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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B63B
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  B63B
審判 全部無効 2項進歩性  B63B
審判 全部無効 特29条の2  B63B
管理番号 1289880
審判番号 無効2011-800251  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-12-06 
確定日 2014-06-13 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4509156号「船舶」の特許無効審判事件についてされた平成24年10月26日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において請求項6に係る発明に対する部分の審決取消しの判決(平成24年(行ケ)第10424号、平成25年 9月10日判決言渡)があったので、審決が取り消された部分の請求項6に係る発明についてさらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第4509156号の請求項6に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4509156号(以下、「本件特許」という。)は,平成19年9月13日に特願2007-238381号(請求項の数3)として出願され,平成22年3月24日の手続補正により請求項4ないし7が追加され,平成22年5月14日にその発明について特許の設定登録(請求項の数7)がされた。
これに対して,平成23年12月6日に審判請求人 株式会社新来島どっく(以下,「請求人」という。)により無効審判の請求がなされ,平成24年3月26日に被請求人 三菱重工業株式会社ほか2名(以下,「被請求人」という。)から答弁書の提出及び訂正請求がなされ,同年9月5日に請求人から口頭審理陳述要領書が提出され,同年9月5日に被請求人から口頭審理陳述要領書が提出され,同年9月19日に請求人から口頭審理陳述要領書(補遺)が提出され,同日に口頭審理が行われ,同年10月26日に「訂正を認める。特許第4509156号の請求項6に係る発明についての特許を無効とする。特許第4509156号の請求項1ないし5に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」との審決(以下,「一次審決」という。)がされた。
その後,請求項1ないし6に係る発明に対する審決に対し,請求項6に対する審決部分の取り消しを求め,知的財産高等裁判所に出訴され,平成24年(行ケ)第10424号事件として審理された結果,平成25年9月10日に「特許庁が無効2011-800251号事件について平成24年10月26日にした審決中,『特許第4509156号の請求項6に係る発明についての特許を無効とする。』との部分を取り消す。」との判決がなされたものである。

平成24年3月26日の訂正請求において,特許請求に範囲についてする訂正のうち,訂正前の請求項6を削除する訂正は,一次審決の送達により確定した。
また,同訂正請求において,特許請求の範囲についてする訂正のうち,訂正前の請求項1の訂正とそれに起因する請求項2ないし5の訂正,発明の詳細な説明についてする訂正のうち段落【0008】,【0009】,【0012】及び【0033】の訂正,並びに,一次審決の「特許第4509156号の請求項1ないし5に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」とした部分は,特許法178条3項に定める期間に審決取消の訴えがなされなかったことにより平成24年12月6日に確定した(当該請求項1ないし5に対する審決は,後述の(参考)を参照のこと。)。

審決時において,特許権者は,三菱重工業株式会社,株式会社日立製作所及び株式会社日立プラントテクノロジーであったが,その後,株式会社日立製作所は本件特許の持分を放棄した後,株式会社日立プラントテクノロジーを吸収合併して同社を包括承継した。現在は,三菱重工業株式会社,株式会社日立製作所が,特許権者すなわち被請求人となっている。

第2 平成24年3月26日の訂正請求の適否について
1 訂正請求の趣旨及び訂正の内容
平成24年3月26日に提出した訂正請求書により被請求人が求める訂正(以下,「本件訂正」という。)は,本件特許の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおりに訂正しようとするものであって,その内容は次のとおりである。

(1)訂正事項a-1
本件特許の特許請求の範囲の請求項1を,
「【請求項1】
バラスト水の取水時または排水時にバラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置を備えている船舶であって,
バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が船舶後方の舵取機室内に配設され,
前記舵取機室は吃水線よりも上方に位置することを特徴とする船舶。」
と訂正する。(下線部は訂正個所。以下同様。)

(2)訂正事項a-2
本件特許の明細書の段落【0008】,【0009】,【0012】を,
「【0008】
本発明は,上記の課題を解決するため,下記の手段を採用した。
本発明の請求項1に係る船舶は,バラスト水の取水時または排水時にバラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置を備えている船舶であって,バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が船舶後方の舵取機室内に配設され,前記舵取機室は吃水線よりも上方に位置することを特徴とするものである。」
「【0009】
このような船舶によれば,バラスト水処理装置を船舶後方の舵取機室内に配設するようにしたので,船体構造や船型を大きく変更することなく,船舶内の空間を有効に利用して種々のバラスト水処理装置を容易に設置することができる。
また,上記の船舶において,前記舵取機室は吃水線よりも上方に位置するので,緊急時にバラスト水を容易に船外へ排出することができる。」
「【0012】
また,上記の船舶において,前記舵取機室は非防爆エリアであることが好ましく,これにより,各種制御機器や電気機器類の制約が少なくなる。
また,上記の船舶において,前記舵取機室はバラストポンプが設置される機関室に隣接していることが好ましく,これにより,バラスト水処理に伴う圧力損失を最小限に抑えることができる。」
と訂正する。

(3)訂正事項b
本件特許の特許請求の範囲の請求項6を削除する。

(4)訂正事項c-1
本件特許の特許請求の範囲の請求項7を,請求項6に繰り上げるとともに,
「【請求項6】
バラスト水の取水時または排水時にバラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置を備えている船舶であって,
バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が船舶後方の非防爆エリアで,船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されていることを特徴とする船舶。」
と訂正する。

(5)訂正事項c-2
本件特許の明細書の段落【0013】を,
「【0013】
本発明の請求項6に係る船舶は,バラスト水の取水時または排水時にバラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置を備えている船舶であって,バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が船舶後方の非防爆エリアで,船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されていることを特徴とするものである。」
と訂正する。

(6)訂正事項d
本件特許の明細書の段落【0033】を,
「【0033】
また,舵取機室9は,バラストポンプ13が設置される機関室8に隣接して近いため,処理装置入口側配管系統15及び処理装置出口側配管系統16に必要となる配管長及び配管設置スペースが少なくてすみ,バラスト水処理に伴う圧力損失も最小限に抑えることができる。
また,舵取機室9は非防爆エリアであるから,各種制御機器や電気機器類の制約が少なくてすむという利点もある。
また,舵取機室9は,船舶の吃水線より上方に位置するため,緊急時においてはバラスト水を容易に船外へ排水できるという利点もある。
なお,本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく,本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。」
と訂正する。

2 訂正の目的の適否,新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記第1で述べたとおり,請求項6を削除する訂正(訂正事項b)は,一次審決の送達により確定し,請求項1の訂正(訂正事項a-1)とそれに起因する請求項2ないし5の訂正,発明の詳細な説明についてする訂正のうち特許明細書の段落【0008】,【0009】,【0012】及び【0033】の訂正(訂正事項a-2及び訂正事項d)は,審決取消の訴えがなされなかったことにより平成24年12月6日に確定しているので,訂正事項c-1及び訂正事項c-2について検討する。

(1)訂正事項c-1について
訂正事項c-1は,訂正前の請求項7を請求項6とする訂正と,「バラスト水処理装置」に対して「バラスト水が供給される」との限定を付すとともに,バラスト水処理装置に位置について「船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されている」との限定を付する訂正とからなるものである。
前者の訂正は,訂正前の請求項6の削除に伴い繰り上げるものであり,明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。そして,この訂正が,願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことは明らかである。
後者の訂正は,訂正前の請求項7の発明特定事項を限定するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し,また,明細書の段落【0022】,【0031】及び【0033】の記載に基づくものであり,願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。そして,当該限定を付すことにより新たな技術的事項を導入するものではないので,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(2)訂正事項c-2について
訂正事項c-2は,上記訂正事項c-1により訂正された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためにするものであり,明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
そして,訂正の内容は訂正事項1と同様であるので,願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

3 訂正請求のまとめ
以上のとおりであるので,訂正事項c-1及び訂正事項c-2の訂正は,特許請求の範囲の減縮,及び,明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当し,したがって本件訂正は,平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成23年改正前特許法」という。)第134条の2第1項ただし書き第1号,第2号及び第3号に掲げる事項を目的とし,かつ同条第5項で準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので,本件訂正を認める。

第3 訂正特許発明
本件特許の特許請求の範囲に記載された請求項1ないし7に係る発明は本件訂正により訂正されたので,その請求項1ないし6係る発明(以下、「訂正特許発明1ないし6」という。)は,次のとおりである。
「【請求項1】
バラスト水の取水時または排水時にバラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置を備えている船舶であって,
バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が船舶後方の舵取機室内に配設され,
前記舵取機室は吃水線よりも上方に位置することを特徴とする船舶。
【請求項2】
前記バラスト水処理装置が前記舵取機室内またはその空間に設けたデッキに配設されていることを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記バラスト水処理装置のバッファタンクとしてアフト・ピーク・タンク等の船尾部ボイドスペースが使用されていることを特徴とする請求項1または2に記載の船舶。
【請求項4】
前記舵取機室は非防爆エリアであることを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項5】
前記舵取機室はバラストポンプが設置される機関室に隣接していることを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項6】
バラスト水の取水時または排水時にバラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置を備えている船舶であって,
バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が船舶後方の非防爆エリアで,船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されていることを特徴とする船舶。」

第4 当事者の主張の概要
1.請求人の主張
請求人は,「特許第4509156号発明の請求項1ないし7に係る発明についての特許を無効とする」との審決を求め,以下の理由1ないし4を主張し,証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出している。

無効理由1(特許法第29条の2について)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は,本件特許の出願の日前の特許出願であつて本件特許出願後に特許出願公開公報が発行がされ,その出願公開前に手続補正がされていない特許出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり,かつ,本件特許の各請求項に係る発明者は当該特許出願に係る発明の発明者と同一の者ではなく,また,当該特許出願についての出願時の出願人と,本件特許に係る特許権者とは同一の者ではなく,特許法第29条の2の規定に該当し,したがって,特許法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきものであるとして,甲第1号証の1を挙げている。

無効理由2(特許法第29条第1項第3号について)
本件特許の請求項7に係る発明は,本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証の1に記載された発明と同一であるから,特許法第29条第1項第3号の規定に該当し,特許法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきものである。

無効理由3(特許法第29条第2項について)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は,甲第2号証の1及び甲第3号証に記載された発明に基いて,本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきものである。

無効理由4(特許法第36条第6項第1号及び第2号について)
本件特許の請求項7に係る発明は,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載の範囲を超えて特許されたものであり,特許法第36条第6項第1号の規定に該当し,又は,同請求項7に係る発明の構成のうちの「非防爆エリア」が不明瞭であり,結局,請求項7に係る発明が明確でなく,特許法第36条第6項第2号の規定に該当し,特許法第123条第1項第4号の規定により,無効とされるべきものである。

そして,審判請求書に添付された甲第1号証ないし甲第3号証は以下のとおりである。
(1)甲第1号証の1:特開2008-86892号公報
(2)甲第1号証の2: 同 出願情報
(3)甲第2号証の1:特開2006-272147号公報
(4)甲第2号証の2:本件特許の出願人提出の早期審査に関する事情説明書
(5)甲第3号証:実開昭63-108891号のマイクロフイルム

また,平成24年9月5日付け口頭審理陳述要領書に添付され,周知技術を示す文献として提出された甲第4号証ないし甲第6号証は,以下のとおりである。
このうち,甲第5号証の2及び甲第6号証は,被請求人,請求人の双方の了解の下,証拠として採用しないこととした(「第1回口頭審理調書」を参照)。

(6)甲第4号証:「船舶知識のABC(池田宗雄著)」抜粋
(7)甲第5号証の1:「バラスト管装置設計基準(日本造船学会・造船設計委員会第2分会編)海分堂」抜粋
(8)甲第5号証の2:「内航船の船首尾形状の改善及びプロペラの高効率化に関する調査研究(船舶整備公団)」抜粋
(9)甲第6号証:「財団法人日本海事協会規則・検査要領2006(鋼船規則/検査要領H編電気設備)」

2.被請求人の主張
被請求人は,「本件審判の請求は成り立たない」との審決を求め,以下のように主張している。

無効理由1について
甲第1号証の1には訂正後の請求項1に係る発明の「バラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置」および「(バラスト水が供給されるバラスト水処理装置が配設される)前記舵取機室は吃水線よりも上方に位置する」構成が開示されていない。
訂正後の請求項1に係る発明及び訂正後の請求項1を引用する請求項2ないし5に係る発明は,甲第1号証の1の願書に最初に添付した明細書または図面に記載された発明と同一ではないから,特許法第29条の2の規定に該当するものではない。
訂正後の請求項6に係る発明は,「バラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置を備えている船舶であって,バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が・・・船舶の吃水線より上方・・・に配設されている」という構成を備えているので,甲第1号証の1に記載された発明と同一とは言えない。

無効理由2について
訂正後の請求項6に係る発明は,「バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が船舶後方の非防爆エリアで,船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されている」と訂正されている。
これに対して,甲第2号証の1には,噴流発生手段,オゾン注入手段及び静的混合手段といったバラスト水処理装置が開示されており,このバラスト水処理装置は,バラストタンク内に設けたパッケージケース内(図2及び図3等参照)あるいは機関室内(図4及び図7)に配置されている。そして,機関室内に配置される推進機関は,水中にて回転するプロペラの軸を回転させることを考慮すると,一般に機関室の床レベルは吃水線よりも下方であることは当業者において明らかで,図4及び図7に示されているように,噴流発生手段,オゾン注入ノズル及び静的混合手段は機関室の底部に設置されていることからみて,船舶の吃水線よりも明らかに下方であるといえる。
したがって,訂正後の請求項1に係る発明は,甲第2号証の1に記載された発明と明らかに相違しており,新規性を有する。

無効理由3について
甲第2号証の1には,噴流発生手段,オゾン注入手段及び静的混合手段といったバラスト水処理装置が開示されており,このバラスト水処理装置は,バラストタンク内に設けたパッケージケース内(図2及び図3等参照)あるいは機関室内(図4及び図7)に配置されている。
甲第2号証の1のバラスト水処理装置の設置高さは,甲第2号証の1の各図から明らかなように,機関室の床レベルすなわち船底レベル付近に配設されている。そして,機関室内に配置される推進機関は,水中にて回転するプロペラの軸を回転させることを考慮すると,一般に機関室の床レベルは吃水線よりも下方であることは当業者において明らかである。
そうすると,訂正後の請求項1に係る発明と甲第2号証の1に記載された発明とは「バラスト水処理装置が船舶後方の舵取機室内に配設されている」点,「バラスト水処理装置が配設される前記舵取機室は吃水線より上方に位置する」点で相違している。
その相違点により,訂正後の請求項1に係る発明は,「バラスト水処理装置を舵取機室内に配設することとしたので,船体構造や船型を大きく変更することなく,船舶内の空間を有効に利用して種々のバラスト水処理装置を容易に設置することができる」(本件特許明細書の【0009】),「緊急時にバラスト水を容易に船外は排水できる」(本件特許明細書の【0031】及び【0033】)という作用効果を奏する。
次に,甲第2号証の1には,バラスト水処理装置の配置については,船底部以外への配置については何ら言及されておらず,吃水線との関係でバラスト水処理装置の高さ位置を限定することについても何ら開示も示唆もないから,甲第2号証の1には上記相違点に想到する動機付けが存在せず,当業者であっても訂正後の請求項1に係る発明に容易に想到することはできない。 また,甲第3号証には,バラスト水処理装置の開示が一切ないので,仮に甲第2号証の1に甲第3号証を組み合わせたところで,訂正後の請求項1に係る発明の構成に至ることができない。
したがって,甲第2号証の1に動機付けとなる記載が一切ないのだから,甲第3号証を組み合わせたとしてもバラスト水処理装置の配置に関する訂正後の請求項1に係る発明に当業者が容易に想到することができない。
訂正後の請求項2ないし5に係る発明は訂正後の請求項1に係る発明の従属項とされているので,訂正後の請求項2ないし5に係る発明も進歩性を有するものである。

訂正後の請求項6に係る発明は,「バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が船舶後方の非防爆エリアで,船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されている」と訂正されている。
甲第2号証の1に記載された発明が,噴流発生手段,オゾン注入手段及び静的混合手段といったバラスト水処理装置が吃水線よりも下方と認められる船底レベル付近に配設されているのに対して,訂正後の請求項6に係る発明は,バラスト水が供給されるバラスト水処理装置が船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されている点で相違し,その相違点により,「バラスト水が供給されるバラスト水処理装置を吃水線より上方に配設することで,緊急時にバラスト水を容易に船外へ排水できるという作用効果を奏するとともに,さらに,バラスト水処理装置をバラストタンクの頂部よりも下方に配設することで,バラストポンプの吐出圧力を上げる等の処置が不要となる」という作用効果を奏する(【0031】及び【0033】)。
そして,甲第2号証の1には,バラスト水処理装置の配置に関して,船底部以外への配置について何ら言及されておらず,吃水線との関係でバラスト水処理装置の高さ位置を限定することについても何ら開示も示唆もない。
甲第2号証の1には上記相違点に想到する動機付けが存在しないし,バラスト水処理装置の開示が一切ない甲第3号証を組み合わせたところで,本件の訂正後の請求項6に係る発明の構成に至ることがない。
したがって,当業者であっても,甲第2号証の1及び甲第3号証から訂正後の請求項6に係る発明に容易に想到することはない。

無効理由4について
(1)特許法第36条第6項第1号について
本件特許明細書【0028】は,【発明を実施するための最良の形態】の中の記載である。そして,本件特許明細書では,最良の実施形態として,船舶の一例としてのLNG船について(【0016】参照),バラスト水処理装置20を舵取機室9内に配設することを説明しているに過ぎない。
したがって,本件特許明細書の全体に開示された発明は,バラスト水処理装置20が舵取機室9に配設されたものに限定されるものではない。これは,「多種多様な船舶に対して,多種多様な方式のバラスト水処理装置を船内適所に容易に設置可能とする船舶を提供すること」(【0007】参照)が本件特許発明の解決すべき課題であることを考慮すれば明らかである。
そうすると,当該【0028】の記載は,最良の実施形態である舵取機室9の有利点を機関室8との対比で説明したに過ぎず,「機関室8をバラスト水処理装置20の設置場所とすることには問題が多くきわめて困難である。」と記載されているからといって,バラスト水処理装置20を機関室8に設置することを種々の船舶構造に対して否定する根拠となるものではない。 また,仮に,当該【0028】の記載が,バラスト水処理装置20を機関室8に設置することを否定するものだとしても,これは飽くまでも舵取機室9への配置との関係で機関室8への配置を否定したに過ぎず,訂正後の請求項6の「前記バラスト水処理装置が・・・船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されている」という構成との関係で,機関室8への配置を否定したものと理解すべきものではない。
なぜなら,機関室8内であっても,バラスト水処理装置が船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されていれば,緊急時にバラスト水を容易に船外へ排水でき,バラストポンプの吐出圧力を上げる等の処置が不要となるという作用効果は当業者であれば理解できることから,当該発明は発明の詳細な説明に記載されているものと言えるからである。
以上のとおり,訂正後の請求項6に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されたものであることは明らかであるから,特許法第36条第6項第1号違反ではない。

(2)特許法第36条第6項第2号について
「防爆」という用語は当業者において周知でかつ慣用されている用語であり,「非防爆」とは,防爆に否定を意味する「非」が付加されたものなので,「防爆」ではないことを意味する。また,「エリア」は領域を意味する。 したがって,訂正後の請求項6の『非防爆エリア』は,防爆構造が要求されない領域という意味であり,これは当業者において慣用されている用語(防爆)から,一般の辞書的な解釈を用いて無理なく導き出せる用語といえ,決して不明瞭な用語ではない。
本件特許明細書の【0006】には,「(2)バラスト水処理装置を船内に配置する場合,貨物積載量の確保や可燃性貨物の積載に伴う危険区画等を考慮すると,船体中央部分に配置することを避け,船首または船尾に配置することが望ましい。」との記載がある。この記載から,前記危険区画は「防爆エリア」を意味するものであり,この危険区画を避けると記載しているのだから,危険区画を避ける場所は「非防爆エリア」を意味することは当業者に明らかといえる。
以上のとおり,訂正後の請求項6には,不明瞭な記載はないことは明らかであるから,特許法第36条第6項第2号違反ではない。

そして,平成24年3月26日付け答弁書に添付され,「非防爆エリア」に関する証拠として以下の乙第1号証が提出された。

(1) 乙第1号証 「財団法人日本海事協会 規則・検査要領 2006鋼船規則/検査要領 H編 電気設備 2章 2.16 防爆形電気機器」

また,平成24年9月5日付け口頭審理陳述要領書に添付され,「非防爆エリア」に関する証拠として以下の乙第2号証ないし乙第4号証が提出され,特許法36条6項第1号に関する最近の判例の傾向の証拠として以下の乙第5号証が提出された。

(2) 乙第2号証 「財団法人日本海事協会 2007 鋼船規則 鋼船規則検査要領 H編 電気設備」,平成19年4月発行
(3) 乙第3号証 「JIS 船用電気設備-第502部:タンカー-個別規定 JIS F8074」,平成15年12月20日発行
(4) 乙第4号証 「海と安全/11」,vol.3.NO.11:NOV.‘69
(5) 乙第5号証 「特許判例ガイド[第4版]」の抜粋,増井和夫及び田村善之,有斐閣,2012年3月30日発行

第5 当審の判断
上記第1で述べたとおり,訂正後の請求項1ないし5に係る発明(訂正特許発明1ないし5)に対する審決は既に確定しているから,訂正特許発明1ないし5は,本審決においては,もはや判断の対象にならない。
本審決においては,訂正後の請求項6に係る発明(訂正特許発明6)に対する無効理由1ないし4について検討する。

1 無効理由1について
(1)甲第1号証の1に記載された事項および発明
甲第1号証の1には,船舶バラスト水の処理装置に関し,詳しくは,船舶の既設のバラスト水系配管に容易に組み込んで,バラスト水中に含まれる水生生物を殺滅することのできる船舶バラスト水の処理装置に関して,以下の技術事項が記載されている。

・「【0020】
本発明によれば,船舶の既設のバラスト水系配管に容易に組み込んで,バラスト水中に含まれる水生生物を殺滅することのできる実用的な船舶バラスト水の処理装置を提供することができる。」

・「【0031】
かかる既設のバラスト水系配管に,本発明に係る船舶バラスト水の処理装置13が設けられる。
【0032】
処理装置13は,以上説明したバラスト水系配管の排水管7の中途部から分岐された分岐管131に,順次,プレフィルタユニット132,オゾン混合装置133,バラストポンプ(第2のバラストポンプ)134,スリット板135及び脱気槽136が介設されている。」

・「【0036】
オゾン混合装置133は,プレフィルタユニット132を通過したバラスト水に,オゾン発生器133aによって生成されたオゾンを混入させる。オゾン発生器133aには,無声放電型,紫外線照射型等を用いることができ,図2に示すように,船体1内の船尾に配置され,図示しないポンプによって移送管133bを介してオゾン混合装置133に移送されるようになっている。」

・図1には,オゾン発生器133aとオゾン混合装置133とが間に省略記号の波線を介して接続していることが記載されている。

・図2には,オゾン発生器133aが船舶後方の上部の室内に配設され,該上部の室は水面よりも上方に位置することが記載されている。
以上の事項及び図1,図2を総合すると,甲第1号証の1には以下の発明が記載されているものと認められる。

「バラスト水中の水生生物を殺滅するバラスト水が供給されるバラスト水処理装置13及びオゾン発生器133aを備えている船舶であって,
バラスト水処理装置13は,分岐管131に,順次,プレフィルタユニット132,オゾン混合装置133,バラストポンプ(第2のバラストポンプ)134,スリット板135及び脱気槽136が介設されており,オゾン発生器133aとオゾン混合装置133とは接続されており,オゾン発生器133aが船舶後方の上部の室内に配設され,前記上部の室は水面よりも上方に位置することを特徴とする船舶。」(以下「甲第1号証に記載された発明」という。)

(2)対比・判断
訂正特許発明6と甲第1号証に記載された発明とを対比する。
甲第1号証に記載された発明の「バラスト水中の水生生物を殺滅するバラスト水が供給されるバラスト水処理装置13」は排水管7の中途部からバラスト水処理装置13が分岐されているものであるから,訂正特許発明6の「バラスト水の取水時または排水時に微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置」に相当している。
請求人は甲第1号証に記載された発明において「軽荷吃水線」を想定すれば,バラスト水処理装置が船舶の軽荷吃水線より上方に配設されていることになると主張する。
しかしながら,甲第1号証に記載された発明において「バラスト水処理装置13」の設置個所が「非防爆エリア」であるかどうか,「軽荷吃水線」がどこにあるのか不明である。
そもそも「軽荷吃水線」とは船舶の種類により異なるもので技術的に特定することは不可能であるから,仮に,「バラスト水処理装置13」の設置箇所が「非防爆エリア」であるとして「軽荷吃水線」を想定しようとしても,訂正特許発明6の「吃水線」に対応する甲第1号証に記載された発明の「軽荷吃水線」となる具体的な位置を特定することはできない。
甲第1号証に記載された発明において,「軽荷吃水線」を特定することはできない以上,甲第1号証に記載された発明において「バラスト水が供給されるバラスト水処理装置が船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されている」かどうか明らかでない。

(3)小括
したがって,訂正特許発明6は,甲第1号証に記載された発明とはいえないから,特許法第29条の2の規定に該当せず,同法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきものではない。

2 無効理由2について
(1)甲第2号証の1に記載された事項及び発明
請求人の提出した甲2号証の1には,バラスト水処理装置を備える船舶に関して,次の技術事項が記載されている。

・「【請求項1】
バラストタンクに注入するバラスト水に含まれている微生物を殺滅するバラスト水処理装置であって,バラスト水取水口からバラストタンクに至る注水管の途中に,前記バラスト水を噴流と成す水噴射ノズル及び前記噴流が当たってキャビテーションを発生する衝撃板を有する噴流発生手段と,該噴流発生手段を経たバラスト水にオゾンを注入するオゾン注入手段と,前記オゾンとバラスト水を混合する静的混合手段と,該静的混合手段を経たバラスト水の中に残存している残存オゾンを分離又は吸着分離する手段とを設けたことを特徴とするバラスト水処理装置。」

・「【0014】
本発明者は,このような問題を解消すべく,鋭意検討して,本発明に到達したものであり,その第1の目的とするところは,IMOで締結された基準値をクリアできるバラスト水処理装置を提供することにある。
【0015】
また,本発明の第2の目的とするところは,バラストタンクにバラスト水を注入するポンプの揚水能力と同等の微生物殺滅能力を有する高性能のバラスト水処理装置を提供することにある。」

・「【0025】
上記のように,請求項1に記載の発明は,バラストタンクに注入するバラスト水に含まれている微生物を殺滅するバラスト水処理装置であって,バラスト水取水口からバラストタンクに至る注水管の途中に,前記バラスト水を噴流と成す水噴射ノズル及び前記噴流が当たってキャビテーションを発生する衝撃板を有する噴流発生手段と,該噴流発生手段を経たバラスト水にオゾンを注入するオゾン注入手段と,前記オゾンとバラスト水を混合する静的混合手段と,該静的混合手段を経たバラスト水の中に残存している残存オゾンを分離又は吸着分離する手段とを設けたことに特徴がある。
【0026】
前記水噴射ノズルによって激流を形成して急激な圧力変化を与えると,キャビテーションが発生してバラスト水の中のプランクトンなどの微生物を破壊して殺滅する。また,ポンプの駆動によってバラスト水が注水管内から水噴射ノズルに移送されると,衝撃板に衝突し,噴流による高い圧力と,負圧といった急激な圧力変化と,衝撃板への衝突による急激な衝撃板と摩擦力により,バラスト水に含まれるプランクトン等の微生物の気泡や細胞壁を破壊して殺滅する。
【0027】
その後,噴流発生手段後方のオゾン注入手段からバラスト水にオゾンを注入する。オゾンが注入されたバラスト水は,オゾン注入手段の後流側にある静的ミキサーによって攪拌され,バラスト水とオゾンとが均一に攪拌混合される。静的ミキサーによってオゾンが均一に攪拌混合されたバラスト水は,オゾン分離槽内に導入され,旋回流となる。その間に,バラスト水に含まれているプランクトンやバクテリアなどの微生物の細胞膜がオゾンによって破壊され,死滅する。
【0028】
残存オゾン分離手段であるオゾン分離槽に流入したバラスト水は,分離槽本体の内壁面に沿って旋回流を形成するため,分離槽本体内を通過するバラスト水の通過時間が長くなり,微生物を殺滅するオゾンの反応時間を稼ぐことができる。また,バラスト水中の未反応又は残存オゾンが分離し易くなる。また,オゾン分離槽内でバラスト水から分離した未反応又は残存オゾンは,排気管から系外に排出されるので,バラストタンク内にオゾンが流入することがない。
【0029】
従って,IMOで合意された基準値以下,すなわち,バラスト水に含まれているプランクトンなどの微生物の個数を10ヶ未満/m3に抑制し,バクテリアなどの細菌の個数を10ヶ未満/ccに抑制することが可能となる。 【0030】
他方,残存オゾン分離手段がオゾン吸着分離槽の場合は,バラスト水中に残存している残存オゾンがオゾン吸着分離槽内の活性炭素によって吸着分離することができる。
【0031】
また,残存オゾン分離手段が管内に充填した乱流発生体によってバラスト水に乱流を発生させるオゾン分解ゾーンの場合は,管内に充填した乱流発生体によってバラスト水に乱流を発生させることにより,残存オゾンの分離を促進させることができる。
【0032】
請求項5に記載の発明に係るバラスト水処理装置は,バラストタンクに注入するバラスト水に含まれている微生物を殺滅するバラスト水処理装置であって,バラスト水取水口からバラストタンクに至る注水管の途中に,前記バラスト水にオゾンを注入するオゾン注入手段と,前記オゾンを注入後のバラスト水を噴流と成す水噴射ノズル及び前記噴流が当たってキャビテーションを発生させる衝撃板を有する噴流発生手段と,該噴流発生手段を通過後のオゾンとバラスト水を混合させる静的混合手段と,該静的混合手段を経たバラスト水の中に残存している残存オゾンを分離又は吸着分離する手段とを設けたので,請求項1に記載の発明と同様に,IMOで合意された基準値以下,すなわち,バラスト水に含まれているプランクトンなどの微生物の個数を10ヶ未満/m3に抑制し,バクテリアなどの細菌の個数を10ヶ未満/ccに抑制することが可能となるが,オゾン注入手段の下流側に設けた噴流発生手段においてキャビテーションが発生する際に,オゾン注入手段から注入したオゾンの拡散及び混合が促進することから,プランクトンやバクテリアなどの微生物の殺滅が,より効果的に行われるという効果がある。
【0033】
更に,残存オゾン分離手段がオゾン分離槽の場合は,バラスト水が分離槽本体の内壁面に沿って旋回流を形成するため,分離槽本体内を通過するバラスト水の通過時間が長くなり,微生物を殺滅するオゾンの反応時間を稼ぐことができる一方,バラスト水中の未反応又は残存オゾンが分離し易くなる。また,オゾン分離槽内でバラスト水から分離した未反応又は残存オゾンは,排気管から系外に排出されるので,バラストタンク内にオゾンが流入することがない。
【0034】
他方,残存オゾン分離手段がオゾン吸着分離槽の場合は,バラスト水中に残存している残存オゾンがオゾン吸着分離槽内の活性炭素によって吸着分離することができる。
【0035】
また,残存オゾン分離手段が管内に充填した乱流発生体によってバラスト水に乱流を発生させるオゾン分解ゾーンの場合は,管内に充填した乱流発生体によってバラスト水に乱流を発生させることにより,残存オゾンの分離を促進させることができる。」

以上のことから,甲2号証の1には次の事項が記載されている。
「IMOで締結された基準値をクリアできるバラスト水処理装置を提供すること」,「バラストタンクにバラスト水を注入するポンプの揚水能力と同等の微生物殺滅能力を有する高性能のバラスト水処理装置を提供すること」を解決課題として,「バラストタンクに注入するバラスト水に含まれている微生物を殺滅するバラスト水処理装置であって,バラスト水取水口からバラストタンクに至る注水管の途中に,前記バラスト水を噴流と成す水噴射ノズル及び前記噴流が当たってキャビテーションを発生する衝撃板を有する噴流発生手段と,該噴流発生手段を経たバラスト水にオゾンを注入するオゾン注入手段と,前記オゾンとバラスト水を混合する静的混合手段と,該静的混合手段を経たバラスト水の中に残存している残存オゾンを分離又は吸着分離する手段とを設けた」構成とすることにより,「激流を形成して急激な圧力変化を与えると,キャビテーションが発生してバラスト水の中のプランクトンなどの微生物を破壊して殺滅する。・・・噴流による高い圧力と,負圧といった急激な圧力変化と,衝撃板への衝突による急激な衝撃板と摩擦力により,バラスト水に含まれるプランクトン等の徹生物の気泡や細胞壁を破壊して殺滅する。」等の効果を奏する。
また,甲第2号証の1の各図から明らかなように,バラスト水処理装置は,バラストタンク2内に設けたパッケージケース7内(図2及び図3等参照)あるいは機関室4内(図4及び図7)に配置され,バラスト水処理装置の設置高さは機関室4の床レベルすなわち船底レベル付近に配設されている。

このことから甲第2号証の1には次の発明が記載されているものと認められる。
「バラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるバラスト水処理装置を備えている船舶であって,
バラスト水処理装置は,バラスト水取水口からバラストタンクに至る注水管の途中に,前記バラスト水を噴流と成す水噴射ノズル及び前記噴流が当たってキャビテーションを発生する衝撃板を有する噴流発生手段と,該噴流発生手段を経たバラスト水にオゾンを注入するオゾン注入手段と,前記オゾンとバラスト水を混合する静的混合手段と,該静的混合手段を経たバラスト水の中に残存している残存オゾンを分離又は吸着分離する手段とからなり,該バラスト水処理装置はバラストタンク内に設けたパッケージケース内あるいは機関室内で,船底レベル付近に配設されている配設されることを特徴とする船舶。」(以下「甲第2号証に記載された発明」という。)

(2)対比・判断
甲第2号証に記載された発明は,船舶搭載を前提とする「バラスト水に含まれている微生物を殺滅するバラスト水処理装置」であり,「バラストタンクに注入するバラスト水を処理する」(特許請求の範囲請求項1参照),すなわち,バラスト水の「取水時」に処理するものであるから,甲第2号証に記載された発明の「バラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるバラスト水処理装置」は訂正特許発明6の「バラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置」に相当している。
甲第2号証に記載された発明は,甲第2号証の1の図4及び図7に示されているように,バラスト水処理装置としての噴流発生手段,オゾン注入ノズル及び静的混合手段はバラストタンク内に設けたパッケージケース内あるいは機関室内に配置されており,これは機関室の床レベルすなわち船底レベル付近に配設されており,機関室内に配置される推進機関は,水中にて回転するプロペラの軸を回転させることを考慮すると,一般に機関室の床レベルは吃水線よりも下方であることからみて,船舶の吃水線よりも下方であることが明らかである。
また,請求人が主張するように,訂正特許発明6の「吃水線」に対応するものとして,甲第2号証に記載された発明において「軽荷吃水線」を,仮に想定しようとしても,「軽荷吃水線」とは船舶の種類により異なるもので技術的に特定することは不可能であるから,甲第2号証に記載された発明において「軽荷吃水線」となる具体的な位置を特定することはできない。

さらに,機関室が非防爆エリアであるとしても,訂正特許発明6は「バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が船舶後方の非防爆エリアで,船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されている」という構成において甲第2号証に記載された発明と相違しており,このような構成を採用することにより,訂正特許発明6は,バラスト水処理装置を吃水線より上方に配設することで,緊急時にバラスト水を容易に船外は排水できるという作用効果を奏するとともに,さらに,バラスト水処理装置をバラストタンクの頂部よりも下方に配設することで,バラストポンプの吐出圧力を上げる等の処置が不要となるという作用効果を奏している。(明細書【0031】及び【0033】参照)

(3)小括
したがって,訂正特許発明6は,甲第2号証に記載された発明とは明らかに構成上相違しているから,甲2号証の1には,訂正特許発明6と実質的に同一のものが記載されているとはいえないので,特許法第29条第1項第3号の規定に該当せず,同法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきものではない。

3 無効理由3について
(1)甲第2号証の1に記載された事項及び発明
上記の2.(1)と同じ。

(2)甲第3号証に記載された事項
甲第3号証は,「船体の動揺減少装置」に係り,「船体の操舵機室及び機関室の両側の比較的高位置に減揺用のバラストタンクを設けることにより,船体スペースの有効利用をはかると共に,高い減揺効果を得ること」を目的として,「船体の操舵機室及び,または機関室の左右両側の比較的高位置に,一対以上のバラストタンクを配設すると共に,それら各対のバラストタンクの下部を水連通管で,そして上部を空気連通管でそれぞれ連通させた」構成とすることにより,「左右のバラストタンクのバラスト水を利用して船体の動揺を滅少させることができ,・・・・バラスト水の積載量を減少させうるので,それだけ省エネルギーとなり,かつ,動揺の滅少により乗心地の改善をはかることができ,・・船体のスぺースを有効に利用できると共に,バラストタンクの位置が船体の比較的高位置に設けられていもので,それだけ動揺減少効果が大きいという利点がある。また,・・・重量増加も少なく,費用の点でも軽済的である」等の効果を奏するものである。

以上のことから,甲第3号証に記載された事項を要約すると次の事項が記載されていると認められる。
「船体の操舵機室及び,または機関室の左右両側の比較的高位置に,一対以上の揺動減少装置としてのバラストタンクを配設することにより船体スペースの有効利用をはかると共に,高い減揺効果を得ること」(以下「甲第3号証に記載された事項」という。)

(3)甲第4号証に記載された事項
甲第4号証には「吃水線」について満載吃水線及び軽荷排水量の説明としてプロペラ軸近くまで露出する軽荷吃水(船舶が乗員・荷物・燃料などを積まない状態で水に浮いたときの吃水船)線が図示されている。(以下「甲第4号証に記載された事項」という。)

(4)甲第5号証の1に記載された事項
甲第5号証の1に記載された事項を要約すると,既設のバラスト水系配管やバラストポンプは船底レベルに限るものでない旨の記載があると認められる。(以下「甲第5号証に記載された事項」という。)

(5)対比・判断
甲第2号証に記載された発明は,船舶搭載を前提とする「バラスト水に含まれている微生物を殺滅するバラスト水処理装置」であり,「バラストタンクに注入するバラスト水を処理する」(特許請求の範囲請求項1,5参照),すなわち,バラスト水の「取水時」に処理するものであるから,甲第2号証の1の「バラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるバラスト水処理装置」は訂正特許発明6の「バラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置」に相当している。
甲第2号証に記載された発明は,甲第2号証の1の図4及び図7に示されているように,バラスト水処理装置としての噴流発生手段,オゾン注入ノズル及び静的混合手段はバラストタンク内に設けたパッケージケース内あるいは機関室4内に配置されており,機関室内に配置される推進機関は,水中にて回転するプロペラの軸を回転させることを考慮すると,一般に機関室の床レベルは吃水線よりも下方であることからみて,バラスト水処理装置の設置高さは船舶の吃水線よりも下方であることが明らかである。

訂正特許発明6と甲第2号証に記載された発明とを対比する。
甲第2号証に記載された発明の「バラストタンク内に設けたパッケージケース内あるいは機関室」が訂正特許発明6の「非防爆エリア」に相当するとしても,訂正特許発明6と甲第2号証に記載された発明とは以下の点で相違する。

相違点;訂正特許発明6は,「バラスト水が供給されるバラスト水処理装置が船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されている」のに対し,甲第2号証に記載された発明は「噴流発生手段,オゾン注入手段及び静的混合手段といったバラスト水処理装置が吃水線よりも下方の船底レベル付近に配設されている」点。

上記の相違点を検討する。
甲第3号証には「揺動減少装置としてのバラストタンクの配置構成として,船尾の機関室の左右両側,また機関室の後部に設けられる操舵機室にも,その上部に空気連通管等を設けるスぺースがあり,しかも,一般に水面上に設けられている操舵機室の床面に配置すること」(上記「甲第3号証に記載された事項」を参照)が記載されているが,バラスト水処理装置についての記載や示唆が一切なく,さらに,甲第2号証の1及び甲第3号証には,バラスト水処理装置の配置については,船底部以外への配置については何ら言及されておらず,さらに甲第4号証,甲第5号証の1を考慮しても吃水線との関係でバラスト水処理装置の高さ位置を限定することについても上記の甲各号証には何ら開示も示唆もない。
また,請求人が主張するように,仮に,訂正特許発明6の「吃水線」に対応するものとして甲第2号証に記載された発明において「軽荷吃水線」を想定しようとしても,「軽荷吃水線」とは船舶の種類により異なるもので技術的に特定することは不可能であるから,甲第2号証に記載された発明において「軽荷吃水線」となる具体的な位置を特定することはできない。

そして,訂正特許発明6は,上記相違点により,バラスト水が供給されるバラスト水処理装置を吃水線より上方に配設することで,緊急時にバラスト水を容易に船外へ排水できるという作用効果を奏するとともに,さらに,バラスト水処理装置をバラストタンクの頂部よりも下方に配設することで,バラストポンプの吐出圧力を上げる等の処置が不要となるという作用効果を奏するものである(本件特許明細書【0031】及び【0033】)。

したがって,甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証,甲第4号証,甲第5号証の1に記載された事項には上記相違点に想到する動機付けが存在しないばかりでなく,甲第3号証,甲第4号証,甲第5号証の1にはバラスト水処理装置に関しての記載がない。

そうすると,「バラスト水処理装置」と「バラストタンクの頂部」との位置関係について何ら記載も示唆もない甲第2号証に記載された発明にバラスト水処理装置に関する記載のない甲第3号証,甲第4号証,甲第5号証の1に記載された事項を適用する動機付けがあるとはいえないから,訂正特許発明6は甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証,甲第4号証,甲第5号証の1に記載された事項から当業者が容易に想到することができたものとすることができない。

(6)小括
以上のことから,訂正特許発明6は,甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証,甲第4号証,甲第5号証の1に記載された事項から当業者が容易に想到することができたものとすることができないから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえず,特許法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきものではない。

4 無効理由4について
(1)明確性要件(特許法36条6項2号)について
(1-1)本件特許明細書の記載
本件特許明細書には,以下の事項が記載されている。

ア 技術分野
本発明は,たとえば船舶のバラスト水に含まれる微生物類を処理して除去または死滅させるバラスト水処理装置を備えた船舶に関する(【0001】)。

イ 背景技術
船舶のバラスト水は,船体の姿勢制御や復原性確保のためにバラストタンクに積載される海水または淡水であり,船舶の安全運航上欠くことのできないものである。このバラスト水は,空船時にポンプでバラスト水を吸い込んでバラストタンク内に積載(取水)し,貨物を積み込む港において積荷の進行に合わせて排出(排水)される。上述したバラスト水には,種々の微生物類(水生生物)が含まれている。
この微生物類には,微小な生物(バクテリア等の微生物やプランクトン等の浮遊生物等)に加えて,魚類等の卵や幼生等も含まれる(【0002】)。
従って,バラスト水は積載地と異なる港(水域)に排水されることとなるため,バラスト水とともに移動した微生物類が新たな環境に定着すれば,その水域の生態系や水産業等の経済活動に影響を与えることが懸念される。また,バラスト水とともに移動した一部の病原菌は,人体の健康に直接影響を与えることも懸念される。
このため,国際海事機関(International Maritime Organization:IMO)においては,バラスト水に含まれる微生物類の管理に関する条約が批准され,バラスト水の取水時または排水時に微生物類を除去または死滅させることが求められる(【0003】)。
このようなバラスト水中の微生物類を除去または死滅させる装置としては,流路内に設けたスリット板をバラスト水が所定流速以上で通過するようにして,スリット通過により乱れた流れの内部に存在する剪断現象(場所による流速の急激な差)を利用し,この剪断により液中の微生物を破壊して殺減する液中微生物殺滅装置が提案されている。また,スリット位置をずらしたスリット板を前後に配置しておき,前のスリット板で剪断により破壊されなかった微生物については,前のスリット板で発生させたキャビテーションを後側のスリット板で潰す際に生じる衝撃圧を利用して破壊することにより,さらに殺減させるようにした液中微生物殺滅装置も提案されている(【0004】)。

ウ 発明が解決しようとする課題
ところで,上述したバラスト水処理装置は,荷役の進行と略同時に吸入または排水されるバラスト水を処理するものであるから,高い処理速度(たとえば,大型原油タンカーの場合には7000m^(3)/hr程度)が求められる。このため,バラスト水処理装置自体が大型化する傾向にあり,船舶にバラスト水処理装置の適当な設置場所を確保することは,下記の理由により困難な状況にある(【0005】)。
(1)バラスト水処理装置は,電気や薬剤などを使用する高度な処理レベルが求められるため,海洋環境下での波浪・風雨に対する耐食性を考慮すると,甲板等の船外よりも船内に設置することが好ましい。(2)バラスト水処理装置を船内に配置する場合,貨物積載量の確保や可燃性貨物の積載に伴う危険区画等を考慮すると,船体中央部分に配置することを避け,船首または船尾に配置することが望ましい。
(3)一般的な船舶設計では,バラストポンプ等の機器類は船尾の機関室に配置される。このため,船首にバラスト水処理装置を配置すると,船尾のバラストポンプ近傍に設けられた取水口から船首まで長距離の配管が必要となる(【0006】)。
このように,今後設置が義務づけられるバラスト水処理装置について,船体設計の大幅な変更を必要とせず,しかも,新造船に設置する場合はもとより,既存の船舶を改造して設置する場合にも容易に適用可能な構造の船舶が望まれる。すなわち,新造船や既存船の区別がなく,しかも,タンカー(LPG船,LNG船,油送船等),貨物船(コンテナ船,ロールオン/ロールオフ船,一般貨物船等)及び専用船(ばら積貨物船,鉱石運搬船,自動車運搬船等)等のように多種多様な船舶(特に一般商船)に対して,多種多様な方式のバラスト水処理装置を船内適所に容易に設置可能とする構造の船舶が望まれている。本発明は,上記の事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,多種多様な船舶に対して,多種多様な方式のバラスト水処理装置を船内適所に容易に設置可能とする船舶を提供することにある(【0007】)。

エ 課題を解決するための手段
本発明は,上記の課題を解決するため,下記の手段を採用した。本発明の請求項1に係る船舶は,バラスト水の取水時または排水時にバラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置を備えている船舶であって,バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が船舶後方の舵取機室内に配設され,前記舵取機室は吃水線よりも上方に位置することを特徴とするものである(【0008】)。
このような船舶によれば,バラスト水処理装置を船舶後方の舵取機室内に配設するようにしたので,船体構造や船型を大きく変更することなく,船舶内の空間を有効に利用して種々のバラスト水処理装置を容易に設置することができる。また,上記の船舶において,前記舵取機室は吃水線よりも上方に位置するので,緊急時にバラスト水を容易に船外へ排水することができる(【0009】)。
上記の船舶においては,前記バラスト水処理装置を前記舵取機室内の空間に設けたデッキに配設することが好ましく,これにより,舵取機室内の空間をより一層有効に利用して,すなわち,空間を立体的に有効利用して種々のバラスト水処理装置を設置することができる(【0010】)。
また,上記の船舶においては,前記バラスト水処理装置のバッファタンクとしてアフト・ピーク・タンク等の船尾部ボイドスペースを使用することが好ましく,これにより,バッファタンクを必要とする方式のバラスト水処理装置であっても,バッファタンクの新設が不要となる(【0011】)。
また,上記の船舶においては,前記舵取機室は非防爆エリアであることが好ましく,これにより,各種制御機器や電気機器類の制約が少なくなる。また,上記の船舶において,前記舵取機室はバラストポンプが設置される機関室に隣接していることが好ましく,これにより,バラスト水処理に伴う圧力損失を最小限に抑えることができる(【0012】)。
本発明の請求項6に係る船舶は,バラスト水の取水時または排水時にバラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置を備えている船舶であって,バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が船舶後方の非防爆エリアで,船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されていることを特徴とするものである(【0013】)。
このような船舶によれば,バラスト水処理装置が船舶後方の非防爆エリアに配設されているので,船舶構造や船型を大きく変更することなく,船舶後方の非防爆エリアを有効に利用して種々のバラスト水処理装置を容易に設置することがができる(【0014】)。

オ 発明の効果
上述した本発明の船舶によれば,今後義務づけられるバラスト水処理装置を設置する際,船体設計や船型の大幅な変更を必要とせず,しかも,新造船や既存の船舶を改造して設置する場合においても,多種多様な船舶に対して,多種多様な方式のバラスト水処理装置を容易に設置可能となる(【0015】)。

カ 発明を実施するための最良の形態
以下,本発明に係る船舶の一実施形態を図面に基づいて説明する。図4は,船舶の一例としてLNG船1の船体構造を示す図である。このLNG船1は,船体前方より順に,船首部2,船体中央部3及び船尾部4に分類される。船首部2は,LNG船1の航行方向前方に位置する部分であり,船首側倉庫等が設けられている。船首部2の後方に配置された船体中央部3には,複数(図示の例では3基)のLNGタンク5が船体軸線に沿って配列されている。また,船体中央部3には,球形としたLNGタンク5の下部周辺に形成される空間を利用して,複数に分割されたバラストタンク6が船体の左右両側に形成されている(【0016】)。
上述したLNG船1の適所には,バラスト水処理装置20が設けられている。このバラスト水処理装置20は,船体の姿勢制御や復原性確保を目的としてバラストタンク6に積載されるバラスト水に含まれる種々の微生物類を除去または死滅させる装置である。すなわち,バラスト水処理装置20は,積み荷の状態等に応じてバラストタンク6内に取水したバラスト水が貨物の積載量を増すにつれて排水されることから,バラスト水に含まれる微生物類を除去または死滅させた状態で排水できるように取水時または排水時に処理して,取水港周辺に生息する微生物類が他の海域に排水されて生態系に影響を及ぼすことを防止するための装置である(【0018】)。
上述したバラスト水処理装置20は,船舶後方となる船尾部4の舵取機室9内に配置されている。図1に示すバラスト水処理装置20は,第1処理ユニット21及び第2処理ユニット22を備えている。この場合の第1処理ユニット21及び第2処理ユニット22は,必要な処理能力をふたつのユニットに分割して配置したものであり,いずれのユニットも舵取機室9内に配置されている。なお,バラスト水処理装置20については,第1処理ユニット21及び第2処理ユニット22に分割する構成に限定されることはなく,処理方式や諸条件に応じて適宜変更可能である(【0019】)。
さて,上述したバラスト水処理装置20は,LNG船1の後方となる舵取機室9内に配置されている。このバラスト水処理装置20は,荷役の進行に合わせて取水または排水されるバラスト水を処理するため,高い処理速度が求められて大型化する。このため,バラスト水処理装置20の設置には,大きなスペースが必要となる。また,バラスト水処理装置20には,種々の方式が存在するため,現状では大きな設置スペースが必要なことに変わりはないものの,設置スペースとして求められる条件(形状等)は多種多様となる(【0025】)。
LNG船1のような通常の船舶は,プロペラ11及び航行用エンジンが船体後方に配置されている。このため,バラストポンプ13は,特別な事情がなければ船体後方の機関室8内に設置される。従って,バラスト水処理装置20は,配管長及び配管設置スペースの増加を抑制するため,バラストポンプ13の近傍に設置することが望ましい。一方,舵取機室9は機関室8に隣接し,しかも,プロペラ11及び舵の直上に位置しているので,これらの駆動に起因する振動対策等から比較的広い空間が設けられている。このため,舵取機室9の内部には,バラスト水処理装置20の設置が可能となる大きな設置空間を容易に確保することができる。すなわち,舵取機室9には,船体構造や船型を大きく変更することなく,バラスト水処理装置20の設置に必要な空間を容易に確保することができる(【0026】)。
具体的に説明すると,舵取機室9の空間は,上述した振動の問題があるため,通常機器類の設置に適さない場所(空間)として残されている。しかし,バラスト水処理装置20は,主としてLNG船1の停船時に使用されるものであるから,上述した振動のない状態での使用が可能となる。本発明者らは,上述した船舶構造に着目し,舵取機室9がバラスト水処理装置20の設置場所として最適であること発見したものである。すなわち,バラスト水の取水または排水は,船舶が港に停船して荷役作業を行う際に実施されるので,バラスト水処理装置20の運転時には船舶航行用のエンジンや舵が駆動されることはなく,従って,舵取機室9は,バラスト水処理装置20の運転時に周囲の振動を考慮する必要はなく,バラスト水処理装置20の設置場所としては最適である。なお,要すれば航海中にも処理することがあるが,これを否定するものではない(【0027】)。
バラストポンプ13の近傍という観点では,バラスト水処理装置20を機関室8内に設置することも考えられる。しかし,通常の船舶設計における機関室8内は,メンテナンスや操作性を考慮すると,特別な要件がある場合を除いて種々の機器類を配置する場所とされる。しかも,機関室8の内部は,通行性や作業性を考慮するとともに,機器類の設置及メンテナンスを可能にする必要最小限の空間を確保しているのが実情であり,実質的には余分な空間は存在しない。従って,機関室8内にバラスト水処理装置20を設置しようとすれば,機関室8を大型化するように船殻設計を変更するなど,船体構造や船型の大幅な変更が必要となる。特に,既存船に適用する場合には,機関室8を改造してバラスト水処理装置20を設置することは,船体構造の大規模な改造工事が必要となる。このような改造工事は,コストや工事期間の増大を伴うものであるから,機関室8をバラスト水処理装置20の設置場所とすることには問題が多くきわめて困難である(【0028】)。
また,舵取機室9は,機関室8の上部に配置された乗員の居住区7から近く,作業時等のアクセス面でも有利になる。このような観点から見ても,舵取機室9はバラスト水処理装置20の設置場所に適している。また,舵取機室9は船内空間であるから,海洋環境下における波浪や風雨に対する腐食対策を施す必要がなく,この点でもバラスト水処理装置20の設置場所に適している(【0029】)。
また,舵取機室9は,舵取装置の上方に比較的大きな上部空間が存在するので,たとえば図1に示すように,この空間の中間位置等にデッキ30を形成してバラスト水処理装置20を設置することも可能である。このような構成は,舵取機室9内の空間を立体的に有効利用できるので,たとえば図1に示すように,第1処理ユニット21をデッキ30上に設置し,第2処理ユニット22を舵取機室9の床面上に設置するというような分割構造を容易にする。従って,構成及び形状等が異なる各種方式のバラスト水処理装置20を設置する際には,諸条件に応じた柔軟な対応が可能となる。なお,図1に示す構成例では,デッキ30の上に第1処理ユニット21を設置しているが,特に限定されるものではない(【0030】)。
また,バラスト水処理装置20を舵取機室9に設置すると,バラスト水処理装置20がバッファタンクを必要とする方式の場合,近傍にあるボイド10に設置されるアフト・ピーク・タンク等をバッファタンクとして利用することができる。このような構成とすれば,ボイド10の空間を有効利用してバッファタンクの設置スペースを容易に確保できる。すなわち,バッファタンクは単にバラスト水を貯蔵するものであるから,船尾に位置して複雑な形状となるボイド10内であっても,空間形状の制約を受けることなく有効利用が可能である。また,大気開放型のバラスト水処理装置20の場合,その構成上万が一の際に備え船舶の喫水線40以下に設置することは避けるべきである。一方,バラストタンク6の頂部以上にバラスト水処理装置20を設置しかつ既存のバラストポンプ13を利用する場合はバラストポンプ13の吐出圧力を上げる等の余分な改造が必要となり無駄が生じる。よって,大気開放型のバラスト水処理装置20の場合は,船舶の吃水線40より上方かつバラストタンク6の頂部より下方に位置する舵取機室9に設置することは極めて合理的であると言える(【0031】)。
このように,上述した本発明の船舶によれば,今後設置が義務づけられるバラスト水処理装置20について,船体設計や船型の大幅な変更を必要とせず,しかも,新造船や既存の船舶を改造して設置する場合においても,多種多様な船舶に対して,多種多様な方式のバラスト水処理装置を容易に設置することができる。すなわち,本発明は,船舶としては必要である舵取機室9の空間を有効に利用し,配置上の制約や他の船舶構造に及ぼす影響が小さい舵取機室9が,船舶におけるバラスト水処理装置20の最適な設置場所であることを見いだしたものである(【0032】)。
また,舵取機室9は,バラストポンプ13が設置される機関室8に隣接して近いため,処理装置入口側配管系統15及び処理装置出口側配管系統16に必要となる配管長及び配管設置スペースが少なくてすみ,バラスト水処理に伴う圧力損失も最小限に抑えることができる。また,舵取機室9は非防爆エリアであるから,各種制御機器や電気機器類の制約が少なくてすむという利点もある。また,舵取機室9は,船舶の吃水より上方に位置するため,緊急時においてはバラスト水を容易に船外へ排水できるという利点もある。なお,本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく,本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる(【0033】)。

以上のように,本件明細書の全体的な要旨は,バラスト水処理装置の配設場所について,舵取機室に主眼が置かれたものであり,「非防爆エリア」に関しては,【0013】,【0014】,【0033】等に記載があるものの,その意味を含む具体的な内容については,舵取機室以外の例示はないことを,まず指摘することができる。そこで,そのように記載のある「非防爆エリア」の意味するところを,以下に検討してみる。

(1-2)出願時の技術常識の参酌
被請求人が平成24年9月5日に提出した口頭審理陳述要領書に添付した乙第2号証(「財団法人日本海事協会 2007 鋼船規則 鋼船規則検査要領 H編 電気設備」,平成19年4月発行)によれば,本件特許の出願時において,「非防爆エリア」という用語は,船舶の分野で一般的に用いられている用語であると認められ,危険場所(危険区画又は区域)の反対語である非危険場所と同義であり,防爆構造が要求されない領域,すなわち,電気機器の構造,設置及び使用について特に考慮しなければならないほどの爆発性混合気が存在しない区画又は区域を意味するものと認められる。
また,本件特許の出願時において,当業者にとって,船舶のどの場所が「非防爆エリア」であるかについても,以下の理由により明確であると認められる。
すなわち,乙第2号証には,タンカー,液化ガスばら積船及び危険化学品ばら積船のそれぞれについて,0種,1種及び2種の三段階で危険場所を分類しなければならないことが記載されており,どこを危険場所とすべきについても,危険場所の段階毎に具体的に例示されている。
また,乙第3号証(「JIS 船用電気設備-第502部:タンカー-個別規定 JIS F8074」,平成15年12月20日発行)には,危険区域の分類について詳細な規定が定められており,危険区域の分類の例についても具体的に図示されている。
これらの記載に照らせば,本件特許の出願時において,当業者にとって,船舶のどの場所が危険場所又は区域になるのかは明確であり,そうである以上,危険場所又は区域ではない「非防爆エリア」がどこかも明確であるというべきである。
また,乙第2号証,乙第3号証は,船舶を設計するにあたって遵守すべき基本指針に関するものであるから,本件特許の出願時において,「非防爆エリア」の意味はもとより,その具体的な場所についても,当業者の技術常識であったものと認めて差し支えない。
上述したように,本件明細書において,「非防爆エリア」という用語の意味が記載されておらず,操舵機室以外に「非防爆エリア」の例示は存在しない。しかしながら,上記技術常識に照らせば,本件明細書に接した当業者は,「非防爆エリア」の意味や場所を明確に理解できるというべきである。また,本件明細書において,「非防爆エリア」という用語が一般的な意味,すなわち,「電気機器の構造,設置及び使用について特に考慮しなければならないほどの爆発性混合気が存在しない区画又は区域」という意味で用いられていることは,【0033】の「舵取機室9は非防爆エリアであるから,各種制御機器や電気機器類の制約が少なくてすむという利点もある。」という記載と整合することからも明らかである。

(1-3)小括
以上のとおり,本件特許明細書には,「非防爆エリア」についての説明は存在しないが,本件特許の出願時における技術水準に照らせば,その意味は,その具体的な場所も含めて明確である。よって,訂正特許発明6は特許法36条6項2号の規定に違反しているとはいえず,特許法第123条第1項第4号の規定により無効とされるべきものではない。

(2)サポート要件(特許法36条6項1号)について
(2-1)本件特許明細書【0033】の記載事項
本件発明6の構成である「非防爆エリア」について,本件明細書の【0033】には,「また,舵取機室9は非防爆エリアであるから,各種制御機器や電気機器類の制約が少なくてすむという利点もある。」と記載されている。
ここに記載された利点は,文理上,舵取機室の副次的な効果として述べられている。しかしながら,当該記載に接した当業者は,この効果は舵取機室に限定されるものではなく,舵取機室とは無関係な「非防爆エリア」の一般的な効果として理解するというべきである。その理由は,以下のとおりである。
まず,「非防爆エリア」の意味およびその具体的な場所が当業者の技術常識であることは,上述したとおりである。「非防爆エリア」は,「電気機器の構造,設置及び使用について特に考慮しなければならないほどの爆発性混合気が存在しない区画又は区域」を意味するから,「非防爆エリア」であれば,そこに配置される電気機器の構造,設置及び使用について特に考慮する必要がないことは当然で,その結果として,「各種制御機器や電気機器類の制約が少なくてすむという利点」があることも明白である。すなわち,「各種制御機器や電気機器類の制約が少なくてすむという利点」は,「非防爆エリア」の用語の意味の裏返しであり,「非防爆エリア」が当然に備える効果を述べたものである。
そうすると,本件明細書の趣旨が全体として舵取機室に主眼を置かれており,【0033】の記載が操舵機室の効果を文理上述べているとしても,【0033】の記載に接した当業者は,「各種制御機器や電気機器類の制約が少なくてすむという利点」が舵取機室特有の効果であると理解することはなく,それとは別次元の,舵取機室には限定されない,より広義の「非防爆エリア」に着目した効果であると即座に理解するものと認めることができる。そして,かかる理解の下,「非防爆エリア」についても,舵取機室とは別に念頭に置いている独自の構成として理解するというというべきである。
よって,【0033】の記載から,バラスト水処理装置を「非防爆エリア」に配設する構成によって,「各種制御機器や電気機器類の制約が少なくてすむ」という効果を奏する,独自の技術的思想を読み取ることができ,本件発明6の「非防爆エリア」は,【0033】によってサポートされているというべきである。

(2-2)【0028】との関係
ところで,本件明細書の趣旨は,全体として,バラスト水処理装置を舵取機室に配設することに主眼を置いており,特に,【0028】には,舵取機室の優位性が機関室(「非防爆エリア」の一つ)との対比において述べられている。
本件明細書で全体として述べられている,バラスト水処理装置を舵取機室に配設するという技術的思想は,【0027】に記載されているように,舵取機室固有の特性,すなわち,操舵機室は,プロペラ及び舵の直上に位置しており,振動の問題があるため,通常機器類の設置に適さない場所(空間)として残されていることに着目したものである。
これに対して,バラスト水処理装置を「非防爆エリア」に配設するという技術的思想は,【0028】に記載されているように,「非防爆エリア」が「各種制御機器や電気機器類の制約が少なくてすむという利点」を有することに着目したものである。したがって,バラスト水処理装置を「非防爆エリア」に配設するという技術的思想は,バラスト水処理装置を舵取機室に配設する技術的思想とは,着目点の次元を異にしているものである。
バラスト水処理装置を「非防爆エリア」に配設するとの技術的思想が【0033】によってサポートされている以上,本件明細書において,全体的には,それとは次元の異なる技術的思想が示されていることや,それに比してバラスト水処理装置を「非防爆エリア」に配設することに関連する記載がさほど多くないとしても,「非防爆エリア」に関する本件発明6のサポート要件の判断を左右するものではない。
また,バラスト水処理装置を舵取機室に配設することと,これを「非防爆エリア」に配設することとは,次元を異にする別個の技術的思想であるから,前者の優位性を後者との関係で述べた【0028】の記載が存在するとしても,後者に関する記載の存在を無視すべきものではない。

(2-3)小括
以上のとおり,訂正特許発明6の「非防爆エリア」は,本件明細書の【0033】によってサポートされており,本件明細書の発明の詳細な説明の記載の範囲を超えて特許されたものではない。
よって,訂正特許発明6が特許法36条6項1号の規定に違反しているとはいえず,特許法第123条第1項第4号の規定により無効とされるべきものではない。

なお,請求人は,本件特許の出願時における意図的除外を主張するが(審判請求書,第26頁第23?27行),サポート要件に関する事情とすることはできず(甲第2号証の2の早期審査に関する事情説明書の記載から,機関室配設を除外したものと認めることもできない。),理由がない。

第7 結び
以上のとおり,無効理由1ないし無効理由4には理由がなく,訂正特許発明6は無効とされるべきものではない。

審判に関する総費用については,特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
(参考)
審決
無効2011-800251

東京都千代田区丸の内一丁目7番12号
請求人 株式会社 新来島どっく
東京都台東区上野3ー7ー7 青邦ビル4階 大滝国際特許事務所
代理人弁理士 大滝 均
東京都港区港南二丁目16番5号
被請求人 三菱重工業 株式会社
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37階 オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 藤田 考晴
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37階 オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 上田 邦生
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37階 オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 川上 美紀
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37F オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 長谷川 夕子
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37F オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 小栗 眞由美
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37階 オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 石本 貴幸
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37階 オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 三苫 貴織
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37F オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 長田 大輔
東京都千代田区丸の内一丁目6番6号
被請求人 株式会社 日立製作所
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37階 オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 藤田 考晴
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37階 オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 上田 邦生
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37階 オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 川上 美紀
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37F オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 長谷川 夕子
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37F オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 小栗 眞由美
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37階 オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 石本 貴幸
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37階 オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 三苫 貴織
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37F オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 長田 大輔
東京都豊島区東池袋四丁目5番2号
被請求人 株式会社 日立プラントテクノロジー
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37階 オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 藤田 考晴
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37階 オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 上田 邦生
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37階 オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 川上 美紀
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37F オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 長谷川 夕子
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37F オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 小栗 眞由美
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37階 オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 石本 貴幸
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37階 オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 三苫 貴織
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー37F オリーブ国際特許事務所
代理人弁理士 長田 大輔



上記当事者間の特許第4509156号発明「船舶」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結 論
訂正を認める。
特許第4509156号の請求項6に係る発明についての特許を無効とする。
特許第4509156号の請求項1ないし5に係る発明についての審判請求は,成り立たない。
審判費用は,その6分の5を請求人の負担とし,6分の1を被請求人の負担とする。

理 由
第1 手続の経緯
本件特許第4509156号の請求項1ないし7に係る発明についての出願は,平成19年9月13日に出願され,平成22年5月14日にその発明について特許の設定登録がされたものである。
以後の本件に係る手続の概要は以下のとおりである。
平成23年12月 6日 審判請求書
平成24年 3月26日 審判事件答弁書
平成24年 3月26日 訂正請求書
平成24年 9月 5日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成24年 9月 5日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成24年 9月19日 口頭審理陳述要領書(補遺)(請求人)
平成24年 9月19日 口頭審理


第2 本件特許発明
訂正前の本件特許の請求項1?7(以下「本件特許発明1?7」という。)に係る発明は,つぎのとおりである。
【請求項1】
バラスト水の取水時または排水時にバラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるバラスト水処理装置を備えている船舶であって,
前記バラスト水処理装置が船舶後方の舵取機室内に配設されていることを特徴とする船舶。
【請求項2】
前記バラスト水処理装置が前記舵取機室内またはその空間に設けたデッキに配設されていることを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記バラスト水処理装置のバッファタンクとしてアフト・ピーク・タンク等の船尾部ボイドスペースが使用されていることを特徴とする請求項1または2に記載の船舶。
【請求項4】
前記舵取機室は非防爆エリアであることを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項5】
前記舵取機室はバラストポンプが設置される機関室に隣接していることを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項6】
前記舵取機室は吃水よりも上方に位置することを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項7】
バラスト水の取水時または排水時にバラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるバラスト水処理装置を備えている船舶であって,
前記バラスト水処理装置が船舶後方の非防爆エリアに配設されていることを特徴とする船舶。」


第3 当事者の主張の概要
1.請求人の主張
請求人は,以下の理由1?4を主張して本件特許発明1?7のを無効とする,との審決を求め,証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出している。

無効理由1.特許法第29条の2について
本件特許発明1?7は,本件特許の出願の日前の特許出願であつて本件特許出願後に特許出願公開公報が発行がされ,その出願公開前に手続補正がされていない特許出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり,かつ,本件特許の各請求項に係る発明者は当該特許出願に係る発明の発明者と同一の者ではなく,また,当該特許出願についての出願時の出願人と,本件特許に係る特許権者とは同一の者ではなく,特許法第29条の2の規定に該当し,したがって,特許法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきものであるとして,甲第1号証の1を挙げている。

無効理由2.特許法第29条第1項第3号について
本件特許発明7は,本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証の1に記載された発明と同一であるから,特許法第29条第1項第3号の規定に該当し,特許法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきものである。

無効理由3.特許法第29条第2項について
本件特許発明1?7は,甲第2号証の1及び甲第3号証に記載された発明に基いて,本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は開法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきものである。

無効理由4.特許法第36条第6項第1号及び第2号について
本件特許発明7は,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載の範囲を超えて特許されたものであり,特許法第36条第6項第1号の規定に該当し,又は,本件特許発明7の構成のうちの「非防爆エリア」が不明瞭であり,結局,本件特許発明7が明確でなく,特許法第36条第6項第2号の規定に該当し,特許法第123条第1項第4号の規定により,無効とされるべきものである。

証拠としての甲第1号証?甲第3号証は以下のとおりである。
(1)甲第1号証の1:特開2008-86892号公報
(2)甲第1号証の2: 同 出願情報
(3)甲第2号証の1:特開2006-272147号公報
(4)甲第2号証の2:本件特許の出願人提出の早期審査に関する事情説明書
(5)甲第3号証:実開昭63-108891号のマイクロフイルム

また,請求人は口頭審理陳述要領書(平成24年9月5日付け)に甲第4号証?甲第6号証を周知技術を示す文献として添付しているが,そのうち,甲第5号証の2及び甲第6号証は,被請求人,請求人の双方の了解の下,証拠として採用しないこととした。

甲第4号証?甲第6号証は以下のとおりである。
(6)甲第4号証:「船舶知識のABC(池田宗雄著)」抜粋
(7)甲第5号証の1:「バラスト管装置設計基準(日本造船学会・造船設計委員会第2分会編)海分堂」抜粋
(8)甲第5号証の2:「内航船の船首尾形状の改善及びプロペラの高効率化に関する調査研究(船舶整備公団)」抜粋
(9)甲第6号証:「財団法人日本海事協会規則・検査要領2006(鋼船規則/検査要領H編電気設備)」

2.被請求人の主張
一方,被請求人は,本件特許発明1?7に対する請求人の主張する無効理由1?4に該当するものはなく,本件特許発明1?7は無効とされるべきものではない旨,以下の主張している。

無効理由1.特許法第29条の2について
甲第1号証の1には訂正後の請求項1に係る発明の「バラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置」および「(バラスト水が供給されるバラスト水処理装置が配設される)前記舵取機室は吃水線よりも上方に位置する」構成が開示されていない。
訂正後の請求項1に係る発明及び訂正後の請求項1を引用する請求項2?5に係る発明は,甲第1号証の1の願書に最初に添付した明細書または図面に記載された発明と同一ではないから,特許法第29条の2の規定に該当するものではない。

訂正後の請求項6に係る発明は,「バラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置を備えている船舶であって,バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が・・・船舶の吃水線より上方・・・に配設されている」という構成を備えているので,甲第1号証の1に記載された発明と同一とは言えない。

無効理由2.特許法第29条第1項第3号について
訂正後の請求項6に係る発明は,「バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が船舶後方の非防爆エリアで,船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されている」と訂正されている。
これに対して,甲第2号証の1には,噴流発生手段,オゾン注入手段及び静的混合手段といったバラスト水処理装置が開示されており,このバラスト水処理装置は,バラストタンク内に設けたパッケージケース内(図2及び図3等参照)あるいは機関室内(図4及び図7)に配置されている。そして,機関室内に配置される推進機関は,水中にて回転するプロペラの軸を回転させることを考慮すると,一般に機関室の床レベルは吃水線よりも下方であることは当業者において明らかで,図4及び図7に示されているように,噴流発生手段,オゾン注入ノズル及び静的混合手段は機関室の底部に設置されていることからみて,船舶の吃水線よりも明らかに下方であるといえる。 したがって,訂正後の請求項1に係る発明は,甲第2号証の1に記載された発明と明らかに相違しており,新規性を有する。

無効理由3.特許法第29条第2項について
甲第2号証の1には,噴流発生手段,オゾン注入手段及び静的混合手段といったバラスト水処理装置が開示されており,このバラスト水処理装置は,バラストタンク内に設けたパッケージケース内(図2及び図3等参照)あるいは機関室内(図4及び図7)に配置されている。
甲第2号証の1のバラスト水処理装置の設置高さは,甲第2号証の1の各図から明らかなように,機関室の床レベルすなわち船底レベル付近に配設されている。そして,機関室内に配置される推進機関は,水中にて回転するプロペラの軸を回転させることを考慮すると,一般に機関室の床レベルは吃水線よりも下方であることは当業者において明らかである。
そうすると,訂正後の請求項1に係る発明と甲第2号証の1に記載された発明とは「バラスト水処理装置が船舶後方の舵取機室内に配設されている」点,「バラスト水処理装置が配設される前記舵取機室は吃水線より上方に位置する」点で相違している。
その相違点により,訂正後の請求項1に係る発明は,「バラスト水処理装置を舵取機室内に配設することとしたので,船体構造や船型を大きく変更することなく,船舶内の空間を有効に利用して種々のバラスト水処理装置を容易に設置することができる」(本件特許明細書の【0009】),「緊急時にバラスト水を容易に船外は排水できる」(本件特許明細書の【0031】及び【0033】)という作用効果を奏する。
次に,甲第2号証の1には,バラスト水処理装置の配置については,船底部以外への配置については何ら言及されておらず,吃水線との関係でバラスト水処理装置の高さ位置を限定することについても何ら開示も示唆もないから,甲第2号証の1には上記相違点に想到する動機付けが存在せず,当業者であっても訂正後の請求項1に係る発明に容易に想到することはできない。 また,甲第3号証には,バラスト水処理装置の開示が一切ないので,仮に甲第2号証の1に甲第3号証を組み合わせたところで,訂正後の請求項1に係る発明の構成に至ることができない。
したがって,甲第2号証の1に動機付けとなる記載が一切ないのだから,甲第3号証を組み合わせたとしてもバラスト水処理装置の配置に関する訂正後の請求項1に係る発明に当業者が容易に想到することができない。
訂正後の請求項2?5に係る発明は訂正後の請求項1に係る発明の従属項とされているので,訂正後の請求項2?5に係る発明も進歩性を有するものである。

訂正後の請求項6に係る発明は,「バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が船舶後方の非防爆エリアで,船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されている」と訂正されている。
甲第2号証の1に記載された発明が,噴流発生手段,オゾン注入手段及び静的混合手段といったバラスト水処理装置が吃水線よりも下方と認められる船底レベル付近に配設されているのに対して,訂正後の請求項6に係る発明は,バラスト水が供給されるバラスト水処理装置が船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されている点で相違し,その相違点により,「バラスト水が供給されるバラスト水処理装置を吃水線より上方に配設することで,緊急時にバラスト水を容易に船外へ排水できるという作用効果を奏するとともに,さらに,バラスト水処理装置をバラストタンクの頂部よりも下方に配設することで,バラストポンプの吐出圧力を上げる等の処置が不要となる」という作用効果を奏する(【0031】及び【0033】)。
そして,甲第2号証の1には,バラスト水処理装置の配置に関して,船底部以外への配置について何ら言及されておらず,吃水線との関係でバラスト水処理装置の高さ位置を限定することについても何ら開示も示唆もない。
甲第2号証の1には上記相違点に想到する動機付けが存在しないし,バラスト水処理装置の開示が一切ない甲第3号証を組み合わせたところで,本件の訂正後の請求項6に係る発明の構成に至ることがない。
したがって,当業者であっても,甲第2号証の1及び甲第3号証から訂正後の請求項6に係る発明に容易に想到することはない。

無効理由4 特許法第36条第6項第1号及び第2号について
(1)特許法第36条第6項第1号について
本件特許明細書【0028】は,【発明を実施するための最良の形態】の中の記載である。そして,本件特許明細書では,最良の実施形態として,船舶の一例としてのLNG船について(【0016】参照),バラスト水処理装置20を舵取機室9内に配設することを説明しているに過ぎない。
したがって,本件特許明細書の全体に開示された発明は,バラスト水処理装置20が舵取機室9に配設されたものに限定されるものではない。これは,「多種多様な船舶に対して,多種多様な方式のバラスト水処理装置を船内適所に容易に設置可能とする船舶を提供すること」(【0007】参照)が本件特許発明の解決すべき課題であることを考慮すれば明らかである。
そうすると,当該【0028】の記載は,最良の実施形態である舵取機室9の有利点を機関室8との対比で説明したに過ぎず,「機関室8をバラスト水処理装置20の設置場所とすることには問題が多くきわめて困難である。」と記載されているからといって,バラスト水処理装置20を機関室8に設置することを種々の船舶構造に対して否定する根拠となるものではない。 また,仮に,当該【0028】の記載が,バラスト水処理装置20を機関室8に設置することを否定するものだとしても,これは飽くまでも舵取機室9への配置との関係で機関室8への配置を否定したに過ぎず,訂正後の請求項6の「前記バラスト水処理装置が・・・船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されている」という構成との関係で,機関室8への配置を否定したものと理解すべきものではない。
なぜなら,機関室8内であっても,バラスト水処理装置が船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されていれば,緊急時にバラスト水を容易に船外へ排水でき,バラストポンプの吐出圧力を上げる等の処置が不要となるという作用効果は当業者であれば理解できることから,当該発明は発明の詳細な説明に記載されているものと言えるからである。
以上のとおり,訂正後の請求項6に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されたものであることは明らかであるから,特許法第36条第6項第1号違反ではない。

(2)特許法第36条第6項第2号について
「防爆」という用語は当業者において周知でかつ慣用されている用語であり,「非防爆」とは,防爆に否定を意味する「非」が付加されたものなので,「防爆」ではないことを意味する。また,「エリア」は領域を意味する。 したがって,訂正後の請求項6の『非防爆エリア』は,防爆構造が要求されない領域という意味であり,これは当業者において慣用されている用語(防爆)から,一般の辞書的な解釈を用いて無理なく導き出せる用語といえ,決して不明瞭な用語ではない。
本件特許明細書の【0006】には,「(2)バラスト水処理装置を船内に配置する場合,貨物積載量の確保や可燃性貨物の積載に伴う危険区画等を考慮すると,船体中央部分に配置することを避け,船首または船尾に配置することが望ましい。」との記載がある。この記載から,前記危険区画は「防爆エリア」を意味するものであり,この危険区画を避けると記載しているのだから,危険区画を避ける場所は「非防爆エリア」を意味することは当業者に明らかといえる。
以上のとおり,訂正後の請求項6には,不明瞭な記載はないことは明らかであるから,特許法第36条第6項第2号違反ではない。


第4口頭審理における当事者の陳述の要領
1.請求人の主張
(1)無効審判請求書及び口頭審理陳述要領書に記載のとおり陳述する。
(2)訂正について
訂正された請求項1?6に対して,「吃水線」には「軽荷吃水線」,「 満載吃水線」があり,「バラストタンク」には「船底」,「船側」があ り,「吃水線」,「バラストタンク」だけでは一義的でなく不明瞭であ る。
(3)無効理由1(特許法第29条の2)について
請求項1?5に対する無効の主張を取り下げる。
請求項6に対して,甲第1号証の1にはバラスト水処理装置が機関室に あり機関室も非防爆エリアに含まれるから,吃水線が軽荷吃水線とすれ ば請求項6に係る発明は甲第1号証の1に記載されている。
(4)無効理由2(特許法第29条第1項第3号)について
請求項1?5に対して,無効の主張はしない。
請求項6に対しては,吃水線が軽荷吃水線とすれば甲第2号証の1には バラストタンク内部のパッケージケースにバラスト水処理装置があり, パッケージケースは非防爆エリアであるから,訂正後の請求項6に係る 発明は甲第2号証の1に記載されている。
(5)無効理由3(特許法第29第2項)について
請求項1?6に対して,甲第2号証ないし甲第4号証を組み合わせれば 容易に想到できるものであり,甲第3号証の「船体スペースの有効利用 をはかる目的で操舵室側面にバラストタンクを設ける」という記載が動 機付けを示唆している。
(6)無効理由4(特許法第36条第6項第1号及び第2号)について
請求項1?6に対して,バラストタンクの定義が一義的でなく依然とし て不明である。
さらに,訂正後の請求項6に対しては,「非防爆エリア」の定義が不明 であり場所が特定ができない。「非防爆エリア」に機関室が含まれると すると,「バラスト水処理装置を舵取機室に設置した」という,出願当 初の本件明細書の全体的な趣旨と矛盾する。
(7)バラスト水処理装置と吃水線の関係から,「吃水線」には「使用時」 という限定を,また「バラストタンク」には「船側」という限定を付す べきである。

2.被請求人の反論
(1)答弁書及び口頭審理陳述要領書に記載のとおり陳述する。
(2)訂正について
請求項1に「バラスト水の取水時または排水時」と規定しており,軽荷 吃水線や満載吃水線のどちらに固定する必要がない。
そもそも「軽荷吃水線」を特定することは,技術的にありえない。
バラストタンクについては,明細書【0031】でどちらでも高い方と 理解するのが妥当であり,実施形態として明細書【0016】や【図4 】では船側バラストタンクが記載されている。
吃水線については,船の用途で自ずと決まるものである。
(3)無効理由1(特許法第29条の2)について
甲第1号証の1には,吃水線の記載がない。
本件の訂正後の請求項1?6に係る発明とでは,吃水線で違いがでてい る。
(4)無効理由2(特許法第29条第1項第3号)について
甲第2号証の1の【図1】には軽荷吃水線を施す根拠がない。むしろ噴 流発生装置8等のバラスト水処理装置は軽荷吃水線以下と理解すべきで ある。
(5)無効理由3(特許法第29第2項)について
甲第2号証ないし甲第4号証を挙げているが,「広いスペースの所を有 効利用して配置する」という目的が同じだからといって,本件発明の「 バラスト水処理装置を操舵室内に配置する」ことの動機付けがあるとす るのはおかしい。
(6)無効理由4(特許法第36条第6項第1号及び第2号)について
「非防爆エリア」という言葉は明確であり,当業者には「非危険区域」 または「非危険区画」として理解できる。場所としては,船の種類によ り図面で定められており,船が決まれば自ずと明らかになる。 機関室も非防瀑エリアであり,本件明細書では実施形態で「最適場所」 として「舵取機室に設置する」ことが挙げられているものである。


第5 訂正請求について
1.本件訂正特許発明
本件特許発明1?7は,被請求人よりなされた訂正請求(平成24年3月26日付けで提出)により,次のとおり訂正されたものである。
「【請求項1】
バラスト水の取水時または排水時にバラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置を備えている船舶であって,
バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が船舶後方の舵取機室内に配設され,前記舵取機室は吃水線よりも上方に位置することを特徴とする船舶。
【請求項2】
前記バラスト水処理装置が前記舵取機室内またはその空間に設けたデッキに配設されていることを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記バラスト水処理装置のバッファタンクとしてアフト・ピーク・タンク等の船尾部ボイドスペースが使用されていることを特徴とする請求項1または2に記載の船舶。
【請求項4】
前記舵取機室は非防爆エリアであることを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項5】
前記舵取機室はバラストポンプが設置される機関室に隣接していることを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項6】
バラスト水の取水時または排水時にバラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置を備えている船舶であって,
バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が船舶後方の非防爆エリアで,船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されていることを特徴とする船舶。」(以下「訂正特許発明1?6」という。)

2.訂正の内容及び訂正請求の適否
訂正後の請求項1に係る発明は,旧請求項1に旧請求項6の限定事項及び「バラスト水処理装置」に対して「バラスト水が供給される」との限定を付したものであり,同じく請求項6に係る発明は,「バラスト水処理装置」に対して「バラスト水が供給される」及び「船舶の喫水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されている」の限定を付したものである。 そして,「吃水線」,「バラストタンク」についても技術的にみて請求人の主張するような不明瞭な記載とはいえない。
したがって,この訂正は特許請求の範囲の減縮,明瞭でない記載の釈明に該当すると認められるので,本件訂正は,特許法第134条の2第1項だたし書き第1号,第2号及び第3号に掲げる事項を目的とし,かつ同条第5項で準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので,本件訂正を認める。


第6 当審の判断
1.無効理由1.特許法第29条の2について
(1)甲第1号証の1に記載された事項および発明
甲第1号証の1には,船舶バラスト水の処理装置に関し,詳しくは,船舶の既設のバラスト水系配管に容易に組み込んで,バラスト水中に含まれる水生生物を殺滅することのできる船舶バラスト水の処理装置に関して,以下の技術事項が記載されている。

・「【0020】
本発明によれば,船舶の既設のバラスト水系配管に容易に組み込んで,バラスト水中に含まれる水生生物を殺滅することのできる実用的な船舶バラスト水の処理装置を提供することができる。」

・「【0031】
かかる既設のバラスト水系配管に,本発明に係る船舶バラスト水の処理装置13が設けられる。
【0032】
処理装置13は,以上説明したバラスト水系配管の排水管7の中途部から分岐された分岐管131に,順次,プレフィルタユニット132,オゾン混合装置133,バラストポンプ(第2のバラストポンプ)134,スリット板135及び脱気槽136が介設されている。」

・「【0036】
オゾン混合装置133は,プレフィルタユニット132を通過したバラスト水に,オゾン発生器133aによって生成されたオゾンを混入させる。オゾン発生器133aには,無声放電型,紫外線照射型等を用いることができ,図2に示すように,船体1内の船尾に配置され,図示しないポンプによって移送管133bを介してオゾン混合装置133に移送されるようになっている。」

・図1には,オゾン発生器133aとオゾン混合装置133とが間に省略記号の波線を介して接続していることが記載されている。

・図2には,オゾン発生器133aが船舶後方の上部の室内に配設され,該上部の室は水面よりも上方に位置することが記載されている。
以上の事項及び図1,図2を総合すると,甲第1号証の1には以下の発明が記載されているものと認められる。

「バラスト水中の水生生物を殺滅するバラスト水が供給されるバラスト水処理装置13及びオゾン発生器133aを備えている船舶であって, バラスト水処理装置13は,分岐管131に,順次,プレフィルタユニット132,オゾン混合装置133,バラストポンプ(第2のバラストポンプ)134,スリット板135及び脱気槽136が介設されており,オゾン発生器133aとオゾン混合装置133とは接続されており,オゾン発生器133aが船舶後方の上部の室内に配設され,前記上部の室は水面よりも上方に位置することを特徴とする船舶。」(以下「甲第1号証に記載された発明」という。)

(2)対比・判断
本件訂正特許発明1?5については,口頭審理において請求人は無効の理由を取り下げたので,検討しない。

本件訂正特許発明6について検討する。
本件訂正特許発明6は次のように訂正された。
「【請求項6】
バラスト水の取水時または排水時にバラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置を備えている船舶であって,
バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が船舶後方の非防爆エリアで,船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されていることを特徴とする船舶。」

本件訂正特許発明6と甲第1号証に記載された発明とを対比する。
甲第1号証に記載された発明の「バラスト水中の水生生物を殺滅するバラスト水が供給されるバラスト水処理装置13」は排水管7の中途部からバラスト水処理装置13が分岐されているものであるから,本件訂正特許発明6の「バラスト水の取水時または排水時に微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置」に相当している。
請求人は甲第1号証に記載された発明において「軽荷吃水線」を想定すれば,バラスト水処理装置が船舶の軽荷吃水線より上方に配設されていることになると主張する。
しかしながら,甲第1号証に記載された発明において「バラスト水処理装置13」の設置個所が「非防爆エリア」であるかどうか,「軽荷吃水線」がどこにあるのか不明である。
そもそも「軽荷吃水線」とは船舶の種類により異なるもので技術的に特定することは不可能であるから,仮に,「バラスト水処理装置13」の設置箇所が「非防爆エリア」であるとして「軽荷吃水線」を想定しようとしても,本件訂正特許発明6の「吃水線」に対応する甲第1号証に記載された発明の「軽荷吃水線」となる具体的な位置を特定することはできない。
甲第1号証に記載された発明において,「軽荷吃水線」を特定することはできない以上,甲第1号証に記載された発明において「バラスト水が供給されるバラスト水処理装置が船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されている」かどうか明らかでない。

(3)小括
したがって,本件訂正特許発明6は,甲第1号証に記載された発明とはいえないから,特許法第29条の2の規定に該当せず,これを無効とすることができない。

2.無効理由2.特許法第29条第1項第3号について
(1)甲第2号証の1に記載された事項及び発明
請求人の提出した甲2号証の1には,バラスト水処理装置を備える船舶に関して,次の技術事項が記載されている。

・「【請求項1】
バラストタンクに注入するバラスト水に含まれている微生物を殺滅するバラスト水処理装置であって,バラスト水取水口からバラストタンクに至る注水管の途中に,前記バラスト水を噴流と成す水噴射ノズル及び前記噴流が当たってキャビテーションを発生する衝撃板を有する噴流発生手段と,該噴流発生手段を経たバラスト水にオゾンを注入するオゾン注入手段と,前記オゾンとバラスト水を混合する静的混合手段と,該静的混合手段を経たバラスト水の中に残存している残存オゾンを分離又は吸着分離する手段とを設けたことを特徴とするバラスト水処理装置。」

・「【0014】
本発明者は,このような問題を解消すべく,鋭意検討して,本発明に到達したものであり,その第1の目的とするところは,IMOで締結された基準値をクリアできるバラスト水処理装置を提供することにある。
【0015】
また,本発明の第2の目的とするところは,バラストタンクにバラスト水を注入するポンプの揚水能力と同等の微生物殺滅能力を有する高性能のバラスト水処理装置を提供することにある。」

・「【0025】
上記のように,請求項1に記載の発明は,バラストタンクに注入するバラスト水に含まれている微生物を殺滅するバラスト水処理装置であって,バラスト水取水口からバラストタンクに至る注水管の途中に,前記バラスト水を噴流と成す水噴射ノズル及び前記噴流が当たってキャビテーションを発生する衝撃板を有する噴流発生手段と,該噴流発生手段を経たバラスト水にオゾンを注入するオゾン注入手段と,前記オゾンとバラスト水を混合する静的混合手段と,該静的混合手段を経たバラスト水の中に残存している残存オゾンを分離又は吸着分離する手段とを設けたことに特徴がある。
【0026】
前記水噴射ノズルによって激流を形成して急激な圧力変化を与えると,キャビテーションが発生してバラスト水の中のプランクトンなどの微生物を破壊して殺滅する。また,ポンプの駆動によってバラスト水が注水管内から水噴射ノズルに移送されると,衝撃板に衝突し,噴流による高い圧力と,負圧といった急激な圧力変化と,衝撃板への衝突による急激な衝撃板と摩擦力により,バラスト水に含まれるプランクトン等の微生物の気泡や細胞壁を破壊して殺滅する。
【0027】
その後,噴流発生手段後方のオゾン注入手段からバラスト水にオゾンを注入する。オゾンが注入されたバラスト水は,オゾン注入手段の後流側にある静的ミキサーによって攪拌され,バラスト水とオゾンとが均一に攪拌混合される。静的ミキサーによってオゾンが均一に攪拌混合されたバラスト水は,オゾン分離槽内に導入され,旋回流となる。その間に,バラスト水に含まれているプランクトンやバクテリアなどの微生物の細胞膜がオゾンによって破壊され,死滅する。
【0028】
残存オゾン分離手段であるオゾン分離槽に流入したバラスト水は,分離槽本体の内壁面に沿って旋回流を形成するため,分離槽本体内を通過するバラスト水の通過時間が長くなり,微生物を殺滅するオゾンの反応時間を稼ぐことができる。また,バラスト水中の未反応又は残存オゾンが分離し易くなる。また,オゾン分離槽内でバラスト水から分離した未反応又は残存オゾンは,排気管から系外に排出されるので,バラストタンク内にオゾンが流入することがない。
【0029】
従って,IMOで合意された基準値以下,すなわち,バラスト水に含まれているプランクトンなどの微生物の個数を10ヶ未満/m3に抑制し,バクテリアなどの細菌の個数を10ヶ未満/ccに抑制することが可能となる。 【0030】
他方,残存オゾン分離手段がオゾン吸着分離槽の場合は,バラスト水中に残存している残存オゾンがオゾン吸着分離槽内の活性炭素によって吸着分離することができる。
【0031】
また,残存オゾン分離手段が管内に充填した乱流発生体によってバラスト水に乱流を発生させるオゾン分解ゾーンの場合は,管内に充填した乱流発生体によってバラスト水に乱流を発生させることにより,残存オゾンの分離を促進させることができる。
【0032】
請求項5に記載の発明に係るバラスト水処理装置は,バラストタンクに注入するバラスト水に含まれている微生物を殺滅するバラスト水処理装置であって,バラスト水取水口からバラストタンクに至る注水管の途中に,前記バラスト水にオゾンを注入するオゾン注入手段と,前記オゾンを注入後のバラスト水を噴流と成す水噴射ノズル及び前記噴流が当たってキャビテーションを発生させる衝撃板を有する噴流発生手段と,該噴流発生手段を通過後のオゾンとバラスト水を混合させる静的混合手段と,該静的混合手段を経たバラスト水の中に残存している残存オゾンを分離又は吸着分離する手段とを設けたので,請求項1に記載の発明と同様に,IMOで合意された基準値以下,すなわち,バラスト水に含まれているプランクトンなどの微生物の個数を10ヶ未満/m3に抑制し,バクテリアなどの細菌の個数を10ヶ未満/ccに抑制することが可能となるが,オゾン注入手段の下流側に設けた噴流発生手段においてキャビテーションが発生する際に,オゾン注入手段から注入したオゾンの拡散及び混合が促進することから,プランクトンやバクテリアなどの微生物の殺滅が,より効果的に行われるという効果がある。
【0033】
更に,残存オゾン分離手段がオゾン分離槽の場合は,バラスト水が分離槽本体の内壁面に沿って旋回流を形成するため,分離槽本体内を通過するバラスト水の通過時間が長くなり,微生物を殺滅するオゾンの反応時間を稼ぐことができる一方,バラスト水中の未反応又は残存オゾンが分離し易くなる。また,オゾン分離槽内でバラスト水から分離した未反応又は残存オゾンは,排気管から系外に排出されるので,バラストタンク内にオゾンが流入することがない。
【0034】
他方,残存オゾン分離手段がオゾン吸着分離槽の場合は,バラスト水中に残存している残存オゾンがオゾン吸着分離槽内の活性炭素によって吸着分離することができる。
【0035】
また,残存オゾン分離手段が管内に充填した乱流発生体によってバラスト水に乱流を発生させるオゾン分解ゾーンの場合は,管内に充填した乱流発生体によってバラスト水に乱流を発生させることにより,残存オゾンの分離を促進させることができる。」

以上のことから,次の事項が記載されている。
「IMOで締結された基準値をクリアできるバラスト水処理装置を提供すること」,「バラストタンクにバラスト水を注入するポンプの揚水能力と同等の微生物殺滅能力を有する高性能のバラスト水処理装置を提供すること」を解決課題として,「バラストタンクに注入するバラスト水に含まれている微生物を殺滅するバラスト水処理装置であって,バラスト水取水口からバラストタンクに至る注水管の途中に,前記バラスト水を噴流と成す水噴射ノズル及び前記噴流が当たってキャビテーションを発生する衝撃板を有する噴流発生手段と,該噴流発生手段を経たバラスト水にオゾンを注入するオゾン注入手段と,前記オゾンとバラスト水を混合する静的混合手段と,該静的混合手段を経たバラスト水の中に残存している残存オゾンを分離又は吸着分離する手段とを設けた」構成とすることにより,「激流を形成して急激な圧力変化を与えると,キャビテーションが発生してバラスト水の中のプランクトンなどの微生物を破壊して殺滅する。・・・噴流による高い圧力と,負圧といった急激な圧力変化と,衝撃板への衝突による急激な衝撃板と摩擦力により,バラスト水に含まれるプランクトン等の徹生物の気泡や細胞壁を破壊して殺滅する。」等の効果を奏する。
また,甲第2号証の1の各図から明らかなように,バラスト水処理装置は,バラストタンク2内に設けたパッケージケース7内(図2及び図3等参照)あるいは機関室4内(図4及び図7)に配置され,バラスト水処理装置の設置高さは機関室4の床レベルすなわち船底レベル付近に配設されている。

このことから甲第2号証の1には次の発明が記載されているものと認められる。
「バラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるバラスト水処理装置を備えている船舶であって,
バラスト水処理装置は,バラスト水取水口からバラストタンクに至る注水管の途中に,前記バラスト水を噴流と成す水噴射ノズル及び前記噴流が当たってキャビテーションを発生する衝撃板を有する噴流発生手段と,該噴流発生手段を経たバラスト水にオゾンを注入するオゾン注入手段と,前記オゾンとバラスト水を混合する静的混合手段と,該静的混合手段を経たバラスト水の中に残存している残存オゾンを分離又は吸着分離する手段とからなり,該バラスト水処理装置はバラストタンク内に設けたパッケージケース内あるいは機関室内で,船底レベル付近に配設されている配設されることを特徴とする船舶。」(以下「甲第2号証に記載された発明」という。)

(2)対比・判断
本件訂正特許発明1?5については,請求人は無効の理由を主張していないので,検討しない。

甲第2号証に記載された発明は,船舶搭載を前提とする「バラスト水に含まれている微生物を殺滅するバラスト水処理装置」であり,「バラストタンクに注入するバラスト水を処理する」(特許請求の範囲請求項1参照),すなわち,バラスト水の「取水時」に処理するものであるから,甲第2号証に記載された発明の「バラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるバラスト水処理装置」は本件訂正特許発明6の「バラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置」に相当している。
甲第2号証に記載された発明は,甲第2号証の1の図4及び図7に示されているように,バラスト水処理装置としての噴流発生手段,オゾン注入ノズル及び静的混合手段はバラストタンク内に設けたパッケージケース内あるいは機関室内に配置されており,これは機関室の床レベルすなわち船底レベル付近に配設されており,機関室内に配置される推進機関は,水中にて回転するプロペラの軸を回転させることを考慮すると,一般に機関室の床レベルは吃水線よりも下方であることからみて,船舶の吃水線よりも下方であることが明らかである。
また,請求人が主張するように,本件訂正特許発明6の「吃水線」に対応するものとして,甲第2号証に記載された発明において「軽荷吃水線」を,仮に想定しようとしても,「軽荷吃水線」とは船舶の種類により異なるもので技術的に特定することは不可能であるから,甲第2号証に記載された発明において「軽荷吃水線」となる具体的な位置を特定することはできない。

さらに、機関室が非防爆エリアであるとしても,本件訂正特許発明6は「バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が船舶後方の非防爆エリアで,船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されている」という構成において甲第2号証に記載された発明と相違しており,このような構成を採用することにより,本件訂正特許発明6は,バラスト水処理装置を吃水線より上方に配設することで,緊急時にバラスト水を容易に船外は排水できるという作用効果を奏するとともに,さらに,バラスト水処理装置をバラストタンクの頂部よりも下方に配設することで,バラストポンプの吐出圧力を上げる等の処置が不要となるという作用効果を奏している。(明細書【0031】及び【0033】参照)

(3)小括
したがって,本件訂正特許発明6は,甲第2号証に記載された発明とは明らかに構成上相違しているから,甲2号証の1には,本件訂正特許発明6と実質的に同一のものが記載されているとはいえないので,特許法第29条第1項第3号の規定に該当するとはいえない。


3.無効理由3(特許法第29条第2項)について
(1)甲第2号証の1に記載された事項及び発明
上記の2.(1)と同じ。

(2)甲第3号証に記載された事項
甲第3号証は,「船体の動揺減少装置」に係り,「船体の操舵機室及び機関室の両側の比較的高位置に減揺用のバラストタンクを設けることにより,船体スペースの有効利用をはかると共に,高い減揺効果を得ること」を目的として,「船体の操舵機室及び,または機関室の左右両側の比較的高位置に,一対以上のバラストタンクを配設すると共に,それら各対のバラストタンクの下部を水連通管で,そして上部を空気連通管でそれぞれ連通させた」構成とすることにより,「左右のバラストタンクのバラスト水を利用して船体の動揺を滅少させることができ,・・・・バラスト水の積載量を減少させうるので,それだけ省エネルギーとなり,かつ,動揺の滅少により乗心地の改善をはかることができ,・・船体のスぺースを有効に利用できると共に,バラストタンクの位置が船体の比較的高位置に設けられていもので,それだけ動揺減少効果が大きいという利点がある。また,・・・重量増加も少なく,費用の点でも軽済的である」等の効果を奏するものである。

以上のことから,甲第3号証に記載された事項を要約すると次の事項が記載されていると認められる。
「船体の操舵機室及び,または機関室の左右両側の比較的高位置に,一対以上の揺動減少装置としてのバラストタンクを配設することにより船体スペースの有効利用をはかると共に,高い減揺効果を得ること」(以下「甲第3号証に記載された事項」という。)

(3)甲第4号証に記載された事項
甲第4号証には「吃水線」について満載吃水線及び軽荷排水量の説明としてプロペラ軸近くまで露出する軽荷吃水(船舶が乗員・荷物・燃料などを積まない状態で水に浮いたときの吃水船)線が図示されている。(以下「甲第4号証に記載された事項」という。)

(4)甲第5号証の1に記載された事項
甲第5号証の1に記載された事項を要約すると,既設のバラスト水系配管やバラストポンプは船底レベルに限るものでない旨の記載があると認められる。(以下「甲第5号証に記載された事項」という。)

(5)対比・判断
(a)本件訂正特許発明1?5について
本件訂正特許発明1と甲第2号証に記載された発明とを対比する。
甲第2号証に記載された発明は,船舶搭載を前提とする「バラスト水に含まれている微生物を殺滅するバラスト水処理装置」であり,「バラストタンクに注入するバラスト水を処理する」(特許請求の範囲請求項1,5参照),すなわち,バラスト水の「取水時」に処理するものであるから,甲第2号証に記載された発明の「バラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるバラスト水処理装置」は本件訂正特許発明1の「バラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置」に相当している。
甲第2号証に記載された発明は,甲第2号証の1の図4及び図7に示されているように,バラスト水処理装置としての噴流発生手段,オゾン注入手段及び静的混合手段といったバラスト水処理装置はバラストタンク内に設けたパッケージケース内あるいは機関室内に配置されており,バラスト水処理装置の設置高さは,機関室の床レベルすなわち船底レベル付近に配設されている。
機関室内に配置される推進機関は,水中にて回転するプロペラの軸を回転させることを考慮すると,一般に機関室の床レベルは吃水線よりも下方であることからみて,バラスト水処理装置の設置高さは船舶の吃水線よりも下方であることが明らかである。

そうすると,本件訂正特許発明1と甲第2号証に記載された発明は以下の点で相違している。

相違点;本件訂正特許発明1が「バラスト水処理装置が船舶後方の舵取機室内に配設され」,「バラスト水処理装置が配設される前記舵取機室は吃水線より上方に位置する」のに対して,甲第2号証に記載された発明では「バラスト水処理装置はバラストタンク内に設けたパッケージケース内あるいは機関室内で,吃水線よりも下方の船底レベル付近に配設されている」点で相違している。

上記の相違点を検討する。
請求人の提出した甲第3号証には「船体の操舵機室及び,または機関室の左右両側の比較的高位置に,一対以上の揺動減少装置としてのバラストタンクを配設することにより船体スペースの有効利用をはかると共に,高い減揺効果を得ること」(上記「甲第3号証に記載された事項」を参照)が記載されているが,バラスト水処理装置についての記載や示唆が一切なく,また,甲第2号証の1には,バラスト水処理装置の配置については,船底部以外への配置については何ら言及されておらず,さらに甲第4号証,甲第5号証の1を考慮しても吃水線との関係でバラスト水処理装置の高さ位置を限定することについては上記甲各号証には何ら開示も示唆もない。
また,請求人が主張するように,仮に「吃水線」として「軽荷吃水線」を想定しようとしても,「軽荷吃水線」とは船舶の種類により異なるもので技術的に特定することは不可能であるから,甲第2号証に記載された発明において「軽荷吃水線」の具体的な位置を特定することはできない。

それに対して,本件訂正特許発明1は,上記の相違点により,「バラスト水処理装置を舵取機室内に配設することとしたので,船体構造や船型を大きく変更することなく,船舶内の空間を有効に利用して種々のバラスト水処理装置を容易に設置することができる」(本件特許明細書の【0009】),「緊急時にバラスト水を容易に船外は排水できる」(本件特許明細書の【0031】及び【0033】)という作用効果を奏するものである。

したがって,甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証,甲第4号証,甲第5号証の1に記載された事項には上記相違点に想到する動機付けが存在しないばかりでなく,甲第3号証,甲第4号証,甲第5号証の1にバラスト水処理装置の開示が一切ないので,当業者が甲第2号証に記載された発明に甲第3号証,甲第4号証,甲第5号証の1に記載された事項を組み合わせたところで,本件訂正特許発明1は容易に想到することができない。

次に,本件訂正特許発明2?5は本件訂正特許発明1の従属項とされているので,同様の理由により,当業者が容易に想到することができないものである。

(b)本件訂正特許発明6について
本件訂正特許発明6は,「バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が船舶後方の非防爆エリアで,船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されている」と訂正されている。

甲第2号証に記載された発明は,船舶搭載を前提とする「バラスト水に含まれている微生物を殺滅するバラスト水処理装置」であり,「バラストタンクに注入するバラスト水を処理する」(特許請求の範囲請求項1,5参照),すなわち,バラスト水の「取水時」に処理するものであるから,甲第2号証の1の「バラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるバラスト水処理装置」は本件訂正特許発明6の「バラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置」に相当している。
甲第2号証に記載された発明は,甲第2号証の1の図4及び図7に示されているように,バラスト水処理装置としての噴流発生手段,オゾン注入ノズル及び静的混合手段はバラストタンク内に設けたパッケージケース内あるいは機関室4内に配置されており,機関室内に配置される推進機関は,水中にて回転するプロペラの軸を回転させることを考慮すると,一般に機関室の床レベルは吃水線よりも下方であることからみて,バラスト水処理装置の設置高さは船舶の吃水線よりも下方であることが明らかである。

本件訂正特許発明6と甲第2号証に記載された発明とを対比する。
甲第2号証に記載された発明の「バラストタンク内に設けたパッケージケース内あるいは機関室」が本件訂正特許発明6の「非防爆エリア」に相当するとしても,本件訂正特許発明6と甲第2号証に記載された発明とは以下の点で相違する。

相違点;本件訂正特許発明6は,「バラスト水が供給されるバラスト水処理装置が船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されている」のに対し,甲第2号証に記載された発明は「噴流発生手段,オゾン注入手段及び静的混合手段といったバラスト水処理装置が吃水線よりも下方の船底レベル付近に配設されている」点。

上記の相違点を検討する。
甲第3号証には「揺動減少装置としてのバラストタンクの配置構成として,船尾の機関室の左右両側,また機関室の後部に設けられる操舵機室にも,その上部に空気連通管等を設けるスぺースがあり,しかも,一般に水面上に設けられている操舵機室の床面に配置すること」(上記「甲第3号証に記載された事項」を参照)が記載されているが,バラスト水処理装置についての記載や示唆が一切なく,さらに,甲第2号証の1及び甲第3号証には,バラスト水処理装置の配置については,船底部以外への配置については何ら言及されておらず,さらに甲第4号証,甲第5号証の1を考慮しても吃水線との関係でバラスト水処理装置の高さ位置を限定することについても上記の甲各号証には何ら開示も示唆もない。
また,請求人が主張するように,仮に,本件訂正特許発明6の「吃水線」に対応するものとして甲第2号証に記載された発明において「軽荷吃水線」を想定しようとしても,「軽荷吃水線」とは船舶の種類により異なるもので技術的に特定することは不可能であるから,甲第2号証に記載された発明において「軽荷吃水線」となる具体的な位置を特定することはできない。

そして,本件訂正特許発明6は,上記相違点により,バラスト水が供給されるバラスト水処理装置を吃水線より上方に配設することで,緊急時にバラスト水を容易に船外へ排水できるという作用効果を奏するとともに,さらに,バラスト水処理装置をバラストタンクの頂部よりも下方に配設することで,バラストポンプの吐出圧力を上げる等の処置が不要となるという作用効果を奏するものである(本件特許明細書【0031】及び【0033】)。

したがって,甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証,甲第4号証,甲第5号証の1に記載された事項には上記相違点に想到する動機付けが存在しないばかりでなく,甲第3号証,甲第4号証,甲第5号証の1にはバラスト水処理装置に関しての記載がない。

そうすると,「バラスト水処理装置」と「バラストタンクの頂部」との位置関係について何ら記載も示唆もない甲第2号証に記載された発明にバラスト水処理装置に関する記載のない甲第3号証,甲第4号証,甲第5号証の1に記載された事項を適用する動機付けがあるとはいえないから,本件訂正特許発明6は甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証,甲第4号証,甲第5号証の1に記載された事項から当業者が容易に想到することができたものとすることができない。
(6)小括
以上のことから,本件訂正特許発明1?6は甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証,甲第4号証,甲第5号証の1に記載された事項から当業者が容易に想到することができたものとすることができないから,特許法第29条第2項の規定に該当せず,これを無効とすることができない。


4.無効理由4.特許法第36条第6項について
(1)特許法第36条第6項1号について
本件訂正特許発明6は,「バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が船舶後方の非防爆エリアで,船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されている」と訂正され,特に「バラスト水処理装置が船舶後方の非防爆エリアに配設されている」構成を特徴としている。
本件訂正特許発明6におけるバラスト水処理装置20の設置場所について,「バラストポンプ13の近傍という観点では,バラスト水処理装置20を機関室8内に設置することも考えられる。しかし,通常の船舶設計における機関室8内は,メンテナンスや操作性を考慮すると,特別な要件がある場合を除いて種々の機器類を配置する場所とされる。しかも,機関室8の内部は,通行性や作業性を考慮するとともに,機器類の設置及メンテナンスを可能にする必要最小限の空間を確保しているのが実情であり,実質的には余分な空間は存在しない。従って,機関室8内にバラスト水処理装置20を設置しようとすれば,機関室8を大型化するように船殻設計を変更するなど,船体構造や船型の大幅な変更が必要となる。特に,既存船に適用する場合には,機関室8を改造してバラスト水処理装置20を設置することは,船体構造の大規模な改造工事が必要となる。このような改造工事は,コストや工事期間の増大を伴うものであるから,機関室8をバラスト水処理装置20の設置場所とすることには問題が多くきわめて困難である(本件特許明細書【0028】参照)」と記載されており,「舵取機室9は,機関室8の上部に配置された乗員の居住区7から近く,作業時等のアクセス面でも有利になる。このような観点から見ても,舵取機室9はバラスト水処理装置20の設置場所に適している。また,舵取機室9は船内空間であるから,海洋環境下における波浪や風雨に対する腐食対策を施す必要がなく,この点でもバラスト水処理装置20の設置場所に適している(同【0029】参照)」としていることからみて,本件特許の明細書の趣旨は,バラスト水処理装置20を機関室8ではなく舵取機室9に配設することが適するとしていることである。

そうすると,「非防爆エリア」という語は,当業者において「非危険区域」や「非危険区画」と解釈すると,「バラスト水処理装置」は船舶後方の舵取機室以外の場所(機関室も含む)でもよいことになり,これは本件特許の明細書の趣旨からみて,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載の範囲を超えて特許されたことになり,特許法第36条第6項第1号の規定に違背し,特許法第123条第1項第4号の規定により,無効とされるべきものである。

(2)特許法第36条第6項第2号について
本件特許明細書【0033】には「舵取機室9は非防爆エリアであるから,各種制御機器や電気機器類の制約が少なくてすむという利点もある」と記載され,「非防爆エリア」という語は,当業者において「非危険区域」や「非危険区画」と解釈できるが,本件特許明細書には舵取機室9以外に具体的な場所を特定しているものではないので,「非防爆エリア」が具体的に船舶後方のどの区画を示しているのか不明瞭であり,特許法第36条第6項第2号の規定に違背し,特許法第123条第1項第4号の規定により,無効とされるべきものである。

(3)小括
したがって,本件訂正特許発明6は,特許法第36条第6項第1号の規定に違背する,又は,特許法第36条第6項第2号の規定に違背することになり,特許法第123条第1項第4号の規定により,無効とすべきものである。

第7.まとめ
以上のとおりであるから,本件訂正特許発明6は,特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定により特許を受けることができないので,その特許は無効とされるべきものである。
そして,請求人の主張及び証拠方法によっては,本件特許発明1?5の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第64条の規定により,請求人が6分の5,被請求人が6分の1を負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
船舶
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば船舶のバラスト水に含まれる微生物類を処理して除去または死滅させるバラスト水処理装置を備えた船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶のバラスト水は、船体の姿勢制御や復原性確保のためにバラストタンクに積載される海水または淡水であり、船舶の安全運航上欠くことのできないものである。このバラスト水は、空船時にポンプでバラスト水を吸い込んでバラストタンク内に積載(取水)し、貨物を積み込む港において積荷の進行に合わせて排出(排水)される。
上述したバラスト水には、種々の微生物類(水生生物)が含まれている。この微生物類には、微小な生物(バクテリア等の微生物やプランクトン等の浮遊生物等)に加えて、魚類等の卵や幼生等も含まれる。
【0003】
従って、バラスト水は積載地と異なる港(水域)に排水されることとなるため、バラスト水とともに移動した微生物類が新たな環境に定着すれば、その水域の生態系や水産業等の経済活動に影響を与えることが懸念される。また、バラスト水とともに移動した一部の病原菌は、人体の健康に直接影響を与えることも懸念される。
このため、国際海事機関(International Maritime Organization:IMO)においては、バラスト水に含まれる微生物類の管理に関する条約が批准され、バラスト水の取水時または排水時に微生物類を除去または死滅させることが求められる。
【0004】
このようなバラスト水中の微生物類を除去または死滅させる装置としては、流路内に設けたスリット板をバラスト水が所定流速以上で通過するようにして、スリット通過により乱れた流れの内部に存在する剪断現象(場所による流速の急激な差)を利用し、この剪断により液中の微生物を破壊して殺減する液中微生物殺滅装置が提案されている。また、スリット位置をずらしたスリット板を前後に配置しておき、前のスリット板で剪断により破壊されなかった微生物については、前のスリット板で発生させたキャビテーションを後側のスリット板で潰す際に生じる衝撃圧を利用して破壊することにより、さらに殺減させるようにした液中微生物殺滅装置も提案されている。(たとえば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開2003-200156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したバラスト水処理装置は、荷役の進行と略同時に吸入または排水されるバラスト水を処理するものであるから、高い処理速度(たとえば、大型原油タンカーの場合には7000m3/hr程度)が求められる。このため、バラスト水処理装置自体が大型化する傾向にあり、船舶にバラスト水処理装置の適当な設置場所を確保することは、下記の理由により困難な状況にある。
【0006】
(1)バラスト水処理装置は、電気や薬剤などを使用する高度な処理レベルが求められるため、海洋環境下での波浪・風雨に対する耐食性を考慮すると、甲板等の船外よりも船内に設置することが好ましい。
(2)バラスト水処理装置を船内に配置する場合、貨物積載量の確保や可燃性貨物の積載に伴う危険区画等を考慮すると、船体中央部分に配置することを避け、船首または船尾に配置することが望ましい。
(3)一般的な船舶設計では、バラストポンプ等の機器類は船尾の機関室に配置される。このため、船首にバラスト水処理装置を配置すると、船尾のバラストポンプ近傍に設けられた取水口から船首まで長距離の配管が必要となる。
【0007】
このように、今後設置が義務づけられるバラスト水処理装置について、船体設計の大幅な変更を必要とせず、しかも、新造船に設置する場合はもとより、既存の船舶を改造して設置する場合にも容易に適用可能な構造の船舶が望まれる。すなわち、新造船や既存船の区別がなく、しかも、タンカー(LPG船、LNG船、油送船等)、貨物船(コンテナ船、ロールオン/ロールオフ船、一般貨物船等)及び専用船(ばら積貨物船、鉱石運搬船、自動車運搬船等)等のように多種多様な船舶(特に一般商船)に対して、多種多様な方式のバラスト水処理装置を船内適所に容易に設置可能とする構造の船舶が望まれている。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、多種多様な船舶に対して、多種多様な方式のバラスト水処理装置を船内適所に容易に設置可能とする船舶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明の請求項1に係る船舶は、バラスト水の取水時または排水時にバラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置を備えている船舶であって、バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が船舶後方の舵取機室内に配設され、前記舵取機室は吃水線よりも上方に位置することを特徴とするものである。
【0009】
このような船舶によれば、バラスト水処理装置を船舶後方の舵取機室内に配設するようにしたので、船体構造や船型を大きく変更することなく、船舶内の空間を有効に利用して種々のバラスト水処理装置を容易に設置することができる。
また、上記の船舶において、前記舵取機室は吃水線よりも上方に位置するので、緊急時にバラスト水を容易に船外へ排水することができる。
【0010】
上記の船舶においては、前記バラスト水処理装置を前記舵取機室内の空間に設けたデッキに配設することが好ましく、これにより、舵取機室内の空間をより一層有効に利用して、すなわち、空間を立体的に有効利用して種々のバラスト水処理装置を設置することができる。
【0011】
また、上記の船舶においては、前記バラスト水処理装置のバッファタンクとしてアフト・ピーク・タンク等の船尾部ボイドスペースを使用することが好ましく、これにより、バッファタンクを必要とする方式のバラスト水処理装置であっても、バッファタンクの新設が不要となる。
【0012】
また、上記の船舶において、前記舵取機室は非防爆エリアであることが好ましく、これにより、各種制御機器や電気機器類の制約が少なくなる。
また、上記の船舶において、前記舵取機室はバラストポンプが設置される機関室に隣接していることが好ましく、これにより、バラスト水処理に伴う圧力損失を最小限に抑えることができる。
【0013】
本発明の請求項6に係る船舶は、バラスト水の取水時または排水時にバラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置を備えている船舶であって、バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が船舶後方の非防爆エリアで、船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されていることを特徴とするものである。
【0014】
このような船舶によれば、バラスト水処理装置が船舶後方の非防爆エリアに配設されているので、船体構造や船型を大きく変更することなく、船舶後方の非防爆エリアを有効に利用して種々のバラスト水処理装置を容易に設置することができる。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明の船舶によれば、今後義務づけられるバラスト水処理装置を設置する際、船体設計や船型の大幅な変更を必要とせず、しかも、新造船や既存の船舶を改造して設置する場合においても、多種多様な船舶に対して、多種多様な方式のバラスト水処理装置を容易に設置可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る船舶の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図4は、船舶の一例としてLNG船1の船体構造を示す図である。このLNG船1は、船体前方より順に、船首部2、船体中央部3及び船尾部4に分類される。
船首部2は、LNG船1の航行方向前方に位置する部分であり、船首側倉庫等が設けられている。船首部2の後方に配置された船体中央部3には、複数(図示の例では3基)のLNGタンク5が船体軸線に沿って配列されている。また、船体中央部3には、球形としたLNGタンク5の下部周辺に形成される空間を利用して、複数に分割されたバラストタンク6が船体の左右両側に形成されている。
【0017】
船体中央部3の後方となる船尾部4には、たとえば図1に示すように、居住区7と、機関室8と、舵取機室9と、ボイド10とが設けられている。なお、図中の符号11は、LNG船1の船尾に設けられた船舶推進用のプロペラである。
居住区7は、船尾部4の上部前方に配置された空間部分であり、LNG船1の操舵室や乗員居室等が設けられている。
機関室8は、居住区7の下方に配置された空間部分であり、たとえばプロペラ11の駆動源となるエンジンやLNG船1内で使用する電力の発電設備など、各種の機械設備が設置されている。
舵取機室9は、機関室8の後方上部に配置された空間部分であり、LNG船1の舵(図示省略)を駆動させるための機械設備(舵取装置)等が設置されている。
ボイド10は、舵取機室9の下方または前方に形成された空間部分であり、船尾3の下部で船幅が絞られているため狭い空間となっている。このボイド10は、必要に応じてアフト・ピーク・タンク(aft peak tank)等の設置空間として利用される。
【0018】
上述したLNG船1の適所には、バラスト水処理装置20が設けられている。このバラスト水処理装置20は、船体の姿勢制御や復原性確保を目的としてバラストタンク6に積載されるバラスト水に含まれる種々の微生物類を除去または死滅させる装置である。すなわち、バラスト水処理装置20は、積み荷の状態等に応じてバラストタンク6内に取水したバラスト水が貨物の積載量を増すにつれて排水されることから、バラスト水に含まれる微生物類を除去または死滅させた状態で排水できるように取水時または排水時に処理して、取水港周辺に生息する微生物類が他の海域に排水されて生態系に影響を及ぼすことを防止するための装置である。
【0019】
上述したバラスト水処理装置20は、船舶後方となる船尾部4の舵取機室9内に配置されている。
図1に示すバラスト水処理装置20は、第1処理ユニット21及び第2処理ユニット22を備えている。この場合の第1処理ユニット21及び第2処理ユニット22は、必要な処理能力をふたつのユニットに分割して配置したものであり、いずれのユニットも舵取機室9内に配置されている。なお、バラスト水処理装置20については、第1処理ユニット21及び第2処理ユニット22に分割する構成に限定されることはなく、処理方式や諸条件に応じて適宜変更可能である。
【0020】
図1において、図中の符号12はバラスト水の取水口、13はバラストポンプを示しており、取水口12から取水したバラスト水は、バラスト水配管系統14を通ってバラストタンク6へ供給される。
バラスト水処理装置20は、取水口12から取水したバラストをバラストタンク6へ供給するバラスト水配管系統14と処理装置入口側配管系統15、処理装置出口側配管系統16を介して連結されている。
図2及び図3は、バラスト水処理装置20、バラストポンプ13の運転により取水口12からバラストタンク6へバラスト水を供給するバラスト水配管系統14、そして、バラスト水処理装置20とバラスト水配管系統14との間を連結する処理水配管系統15の構成例を示す配管系統図である。なお、図2及び図3において、図中の符号17はバラスト水の排水口、V1?V7は開閉弁、CV1は逆止弁を示している。
【0021】
また、図2及び図3の配管系統例では、バラスト水処理装置20が1ユニットとされ、図2は取水時の流れを示し、図3は排水時の流れを示している。
図2に示すバラスト水の取水時には、バラストポンプ13を運転することにより取水口12よりバラスト水が吸入される。取水口12より吸入されたバラスト水は、開状態の開閉弁V1を備えたバラスト水配管14a及びバラスト水配管14bを通ってバラストポンプ13内に流入する。このバラスト水はバラストポンプ13により加圧送水され、逆止弁CV1を備えたバラスト水配管14b及び処理装置入口側配管15aを通ってバラスト水処理装置20へ供給される。
【0022】
上述した逆止弁CV1は、バラストポンプ13からバラスト水処理装置20へ向かう方向(図中に矢印で示す方向)の流れのみを許容する。また、このようなバラスト水の取水時においては、処理水配管15aに設けた開閉弁V6が開とされ、バラスト水配管14cに設けた開閉弁V2、バラスト水配管14fに設けた開閉弁V3及びバラスト水配管14gに設けた開閉弁V4,V5は全て閉とされる。バラスト水処理装置20に供給されたバラスト水は、バラスト水内に含まれる微生物類を除去または死滅させる処理を受けた後、開閉弁V7、処理装置出口側配管16、バラスト水配管14d及びバラスト水配管14eを通ってバラストタンク6に積載される。従って、バラストタンク6内には、微生物類が除去または死滅させられた状態のバラスト水が積載されることとなる。
なお、バラスト水処理装置20がバッファタンクを用いる場合は、処理装置出口側配管系統16の代わりに、バッファタンク用取水口12’と処理済水移送ポンプ13’、処理済水移送配管系統16’を介して連結されることとなり、バラスト水の流れとしてはその箇所のみ変更となる。
【0023】
続いて、バラスト水の排水時について、図3を参照して説明する。なお、この排水時には、開閉弁V1,V6,V7が開から閉とされ、開閉弁V3,V4,V5が閉から開に変更される。
図3に示すバラスト水の排水時には、バラストポンプ13を運転することにより、バラストタンク6内のバラスト水が吸入される。バラストタンク6より吸入されたバラスト水は、バラスト水配管14e、開状態の開閉弁V3を備えたバラスト水配管14f及びバラスト水配管14bを通ってバラストポンプ13内に流入する。このバラスト水はバラストポンプ13により加圧送水され、逆止弁CV1を備えたバラスト水配管14b及び開閉弁V4,V5を備えたバラスト水配管14gを通って排水口17より船外へ排水される。
【0024】
このようにして、バラスト水の取水時にバラスト水中の微生物類を除去または死滅させる処理を施すことで、バラストスタンク6内に積載されるバラスト水は微生物類が生息していないものと同等と見なせる。従って、LNG船1がバラスト水を積載して積荷の積載港へ航行し、同港で積載作業の進行に合わせてバラスト水を船外へ排水しても、積載港周辺水域の生態系に影響を及ぼすことはない。
ところで、上述した説明では、バラスト水の取水時にバラスト水処理装置20を通して微生物類を処理しているが、排水時に処理するようにしてもよい。
【0025】
さて、上述したバラスト水処理装置20は、LNG船1の後方となる舵取機室9内に配置されている。このバラスト水処理装置20は、荷役の進行に合わせて取水または排水されるバラスト水を処理するため、高い処理速度が求められて大型化する。このため、バラスト水処理装置20の設置には、大きなスペースが必要となる。また、バラスト水処理装置20には、種々の方式が存在するため、現状では大きな設置スペースが必要なことに変わりはないものの、設置スペースとして求められる条件(形状等)は多種多様となる。
【0026】
LNG船1のような通常の船舶は、プロペラ11及び航行用エンジンが船体後方に配置されている。このため、バラストポンプ13は、特別な事情がなければ船体後方の機関室8内に設置される。従って、バラスト水処理装置20は、配管長及び配管設置スペースの増加を抑制するため、バラストポンプ13の近傍に設置することが望ましい。
一方、舵取機室9は機関室8に隣接し、しかも、プロペラ11及び舵の直上に位置しているので、これらの駆動に起因する振動対策等から比較的広い空間が設けられている。このため、舵取機室9の内部には、バラスト水処理装置20の設置が可能となる大きな設置空間を容易に確保することができる。すなわち、舵取機室9には、船体構造や船型を大きく変更することなく、バラスト水処理装置20の設置に必要な空間を容易に確保することができる。
【0027】
具体的に説明すると、舵取機室9の空間は、上述した振動の問題があるため、通常機器類の設置に適さない場所(空間)として残されている。しかし、バラスト水処理装置20は、主としてLNG船1の停船時に使用されるものであるから、上述した振動のない状態での使用が可能となる。本発明者らは、上述した船舶構造に着目し、舵取機室9がバラスト水処理装置20の設置場所として最適であること発見したものである。
すなわち、バラスト水の取水または排水は、船舶が港に停船して荷役作業を行う際に実施されるので、バラスト水処理装置20の運転時には船舶航行用のエンジンや舵が駆動されることはなく、従って、舵取機室9は、バラスト水処理装置20の運転時に周囲の振動を考慮する必要はなく、バラスト水処理装置20の設置場所としては最適である。なお、要すれば航海中にも処理することがあるが、これを否定するものではない。
【0028】
バラストポンプ13の近傍という観点では、バラスト水処理装置20を機関室8内に設置することも考えられる。しかし、通常の船舶設計における機関室8内は、メンテナンスや操作性を考慮すると、特別な要件がある場合を除いて種々の機器類を配置する場所とされる。しかも、機関室8の内部は、通行性や作業性を考慮するとともに、機器類の設置及メンテナンスを可能にする必要最小限の空間を確保しているのが実情であり、実質的には余分な空間は存在しない。従って、機関室8内にバラスト水処理装置20を設置しようとすれば、機関室8を大型化するように船殻設計を変更するなど、船体構造や船型の大幅な変更が必要となる。
特に、既存船に適用する場合には、機関室8を改造してバラスト水処理装置20を設置することは、船体構造の大規模な改造工事が必要となる。このような改造工事は、コストや工事期間の増大を伴うものであるから、機関室8をバラスト水処理装置20の設置場所とすることには問題が多くきわめて困難である。
【0029】
また、舵取機室9は、機関室8の上部に配置された乗員の居住区7から近く、作業時等のアクセス面でも有利になる。このような観点から見ても、舵取機室9はバラスト水処理装置20の設置場所に適している。
また、舵取機室9は船内空間であるから、海洋環境下における波浪や風雨に対する腐食対策を施す必要がなく、この点でもバラスト水処理装置20の設置場所に適している。
【0030】
また、舵取機室9は、舵取装置の上方に比較的大きな上部空間が存在するので、たとえば図1に示すように、この空間の中間位置等にデッキ30を形成してバラスト水処理装置20を設置することも可能である。このような構成は、舵取機室9内の空間を立体的に有効利用できるので、たとえば図1に示すように、第1処理ユニット21をデッキ30上に設置し、第2処理ユニット22を舵取機室9の床面上に設置するというような分割構造を容易にする。従って、構成及び形状等が異なる各種方式のバラスト水処理装置20を設置する際には、諸条件に応じた柔軟な対応が可能となる。
なお、図1に示す構成例では、デッキ30の上に第1処理ユニット21を設置しているが、特に限定されるものではない。
【0031】
また、バラスト水処理装置20を舵取機室9に設置すると、バラスト水処理装置20がバッファタンクを必要とする方式の場合、近傍にあるボイド10に設置されるアフト・ピーク・タンク等をバッファタンクとして利用することができる。
このような構成とすれば、ボイド10の空間を有効利用してバッファタンクの設置スペースを容易に確保できる。すなわち、バッファタンクは単にバラスト水を貯蔵するものであるから、船尾に位置して複雑な形状となるボイド10内であっても、空間形状の制約を受けることなく有効利用が可能である。
また、大気開放型のバラスト水処理装置20の場合、その構成上万が一の際に備え船舶の喫水線40以下に設置することは避けるべきである。一方、バラストタンク6の頂部以上にバラスト水処理装置20を設置しかつ既存のバラストポンプ13を利用する場合はバラストポンプ13の吐出圧力を上げる等の余分な改造が必要となり無駄が生じる。よって、大気開放型のバラスト水処理装置20の場合は、船舶の吃水線40より上方かつバラストタンク6の頂部より下方に位置する舵取機室9に設置することは極めて合理的であると言える。
【0032】
このように、上述した本発明の船舶によれば、今後設置が義務づけられるバラスト水処理装置20について、船体設計や船型の大幅な変更を必要とせず、しかも、新造船や既存の船舶を改造して設置する場合においても、多種多様な船舶に対して、多種多様な方式のバラスト水処理装置を容易に設置することができる。すなわち、本発明は、船舶としては必要である舵取機室9の空間を有効に利用し、配置上の制約や他の船舶構造に及ぼす影響が小さい舵取機室9が、船舶におけるバラスト水処理装置20の最適な設置場所であることを見いだしたものである。
【0033】
また、舵取機室9は、バラストポンプ13が設置される機関室8に隣接して近いため、処理装置入口側配管系統15及び処理装置出口側配管系統16に必要となる配管長及び配管設置スペースが少なくてすみ、バラスト水処理に伴う圧力損失も最小限に抑えることができる。
また、舵取機室9は非防爆エリアであるから、各種制御機器や電気機器類の制約が少なくてすむという利点もある。
また、舵取機室9は、船舶の吃水線より上方に位置するため、緊急時においてはバラスト水を容易に船外へ排水できるという利点もある。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る船舶の一実施形態として、バラスト水処理装置を設けた船舶の船尾部拡大図である。
【図2】バラスト水処理装置の取水時系統図である。
【図3】バラスト水処理装置の排水時系統図である。
【図4】船舶の一例としてLNG船の全体構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 LNG船
4 船尾部
6 バラストタンク
7 居住区
8 機関室
9 舵取機室
10 ボイド
12 取水口
12’ バッファタンク用取水口
13 バラストポンプ
13’ 処理済水移送ポンプ
14 バラスト水配管系統
15 処理装置入口側配管系統
16 処理装置出口側配管系統
16’ 処理済水移送配管系統
17 排水口
20 バラスト水処理装置
30 デッキ
40 吃水線
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラスト水の取水時または排水時にバラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置を備えている船舶であって、
バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が船舶後方の舵取機室内に配設され、
前記舵取機室は吃水線よりも上方に位置することを特徴とする船舶。
【請求項2】
前記バラスト水処理装置が前記舵取機室内またはその空間に設けたデッキに配設されていることを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記バラスト水処理装置のバッファタンクとしてアフト・ピーク・タンク等の船尾部ボイドスペースが使用されていることを特徴とする請求項1または2に記載の船舶。
【請求項4】
前記舵取機室は非防爆エリアであることを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項5】
前記舵取機室はバラストポンプが設置される機関室に隣接していることを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項6】
バラスト水の取水時または排水時にバラスト水中の微生物類を処理して除去または死滅させるとともにバラスト水が供給されるバラスト水処理装置を備えている船舶であって、
バラスト水が供給される前記バラスト水処理装置が船舶後方の非防爆エリアで、船舶の吃水線より上方かつバラストタンクの頂部よりも下方に配設されていることを特徴とする船舶。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2014-04-11 
結審通知日 2014-04-16 
審決日 2014-05-07 
出願番号 特願2007-238381(P2007-238381)
審決分類 P 1 113・ 121- YA (B63B)
P 1 113・ 537- YA (B63B)
P 1 113・ 16- YA (B63B)
P 1 113・ 113- YA (B63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北村 亮  
特許庁審判長 大熊 雄治
特許庁審判官 平田 信勝
山口 直
登録日 2010-05-14 
登録番号 特許第4509156号(P4509156)
発明の名称 船舶  
代理人 石本 貴幸  
代理人 三苫 貴織  
代理人 藤田 考晴  
代理人 川上 美紀  
代理人 長田 大輔  
代理人 三苫 貴織  
代理人 長谷川 夕子  
代理人 小栗 眞由美  
代理人 藤田 考晴  
代理人 石本 貴幸  
代理人 川上 美紀  
代理人 小栗 眞由美  
代理人 上田 邦生  
代理人 長田 大輔  
代理人 小栗 眞由美  
代理人 上田 邦生  
代理人 大滝 均  
代理人 川上 美紀  
代理人 上田 邦生  
代理人 長谷川 夕子  
代理人 長田 大輔  
代理人 藤田 考晴  
代理人 石本 貴幸  
代理人 長谷川 夕子  
代理人 三苫 貴織  
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