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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1289098
審判番号 不服2012-20270  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-15 
確定日 2014-06-20 
事件の表示 特願2011-171539「表示制御装置及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月12日出願公開、特開2012- 8585〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・原査定の拒絶の理由

特許出願: 平成23年8月5日 (特願2005-222658号(出願日:平成17年8月1日)の分割出願)
拒絶理由通知: 平成24年1月20日(発送日:同年2月14日)
手続補正: 平成24年4月11日 (以下、「本願補正」という。)
拒絶査定: 平成24年6月21日(送達日:同年7月17日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成24年10月15日

そして、原査定の拒絶の理由は、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明は、本願出願前に国内又は外国において頒布された刊行物である特開平11-045078号公報(発明の名称:画像表示装置、 出願人:シャープ株式会社、 以下「引用例」という。)に記載された発明等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


第2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、本願補正によって補正された明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。

「表示対象となる画像データを表示する表示制御装置であって、
複数のファイル属性毎に、画像の画質を制御する画質制御情報を記憶する記憶手段と、
前記表示対象となる画像データのファイル属性を取得する取得手段と、
前記取得手段で取得したファイル属性に対応した画質制御情報を前記記憶手段から読み出し、その読み出された画質制御情報に基づいて、前記表示対象となる画像データの画質を制御する画質制御手段と、
前記画質制御手段で制御された画像データを表示する表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする表示制御装置。」(以下「本願発明」という。)


第3 引用例記載の事項・引用発明
これに対して引用例には、「画像表示装置」(発明の名称)に関し、次の事項(a)ないし(c)が図面とともに記載されている。

(a)
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これらの表示装置では、図7?図10に示すように、同一画面上に複数の画像情報が表示されたとき、使用者がある1つの画像に注目して画質調整を行うと、同時に表示されているすべての画像情報が変化してしまう。例えば図9のように文字表示情報とTV受信画像がオーバーレイ形態で表示される場合や図10のように、画面分割の場合で、TV受信機に対し輝度を上昇させた場合には、文字表示画面の部分も同時に輝度が上昇し、文字表示情報の視認性が低下してしまう問題点があった。
【0004】またTV受信画像、CD-ROM、MPEG再生画像等の画像は多階調表示情報であるが、文字放送、テキスト等の文字表示を行う場合は、2値情報であるため多階調表示情報と2値情報の視認性を両立させることができず、どちらか一方の視認性が低下してしまう問題点があった。
【0005】このように画像情報の種類により、最適な表示状態がそれぞれの画像情報の種類毎で、相違する。本発明は、このような現状を鑑みて視認性の低下を改善するためになされたもので、同一画面上に複数の画像信号が表示された時に、使用者が表示画面のそれぞれに対して、任意に画質調整を行うことができる画像表示装置を提供するものである。」

(b)
「【0016】表示される表示情報の種類をその表示情報のファイルの拡張子やファイル内部の情報を参照し、表示情報毎に画像調整可能な画像表示装置によりそれらの画像内容によって、画質調整が可能となる。」
(c)
「【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態1、実施形態2、および実施形態3について説明する。
(実施形態1)本実施形態1による構成概略図を図1に示す。複数の表示信号入力し、切換信号により、切換える表示信号を出力する画像入力部と、複数の表示信号の切換を行う機能と表示信号の入力識別信号を生成する機能を有する、入力切換制御部と、切換信号を収納するフレームメモリー部と、表示信号を変換する画像変換部と、画像変換部を操作するための操作部と表示部で構成される。以上の構成により、複数で入力されたそれぞれの表示信号に対して、個々の画像調整を行う。表示部の一画面上に複数の表示信号により形成される画像が同時に表示された場合でも、それぞれ表示信号に対して一度設定した画像調整内容を個別に再現し表示する。
【0021】本実施形態1を図2を参照して説明する。複数の表示信号入力し、切換信号により、切換える表示信号を出力する画像入力部ビデオボード2、CD-ROM3、HD4から構成されている。複数の表示信号の切換を行う機能と表示信号の入力識別信号を生成する機能を有する、入力切換制御部と各構成部の制御を行う機能を有する部分はCPU9、RAN10、ROM11から構成されている。
【0022】切換信号を収納するフレームメモリー部はフレームメモリー17から構成されている。表示信号を変換する画像変換部は、LUT6とD/A変換器1より構成されている。
【0023】表示部はCRT8より構成されている。操作部は入出力制御回路5とこれに入力するキーボード、マウス、リモコンより構成されている。以上の構成により、複数で入力されたそれぞれの表示信号に対して、個々の画像調整を行う。表示部の一画面上に複数の表示信号により形成される画像が同時に表示された場合でも、それぞれ表示信号に対して一度設定した画像調整内容を個別に再現し表示する。画像入力部はコンピューター・バス1にビデオボード2、CD-ROM3及びHD4を接続した構成となっている。ビデオボード2はアナログ映像信号(コンポジット、RGBコンポーネント)をデジタル化して、一画面以上の画像データを蓄積する機能を有した装置である。
【0024】CD-ROM3、HD4には静止画像データがデジタル化された状態で格納されている。これら画像入力部の各装置にはあらかじめID番号が設定される。操作部には入出力制御回路5に、キーボード、マウスまたはリモコンを接続することによって構成されている。画像変換部は、ルックアップテーブルLUT6及びD/A変換器7で構成される。LUT6は中間再現特性データを蓄積したEPROM等の不揮発メモリーが使用される。LUT6の代表的な入出力特性を図12、図13、図14、図15に示す。本実施形態1では画像データはRGB各々8ビットの階調値を持つ。各図は横軸に入力信号階調値(0?255)を、縦軸には出力信号階調値(0?255)を示している。このようにLUT6により、中間調再現特性を変換することを可能としている。LUT6は、このようにそれぞれの入出力特性に対応するように設定された変換テーブルがページを切換えることによって選択可能となるようあらかじめ準備されており、用意された変換特性の中から、所望の変換特性を得ることができる。勿論高速のSRAMを用いることも可能である。D/A変換器7はLUT6の後段に接続され、LUT6からのデジタル信号をアナログ信号に変換する。フレームメモリー部は、高速の32ビットデータ幅のDRAMを使用したフレームメモリー17で構成されており、これはデータの上部24ビットにRGB各色8ビットの画像データ、下位8ビットにそれらの画像データの画像変換ページ情報8ビットを格納する。CPU9を介して画像データの読み出しと書き込みが可能である。この構成により画像変換ページ情報として256通りが格納できる。表示部はCRT8によって構成されている。本実施形態ではCRTを表示部に用いたが、TFT-LCD等のフラットパネルディスプレイでも表示部を構成することができる。この場合、前記画像変換部にはD/A変換部7は不要となる。CPU9,RAM10及びROM11は制御部を構成しており、本発明の構成要素の制御を行う。勿論図1の構成概略図内の入力切換制御部の働きも含んでいる。ROM11にはCPU9が実行する画像調整プログラムと複数画像表示形態を決定するアドレス情報(以下画像表示領域アドレスと称す)が格納されている。RAM10は画像入力部の各装置のID番号とそれら装置が出力する画像データ毎に画像調整の設定結果を書き込み、読み出しすることが可能な記憶装置である。以上の各構成要素はコンピュータ・バス1に接続されている。
・・・
【0029】ステップ4は画像調整作業であり、使用者が、キーボード、マウスまたはリモコンでLUT6のページを切り換えることによって画像調整を行う。その調整内容と調整対象となった画像データを出力している画像入力部のID番号をRAM10に格納する。加えて調整の対象になった画像データがフレームメモリ17の上位24ビットデータに書き込まれると同時に、フレームメモリ17の下位8ビットデータに画像データの画像調整情報であるLUT6のページ番号が格納される。
【0030】次にステップ5に移り、調整をやり直すか否かの選択が行われる。使用者が調整のやり直しを選択すると、ステップ4の画像調整作業へ戻る。やり直さない場合、ステップ6に移り、他の画像入力部から出力される画像データについても、調整するか否かをCPU9からオンスクリーン表示を行うことにより使用者に問い合わせる。
【0031】他の画像入力部の装置から出力される画像データについても、調整することを選択した場合、ステップ2の調整画像選択作業に戻り上記の調整作業を繰り返す。他の画像については調整しない場合、CPU9は使用者に終了を通知し画像調整作業を終了する。
【0032】また、プログラム実行中、一作業終える毎に作業履歴がRAM10に格納されるので、使用者が誤動作により作業を終えてしまった場合でも作業履歴を参照することにより、画質調整作業の途中から再設定ができる。
【0033】これらの作業により、一画面に複数の画像を表示するときは、フレームメモリ17から画像データを読み出したと同時に、画像調整情報が読み出され、読み出された画像データの画素情報が、LUT6のアドレスデータとして入力され、画像調整情報であるLUT6のページ番号の情報がLUT6のページを切り換えることにより、画像調整した内容が表示された領域毎に再現される。
【0034】また、複数の画像データのうち一つだけを格納し、RAM10に格納されたID番号に対応したLUT6のページ番号でページを切り換えることにより、画像調整された個々の画像データに対して、一度設定した画像調整内容を再現できる。
【0035】従来は、複数の表示信号により表示部に形成される画像に対して画質調整を行った場合、表示部に表示されているすべての画像が調整の影響を受けていたが、本発明の画像表示装置では、使用者が同一画面上に複数の画像記憶装置から入力された画像情報が表示されたとき、表示画像のそれぞれに対して任意に画質調整を行うことができ、一画面上に同時に多数の情報が表示部に表示された時も、使用者は、それぞれの画質に対して最も好ましい画質を得ることができる。」


上記記載(a)ないし(c)、及び図面の第1?2,7?16図の記載から、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。

「複数の画像データを表示する画像表示装置であって、
複数のID番号に対応したページ番号により選択可能な中間再現特性データを蓄積したLUTと、
RAMに格納されたID番号に対応したLUTのページ番号でページを切り換えることにより、個々の画像データに対して、一度設定した画像調整内容を再現する画像変換部と、
画像データに対して一度設定した画像調整内容を個別に再現し表示する表示部と、
を備えたことを特徴とする画像表示装置。」(以下「引用発明」という。)


第4 対比・判断
(1)本願発明と引用発明とを、主たる構成要件毎に、順次対比する。

ア まず、引用発明における「複数の画像データを表示する画像表示装置」は、本願発明における「表示対象となる画像データを表示する表示制御装置」に相当する。

イ また、引用発明の「ID番号」とは、CD-ROM等の画像入力部の各装置にあらかじめ設定され、「調整対象となった画像データを出力している画像入力部」(段落【0029】)が何であるか、すなわち該「画像データ」ファイルの出自を示すものであるから、該「画像データ」ファイルの属性に関するものであるといえる。したがって、引用発明における「複数のID番号に対応したページ番号により選択可能な中間再現特性データを蓄積したLUT」は、本願発明における「複数のファイル属性毎に、画像の画質を制御する画質制御情報を記憶する記憶手段」に相当するといえる。

ウ さらに、引用発明は画像データの表示に際して、「ID番号に対応したLUTのページ番号でページを切り換える」のであるから、表示対象となる画像データのID番号(ファイル属性)を取得する何らかの取得手段を備えていることは明らかであり、該取得手段で取得したID番号を用いる、「RAMに格納されたID番号に対応したLUTのページ番号でページを切り換えることにより、個々の画像データに対して、一度設定した画像調整内容を再現する画像変換部」は、本願発明における「前記取得手段で取得したファイル属性に対応した画質制御情報を前記記憶手段から読み出し、その読み出された画質制御情報に基づいて、前記表示対象となる画像データの画質を制御する画質制御手段」に相当するといえる。

エ そして、引用発明における「画像データに対して一度設定した画像調整内容を個別に再現し表示する表示部」は、本願発明における「画質制御手段で制御された画像データを表示する表示制御手段」に相当する。

(2)してみると、両者の間に表現上の差異はあるにせよ、実質的な相違点は存在せず、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものといえる。
また、上記イに関し、仮に、ID番号がファイル属性に関するものとまでは直接いえないとしても、引用発明は「・・・画像は多階調表示情報であるが、文字放送、テキスト等の文字表示を行う場合は、2値情報であるため多階調表示情報と2値情報の視認性を両立させることができず、どちらか一方の視認性が低下してしまう」(段落【0004】)という問題点を解決しようとするものであり、しかも、引用例中に、「表示される表示情報の種類をその表示情報のファイルの拡張子やファイル内部の情報を参照し、表示情報毎に画像調整可能な画像表示装置によりそれらの画像内容によって、画質調整が可能となる。」(段落【0016】)とも記載されていることからして、引用発明におけるID番号に代えて、ファイルの拡張子に応じたLUTのページ切換えとすることも、当業者が容易になし得た程度のものといえる。


第5 請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、概略、以下のように主張しているので、検討する。
(1)請求人の主張の概要
「e)以上を整理してみると、上記引用文献1には、ファイルの画質をユーザが任意に調整できること、そしてその調整内容についてはそのファイルに対応付けて記憶すること、の技術が開示され、その結果、その画質調整を行ったファイルを次回表示させた場合には、前回の調整内容を反映した状態で表示できること、の効果が期待できるのみであり、この引用文献1にあっては、本願発明のように「複数のファイル属性毎に、画像の画質を制御する画質制御情報を記憶する記憶手段」の技術は勿論のこと、「前記表示対象となる画像データのファイル属性を取得する取得手段」と「前記取得手段で取得したファイル属性に対応した画質制御情報を前記記憶手段から読み出し、その読み出された画質制御情報に基づいて、前記表示対象となる画像データの画質を制御する画質制御手段」との技術についても一切開示していない。」

(2)検討
審判請求人は、引用発明が、「複数のファイル属性毎に、画像の画質を制御する画質制御情報を記憶する記憶手段」、「前記表示対象となる画像データのファイル属性を取得する取得手段」、及び「前記取得手段で取得したファイル属性に対応した画質制御情報を前記記憶手段から読み出し、その読み出された画質制御情報に基づいて、前記表示対象となる画像データの画質を制御する画質制御手段」を有さない旨の主張を行っているが、上記の「第4 対比・判断」において示したように、引用発明は実質的にこれらの手段のいずれをも備えたものである。

したがって、審判請求人の主張は採用できない。


第6 むすび
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以上のとおりであるから、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-03-03 
結審通知日 2014-03-25 
審決日 2014-04-10 
出願番号 特願2011-171539(P2011-171539)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 祐樹  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 中塚 直樹
小林 紀史
発明の名称 表示制御装置及びプログラム  

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