• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B32B
管理番号 1288910
審判番号 無効2011-800038  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-03-04 
確定日 2014-05-19 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4348401号「蓋材」の特許無効審判事件についてされた平成25年 5月14日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの決定(平成25年(行ケ)第10169号、平成25年10月 4日)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 被請求人の請求のとおり訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
1 特許第4348401号(以下「本件特許」という。)は、平成21年2月13日に特許出願され、同年7月24日に設定登録がなされたものである。
これに対し、請求人昭和電工パッケージング株式会社から本件の無効審判が請求され、平成23年10月19日付けで審決(以下「一次審決」という。)がなされた。
本件無効審判請求から一次審決までの主な手続の経緯は、以下のとおりである。

平成23年 3月 4日付け 審判請求書の提出
平成23年 5月23日付け 審判事件答弁書の提出
平成23年 6月24日付け 通知書の送付(審判長より)
平成23年 8月22日付け 口頭審理陳述要領書の提出(請求人より)
平成23年 9月 1日付け 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人より)
平成23年 9月 8日 第1回口頭審理の実施
平成23年 9月16日付け 上申書の提出(請求人より)
平成23年 9月26日付け 上申書の提出(被請求人より)
平成23年10月19日付け 一次審決

2 これに対し、平成23年11月21日に被請求人から、平成23年11月25日に請求人から、上記一次審決の取り消しを求め、知的財産高等裁判所に訴えが提起され、平成24年2月6日付けで被請求人から訂正審判(訂正2012-390016号、その後、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項及び第19項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成23年改正前特許法」という。)第134条の3第4項の規定によりみなし取下げ)が請求され、知的財産高等裁判所において、平成23年改正前特許法第181条第2項の規定により、「特許庁が無効2011-800038事件について平成23年10月19日にした審決を取り消す。」との決定(平成23年(行ケ)第10392号、平成23年(行ケ)10384号、平成24年2月29日決定)がされ確定した。
そして、本件無効審判について、さらに審理が行われ、平成25年5月14日付けで審決(以下「二次審決」という。)がなされた。
上記の平成24年2月6日付け訂正審判の請求から二次審決までの主な手続の経緯は、以下のとおりである。

平成24年 2月 6日付け 訂正審判の請求書の提出(被請求人より)
平成24年 5月 8日付け(5月11日発送) 訂正請求のための期間指定通知
平成24年 7月19日付け 弁駁書の提出(請求人より)
平成24年 8月29日付け 審判事件答弁書の提出(被請求人より)
平成24年 9月28日付け 審理事項通知書の送付(審判長より)
平成24年11月 8日付け 口頭審理陳述要領書の提出(請求人より)
平成24年11月22日付け 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人より)
平成24年12月 6日 第2回口頭審理の実施、無効理由通知
平成25年 1月15日付け 意見書の提出(被請求人より)
平成25年 2月28日付け 弁駁書の提出(請求人より)
平成25年 4月 1日 上申書の提出(被請求人より)
平成25年 5月14日付け 二次審決

なお、被請求人は、平成24年5月8日付け訂正請求のための期間指定通知で指定された期間内に訂正請求をしなかったので、平成23年改正前特許法第134条の3第5項の規定により、前記期間の末日である平成24年5月21日に、平成24年2月6日付け訂正審判の請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲を援用した訂正請求(以下「第1訂正請求」という。)がされたものとみなされた。
また、第1訂正請求において、特許請求の範囲の請求項7を削除する訂正が含まれているところ、二次審決における当該訂正を認めた部分は二次審決の謄本送達日(平成25年5月24日)に確定した。

3 これに対し、平成25年6月16日に被請求人から、上記二次審決の取り消しを求め、知的財産高等裁判所に訴えが提起され、平成25年9月11日付けで被請求人から訂正審判(訂正2013-390141号、その後、平成23年改正前特許法第134条の3第4項の規定によりみなし取下げ)が請求され、知的財産高等裁判所において、平成23年改正前特許法第181条第2項の規定により、「特許庁が無効2011-800038事件について平成25年5月14日にした審決を取り消す。」との決定(平成25年(行ケ)第10169号、平成25年10月4日決定)がされ確定した。
そして、本件無効審判について、さらに審理が行われた。
上記の平成25年9月11日付けの訂正審判の請求後の手続の経緯は、以下のとおりである。

平成25年 9月11日付け 訂正審判の請求書の提出(被請求人より)
平成25年10月17日付け(10月22日発送) 訂正請求のための期間指定通知
平成25年12月13日 上申書の提出(請求人より)

なお、被請求人は、平成25年10月17日付け訂正請求のための期間指定通知で指定された期間内に訂正請求をしなかったので、平成23年改正前特許法第134条の3第5項の規定により、前記期間の末日である平成25年11月1日に、平成25年9月11日付け訂正審判の請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲を援用した訂正請求(以下「第2訂正請求」という。)がされたものとみなされた。そして、第1訂正請求(ただし、請求項7を削除する訂正の請求を除く。)は、平成23年改正前特許法第134条の2第4項の規定により、取り下げられたものとみなされた。

第2 当事者の請求及び主張
1 請求人の請求及び主張
(1)請求人は、審判請求書において、「特許第4348401号の特許請求の範囲の請求項1ないし7に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めた。

(2)請求人は、平成24年7月19日付け弁駁書において、被請求人の第1訂正請求による訂正後の請求項1ないし6に係る発明(以下「本件第1訂正発明1」ないし「本件第1訂正発明6」という。)について、「本件第1訂正発明1ないし本件第1訂正発明6の特許は無効とされるべきである。」旨主張している。
そして、請求人は、審理の全趣旨からして、以下の無効理由を主張しているものと認める。

[無効理由]
「本件第1訂正発明1ないし本件第1訂正発明6は、甲第2、13?15、18、19号証に記載された周知の蓋材に、甲第1号証に記載された発明を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件第1訂正発明1ないし本件第1訂正発明6の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。」

(3)請求人は、被請求人がした第2訂正請求について、訂正が不適法であるとの主張をしていない。また、請求人は、被請求人が第2訂正請求によって本件特許の請求項1に追加した新たな追加限定事項に関し、その容易想到性について特に争わないとし(平成25年12月13日付け上申書)、第2訂正請求による訂正後の請求項1ないし6に係る発明について、新たな無効理由を主張をしていない。

(4)請求人は、以下の甲第1号証?甲第23号証の2を証拠方法として提出している。また、以下の参考資料1及び2を提出している。

甲第1号証;特表2004-525754号公報
甲第2号証;特開2002-37310号公報
甲第3号証;特開平9-207988号公報
甲第4号証;特開2004-25570号公報
甲第5号証;旭化成の「製品ガイド 高分散シリカ WACKER HDK^(?)(審決注;上付けの「?」は、丸囲いされたR、すなわち、登録商標を示す記号である。以下、同様。)」と題された書類、表紙、4?7頁、裏表紙
甲第6号証;日本アエロジル株式会社発行の「AEROSIL^(?) Invented to improve」と題された書類の改訂版(29);表紙、「はじめに」で始まる頁、「AEROSIL^(?)の主要機能及び効果」で始まる頁、「テクニカルデータ」の頁、奥付頁
甲第7号証;日本アエロジル株式会社発行の「Technical Bulletin Fine Particles Number 11」及び「フュームドシリカ AEROSIL^(?)の基本特性」と題された書類の改訂版(3)、表紙、3?63頁、裏表紙
甲第8号証;日本アエロジル株式会社発行の「TECHNICAL BULLETIN AEROSIL^(?) 疎水性AEROSILの基本特性と塗料への応用 No.13」と題された書類の改訂、表紙、1?39頁、「テクニカルデータ」の頁、裏表紙
甲第9号証;日本アエロジル株式会社発行の「製品案内 AEROSIL^(?)」と題された書類、表紙、「AEROSIL^(?)とは」で始まる頁、「AEROSIL^(?)の基本的特徴及び性質」の頁、「AEROSIL^(?)の主要機能及び効果」の頁、「AEROSIL^(?)の実用例」の頁、「表面処理の種類と特徴」の頁、「主な表面処理剤」の頁、「テクニカルデータ」の2葉、奥付頁
甲第10号証;日本アエロジル(株)、営業部 諸星敦士の2009/12/2付けAEROSIL^(?)プレゼンテーション資料の写し、1?9頁
甲第11号証の1;昭和電工パッケージング株式会社 研究開発センター 開発部 唐津誠の2011年8月11日付け「特表2004-525754号公報(甲第1号証)の発明の蓋材への適用実験報告書[シリカ被覆サンプルの断面観察-1(サンプル1およびサンプル2(審決注;サンプル番号は、丸数字である。以下、同様。))]」
甲第11号証の2;株式会社 東レリサーチセンター 関西営業部の2011年8月9日付け「結果報告書」(報告No.S505767-01)
甲第12号証の1;昭和電工パッケージング株式会社 研究開発センター 開発部 唐津誠の2011年8月11日付け「特表2004-525754号公報(甲第1号証)の実施例追試実験報告書[シリカ被覆サンプルの断面観察-2(サンプル3)]」
甲第12号証の2;株式会社 東レリサーチセンター 関西営業部の2011年8月9日付け「結果報告書」(報告No.S505767-02)
甲第13号証;特開2007-153385号公報
甲第14号証;特開2008-100736号公報
甲第15号証;特開2008-155939号公報
甲第16号証;特表2005-517052号公報
甲第17号証の1;特許第4348401号公報(本件特許公報)
甲第17号証の2;特願2009-30750号の願書、明細書、特許請求の範囲、要約書及び図面(本件特許に係る特許出願書類)
甲第18号証;特開2008-155940号公報
甲第19号証;特開2008-155984号公報
甲第20号証;特開2002-37317号公報
甲第21号証;特開2009-73523号公報
甲第22号証;特開2009-241943号公報
甲第23号証の1;昭和電工パッケージング株式会社 研究開発センター 羽野隆之の2013年2月26日付け「ヒートシール蓋材に関する実験報告書」
甲第23号証の2;株式会社 東レリサーチセンター 関西営業部の2013年2月25日付け「結果報告書」(報告No.S507464-01)
参考資料1;甲第9号証の、一部抜粋
参考資料2;甲第10号証の、一部抜粋

2 被請求人の請求及び主張
(1)被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めるとともに、本件特許の明細書及び特許請求の範囲の訂正を請求し、第2訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明について、請求人が主張する無効理由は理由がないと主張している。

(2)被請求人は、以下の乙第1号証?乙第19号証を証拠方法として提出している。また、以下の参考資料1及び2を提出している。さらに、平成25年9月11日付けの訂正審判の請求書とともに、以下の甲第1号証(以下「第2訂正請求の甲第1号証」という。)を提出している。

乙第1号証;東洋アルミニウム株式会社 加工開発センター 関口朋伸の平成23年8月31日付け「実験成績証明書(1)」
乙第2号証;株式会社日立ハイテクマニファクチャ&サービス 受託解析センタの2011年8月22日付け「測定結果報告書」(表題;アクロナールAタイプ断面分析)
乙第3号証;株式会社日立ハイテクマニファクチャ&サービス 受託解析センタの2011年8月22日付け「測定結果報告書」(表題;HM&アクロナールBタイプ断面分析)
乙第4号証;東洋アルミニウム株式会社 加工開発センター 関口朋伸の平成23年8月31日付け「実験成績証明書(2)」
乙第5号証;特表2003-527147号公報
乙第6号証;特開2000-355368号公報
乙第7号証;特開平10-305858号公報
乙第8号証;特開2000-219789号公報
乙第9号証;「撥水技術」(株式会社東レリサーチセンター調査研究部)2011年7月発行、表紙、28?30頁、奥付頁
乙第10号証;「標準化学用語辞典」(丸善株式会社)平成3年3月30日発行、表紙、545頁、奥付頁
乙第11号証;特開2011-184082号公報
乙第12号証;特願2010-154446号に対する平成22年9月29日付け拒絶理由通知書
乙第13号証;特願2010-154446号の平成22年11月29日付け意見書
乙第14号証;特許第4668352号公報
乙第15号証;平成23年10月19日付け無効2011-800038審決書(審決注;平成24年2月6日付け審判請求書とともに被請求人が提出した甲第1号証を乙第15号証と読み替えた(第2回口頭審理調書「陳述の要領」被請求人2参照)。)
乙第16号証;特開昭61-33956号公報
乙第17号証;特開平2-233377号公報
乙第18号証;特開平7-52906号公報
乙第19号証;東洋アルミニウム株式会社 箔事業本部 加工品事業部 関口朋伸の平成25年1月10日付け「実験成績証明書」
参考資料1;2011年2月1日、株式会社日報アイ・ビー発行の「食品包装、第55巻2号」、表紙、72頁、奥付頁
参考資料2;WPO WORLD PACKAGING ORGANISATIONの「WORLDSTAR 2010 AWARD FOR PACKAGING EXCELLENCE」
第2訂正請求の甲第1号証:東洋アルミニウム株式会社 加工開発センター 関口朋伸の平成25年9月3日付け「実験成績証明書」

第3 訂正請求について
1 訂正事項
第1訂正請求について、請求項7を削除する訂正は確定しており、その他の訂正の請求は取り下げられたものとみなされた(上記「第1 手続の経緯」2及び3)。そこで、以下、第2訂正請求について検討する。
第2訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を、第2訂正請求において援用された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおりに訂正するものであり、その訂正事項は次の(1)及び(2)のとおりである。

(1)訂正事項a
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に
「少なくとも基材層及び熱接着層を有する積層体からなる蓋材であって、前記熱接着層が蓋材の一方の面の最外層として積層されており、前記熱接着層が他の層と隣接していない最外面に一次粒子平均径3?100nmの疎水性酸化物微粒子が付着し、疎水性酸化物微粒子が三次元網目状構造からなる多孔質層を形成している蓋材。」
とあるのを
「少なくとも基材層及び熱接着層を有する積層体からなる蓋材であって、前記熱接着層が蓋材の一方の面の最外層として積層されており、前記熱接着層が他の層と隣接していない最外面に一次粒子平均径3?100nmの疎水性酸化物微粒子が付着し、疎水性酸化物微粒子が三次元網目状構造からなる多孔質層を形成しており、容器に内容物が充填され、その開口部と蓋材の熱接着層とが接するような状態で密封される蓋材であって、前記多孔質層が疎水性酸化物微粒子を溶媒に分散させてなる分散体を用いて熱接着層上に塗膜を形成した後に乾燥する方法により形成されており、
熱接着時において、熱接着される領域上に存在する疎水性酸化物微粒子は当該熱接着層中に埋め込まれる蓋材。」
と訂正する。

(2)訂正事項b
訂正前の明細書の段落【0009】に
「1. 少なくとも基材層及び熱接着層を有する積層体からなる蓋材であって、前記熱接着層が蓋材の一方の面の最外層として積層されており、前記熱接着層が他の層と隣接していない最外面に一次粒子平均径3?100nmの疎水性酸化物微粒子が付着し、疎水性酸化物微粒子が三次元網目状構造からなる多孔質層を形成している蓋材。
2. 疎水性酸化物微粒子の付着量が0.01?10g/m^(2)である、前記項1に記載の蓋材。
3. 疎水性酸化物微粒子のBET法による比表面積が50?300m^(2)/gである、前記項1又は2に記載の蓋材。
4. 疎水性酸化物微粒子が疎水性シリカである、前記項1?3のいずれかに記載の蓋材。
5. 疎水性シリカがその表面にトリメチルシリル基を有する、前記項4に記載の蓋材。
6. 熱接着層側の最外面に内容物が接触可能な状態で当該内容物が蓋材と容器によって包装されてなる製品のために用いられる、前記項1?5のいずれかに記載の蓋材。
7. 熱接着時において、熱接着される領域上に存在する疎水性酸化物微粒子は当該熱接着層中に埋め込まれる、前記項1?6のいずれかに記載の蓋材。」
とあるのを
「1. 少なくとも基材層及び熱接着層を有する積層体からなる蓋材であって、前記熱接着層が蓋材の一方の面の最外層として積層されており、前記熱接着層が他の層と隣接していない最外面に一次粒子平均径3?100nmの疎水性酸化物微粒子が付着し、疎水性酸化物微粒子が三次元網目状構造からなる多孔質層を形成しており、容器に内容物が充填され、その開口部と蓋材の熱接着層とが接するような状態で密封される蓋材であって、前記多孔質層が疎水性酸化物微粒子を溶媒に分散させてなる分散体を用いて熱接着層上に塗膜を形成した後に乾燥する方法により形成されており、
熱接着時において、熱接着される領域上に存在する疎水性酸化物微粒子は当該熱接着層中に埋め込まれる蓋材。
2. 疎水性酸化物微粒子の付着量が0.01?10g/m^(2)である、前記項1に記載の蓋材。
3. 疎水性酸化物微粒子のBET法による比表面積が50?300m^(2)/gである、前記項1又は2に記載の蓋材。
4. 疎水性酸化物微粒子が疎水性シリカである、前記項1?3のいずれかに記載の蓋材。
5. 疎水性シリカがその表面にトリメチルシリル基を有する、前記項4に記載の蓋材。
6. 熱接着層側の最外面に内容物が接触可能な状態で当該内容物が蓋材と容器によって包装されてなる製品のために用いられる、前記項1?5のいずれかに記載の蓋材。」
と訂正する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項aについて
訂正事項aは、請求項1において、
「容器に内容物が充填され、その開口部と蓋材の熱接着層とが接するような状態で密封される蓋材であって、前記多孔質層が疎水性酸化物微粒子を溶媒に分散させてなる分散体を用いて熱接着層上に塗膜を形成した後に乾燥する方法により形成されており、
熱接着時において、熱接着される領域上に存在する疎水性酸化物微粒子は当該熱接着層中に埋め込まれる」
という事項を付加して、訂正前の請求項1に係る発明をさらに限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。
また、訂正事項aは、訂正前の明細書の段落【0017】の「容器4に内容物5が充填され、その開口部と包装材料の熱接着層2とが接するような状態で密封される。」という記載、段落【0012】の「このような包装材料は、蓋材として使用できるほか、ピロー袋、ガセット袋、自立袋、三方シール袋、四方シール袋等の袋体、成形容器、包装シート、チューブ等の様々な用途に効果的に利用することができる。」という記載、段落【0009】の「7. 熱接着時において、熱接着される領域上に存在する疎水性酸化物微粒子は当該熱接着層中に埋め込まれる、前記項1?6のいずれかに記載の蓋材。」という記載、段落【0033】の「付着工程を実施する方法は特に限定されない。例えば、ロールコーティング、グラビアコーティング、バーコート、ドクターブレードコーティング、刷毛塗り、粉体静電法等の公知の方法を採用することができる。ロールコーティング等を採用する場合は、疎水性酸化物微粒子を溶媒に分散させてなる分散体を用いて熱接着層上に塗膜を形成した後に乾燥する方法により付着工程を実施することができる。」という記載及び段落【0041】の「疎水性酸化物微粒子(製品名「AEROSIL R812S」エボニック デグサ社製、BET比表面積:220m^(2)/g、一次粒子平均径:7nm)5gをエタノール100mLに分散させてコート液を調製した。このコート液を前記(1)で作製された積層体の熱接着層の面に乾燥後重量で0.3?1.0g/m^(2)となるようにグラビアコート方式又はバーコート方式で付与した後、100℃で10秒程度をかけて乾燥させてエタノールを蒸発させることにより、サンプル(包装材料)を得た。」という記載に基づく訂正であると認められる。
そして、訂正事項aは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(2)訂正事項bについて
訂正事項bは、訂正事項aとの整合をとるために明細書の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであると認められる。
そして、訂正事項bは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(3)まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、本件訂正は、平成23年改正前特許法第134条の2第1項ただし書き、及び同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、適法な訂正と認める。

第4 本件訂正発明
上記第3のとおり本件訂正は認容されるから、審決が判断の対象とすべき本件特許に係る発明は、本件訂正による訂正後のものである。そして、本件特許に係る発明は、本件訂正による訂正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次のとおりものと認める。(以下、訂正後の請求項1ないし6に係る発明を、「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明6」という。)

「【請求項1】少なくとも基材層及び熱接着層を有する積層体からなる蓋材であって、前記熱接着層が蓋材の一方の面の最外層として積層されており、前記熱接着層が他の層と隣接していない最外面に一次粒子平均径3?100nmの疎水性酸化物微粒子が付着し、疎水性酸化物微粒子が三次元網目状構造からなる多孔質層を形成しており、容器に内容物が充填され、その開口部と蓋材の熱接着層とが接するような状態で密封される蓋材であって、前記多孔質層が疎水性酸化物微粒子を溶媒に分散させてなる分散体を用いて熱接着層上に塗膜を形成した後に乾燥する方法により形成されており、
熱接着時において、熱接着される領域上に存在する疎水性酸化物微粒子は当該熱接着層中に埋め込まれる蓋材。
【請求項2】疎水性酸化物微粒子の付着量が0.01?10g/m^(2)である、請求項1に記載の蓋材。
【請求項3】疎水性酸化物微粒子のBET法による比表面積が50?300m^(2)/gである、請求項1又は2に記載の蓋材。
【請求項4】疎水性酸化物微粒子が疎水性シリカである、請求項1?3のいずれかに記載の蓋材。
【請求項5】疎水性シリカがその表面にトリメチルシリル基を有する、請求項4に記載の蓋材。
【請求項6】熱接着層側の最外面に内容物が接触可能な状態で当該内容物が蓋材と容器によって包装されてなる製品のために用いられる、請求項1?5のいずれかに記載の蓋材。」

第5 無効理由の判断
上記「第2 当事者の請求及び主張」1(3)のとおり、請求人は、被請求人が第2訂正請求によって本件特許の請求項1に追加した新たな追加限定事項に関し、その容易想到性について特に争わないとし、本件訂正発明1ないし本件訂正発明6について新たな無効理由を主張をしていないが、上記「第2 当事者の請求及び主張」1(2)のとおり、第1訂正請求による訂正後の本件第1訂正発明1ないし本件第1訂正発明6について無効理由を主張しており、本件訂正発明1ないし本件訂正発明6についても、前記無効理由と同様の無効理由、すなわち、以下の無効理由が主張されていることとなる。

[無効理由]
「本件訂正発明1ないし本件訂正発明6は、甲第2、13?15、18、19号証に記載された周知の蓋材に、甲第1号証に記載された発明を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正発明1ないし本件訂正発明6の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。」

以下、当該無効理由について検討する。

1 本件特許の出願時における周知技術
甲第2、13?15、18、19号証には、以下の記載2a?19aが認められる。

(1)甲第2号証
2a 「【0002】
【従来の技術】ヨーグルト、ゼリー、プリン、ムースなどは、例えば上方が開口した有底円筒状の容器に充填された後、この容器の開口部にシート状の蓋材が被せられ、この蓋材の周縁が、前記開口部の周縁に設けられたフランジにヒートシールされて製品とされる。蓋材は、例えば製品表側に配置される基材フィルム層の下に、接着層を介してアルミニウム箔などの金属箔層が積層され、その下に接着層を介してポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンなどからなるヒートシール層が積層され、これらが一体化されたものなどが用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ヨーグルト、ゼリー、プリン、ムースなどのような柔らかいゲル状の食品を充填すると、充填物と接触する蓋材のヒートシール層に食品が付着しやすいという問題があった。本発明は前記事情に鑑てなされたもので、ヨーグルト、ゼリー、プリン、ムースなどの充填物が付着しにくい充填物付着防止蓋材を提供することを課題とする。」

(2)甲第13号証
13a 「【0003】
ヨーグルト、プリン、ゼリー等の食品容器用の蓋材には、基材層の下面にヒートシール材層が積層された構成のものが使用されている。そして、ヒートシール材層としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂からなるフィルムが基材層に接合せられたもの或いはエチレン酢酸ビニル共重合体等を主成分とするホットメルトが基材層にコーティングせられたものがある。
【0004】
容器の内容物がヨーグルト等のような柔らかいゲル状の食品の場合、充填容器の輸送時の揺れや消費者が商品購入後傾けた際に、内容物が蓋のヒートシール材層表面に付着し、容器内に落ちずにそのまま残り、容器の開封時に内容物が飛び出して手や衣服を汚したり、蓋に付いた内容物を舐めて舌を切ったりする恐れがある。また、開封した際に見栄えが悪いという問題もある。
【0005】
そこで、ヨーグルト等の内容物が付着しない蓋材の出現が要望せられており、これにこたえるものとして、例えば、下記特許文献1には、ヒートシール材層が、付着防止効果を有する非イオン界面活性剤又は疎水性添加物の少なくとも1種を含むポリオレフィンからなるものが提案されている。
【0006】
この提案発明によるものは、例えば、グリセリン脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステルがポリオレフィンに対して0.5?10%添加され、加熱エージング処理によって該物質をヒートシール層表面に析出させようとするものであるが、ヒートシール層の厚さに制限(35?50μm)があるとともにエージング処理条件によって析出量が変動するため、安定性に欠けるものである。
【特許文献1】特開2002-37310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記提案発明の問題を解消し、ヨーグルト等の柔らかい内容物が蓋のヒートシール材層面に付着し難く、仮に一旦付着したとしても自然に流れ落ちやすい内容物付着防止用蓋材を提供するにある。」

(3)甲第14号証
14a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物がヨーグルト、ゼリー、プリンなどである食品など容器の蓋材において、容器の内容物を密封するヒートシール層からなる容器蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
内容物充填した容器を密封するためのシール性能と容易に容器蓋材を開封することのできる易剥離性能があり、かつ、内容物を容器に充填する工程や内容物を充填密封した容器の輸送時に、容器蓋材内面側表面に内容物が付着するため、消費者が蓋材を開ける時容器蓋材内面側表面に付着した内容物が飛散して手や服を汚す問題が発生することを防止する性能を併せ持った容器蓋材が求められている。
【0003】
特許文献1には、非イオン界面活性剤を含むポリエチレンをヒートシール層に用い、特定層構成のとき、内容物がニュートン流動に近い液状物対しては、ある程度の両性能の両立が可能であることが示されているが、それでも付着したヨーグルトを蓋材内面側表面から落とすために容器を数回以上打ち付ける必要があるのと、内容物がチキソトロピー挙動の大きなヨーグルトである場合には、さらに防止効果が出難くい。ヨーグルトは種類の違いで、流動性が異なることが多く、一般に充填前に発酵を行うヨーグルトは、充填後に発酵を行うヨーグルトよりもチキソトロピー挙動が大きい。付着問題に対しては、特に充填前に発酵を行ったチキソトロピーの大きいヨーグルト(以降「前発酵ヨーグルト」と省略)が問題になる。そして、ヨーグルトが容器蓋材内面側表面に付着する原因としては、冷蔵保存したヨーグルトを輸送あるいは、消費者がヨーグルトを購入後運んでいる際に、容器が横倒し又は逆さまになることで付着することが多く、よって横倒しや逆さまになることを防ぐことができれば付着を防止できる。しかし、消費者が購入した場合には、そのような横倒しや逆さまを防止するのが難しく、内容物が流動性の良くないヨーグルトに対する付着防止の点で、さらに改良が望まれていた。
【特許文献1】特開2002-37310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、内容物充填した容器を密封するためのシール性能と容易に容器蓋を開封することのできる易剥離性と、内容物に前発酵ヨーグルトを用いても容器に充填する工程や内容物を充填密封した容器の輸送時に、容器蓋材表面に内容物が付着することを防止する性能とを併せ持ったヒートシール層を含む容器蓋材を提供する。」

(4)甲第15号証
15a 「【0001】
本発明は、ヨーグルト、プリン、ゼリー等の食品容器に好適な内容物付着防止用蓋材の製造方法に関する。
【0002】
・・・。
【背景技術】
【0003】
ヨーグルト、プリン、ゼリー等の食品容器用の蓋材には、基材層の下面にヒートシール材層が積層された構成のものが使用されている。そして、ヒートシール材層としては、エチレン酢酸ビニル共重合体等を主成分とするホットメルトが基材層にコーティングせられたものがある。
【0004】
容器の内容物がヨーグルト等のような柔らかいゲル状の食品の場合、充填容器の輸送時の揺れや消費者が商品購入後傾けた際に、内容物が蓋のヒートシール材層表面に付着し、容器内に落ちずにそのまま残り、容器の開封時に内容物が飛び出して手や衣服を汚したり、蓋に付いた内容物を舐めて舌を切ったりする恐れがある。また、開封した際に見栄えが悪いという問題もある。
【0005】
そこで、ヨーグルト等の内容物が付着しない蓋材の出現が要望せられており、これにこたえるものとして、例えば、下記特許文献1には、ヒートシール材層が、付着防止効果を有する非イオン界面活性剤又は疎水性添加物の少なくとも1種を含むポリオレフィンからなるものが提案されている。
【0006】
この提案発明によるものは、例えば、グリセリン脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステルがポリオレフィンに対して0.5?10%添加され、加熱エージング処理によって該物質をヒートシール層表面に析出させようとするものであるが、ヒートシール層の厚さに制限(35?50μm)があるとともにエージング処理条件によって析出量が変動するため、安定性に欠けるものである。
【0007】
そこで、本出願人は、先に上記の問題を解消し、ヨーグルト等の柔らかい内容物が蓋のヒートシール材層面に付着し難く、仮に一旦付着したとしても自然に流れ落ちやすい内容物付着防止用蓋材として、基材層とその下に形成せられたヒートシール材層とを備えた蓋材において、ヒートシール材層がワックス成分を40?70%含有するとともに、ヒートシール材層の平均表面粗さ(Ra)が0.05?5μmで、かつ最大表面粗さ(Rmax)が10μm以下としたものを提案した(特願2005-350387)。
【0008】
本出願人は、上記蓋材におけるヒートシール材層の形成方法について検討した結果、ヒートシール材層の表面を平滑にするためには、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂からなるフィルムを貼り合わせる方法が有利であることが分かったが、ワックス成分の含有量が40?70%と多いためにフィルム化することが困難であった。そこで、エチレン酢酸ビニル共重合体等を主成分とするホットメルトをグラビアロールにより基材層にコーティングする方法について実験研究したところ、コーティングする際に、ホットメルトの表面にグラビアロールのメッシュが転写されるために、ホットメルトの表面を上記の通りに制御することができなかった。
【特許文献1】特開2002-37310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記の問題を解決した内容物付着防止用蓋材の製造方法を提供するにある。」

(5)甲第18号証
18a 「【0003】
ヨーグルト、プリン、ゼリー等の食品容器用の蓋材には、基材層の下面にヒートシール材層が積層された構成のものが使用されている。そして、ヒートシール材層としては、エチレン酢酸ビニル共重合体等を主成分とするホットメルトが基材層にコーティングせられたものがある。
【0004】
容器の内容物がヨーグルト等のような柔らかいゲル状の食品の場合、充填容器の輸送時の揺れや消費者が商品購入後傾けた際に、内容物が蓋のヒートシール材層表面に付着し、容器内に落ちずにそのまま残り、容器の開封時に内容物が飛び出して手や衣服を汚したり、蓋に付いた内容物を舐めて舌を切ったりする恐れがある。また、開封した際に見栄えが悪いという問題もある。
【0005】
そこで、ヨーグルト等の内容物が付着しない蓋材の出現が要望せられており、これにこたえるものとして、例えば、下記特許文献1には、ヒートシール材層が、付着防止効果を有する非イオン界面活性剤又は疎水性添加物の少なくとも1種を含むポリオレフィンからなるものが提案されている。
【0006】
この提案発明によるものは、例えば、グリセリン脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステルがポリオレフィンに対して0.5?10%添加され、加熱エージング処理によって該物質をヒートシール層表面に析出させようとするものであるが、ヒートシール層の厚さに制限(35?50μm)があるとともにエージング処理条件によって析出量が変動するため、安定性に欠けるものである。
【0007】
そこで、本出願人は、先に上記の問題を解消し、ヨーグルト等の柔らかい内容物が蓋のヒートシール材層面に付着し難く、仮に一旦付着したとしても自然に流れ落ちやすい内容物付着防止用蓋材として、基材層とその下に形成せられたヒートシール材層とを備えた蓋材において、ヒートシール材層がワックス成分を40?70%含有するとともに、ヒートシール材層の平均表面粗さ(Ra)が0.05?5μmで、かつ最大表面粗さ(Rmax)が10μm以下としたものを提案した(特願2005-350387)。
【0008】
本出願人は、上記蓋材におけるヒートシール材層の形成方法について検討したところ、ヒートシール材層の表面を平滑にするためには、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂からなるフィルムを貼り合わせる方法が有利であることが分かったが、ワックス成分の含有量が40?70%と多いためにフィルム化することが困難であった。そこで、エチレン酢酸ビニル共重合体等を主成分とするホットメルトをグラビアロールにより基材層にコーティングする方法について実験研究したところ、コーティングする際に、ホットメルトの表面にグラビアロールのメッシュが転写されるために、ホットメルトの表面を上記の通りに制御することができなかった。
【特許文献1】特開2002-37310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記の問題を解決した内容物付着防止用蓋材の製造方法を提供するにある。」

(6)甲第19号証
19a 「【0003】
ヨーグルト、プリン、ゼリー等の食品容器用の蓋材には、基材層の下面にヒートシール材層が積層された構成のものが使用されている。そして、ヒートシール材層としては、エチレン酢酸ビニル共重合体等を主成分とするホットメルトが基材層にコーティングせられたものがある。
【0004】
容器の内容物がヨーグルト等のような柔らかいゲル状の食品の場合、充填容器の輸送時の揺れや消費者が商品購入後傾けた際に、内容物が蓋のヒートシール材層表面に付着し、容器内に落ちずにそのまま残り、容器の開封時に内容物が飛び出して手や衣服を汚したり、蓋に付いた内容物を舐めて舌を切ったりする恐れがある。また、開封した際に見栄えが悪いという問題もある。
【0005】
そこで、ヨーグルト等の内容物が付着しない蓋材の出現が要望せられており、これにこたえるものとして、例えば、下記特許文献1には、ヒートシール材層が、付着防止効果を有する非イオン界面活性剤又は疎水性添加物の少なくとも1種を含むポリオレフィンからなるものが提案されている。
【0006】
この提案発明によるものは、例えば、グリセリン脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステルがポリオレフィンに対して0.5?10%添加され、加熱エージング処理によって該物質をヒートシール層表面に析出させようとするものであるが、ヒートシール層の厚さに制限(35?50μm)があるとともにエージング処理条件によって析出量が変動するため、安定性に欠けるものである。
【0007】
そこで、本出願人は、先に上記の問題を解消し、ヨーグルト等の柔らかい内容物が蓋のヒートシール材層面に付着し難く、仮に一旦付着したとしても自然に流れ落ちやすい内容物付着防止用蓋材として、基材層とその下に形成せられたヒートシール材層とを備えた蓋材において、ヒートシール材層がワックス成分を40?70%含有するとともに、ヒートシール材層の平均表面粗さ(Ra)が0.05?5μmで、かつ最大表面粗さ(Rmax)が10μm以下としたものを提案した(特願2005-350387)。
【0008】
本出願人は、上記蓋材におけるヒートシール材層の形成方法について検討した結果、ヒートシール材層の表面を平滑にするためには、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂からなるフィルムを貼り合わせる方法が有利であることが分かったが、ワックス成分の含有量が40?70%と多いためにフィルム化することが困難であった。そこで、エチレン酢酸ビニル共重合体等を主成分とするホットメルトをグラビアロールにより基材層にコーティングする方法について実験研究したところ、コーティングする際に、ホットメルトの表面にグラビアロールのメッシュが転写されるために、ホットメルトの表面を上記の通りに制御することができなかった。
【特許文献1】特開2002-37310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記の問題を解決した内容物付着防止用蓋材の製造方法を提供するにある。」

(7)上記の甲第2、13?15、18、19号証の記載によれば、本件特許の出願前に、次の構成を具備する蓋材が周知であったことが認められる。

「少なくとも基材層及びヒートシール材層を有する積層体からなる蓋材であって、前記ヒートシール材層が蓋材の一方の面の最外層として積層されており、容器に内容物が充填され、その開口部と蓋材のヒートシール材層とが接するような状態でヒートシールされ密封される蓋材。」
(以下「周知の蓋材」という。)

(8)また、上記の甲第2、13?15、18、19号証の記載によれば、上記した周知の蓋材において、蓋材の内面を、容器に収容したヨーグルト等の内容物が付着しないようにすることが技術的課題であったことが認められる。

2 甲第1号証の記載
(1)甲第1号証には、以下の記載1a?1gが認められる。
1a 「【請求項1】
表面を汚れ防止処理する方法であって、有機ポリマー及び共重合体並びに元素周期表第3?14族の固体の無機酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩又は硫酸塩から選択される界面エネルギー20mN/m以上の材料から構成され且つ3nm?5μmの平均直径を有する粒子で表面を被覆することを特徴とする表面の汚れ防止処理法。
【請求項2】・・・。
【請求項7】
請求項1?6のいずれかに記載の方法により得られる汚れ防止処理され且つ透明性の高い表面。
【請求項8】
・・・。
【請求項9】
請求項7に記載の汚れ防止処理された表面を有する容器又は梱包材料。」
1b 「【0024】
新規な方法は、複数の段階(工程)を含んでいる。
【0025】
その第1工程において、汚れ防止処理を付与すべき表面を、被覆工程前に粘着性にすることによって製造して、本発明により施される粒子を固定する。これは、複数の代替工程により行われ得る:
接着機能を果たすプライマーを施すことができる。好適なプライマーは、例えば、アンモニア又はアミンで部分的に中和されたエチレン/アクリル酸共重合体等のポリマー分散液である;特に好ましい例示は、BASF社製のルガルヴァンDC(登録商標)(Lugalvan DC^(R));又は、接着剤の特に好ましい例示としてアクロナール(Acronal)(登録商標)V210である。更に、ホットメルト接着剤及び溶融ポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリオクタデシルビニルエーテル又はポリ塩化ビニルが適当である。ワックス、例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナウバ蝋、モンタン蝋又はパラフィンワックスもプライマーとして適当である。施すべき接着層の厚さは新規方法に臨界的でなく、0.1μm?10mmの範囲である。
【0026】
或いは、汚れ防止処理を付与すべき表面がプラスチックを含む場合、この表面は、直接的に関連するプラスチックのガラス転移温度を超える温度に短時間で加熱されても良く、又はこの表面を溶剤で部分的に溶解又は膨張させても良い。」
1c 「【0027】
その後、汚れ防止処理を付与すべき表面を、3nm?5μmの範囲の平均直径を有し且つ界面エネルギー20mN/m以上の材料(物質)から構成された粒子で被覆する。施される粒子は、その疎水性面、多孔質構造及び平均直径により特徴付けられる。」
1d 「【0029】
粒子は、20mN/m以上の界面エネルギーを有する物質(材料)から構成されている。・・・。
【0030】
他の好適な物質は、元素周期表第3?14族の固体の無機酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩又は硫酸塩、例えば酸化カルシウム、シリカ若しくはアルミナ、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム又はケイ酸カルシウムであり、アルミナ及びシリカが好ましい。シリカゲルとしての変態のシリカが特に好ましい。例えばDegussa-Huels社よりアエロシル(Aerosil)(登録商標)銘柄として市販されている熱分解法シリカゲルが極めて好ましい。固体の無機酸化物は、400?800℃に加熱することによって熱により、好ましくは物理吸着化(physisorbed)又は化学吸着化(chemisorbed)有機又は有機金属化合物により疎水性にされ得る。このために、被覆工程前に、粒子を有機金属化合物と反応させる。この有機金属化合物は、少なくとも1種の官能基、例えばアルキルリチウム化合物、例えばメチルリチウム、n-ブチルリチウム又はn-ヘキシルリチウム;又はシラン、例えばヘキサメチルジシラザン、オクチルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン又はジクロロジメチルシランを含んでいる。」
1e 「【0034】
上述した粒子は、汚れ防止処理の付与される表面に施される(塗布される)。この利用は被覆と称される。被覆は、液体分散液を用いることなく行われる。新規方法の一実施の形態において、被覆すべき製作品に、上述した粒子を振りかける。この処理は、平坦な表面、例えばフィルムの表面に特に適当である。
【0035】
装置又はコンテナ(容器)の内面に特に適当である本発明の別の実施の形態において、この装置又はコンテナを粒子で完全に又は部分的に充填し、十分な対流が保証され、その後に非接着粒子を除去する。
【0036】
必要により被覆工程を繰り返すことができる。」
1f 「【0043】
更に本発明は、汚れ防止処理の付与された表面を有する容器、例えばカップ又はグラス、及びパッキングに関する。高粘性の液体を含む全ての種類の液体、例えば鉱泉水(ミネラルウォータ)、レモン水、コーラ、ジュース、ビール、ワイン、コーヒー、ミルク、ハチミツ、ヨーグルト又は練り歯磨きを、残留物を残すことなく、新規なコップ、グラス及び他の容器から注ぐことができる。」
1g 「【0051】
[実施例1]
ガラスシートを、50μmのギャップを有するナイフ塗布機を用いてエチレン及びアクリル酸からなる共重合体の水性分散液(ルガルヴァン(登録商標)DC、BASF AG製)で被覆し、そして室内空気中で15分間乾燥した。
【0052】
その後、ガラスシートの被覆側の表面全体に、BET表面積220m^(2)/g(ドイツ工業規格66131)の疎水性シリカ顔料からなる粉末を振りかけたが、これは、篩を用いて粒子を表面に分散させることにより行われ、そしてガラスシートを20℃で2時間保存した。その後、被覆側を圧縮エアでブローした。光学的に完全に透明な被膜を得たが、これは、透過光で調べた場合、不透明度を全く示さなかった。」

(2)甲第1号証には、記載1aによれば、「界面エネルギー20mN/m以上の、元素周期表第3?14族の固体の無機酸化物から構成され且つ3nm?5μmの平均直径を有する粒子で表面を被覆する、該表面の汚れ防止処理法」についての発明が記載されていると認められる。そして、上記発明の「界面エネルギー20mN/m以上」とは、記載1cをも参照すれば、疎水性と言い換えることができるし、上記発明の「表面」が、何らかの基材の表面であることは、自明のことである。
そして、甲第1号証には、上記発明の粒子についての記載であることが明らかな記載1dが認められ、この記載をみると、上記粒子を構成する物質として、「Degussa-Huels社よりアエロシル(Aerosil)(登録商標)銘柄として市販されている熱分解法シリカゲル」が、極めて好ましい例として示されている。
さらに、甲第1号証には、上記発明において、粒子で表面を被覆する手段についての記載であることが明らかな記載1eが認められ、粒子を振りかけて表面を被覆する工程を繰り返すことが記載され、これは、上記表面が粒子により十分に覆われるよう、該表面を被覆することを意図しているものと認められる。この点については、平成23年9月1日付け口頭審理陳述要領書9頁下から7行?同下から4行での被請求人の主張と符合するものでもある。
以上の検討を踏まえると、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「Degussa-Huels社よりアエロシル(Aerosil)(登録商標)銘柄として市販されている疎水性の熱分解法シリカゲルから構成された粒子で基材表面を被覆するに際し、該基材表面に上記粒子を振りかけ、上記粒子を固定し、該粒子で基材表面が十分に覆われるように被覆する、基材表面の汚れ防止処理法。」

(3)甲1発明の汚れ防止処理法によって処理された基材表面の構造について、以下に検討する。

(3-1)まずは、甲1発明における「Degussa-Huels社よりアエロシル(Aerosil)(登録商標)銘柄として市販されている疎水性の熱分解法シリカゲルから構成された粒子」(以下「甲1粒子」ということもある。)について検討する。

(3-1-1)甲1粒子の技術的内容を、直接的に示す証拠は、請求人あるいは被請求人が提出した甲号証又は乙号証、さらには、参考資料を見ても、見当たらない。
その一方で、甲第6号証の奥付頁に「改訂版(29)2006年8月 1,000部」と、また、甲第7号証の裏表紙に「改訂版(3)2004年8月 1,000部」と、さらに、甲第8号証の裏表紙に「改訂 96.4.2000」及びその「テクニカルデータ」の頁に「1996年4月現在」と記載されていることから、これら甲号証は、この出願前に頒布された刊行物と認められ、そして、これらは、「AEROSIL^(?)」について記載するもので、以下の記載6a?8bが認められる。

甲第6号証
6a 「はじめに
AEROSIL^(?)(アエロジル)は、工業規模で製造されているシリカ(SiO_(2))の中では、最も小さい粒子径を持つ高純度のフュームドシリカです。・・・。
AEROSIL^(?)の製造法
AEROSIL^(?)(アエロジル)は、1942年にDegussa社(ドイツ)で開発されたシリカで、四塩化ケイ素の酸水素炎中での高温加水分解により以下のような反応で生成される。」(「はじめに」で始まる頁の1?11行)
6b;「超微粒子 一次粒子径が標準品10nm内外、特殊品40nmの球状の粒子 (7nm-40nm)で粒子径もそろっている。」、「高表面積 種々の比表面積(50m^(2)/g?380m^(2)/g)を持ったグレードがある。 多孔質ではなく内部表面積がない。」及び「高分散性 ゆるく凝集した状態で存在しており、比較的容易に分散しうる。 応用条件に応じた適切な分散方法の選定が望ましい。」が記載された「AEROSIL^(?)の基本的特徴及び性質」と題された表(「はじめに」で始まる頁)
6c 「グレード」として、「国産品 AEROSIL^(?)(標準品)」として10品目、「国産品 AEROSIL^(?)(特殊品)」として4品目、「デグサ社よりの輸入品 AEROSIL^(?)(特殊品)」として9品目、及び「国産品 AEROSIL^(?)(表面処理品)」として2品目に対応して、「BET法による比表面積 m^(2)/g」及び「1次粒子の平均径 nm」が記載された表(「テクニカルデータ」の頁)

甲第7号証
7a 「AEROSIL^(?)は下記の基本特性をもつ合成シリカで世界84ヶ国で登録されているデグサ社の商標である。」(3頁5?6行)
7b AEROSIL^(?)に対応して「BET比表面積 m^(2)/g」、「一次粒子径 nm」及び「凝集粒子と集塊粒子の構造」の特性が記載された表5(9頁)
7c 「応用技術上の観点から言えば、ほとんどの場合AEROSIL^(?)の分散性が非常に重要である。
当然ながら、一次粒子が小さい場合には凝集作用ないし集塊作用が大きいために分散性は悪くなる。例えば・・・。さらに疎水性のAEROSIL^(?)は分散性の面では親水性のAEROSIL^(?)よりもはっきりした利点をもたらす。この事実を示しているのが図22である。これらの透過型電子顕微鏡写真から判るように、例えばAEROSIL^(?)R972の網目構造は、親水性の被処理材料であるAEROSIL^(?)130の場合ほど際立ってはいない。」(24頁)及び図22(24頁)
7d 「透過型電子顕微鏡写真でも又走査型電子顕微鏡写真でも図22に示した通り親水性AEROSIL^(?)と疎水性AEROSIL^(?)の間に大きな違いは見られない。」(48頁12?14行)
7e 「グレード」として、「国産品 AEROSIL^(?)(標準品)」として10品目、「国産品 AEROSIL^(?)(特殊品)」として4品目、及び「デグサ社よりの輸入品 AEROSIL^(?)(特殊品)」として9品目に対応して、「BET法による比表面積 m^(2)/g」及び「1次粒子の平均径 nm」が記載された表(62?63頁)

甲第8号証
8a 「すでに述べたように工業的に生産された最初の疎水性シリカは1962年に「充填剤R972」として販売された。・・・。この製品の基本となるAEROSILは燃焼加水分解によって得られるAEROSIL 130 である。・・・。電子顕微鏡写真での観察からAEROSIL R972 は一次粒子の平均径では、もとの親水性シリカと違いはない。
図2および図3はAEROSIL R972 の透過型電子顕微鏡写真と走査型電子顕微鏡写真である。これらの図から分かるようにAER-OSIL R972 はその変性前のAEROSIL 130 と同じように凝集粒子(aggregate)と集塊粒子(agglomerate)を含んでいる。これはこのカタログで述べる他の全ての疎水性AEROSILにも該当する。各種AEROSILにDIN 53206 で定義している一次粒子が存在するかという問題は1984年に取り上げ、(10)日本アエロジル社カタログNo.10で詳細に説明している。」(3頁最左欄)及び図2?3(4?5頁)
8b;「グレード」として、「国産品 AEROSIL(標準品)」として9品目、「国産品 AEROSIL(特殊品)」として6品目、及び「デグサ社よりの輸入品 AEROSIL(特殊品)」として9品目に対応して、「BET法による比表面積 m^(2)/g」及び「1次粒子の平均径 nm」が記載された表(「テクニカルデータ」の頁)

(3-1-2)AEROSIL^(?)は、記載6a及び7aによれば、合成シリカ、すなわち、酸化ケイ素からなるもので、デグサ(Degussa)社の世界的な商標であると認められる。
そして、AEROSIL^(?)の一次粒子径について、記載6bには、一次粒子径7?40nmと記載され、また、記載7bには、一次粒子径5?50nmと記載されており、一次粒子径は、最大範囲としても、5?50nmの範囲内ものであることが分かる。
また、AEROSIL^(?)のBET法による比表面積については、記載6cを参照した記載6bには、50?380m^(2)/gと記載され、また、記載7bには、50?600m^(2)/gと記載されているが、記載6c、7e及び8bによれば、日本アエロジル株式会社が提供するAEROSIL^(?)ではあるものの、比表面積は、おおよそ、50±15?300±30m^(2)/gの範囲内のものがほとんどであることが分かる。
さらに、AEROSIL^(?)に親水性と疎水性のものがあることは、甲第6?8号証から、明らかであるが、記載8aによれば、親水性、疎水性、いずれのものも、凝集粒子や集塊粒子を含むもので、記載7c及び7dによれば、両者は、構造上、大きな差異がない網目構造のものであることがうかがえ、また、記載7bに凝集粒子と集塊粒子の構造が鎖状の集塊粒子であることが記載されていることなどを勘案し、さらに、記載7cの図22や記載8aの図2及び3を参照すれば、疎水性のAEROSIL^(?)は、三次元網目状構造の凝集粒子・集塊粒子を多く含んでいるものと認められる。
以上の検討を踏まえると、AEROSIL^(?)には、種々の商品があるものの、疎水性のものを含め、その一般的な性状としては、一次粒子径が5?50nmの範囲内であって、BET法による比表面積については、50?300m^(2)/gの範囲内であることが普通で、しかも、三次元網目状構造の凝集粒子・集塊粒子を含んでいるものと認められる。
その一方で、甲1粒子は、Degussa-Huels社が提供する疎水性の物質であるものの、AEROSIL^(?)として市販されていること、また、AEROSIL^(?)は、上述したように、デグサ(Degussa)社の世界的な商標であることから、甲1粒子は、少なくとも、上で述べた合成シリカからなるAEROSIL^(?)が持つ一般的な性状を有するものと解するのが自然で、該性状を有する疎水性の酸化ケイ素粒子ということができる。

(3-2)次に、基材表面に甲1粒子を固定し、甲1粒子で基材表面が十分に覆われるように被覆した際の、基材表面の構造について検討する。
甲1粒子は、先に(3-1)で述べたように、少なくとも、三次元網目状構造の凝集粒子・集塊粒子を多く含んでいるもので、甲1粒子を振りかけ、固定し、甲1粒子で基材表面が十分に覆われるように被覆すれば、上記基材表面上に三次元網目状構造からなる多孔質層が形成されていると解するのが、技術的に見て、自然である。

(3-3)これまでの検討を踏まえると、甲1発明の汚れ防止処理法によって処理された基材表面の構造は、以下の構造であると認められる。

「基材表面に甲1粒子、すなわち、一次粒子平均径5?50nmの範囲内であって、BET法による比表面積50?300m^(2)/gの範囲内である、酸化ケイ素からなる疎水性粒子が付着し、該疎水性粒子が三次元網目状構造からなる多孔質層を形成している構造。」

3 本件訂正発明と周知の蓋材との対比・判断
(1)本件訂正発明1について
(1-1)上記の周知の蓋材(上記1(7)参照)と本件訂正発明1とを対比する。
周知の蓋材における「ヒートシール材層」は、本件訂正発明1における「熱接着層」に相当する。
したがって、上記の周知の蓋材と本件訂正発明1とは、
「少なくとも基材層及び熱接着層を有する積層体からなる蓋材であって、前記熱接着層が蓋材の一方の面の最外層として積層されており、容器に内容物が充填され、その開口部と蓋材の熱接着層とが接するような状態で密封される蓋材。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
本件訂正発明1においては、「前記熱接着層が他の層と接着していない最外面に一次粒子平均径3?100nmの疎水性酸化物微粒子が付着し、疎水性酸化物微粒子が三次元網目状構造からなる多孔質層を形成しており」、「前記多孔質層が疎水性酸化物微粒子を溶媒に分散させてなる分散体を用いて熱接着層上に塗膜を形成した後に乾燥する方法により形成されており」及び「熱接着時において、熱接着される領域上に存在する疎水性酸化物微粒子は当該熱接着層中に埋め込まれる」という限定がされているのに対し、上記周知の蓋材においては、そのような限定がされていない点。

(1-2)上記相違点について検討する。
上記したように(上記1(8)参照)、周知の蓋材において、蓋材の内面を、容器に収容したヨーグルト等の内容物が付着しないようにすることが技術的課題であったことが認められる。
一方、甲第1号証には、基材表面の汚れ防止処理技術が記載され、甲第1号証の段落【0043】には、「高粘性の液体を含む全ての種類の液体・・・(中略)・・・を残留物を残すことなく・・・(中略)・・・容器から注ぐことができる。」と記載され、その液体の例として、ヨーグルトも記載されている(上記2(1)1f参照)。甲1発明によって処理された基材表面の構造は、前記したとおり(上記2(3-3)参照)「基材表面に甲1粒子、すなわち、一次粒子平均径5?50nmの範囲内であって、BET法による比表面積50?300m^(2)/gの範囲内である、酸化ケイ素からなる疎水性粒子が付着し、該疎水性粒子が三次元網目状構造からなる多孔質層を形成している構造。」である。
上記した周知の蓋材と、甲1発明は、いずれも、基材表面にヨーグルト等が付着することを防止するという課題において共通する。したがって、周知の蓋材において、ヨーグルト等の内容物が付着する可能性がある蓋材の内面、すなわちヒートシール材層の表面について、甲1発明の汚れ防止処理技術に倣って、甲1発明と同様に、甲1粒子、すなわち、一次粒子平均径5?50nmの範囲内であって、BET法による比表面積50?300m^(2)/gの範囲内である、酸化ケイ素からなる疎水性粒子で表面を被覆することに限れば、適用の動機付けがあるといえる。
しかしながら、上記相違点は、「前記多孔質層が疎水性酸化物微粒子を溶媒に分散させてなる分散体を用いて熱接着層上に塗膜を形成した後に乾燥する方法により形成されており」という事項を一体として備えているものであるところ、上記相違点は、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。その理由は以下のとおりである。
甲1発明において、疎水性の熱分解法シリカゲルから構成された粒子で基材表面を被覆する方法は、基材表面に上記粒子を振りかけるという方法であり、当該方法は、上記粒子を溶媒に分散させてなる分散体を用いて熱接着層上に塗膜を形成した後に乾燥するという方法とは技術的に異なる方法である。そして、甲第1号証には、上記粒子で基板表面を被覆する方法として、上記粒子を振りかけるという方法以外の他の方法は何ら記載されていない。むしろ、甲第1号証において、「【0034】上述した粒子は、汚れ防止処理の付与される表面に施される(塗布される)。この利用は被覆と称される。被覆は、液体分散液を用いることなく行われる。新規方法の一実施の形態において、被覆すべき製作品に、上述した粒子を振りかける。この処理は、平坦な表面、例えばフィルムの表面に特に適当である。」(上記2(1)1e参照)との記載が認められるのであり、この甲第1号証の記載は、上記粒子で基材表面を被覆する方法として、液体分散液を用いる手法、すなわち上記粒子を溶媒に分散させてなる分散体を用いて塗膜を形成した後に乾燥するという方法を排除するものと解される。したがって、基材表面に上記粒子を振りかけるという方法を採用している甲1発明において、上記粒子を振りかけるという方法にかえて、上記粒子の液体分散液を用いて塗膜を形成した後に乾燥するという方法を採用することについて、これを示唆する記載が甲第1号証に存在するとはいえない。
甲第2、13?15、18、19号証は、上記した周知の蓋材について記載されているものの、甲1発明において用いられている疎水性の熱分解法シリカゲルから構成された粒子については何ら記載されておらず、甲1発明において、上記粒子で基材表面を被覆するに際し、基材表面に上記粒子を振りかけるという手法にかえて、上記粒子を溶媒に分散させてなる分散体を用いて塗膜を形成した後に乾燥するという方法を採用することについて、これを示唆する記載は何ら認められない。
その他の証拠をあわせみても、甲1発明において、上記粒子で基材表面を被覆するに際し、基材表面に上記粒子を振りかけるという手法にかえて、上記粒子を溶媒に分散させてなる分散体を用いて塗膜を形成した後に乾燥するという方法を採用することについて、当業者が容易に想到し得ることであると認めるに足る根拠は見出せない。
したがって、上記相違点は、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得る事項であるとはいえない。

(1-3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、周知の蓋材に甲1発明を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件訂正発明2ないし本件訂正発明6について
本件訂正発明2ないし本件訂正発明6は、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の限定を付加したものに相当するから、少なくとも上記(1)(1-1)に記載した[相違点]で周知の蓋材と相違する。
そして、上記(1)(1-2)及び(1-3)に示したとおり、本件訂正発明1は、周知の蓋材に甲1発明を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、本件訂正発明2ないし本件訂正発明6は、周知の蓋材に甲1発明を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由及び提出した証拠方法によっては、本件訂正発明1ないし本件訂正発明6についての特許を無効とすることはできない。

第6 結語
以上の次第であるから、本件訂正発明1ないし本件訂正発明6について、請求人が主張する無効理由には理由がないから、本件訂正発明1ないし本件訂正発明6についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
蓋材
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材料及びその製造方法に関する。より具体的には、食品、飲料品、医薬品、化粧品、化学品等を包装するために用いる包装材料とその製造方法に関する。特に、内容物の非付着性に優れた包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より多種多様の包装材料が知られているが、その内容物も多岐にわたる。例えば、ゼリー菓子、プリン、ヨーグルト、液体洗剤、練り歯磨き、カレールー、シロップ、ワセリン、洗顔クリーム、洗顔ムース等のように、食品、飲料品、医薬品、化粧品、化学品等がある。また、内容物の性状も固体、半固体、液体、粘性体、ゲル状物等のように様々なものがある。
【0003】
これらの内容物を包装するための包装材料においては、密封性が要求されるほかに、内容物、包装形態、用途等に応じて熱接着性、遮光性、耐熱性、耐久性等が要求される。ところが、これらの特性を満たしている包装材料であっても、次のような問題がある。すなわち、内容物が包装材料に付着するという問題である。内容物が包装材料に付着すれば、内容物をすべて使い切ることが困難になり、それだけ無駄が生じることになる。また、内容物をすべて使い切るためには包装材料に付着した内容物を別途に回収しなければならず、手間がかかる。このため、包装材料では、上記のような密封性等のほか、内容物が包装材料に付着しにくい性質(非付着性)を備えていることが必要である。
【0004】
これに対し、接着層を介して一体化された基材層とヒートシール層とを備えた蓋材において、ヒートシール層が、付着防止効果を有するグリセリン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸アミド等を含むポリオレフィンからなり、その厚さが10μmよりも厚く、接着層と該ヒートシール層との間にポリオレフィンからなる中間層が設けられていることを特徴とする充填物付着防止蓋材が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-37310
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような蓋材では、使用できるヒートシール層の種類又は厚みが制限される上、グリセリン酸エステル等の添加剤の使用量を厳格に制御しなければならない。添加剤の使用量が多すぎるとヒートシール性能を低下させる一方、添加剤の使用量を少なくすればそれだけ付着防止効果が低下する。この点において実用化を進める上ではさらなる改善の余地がある。
【0007】
従って、本発明の主な目的は、良好な熱接着性を維持しつつ、優れた非付着性を持続的に発揮できる包装材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有する積層体を包装材料として採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の蓋材に係る。
1.少なくとも基材層及び熱接着層を有する積層体からなる蓋材であって、前記熱接着層が蓋材の一方の面の最外層として積層されており、前記熱接着層が他の層と隣接していない最外面に一次粒子平均径3?100nmの疎水性酸化物微粒子が付着し、疎水性酸化物微粒子が三次元網目状構造からなる多孔質層を形成しており、容器に内容物が充填され、その開口部と蓋材の熱接着層とが接するような状態で密封される蓋材であって、前記多孔質層が疎水性酸化物微粒子を溶媒に分散させてなる分散体を用いて熱接着層上に塗膜を形成した後に乾燥する方法により形成されており、
熱接着時において、熱接着される領域上に存在する疎水性酸化物微粒子は当該熱接着層中に埋め込まれる蓋材。
2.疎水性酸化物微粒子の付着量が0.01?10g/m^(2)である、前記項1に記載の蓋材。
3.疎水性酸化物微粒子のBET法による比表面積が50?300m^(2)/gである、前記項1又は2に記載の蓋材。
4.疎水性酸化物微粒子が疎水性シリカである、前記項1?3のいずれかに記載の蓋材。
5.疎水性シリカがその表面にトリメチルシリル基を有する、前記項4に記載の蓋材。
6.熱接着層側の最外面に内容物が接触可能な状態で当該内容物が蓋材と容器によって包装されてなる製品のために用いられる、前記項1?5のいずれかに記載の蓋材。
【発明の効果】
【0010】
本発明の包装材料は、良好な熱接着性を維持しながらも、優れた非付着性を発揮することができる。すなわち、熱接着層の種類、厚み等の制限を受けることなく、熱接着性を実用上阻害せずに、高い非付着性を得ることができる。より具体的には、熱接着時において、熱接着される領域上に存在する疎水性酸化物微粒子は当該熱接着層中に埋め込まれるので熱接着を阻害しない一方、熱接着される領域外に存在する疎水性酸化物微粒子はそのまま熱接着層上に保持されているのでその高い非付着性を発揮することができる。
【0011】
また、本発明の製造方法によれば、熱接着層に疎水性酸化物微粒子を付与するだけで良いので、熱接着層を構成する原材料への添加剤の配合の制御をする必要がなく、よってその配合率の制御等が不要となる分、生産効率、コスト等の面で有利である。しかも、前記のように、熱接着層に接着しろを考慮せずに全面に疎水性酸化物微粒子を付着させるだけで熱接着を行うことができるという点でも有利である。
【0012】
このような包装材料は、蓋材として使用できるほか、ピロー袋、ガセット袋、自立袋、三方シール袋、四方シール袋等の袋体、成形容器、包装シート、チューブ等の様々な用途に効果的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の包装材料の断面構造の模式図である。
【図2】本発明の包装材料を容器の蓋材として用いて作製された包装体の断面構造の模式図である。
【図3】実施例で得られた包装材料における断面構造をFE(Field Emission)-SEMで観察した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0014】
1 基材層
2 熱接着層
3 疎水性酸化物微粒子
4 容器
5 内容物
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.包装材料
本発明の包装材料は、少なくとも基材層及び熱接着層を有する積層体からなる包装材料であって、前記熱接着層が包装材料の一方の面の最外層として積層されており、前記熱接着層が他の層と隣接していない最外面に一次粒子平均径3?100nmの疎水性酸化物微粒子が付着していることを特徴とする。
【0016】
図1に本発明の包装材料の断面構造の模式図を示す。図1の包装材料では、基材層1に熱接着層2が積層された積層体からなる。熱接着層2は包装材料(積層体)の一方の最外層に積層されている。最外層である熱接着層2において、他の層(図1では基材層)と隣接していない側の面(最外面)に一次粒子平均径3?100nmの疎水性酸化物微粒子3が付着している。疎水性酸化物微粒子3は熱接着層2に付着して固定されている。すなわち、疎水性酸化物微粒子と内容物とが接触しても疎水性酸化物微粒子が脱落しない程度に付着している。図1において、疎水性酸化物微粒子3は、一次粒子が含まれていても良いが、その凝集体(二次粒子)が多く含まれていることが望ましい。特に、疎水性酸化物微粒子が三次元網目状構造からなる多孔質層をなしていることがより好ましい。すなわち、熱接着層2の上には疎水性酸化物微粒子により形成された三次元網目状構造からなる多孔質層が積層されていることが好ましい。
【0017】
図2には、本発明の包装材料を容器の蓋材として用いて作製された包装体の断面構造の模式図を示す。なお、図2では、疎水性酸化物微粒子3の表記は省略されている。容器4に内容物5が充填され、その開口部と包装材料の熱接着層2とが接するような状態で密封される。つまり、熱接着層2に付着している疎水性酸化物微粒子が内容物5と接触可能な状態で本発明の包装材料が使用されることになる。このような場合であっても、熱接着層2は疎水性酸化物微粒子によって保護され、優れた非付着性を有するので、たとえ内容物が熱接着層2近傍に接触しても(接近しても)、内容物の熱接着層への付着が疎水性酸化物微粒子(又は疎水性酸化物微粒子からなる多孔質層)によって遮られ、なおかつ、はじかれる。このため、内容物が熱接着層近傍に付着したままの状態とならずに、疎水性酸化物微粒子(又は疎水性酸化物微粒子からなる多孔質層)にはじかれて内容物が容器に戻る。なお、容器4の材質としては、金属、合成樹脂、ガラス、紙、それらの複合材等から適宜選択でき、その材質に応じて熱接着層の種類や成分を適宜調整することができる。このように、本発明の包装材料は、熱接着層側の最外面(特に疎水性酸化物微粒子(又は疎水性酸化物微粒子からなる多孔質層))に内容物が接触可能な状態で当該内容物が包装材料に包装されてなる製品のために好適に用いることができる。
【0018】
基材層としては、公知の材料又は積層材料を採用することができる。例えば、紙、合成紙、樹脂フィルム、蒸着層付き樹脂フィルム、アルミニウム箔等の単体又はこれらの複合材料・積層材料を好適に用いることができる。
【0019】
これらの材料には、公知の包装材料で採用されている各層が任意の位置に積層されていても良い。例えば、印刷層、印刷保護層(いわゆるOP層)、着色層、接着剤層、接着強化層、プライマーコート層、アンカーコート層、防滑剤層、滑剤層、防曇剤層等が挙げられる。
【0020】
積層材料を用いる場合の積層方法も限定的でなく、例えばドライラミネート法、押し出しラミネート法、ウエットラミネート法、ヒートラミネート法等の公知の方法を採用することができる。
【0021】
基材層の厚みは限定されないが、包装材料としての強度、柔軟性、コスト等の観点より通常15?500μmの範囲内で適宜設定すれば良い。
【0022】
熱接着層としては、公知の材料を採用することができる。例えば、公知のシーラントフィルムのほか、ラッカータイプ接着剤、イージーピール接着剤、ホットメルト接着剤等の接着剤により形成される層を採用することができる。本発明では、この中でも、ラッカータイプ接着剤又はホットメルト接着剤を採用するのが好ましく、特にホットメルト接着剤により形成される熱接着層(ホットメルト層)を好適に採用することができる。ホットメルト層を形成する場合には、ホットメルト接着剤を溶融状態で塗布した後、冷却固化するまでに疎水性酸化物微粒子を付与すれば熱接着層に疎水性酸化物微粒子をそのまま付着させることができるため、本発明包装材料の連続的な生産が容易となる。
【0023】
熱接着層の厚みは特に限定されないが、密封性、生産性、コスト等の観点より通常2?150μm程度とすることが好ましい。特に、本発明の包装材料では、熱接着するに際して、熱接着される領域上に存在する疎水性酸化物微粒子が熱接着層中に埋め込まれ、熱接着層が最表面となることにより熱接着を行うことができる。このため、上記厚みの範囲内において、疎水性酸化物微粒子を熱接着層にできるだけ多く埋め込むことができる厚みに設定することが望ましい。
【0024】
熱接着層に付着する疎水性酸化物微粒子は、一次粒子平均径が通常3?100nmであり、好ましくは5?50nmであり、より好ましくは5?20nmである。一次粒子平均径を上記範囲とすることにより、疎水性酸化物微粒子が適度な凝集状態となり、その凝集体中にある空隙に空気等の気体を保持することができる結果、優れた非付着性を得ることができる。すなわち、この凝集状態は、熱接着層に付着した後も維持されるので、優れた非付着性を発揮することができる。
【0025】
なお、本発明において、一次粒子平均径の測定は、走査型電子顕微鏡(FE-SEM)で実施することができ、走査型電子顕微鏡の分解能が低い場合には透過型電子顕微鏡等の他の電子顕微鏡を併用して実施しても良い。具体的には、粒子形状が球状の場合はその直径、非球状の場合はその最長径と最短径との平均値を直径とみなし、走査型電子顕微鏡等による観察により任意に選んだ20個分の粒子の直径の平均を一次粒子平均径とする。
【0026】
疎水性酸化物微粒子の比表面積(BET法)は特に制限されないが、通常50?300m^(2)/gとし、特に100?300m^(2)/gとすることが好ましい。
【0027】
疎水性酸化物微粒子としては、疎水性を有するものであれば特に限定されず、表面処理により疎水化されたものであっても良い。例えば、親水性酸化物微粒子をシランカップリング剤等で表面処理を施し、表面状態を疎水性とした微粒子を用いることもできる。酸化物の種類も、疎水性を有するものであれば限定されない。例えばシリカ(二酸化ケイ素)、アルミナ、チタニア等の少なくとも1種を用いることができる。これらは公知又は市販のものを採用することができる。例えば、シリカとしては、製品名「AEROSIL R972」、「AEROSIL R972V」、「AEROSIL R972CF」、「AEROSIL R974」、「AEROSIL RX200」、「AEROSIL RY200」(以上、日本アエロジル株式会社製)、「AEROSIL R202」、「AEROSIL R805」、「AEROSIL R812」、「AEROSIL R812S」、(以上、エボニック デグサ社製)等が挙げられる。チタニアとしては、製品名「AEROXIDE TiO_(2) T805」(エボニック デグサ社製)等が例示できる。アルミナとしては、製品名「AEROXIDE Alu C」(エボニック デグサ社製)等をシランカップリング剤で処理して粒子表面を疎水性とした微粒子が例示できる。
【0028】
この中でも、疎水性シリカ微粒子を好適に用いることができる。とりわけ、より優れた非付着性が得られるという点において、表面にトリメチルシリル基を有する疎水性シリカ微粒子が好ましい。これに対応する市販品としては、例えば前記「AEROSIL R812」、「AEROSIL R812S」(いずれもエボニック デグサ社製)等が挙げられる。
【0029】
熱接着層に付着させる疎水性酸化物微粒子の付着量(乾燥後重量)は限定的ではないが、通常0.01?10g/m^(2)とするのが好ましく、0.2?1.5g/m^(2)とするのがより好ましく、0.3?1g/m^(2)とするのが最も好ましい。上記範囲内に設定することによって、より優れた非付着性が長期にわたって得ることができる上、疎水性酸化物微粒子の脱落抑制、コスト等の点でもいっそう有利となる。熱接着層に付着した疎水性酸化物微粒子は、三次元網目構造を有する多孔質層を形成していることが好ましく、その厚みは0.1?5μm程度が好ましく、0.2?2.5μm程度がさらに好ましい。このようなポーラスな層状態で付着することにより、当該層に空気を多く含むことができ、より優れた非付着性を発揮することができる。
【0030】
また、疎水性酸化物微粒子は、熱接着層の全面(基材層側と反対側の面の全面)に付着していても良いし、熱接着層が熱接着される領域(いわゆる接着しろ)を除いた領域に付着していても良い。本発明では、熱接着層の全面に付着している場合でも、熱接着される領域上に存在する疎水性酸化物微粒子のほとんど又は全部が当該熱接着層中に埋没するので熱接着が阻害されることはなく、工業的生産上でも熱接着層の全面に付着している方が望ましい。
【0031】
2.包装材料の製造方法
本発明の包装材料は、例えば、少なくとも基材層及び熱接着層を有する積層体からなる包装材料を製造する方法であって、当該熱接着層の表面に一次粒子平均径3?100nmの疎水性酸化物微粒子を付着させる工程(以下「付着工程」ともいう。)を含む包装材料の製造方法によって好適に得ることができる。
【0032】
積層体の製造自体は公知の方法に従って実施することができる。例えば、単層基材又はドライラミネート法、押し出しラミネート法、ウエットラミネート法、ヒートラミネート法等により作製された積層材料に対して、前記1.で説明した方法により熱接着層を形成すれば良い。
【0033】
付着工程を実施する方法は特に限定されない。例えば、ロールコーティング、グラビアコーティング、バーコート、ドクターブレードコーティング、刷毛塗り、粉体静電法等の公知の方法を採用することができる。ロールコーティング等を採用する場合は、疎水性酸化物微粒子を溶媒に分散させてなる分散体を用いて熱接着層上に塗膜を形成した後に乾燥する方法により付着工程を実施することができる。この場合の溶媒は限定されず、水のほか、例えばアルコール(エタノール)、シクロヘキサン、トルエン、アセトンIPA、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチルジグリコール、ペンタメチレングリコール、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ヘキシルアルコール等の有機溶剤を適宜選択することができる。この際、微量の分散剤、着色剤、沈降防止剤、粘度調整剤等を併用することもできる。溶媒に対する疎水性酸化物微粒子の分散量は通常10?100g/L程度とすれば良い。乾燥する場合は、自然乾燥又は強制乾燥(加熱乾燥)のいずれであっても良いが、工業的には強制乾燥することがこのましい。乾燥温度は、熱接着層に影響を与えない範囲であれば制限されないが、通常は150℃以下、特に80?120℃とすることが好ましい。
【0034】
本発明の製造方法では、前記の付着工程中及び/又は付着工程後に積層体を加熱することもできる。積層体を加熱することにより熱接着層に対する疎水性酸化物微粒子の付着力(固定力)をより高めることができる。この場合の加熱温度Tは、熱接着層の種類等に応じて適宜設定することができ、通常は用いる熱接着層の融点Tm(溶融開始温度)℃に対してTm-50≦T≦Tm+50の範囲とすることが好ましい。また、本発明の包装材料には、公知の包装材料と同様に必要に応じて、エンボス加工、ハーフカット加工、ノッチ加工等を施しても差し支えない。
【実施例】
【0035】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0036】
実施例1?9及び比較例1?3
表1に示すような各タイプの熱接着層を有する積層体に対して疎水性酸化物微粒子を付着させたサンプルを作製した。具体的には下記のようにして各サンプルを作製した。
【0037】
(1)積層体の作製
【0038】
<ホットメルトタイプ>
厚み15μmのアルミニウム箔(1N30、軟質箔;ALと略称)の片面にポリウレタン系ドライラミネート接着剤(乾燥後重量3.5g/m^(2);Dと略称)を用いて、裏印刷(印刷と略称)を施した厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETと略称)の印刷面と貼り合わせ、基材層を作製した。この基材層のアルミニウム面にアンカーコート(主成分:ポリエステル系樹脂;ACと略称)処理を施した上、低密度ポリエチレン樹脂(LDPEと略称)を乾燥後膜厚20μmとなるように押出し積層した。さらに、低密度ポリエチレン上にホットメルト剤(ワックス35重量部、ロジン35重量部及びエチレン-酢酸ビニル共重合体30重量部;HMと略称)を乾燥後重量20g/m^(2)となるようにグラビアホットメルトコートした。これによって、「PET/印刷/D/AL/AC/LDPE/HM」なる構成の積層体を得た。
【0039】
<シーラントタイプ>
厚み15μmのアルミニウム箔(1N30、軟質箔;ALと略称)の片面にポリウレタン系ドライラミネート接着剤(乾燥後重量3.5g/m^(2);Dと略称)を用いて、裏印刷(印刷と略称)を施した厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETと略称)の印刷面と貼り合わせ、基材層を作製した。この基材層のアルミニウム面にアンカーコート(主成分:ポリエステル系樹脂;ACと略称)処理を施した上、低密度ポリエチレン樹脂(乾燥後膜厚20μm;LDPEと略称)を用いて厚み30μmのシーラントフィルム(主成分:メタロセン触媒ポリエチレン;シーラントと略称)を押出しラミネートした。これによって、「PET/印刷/D/AL/AC/LDPE/シーラント」なる構成の積層体を得た。
【0040】
<ラッカータイプ>
厚み15μmのアルミニウム箔(1N30、軟質箔;ALと略称)の片面にポリウレタン系ドライラミネート接着剤(乾燥後重量3.5g/m^(2);Dと略称)を用いて、裏印刷(印刷と略称)を施した厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETと略称)の印刷面と貼り合わせ、基材層を作製した。この基材層のアルミニウム面にポリウレタン系ドライラミネート接着剤(乾燥後重量3.5g/m^(2);Dと略称)を用いて、別途用意した厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETと略称)を貼り合わせた上、ヒートシールラッカー(主成分:アクリル樹脂+ポリエステル樹脂:ラッカーと略称)を乾燥後重量5g/m^(2)となるように塗布した。これによって、「PET/印刷/D/AL/D/PET/ラッカー」なる構成の積層体を得た。
【0041】
(2)疎水性酸化物微粒子の付着
疎水性酸化物微粒子(製品名「AEROSIL R812S」エボニック デグサ社製、BET比表面積:220m^(2)/g、一次粒子平均径:7nm)5gをエタノール100mLに分散させてコート液を調製した。このコート液を前記(1)で作製された積層体の熱接着層の面に乾燥後重量で0.3?1.0g/m^(2)となるようにグラビアコート方式又はバーコート方式で付与した後、100℃で10秒程度をかけて乾燥させてエタノールを蒸発させることにより、サンプル(包装材料)を得た。
【0042】
(3)疎水性酸化物微粒子からなる多孔質層の観察(確認)
実施例の包装材料において、疎水性酸化物微粒子からなる層の構造をFE-SEMにより観察した。その結果、いずれの包装材料についても、疎水性酸化物微粒子により形成された三次元網目構造を有する多孔質層が観察された。その一例として、実施例4(A)の観察結果を図3に示す。図3に示すように、熱接着層(シーラント)の上に黒色と白色が混ざった層が認められる。この白色の部分は疎水性酸化物からなる多孔質層である。このように、前記コート液を塗布及び乾燥することにより、疎水性酸化物微粒子からなる多孔質層が形成されることがわかる。
【0043】
試験例1(シール強度)
各実施例及び比較例で得られたサンプルについてシール強度を調べた。
【0044】
実施例1?6及び比較例1?2について
各包装材料から蓋材の形状(タブ付きの直径75mmの円形)に切り抜いた蓋材を用いて包装体を作製した。具体的には、フランジ付き紙/ポリエチレン製容器(フランジ幅3mm、フランジ外径70mm、高さ約55mm、内容積約130cm^(3)、厚み約300μmの紙にポリエチレン100μmをコーティングしたものをポリエチレンが容器内側になるように成形したもの)のフランジ上に前記蓋材をヒートシールすることによって包装体をそれぞれ作製した。前記ヒートシール条件は、温度160℃及び圧力1kg/cm^(2)で1秒間とした。各包装体上の蓋材のタブを開封始点からみて仰角45度の方向に100mm/分の速度で引っ張り、開封時の最大荷重をシール強度(N)とし、各包装体についてn=6点測定し、その平均値を求めた。その結果を表1に示す。
【0045】
実施例7?9及び比較例3について
各包装材料から蓋材の形状(タブ付きの縦62mm×横67mmの矩形)に切り抜いた蓋材を用いて包装体を作製した。具体的には、フランジ付きポリスチレン製容器(フランジ幅4mm、フランジ外径60mm×65mm□、高さ約48mm、内容積約100cm^(3)になるように成形したもの)のフランジ上に前記蓋材をヒートシールすることによって包装体をそれぞれ作製した。前記ヒートシール条件は、温度210℃及び圧力2kg/cm^(2)にて1秒間で2mm幅のリング(凹状)シール)とした。各包装体上の蓋材のタブを開封始点からみて仰角45度の方向に100mm/分の速度で引っ張り、開封時の最大荷重をシール強度(N)とし、各包装体についてn=6点測定し、その平均値を求めた。その結果を表1に示す。
【0046】
試験例2(密封性(パンク強度))
試験例1で作製した包装体を試験サンプルとし、{乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和54年4月16日厚生省令第17号)}の封緘強度試験法に準じて封緘強度試験を行った。但し、容器内に空気を流入し続け、空気漏れする時点の内圧(mmHg)を測定した。各包装体についてn=3点測定し、その平均値を求めた。その結果を表1に示す。
【0047】
試験例3(接触角)
各包装材料の熱接着層側を試験面とし、接触角測定装置(固液界面解析装置「Drop Master300」協和界面科学株式会社製)を用いて純水の接触角を測定した。その結果を表1に示す。
【0048】
試験例4(落下角)
各包装材料の熱接着層側を試験面とし、この面を上面として水平な平台にクリップで固定し、市販のヨーグルト(製品名「おいしいカスピ海」ソフトヨーグルト、グリコ乳業株式会社製1滴:約0.4g)を至近距離から垂らし、水平な平台を傾け、ヨーグルト液滴が転げ落ちたときの角度を求めた。その結果を表1に示す。なお、比較例1?3は、90度でも転げ落ちずに垂れ流れた。
【0049】
試験例5(輸送テスト)
試験例1で用いた包装体中に市販のヨーグルト(製品名「おいしいカスピ海」ソフトヨーグルト、グリコ乳業株式会社製)を100g(フランジ付き紙/ポリエチレン製容器)及び85g(フランジ付きポリスチレン製容器)それぞれ充填し、試験例1と同様にして蓋材をヒートシールをした。ヨーグルトを充填した包装体を1500kmの距離を長距離トラックで輸送した後、手指で蓋材を開封し、各蓋材の熱接着層側の面の状態を目視で観察した。その結果を表1に示す。なお、評価は、ヨーグルトの付着なしの場合は「◎」とし、周辺部に若干リング状の付着がある場合(付着面積割合20%以下)は「○」とし、付着がやや目立つ場合(付着面積割合20%超え90%未満)は「△」とし、ほぼ全面に付着が認められる場合(付着面積割合90%以上)は「×」とした。この場合、「◎」「○」が良好と評価される。
【0050】
【表1】

【0051】
表1の結果からも明らかなように、従来品(比較例)では非付着性は全く発揮されていないのに対し、本発明(実施例)では高い非付着性を発揮していることがわかる。また、シール強度、密封性(パンク値)の点においても実用上差し支えのない良好な性能を示していることがわかる。また、接触角及び落下角の結果からも、本発明の包装材料が高い非付着性を示すことがわかる。特に、本発明の包装材料の熱接着層側の最外面(疎水性酸化物微粒子が付着した面)は純水の接触角が150度以上を示し、従来の包装材料には見られない優れた内容物非付着性を有する。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくとも基材層及び熱接着層を有する積層体からなる蓋材であって、前記熱接着層が蓋材の一方の面の最外層として積層されており、前記熱接着層が他の層と隣接していない最外面に一次粒子平均径3?100nmの疎水性酸化物微粒子が付着し、疎水性酸化物微粒子が三次元網目状構造からなる多孔質層を形成しており、容器に内容物が充填され、その開口部と蓋材の熱接着層とが接するような状態で密封される蓋材であって、前記多孔質層が疎水性酸化物微粒子を溶媒に分散させてなる分散体を用いて熱接着層上に塗膜を形成した後に乾燥する方法により形成されており、
熱接着時において、熱接着される領域上に存在する疎水性酸化物微粒子は当該熱接着層中に埋め込まれる蓋材。
【請求項2】疎水性酸化物微粒子の付着量が0.01?10g/m^(2)である、請求項1に記載の蓋材。
【請求項3】疎水性酸化物微粒子のBET法による比表面積が50?300m^(2)/gである、請求項1又は2に記載の蓋材。
【請求項4】疎水性酸化物微粒子が疎水性シリカである、請求項1?3のいずれかに記載の蓋材。
【請求項5】疎水性シリカがその表面にトリメチルシリル基を有する、請求項4に記載の蓋材。
【請求項6】熱接着層側の最外面に内容物が接触可能な状態で当該内容物が蓋材と容器によって包装されてなる製品のために用いられる、請求項1?5のいずれかに記載の蓋材。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2014-03-25 
結審通知日 2014-03-27 
審決日 2014-04-09 
出願番号 特願2009-30750(P2009-30750)
審決分類 P 1 113・ 121- YA (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前田 知也  
特許庁審判長 河原 英雄
特許庁審判官 栗林 敏彦
紀本 孝
登録日 2009-07-24 
登録番号 特許第4348401号(P4348401)
発明の名称 蓋材  
代理人 清水 久義  
代理人 藤井 淳  
代理人 清水 義仁  
代理人 藤井 淳  
代理人 尾崎 英男  
代理人 上野 潤一  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ