判断」で検討した点で一致し、相違点1-1及び1-2に加えて、次の点で相違する。

(相違点1-9)
本件特許発明9は、温風発生装置の運転休止中、密閉空間の湿気を外部に放出し、所定の相対湿度まで下げる湿度制御器と、前記密閉空間の湿気を外部に放出する電動弁および湿気放出管を前記温風発生装置に備えているのに対して、甲1-1発明は、そのような特定はなされていない点。

そこで、上記相違点について以下検討する。

(相違点1-9の判断)
甲第28号証には、「熱交換容器1の上部には、バルブ20を介して大気開放管21を取り付ける。バルブ20を開弁することにより熱交換容器1内を大気と連通し、閉弁することにより遮断することができるものである」(【0015】)と記載されるように、密閉空間と大気とを放出管を介して連通し、その連通管にバルブを介装して、そのバルブの開閉により密閉空間内を大気に対して連通・遮断することは、本件特許出願前に周知の事項である。そして、甲第28号証の「バルブ」は、本件特許発明8の「電動弁」とその機能で共通し、「大気開放管」は「湿気放出管」とその機能で共通するといえる。
また、甲第23号証には、その第2頁中段において、「市場で最も湿度に強い基礎及び床暖房システムを提供すること」が記載されており(記載事項23a)、LEGALETT社が湿度に強い関心を持っていることが示され、さらに、甲第24号証には、「湿気の影響は温風を利用した床暖房装置を設置した直後や夏季の床暖房運転休止中、床下空気の相対湿度が上昇し、結露となってあらわれることがある。特開2004-162990公報におけるヒーティングユニット内にも結露が生じ、故障の原因となっている。結露はカビの発生を招き、ダニの生息にもつながり衛生上問題を生じる危険性が高いといわれている。」(記載事項24b)と記載されているように、ヒーティングユニット内の結露の問題は本件特許出願前に周知の事項といえる。
そして、甲1-1発明においても、ヒーティングユニット内について上記結露についての課題が当然に存在し、そのために、甲第28号証に記載されたバルブを有する大気開放管を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
また、甲1-1発明において、湿気放出管を採用して結露を防止する際に、制御器を設けて所定の相対湿度まで下げるように制御することも当業者が普通に考慮することである。さらに、温風発生器の運転休止中に密閉空間の湿気を外部に放出することについて、温風発生器の運転中には温風の流れがあって、湿気をヒーティングユニット内からヒーティングユニット外への排気を行うことが困難であること、スパイラル管やヒーティングユニット内は高温になるので相対湿度は低くなるから、結露の問題は生じにくいことから、温風発生器の運転中ではなく運転休止中に湿気を外部に排出しようとすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
さらに、本件特許発明9における「電動弁」について、バルブを電動弁にするか否かは設計事項の範囲内のことといえる。
そうすると、甲1-1発明において、相違点1-9に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本件特許発明9の効果についてみても、甲1-1発明及び甲第28号証の記載から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものではない。

5-19 以上のとおり本件特許発明9は、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明、甲第28号証の記載事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

5-20 本件特許発明10と甲1-2発明との対比・判断
本件特許発明10と甲1-2発明とを対比すると、各文言の意味、機能、または作用等からみて、後者の「砕石」、「ポリスチレンフォーム」、「ヒーティングユニットボックス」、「ヒーティングユニット4000E」、「配線管」、「温水パイプの入り管及び戻り管」、「土間コンクリート」、「温度コントローラ」、「スパイラルダクト」、「ヒーティングカバー」、「床のハッチ」及び「温風式床暖房設備」は、それぞれ前者の「床下砕石」、「断熱材」、「箱体」、「温風発生装置」、「加熱電源線を通線した管路」、「加熱源温水を供給する導管を納管した管路」、「基礎床コンクリート」、「床暖房コントローラ」、「温風循環通路」、「蓋」、「点検口」及び「温風床暖房システム」に相当する。

後者の「砕石の上部に、ポリスチレンフォームを敷設する工程」は、土間コンクルートからの熱の還流損失を防ぐためであることは明らかであるから、前者の「床下砕石の上部に、基礎床コンクリートに蓄熱された熱の還流損失を防止するための断熱材を敷設する工程」に相当する。
後者の「ポリスチレンフォームの上にヒーティングユニットボックスと一緒に使用するヒーティングユニット4000Eとを設置する工程」と、前者の「断熱材の上に前記基礎床コンクリートの耐過重性向上のため組込む下部鉄筋を配筋する工程と、前記下部鉄筋の上部に、居室全体を均一に暖めるため特定された、温風発生装置を格納した箱体を設置する工程」とは、「断熱材の上に」「居室全体を均一に暖めるため特定された、温風発生装置を格納した箱体を設置する工程」で共通する。
後者の「ヒーティングユニットボックスのケーブル導入口からサーキットブレーカーとサーモスタットまで、配線管を配管し、電気式のヒーティングユニットが使われるが、将来的に温水熱交換方式に変換されることが想定される場合には、あらかじめ温水パイプの入り管及び戻り管を付ける工程」は、前者の「前記居室の室外から前記箱体に接続される加熱電源線を通線した管路または加熱源温水を供給する導管を納管した管路を設置する工程」といえる。
記載事項1cには、スパイラルダクトが土間コンクリートに埋設されていて、スパイラルダクトに温風が通過すると、「土間コンクリート」を暖めれるので、後者の「ヒ-ティングユニット4000Eと一緒に使用されるのヒーティングユニットボックスの各側面には上部両端に2つの温風吹出し管口が、下部中央に2つの温風戻り管口が設けられ、前記温風吹出し口から前記温風戻口まで直径100mmのスパイラルダクトを配置し、床暖房の対象となる箇所においてスパイラルダクトを暖房対象の箇所の床一面に配置する工程」は、前者の「前記箱体に接続され、前記基礎床コンクリートを暖める温風循環通路を設置する工程」に相当する。
後者の「温風式床暖房設備の蓄熱方式は顕熱蓄熱方式であり、制御方式は24時間タイマ-及び床温センサ-による自動運転で、夜間(22:00?8:00)の電力で蓄熱運転し、昼間(8:00?22:00)は設定温度-5℃になった場合のみ自動的に追焚き運転する温度コントローラを設置する工程」は、前者の「前記温風発生装置を蓄熱時間帯と放熱時間帯に対応して制御する機能を有する床暖房コントローラ」を設置する工程といえる。
鉄筋を配筋すれば耐荷重性が向上することは明らかであるから、後者の「上部の鉄筋を配筋する工程」は、前者の「前記基礎床コンクリートの耐過重性向上のため組込む上部鉄筋を順次配筋する工程」に相当する。
後者のヒーティングユニットボックスにコンクリート打設前にヒーティングカバーを取り付けると、ヒーティングユニットボックス内にコンクリートが入らないので、後者の「ヒーティングユニットボックスにヒーティングカバーを取り付ける工程」と、前者の「箱体にコンクリートが入らぬよう前記箱体の上端部を超える高さの仮蓋を取付ける工程」とは、「箱体にコンクリートが入らぬよう前記箱体の上端部」に「蓋を取付ける工程」という点で共通する。
後者の「土間コンクリートを打設する工程」は、前者の「前記温風循環通路の下端部から前記箱体の上端部まで前記基礎床コンクリートを打設する工程」に相当する。
後者の「土間コンクリートの上部に床材を取り付ける工程」は、前者の「前記基礎床コンクリートの上部に取付ける床材を敷設する工程」に相当する。
後者の「ヒーティングユニットの上部に床のハッチを設ける工程」は、記載事項1cにおける床点検口の位置に対応して設けられることが技術常識であるから、前者の「前記温風発生装置のメンテナンスのため、前記温風発生装置を格納した前記箱体に対応する大きさの点検口を、前記箱体の上部に取付ける工程」といえる。
甲1-2発明においても、熱源を供給する設備が必要なことは明らかであるから、前者の「熱源供給設備を据え付ける工程」を当然有しているものと認められる。
そこで、本件特許発明10の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。

(一致点)
「床下砕石の上部に、基礎床コンクリートに蓄熱された熱の還流損失を防止するための断熱材を敷設する工程と、前記断熱材の上に居室全体を均一に暖めるため特定された、温風発生装置を格納した箱体を設置する工程と、前記居室の室外から前記箱体に接続される加熱電源線を通線した管路または加熱源温水を供給する導管を納管した管路を設置する工程と、前記箱体に接続され、前記基礎床コンクリートを暖める温風循環通路を設置する工程と、前記温風発生装置を蓄熱時間帯と放熱時間帯に対応して制御する機能を有する床暖房コントローラを設置する工程と、前記基礎床コンクリートの耐過重性向上のため組込む上部鉄筋を順次配筋する工程と、前記箱体にコンクリートが入らぬよう前記箱体の上端部を蓋を取付ける工程と、前記温風循環通路の下端部から前記箱体の上端部まで前記基礎床コンクリートを打設する工程と、前記基礎床コンクリートの上部に取付ける床材を敷設する工程と、前記温風発生装置のメンテナンスのため、前記温風発生装置を格納した前記箱体に対応する大きさの点検口を、前記箱体の上部に取付ける工程と、熱源供給設備を据え付ける工程とを有する、温風床暖房システムの設置方法。」

そして、両者は次の点で相違する。

(相違点1-10-1)
本件特許発明10は、断熱材の上に基礎床コンクリートの耐過重性向上のため組込む下部鉄筋を配筋する工程を有し、前記下部鉄筋の上部に、箱体を設置する工程を行っているのに対して、甲1-2発明では、下部鉄筋を配置する工程を有しておらず、ヒーティングユニットボックス(箱体)をポリスチレンフォーム(断熱材)の上に配置している点。

(相違点1-10-2)
本件特許発明10は、温風発生装置と温風循環通路により形成される密閉空間の湿気を外部に放出する湿気放出管を設置する工程を有しているのに対して、甲1-2発明は、そのような工程を有していない点。

(相違点1-10-3)
本件特許発明10は、基礎床コンクリート内の温度を検知する温度センサーを導入した管路および前記温度センサーで得た検知情報を、床暖房コントローラに伝達する電線を導入した管路を設置する工程を有しているに対して、甲1-2は発明では、温度コントローラ(床暖房コントローラ)を有しているものの、そのような工程は特定されていない点。

(相違点1-10-4)
本件特許発明10は、温風発生機内の端子台に接続された電源が前記端子台の異なる部位から分岐され、床暖房コントローラに送られる電源線を導入した管路を設置する工程を有しているのに対して、甲1-2発明では、温度コントローラ(床暖房コントローラ)を有しているものの、そのような工程の特定はなされていない点。

(相違点1-10-5)
本件特許発明10は、箱体の高さを超える厚さの基礎床コンクリートに蓄熱する場合においては、前記箱体にコンクリートが入らぬよう前記箱体の上端部を超える高さの仮蓋を取付ける工程を有しているのに対して、甲1-2発明は、コンクリートが入らぬようヒーティングユニットボックスの上端部にヒーティングカバーを取付けるものの、ヒーティングカバーの取付けとヒーティングユニットボックスとの高さの関係については特定はなされていない点。

そこで、上記相違点について以下検討する。

(相違点1-10-1の判断)
一般に、コンクリート層に耐荷重改善を意図して鉄筋を配置することは文献を提示するまでもなく、本件特許出願日前に周知の事項である。また、コンクリート層中に鉄筋を配置する位置も、求められる強度を考慮して当業者が適宜定めうる事項である。
そして、甲1-2発明においても、土間コンクリートの上部に鉄筋を配しているが、さらなる強度を意図して、鉄筋を配していない下部にも設けることは、当業者が適宜なし得たことである。
そして、下部に鉄筋を配した場合には、下部の鉄筋の上部に箱体を設置することになる。
よって、甲1-2発明において、相違点1-10-1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点1-10-2の判断)
相違点1-9の判断において検討したとおり、甲1-2発明においても、温風発生装置と温風循環通路により形成される密閉空間の湿気を外部に放出する湿気放出管を設けることは当業者が容易になし得たことである。
よって、甲1-2発明において、相違点1-10-2に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点1-10-3の判断)
甲1-2発明は、温度コントローラを有していて、床暖房により部屋の温度を調整するものであり、土間コンクリートに蓄熱される蓄熱量が部屋の温度に影響することは明らかであるから、甲1-2発明において、温度コントローラにより部屋の温度を調整するに際して、部屋の温度に影響する土間コンクリート内の温度を検知する温度センサーを導入することは当業者が容易になし得たことである。また、電線を管路に挿入して配置することは、本件特許出願前に引例を提示するまでのもなく周知の事項である。
よって、甲1-2発明において、温度センサーと温度コントローラの間を電線を導入した管路を設置する工程を備える相違点1-10-3に係る構成を採用することは、当業者が適宜なし得た事項である。

(相違点1-10-4の判断)
端子台に接続された電源が異なる部位から分岐され、他の装置構成に電源を供給することは本件特許出願前に周知の事項である(例えば、甲第5号証の「CONENECTION」欄、甲第6号証の「ELECTRICAL CONNECTION」の欄参照。)
よって、甲1-2発明においても、ヒーティングユニット内に供給される電源について相違点1-10-4に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点1-10-5の判断)
土間コンクリートを打設する際に打設する場所に備えられた他の設備に打設するコンクリートが入らないように仮の蓋を取付ける等してコンクリートが入らないようにすることは、本件特許出願前に周知の事項である(例えば、上記記載事項23b参照。)。
そうすると、甲1-2発明において、土間コンクリートを打設する際に、コンクリートがヒーティングユニットボックス内に入らないように、ヒーティングユニットボックスに仮蓋を取り付ける工程を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
その際に、仮蓋をヒーティングユニットボックスの上端部を超える高さとすることも当業者が適宜なし得た事項である。
本件特許発明10の「電動弁」については、バルブを電動弁にするか否かは設計事項の範囲内のことといえる。

そして、これらの相違点に係る効果をあわせてみても、甲1-2発明及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものではない。

5-21 以上のとおり本件特許発明10は、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

5-22 本件特許発明11と甲1-2発明との対比・判断
本件特許発明11と甲1-2発明とを対比すると、各文言の意味、機能、または作用等からみて、後者の「砕石」、「ポリスチレンフォーム」、「ヒーティングユニットボックス」、「ヒーティングユニット4000E」、「配線管」、「温水パイプの入り管及び戻り管」、「土間コンクリート」、「温度コントローラ」、「スパイラルダクト」、「ヒーティングカバー」、「床のハッチ」及び「床暖房システム」は、それぞれ前者の「床下砕石」、「断熱材」、「箱体」、「温風発生装置」、「加熱電源線を通線した管路」、「加熱源温水を供給する導管を納管した管路」、「基礎床コンクリート」又は「床下コンクリート」、「床暖房コントローラ」、「温風循環通路」、「蓋」、「点検口」及び「温風床暖房システム」に相当する。

後者の「砕石の上部に、ポリスチレンフォームを敷設する工程」と、前者の「床下砕石の上部に打設された基礎床コンクリート層の上部および周囲に断熱材を敷設する工程」とは、 「床下砕石の上部に」「断熱材を敷設する工程」で共通する。
後者の「ポリスチレンフォームの上にヒーティングユニットボックスと一緒に使用するヒーティングユニット4000Eとを設置する工程」は、前者の「前記断熱材の上部に、居室全体を均一に暖めるため特定された、温風発生装置を格納した箱体を設置する工程」に相当する。
後者の「ヒーティングユニットボックスのケーブル導入口からサーキットブレーカーとサーモスタットまで、配線管を配管し、電気式のヒーティングユニットが使われるが、将来的に温水熱交換方式に変換されることが想定される場合には、あらかじめ温水パイプの入り管及び戻り管を付ける工程」は、前者の「前記居室の室外から前記箱体に接続される加熱電源線を通線した管路または加熱源温水を供給する導管を納管した管路を設置する工程」といえる。
記載事項1cには、スパイラルダクトが土間コンクリートに埋設されていて、スパイラルダクトに温風が通過すると、「土間コンクリート」を暖めるので、後者の「ヒ-ティングユニット4000Eと一緒に使用されるヒーティングユニットボックスの各側面には上部両端に2つの温風吹出し管口が、下部中央に2つの温風戻り管口が設けられ、前記温風吹出し口から前記温風戻口まで直径100mmのスパイラルダクトを配置し、床暖房の対象となる箇所においてスパイラルダクトを暖房対象の箇所の床一面に配置する工程」は、前者の「前記箱体に接続され、床下コンクリートを暖める温風循環通路を設置する工程」に相当する。
後者の「温風式床暖房設備の蓄熱方式は顕熱蓄熱方式であり、制御方式は24時間タイマ-及び床温センサ-による自動運転で、夜間(22:00?8:00)の電力で蓄熱運転し、昼間(8:00?22:00)は設定温度-5℃になった場合のみ自動的に追焚き運転する温度コントローラを設置する工程」は、前者の「前記温風発生装置を蓄熱時間帯と放熱時間帯に対応して制御する機能を有する床暖房コントローラ」を設置する工程といえる。
鉄筋を配筋すればコンクリートが補強されることが明らかであるから、後者の土間コンクリートの「上部の鉄筋を配筋する工程」と、前者の「前記床下コンクリートの上端部直下に前記床下コンクリートを補強するためのメッシュを敷設する工程」とは、「床下コンクリート」を補強する点で共通する。
記載事項1cからみて、土間コンクリートは、ヒーティングユニットを超える厚さであって、スパイラルダクトを通る温風によって、蓄熱されるから、後者の「ヒーティングユニットボックスにヒーティングカバーを取り付ける工程」と、前者の「箱体の高さを超える厚さの前記床下コンクリートに蓄熱する場合においては、前記箱体にコンクリートが入らぬよう前記箱体の上端部を超える高さの仮蓋を取付ける工程」とは、「箱体の高さを超える厚さの前記床下コンクリートに蓄熱する場合においては、箱体にコンクリートが入らぬよう前記箱体の上端部」に「蓋を取付ける工程」という点で共通する。
後者の「土間コンクリートを打設する工程」は、前者の「前記温風循環通路の下端部から床材下端部まで前記床下コンクリートを打設する工程」に相当する。
後者の「土間コンクリートの上部に床材を取り付ける工程」は、前者の「前記床下コンクリートの上部に取付ける床材を敷設する工程」に相当する。
後者の「ヒーティングユニットボックスの上部に床のハッチを設ける工程」は、記載事項1cにおける床点検口の位置に対応して設けられることが技術常識であるから、前者の「前記温風発生装置のメンテナンスのため、前記温風発生装置を格納した前記箱体に対応する大きさの点検口を、前記箱体の上部の床面に取付ける工程」といえる。
甲1-2発明においても、熱源を供給する設備が必要なことは明らかであるから、前者の「熱源供給設備を据え付ける工程」を有しているものと認められる。

そこで、本件特許発明11の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。

(一致点)
「床下砕石の上部に断熱材を敷設する工程と、前記断熱材の上部に、居室全体を均一に暖めるため特定された、温風発生装置を格納した箱体を設置する工程と、前記居室の室外から前記箱体に接続される加熱電源線を通線した管路または加熱源温水を供給する導管を納管した管路を設置する工程と、前記箱体に接続され、床下コンクリートを暖める温風循環通路を設置する工程と、前記温風発生装置を蓄熱時間帯と放熱時間帯に対応して制御する機能を有する床暖房コントローラを設置する工程と、前記床下コンクリートの上端部直下に前記床下コンクリートを補強する工程と、前記箱体の高さを超える厚さの前記床下コンクリートに蓄熱する場合においては、前記箱体にコンクリートが入らぬよう前記箱体の上端部に蓋を取付ける工程と、前記温風循環通路の下端部から床材下端部まで前記床下コンクリートを打設する工程と、前記床下コンクリートの上部に取付ける床材を敷設する工程と、前記温風発生装置のメンテナンスのため、前記温風発生装置を格納した前記箱体に対応する大きさの点検口を、前記箱体の上部の床面に取付ける工程と、熱源供給設備を据え付ける工程とを有する、温風床暖房システムの設置方法。」

そして、両者は次の点で相違する。

(相違点1-11-1)
床下のコンクリートについて、本件特許発明11は、床下砕石の上部に打設された基礎床コンクリート層とその上部の床下コンクリートとし、基礎床コンクリート層の上部および周囲に断熱材を敷設しているのに対して、甲1-2発明は、土間コンクリートの下部と砕石との間にポリスチレンフォームを配置しているものの、土間コンクリートの構成についてはそのような特定はなされていない点。

(相違点1-11-2)
本件特許発明11は、温風発生装置と温風循環通路により形成される密閉空間の湿気を外部に放出する湿気放出管を設置する工程を有しているのに対して、甲1-2発明は、そのような工程を有していない点。

(相違点1-11-3)
本件特許発明11は、床下コンクリート内の温度を検知する温度センサーを導入した管路および前記温度センサーで得た検知情報を、床暖房コントローラに伝達する電線を導入した管路を設置する工程を有しているに対して、甲1-2は発明では、温度コントローラ(床暖房コントローラ)を有しているものの、そのような工程の特定はなされていない点。

(相違点1-11-4)
本件特許発明11は、温風発生機内の端子台に接続された電源が前記端子台の異なる部位から分岐され、床暖房コントローラに送られる電源線を導入した管路を設置する工程を有しているのに対して、甲1-2発明では、温度コントローラ(床暖房コントローラ)を有しているものの、そのような工程の特定はなされていない点。

(相違点1-11-5)
床下コンクリートの上端部直下の前記床下コンクリートの補強について、本件特許発明11は、メッシュを敷設しているのに対して、甲1-2発明は、鉄筋を配筋している点。

(相違点1-11-6)
箱体にコンクリートが入らぬよう前記箱体の上端部に蓋を取付けるに際して、本件特許発明11は、箱体の上端部を超える高さの仮蓋としているのに対して、甲1-2発明は、ヒーティングユニットボックスの上端部にヒーティングカバーを取付けるものの、ヒーティングカバーがヒーティングボックスの上端部を超えているか不明であり、また、ヒーティングカバーが仮蓋ではない点。

そこで、上記相違点について以下検討する。

(相違点1-11-1の判断)
床下のコンクリートについて、コンクリート土間基礎の上に、発泡プラスチックで形成された断熱層を設け、更にこの断熱層の上に蓄熱体となる床下コンクリートを設ける構造は、甲第27号証に記載されている(記載事項27c)。
そして、甲1-2発明と甲第27号証は、ともに床下のコンクリートに蓄熱する床下暖房に関する技術の点で共通しており、甲1-2発明の床下のコンクリートの構造として、甲第27号証の上記構造を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
また、甲1-2発明においても土間コンクリートの周囲から熱を逃がさないようにすることも当業者なら当然考慮することであり、そのために、土間コンクリートの周囲にも断熱材を配置することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点1-11-2の判断)
相違点1-9の判断において検討したとおり、甲1-2発明においても、温風発生装置と温風循環通路により形成される密閉空間の湿気を外部に放出する湿気放出管を設ける工程を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点1-11-3の判断)
相違点1-10-3の判断において示したとおり、甲1-2発明においても、相違点1-11-3に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点1-11-4の判断)
相違点1-10-4の判断において示したとおり、甲1-2発明においても、ヒーティングユニット内に供給される電源について相違点1-11-4に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点1-11-5の判断)
コンクリートの補強に鉄筋を用いるか、メッシュを用いるかは、適宜なしえることであり、甲1-2発明においても、鉄筋にかえてメッシュとすることは、当業者が適宜なし得たことである。
そうすると、甲1-2発明においても、相違点1-11-5に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点1-11-6の判断)
相違点1-10-5の判断において示したとおり、甲1-2発明においても、相違点1-11-6に係る構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。

そして、これらの相違点に係る効果をあわせてみても、甲1-2発明及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものではない。

5-23 以上のとおり、本件特許発明11は、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

<小括2>
したがって、本件特許発明1?3は、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明に基づいて、本件特許発明4は、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明、甲第23号証に記載の事項及び周知の事項に基づいて、本件特許発明5、6、10及び11は、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明及び周知の事項に基づいて、本件特許発明7は、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明、甲第6号証に記載の事項、甲第22号証に記載の事項及び周知の事項に基づいて、本件特許発明8は、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明及び甲第26号証に記載の事項に基づいて、本件特許発明9は、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明及び甲第28号証に記載の事項に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

5-24 本件特許発明1と甲22-1発明との対比・判断
本件特許発明1と甲22-1発明とを対比すると、各文言の意味、機能、または作用等からみて、後者の「床材の下」、「温風管」、「ヒーティングユニット」、「ケーシング」、「蓋体」及び「温風式床暖房装置」は、それぞれ、前者の「床下」、「送風ダクト」又は「温風循環通路」、「温風発生装置」、「箱体」、「蓋」及び「温風床暖房システム」に相当する。
後者の「床材の下に配設された温風管」と、前者の「居室全体の前記床下のコンクリート層に偏りなく敷設埋設された前記温風循環通路」とは、「床下」に「敷設」「された」「前記温風循環通路」という点で共通する。
後者の「ヒーティングユニット」が「温風管に温風を供給する」ことは、前者の「温風発生装置」が「送風ファン」により「温風循環通路」に温風を吹き込むことといえる。
後者の「蓋体」は、「表面床材と同様のものとされ」ていることから、「蓋体」が「床材」の一部をなすものといえ、「ヒーティングユニット」から「蓋体」を外した後には床面に開口が生じ、その開口は点検口となるので、後者の「前記ヒーティングユニットは、温風管と接続されたケーシング内に着脱可能に配設され、前記ケーシングは、蓋体を有しており、表面が床材と同様のものとされ」ることと、前者の「床暖房対象居室の所定位置の床下のコンクリート層に温風発生装置を着脱可能に格納し閉蓋した箱体を設置し、上部の床面に点検口を設置することにより点検可能」とすることは、「床暖房対象居室の所定位置の床下」「に温風発生装置を着脱可能に格納し閉蓋した箱体を設置し、上部の床面に点検口を設置することにより点検可能とした」点で共通する。
後者の「ケーシング」が「前記温風管と接続された複数の吐出口と複数の戻り口とを別の側面に備え」ていることと、前者の「箱体は1側面に複数箇所の温風の吐出口と同数の戻り口を有し」ていることとは、「箱体」が「側面に複数箇所の温風の吐出口と同数の戻り口を有し」ている点で共通する。
後者の「戻り口は空気溜チャンバーと連通しており、空気溜チャンバーから前記ヒーティングユニットの下を通って送風ファン導かれ、ヒータによって加熱された空気は、吐出口から温風管に送風され、床材を暖めた後に戻り口から空気溜チャンバー内へ戻ってくるように循環」することと、前者の「吐出口から戻り口まで送風ダクトを空気抵抗が同等になるよう接合してなる温風循環通路が密閉空間を形成し、居室全体の前記床下のコンクリート層に偏りなく敷設埋設された前記温風循環通路に送風ファンによって温風を送り込み、前記床下のコンクリート層を均等に暖め、蓄熱し、床材を通じて居室全体を輻射伝熱により暖房する」こととは、「吐出口から戻り口まで送風ダクトを」「接合してなる温風循環通路が密閉空間を形成し、居室全体の前記床下」「に」「敷設」「された前記温風循環通路に送風ファンによって温風を送り込み、前記床下」「を均等に暖め」「床材を通じて居室全体を輻射伝熱により暖房する」点で共通する。
そこで、本件特許発明1の用語を用いて表現すると、本件特許発明1と甲22-1発明とは、次の点で一致する。

(一致点)
「床暖房対象居室の所定位置の床下に温風発生装置を着脱可能に格納し閉蓋した箱体を設置し、上部の床面に点検口を設置することにより点検可能とした温風床暖房システムにおいて、前記の箱体は側面に複数箇所の温風の吐出口と同数の戻り口を有し、吐出口から戻り口まで送風ダクトを接合してなる温風循環通路が密閉空間を形成し、居室全体の前記床下に敷設された前記温風循環通路に送風ファンによって温風を送り込み、前記床下を均等に暖め、床材を通じて居室全体を輻射伝熱により暖房する温風床暖房システム。」

そして、両者は次の点で相違する。

(相違点2-1-1)
本件特許発明1は、床下のコンクリート層に箱体を設置し、温風循環通路が床下のコンクリート層に偏りなく埋設され、床下のコンクリート層を均等に暖め、蓄熱して、輻射伝熱による暖房しているのに対して、甲22-1発明は、ケーシングの設置状態及び温風管の設置状態ついては特定していない点。

(相違点2-1-2)
本件特許発明1は、箱体の1側面に複数箇所の温風の吐出口と同数の戻り口を有しているのに対し、甲22-1発明は、ケーシングの別の側面に複数の吐出口と複数の戻り口とを備えている点。

(相違点2-1-3)
本件特許発明1は、吐出口から戻り口まで送風ダクトを空気抵抗が同等になるよう接合しているのに対して、甲22-1発明は、そのような特定はなされていない点。

そこで、上記相違点について以下検討する。

(相違点2-1-1の判断)
甲第23号証の記載事項23bには、レガレット社のパンフレットにおいて、ヒーティングユニットを格納したヒーティングユニットボックスと、そのヒーティングユニットボックスから延びる温風循環通路とが居室全体の床下のコンクリート層に偏りなく敷設埋設され、その温風循環通路の上下に上部鉄筋と下部鉄筋とが配筋されることが記載され、また、甲第7号証の記載事項7a、7b及び甲第24号証の記載事項24aを参酌すると、ヒーティングユニットボックス、温風管からなる温風式床暖房装置において、床下のコンクリート層に箱体を設置し、温風循環通路が床下のコンクリート層に偏りなく埋設することは、本件特許出願前に周知の事項である。
そうすると、ヒーティングユニットボックス、温風管からなる温風式床暖房装置で共通する甲22-1発明において、上記周知の事項を摘要することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、温風管を床下のコンクリート層に埋設したものは、床下のコンクリート層を均等に暖め、蓄熱して、輻射伝熱による暖房を行うことは技術的に明らかなことである。
よって、甲22-1発明において、相違点2-1-1に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点2-1-2の判断)
本件特許発明1は、箱体の1側面に複数箇所の温風の吐出口と同数の戻り口を有しているとしているが、それに基づく有利な効果は、本件特許明細書に特に記載されておらず、吐出口と戻り口とを1側面に設けても、別の側面に設けても、甲22-1発明の発明における温風が吐出口から温風管に送風され、床材を暖めた後に戻り口から戻るという機能において変わるところはない。
したがって、吐出口と戻り口を側面のどこに設けるかは設計的事項に過ぎず、甲22-1発明において、相違点2-1-2に係る構成を採用することは当業者が適宜なし得た事項である。

(相違点2-1-3の判断)
温風管により床を均一に暖めるためには、各温風管に風量を偏りなく送る必要があることは明らかであり、そのために、各温風管の空気抵抗が同等となるようにすることも当業者が当然考慮した事項である。
また、甲第22号証の図1の4対の温風管は、同じ形状に配置されていて、各温風管の空気抵抗が同等になるようにヒーティングユニットに接続されているものと認められる。
したがって、甲22-1発明においても、吐出口から戻り口まで送風ダクトを空気抵抗が同等になるよう接合されていると認められ、相違点2-1-3は実質的な相違点ではない。

5-25 以上のとおり本件特許発明1は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

5-26 本件特許発明2と甲22-1発明との対比・判断
本件特許発明2と甲22-1発明とを比較すると、「5-24 本件特許発明1と甲22-1発明との対比・判断」で検討した点で一致し、相違点2-1-1?2-1-3に加えて、次の点で相違する。

(相違点2-2)
本件特許発明2は、温風が循環する区域は温風循環通路および温風発生装置内に限られ、前記温風発生装置は閉蓋されることにより、前記温風循環通路および前記温風発生装置内の空間がほぼ密閉され、温風が居室内に排出することはなく、また空気層が前記床下のコンクリート層と前記床材との間に存在する施工例においても前記空気層内の空気が前記居室内に排出することはないとしているに対して、甲22-1発明は、そのような特定はなされていない点。

そこで、以下相違点について検討する。

(相違点2-2の判断)
甲第22号証の記載事項22c、22d、22e及び22fを参酌すると、甲第22号証においては、温風が循環する区域は温風管12内およびケーシング18(ヒーティングユニット13)内に限られ、ケーシング18(ヒーティングユニット13)は閉蓋されることにより、温風管12内およびケーシング18(ヒーティングユニット13)内の空間が密閉され、温風が居室内に排出することはないものと認められる。
また、甲第22-1発明においては、甲第22号証の図7に、ケーシング18が蓋体30を有しており、表面が床材11と同様のものとなっていること(記載事項22d)より、蓋体30及び床材11が床下を遮蔽することになって、空気層が床下のコンクリート層と床材との間に存在する施工例においても、その空気層内の空気が居室内に排出することはないものと認められる。
そうすると、上記相違点2-2は、実質的な相違点ではない。

5-27 以上のとおり本件特許発明2は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

5-28 本件特許発明3と甲22-1発明との対比・判断
本件特許発明3と甲22-1発明とを比較すると、「5-24 本件特許発明1と甲22-1発明との対比・判断」で検討した点で一致し、相違点2-1-1?2-1-3に加えて、次の点で相違する。

(相違点2-3)
本件特許発明3は、温風による蓄熱は、1台で、蓄熱時間帯と放熱時間帯を区分けし、且つそれぞれに対応して蓄熱温度を設定し制御する機能を持つ床暖房コントローラを備えて行うのに対して、甲22-1発明は、そのような特定をしていない点。

そこで、以下相違点について検討する。

(相違点2-3の判断)
甲第25号証の記載事項25a?記載事項25cを参酌すると、甲第25号証には、蓄熱工程においてヒートポンプ(5)を作動させて蓄熱を行い、放熱工程においてヒートポンプ(5)の作動を停止させて土間コンクリート(2)等に蓄熱された熱を放熱することになり、夜間の蓄熱時間帯と朝方から昼間の放熱時間帯とに区分けし、蓄熱時間帯においては温風発生装置を作動させて蓄熱を行い、放熱時間帯においては温風発生装置を作動させないことにより蓄熱を行わないことが記載されている。
そして、蓄熱時間帯と放熱時間帯において、蓄熱温度を設定する場合に、昼間と夜間とが同程度の場合には、夜間にヒーティングユニットよる運転の停止が早まり、蓄熱を十分得られないことが技術的に明らかであるから、設定温度を昼間より高めに設定すること、すなわち蓄熱時間帯に対応して蓄熱温度を設定し制御することは当業者であれば容易に想起し得たことである。
そうすると、甲22-1発明において、甲第25号証の技術を適用して、相違点2-3に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本件特許発明3の効果についてみても、甲22-1発明から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものではない。

5-29 以上のとおり本件特許発明3は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明、甲第25号証に記載の事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

5-30 本件特許発明4と甲22-1発明との対比・判断
本件特許発明4と甲22-1発明とを比較すると、「5-24 本件特許発明1と甲22-1発明との対比・判断」で検討した点で一致し、相違点2-1-1?2-1-3に加えて、次の点で相違する。

(相違点2-4)
本件特許発明4は、方位別に蓄熱温度を設定することにより、当該方位の暖房能力を区分しているのに対して、甲22-1発明は、そのような特定をしていない点。

そこで、以下相違点について検討する。

(相違点2-4の判断)
相違点1-4の判断で示したのと同様に、甲22-1発明においても相違点2-4に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

5-31 以上のとおり本件特許発明4は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明、甲第23号証に記載の事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

5-32 本件特許発明5と甲22-1発明との対比・判断
本件特許発明5と甲22-1発明とを比較すると、「5-24 本件特許発明1と甲22-1発明との対比・判断」で検討した点で一致し、相違点2-1-1?2-1-3に加えて、次の点で相違する。

(相違点2-5)
温風発生装置について、本件特許発明5は、温風に熱交換するヒーターの熱源により、同寸法の箱体に格納できるよう電気式温風発生装置と温水式温風発生装置を用意し、現況のエネルギー環境によりいずれかを選択し、将来のエネルギー環境の変化に対応し取り替えられるのに対して、甲22-1発明は、そのような特定がなされていない点。

(相違点2-5の判断)
相違点1-5の判断で示したのと同様に、甲22-1発明においても相違点2-5に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

5-33 以上のとおり本件特許発明5は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

5-34 本件特許発明6と甲22-1発明との対比・判断
本件特許発明6と甲22-1発明とを比較すると、「5-32 本件特許発明5と甲22-1発明との対比・判断」で検討した点で一致し、相違点2-1-1?2-1-3、2-5に加えて、次の点で相違する。

(相違点2-6)
電気式温風発生装置について、本件特許発明6は、外部の加熱源である電源盤から電気を受け、前記電気式温風発生装置内の電気回路に電気を配電する端子台と、パワーリレーと、ファンモーター用コンデンサーと、送風ファンと、同装置内の空気を所定の温度に保つ可変式温度制御器と、温風に熱交換するヒーターシーズと、過熱防止のためのサーモスタットを有する集積装置であるのに対して、甲22-1発明は、そのような特定はなされていない点。

(相違点2-6の判断)
モータを備える電気機器において、装置内の電気回路に電気を配電する端子台、パワーリレー、モータ用コンデンサーを含む集積装置とすること自体、普通に採用されることであり、甲22-1発明はファンを有しているからモータを有することも明らかであり、甲22-1発明のヒーティングユニットにおいても、端子台、パワーリレー、ファンモータ用コンデンサーを含む集積装置を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
また、ヒータの種類として、ヒーターシーズは本件特許出願前に周知の事項であり、その採用することにより格別なものはない。
そして、本件特許発明6の効果についてみても、甲22-1発明から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものではない。

5-35 以上のとおり本件特許発明6は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

5-36 本件特許発明7と甲22-1発明との対比・判断
本件特許発明7と甲22-1発明とを比較すると、「5-32 本件特許発明5と甲22-1発明との対比・判断」で検討した点で一致し、相違点2-1-1?2-1-3、2-5に加えて、次の点で相違する。

(相違点2-7)
電気式温風発生装置について、本件特許発明7は、外部の前記加熱源である温水供給機から送られる温水を導く導管と、前記導管内の温水温度を検知する温度センサーと、送風ファン用サーモスタットと、ファンモーター用コンデンサーと、送風ファンと、前記導管内の温水流量を調節する電動弁と、温風に熱交換されるラジエーターと、前記温水式温風発生装置の電気回路に配電する端子台を有する集積装置であるのに対して、甲22-1発明は、そのような特定はなされていない点。

そこで、以下相違点について検討する。

(相違点2-7の判断)
甲第22号証の温水式ヒーティングユニット13Bは、「熱源であるラジエータ2と送風ファン24と熱動弁25及び温度センサー26等を備えており、ケーシング18内に収納されている。外部から供給される温水は、温水入口27から熱動弁25a、25bを介して左右のラジエータ23に供給される。また、温水入口27の近傍には温度センサー26が配置されている。ラジエータ23を循環した温水は、温水出口28から流出する。」(記載事項22g)と記載されていて、甲第22号証の「温水式ヒーティングユニット13B」は、本件特許発明7の「温水式温風発生装置」に相当する。
また、甲第22号証の「熱動弁25a」は、その機能において本件特許発明7の「導管内の温水流量を調節する電動弁」と共通する。甲第22号証の温水式ヒーティングユニットは、本件特許発明7でいう外部の加熱源である温水供給機から送られる温水を導く導管を備えることも明らかであり、各装置は集積されたものであるので集積装置ということができる。
そうすると、甲第22号証には、温水式温風発生装置が、外部の加熱源である温水供給機から送られる温水を導く導管と、前記導管内の温水流量を調節する弁と、前記導管内の温水温度を検知する温度センサーと、送風ファンと、温風に熱交換されるラジエーターと、を有する集積装置であることが記載されている。
また、電気機器において、電気回路に電気を配電する端子台を備えることも本件特許出願前に周知の事項である。
以上より、甲22-1発明のヒーティングユニットとして、「5-32 本件特許発明5と甲22-1発明との対比・判断」の相違点2-5で検討したように、エネルギーコストを考慮して、温水式温風発生装置を選択するに際して、甲第22号証に記載の温水式発生装置を選択することは当業者が容易になし得たことである。
さらに、導管内の温水流量を調節する弁として熱動弁や電動弁を用いることはいずれも周知の事項であるので、甲第22号証の温水式温風発生装置の熱動弁にかえて、電動弁を採用することも当業者が適宜なし得た事項である。
そうすると、甲22-1発明において、相違点2-7に係る構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。
そして、本件特許発明7の効果についてみても、甲22-1発明、甲第22号証の記載事項、及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものではない。

5-37 以上のとおり本件特許発明7は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

5-38 本件特許発明8と甲22-1発明との対比・判断
本件特許発明8と甲22-1発明とを比較すると、「5-24 本件特許発明1と甲22-1発明との対比・判断」で検討した点で一致し、相違点2-1-1?2-1-3に加えて、次の点で相違する。

(相違点2-8)
本件特許発明8は、温風循環通路を、窓開口部直下部位の居室の一部に設置されたカウンター内の立ち上げカウンター内の空気を暖め、カウンター上部の吹出口から上昇させ、コールドドラフト防止対策として利用しているのに対して、甲22-1発明はそのような特定はなされていない点。

そこで、以下相違点について検討する。

(相違点2-8の判断)
相違点1-8の判断で示したのと同様に、甲22-1発明においても相違点2-8に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

5-39 以上のとおり本件特許発明8は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明、甲第26号証に記載の事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

5-40 本件特許発明9と甲22-1発明との対比・判断
本件特許発明9と甲22-1発明とを比較すると、「5-26 本件特許発明2と甲22-1発明との対比・判断」で検討した点で一致し、相違点2-1-1?2-1-3、2-2に加えて、次の点で相違する。

(相違点2-9)
本件特許発明9は、温風発生装置の運転休止中、密閉空間の湿気を外部に放出し、所定の相対湿度まで下げる湿度制御器と、前記密閉空間の湿気を外部に放出する電動弁および湿気放出管を前記温風発生装置に備えているのに対して、甲22-1発明は、そのような特定はなされていない点。

そこで、以下相違点について検討する。

(相違点2-9の判断)
相違点1-9の判断で示したのと同様に、甲22-1発明においても相違点2-9に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

5-41 以上のとおり本件特許発明9は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明、甲第28号証に記載の事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

5-42 本件特許発明10と甲22-2発明との対比・判断
本件特許発明10と甲22-2発明とを対比すると、各文言の意味、機能、または作用等からみて、後者の「床材の下」、「ケーシング」、「ヒーティングユニット」、「温風管」、「蓋体」及び「温度制御部」は、それぞれ、前者の「床下」、「箱体」、「温風発生装置」、「温風循環通路」、「蓋」及び「床暖房コントローラ」に相当する。
後者の「床材の下に配設されたケーシングに接続される温風管を設置する工程」と、前者の「箱体に接続され、前記基礎床コンクリートを暖める温風循環通路を設置する工程」とは、「箱体に接続され」る「温風循環通路を設置する工程」という点で共通する。
後者の「温風管に温風を供給するヒーティングユニットを温風管と接続されたケーシング内に着脱可能に配設する工程」は、前者の「居室全体を均一に暖めるため特定された、温風発生装置を格納した箱体を設置する工程」に相当する。
後者の「該ヒーティングユニットを制御する温度制御部を設置する工程と、床温度を検出する温度センサーを設置する工程を備え」ることと、前者の「前記基礎床コンクリート内の温度を検知する温度センサーを導入した管路および前記温度センサーで得た検知情報を、前記温風発生装置を蓄熱時間帯と放熱時間帯に対応して制御する機能を有する床暖房コントローラに伝達する電線を導入した管路を設置する工程」を備えることとは、「温度センサー」と「床暖房コントローラ」「を設置する工程」で共通する。
後者の「前記ケーシングに、蓋体を設ける工程」と、前者の「前記箱体の高さを超える厚さの前記基礎床コンクリートに蓄熱する場合においては、前記箱体にコンクリートが入らぬよう前記箱体の上端部を超える高さの仮蓋を取付ける工程」とは、「箱体に」「蓋を取付ける工程」という点で共通する。
後者は、「蓋体の表面が床材と同様のものとされ」ていることから、床材を有していることは明らかであり、前者の「前記基礎床コンクリートの上部に取付ける床材を敷設する工程」とは、「床」「の上部に取付ける床材を敷設する工程」という点で共通する。また、後者の「蓋体」が「床材」の一部をなすものといえ、「ヒーティングユニット」から「蓋体」を外した後には床面に開口が生じ、その開口は点検口となるので、後者は、前者の「温風発生装置のメンテナンスのため、前記温風発生装置を格納した前記箱体に対応する大きさの点検口を、前記箱体の上部に取付ける工程」を有していることは明らかである。
後者の「戻り口は空気溜チャンバーと連通しており、空気溜チャンバーから前記ヒーティングユニットの下を通って送風ファン導かれ、ヒータによって加熱された空気は、吐出口から温風管に送風され、床材を暖めた後に戻り口から空気溜チャンバー内へ戻ってくるように循環させる工程」は、前者の「温風発生装置と前記温風循環通路により形成される密閉空間の湿気を外部に放出する湿気放出管を設置する工程」とは、「温風発生装置と前記温風循環通路により形成される密閉空間」「を設置する工程」という点で共通する。
後者の「ヒーティングユニットは、熱源と送風ファンを備えると共に電気式ヒーティングユニットと温水式ヒーティングユニットが交換可能に設置する工程」を有することは、前者の「前記居室の室外から前記箱体に接続される加熱電源線を通線した管路または加熱源温水を供給する導管を納管した管路を設置する工程」を有するといえる。
甲22-2発明においても、「電気式ヒーティングユニットと温水式ヒーティングユニットが交換可能」であり、前者の「熱源供給設備を据え付ける工程」を備えることは明らかである。

そこで、本件特許発明10の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。

(一致点)
「居室全体を均一に暖めるため特定された、温風発生装置を格納した箱体を設置する工程と、前記居室の室外から前記箱体に接続される加熱電源線を通線した管路または加熱源温水を供給する導管を納管した管路を設置する工程と、前記箱体に接続され温風循環通路を設置する工程と、前記温風発生装置と前記温風循環通路により形成される密閉空間を設置する工程、温度センサーと床暖房コントローラを設置する工程、前記箱体に蓋を取付ける工程と、前記床の上部に取付ける床材を敷設する工程と、前記温風発生装置のメンテナンスのため、前記温風発生装置を格納した前記箱体に対応する大きさの点検口を、前記箱体の上部に取付ける工程と、熱源供給設備を据え付ける工程とを有する、温風床暖房システムの設置方法。」

そして、両者は次の点で相違する。

(相違点2-10-1)
温風床暖房システムの設置に際して、本件特許発明10は、床下砕石の上部に、基礎床コンクリートに蓄熱された熱の還流損失を防止するための断熱材を敷設する工程と、前記断熱材の上に前記基礎床コンクリートの耐過重性向上のため組込む下部鉄筋を配筋する工程を有しているのに対して、甲22-2発明は、そのような工程の特定はなされていない点。

(相違点2-10-2)
箱体の設置について、本件特許発明10は、下部鉄筋の上部に箱体を設置しているのに対して、甲22-2発明は、ケーシング(箱体)の設置状態については特定されていない点。

(相違点2-10-3)
本件特許発明10は、温風循環通路の下端部から箱体の上端部まで基礎床コンクリートを打設する工程を有しているのに対して、甲22-2発明は、そのような工程の特定はなされていない点。

(相違点2-10-4)
温風循環通路について、本件特許発明10は、基礎床コンクリートを暖めることを特定しているが、甲22-2発明は、そのような特定はなされていない点。

(相違点2-10-5)
温風発生装置と前記温風循環通路により形成される密閉空間に、本件特許発明10は、湿気を外部に放出する湿気放出管を設置する工程を有しているのに対して、甲22-2発明は、そのような工程の特定はなされていない点。

(相違点2-10-6)
温度センサーと床暖房コントローラについて、本件特許発明10は、基礎床コンクリート内の温度を検知する温度センサーを導入した管路および前記温度センサーで得た検知情報を、温風発生装置を蓄熱時間帯と放熱時間帯に対応して制御する機能を有する床暖房コントローラに伝達する電線を導入した管路を設置する工程を有しているに対して、甲22-2発明は、そのような工程の特定はなされていない点。

(相違点2-10-7)
本件特許発明10は、温風発生機内の端子台に接続された電源が前記端子台の異なる部位から分岐され、床暖房コントローラに送られる電源線を導入した管路を設置する工程を有しているのに対して、甲22-2発明は、そのような工程の特定はなされていない点。

(相違点2-10-8)
本件特許発明10は、基礎床コンクリートの耐過重性向上のため組込む上部鉄筋を順次配筋する工程を有しているのに対して、甲22-2発明は、そのような工程の特定はなされていない点。

(相違点2-10-9)
箱体に蓋を取り付けるに際して、本件特許発明10は、箱体の高さを超える厚さの基礎床コンクリートに蓄熱する場合においては、前記箱体にコンクリートが入らぬよう前記箱体の上端部を超える高さの仮蓋を取付ける工程を有しているのに対して、甲22-2発明は、そのような工程の特定はなされていない点。

(相違点2-10-10)
床材について、本件特許発明10は、基礎床コンクリートの上部に敷設しているのに対して、甲22-2発明は、そのような特定はなされていない点。

そこで、上記相違点について以下検討する。

(相違点2-10-1の判断)
床下の土間のコンクリート処理について、床下に砕石を施し、その上部に、コンクリートを施して処理することは家屋の基礎処理において普通に採用される工程である。
また、熱の土中への貫流を防止するために断熱材を配置することも家屋の土間のコンクリート処理に普通に採用される工程である(例えば、甲第27号証図12参照)。
さらに、コンクリートの耐過重性向上のため鉄筋を配筋することは普通に行われている。また、鉄筋を配筋する位置は、求められる強度等を考慮して、当業者が適宜なし得る事項である。
そして、甲22-2発明も、個人住宅、集合住宅等の家屋床下に関するものであって、その土間のコンクリート処理について、上記周知の事項を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
したがって、甲22-2発明においても、相違点2-10-1に係る事項を特定することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点2-10-2の判断)
相違点2-10-1で判断したとおり、床下の土間のコンクリートの下部に鉄筋を配筋することは当業者が普通に採用することである。
そうすると、甲22-2発明において、下部に鉄筋を施した後、その鉄筋の上部に箱体を設置することも当業者が容易になし得たことである。
したがって、甲22-2発明においても、相違点2-10-2に係る事項を特定することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点2-10-3の判断)
相違点2-1-1において検討したとおり、温風式床暖房装置において、床下のコンクリート層に温風循環通路を床下のコンクリート層に偏りなく埋設することは、本件特許出願前に周知の事項である。
そうすると、甲22-2発明において、上記周知の事項を採用するに際して、温風循環通路の下端部から箱体の上端部まで基礎床コンクリートを打設する工程を設けることは、当業者が容易になし得た事項である。
したがって、甲22-2発明においても、相違点2-10-3に係る事項を特定することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点2-10-4の判断)
温風循環通路について、相違点2-10-3で検討したとおり、基礎床コンクリートに埋設された温風循環通路は、基礎床コンクリートを当然に暖めるものと認められる。
したがって、甲22-2発明においても、相違点2-10-4に係る事項を特定することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点2-10-5の判断)
相違点1-9の判断で検討したとおり、甲22-2発明においても、ヒーティングユニット内について結露対策のために、甲第28号証に記載されたバルブを有する大気開放管を採用することは当業者が容易になし得たことである。
したがって、甲22-2発明においても、相違点2-10-5に係る事項を特定することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点2-10-6の判断)
相違点1-10-3の判断で検討したのと同様に、甲22-2発明においても、相違点2-10-6に係る事項を採用することは当業者が容易になし得たことである。

(相違点2-10-7の判断)
相違点1-10-4の判断で検討したのと同様に、甲22-2においても、相違点2-10-7に係る事項を採用することは当業者が容易になし得たことである。

(相違点2-10-8の判断)
コンクリートの耐荷重性向上のために鉄筋を配筋することは、本件特許出願前に周知の事項である。
そして、その位置をコンクリートの上部や下部のいったどこに設けるかは、適宜なし得ることであり、甲22-2発明において、上部に鉄筋を配することも当業者が適宜なし得た事項である。
したがって、甲22-2発明においても、相違点2-10-8に係る事項を特定することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点2-10-9の判断)
相違点1-10-5の判断で検討したのと同様に、甲22-2発明において、相違点2-10-9に係る事項を採用することは当業者が容易になし得たことである。

(相違点2-10-10の判断)
相違点2-10-1の判断で検討したのと同様に、基礎床コンクリートを設けた場合には、床材は、当然に、基礎床コンクリートの上部に敷設することとなる。
したがって、相違点2-10-10に係る事項を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本件特許発明10の効果についてみても、甲22-2発明、甲第28号証に記載の事項及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものではない。

5-43 以上のとおり本件特許発明10は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明、甲第28号証に記載の事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

5-44 本件特許発明11と甲22-2発明との対比・判断
本件特許発明11と甲22-2発明とを対比すると、各文言の意味、機能、または作用等からみて、後者の「ケーシング」、「ヒーティングユニット」、「温風管」、「蓋体」及び「温度制御部」は、それぞれ、前者の「箱体」、「温風発生装置」、「温風循環通路」、「蓋」及び「床暖房コントローラ」に相当する。
後者の「床材の下に配設されたケーシングに接続される温風管を設置する工程」と、前者の「箱体に接続され、前記基礎床コンクリートを暖める温風循環通路を設置する工程」とは、「箱体に接続され」る「温風循環通路を設置する工程」で共通する。
後者の「温風管に温風を供給するヒーティングユニットを温風管と接続されたケーシング内に着脱可能に配設する工程」と、前者の「断熱材の上部に、居室全体を均一に暖めるため特定された、温風発生装置を格納した箱体を設置する工程」とは、「居室全体を均一に暖めるため特定された、温風発生装置を格納した箱体を設置する工程」で共通する。
後者の「該ヒーティングユニットを制御する温度制御部を設置する工程と、床温度を検出する温度センサーを設置する工程を備え」ることと、前者の「床下コンクリート内の温度を検知する温度センサーを導入した管路および前記温度センサーで得た検知情報を、前記温風発生装置を蓄熱時間帯と放熱時間帯に対応して制御する機能を有する床暖房コントローラに伝達する電線を導入した管路を設置する工程」を備えることは、「温度センサー」と「床暖房コントローラ」「を設置する工程」で共通する。
後者の「前記ケーシングに、蓋体を設ける工程」と、前者の「前記箱体の高さを超える厚さの前記基礎床コンクリートに蓄熱する場合においては、前記箱体にコンクリートが入らぬよう前記箱体の上端部を超える高さの仮蓋を取付ける工程」とは、「箱体に」「蓋を取付ける工程」で共通する。
後者の「蓋体の表面が床材と同様のものとされ」ていることから、床材を有していることは明らかであり、前者の「前記床下コンクリートの上部に取付ける床材を敷設する工程」とは、「床下」「の上部に取付ける床材を敷設する工程」という点で共通する。
また、後者の「蓋体の表面」が、「表面床材と同様のものとされ」ていることは、「蓋体」が「床材」の一部をなすものといえ、「ヒーティングユニット」から「蓋体」を外した後には床面に開口が生じ、その開口は点検口となるので、後者は、前者の「温風発生装置のメンテナンスのため、前記温風発生装置を格納した前記箱体に対応する大きさの点検口を、前記箱体の上部の床面に取付ける工程」を有していることは明らかである。
後者の「戻り口は空気溜チャンバーと連通しており、空気溜チャンバーから前記ヒーティングユニットの下を通って送風ファン導かれ、ヒータによって加熱された空気は、吐出口から温風管に送風され、床材を暖めた後に戻り口から空気溜チャンバー内へ戻ってくるように循環させる工程」と、前者の「前記温風発生装置と前記温風循環通路により形成される密閉空間の湿気を外部に放出する湿気放出管を設置する工程」とは、「温風発生装置と前記温風循環通路により形成される密閉空間」「を設置する工程」という点で共通する。
「電気式ヒーティングユニット」、「温水式ヒーティングユニット」には、電気を供給する配線や温水を供給する管を当然に必要とするので、後者の「ヒーティングユニットは、熱源と送風ファンを備えると共に電気式ヒーティングユニットと温水式ヒーティングユニットが交換可能に設置する工程」を有することは、前者の「前記居室の室外から前記箱体に接続される加熱電源線を通線した管路または加熱源温水を供給する導管を納管した管路を設置する工程」を有するといえる。
甲22-2発明においても、「電気式ヒーティングユニットと温水式ヒーティングユニットが交換可能」であり、それらのユニットに熱源を供給する設備が必要となるので、前者の「熱源供給設備を据え付ける工程」を備えることは明らかである。

そこで、本件特許発明11の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。

(一致点)
「居室全体を均一に暖めるため特定された、温風発生装置を格納した箱体を設置する工程と、前記居室の室外から前記箱体に接続される加熱電源線を通線した管路または加熱源温水を供給する導管を納管した管路を設置する工程と、前記箱体に接続され温風循環通路を設置する工程と、前記温風発生装置と前記温風循環通路により形成される密閉空間を設置する工程、温度センサーと床暖房コントローラを設置する工程、前記箱体に蓋を取付ける工程と、前記床下の上部に取付ける床材を敷設する工程と、前記温風発生装置のメンテナンスのため、前記温風発生装置を格納した前記箱体に対応する大きさの点検口を、前記箱体の上部に取付ける工程と、熱源供給設備を据え付ける工程とを有する、温風床暖房システムの設置方法。」

そして、両者は次の点で相違する。

(相違点2-11-1)
床下の土間のコンクリート処理について、本件特許発明11は、砕石の上部に打設された基礎床コンクリート層と床下コンクリートとし、基礎床コンクリート層の上部および周囲に断熱材を敷設する工程を有しているのに対して、甲22-2発明は、そのような工程の特定はなされていない点。

(相違点2-11-2)
箱体の設置について、本件特許発明11は、断熱材の上部に、箱体を設置しているのに対して、甲22-2発明は、ケーシング(箱体)の設置状態については特定されていない点。

(相違点2-11-3)
本件特許発明11は、温風発生装置と温風循環通路により形成される密閉空間の湿気を外部に放出する湿気放出管を設置する工程を有しているのに対して、甲22-2発明は、そのような工程の特定はなされていない点。

(相違点2-11-4)
本件特許発明11は、床下コンクリート内の温度を検知する温度センサーを導入した管路および前記温度センサーで得た検知情報を、床暖房コントローラに伝達する電線を導入した管路を設置する工程を有しているに対して、甲22-2発明は、温度コントローラ(床暖房コントローラ)を有しているものの、そのような工程の特定はなされていない点。

(相違点2-11-5)
本件特許発明11は、温風発生機内の端子台に接続された電源が前記端子台の異なる部位から分岐され、床暖房コントローラに送られる電源線を導入した管路を設置する工程を有しているのに対して、甲22-2発明は、温度コントローラ(床暖房コントローラ)を有しているものの、そのような工程の特定はなされていない点。

(相違点2-11-6)
床下コンクリートの補強について、本件特許発明11は、床下コンクリートの上端部直下に前記床下コンクリートを補強するためのメッシュを敷設しているのに対して、甲22-2発明は、そのような特定はなされていない点。

(相違点2-11-7)
箱体にコンクリートが入らぬよう前記箱体の上端部に蓋を取付けるに際して、本件特許発明11は、箱体の上端部を超える高さの仮蓋としているのに対して、甲22-2発明は、ケーシングに蓋体を設けるものの、蓋体がケーシングの上端部を超えているか不明であり、また、蓋体が仮蓋ではない点。

そこで、上記相違点について以下検討する。

(相違点2-11-1の判断)
相違点2-10-1の判断で示したこと加えて、さらに、床下のコンクリートについて、コンクリート土間基礎の上に、発泡プラスチックで形成された断熱層を設け、更にこの上に蓄熱体となる床下コンクリートを設ける構造は、甲第27号証に記載されている(記載事項27c)。
そして、甲22-2発明も、個人住宅、集合住宅等の家屋床下に関するものであって、その基礎処理に関する上記周知の事項を採用すること及び甲第27号証の上記構造を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
さらに、甲22-2発明においてもコンクリートの周囲から熱が逃げないようにすることも当業者なら当然考慮することであり、そのために、コンクリートの周囲にも断熱材を配置することは当業者が容易になし得たことである。
したがって、甲22-2発明において、相違点2-11-1に係る構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。

(相違点2-11-2の判断)
相違点2-11-1の判断で示したのと同様に、相違点2-11-1に係る構成を採用したものにおいて、箱体の設置は断熱材の上部になるものと認められる。
したがって、甲22-2発明において、相違点2-11-2に係る構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。

(相違点2-11-3の判断)
相違点2-10-5の判断で示したのと同様に、甲22-2発明においても、相違点2-11-3に係る構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。

(相違点2-11-4の判断)
相違点2-10-6の判断で示したのと同様に、甲22-2発明においても、相違点2-11-4に係る構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。

(相違点2-11-5の判断)
相違点2-10-7の判断で示したのと同様に、甲22-2発明においても、相違点2-11-5に係る構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。

(相違点2-11-6の判断)
相違点1-11-5の判断で示したのと同様に、甲22-2発明においても、相違点2-11-6に係る構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。

(相違点2-11-7の判断)
相違点1-11-6の判断で示したのと同様に、甲22-2発明においても、相違点2-11-7に係る構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。

そして、これらの相違点に係る効果をあわせてみても、甲22-2発明、甲第27号証に記載の事項、甲第28号証に記載の事項及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものではない。

5-45 以上のとおり本件特許発明11は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明、甲第27号証に記載の事項、甲第28号証に記載の事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

<小括3>
したがって、本件特許発明1?11は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

6 まとめ
上記小括2及び3で述べたとおり、本件特許発明1?11は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、他の無効理由を検討するまでもなく、本件特許発明1?11は、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-04-10 
結審通知日 2014-04-14 
審決日 2014-04-25 
出願番号 特願2008-279743(P2008-279743)
審決分類 P 1 113・ 121- Z (F24D)
P 1 113・ 112- Z (F24D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 黒石 孝志  
特許庁審判長 竹之内 秀明
特許庁審判官 鳥居 稔
山崎 勝司
登録日 2013-01-18 
登録番号 特許第5176209号(P5176209)
発明の名称 温風床暖房システムおよびその設置方法  
代理人 舟瀬 芳孝  
代理人 八木 秀人  

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