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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1289541
審判番号 不服2012-20057  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-11 
確定日 2014-07-10 
事件の表示 特願2010-506259「ウエハーレベル光学部品を用いた自動焦点/ズームモジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成20年11月 6日国際公開、WO2008/133946、平成22年 7月22日国内公表、特表2010-525413〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2008年 4月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年 4月24日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年10月 7日付けで拒絶理由が通知され、平成24年 1月13日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年 6月 5日付けで拒絶査定され、これを不服として、同年10月11日に審判請求されるとともに手続補正書が提出されたものである。


第2 補正の却下の決定
平成24年10月11日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであり、特許請求の範囲の請求項1についての補正の内容は、以下のとおりである。

〈補正事項〉
請求項1についての本件補正は、平成24年 1月13日に提出された手続補正書による本件補正前の補正(以下「本件補正前の補正」という。)の請求項1に係る発明に、「前記集積回路画像取込装置が、第1レンズユニットの積層された複数のレンズの少なくとも1つの光学的特性を示すデータを含む」との構成を追加するものである。

2 補正の目的の適否及び新規事項の有無
上記補正事項は、出願当初明細書の【0028】の「さらに、ICD(200)は、光学積層体(210)と光学積層体(306)の少なくとも1つの光学特性を示すデータを含む。本情報をICD(200)のプログラミングコードに提供することにより、被写界深度向上(EDOF:enhanced depth of field)及び光学不良補正(OFC:optical fault correction)等のソフトウェアの使用が促進される。・・(略)・・」との記載を根拠に、補正前の請求項1に、上記「前記集積回路画像取込装置が、第1レンズユニットの積層された複数のレンズの少なくとも1つの光学的特性を示すデータを含む」との構成を追加する、限定的な減縮を行うものであり、出願当初明細書に記載された事項の範囲内においてなされた補正であることは明らかである。

したがって、本件補正は、特許法17条の2第3項及び5項2号に規定する要件を満たすものである。

そこで、以下、本件補正後の特許請求の範囲に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定を満たすか)否かについて、請求項1に係る発明について検討する。

3 独立特許要件を満たすか否かの検討
(1)本願補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
基板と、
前記基板に取り付けられるとともに、光センサのアレイを上面に有する集積回路画像取込装置と、
前記画像取込装置の前記上面に強固に固定された第1レンズユニットと、
第2レンズユニットと、
前記基板に取り付けられるとともに、前記第1レンズユニットの上方に前記第2レンズユニットを調節可能に支持するレンズアクチュエータを含み、
前記第1レンズユニットが、さらに、積層された複数のレンズを含み、前記第2レンズユニットが、積層された複数のレンズを含み、
前記集積回路画像取込装置が、第1レンズユニットの積層された複数のレンズの少なくとも1つの光学的特性を示すデータを含む
ことを特徴とするカメラモジュール。」

(2)原査定の拒絶の理由の概要と引用文献の表示
ア 拒絶の理由の概要
「[理由3]
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」(平成23年10月 7日付け拒絶理由通知)
「平成23年10月 7日付け拒絶理由通知書に記載した理由3によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。
備考
・請求項1及び4?6に対して
引用文献1に記載された発明においては、
「プリント基板11」に「撮像素子」が「実装され」、「第3レンズ3には、撮像素子8に当接する当接部3dが形成され…この当接部3dにより第3レンズ3は、撮像素子8との光軸方向の間隔を直接的に決めることができるようになって…この第3レンズ3は、ボス3cが一体で形成されプリント基板11に形成された穴を貫通してプリント基板11と接着剤Bにより接着固定され…これにより光軸と直交する方向の位置決めがなされ」
ているのであり、「第3レンズ」と「撮像素子」とは間隔を直接的に決めることができるほどの形態にて位置決めされているのであるから、両者は強固に固定されているのであると解される。・・(略)・・」(平成24年 6月 5日付け拒絶査定)

イ 引用された引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献は、次のとおり。
「 引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2005-148109号公報
2.特開平7-181389号公報
3.特開2005-266129号公報
4.特開2006-276897号公報」

(3)引用刊行物の記載事項
原査定で引用された引用文献1?4の内、引用文献1,2に記載された事項は以下のとおり。

ア 原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開2005-148109号公報公報(以下「刊行物1」という。)には、「撮像装置及び該撮像装置を備えた携帯端末」(発明の名称)に関して、図1?3とともに、次の記載がある。
(なお、下線は、当審で付加したものである。以下同様。)

(刊1ア)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関し、特に携帯端末等に内蔵される小型で薄型の撮像装置の焦点調節機構に関するものである。
【背景技術】・・(略)・・
【003】
これらの撮像装置に使用される撮像素子としては、CCD(CHarge Coupled Device)型イメージセンサやCMOS・・(略)・・等の固体撮像素子が使用されている。」

(刊1イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】・・(略)・・
【0011】
本発明は上記問題に鑑み、小型化に好適で、簡単な構成及び簡単な駆動方法により低コストで、マクロ撮影のために撮像光学系を移動させても姿勢差のない正確な位置決めが可能な撮像装置を得ることを目的とするものである。」

(刊1ウ)「【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、撮像素子と、撮像光学系と、撮像光学系の少なくとも一部を光軸方向に移動させるアクチュエータと、少なくとも撮像素子と撮像光学系を内包する外枠部材と、を有し、アクチュエータは、コイルと磁石で構成され、外枠部材の側周面に、アクチュエータの少なくとも一部を周回して配置した撮像装置、とすることにより、アクチュエータを体積効率よく周囲に配置でき、小型化できると共に、ユニット全体が異形化せず、携帯端末等の小型の電子機器への内蔵を容易とする外形に収めることができるようになる。更に、コイルへの通電により発生する磁界と磁石とによる吸着力又は斥力を利用することで、簡単な構成及び簡単な駆動方法により低コストで、マクロ撮影可能な撮像装置を得ることが可能となる。更に、撮像光学系の移動を手動で行うのと異なり、外部との機械的連動機構を要しないため、撮像装置内部を封止することも可能になり、外部からの塵の侵入を防止することができる。 」

(刊1エ)「【0032】
図1は、本発明の撮像装置を内蔵した携帯端末の一例である携帯電話機Tの外観図である。
【0033】・・(略)・・
【0035】
(第1の実施の形態)
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置100の斜視図である。この撮像装置100が図1に示す撮像装置Sに相当する。
【0036】
図2に示すように撮像装置100の外表面は、撮像素子の実装されたプリント基板11と、携帯端末の他の基板に接続のためのコネクト基板17、このプリント基板11とコネクト基板17を接続するフレキシブルプリント基板FPC、外枠部材12、この外枠部材12の上面に組み込まれ、被写体光が入射するための開口部7を有する蓋部材14で構成されている。
【0037】
図3は、本発明の撮像装置100を図2に示すF-F線で切断した断面図である。同図は、撮像光学系の光軸Oを境に、右側は撮像光学系の焦点を過焦点距離に合わせた状態を示し、左側は撮像光学系の焦点を被写体側に所定量移動させ近距離に焦点を合わせた状態を示している。
【0038】
同図において、外枠部材12の内部は、第1レンズ1、撮像光学系の開口F値を決める開口絞り4、第2レンズ2、不要光遮断のための固定絞り5、第3レンズ3、で構成された撮像光学系50と、赤外光を遮断するための赤外カットフィルタ7、プリント基板11上に実装された撮像素子8、弾性部材である圧縮コイルバネ9、蓋部材14で構成されている。また外部では、外枠部材12とプリント基板11、外枠部材12と蓋部材14は、例えば紫外線硬化型の接着剤Bによりその周囲が封止されている。
【0039】
図示のように第1レンズ1、第2レンズ2は、光学有効面以外のフランジ部で相互に当接され、接着剤等で互いに固着することでユニット化されており、他の部材を介さず構成することで、相互のレンズ間隔を誤差無く組み立てることができるようになっている。
【0040】
レンズ3には、撮像素子8に当接する当接部3dが形成されている。この当接部3dにより第3レンズ3は、撮像素子8との光軸方向の間隔を直接的に決めることができるようになっている。更に、撮像素子8側に赤外カットフィルタ7が接着剤Bにより接着固定されている。この第3レンズ3は、ボス3cが一体で形成されプリント基板11に形成された穴を貫通してプリント基板11と接着剤Bにより接着固定されている。これにより光軸と直交する方向の位置決めがなされる。
【0041】
更に、第3レンズ3の被写体側にはリング状の凸部3tが形成されており、この凸部3tと嵌合するように第2レンズ2にリング状の溝部2mが形成されている。この嵌合部により、第3レンズ3に対して、一体化された第1レンズ1及び第2レンズ2は光軸方向への移動が可能となっている。なお、この嵌合部は少なくとも2箇所のボスとこれに嵌合する穴部で形成することでもよい。
【0042】
第2レンズ2には弾性部材である圧縮コイルバネ9が掛けられ、第1レンズ1及び第2レンズ2を撮像素子8の方向に付勢している。更に、図示のように本発明に係るアクチュエータであるリング状の磁石21が接着固定されている。
【0043】
また、外枠部材12の内周面には、本発明に係るアクチュエータである筒状に形成されたコイル22が周回して固定されており、コイル22は図示しないプリント基板11又はフレキシブルプリント基板FPCの接続端子と接続され電気的に断続できるようになっている。
【0044】
以上のように構成された撮像装置100の動作について説明する。
【0045】・・(略)・・
【0048】
即ち、図3に示す撮像装置は、外枠部材12の内周面に周回して配置されているコイル22に通電を行わない時は、圧縮コイルバネ9の付勢力で第1レンズ及び第2レンズ2を第3レンズ3に当接させることにより撮像素子8側に位置させて過焦点距離に焦点の合った状態とし、磁石21とコイル22の間で斥力の生じる方向に磁界が発生するようコイル22に通電することで付勢力に抗して第1レンズ及び第2レンズ2を蓋部材14に当接するまで移動させ近距離側に焦点の合った状態とするものである。」

(刊1オ)図1には、撮像装置を内蔵した携帯電話機の外観が、図2には、撮像素子の斜視図が、そして、図3には、撮像装置の断面図が示されており、図の符号を参照すれば、図3からは、外枠部材12の内部に、第1レンズ1、第2レンズ2、第3レンズ3、撮像素子8、コイルバネ9、リング状の磁石21,コイル22が配置され、外枠部材12上部に配された蓋14の下に、物体側から順に第1レンズ1、第2レンズ2、第3レンズ3、及び撮像素子8が配置されている。
また、蓋14と第2レンズ2の周囲外方に向けた突起との間にコイルバネ9が、第2レンズ2の上部周囲に磁石21が,外枠部材12の内周面に張り出された突起上にコイル22が配置されており、さらに、第3レンズの当接部材3dとFPC11との間に撮像素子が挟まれた状態で、第3レンズのボス3cがFPC11を突き抜けて、FPC11の裏面と前記突き抜けたボス3cの周囲に接着剤Bが配されていることが看取できる。

上記記載によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「外表面が、CCD型イメージセンサ等の撮像素子8の実装されたプリント基板11と、外枠部材12、この外枠部材12の上面に組み込まれ、被写体光が入射するための開口部7を有する蓋部材14で構成され、外枠部材12とプリント基板11、外枠部材12と蓋部材14が、紫外線硬化型の接着剤Bによりその周囲が封止され、
前記外枠部材12の内部に、物体側から第1レンズ1、第2レンズ2、第3レンズ3で構成された撮像光学系50と、前記プリント基板11上に実装された前記撮像素子8と、弾性部材である圧縮コイルバネ9と、アクチュエータであるリング状の磁石21と、アクチュエータである筒状に形成されたコイル22とが配置された携帯端末に内蔵する撮像装置であって、
前記第1レンズ1、第2レンズ2は、光学有効面以外のフランジ部で相互に当接され、接着剤等で互いに固着することでユニット化され、
前記第3レンズ3には、撮像素子8に当接する当接部3dが形成され、この当接部3dにより、第3レンズ3と撮像素子8との光軸方向の間隔を直接的に決め、ボス3cが一体で形成されプリント基板11に形成された穴を貫通してプリント基板11と接着剤Bにより接着固定されることにより、光軸と直交する方向の位置決めがなされ、
前記第2レンズ2には、弾性部材である圧縮コイルバネ9が掛けられ、第1レンズ1及び第2レンズ2を撮像素子8の方向に付勢し、さらに、アクチュエータであるリング状の磁石21が接着固定され、
前記外枠部材12の内周面に張り出された突起上には、アクチュエータである筒状に形成されたコイル22が周回して固定され、コイル22はプリント基板11の接続端子と接続され電気的に断続でき、
外枠部材12の内周面に周回して配置されているコイル22に通電を行わない時は、圧縮コイルバネ9の付勢力で第1レンズ及び第2レンズ2を第3レンズ3に当接させることにより撮像素子8側に位置させて過焦点距離に焦点の合った状態とし、磁石21とコイル22の間で斥力の生じる方向に磁界が発生するようコイル22に通電することで付勢力に抗して第1レンズ及び第2レンズ2を蓋部材14に当接するまで移動させ近距離側に焦点の合った状態とする、
携帯端末に内蔵する撮像装置。」

イ 原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用された、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開平7-181389号公報(以下「刊行物2」という。)には、「コンパクトなマクロレンズ」(発明の名称)に関して、図1とともに、次の記載がある。
(刊2ア)「【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明に係るマクロレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1群と,負の屈折力を有する第2群とから成り、前記第1群は、物体側から順に負の屈折力を有する第1-1レンズ成分と,正の屈折力を有する第1-2レンズ成分とから構成され、前記第2群は、最も物体側に正の屈折力を有する第2-1レンズ成分を備え、前記第1群は、少なくとも1面の非球面を有する撮影光学系において、無限遠物体側から近接物体側へのフォーカシングに際して、前記第1群が絞りと共に物体側へ移動することを特徴とし、以下の条件式(1),(2)を満足することを特徴とする。」

(刊2イ)「【0029】図1,図3及び図5は、前記実施例1,実施例2及び実施例3にそれぞれ対応する無限遠物体距離の撮影状態におけるレンズ構成図であり、その無限遠物体撮影状態から最近接物体撮影状態(撮影倍率:-1.0)へのフォーカシングに際する第1群(絞りSを含む。)Gr1及び第2群Gr2の移動をそれぞれ矢印で示している。」

(刊2ウ)図1は、実施例1のレンズ構成図であり、Gr1-1、Gr1-2の2枚のレンズから成るGr1に対して、左斜め下に向けた矢印が、また、Gr2-1、他2枚の計3枚のレンズから成るGr2に対して、真下に向けた矢印が記載されている。


(4)対比
ア 本願補正発明と引用発明との対比
(ア)引用発明の「プリント基板11」及び「携帯端末に内蔵する撮像装置」は、本願補正発明の「基板」及び「カメラモジュール」に相当する。
(イ)引用発明の「CCD型イメージセンサ等の撮像素子8」において、CCD型イメージセンサ自体は、フォトダイオードアレイに対して、トランスファーゲート、レジスター等の各種回路構成を集積化したものであることは周知の事項であるから、引用発明の「CCD型イメージセンサ等の撮像素子8」及び「撮像素子8」は、本願補正発明の「光センサのアレイを上面に有する集積回路画像取込装置」に相当する。
(ウ)引用発明の「光学有効面以外のフランジ部で相互に当接され、接着剤等で互いに固着することでユニット化され」た「第1レンズ1、第2レンズ2は」、第3レンズ3よりも物体側にあるから、引用発明の「ユニット化された「第1レンズ1、第2レンズ2」は、本願補正発明の「第2レンズユニット」であって、「第2レンズユニットが、積層された複数のレンズを含む」ことに相当する。
(エ)引用発明の「第3レンズ3」は、「撮像素子8に当接する当接部3dが形成され、この当接部3dにより、第3レンズ3と撮像素子8との光軸方向の間隔を直接的に決め、ボス3cが一体で形成されプリント基板11に形成された穴を貫通してプリント基板11と接着剤Bにより接着固定されることにより、光軸と直交する方向の位置決めがなされ」ていることから、第3レンズ3と撮像素子8とは、第3レンズ3により「光軸方向の間隔を直接的に決め」ており、更に「光軸と直交する方向の位置決めがなされ」ているものである。
そして、第3レンズ3と撮像素子8とは、光軸方向及びその直交方向に対して、位置決めがなされた後に、その位置がズレれば、画像処理に影響が出るのが通常であり、前記位置決めに際しては、位置ズレが生じない程度に「強固に固定」していることは明らかである。また、本願補正発明において、「強固に固定」するための具体的な手段が特定されているものでもない。
したがって、引用発明の「撮像素子8に当接する当接部3dが形成され、この当接部3dにより、第3レンズ3と撮像素子8との光軸方向の間隔を直接的に決め、ボス3cが一体で形成されプリント基板11に形成された穴を貫通してプリント基板11と接着剤Bにより接着固定されることにより、光軸と直交する方向の位置決めがなされ」た「第3レンズ3」は、本願補正発明の「画像取込装置の前記上面に強固に固定された第1レンズユニット」に相当する。
(オ)引用発明では、上記(ウ)のように、第3レンズ3の上方(物体側)にユニット化された第1レンズ1及び第2レンズ2が配置されており、また、「第2レンズ2には、弾性部材である圧縮コイルバネ9が掛けられ、第1レンズ1及び第2レンズ2を撮像素子8の方向に付勢し、さらに、アクチュエータであるリング状の磁石21が接着固定され、前記外枠部材12の内周面に張り出された突起上には、アクチュエータである筒状に形成されたコイル22が周回して固定され、コイル22はプリント基板11の接続端子と接続され電気的に断続でき、外枠部材12の内周面に周回して配置されているコイル22に通電を行わない時は、圧縮コイルバネ9の付勢力で第1レンズ及び第2レンズ2を第3レンズ3に当接させることにより撮像素子8側に位置させて過焦点距離に焦点の合った状態とし、磁石21とコイル22の間で斥力の生じる方向に磁界が発生するようコイル22に通電することで付勢力に抗して第1レンズ及び第2レンズ2を蓋部材14に当接するまで移動させ近距離側に焦点の合った状態とする」ことから、引用発明の「圧縮コイルバネ9」、「リング状の磁石21」及び「筒状に形成されたコイル22」は、3者が共働して、第2レンズ2を支持すると共に、第3レンズ3の上方(物体側)で、ユニット化された第1レンズ1及び第2レンズ2を、第3のレンズに対して当接/離間を行わせるアクチュエータである。
したがって、引用発明の「圧縮コイルバネ9」、「リング状の磁石21」及び「筒状に形成されたコイル22」と、本願補正発明の「基板に取り付けられるとともに、前記第1レンズユニットの上方に前記第2レンズユニットを調節可能に支持するレンズアクチュエータ」とは、「第1レンズユニットの上方に前記第2レンズユニットを調節可能に支持するレンズアクチュエータを含」む点で一致する。

イ 一致点及び相違点
上記「ア(ア)」?「ア(オ)」から、本願補正発明と引用発明の一致点と相違点は、次のとおりとなる。

(ア) 一致点
「基板と、
前記基板に取り付けられるとともに、光センサのアレイを上面に有する集積回路画像取込装置と、
前記画像取込装置の前記上面に強固に固定された第1レンズユニットと、
第2レンズユニットと、
前記第1レンズユニットの上方に前記第2レンズユニットを調節可能に支持するレンズアクチュエータを含み、
前記第1レンズユニットが、レンズを含み、前記第2レンズユニットが、積層された複数のレンズを含む、
カメラモジュール。」

(イ) 相違点
相違点1:「第1レンズユニット」が、本願補正発明では、「積層された複数のレンズを含」むのに対して、引用発明は、1枚である点。

相違点2:「レンズアクチュエータ」が本願補正発明では、「基板に取り付けられ」ているのに対して、引用発明では、アクチュエータの一部である「筒状に形成されたコイル22」が、「前記外枠部材12の内周面に張り出された突起上」に「周回して固定され」ている点。

相違点3:「集積回路画像取込装置」が本願補正発明は、「第1レンズユニットの積層された複数のレンズの少なくとも1つの光学的特性を示すデータを含む」のに対して、引用発明には、そのような特定がなされていない点。

(5) 相違点の判断
ア 相違点1について
マクロ撮影を行うためのレンズ構成として、それぞれが複数のレンズからなる2つのレンズ群であって、フォーカシングに際して、物体側へ移動させるレンズ群を物体側の第一群のみとすることは、上記刊行物2に記載されているように周知の技術事項であり、「マクロ撮影のために撮像光学系を移動させても姿勢差のない正確な位置決めが可能な撮像装置を得ることを目的」(刊行物1の記載事項(刊1イ))とする引用発明に、当該周知の事項を適用しようとすることは当業者ならば、容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
本願の出願当初明細書には、レンズアクチュエータの基板への取り付けに関し、次の記載があり、基板への取り付け方について他に具体的な説明は認められない。
「【0023】
基部(206)は、PCB(202)上とICD(202)の周辺端部に直接的に形成される硬質基板であり、アクチュエータ(214)とハウジング(208)を支持する。基部(206)は、幾つかの手段のうち任意の手段によって形成されることができる。例えば、基部(206)は、予め形成されてからPCB(202)に接着されることができる。代わりに、基部(206)は、ICD(200)と光学積層体(210)がPCB(202)に固定された後に、PCB(202)に直接的に成形されることもできる。他の代替手段として、基部(206)とアクチュエータ(214)は、単一部品として一体化されることができる。・・(略)・・」
上記記載には、レンズアクチュエータが、基板上に取り付けた基部の上か、或いは基部と一体化することが説明されており、これは、レンズアクチュエータとして機能する部位が、基部206の高さに相当する分だけ基板から所定高さ高くなっている場所に形成される例が示されているだけであり、基板への取り付け方自体に格別な説明は認められない。
一方、引用発明では、「外枠部材12の内周面に張り出された突起上に」、「アクチュエータ」の一部を構成する「筒状に形成されたコイル22が周回して固定され」ているが、当該コイルは、導通により「磁石21」と斥力を働かせることができる位置に配置されていれば良いことは明らかであり、その下端が、外枠部材12内部の何処に固定されるかは、内部構造に応じて適宜設定されるものあり、必ずしも「外枠部材の突起」上に配置せずに、直接プリント基板に配置することも、その実施化にあたって適宜設定する設計事項にすぎないものである。
したがって、上記相違点2に係る構成を引用発明に採用することは、当業者ならば容易に想到し得たことである。

ウ 相違点3について
CCD等の固体撮像素子と、メモリ、CPU等の各種周辺回路・素子を集積化することは、特開2006-340173号公報の下記記載のように周知の事項であり、また、取り込んだ画像データを補正するためのデータとして、レンズ等光学部品の光学的特性を示すデータを記憶しておき、これを用いることも、特開平10-327344号公報の下記の記載事項のように周知の事項であるから、引用発明において、補正データの記憶部と撮像素子とを集積化することは、その必要とされる画像の質(画像信号処理)と周辺回路の大きさ、設置領域、レンズ交換(撮像装置の交換)、費用対効果等に応じて適宜設計される事項であり、当業者ならば容易に想到し得たことである。

<周知例の記載事項>
周知例1:特開2006-340173号公報
・「【0014】
図1において、撮像素子10は、撮像素子駆動部(図示せず)の指示にしたがって、撮像した画像をアナログ信号(画素単位)としてPGA11に順次出力する。
メモリ15は、撮像素子の欠陥画素情報を格納している。欠陥画素に関する情報としては、欠陥画素アドレス、補正ゲイン値、オフセット補正値、欠陥の種類等がある。・・(略)・・」
・「【0018】
また、第1の実施形態では、撮像素子10、PGA11、A/D変換器12、デジタル処理部13、制御部14、メモリ15を別個に設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばPGA11とA/D変換器12を一体化してもよいし、PGA11とA/D変換器12と制御部14を一体化してもよいし、PGA11とA/D変換器12と制御部14とメモリ15を一体化してもよい。極言すれば、メモリ15を含めて全てを撮像素子10内に設けてもよい。」

周知例2:特開平10-327344号公報
・「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えばCCDカメラのような撮像装置及びこの撮像装置で撮像された画像データを予め作成された光学特性補正データおよび補正プログラムにより補正して、光学系の欠陥による撮像画像の歪みなどを補正して画像表示する画像データ補正方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図15は、例えば特開平7-131701号公報に示された光学部品の光学特性の補正機能を備えた従来の撮像装置である。図において、1は光学部品であるズームレンズ、150はズームレンズ1の焦点距離を検出する焦点距離検出部、151はズームレンズ1のFドロップ特性データを格納した特性データメモリである。
【0003】・・(略)・・
【0004】光学部品の光学特性の補正機能を備えた従来の撮像装置は上記のように構成され、その補正方法としてはまず、ズームレンズ1の焦点距離に対する光量変化特性をデジタルデータとして予め特性データメモリ151に格納しておく。焦点距離検出部150はズームレンズ1の焦点距離を検出し、焦点距離信号を出力する。」
・「【0018】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.図1はこの発明の一実施の形態を示す撮像装置の構成図である。図において、1は光学部品で光学部品1を通った図示しない撮像対象の画像がCCD等の撮像素子2の撮像面に結像するように配置されている。撮像素子2からのアナログ画像データはA/D変換器3でデジタル信号に変換されて第1の記憶手段としてのRAM4に格納される。
【0019】第2の記憶手段としてのROM5には補正テーブルとして光学部品1の光学特性光学特性補正データが、そして補正プログラムが予め格納されており、この光学特性補正データと補正プログラムを用いてRAM4の画像データは画像処理手段としてのCPU6により補正処理される。CPU6により補正されたデジタル補正画像データは、D/A変換器7によりアナログ画像信号に変換され、モニター8に出力されて画像表示される。」

エ そして、上記相違点1?3のそれぞれに基づく格別な効果は、認められず、また、相違点1?3により相乗的な効果を奏するものとも認められない。

(6) まとめ
以上のとおり、引用発明において、上記相違点1?3に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到できたものであり、本願補正発明は、刊行物1に記載された引用発明並びに刊行物2及び周知例1?2に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 補正の却下の決定の結論
したがって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明
1 上記「第2 補正の却下の決定」での検討のとおり、平成24年10月11日に提出された手続補正書による本件補正は却下されたので、本願の請求項1?17に係る発明は、本件補正前の平成24年 1月13日に提出された手続補正書により補正された請求項1?17に記載されたとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
基板と、
前記基板に取り付けられるとともに、光センサのアレイを上面に有する集積回路画像取込装置と、
前記画像取込装置の前記上面に強固に固定された第1レンズユニットと、
第2レンズユニットと、
前記基板に取り付けられるとともに、前記第1レンズユニットの上方に前記第2レンズユニットを調節可能に支持するレンズアクチュエータを含み、
前記第1レンズユニットが、さらに、積層された複数のレンズを含み、前記第2レンズユニットが、積層された複数のレンズを含むことを特徴とするカメラモジュール。」

2 引用刊行物の記載事項
刊行物1の記載事項及び刊行物2の記載事項については、前記「第2 3 (3)」のとおりである。

3 対比・判断
前記「第2 1」及び「第2 2」で検討したように、本願補正発明は、補正前の請求項1に係る発明に、「前記集積回路画像取込装置が、第1レンズユニットの積層された複数のレンズの少なくとも1つの光学的特性を示すデータを含む」との構成を追加したものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、前記「第2 3(4)イ」で検討した相違点1、2を有し、その余の点で一致する。
本願発明の構成要件をすべて含み、これをより限定したものである本願補正発明が、前記「第2 3(5)」の「ア」、「イ」において検討したとおり、刊行物1に記載された引用発明並びに刊行物2及び周知例1?2に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、周知例1?2は、前記「第2 3(4)イ」で検討した相違点3の判断において引用されたものであるから、相違点1,2に関する判断については、上記本願発明も、前記「第2 3(4)イ」での検討と同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 結言
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-02-13 
結審通知日 2014-02-17 
審決日 2014-02-28 
出願番号 特願2010-506259(P2010-506259)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小倉 宏之  
特許庁審判長 西村 仁志
特許庁審判官 藤原 敬士
清水 康司
発明の名称 ウエハーレベル光学部品を用いた自動焦点/ズームモジュール  
代理人 清原 義博  
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