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審判番号(事件番号) データベース 権利
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判定2014600009 審決 特許
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判定2014600047 審決 特許

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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) B25F
管理番号 1290576
判定請求番号 判定2014-600021  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2014-09-26 
種別 判定 
判定請求日 2014-05-28 
確定日 2014-08-18 
事件の表示 上記当事者間の特許第4399866号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号写真に示す充電式インパクトドライバTD145Dは、特許第4399866号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号写真に示す充電式インパクトドライバTD145D(以下、これを「イ号物件」という。)は、特許第4399866号の請求項1及び請求項2に係る特許発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

第2 手続の経緯及び本件特許発明
1 手続の経緯
平成14年 2月22日 原出願(特願2002-46928号)
平成17年 7月28日 本件出願を分割出願
(特願2005-218188号)
平成20年 2月15日 拒絶理由通知(起案日)
平成20年 4月22日 意見書提出
平成21年 5月14日 拒絶理由通知(起案日)
平成21年 7月13日 意見書及び補正書提出
平成21年10月 1日 特許査定(起案日)
平成21年11月 6日 設定登録
平成25年11月22日 請求人日立工機株式会社による判定請求
(判定2013-600044号。以下、
「第1事件」という。)
平成26年 5月 1日 第1事件取下
平成26年 5月28日 請求人日立工機株式会社による本件判定請求
平成26年 5月28日 請求人上申書提出
平成26年 6月25日 被請求人株式会社マキタ答弁書提出

2 本件特許発明
本件特許第4399866号の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された発明は、特許請求の範囲、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1及び2に係る発明(以下、「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」という。)の構成要件を分説すると以下のとおりである(以下、「構成要件A」などという。)。なお、この分説は請求人の判定請求書(以下、単に「請求書」ということがある。)によるものであるが、妥当なものと認められるので、これに準じた。
「【請求項1】
A 駆動源であるモータと、
B 該モータによって駆動されるハンマと、該ハンマにより打撃され回転するアンビルと、を有する打撃機構部と、
C 該モータを収容する外枠であるハウジングと、
D 該ハウジングに隣接し、該打撃機構部を収容する外枠であるハンマケースと、
を有する電動工具において、
E 上記ハンマケースは、円筒状の径が先端側に小さくなった傾斜面を有するテーパ部と、該テーパ部の傾斜面より窪んだ窪み部及び嵌合凸部を有する先端部とよりなり、
F 上記ハンマケースの上記テーパ部の外周に挿通された樹脂製のカバーと、
G 上記ハンマケースの上記先端部外周を覆うと共に、前記凸部と係合する嵌合凹部及び前記窪み部に入り込む肉厚部を有する弾性ストッパと、を備えたことを特徴とする
H 電動工具。」

「【請求項2】
I 駆動源であるモータと、
J 該モータによって駆動されるハンマと、該ハンマにより打撃され回転するアンビルと、を有する打撃機構部と、
K 該モータを収容する外枠であるハウジングと、
L 該ハウジングに隣接し、該打撃機構部を収容する外枠であるハンマケースと、
M 該ハンマケースより突出し、該アンビルの先端に設けられる先端工具保持部と、
を有する電動工具において、
N 該ハンマケースは、円筒状の径が先端側に小さくなった傾斜面を有するテーパ部と、該テーパ部の傾斜面より窪んだ窪み部を有する先端部と、よりなり、
P 該ハンマケースの該テーパ部の外周に挿通され、前記ハンマケースに対して、ほぼ固定される樹脂製のカバーと、
Q 該ハンマケースの該先端部外周を覆うと共に、該窪み部に入り込む肉厚部を有する弾性ストッパを有し、
R 該カバーの先端に、径方向内側に延びる突起部を設け、
S 該突起部は、軸方向において、弾性ストッパと接触しており、
T 該突起部は、軸方向において、前記弾性ストッパと前記ハンマケースの間に位置することを特徴とする
U 電動工具。」

第3 イ号物件等
1 請求人が提出した証拠方法
(1)証拠方法の概要
請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
甲第1号証の1 本件特許公報
甲第1号証の2 平成25年9月24日付けの本件登録原簿謄本の写し
甲第2号証 「マキタ総合カタログ 2013-4」の抜粋
甲第3号証 「充電式インパクトドライバ モデルTD133D
モデルTD145D 取扱説明書」の写し
甲第4号証 2010年2月25日「高耐久でパワフルなブラシレス
モータ搭載の充電式インパクトドライバを発売」に関する
プレスリリース記事の写し
甲第5号証 請求人が被請求人に対して送った2013年1月30日
付けの書簡の写し
甲第6号証 平成21年5月14日付けの拒絶理由通知書の写し
甲第7号証 平成21年7月13日付けの意見書の写し

また、請求人は、平成26年5月28日付け上申書に添付して、イ号物件たる「充電式インパクトドライバTD145D」の実物を参考物件として提出し、併せてその6面写真を同上申書に添付している。

2 請求人の主張するイ号物件
(1)イ号物件に関する請求書の記載
請求人は、平成26年5月28日付け判定請求書に、イ号写真1-1ないし13及びそれに関する参考図(1)及び(2)を添付しているが、イ号説明書は添付していない。しかしながら、判定請求書において、イ号説明書に相当するところの以下の記載がある。(なお、以下において、行数は空行を含まない。)

「(1)本件特許発明1に即したイ号物件の説明
以下の説明に示すとおり、イ号物件は、本件特許発明1に即して記載すると、次のとおりのものである。
a.駆動源であるDCブラシレスモータ(3)と、
b.DCブラシレスモータ(3)によって駆動されるハンマと、該ハンマにより打撃され回転するアンビルと、を有する打撃機構部と、
c.DCブラシレスモータ(3)を収容する外枠であるハウジング(1)と、
d.ハウジング(1)に隣接し、前記打撃機構部を収容する外枠であるハンマケース(2)と、
を有するインパクトドライバにおいて、
e.ハンマケース(2)は、円筒状の径が先端側に小さくなった傾斜面を有するテーパ部(121)と、テーパ部(121)の傾斜面より窪んだ窪み部(122)及び嵌合凸部(2a)を有する先端部(123)と、よりなり、
f.ハンマケース(2)のテーパ部(121)の外周に挿通された樹脂製のカバー(25)と、
g.ハンマケース(2)の先端部外周を覆うと共に、嵌合凸部(2a)と係合する嵌合凹部(27a)及び窪み部(122)に入り込む肉厚部(127)を有する弾性ストッパ(27)と、を備えた、
h.インパクトドライバ。

(2)本件特許発明2に即したイ号物件の説明
以下の説明に示すとおり、イ号物件は、本件特許発明2に即して記載すると、次のとおりのものである。
i.駆動源であるDCブラシレスモータ(3)と、
j.DCブラシレスモータ(3)によって駆動されるハンマと、該ハンマにより打撃され回転するアンビルと、を有する打撃機構部と、
k.DCブラシレスモータ(3)を収容する外枠であるハウジング(1)と、
l.ハウジング(1)に隣接し、前記打撃機構部を収容する外枠であるハンマケース(2)と、
m.ハンマケース(2)より突出し、前記アンビルの先端に設けられるスリーブ(8)と、
を有するインパクトドライバにおいて、
n.ハンマケース(2)は、円筒状の径が先端側に小さくなった傾斜面を有するテーパ部(121)と、テーパ部(121)の傾斜面より窪んだ窪み部(122)を有する先端部(123)と、よりなり、
p.ハンマケース(2)のテーパ部(121)の外周に挿通され、ハンマケース(2)に対して、ほぼ固定される樹脂製のカバー(25)と、
q.ハンマケース(2)の先端部外周を覆うと共に、窪み部(122)に入り込む肉厚部(127)を有する弾性ストッパ(27)を有し、
r.カバー(25)の先端に、径方向内側に延びる第1突起部(125)及び第2突起部(126)を設け、
s.少なくとも第1突起部(125)は、軸方向において、弾性ストッパ(27)と接触しており、
t.少なくとも突起部(125)は、軸方向において、弾性ストッパ(27)とハンマケース(2)の間に位置する
u.インパクトドライバ。

(a,iの説明)
イ号写真1-1,1-2,2-1,2-2に示されるように、イ号物件はハウジング(1)を備えている。イ号写真3に示されるように、ハウジング(1)の側面には、イ号物件のモデルNo.を示す「TD145D」の文字と共に、イ号物件が充電式インパクトドライバであることが明示されている。また、イ号写真4に示されるように、ハウジング(1)にはDCブラシレスモータ(3)が収容されており、甲第3号証の第3頁には、イ号物件が電動機としてDCブラシレスモータを備えていることが記載されている。
尚、イ号写真1-1は、イ号物件の一方の側面をカラー撮影した写真であり、イ号写真1-2は、イ号写真1-1に写っている側面と同一の側面をモノクロ撮影した写真である。また、イ号写真2-1は、イ号物件の他方の側面をカラー撮影した写真であり、イ号写真2-2は、イ号写真2-1に写っている側面と同一の側面をモノクロ撮影した写真である。また、イ号写真3は、イ号写真2-1,2-2に写っているハウジング(1)の側面の一部を拡大して撮影した写真である。
(b,jの説明)
インパクトドライバであるイ号物件がイ号写真4に示されるDCブラシレスモータ(3)によって駆動されるハンマと、該ハンマにより打撃され回転するアンビルとを有する打撃機構部を備えていることは自明である。
(c,kの説明)
イ号写真1-1,1-2,2-1,2-2,4に示されるように、イ号物件は、DCブラシレスモータ(3)を収容するハウジング(1)を備えている。
(d,lの説明)
イ号写真4に示される円筒状の金属製部材がハンマケース(2)であることは明かである。また、(b,jの説明)で言及した打撃機構部がイ号写真4に示されるハンマケース(2)に収容されていることも明かである。
(e,nの説明)
イ号写真4,5及び6に示されるように、イ号物件が備えるハンマケース(2)は円筒状である。また、ハンマケース(2)は、その径が先端側に向かって小さくなるテーパ部(121)と、窪み部(122)及び嵌合凸部(2a)を有する先端部(123)と、を備えている。
窪み部(122)は、テーパ部(121)の傾斜した外周面すなわち傾斜面より低くなるように、半径方向内側へ向けて窪んでいる。
嵌合凸部(2a)は、先端部(123)の周方向に沿って一定間隔で6つ形成されている。
(f,pの説明)
イ号写真4,8に示されるように、ハンマケース(2)のテーパ部(121)の外周には樹脂製のカバー(25)が挿通されている。
(g,qの説明)
イ号写真4,9に示されるように、ハンマケース(2)の先端部外周は弾性ストッパ(27)によって覆われている。
イ号写真10,11に示されるように、弾性ストッパ(27)は、嵌合凹部(27a)及び肉厚部(127)を備えている。具体的には、弾性ストッパ(27)の先端開口部の内側には、その全周に亘って、溝状に窪んだ嵌合凹部(27a)が形成されている。また、弾性ストッパ(27)には、4つの肉厚部(127)が形成されている。さらに、イ号写真10において上側に写っている2つの肉厚部(127)の間及び下側に写っている2つの肉厚部(127)の間には、階段状に窪んだ段差部(128)がそれぞれ形成されている。弾性ストッパ(27)の嵌合凹部(27a)は、ハンマケース(2)の嵌合凸部(2a)と係合しており、弾性ストッパ(27)の肉厚部(127)は、ハンマケース(2)の窪み部(122)に入り込んでいる。以下、より詳細に説明する。

弾性ストッパ(27)、カバー(25)及びハンマケース(2)の関係をより明確にすべく参考図(1),(2)を添付する。添付されている参考図(1),(2)は、ハンマケース(2)に被せられているカバー(25)、そのカバー(25)に被せられている弾性ストッパ(27)を周方向の異なる2箇所で切断した際の断面を示す部分拡大断面図である。

参考図(1)に示される断面は、弾性ストッパ(27)との関係では、イ号写真10に示されるA-A線に沿った断面である。すなわち、肉厚部(127)を横断する断面である。一方、参考図(2)に示される断面は、弾性ストッパ(27)との関係では、イ号写真10に示されるB-B線に沿った断面である。すなわち、段差部(128)を横断する断面である。また、カバー(25)に弾性ストッパ(27)が被せられたときのA-A線及びB-B線の位置をイ号写真9中に示す。

イ号写真12,13に示されるように、カバー(25)の先端開口部の周囲には、一対の第1突起部(125)と、他の一対の第2突起部(126)と、が形成されており、周方向において隣接する第1突起部(125)と第2突起部(126)との間には隙間(129)がそれぞれ設けられている。よって、イ号写真9に示されるように、カバー(25)がハンマケース(2)の先端に挿通されると、それぞれの隙間(129)においてハンマケース(2)の窪み部(122)が露出する。そして、参考図(1)に示されるように、弾性ストッパ(27)の肉厚部(127)は、隙間(129)において窪み部(122)に入り込んでいる。

イ号写真9及び参考図(1)に示されるように、弾性ストッパ(27)の嵌合凹部(27a)は、ハンマケース(2)の嵌合凸部(2a)と係合している。ここで、ハンマケース(2)は金属材料によって形成されている一方、弾性ストッパ(27)は弾性材料によって形成されている。さらに、ハンマケース(2)の嵌合凸部(2a)を含む外径(ハンマケース(2)の先端部(123)の外周面に、その周方向に沿って形成されている複数の嵌合凸部(2a)の頂点同士を繋ぐ円の直径)は、そこに被せられる弾性ストッパ(27)の先端開口部の内側にその内周面に沿って形成されている嵌合凹部(27a)の内径よりも僅かに大きく形成されている。一方、嵌合凸部(2a)の軸方向の寸法は、弾性ストッパ(27)の嵌合凹部(27a)の同方向の寸法よりも僅かに小さく形成されている。よって、弾性ストッパ(27)がハンマケース(2)に被せられると、参考図(1)に示されるように、嵌合凸部(2a)が嵌合凹部(27a)にめり込み、主に嵌合凸部(2a)の先端面が押し付けられる嵌合凹部(27a)の表面の一部は、嵌合凸部(2a)の外形に倣った形状に変形する。
もっとも、イ号写真9は、嵌合凸部(2a)と嵌合凹部(27a)の位置関係を示すべく、弾性ストッパ(27)の一部を切断して撮影した写真である。一部が切断された状態の弾性ストッパ(27)は、切断されていない状態の弾性ストッパ(27)に比べて、ハンマケース(2)に被せられた際に半径方向外側に広がりやすくなる。よって、イ号写真9に示される状態では、嵌合凸部(2a)が嵌合凹部(27a)に押し付けられた際に嵌合凹部(27a)に作用する力が主に半径方向外側に逃げ、この結果、実際の状態(弾性ストッパ(27)が切断されていない状態)に比べて、嵌合凹部(27a)の表面の変形量が少なくなっており、参考図(1)に示されるのと同程度にハッキリとした変形は看取し難くなっている。

ハンマケース(2)とこれに被せられたカバー(25)との間には、製造上のバラツキその他に起因するガタツキが多少なりとも存在している。そして、カバー(25)が挿通されたハンマケース(2)の先端部外周に弾性ストッパ(27)が装着されることにより、上記ガタツキが少なくなり、カバー(25)がハンマケース(2)に対してより確実に位置決めされ、固定されている。一方、カバー(25)を取り外す際には弾性ストッパ(27)が先行して取り外される。換言すれば、ハンマケース(2)からカバー(25)を抜き取るためには、カバー(25)よりも先に弾性ストッパ(27)を取り外す必要がある。すなわち、弾性ストッパ(27)は、ハンマケース(2)とカバー(25)との間のガタツキを少なくしてカバー(25)をハンマケース(2)により確実に固定するとともに、カバー(25)をハンマケース(2)から取り外せないように規制するストッパとして機能している。

尚、各イ号写真の間で、カバー(25)の色が多少異なっているように見えるのは、それぞれのイ号写真を撮影したデジタルカメラの特性(色再現性)の違いに起因するものである。
また、イ号写真8では、カバー(25)の側面に、半径方向外側に大きく広がる凸部のようなものが存在しているかのように見える。しかし、イ号写真12,13に示されるように、カバー(25)の側面には上記のような凸部は存在しない。イ号写真13に示されるように、カバー(25)の一端側(イ号写真13では下方側)は、ギザギザした形状を有している。イ号写真8では、カバー(25)の一端側が上記のようなギザギザ形状であること、カバー(25)の色が有色透明であることに、撮影方向による影響が相侯って、カバー(25)の側面に、半径方向外側に大きく広がる凸部のようなものが存在しているかのように見えるに過ぎない。

(h,uの説明)
イ号写真3に示されるように、ハウジング(1)の側面には、イ号物件のモデルNo.を示す「TD145D」の文字と共に、イ号物件が充電式インパクトドライバであることが明示されている。また、甲第3号証の第1頁には、イ号物件が充電式インパクトドライバであることが記載されている。そして、充電式インパクトドライバは電動工具の一種である。
(mの説明)
イ号写真4,5及び6に示されるように、イ号物件は、ハンマケース(2)より突出するスリーブ(8)を備えている。甲第3号証の第20頁には、先端工具であるビットやソケットがスリーブ(8)によって保持固定される旨が記載されている。
(rの説明)
イ号写真12,13及び参考図(2)に示されるように、それぞれの第1突起部(125)は、カバー(25)の先端開口部の縁から半径方向内側へ向かって斜めに立ち上がる傾斜部と、傾斜部の先から半径方向内側へ向かって延びる第1平坦部と、第1平坦部の先から軸方向に立ち上がる第2平坦部と、第2平坦部の先から半径方向内側へ向かって延びる第3平坦部と、を含み、全体として半径方向内側へ向けて延びる鈎爪状に形成されている。
(sの説明)
イ号写真9及び参考図(2)に示されるように、カバー(25)の第1突起部(125)に、弾性ストッパ(27)の段差部(128)が被さって重なっている。
(tの説明)
イ号写真9及び参考図(2)に示されるように、カバー(25)の第1突起部(125)は、軸方向において、弾性ストッパ(27)とハンマケース(2)の間に位置している。特に、半径方向内側に向かって延びている、すなわち軸方向と直交する方向に延びている第1突起部(125)の第1平坦部は、同方向に延びている段差部(128)の一面と軸方向において正対しており、明らかに、軸方向において弾性ストッパ(27)とハンマケース(2)の間に位置している。」(請求書第8ページ第2行?第14ページ第17行)

(2)イ号写真等
イ号写真として、判定請求書に添付されたイ号写真1-1ないしイ号写真13が提出され、併せて請求人により作成された参考図(1)及び(2)が添付されている。
なお、これらイ号写真及び参考図を本判定書の末尾に示す。

第4 被請求人の主張
これに対し被請求人は判定請求答弁書を提出して、イ号物件は特許第4399866号の請求項1及び請求項2に係る発明の技術的範囲に属しないとの判定を求めるものの、答弁の理由として、構成要件の充足性等に対する具体的な反論はなく、判定書において、特許の有効、無効の判断等はしていないことを明らかにすることを求めている。

第5 当審の判断
1 請求人提出書類等について
(1)各甲号証記載事項
上記請求人提出の各甲号証のうち、特に甲第2号証ないし甲第4号証には以下の事項が記載されている。
ア 甲第2号証
甲第2号証には、その第18ページに、TD145DRFXの充電式インパクトドライバが掲載されている。

イ 甲第3号証
甲第3号証には、型番TD133D及び型番TD145Dの充電式インパクトドライバの取り扱い方法につき、以下の事項が記載されている。
(ア)表紙及び第11ページ
型番TD133D及び型番TD145Dの充電式インパクトドライバの外形が示されている。
(イ)第3ページ「主要機能」の表
型番TD133D及び型番TD145Dのいずれも、電動機が「DCブラシレスモータ」であることが示されている。
(ウ)第20ページ「使い方」の「ビットの取り付け・取りはずし方」の箇所には、ビットがスリーブによって保持固定される旨記載されている。

ウ 甲第4号証
甲第4号証には、型番TD133D及び型番TD145Dの充電式インパクトドライバについてのプレスリリース記事が記載されている。

(2)イ号写真について
判定請求書に添付されたイ号写真のうち、イ号写真3には「モデルTD145D 充電式インパクトドライバ」と記載されたラベルが看取できること、及びイ号写真1-1ないしイ号写真2-2並びにイ号写真4に示されたドライバの形状が、甲第2号証の第18ページに掲載された「充電式インパクトドライバ」「TD145DRFX」のバッテリを除く主要部の外形、及び、甲第3号証の表紙及び第11ページに掲載された「充電式インパクトドライバTD145D」のバッテリを除く主要部の外形と整合することを踏まえ、請求人の主張の全趣旨に照らしてみて、判定請求書に添付されたイ号写真に示されたドライバは、充電式インパクトドライバTD145D、すなわち、イ号物件を示すものであることは明らかである。

2 イ号写真及び甲第3号証等により認められる事項
イ号写真及び甲第3号証に示される事項を技術常識を踏まえて解釈すれば、イ号物件に関し、以下の事項が認められる。なお、下線は理解の便のため付したものである。

ア イ号写真4には、ドライバの駆動源と認められるモータが示され、上記第5の1(1)イ(イ)にて指摘したように、甲第3号証には、TD145Dの充電式インパクトドライバのモータ(電動機)が「DCブラシレスモータ」であることが記載されていることから、イ号物件は、駆動源であるDCブラシレスモータ(3)を備える、ということができる。

イ インパクトドライバが、モータによって駆動されるハンマと、該ハンマにより打撃されるアンビルとを有する打撃機構部を備えることによってドライバ作用を行うことは、技術常識であるから、イ号物件は、DCブラシレスモータ(3)によって駆動されるハンマと、該ハンマにより打撃され回転するアンビルと、を有する打撃機構部を備える、といえる。

ウ イ号写真4には、DCブラシレスモータ(3)を収容するハウジング(1)が示されており、イ号物件は、DCブラシレスモータ(3)を収容する外枠であるハウジング(1)を備える、といえる。

エ イ号写真4には、DCブラシレスモータと出力部材たるスリーブとの間に銀色の部材(ハンマケース(2))が示されているところ、上記イの認定事項を踏まえ、該部材は上記「打撃機構部」が収容されているものと認められるから、イ号物件は、打撃機構部を収容するハンマケース(2)を備える、ということができる。

オ イ号写真5ないし8を参照するに、上記ハンマケース(2)は円筒状であり、ハンマケース(2)は、その径が先端側に小さくなった傾斜面を有するテーパ部(121)と、窪み部(122)及び周方向に一定間隔で複数形成された凸部(2a)(なお、請求人はこれを「嵌合凸部(2a)」と称しているので、以下、共通の図番(2a)を付与することとする。)を有する先端部(123)と、を備えており、窪み部(122)は、テーパ部(121)の傾斜面より低くなるように、径方向内側へ向けて窪んでいる、ものと認められる。
また、特にイ号写真7を参照すれば、先端部(123)には、該複数の凸部(2a)の基端側(イ号写真7でいう左側)に隣接して凹溝が円周方向に形成されていることが認められる。

カ イ号写真4ないしイ号写真8を参酌すれば、イ号物件は、ハンマケース(2)より突出するスリーブ(8)を備えていることが看取できる。そして、上記第5の1(1)イ(ウ)にて指摘したように、甲第3号証には、ビットがスリーブによって保持固定される旨記載されていることから、イ号物件は、ハンマケース(2)より突出し、前記アンビルの先端に設けられるビット保持部たるスリーブ(8)を備える、ということができる。

キ イ号写真4、8及び9を参照すれば、上記ハンマケース(2)のテーパ部(121)に樹脂製のカバー(25)が挿通されていることが理解できる。

ク イ号写真12及びイ号写真13によれば、カバー(25)の先端開口部の周囲には、一対の第1突起部(125)と、他の一対の第2突起部(126)と、が形成されており、周方向において隣接する第1突起部(125)と第2突起部(126)との間には隙間(129)がそれぞれ設けられている。
一対のそれぞれの第1突起部(125)は、カバー(25)の先端開口部の縁から半径方向内側へ向かって斜めに立ち上がる傾斜部と、傾斜部の先から半径方向内側へ向かって延びる第1平坦部と、第1平坦部の先から軸方向に立ち上がる第2平坦部と、第2平坦部の先から半径方向内側へ向かって延びる第3平坦部と、を含み、全体として半径方向内側へ向けて延びる鈎爪状に形成されているものと認められる。

ケ イ号写真4及びイ号写真9によれば、ハンマケース(2)の先端部外周は弾性リングによって覆われているものと認められる。(なお、請求人はこれを「弾性ストッパ(27)」と称しているので、以下、共通の図番(27)を付与することとする。)
イ号写真10及びイ号写真11に示されるように、この弾性リング(27)は、外周付近に二対の肉厚部(127)が計4つ形成されている。そして、それぞれの一対の肉厚部(127)の間には階段状に窪んだ段差部(128)が形成されている。
また、弾性リング(27)の先端開口部の内側の上記肉厚部(127)より先端・内周側の部分には、その全周に亘って、内周平坦部が形成されているものと認められる。(なお、請求人はこの部分を「環状凹部(27a)」と称しているので、以下、共通の図番(27a)を付与することとする。)

コ イ号写真9によれば、弾性リング(27)の内周平坦部(27a)は、ハンマケース(2)の複数の凸部(2a)と圧接しているものと認められる。
また、イ号写真12及びイ号写真13に示されるカバー(25)の先端開口部の形状とイ号写真9を併せ考えれば、カバー(25)がハンマケース(2)の先端に挿通されると、それぞれの隙間(129)においてハンマケース(2)の窪み部(122)が露出し、弾性リング(27)の各肉厚部(127)は、隙間(129)においてハンマケース(2)の窪み部(122)に入り込むことが理解できる。そして、弾性リング(27)の段差部(128)は、カバー(25)の第1突起部(125)に被さって重なっているものと認められる。
さらに、カバー(25)の第1突起部(125)は、特に第1平坦部付近が、その軸方向において、弾性リング(27)とハンマケース(2)の間に位置している、ということができる。

サ イ号写真12及びイ号写真13に示されるカバー(25)の径方向内側に延びる一対の突起部(125)と、イ号写真7に示される先端部(123)の凹溝を、イ号写真9に照らして合理的に考えれば、請求人提出の参考図(2)に示されるように、カバー(25)の一対のそれぞれの第1突起部(125)の半径方向内側へ向かって延びる第3平坦部は、先端部(123)の凹溝に嵌入固定されていることが理解できる。

3 当審によるイ号物件の認定
(1)本件特許発明1に照らしたイ号物件の認定
上記1並びに2のアないしオ及びキないしサを踏まえ、イ号物件は、本件特許発明1に照らし、前記第2に記載の本件特許発明1の分説AないしHに対応させて、以下のaないしhの構成を具備するものと認められる(以下「構成a」などという。)。
「a 駆動源であるDCブラシレスモータ(3)と、
b 該DCブラシレスモータ(3)によって駆動されるハンマと、該ハンマにより打撃され回転するアンビルと、を有する打撃機構部と、
c 該DCブラシレスモータ(3)を収容する外枠であるハウジング(1)と、
d 該ハウジング(1)に隣接し、前記打撃機構部を収容する外枠であるハンマケース(2)と、
を有するインパクトドライバにおいて、
e 上記ハンマケース(2)は、円筒状の径が先端側に小さくなった傾斜面を有するテーパ部(121)と、テーパ部(121)の傾斜面より窪んだ窪み部(122)、周方向に一定間隔で複数形成された凸部(2a)及び周方向に形成された凹溝を有する先端部(123)と、よりなり、
f 上記ハンマケース(2)のテーパ部(121)の外周に挿通された樹脂製のカバー(25)であって、
カバー(25)の先端開口部の周囲には、一対の第1突起部(125)、他の一対の第2突起部(126)と、が形成され、
一対のそれぞれの第1突起部(125)は、カバー(25)の先端開口部の縁から半径方向内側へ向かって斜めに立ち上がる傾斜部と、傾斜部の先から半径方向内側へ向かって延びる第1平坦部と、第1平坦部の先から軸方向に立ち上がる第2平坦部と、第2平坦部の先から半径方向内側へ向かって延びる第3平坦部とを備え、該第3平坦部は、ハンマケース(2)の先端部(123)の凹溝に嵌入固定されるものである、
樹脂製のカバー(25)と、
g 上記ハンマケース(2)の上記先端部(123)外周を覆うと共に、ハンマケース(2)の複数の凸部(2a)と圧接する内周平坦部(27a)及び窪み部(122)に入り込む肉厚部(127)を有する弾性リング(27)と、を備えた、
h インパクトドライバ。」

(2)本件特許発明2に照らしたイ号物件の認定
同様に、上記1及び2のアないしサを踏まえ、イ号物件は、本件特許発明2に照らし、前記第2に記載の本件特許発明2の分説IないしUに対応させて、以下のiないしuの構成を具備するものと認められる。
「i 駆動源であるDCブラシレスモータ(3)と、
j 該DCブラシレスモータ(3)によって駆動されるハンマと、該ハンマにより打撃され回転するアンビルと、を有する打撃機構部と、
k 該DCブラシレスモータ(3)を収容する外枠であるハウジング(1)と、
l 該ハウジング(1)に隣接し、該打撃機構部を収容する外枠であるハンマケース(2)と、
m 該ハンマケース(2)より突出し、該アンビルの先端に設けられるビット保持部たるスリーブ(8)と、
を有するインパクトドライバにおいて、
n 該ハンマケース(2)は、円筒状の径が先端側に小さくなった傾斜面を有するテーパ部(121)と、テーパ部(121)の傾斜面より窪んだ窪み部(122)及び周方向に形成された凹溝を有する先端部(123)と、よりなり、
p 該ハンマケース(2)の該テーパ部(121)の外周に挿通された樹脂製のカバー(25)と、
q 該ハンマケース(2)の該先端部外周を覆うと共に、該窪み部(122)に入り込む肉厚部(127)を有する弾性リング(27)を有し、
r 該カバー(25)の先端開口部の周囲には、一対の第1突起部(125)、他の一対の第2突起部(126)と、が形成され、
一対のそれぞれの第1突起部(125)は、カバー(25)の先端開口部の縁から半径方向内側へ向かって斜めに立ち上がる傾斜部と、傾斜部の先から半径方向内側へ向かって延びる第1平坦部と、第1平坦部の先から軸方向に立ち上がる第2平坦部と、第2平坦部の先から半径方向内側へ向かって延びる第3平坦部とを備え、該第3平坦部は、ハンマケース(2)の先端部(123)の凹溝に嵌入固定されるものであり、
s 該第1突起部(125)は、軸方向において、弾性リング(27)と接触しており、
t 該第1突起部(125)は、特に第1平坦部付近が、その軸方向において、弾性リング(27)とハンマケース(2)の間に位置する
u インパクトドライバ。」

4 当審の対比・判断
(1)本件特許発明1
イ号物件が本件特許発明1の構成要件AないしHを充足するか否かについて、構成要件Aをイ号物件の構成aに、構成要件Bを構成bに、の如く対応させて、対比検討する。

ア 構成要件AないしD及びHについて
イ号物件の「DCブラシレスモータ(3)」が本件特許発明1の「モータ」に相当することは技術常識に照らして明らかであり、以下同様に、「ハウジング(1)」は「ハウジング」に、「ハンマケース(2)」は「ハンマケース」に、「インパクトドライバ」は「電動工具」に相当することも明らかである。
そうすると、イ号物件の構成aないしd及びhは、それぞれ本件特許発明1の構成要件AないしD及びHと一致するから、イ号物件は構成要件AないしD及びHを充足する。

イ 構成要件Eについて
上記アにて指摘したように、イ号物件の「ハンマケース(2)」は本件特許発明1の「ハンマケース」に相当する。
そして、イ号物件の「テーパ部(121)」は本件特許発明1の「テーパ部」に相当するものであることはその機能に照らして明らかであり、以下同様に、「窪み部(122)」は「窪み部」に、「先端部(123)」は「先端部」に相当することも明らかである。
次に、イ号物件の「周方向に一定間隔で複数形成された凸部(2a)」が本件特許発明1の「嵌合凸部」に相当するかを考える。まず、本件特許発明1の「嵌合凸部」の技術的意義について検討すべく、特許法第70条第2項の規定に基づいて本件特許明細書及び図面(特に図8)を参照すると、そこには以下の記載がある。
「【0036】・・・カバー25とストッパ27による装着状態は図8に示すように、ハンマケース2の外周を覆うようにカバー25を挿通した後、ハンマケース2に設けた嵌合凸部2aに図6及び図7に示すストッパの内部に設けた嵌合凹部27aを係合させることで確実に行われる。・・・」



そして、上記記載から、本件特許発明1の「嵌合凸部」は、対応して対となる「嵌合凹部」の「凹部」に「係合」する「凸部」を形成したものという技術的意義を有するものと解される。
一方、イ号物件の「周方向に一定間隔で複数形成された凸部(2a)」は、「弾性リング(27)」の(請求人が「嵌合凹部27a」と称する)「内周平坦部(27a)」に対して「圧接する」ものではあるものの、対となる嵌合凹部に係合するものではない。したがって、イ号物件の「周方向に一定間隔で複数形成された凸部(2a)」は、本件特許発明1の「嵌合凸部」に相当するということはできない。
よって、イ号物件の構成eは、本件特許発明1の構成要件Eのうち「嵌合凸部を有する」に相当する構成を備えていないから、イ号物件は構成要件Eを充足するとはいえない。

ウ 構成要件Fについて
上記アまたはイにて指摘したように、イ号物件の「ハンマケース(2)」、「テーパ部(121)」はそれぞれ本件特許発明1の「ハンマケース」、「テーパ部」に相当する。
また、イ号物件の「樹脂製のカバー(25)」は本件特許発明1の「樹脂製のカバー」に相当するものであることは明らかである。
そうすると、イ号物件の構成fは、本件特許発明1の構成要件Fたる「上記ハンマケースの上記テーパ部の外周に挿通された樹脂製のカバー」に相当する構成を備えるものといえるから、イ号物件は構成要件Fを充足する。

エ 構成要件Gについて
まず、上記アまたはイにて指摘したように、イ号物件の「ハンマケース(2)」及び「先端部(123)」は、それぞれ、本件特許発明1の「ハンマケース」及び「先端部」に相当する。
次に、イ号物件の構成gの「複数の凸部(2a)と圧接する内周平坦部(27a)及び窪み部(122)に入り込む肉厚部(127)を有する弾性リング(27)」が本件特許発明1の「前記凸部と係合する嵌合凹部及び前記窪み部に入り込む肉厚部を有する弾性ストッパ」に相当するかについてみるに、まず、その前提として、イ号物件の「弾性リング(27)」が本件特許発明1の「弾性ストッパ」に相当するといえるかにつき検討する。
本件特許発明1の「弾性ストッパ」は、「カバー25は・・・弾性を有する固定手段であるストッパ(樹脂或いは弾性ゴム)27により、電動工具の使用時に生じる衝撃振動により先端工具側に向いハンマケース2からカバー25が離脱してしまわないように確実に位置決めされている。」(明細書段落【0036】)という技術的意義を有するものである。これをさらに詳しくみるに、本件図8を参酌すると、カバー25はハンマケース2に挿通されているものの、その先端部はハンマケース2に対して確実には固定されておらず、ストッパ27とハンマケース2の間で挟持され、さらにストッパ27がハンマケース2に対して係止されることによって「確実に位置決めされている」ものであり、ストッパ27がなければ電動工具の振動によりカバーが離脱しかねないものと認められる。
一方、イ号物件の「カバー(25)」は、(i)「ハンマケース(2)のテーパ部(121)の外周に挿通され」(構成f)、さらに(ii)「一対のそれぞれの第1突起部(125)」の「第3平坦部は、ハンマケース(2)の先端部(123)の凹溝に嵌入固定されるものである」(構成f)ことからして、その先端部も含めてそれ自体でハンマケース(2)に固定されているものである。
そうしてみると、そもそもそれ自体でハンマケース(2)に固定されている「カバー(25)」を、「確実に位置決めするため」に「弾性リング(27)」を「ストッパ」として機能させているとは考え難い。したがって、イ号物件の「弾性リング(27)」は弾性「ストッパ」ということはできないから、本件特許発明1の「弾性ストッパ」に相当するものではない。
これに関し、請求人はイ号物件に関する説明において、「ハンマケース(2)とこれに被せられたカバー(25)との間には・・・ガタツキが多少なりとも存在している。そして、カバー(25)が挿通されたハンマケース(2)の先端部外周に弾性ストッパ(27)が装着されることにより、上記ガタツキが少なくなり、カバー(25)がハンマケース(2)に対してより確実に位置決めされ、固定されている。一方、カバー(25)を取り外す際には弾性ストッパ(27)が先行して取り外される・・・すなわち、弾性ストッパ(27)は、ハンマケース(2)とカバー(25)との間のガタツキを少なくしてカバー(25)をハンマケース(2)により確実に固定するとともに、カバー(25)をハンマケース(2)から取り外せないように規制するストッパとして機能している。」(上記第3の2(1)の「(g,qの説明)」)と説明している。
しかしながら、「ストッパ」という用語の一般的な意味内容は請求人の説明のとおりとしても、本件特許発明1の「弾性ストッパ」は、ストッパがなければ電動工具の振動によりカバーが離脱しかねないものであるところ、イ号物件は、弾性リングがなければ振動によりカバーが離脱するとまではいえないから、請求人のかかる説明は採用し得ない。
したがって、イ号物件の「弾性リング(27)」は本件特許発明1の「弾性ストッパ」に相当するものではなく、イ号物件の「複数の凸部(2a)と圧接する内周平坦部(27a)及び窪み部(122)に入り込む肉厚部(127)を有する弾性リング(27)」が本件特許発明1の「前記凸部と係合する嵌合凹部及び前記窪み部に入り込む肉厚部を有する弾性ストッパ」に相当することの前提を欠くこととなり、イ号物件は構成要件Gを充足するとはいえない。

オ 小括
よって、イ号物件は、本件特許発明1の構成要件AないしD、F及びHを充足するものの、構成要件E及びGを充足するとはいえないから、イ号物件は本件特許発明1の技術的範囲に属しない。

(2)本件特許発明2
イ号物件が本件特許発明2の構成要件IないしUを充足するか否かについて、イ号物件の構成iないしuをそれぞれ構成要件IないしUに対応させて、対比検討する。
ア 構成要件IないしM及びUについて
上記(1)アにて指摘したのと同様に、イ号物件の「DCブラシレスモータ(3)」、「ハウジング(1)」、「ハンマケース(2)」及び「インパクトドライバ」は、それぞれ、本件特許発明2の「モータ」、「ハウジング」、「ハンマケース」及び「電動工具」に相当する。
また、イ号物件の「ビット保持部たるスリーブ(8)」は、本件特許発明2の「先端工具保持部」に相当することは技術常識に照らして明らかである。
したがって、イ号物件の構成iないしm及びuは、それぞれ本件特許発明2の構成要件IないしM及びUと一致するから、イ号物件はIないしM及びUを充足する。

イ 構成要件Nについて
上記(1)イにて指摘したのと同様に、イ号物件の「ハンマケース(2)」、「テーパ部(121)」、「窪み部(122)」及び「先端部(123)」は、それぞれ本件特許発明2の「ハンマケース」、「テーパ部」、「窪み部」及び「先端部」に相当する。
したがって、イ号物件の構成nは、本件特許発明2の構成要件Nたる「該ハンマケースは、円筒状の径が先端側に小さくなった傾斜面を有するテーパ部と、該テーパ部の傾斜面より窪んだ窪み部を有する先端部と、よりなり」に相当する構成を備えるものといえるから、イ号物件は構成要件Nを充足する。

ウ 構成要件Qについて
構成要件Pをおいて、構成要件Qについて検討する。まず、上記アまたはイにて指摘したように、イ号物件の「ハンマケース(2)」及び「先端部(123)」は、それぞれ、本件特許発明2の「ハンマケース」及び「先端部」に相当する。
次に、イ号物件の構成qの「窪み部(122)に入り込む肉厚部(127)を有する弾性リング(27)」が本件特許発明2の「窪み部に入り込む肉厚部を有する弾性ストッパ」に相当するかについては、上記(1)エの構成要件Gについての検討と同様、その前提として、イ号物件の「弾性リング(27)」が本件特許発明2の「弾性ストッパ」に相当するといえるかにつき検討することとなる。これについては、イ号物件の「カバー(25)」は、(i)「ハンマケース(2)のテーパ部(121)の外周に挿通され」(構成p)、さらに(ii)「一対のそれぞれの第1突起部(125)」の「第3平坦部は、ハンマケース(2)の先端部(123)の凹溝に嵌入固定されるものである」(構成r)ことからして、その先端部も含めてそれ自体でハンマケース(2)に固定されているものであり、構成要件Gについての検討における説示と同様の理由により、イ号物件の「弾性リング(27)」は弾性「ストッパ」ということはできないから、本件特許発明2の「弾性ストッパ」に相当するものではない。
したがって、イ号物件は構成要件Qを充足するとはいえない。

エ 構成要件Pについて
まず、本件特許発明2の構成要件Pに係る「樹脂製のカバー」が「ハンマケースに対して、ほぼ固定される」なる事項については、上記本件図8及び本件特許明細書段落【0036】の「また、上記カバー25は、図6及び図7に示す弾性を有する固定手段であるストッパ(樹脂或いは弾性ゴム)27により、電動工具の使用時に生じる衝撃振動により先端工具側に向いハンマケース2からカバー25が離脱してしまわないように確実に位置決めされている。・・・」という記載を参酌するに、「ほぼ固定」とは、樹脂製のカバーがハンマケースに挿通されたのみでは完全には固定されず、弾性ストッパを装着することで確実に固定されるという状態を特定しているものと認められる。
一方、これに対応するイ号物件の「樹脂製のカバー(25)」は、上記ウにて説示したように、その先端部も含めてそれ自体でハンマケース(2)に固定されているものであるから、弾性リング(27)が装着される前から、ほぼ固定ではなく確実に「固定」されているものである。
したがって、イ号物件の「樹脂製のカバー(25)」は、「ハンマケースに対して、ほぼ固定される樹脂製のカバー」に相当するということはできず、したがってイ号物件は構成要件Pを充足するとはいえない。

オ 構成要件Rについて
イ号物件の「カバー(25)」が、本件特許発明2の「カバー」に相当することは明らかであり、同様にイ号物件の「先端開口部の周囲」は、本件特許発明2の「先端」に相当する。
また、イ号物件の構成rにおける「半径方向内側へ向かって斜めに立ち上がる傾斜部と傾斜部の先から半径方向内側へ向かって延びる第1平坦部」等を備える「一対の第1突起部(125)」は、本件特許発明2の「径方向内側に延びる突起部」に相当するといえる。
したがって、イ号物件の構成rは、本件特許発明2の構成要件Rたる「カバーの先端に、径方向内側に延びる突起部を設け」に相当する構成を備えるものといえるから、イ号物件は構成要件Rを充足する。

カ 構成要件S及びT
構成要件S及びTは、構成要件Qと同じく、イ号物件の「弾性リング(27)」が本件特許発明2の「弾性ストッパ」に相当することを前提とするものであるから、イ号物件は構成要件S及びTを充足するとはいえないことになる。

キ 小括
よって、イ号物件は、本件特許発明2の構成要件IないしN、R及びUを充足するものの、構成要件P、Q、S及びTを充足するとはいえないから、イ号物件は本件特許発明2の技術的範囲に属しない。

5 被請求人の主張について
上記第4にて指摘したように、被請求人は、判定書において、特許の有効、無効等の判断等はしていないことを明らかにすることを求めている。
これについては、特許が無効とされるべきものであるか否かは、判定における特許発明の技術的範囲に属するか否かの判断と無関係のものであるが、無効とされるべきものであるか否かを判断していないことを殊さら判定書において明示する必要性は認められない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、イ号物件である「充電式インパクトドライバTD145D」は、本件特許発明1及び本件特許発明2の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2014-08-07 
出願番号 特願2005-218188(P2005-218188)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (B25F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金本 誠夫田村 嘉章松岡 美和  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 長屋 陽二郎
刈間 宏信
登録日 2009-11-06 
登録番号 特許第4399866号(P4399866)
発明の名称 電動工具  
代理人 青山 仁  
代理人 筒井 大和  
代理人 小塚 善高  
代理人 筒井 章子  
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