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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C12N |
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管理番号 | 1290225 |
審判番号 | 不服2011-13625 |
総通号数 | 177 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-06-27 |
確定日 | 2014-07-28 |
事件の表示 | 特願2001-565895「KCNB:新規なカリウムチャネルタンパク質」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 9月13日国際公開、WO01/66741、平成16年 1月15日国内公表、特表2004-500825〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成13年(2001年)3月2日(優先権主張 2000年3月3日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年1月13日付けで特許請求の範囲について手続補正がなされたが、同年2月23日付けで拒絶査定がされたところ、同年6月27日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同日付けで特許請求の範囲について手続補正がなされたものである。 第2 平成23年6月27日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成23年6月27日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成23年6月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項6は以下のように補正された(下線部が補正箇所である。)。 補正前: 「【請求項6】 配列番号1に対して75%より高いアミノ酸配列同一性を含むポリペプチドを過剰発現する癌細胞の増殖を阻害するための組成物であって、治療有効量の該ポリペプチドのインヒビターを含有する、組成物。」 補正後: 「【請求項6】 配列番号1に対して75%よりも高いアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを過剰発現する癌細胞の増殖を阻害するための組成物であって、治療有効量の該ポリペプチドのインヒビターを含有し、該インヒビターは抗体またはアンチセンスポリヌクレオチドである、組成物。」 2.補正の適否 本件補正は、補正前の請求項6の発明特定事項である「ポリペプチドのインヒビター」が「抗体またはアンチセンスポリヌクレオチド」であることを限定する補正事項を含むものであって、補正前後の請求項6に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、平成18年法律第55号附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という)第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、補正後の請求項6に記載されている事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定を満たすものであるか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、平成23年6月27日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項6に記載された次のとおりのものである。 「【請求項6】 配列番号1に対して75%よりも高いアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを過剰発現する癌細胞の増殖を阻害するための組成物であって、治療有効量の該ポリペプチドのインヒビターを含有し、該インヒビターは抗体またはアンチセンスポリヌクレオチドである、組成物。」 (2)当審の判断 本願補正発明は、「配列番号1に対して75%よりも高いアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドのインヒビター」である「抗体またはアンチセンスポリヌクレオチド」を有効成分として含有する「配列番号1に対して75%よりも高いアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを過剰発現する癌細胞の増殖を阻害するための組成物」に係る発明である。 これに対して、本願の発明の詳細な説明には、配列番号1のアミノ酸配列からなるKCNBは、カリウムチャンネルタンパク質であること(段落【0219】及び【0238】)、乳房腫瘍サンプルでは50%が、肺腫瘍サンプルでは35%が、前立腺腫瘍では15%が、正常組織と比較して5倍以上大きなレベルのKCNB mRNA発現を示したこと(段落【0226】?【0234】)、KCNBの発現は、TNF-α誘導細胞死から細胞を保護することが示されている(段落【0239】)。 そして、KCNBを調節し得る分子として同定されたインヒビターは、多くの治療適用のために有用であること(段落【0167】)、KCNB活性を調節するKCNBのモジュレーターは、癌の処置のために使用され得ること(段落【0197】)、KCNB活性を調節するために患者に投与され得る化合物として、抗体及びアンチセンスが使用され得ること(段落【0198】及び【0200】)は記載されているものの、実際に、配列番号1のアミノ酸配列からなるKCNBのインヒビターを調製したことについても、該インヒビターを含む組成物が、癌を処置できたことについても、実施例等の具体的な記載は全く存在しない。 そして、癌において発現量が増加しているポリペプチドの活性を阻害するインヒビターが必ず癌の治療に使用できるものではないことは、本願出願時の技術常識であった。 そうすると、本願の発明の詳細な説明に、配列番号1のアミノ酸配列からなるKCNBのインヒビターが癌細胞の増殖を阻害することについて、具体的な記載が全く存在しない以上、本願出願時の技術常識を考慮しても、「配列番号1に対して75%よりも高いアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドのインヒビター」である「抗体またはアンチセンスポリヌクレオチド」を有効成分として含有する「配列番号1に対して75%よりも高いアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを過剰発現する癌細胞の増殖を阻害するための組成物」が使用できるように本願の発明の詳細な説明が記載されているとは、当業者は認識しないというべきである。 よって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願補正発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、本願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 (3)審判請求人の主張について 審判請求人は、本願出願後に頒布された刊行物である甲第1号証?甲第3号証を提出し、KCNBのインヒビターが抗腫瘍作用を有することが記載されていることを説明し、本願明細書の0196段落?0202段落などには、KCNBの阻害によって癌細胞の増殖を阻害することを当業者が理解できるように記載されているから、本願補正発明の効果を確認する出願後の実験データを記載する甲第1号証?甲第3号証は参酌されるべきであることを主張する。 しかしながら、審判請求人が指摘する本願の発明の詳細な説明の段落【0196】?【0202】の記載は、KCNBのインヒビターである抗体及びアンチセンスポリヌクレオチドは癌の処置のために使用できる可能性があることを記載しているに過ぎず、KCNBのインヒビターは癌細胞の増殖を阻害するために使用できることを具体的に裏付ける記載ではない。 そして、十分な開示の代償として独占権を与えるという特許制度の趣旨、及び先願主義という我が国特許制度の基本原則からみて、発明の詳細な説明の記載要件は、あくまでも出願当初の明細書の記載及び出願時の技術常識から判断されるのが妥当であるから、甲第1号証?甲第3号証のような本願出願後に頒布された刊行物の記載によって、発明の詳細な説明の記載不足を補うことはできない。 よって、審判請求人の主張は採用できない。 (4)小括 以上のとおり、本願補正発明に関して、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 したがって、本願補正発明は、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成23年6月27日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成23年1月13日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された発明特定事項により特定されるものであるところ、その請求項6に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「【請求項6】 配列番号1に対して75%より高いアミノ酸配列同一性を含むポリペプチドを過剰発現する癌細胞の増殖を阻害するための組成物であって、治療有効量の該ポリペプチドのインヒビターを含有する、組成物。」 2.原査定の理由 原査定の理由は、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たさず、特許を受けることができないというものである。 3.当審の判断 本願発明は、上記第2の2.(1)に示した本願補正発明における「該インヒビターは抗体またはアンチセンスポリヌクレオチドである」という発明特定事項を有しないものであるが、「該インヒビターは抗体またはアンチセンスポリヌクレオチドである」場合を包含するものであることは明らかであるから、上記第2の2.で述べたのと同様の理由により、本願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 第4 まとめ 以上のとおり、請求項1に関して、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-02-24 |
結審通知日 | 2014-02-25 |
審決日 | 2014-03-20 |
出願番号 | 特願2001-565895(P2001-565895) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
Z
(C12N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森井 文緒 |
特許庁審判長 |
今村 玲英子 |
特許庁審判官 |
▲高▼ 美葉子 冨永 みどり |
発明の名称 | KCNB:新規なカリウムチャネルタンパク質 |
代理人 | 安村 高明 |
代理人 | 山本 秀策 |
代理人 | 森下 夏樹 |