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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G21C
管理番号 1289143
審判番号 不服2012-19125  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-01 
確定日 2014-06-25 
事件の表示 特願2007-544749「沸騰水形原子炉の燃料集合体」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月15日国際公開、WO2006/061068、平成20年 7月 3日国内公表、特表2008-523363〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2005年11月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年12月9日、ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、平成23年10月25日付けで拒絶理由が通知され、平成24年1月31日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、その後、同年5月30日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、同年10月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成25年2月6日付けで、審判請求人に前置報告の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年5月8日付けで回答書が提出された。さらに、当審において、同年8月22日付けで拒絶理由が通知され、同年12月19日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出された。

第2 本願発明について
1.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年12月19日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「上側がフィルタ板(9)で閉鎖された燃料集合体脚部(2)と、燃料集合体頭部(1)と、複数の長尺燃料棒(3)と燃料集合体脚部から出発して延びる複数の短尺燃料棒(3a)から成り燃料集合体の脚部(2)と頭部(1)との間に配置された燃料棒束と、燃料棒束の内部に配置されたウォータチャネル(4)とを有する沸騰水形原子炉の燃料集合体において、
複数の短尺燃料棒(3a)が、それぞれ、前記フィルタ板(9)に結合され、かつ、フィルタ板(9)の上側に配設された、各短尺燃料棒を単独に保持するために設けた1つの個別の独立した保持部品に、軸方向に固定され、かつ前記短尺燃料棒(3a)が、軸方向嵌め込み様式のスナップ継手によって前記保持部品に固定されていることを特徴とする沸騰水形原子炉の燃料集合体。」

2.引用刊行物
(1)当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2002-156482号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付した。)

(a)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本出願の譲受人の最近の沸騰水型軽水炉(BWR)用デブリフィルタにおいては、デブリフィルタは、下部タイプレートと一体に鋳造される。しかしながら、穴の大きさ及び穴の間の小さい穴間距離のウェブは、インベストメント鋳造法の製造可能限界に極めて近く、フィルタを製造するのにしばしば手直しを必要とする。具体的には、燃料棒を支持する下部タイプレートグリッドのボス/ウェブ構造の底部における、冷却剤流れの方向に平行に延びる多数の穴を含む一体鋳造プレートが、デブリフィルタとして用いられてきた。この設計は、簡単でかつ頑丈でしかも下部タイプレートに追加の単片部品を付加しなくてよいが、デブリろ過孔の寸法を少しでも縮小すれば下部タイプレートの鋳造を極めて難しくする。従って、デブリフィルタの有効性を向上させながらその製造容易性及び組立性を改善し、同時にそのコストを削減し、圧力降下を実質的に増大させることなく、好ましくは圧力降下を減少させ、燃料集合体の熱流体設計の全体的な微調整に対する柔軟性もたせることができることが望まれる。」

(b)「【0010】
【発明の実施の形態】さて図面、それも特に図1に、全体を10で示す燃料組立体の代表的な実例を示す。燃料組立体10は、燃料チャンネル16と共に配置された核燃料集合体14を形成する複数の核燃料棒12を含む。棒12は、その上端で上部タイプレート18に接続され、またその下端で下部タイプレート22の1部分を形成する下部タイプレートグリッド20中に支持される。スペーサ18が、燃料集合体に沿って複数の垂直方向に間隔を置いた位置に配列され、燃料棒12の互いに対する横方向の間隔を保持する。下部タイプレートは、冷却水を受け入れるための入口ノズル24を含み、下部タイプレート22、タイプレートグリッド20を通して冷却水をそこから上方に送り、燃料棒の周りに流し蒸気を発生させる。
【0011】次ぎに図2には、本発明の好ましい実施形態に従って構成された下部タイプレート30を備える燃料棒支持構造体29を示す。下部タイプレート30は、水を受け入れるためにその下端に隣接したノズル31を含み、水を中間構造体33を通してまたタイプレートグリッド32を通して上方に流し、燃料棒12の周りに流す。図2に示すように、タイプレートグリッド32は、タイプレート30の上端に隣接して位置し、タイプレートグリッド32の上面及び下面の間に延びる円筒形のボス34の配列を含み、あとで述べるように、核燃料棒の円筒形のエンドプラグを受け入れ、核燃料棒を支持する。ボス34は、直線状の配列に配置され、ここでは10×10個の配列を示す。ボス34の中心線が、その実質的に正方形のマトリックスのコーナ部に配置される。正方形のマトリックスの側面を互いに接続し形成するのは、隣接する円筒形のボス34を結合するウェブ36である。図2を詳細に検討すれば分かるであろうが、ウェブの上部端縁38は、ボスの円筒形の上部端縁40より下方に窪んでいる。この構成にすることで、ウェブ36は、各正方形のマトリックスの側面に沿って形成された部分を持ち、円筒形のボス34の凸状の外方部分と共に冷却剤流れ開口42を形成することが分かるであろう。従って、冷却剤流れ開口42は、グリッドの上面及び下面の間で延びて、冷却剤を下部タイプレートの入口ノズルからグリッドを通して、下部タイプレート30に支持される燃料棒の周りを上方に流す。
【0012】デブリを捕捉する機能は、下部タイプレート30により支持されるフィルタプレート44により果たされる。図2に示すように、フィルタプレート44は、ボス34の穴48に対して同一の配列で配置される複数の穴46を含む。従って、フィルタプレート44が下部タイプレートグリッドに重なるとき、穴46は、ボス34を貫通する穴48と整合して、燃料棒の下部エンドプラグを受け入れるための組合せ開口になる。また、整合する穴は、水ロッド47のエンドプラグを受け入れるためにフィルタプレートおよびグリッドにも設けられる。
【0013】次ぎに図4には、フィルタプレート44の拡大図を示す。図示するように、フィルタプレート44は、穴46の間に複数の孔50を含む。本発明の好ましい実施形態において、フィルタプレートは、0.048インチ(1インチは、約2.54cm)の厚さを有するステンレスプレートからなり、0.094インチの中心間距離で0.0625インチの直径を有する千鳥状に配置された孔50を備える。フィルタプレートを貫通する孔50の数は、フィルタプレート44を貫通する各穴46に対して10個を超え、好ましくは15個を超える。各穴46の断面積は、各孔50の断面積の少なくとも15倍、好ましくは20倍である。図示するように、孔が6角形配列の場合には、各孔50は6つの周りの孔を有する。水が流れ易くするためには、フィルタプレートは、0.0287インチの直径の穴46を有する、1側が約5.070インチであるのが好ましい。孔50は、平方インチ当たりほぼ132個の穴を備え、プレートを貫通する少なくとも約30%の開口面積をもつ。プレート44を貫通する穴46の直径は、ボス34の内径に相当するので、フィルタプレート44をタイプレートグリッドに対して重ね合わせたとき、プレート44はボスの端縁40により完全に支持される。その結果、ボスとウェブとの間の流れ開口42は、孔50と直接整合している状態にある。さらに、ウェブの上部端縁は、ボスの上部端縁より下方に窪み、つまりフィルタプレート44の下側にあるので、フィルタプレートを貫通する流れ面積は、ボスの端縁40に重なり合う孔を除く各孔50を含む。ウェブ36の端縁38は、垂直方向に整合する孔を塞がない。
【0014】言うまでもなく、燃料集合体の燃料棒には、いろいろな種類がある。例えば、燃料棒の1部には、燃料集合体を下部タイプレートに固定するためのタイロッドを含むものがある。タイロッドを含むそれらの燃料棒は、それらの下端に、組合わさるボス内部の嵌まり合う雌ねじと螺合するようにねじが切られているエンドプラグを有する。従って、図5に示すように、タイロッド56のエンドプラグ58は、エンドプラグが収まるボスの嵌まり合う雌ねじ59と螺合するようにねじが切られた雄の突出部分57を有する。その上に、部分長の燃料棒もまた、使用する場合には、ねじが切られたエンドプラグを有する。その結果として、ボスを貫通する幾つかの数の付加的に選定された穴が、ねじが切られたエンドプラグを受け入れるために嵌まり合うようにねじが切られている。ボス34の残りの穴48は、平滑な側面を有する。従って、残りの燃料棒55は、対応する平滑な側面の穴の内部に摺動可能に受け入れられるように平滑な側面を備える端部突起62を持つエンドプラグ60を有する。
【0015】エンドプラグ58,60は、フィルタプレートの整合する穴46を貫通してボスの穴に受け入れられることが分かるであろう。平滑な側面を持つエンドプラグ60を有するそれらの燃料棒の場合には、エンドプラグの先細りの側面61が、フィルタプレート44を貫通する穴の縁に当たった状態で、エンドプラグは、プレート及びグリッドの整合する穴46及び48を貫通してそれぞれ受け入れられる。このように係合することと燃料棒の重量により、フィルタプレート44を下部タイプレートグリッドのボス34の上部端縁40上に押さえ付けてそれに当接させる。しかしながら、ねじが切られた雄の延長部分57を有するエンドプラグ58の先細りの表面63は、フィルタプレート44を貫通する穴46の縁から間隔を置いて配置される。つまり、エンドプラグとねじが切られたエンドプラグを受け入れるフィルタプレートを貫通する穴を形成する縁との間に離れた隙間がある。このことが、ねじが切られたエンドプラグを雌ねじが切られたボス中に固定するための裕度をもたらす。
【0016】従って、従来技術のデブリキャッチャと比較して穴の大きさをかなり縮小し、デブリの集積から生じる燃料集合体の故障を最少または排除するデブリ捕捉フィルタプレートが提供される。さらに、本発明の組立体は、容易に製造可能であり、また追加の部品を必要とせずにタイプレートと組立てられる。タイプレートと一体鋳造された従来技術のデブリキャッチャは、その関連の問題とともに、かくして排除される。
【0017】本発明を、現時点で最も実用的かつ好ましい実施形態であると考えられるもに関連して述べてきたが、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではなく、逆に、特許請求の範囲の技術思想及び技術的範囲に含まれる様々な変形形態及び均等構成を保護しようとするものであることを理解されたい。」

(c)「



(d)段落【0011】?【0017】及び図2?5に記載された「本発明の好ましい実施形態に従って構成された下部タイプレート30を備える燃料棒支持構造体29」は、段落【0010】及び図1に示される「燃料組立体の代表的な実例」において、「下部タイプレート22」を置き換えるものであることは明らかである。

(e)図2及び5から、「フィルタプレート44」が「タイプレートグリッド32」の上側に配置されていることは明らかである。

(f)図2及び3から、「水ロッド47」が複数の「核燃料棒12」の内部に配置されていることは明らかである。

してみると、上記記載事項から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「燃料チャンネル16と共に配置された核燃料集合体14を形成する複数の核燃料棒12と複数の核燃料棒12の内部に配置された水ロッド47とを含み、核燃料棒12は、その上端で上部タイプレート18に接続され、またその下端で下部タイプレート30を備える燃料棒支持構造体29に支持された沸騰水型軽水炉用の燃料組立体10において、
タイプレートグリッド32は、下部タイプレート30の上端に隣接して位置し、タイプレートグリッド32の上面及び下面の間に延び、核燃料棒12の円筒形のエンドプラグを受け入れ、核燃料棒12を支持する円筒形のボス34の配列を含み、ボス34を貫通する幾つかの数の付加的に選択された穴が、ねじが切られたエンドプラグを受け入れるために嵌まり合うようにねじが切られており、
フィルタプレート44は、タイプレートグリッド32の上側に配置され、ボス34の穴48に対して同一の配列で配置される複数の穴46を含み、フィルタプレート44がタイプレートグリッド32に重なるとき、穴46は、ボス34を貫通する穴48と整合して、燃料棒の下部エンドプラグを受け入れるための組合せ開口になり、
複数の核燃料棒12は、燃料棒と部分長の燃料棒とからなり、部分長の燃料棒のタイロッド56のエンドプラグ58は、エンドプラグが収まるボス34の嵌まり合う雌ねじ59と螺合するようにねじが切られた雄の突出部分57を有する、
沸騰水型軽水炉用の燃料組立体10。」

(2)当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平2-140689号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付した。)

(a)「3.発明の詳細な説明
〔発明の目的〕
(産業上の利用分野)
本発明は、原子炉の炉心部に装荷される燃料集合体に係り、特に燃料棒の上部が欠除した短尺燃料棒あるいは燃料棒の上部が固定されていない燃料棒の輸送中の移動、運転中での浮き上り、および回転を防止すべく改良された燃料集合体に関する。」(公報第2頁右下欄第3?11行)

(b)「(実施例)
本発明に係わる燃料集合体の一例の全体構成を第1図に示す。角筒状のチャンネル1内に、上下端が上部下部端栓11,14によって密封されている多数の燃料棒10を1列8本で8列にしたマトリックス状に収納配列し、燃料棒10の上端を上部タイプレート2にて、下端を下部タイプレート4にて夫々支持すると共に、上部、下部両タイプレート2,4間に適切な間隔で配設された複数のスペーサ6にて、燃料棒10相互を適宜間隔で保持して成る。燃料棒10の一部は、上部のみを欠除した短尺燃料棒10Aで構成されている。この短尺燃料棒10Aの配置は燃料集合体の核設計により変化するが、一例を第2図に示す。集合体の四隅に近い位置に短尺燃料棒10Aが組込まれている。
短尺燃料棒10Aの構造を第3図に示す。短尺燃料棒10Aの下部端栓7の丸軸部7Bの根元部分の径をわずかに細くしたくびれ部7Aを設けているのが特徴である。
第4図は短尺燃料棒10Aの下部端栓7に挿入されるべく位置の下部タイプレート4の挿入孔に、当該燃料を固定するために設けられる円筒型バネ20の概略を示したものである。この円筒型バネ20には、上下に複数のスリット21が入っており、上端部分22で外側に広がり、下端に近い部分で外側に突起23を有し、さらに中間部分では内側に突起24を有している。
自由状態における円筒型バネ20の外側へ広がっている上端部分22の外径および外側への突起23部分の外径は、下部タイプレート4挿入孔の内径より大きく、また円筒型バネ20の内側への突起24部分の内径は、下部端栓7の丸軸部7Bのくびれ部7Aの外径より若干小さくしている。
短尺燃料棒10Aが挿入されるべき位置の下部タイプレート4の挿入孔に円筒型バネ20を取付けた状態の断面図を第5図に示す。円筒型バネ20を下部タイプレート4の上部から挿入し取付ける。取付けた後では同図に示されているように円筒型バネ20は、上端部分22での外側への広がりおよび下端に近い部分での外側への突起23により、下部タイプレート4挿入孔内での上下方向の移動が防止される構造となっている。これに短尺燃料棒10Aの下部端栓7を挿入した状態の断面図を第6図に示す。円筒型バネ20の中間部分の内側への突起24と短尺燃料棒10Aの下部端栓7の丸軸部7Bの根元部分のくびれ部7Aとが嵌合している。これにより、短尺燃料棒10Aが集合体の上下方向に移動することが防止されている。
円筒型バネ20は、上下にスリットが入り板バネとなっており、下部タイプレート4挿入孔と短尺燃料棒10A下部端栓7とを上下方向に固定しつなぐ役目をしている。
本発明の燃料集合体の組立て手順を具体的に説明する。
(1)短尺燃料棒10Aが挿入されるべき位置の下部タイプレートの挿入孔に円筒型バネ20を上部から押込み取付ける。
(2)円筒型バネ20を取付けた位置に短尺燃料棒10Aを上部から挿入する。すなわち、円筒型バネ20内に短尺燃料棒10Aの下部端栓7を挿入する。円筒型バネ20の中間部分の内側への突起24と短尺燃料棒10Aの下部端栓7のくびれ部7Aとが嵌合するまで挿入する。
(3)その他の燃料棒を組立てる。
円筒型バネ20はどの位置の下部タイプレート4挿入孔にも装着可能な形状である。このことは核設計の変更にともない短尺燃料棒10Aの集合体内の位置が変更になったとしても、円筒型バネ20の下部タイプレート4挿入孔への装着位置を変更し、集合体を組立てることにより対応可能であり、下部タイプレートなどの燃料集合体の部品の設計変更をしなくてよい、また、短尺燃料棒10Aが何本になっても対応可能である。
〔発明の効果〕
燃料集合体の輸送中においての短尺燃料棒の移動を防止し、輸送中の燃料棒の健全性を維持できると共に、原子炉運転中での短尺燃料棒の浮き上りを完全に防止して下部タイプレートからの離脱を未然に、かつ確実に防止できる等の優れた効果を奏するものである。」(公報第2頁左下欄第16行?第3頁左下第15行)

(c)「



してみると、上記記載事項から、引用文献2には、短尺燃料棒10Aの下部端栓7を下部タイプレート4の挿入孔に挿入して固定する手段において、下部端栓7の丸軸部7Bの根元部分の径をわずかに細くしたくびれ部7Aと、下部タイプレート4の挿入孔に挿入し取り付けられた円筒型バネ20の中間部分の内側への突起24とが嵌合する構成とするという技術事項が記載されている。
そして、この「下部端栓7の丸軸部7Bの根元部分の径をわずかに細くしたくびれ部7Aと、下部タイプレート4の挿入孔に挿入し取り付けられた円筒型バネ20の中間部分の内側への突起24とが嵌合する構成」は、スナップ継手の一種であることは明らかであるから、結局、引用文献2には、「短尺燃料棒10Aの下部端栓7を下部タイプレート4の挿入孔に挿入して固定する手段において、下部端栓7の丸軸部7Bの根元部分の径をわずかに細くしたくびれ部7Aと、下部タイプレート4の挿入孔に挿入し取り付けられた円筒型バネ20の中間部分の内側への突起24とが嵌合する構成」というスナップ継手の一種を使用することが記載されている。

3.対比
(1)本願発明と引用発明との対比
(a)引用発明の「フィルタプレート44」、「燃料棒支持構造体29」、「上部タイプレート18」、「燃料棒」、「部分長の燃料棒」、「核燃料集合体14」、「水ロッド47」、「ボス34」及び「燃料組立体10」が、それぞれ、本願発明の「フィルタ板(9)」、「燃料集合体脚部(2)」、「燃料集合体頭部(1)」、「長尺燃料棒(3)」、「短尺燃料棒(3a)」、「燃料棒束」、「ウォータチャネル(4)」、「保持部品」及び「燃料集合体」に相当する。

(b)引用発明において、「フィルタプレート44は、タイプレートグリッド32の上側に配置され」ており、かつ、「タイプレートグリッド32は、下部タイプレート30の上端に隣接して位置し」ているから、「フィルタプレート44」は「燃料棒支持構造体29」の上側を閉鎖していることが明らかであり、また、「複数の核燃料棒12は、燃料棒と部分長の燃料棒とからな」っているから、引用発明の「燃料チャンネル16と共に配置された核燃料集合体14を形成する複数の核燃料棒12と複数の核燃料棒12の内部に配置された水ロッド47とを含み、核燃料棒12は、その上端で上部タイプレート18に接続され、またその下端で下部タイプレート30を備える燃料棒支持構造体29に支持された沸騰水型軽水炉用の燃料組立体10」は、本願発明の「上側がフィルタ板(9)で閉鎖された燃料集合体脚部(2)と、燃料集合体頭部(1)と、複数の長尺燃料棒(3)と燃料集合体脚部から出発して延びる複数の短尺燃料棒(3a)から成り燃料集合体の脚部(2)と頭部(1)との間に配置された燃料棒束と、燃料棒束の内部に配置されたウォータチャネル(4)とを有する沸騰水形原子炉の燃料集合体」に相当する。

(c)本願発明の「前記フィルタ板(9)に結合され」た「保持部品」は、平成25年12月19日付けの意見書で、請求人が主張するとおり、保持部品を備える格子板(6)がフィルタ板(9)上側面に置かれている構成に対応するものであり、
また、引用発明において、「タイプレートグリッド32は、下部タイプレート30の上端に隣接して位置し、タイプレートグリッド32の上面及び下面の間に延び、核燃料棒12の円筒形のエンドプラグを受け入れ、核燃料棒12を支持する円筒形のボス34の配列を含み、ボス34を貫通する幾つかの数の付加的に選択された穴が、ねじが切られたエンドプラグを受け入れるために嵌まり合うようにねじが切られており、フィルタプレート44は、タイプレートグリッド32の上側に配置され、ボス34の穴48に対して同一の配列で配置される複数の穴46を含み、フィルタプレート44がタイプレートグリッド32に重なるとき、穴46は、ボス34を貫通する穴48と整合して、燃料棒の下部エンドプラグを受け入れるための組合せ開口にな」ることから、「フィルタプレート44」が、「核燃料棒12を支持する円筒形のボス34」を含む「タイプレートグリッド32」の上側に配置された構成であることは明らかであるから、
引用発明は、本願発明の「前記フィルタ板(9)に結合され」た「保持部品」に相当する構成を備えているといえる。

(d)引用発明の「タイプレートグリッド32は、下部タイプレート30の上端に隣接して位置し、タイプレートグリッド32の上面及び下面の間に延び、核燃料棒12の円筒形のエンドプラグを受け入れ、核燃料棒12を支持する円筒形のボス34の配列を含み、ボス34を貫通する幾つかの数の付加的に選択された穴が、ねじが切られたエンドプラグを受け入れるために嵌まり合うようにねじが切られており、」「複数の核燃料棒12は、燃料棒と部分長の燃料棒とからなり、部分長の燃料棒のタイロッド56のエンドプラグ58は、エンドプラグが収まるボス34の嵌まり合う雌ねじ59と螺合するようにねじが切られた雄の突出部分57を有する」構成において、「ボス34を貫通する幾つかの数の付加的に選択された穴」に切られた「雌ねじ59」と「部分長の燃料棒のタイロッド56のエンドプラグ58」の「雄の突出部分57」に切られた「ねじ」とが螺合して、「部分長の燃料棒」が「ボス34」に固定されていることは明らかであるから、
引用発明の「タイプレートグリッド32は、下部タイプレート30の上端に隣接して位置し、タイプレートグリッド32の上面及び下面の間に延び、核燃料棒12の円筒形のエンドプラグを受け入れ、核燃料棒12を支持する円筒形のボス34の配列を含み、ボス34を貫通する幾つかの数の付加的に選択された穴が、ねじが切られたエンドプラグを受け入れるために嵌まり合うようにねじが切られており、」「複数の核燃料棒12は、燃料棒と部分長の燃料棒とからなり、部分長の燃料棒のタイロッド56のエンドプラグ58は、エンドプラグが収まるボス34の嵌り合う雌ねじ59と螺合するようにねじが切られた雄の突出部分57を有する」構成と、本願発明の「複数の短尺燃料棒(3a)が、それぞれ、」「各短尺燃料棒を単独に保持するために設けた1つの個別の独立した保持部品に、軸方向に固定され、かつ前記短尺燃料棒(3a)が、軸方向嵌め込み様式のスナップ継手によって前記保持部品に固定されている」構成とは、「複数の短尺燃料棒(3a)が、それぞれ、」「各短尺燃料棒を単独に保持するために設けた1つの個別の独立した保持部品に、軸方向に固定されている」構成で一致する。

(2)一致点
してみると、両者は、
「上側がフィルタ板(9)で閉鎖された燃料集合体脚部(2)と、燃料集合体頭部(1)と、複数の長尺燃料棒(3)と燃料集合体脚部から出発して延びる複数の短尺燃料棒(3a)から成り燃料集合体の脚部(2)と頭部(1)との間に配置された燃料棒束と、燃料棒束の内部に配置されたウォータチャネル(4)とを有する沸騰水形原子炉の燃料集合体において、
複数の短尺燃料棒(3a)が、それぞれ、前記フィルタ板(9)に結合されて、各短尺燃料棒を単独に保持するために設けた1つの個別の独立した保持部品に、軸方向に固定されている沸騰水形原子炉の燃料集合体。」で一致し、次の各点で相違する。

(3)相違点
(イ)本願発明では、「前記短尺燃料棒(3a)が、軸方向嵌め込み様式のスナップ継手によって前記保持部品に固定されている」のに対して、引用発明では、「ボス34を貫通する幾つかの数の付加的に選択された穴」に切られた「雌ねじ59」と「部分長の燃料棒のタイロッド56のエンドプラグ58」の「雄の突出部分57」に切られた「ねじ」とが螺合して、「部分長の燃料棒」が「ボス34」に固定されている点。

(ロ)本願発明では、「フィルタ板(9)の上側に配設された」「保持部品」であるのに対して、引用発明では、「フィルタプレート44」が、「核燃料棒12を支持する円筒形のボス34」を含む「タイプレートグリッド32」の上側に配置された構成である点。

4.判断
(1)相違点(イ)について
引用文献2には、「短尺燃料棒10Aの下部端栓7を下部タイプレート4の挿入孔に挿入して固定する手段において、下部端栓7の丸軸部7Bの根元部分の径をわずかに細くしたくびれ部7Aと、下部タイプレート4の挿入孔に挿入し取り付けられた円筒型バネ20の中間部分の内側への突起24とが嵌合する構成」というスナップ継手の一種を使用することが記載されており、また、一般に、固着手段において、スナップ継手、雌ねじと雄ねじとの螺合は、ともに、周知の手段であるから、
引用発明の「ボス34を貫通する幾つかの数の付加的に選択された穴」に切られた「ねじ」と「部分長の燃料棒のタイロッド56のエンドプラグ58」の「雄の突出部分57」に切られた「雌ねじ59」との螺合による固着に換えて、引用文献2に記載された「下部端栓7の丸軸部7Bの根元部分の径をわずかに細くしたくびれ部7Aと、他部タイプレート4の挿入孔に挿入し取り付けられた円筒型バネ20の中間部分の内側への突起24とが嵌合する構成」を採用して、上記相違点(イ)に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得ることである。

(2)相違点(ロ)について
沸騰水型原子炉の燃料集合体の燃料集合体脚部において、複数の燃料棒を保持する保持部品とフィルタを有し、かつ、フィルタの上側に保持部品を配設することは、特表2001-507129号公報(「下部連結板6」、「下部支持機構10」の「上流側の平面13」、第7頁第3?17行、図2,4,5参照)、特開平9-166675号公報(「下部タイプレート1b」、「デブリフィルタ10」、段落【0028】?【0035】、図1?6参照)、特開平8-43570号公報(「格子上部28」、「格子下部26」、段落【0022】?【0023】、図1?3参照)、特開平7-306284号公報(「格子上部28」、「格子下部26」、段落【0021】?【0023】、図1?3参照)、特開昭62-96891号公報(「燃料棒支持部43」、「金網53」、第3頁右下欄第8?13,16?19行、第5図参照)に示されるように周知技術であるから、引用発明において、「フィルタプレート44」が、「核燃料棒12を支持する円筒形のボス34」を含む「タイプレートグリッド32」の上側に配置された構成に換えて、「核燃料棒12を支持する円筒形のボス34」を含む「タイプレートグリッド32」を「フィルタプレート44」の上側に配置して、上記相違点(ロ)に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者が適宜なし得ることである。
なお、引用発明において、「核燃料棒12を支持する円筒形のボス34」を含む「タイプレートグリッド32」を「フィルタプレート44」の上側に配置しても、「フィルタプレート44」が「燃料棒支持構造体29」の上側を閉鎖していることに変わりはない。

(3)効果について
本願発明が奏し得る効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。
なお、請求人が、審判請求書の【請求の理由】【本願発明が特許されるべき理由】の「1.本願発明の説明」で「「燃料集合体脚部のフィルタ板への孔の設置およびブッシュのろう付けは不要となる。」効果を奏する。また、「フィルタ板に結合された保持部分は、比較的簡単に、例えば鋼板打抜き加工部品として形成でき、相応した安価な経費で製造できる。」効果を奏する。」と主張する効果は、「複数の短尺燃料棒(3a)が、それぞれ、前記フィルタ板(9)に結合され、かつ、フィルタ板(9)の上側に配設された、各短尺燃料棒を単独に保持するために設けた1つの個別の独立した保持部品に、軸方向に固定され、かつ前記短尺燃料棒(3a)が、軸方向嵌め込み様式のスナップ継手によって前記保持部品に固定されている」とのみ特定される本願発明が奏し得るものではない。

(4)結論
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第3 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-01-21 
結審通知日 2014-01-28 
審決日 2014-02-12 
出願番号 特願2007-544749(P2007-544749)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G21C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 洋平  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 北川 清伸
土屋 知久
発明の名称 沸騰水形原子炉の燃料集合体  
代理人 山口 巖  

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