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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  B65B
審判 全部無効 2項進歩性  B65B
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  B65B
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65B
管理番号 1290824
審判番号 無効2013-800154  
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-08-23 
確定日 2014-06-06 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4806153号発明「自動化された固形薬剤製品包装機械」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。特許第4806153号の請求項1ないし6に係る発明についての審判請求は、成り立たない。特許第4806153号の請求項7ないし11に係る発明についての審判請求を却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件無効審判の請求に係る特許第4806153号(以下、「本件特許」という。)の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成13年 3月29日 本件特許出願(国際出願)
(優先権主張:平成12年3月31日 米国)
平成23年 8月19日 設定登録
平成25年 8月23日 本件無効審判請求
同年 9月24日付け 手続補正書(請求人)
平成26年 1月 6日付け 審判事件答弁書(被請求人)
同日付け 訂正請求書(被請求人)
同年 1月28日付け 審理事項通知書
同年 3月13日付け 口頭審理陳述要領書(両者)
同年 3月20日付け 口頭審理陳述要領書(第2)(両者)
同年 3月27日 口頭審理

なお、本審決において、記載箇所を行により特定する場合、行数は空行を含まず、「……」は記載の省略を意味する。証拠は、例えば甲第1号証を甲1のように略記する。

第2 請求人の主張
請求人は、本件特許の請求項1ないし11に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、証拠として甲1ないし甲11を提出し、次の無効理由を主張する。

(無効理由1)本件特許の請求項1、2、5及び6に係る発明は、甲1に記載された発明である(特許法第29条第1項第3号)。
(無効理由2)本件特許の請求項1?11に係る発明は、甲1?甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許法第29条第2項)。
(無効理由3)本件特許の請求項1?11に係る発明は、甲5、甲2?甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許法第29条第2項)。
(無効理由4)本件特許の請求項1?11に係る発明は、甲2、甲6、甲7、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許法第29条第2項)。
(無効理由5)本件特許の請求項1?11に係る発明は、甲2、甲8、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許法第29条第2項)。
(無効理由6)本件特許の請求項1?11に係る発明は、甲9?甲11、甲2、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許法第29条第2項)。
(無効理由7)請求項7ないし11に係る発明について、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない(特許法第36条第4項第1号)。
(無効理由8)請求項1、3、5、7、9ないし11に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない(特許法第36条第6項第1号)。
(無効理由9)請求項5、6、10に係る発明は明確でない(特許法第36条第6項第2号)。

<証拠>
甲1 :特開平3-111201号公報
甲2 :特開平7-10103号公報
甲3 :米国特許第4490963号明細書
甲4 :特開平11-206855号公報
甲5 :特許第2646143号公報
甲6 :特許第2544052号公報
甲7 :国際公開第95/08774号パンフレット
甲8 :特開昭62-251323号公報
甲9 :国際公開第98/29084号パンフレット
甲10:特表2001-507611号公報
甲11:特公平6-37202号公報
甲1ないし甲11の成立につき、当事者間に争いはない。
なお、甲12ないし甲16に係る書証の申出は撤回された(口頭審理調書の請求人2)。

第3 被請求人の主張
被請求人は、特許請求の範囲の訂正を求めるとともに、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、無効理由がいずれも成り立たないと主張する。

第4 訂正請求について
1.訂正請求の内容
平成26年1月6日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものである。具体的な訂正事項は、特許請求の範囲の請求項7ないし11を削除するものである。

2.訂正の適否
上記訂正事項は、請求項7ないし11を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。
なお、請求人は、訂正の適法性について争わない。

第5 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明6」という。)は、訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
なお、各構成の先頭に付した符号AないしJは、請求人が付したものを、被請求人も争わないことから、そのまま採用したものである。

【請求項1】
A 固形薬剤製品のパッケージを充填する方法であって:
B ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ製品包装用型板を供給する工程と;
C 該製品包装用型板の該腔部と整列し得る複数の腔部をもつ製品パッケージを供給する工程と;
D 複数の異なった薬剤源から一つ以上の固形薬剤製品を共通の漏斗内へ選択的に分配する工程と;
E 該共通の漏斗と該複数の製品包装用型板腔部との間で直交する2方向に自動的に相対運動を起させて、複数の異なった薬剤源から1つ以上の固形薬剤製品を、該複数の型板腔部の各々中に置くために選択的に個々の腔部の1つの上に該共通の漏斗を位置付ける工程と;
F その後、該製品包装用型板の該腔部と該製品パッケージの腔部とを自動的に整列させ;そして
G 製品包装用型板腔部内に入れられていた固形薬剤を該製品パッケージの対応した腔部内へ転送する工程とを有している固形薬剤製品のパッケージを充填する方法。
【請求項2】
H 更に、固形薬剤製品を選択的に分配する工程中に、色々な固形薬剤で事前に充填完了された別の固形薬剤製品パッケージを同時にシーリングする工程を有している請求項1記載の方法。
【請求項3】
I 更に、固形薬剤製品パッケージ上に情報を印刷する工程を有している請求項1記載の方法。
【請求項4】
I 更に、固形薬剤製品パッケージ上に情報を印刷する工程を有している請求項2記載の方法。
【請求項5】
J 更に、第一と第二の薬剤を第一と第二の分配缶から単一の型板腔部内へ少なくともほぼ同時に分配する工程を有している請求項1記載の方法。
【請求項6】
J 更に、第一と第二の薬剤を第一と第二の分配缶から単一の型板腔部内へ少なくともほぼ同時に分配する工程を有している請求項2記載の方法。

第6 請求人が主張する無効理由についての判断
1.無効理由1について
(1)請求人の主張
請求人は、本件特許発明1の構成AないしD、F、Gは、甲1に開示され、構成Eは、甲1に実質的に開示され、本件特許発明2の構成H、本件特許発明5及び6の構成Jも、甲1に実質的に開示されているから、本件特許発明1、2、5、6は、甲1に記載された発明であると主張する(審判請求書12ページ1行?末行)。

(2)甲1の記載
甲1には、図面とともに、以下の記載がある。
「第1図はこの発明の一実施例を示し、1a、1bはおのおの多種類の薬品を個別に取り出し可能に収容した薬品庫、2は薬品を包装する包装装置、3a、3bはそれぞれ薬品庫1a、1bから取り出された薬品を包装装置2へ搬送する搬送装置である。
薬品庫1a(1b)は …… 錠剤フィーダ4a、4a、…(4b、4b、…)から排出された錠剤を下方へ案内する少なくとも1つの案内路6a(6b)と、案内路6a(6b)の下端に設置されたホッパ7a(7b)とを具え ……
また、薬品庫1a、1bには、薬品庫1aのホッパ7aと、薬品庫1bのホッパ7bとの、いずれから薬品を取り出すべきかを選択する選択部材18が設けられている。」(2ページ左下欄5行?同右下欄6行)

「搬送装置3a、3bは、薬品庫1a、1bの選択部材18に対応した受け取り位置に設置された選択部材13と、包装装置2の区画室10に対応した投入位置に設置された選択部材14と、両選択部材13、14間をそれぞれ移動するコンベヤ15a、15bとを具え、コンベヤ15a(15b)には、その移動方向に沿って適宜の間隔で薬品収容部16a、16a、…(16b、16b、…)が形成されている。」(2ページ右下欄15行?3ページ左上欄3行)

「薬品庫1a(1b)に収容された任意の薬品A(B)を包装する場合、システムコントローラ17はまず、選択部材18によって該当する薬品庫1a(1b)を選択するとともに、選択部材13によって搬送装置3a、3bのいずれか一方を選択したうえ、選択部材18によって選択された薬品庫1a(1b)の該当する錠剤フィーダ4a(4b)を作動させて、その薬品A(B)を最初の1包分に必要な錠数だけ排出させる。
すると、この錠剤A(B)は案内路6a(6b)を通ってホッパ7a(7b)に集められたうえ、受け取り位置にある選択部材13によって選択されたコンベヤ15a(15b)の薬品収容部16a(1)(16b(1))に収容される。
これを受けて、システムコントローラ17はコンベヤ15a(15b)を作動させて、薬品収容部16a(1)(16b(1))を前進させる。
つぎに、システムコントローラ17は、前記錠剤フィーダ4a(4b)を再び作動させて、その薬品A(B)をつぎの1包分に必要な錠数だけ排出させる。
すると、この錠剤A(B)は案内路6a(6b)を通ってホッパ7a(7b)に集められたうえ、受け取り位置にある選択部材13によって選択されたコンベヤ15a(15b)のつぎの薬品収容部16a(2)(16b(2))に収容される。
これを受けて、システムコントローラ17はコンベヤ15a(15b)を再び作動させて、薬品収容部16a(2)(16b(2))を前進させる。
……
このようにして、薬品A(B)は1包分ずつつぎつぎに薬品収容部16a(16b)に収容され、包装装置2に向けて前進することとなる。
薬品A(B)が必要な包数分すべて薬品収容部16a(16b)に収容され終わる前に、最前方にある薬品収容部16a(1)(16b(1))が、包装装置2の区画室10に対応した投入位置にある選択部材14に到達した場合は、システムコントローラ17はまず、選択部材14によって該当するコンベヤ15a(15b)を選択したうえ、包装装置2を作動させて、選択部材14によって選択されたコンベヤ15a(15b)の薬品収容部16a(1)(16b(1))に収容された薬品A(B)を、区画部材9によって形成された包装用シート8の区画室10(1)に投入させたうえ、密閉部材11によってその区画室10(1)を密閉させて、包装袋12(1)を形成する。
つぎに、コンベヤ15a(15b)の作動により2番目の薬品収容部16a(2)(16b(2))が選択部材14に到達したら、システムコントローラ17は包装装置2を再び作動させて、選択部材14によって選択されたコンベヤ15a(15b)の薬品収容部16a(2)(16b(2))に収容された薬品A(B)をつぎの区画室10(2)に投入させたうえ、密閉部材11によってその区画室10(2)を密閉させて、包装袋12(2)を形成する。
このようにして、薬品A(B)の必要な包数分すべてが包装装置2によって、区画室10に順次密閉され、包装袋12として形成されることとなる。」(3ページ左上欄9行?同右下欄10行)

「……このようにしてそれぞれ別々の案内路6a(6b)を設けた場合、それらに共通した単一のホッパ7a(7b)を設けることができるし……」(6ページ左上欄1行?4行)

「また、上記実施例では包装装置2に……包装袋12が形成されるように構成したが、これに限定するものでなく、たとえば、ブリスタパックその他適宜の容器に薬品を収容して密閉するようにしてもよい。」(6ページ左上欄16行?同右上欄6行)

以上の記載によれば、錠剤Aを区画室10に投入して包装袋12を形成する方法だけではなく、錠剤Aをブリスタパックに収容して密閉する方法も把握することができる。よって、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「錠剤をブリスタパックに収容して密閉する方法であって:
選択部材18によって選択された薬品庫1a(1b)の該当する錠剤フィーダ4a(4b)を作動させて、錠剤A(B)を最初の1包分に必要な錠数だけ排出させ、
この錠剤A(B)をホッパ7a(7b)に集め、選択部材13によって選択されたコンベヤ15a(15b)の薬品収容部16a(1)(16b(1))に収容し、
コンベヤ15a(15b)を作動させて、薬品収容部16a(1)(16b(1))を前進させ、
以下同様にして、錠剤A(B)を1包分ずつ、つぎつぎに薬品収容部16a(16b)に収容し、包装装置2に向けて前進させ、
薬品収容部16a(1)(16b(1))が選択部材14に到達した場合、選択部材14によって該当するコンベヤ15a(15b)を選択し、包装装置2を作動させてコンベヤ15a(15b)の薬品収容部16a(1)(16b(1))に収容された錠剤A(B)を、ブリスタパックに投入し、
以下同様にして、錠剤A(B)の必要な包数分すべてをブリスタパックに順次投入する方法。」

(3)本件特許発明1について
ア.本件特許発明1と甲1発明との対比
甲1発明の「錠剤」、「ブリスタパック」、「収容して密閉する」は、本件特許発明1の「固形薬剤製品」、「パッケージ」、「充填する」に相当する。
甲1発明の「ブリスタパック」は、錠剤Aの必要な包数分すべてを順次投入することや技術常識を考慮すれば、「複数の腔部をもつ」ものであることは明らかである。そして、甲1発明の方法を実行するにあたり、ブリスタパックを供給する必要があることも明らかであるから、甲1発明は、「複数の腔部をもつ製品パッケージを供給する工程」を備えているといえる。
甲1発明の「錠剤フィーダ4a」は複数存在しているから、本件特許発明1の「複数の異なった薬剤源」に相当する。甲1発明の「ホッパ7a」は、複数の錠剤フィーダ4aに対して共通であるから「共通のホッパ7a」といえ、本件特許発明1の「共通の漏斗」とは、「共通の容器」であるとの限度で一致する。そうすると、甲1発明の「選択部材18によって選択された薬品庫1aの該当する錠剤フィーダ4aを作動させて、錠剤Aを最初の1包分に必要な錠数だけ排出させ、この錠剤Aをホッパ7aに集め」る工程と、本件特許発明1の「複数の異なった薬剤源から一つ以上の固形薬剤製品を共通の漏斗内へ選択的に分配する工程」とは、「複数の異なった薬剤源から一つ以上の固形薬剤製品を共通の容器内へ選択的に分配する工程」との限度で一致する。
よって、本件特許発明1と甲1発明との一致点、相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
固形薬剤製品のパッケージを充填する方法であって:
複数の腔部をもつ製品パッケージを供給する工程と;
複数の異なった薬剤源から一つ以上の固形薬剤製品を共通の容器内へ選択的に分配する工程と;
を有している固形薬剤製品のパッケージを充填する方法。

[相違点a1]
本件特許発明1は「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ製品包装用型板を供給する工程」を備えるのに対し、甲1発明は該行程を備えない点。

[相違点a2]
製品パッケージの複数の腔部が、本件特許発明1では「該製品包装用型板の該腔部と整列し得る」と特定されているのに対し、甲1発明では、そのように特定されていない点。

[相違点a3]
「共通の容器」が、本件特許発明1では「共通の漏斗」であるのに対し、甲1発明では「共通のホッパ7a」である点。

[相違点a4]
本件特許発明1は「該共通の漏斗と該複数の製品包装用型板腔部との間で直交する2方向に自動的に相対運動を起させて、複数の異なった薬剤源から1つ以上の固形薬剤製品を、該複数の型板腔部の各々中に置くために選択的に個々の腔部の1つの上に該共通の漏斗を位置付ける工程」を備えるのに対し、甲1発明は該行程を備えない点。

[相違点a5]
本件特許発明1は「その後、該製品包装用型板の該腔部と該製品パッケージの腔部とを自動的に整列させ」る行程を備えるのに対し、甲1発明は該行程を備えない点。

[相違点a6]
本件特許発明1は「製品包装用型板腔部内に入れられていた固形薬剤を該製品パッケージの対応した腔部内へ転送する工程」を備えるのに対し、甲1発明は該行程を備えない点。

イ.判断
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、上記相違点a1ないし相違点a6が存在するのであるから、本件特許発明1が甲1発明であるということはできない。
相違点a1に関し、請求人は、甲1の複数の薬品収容部16a及び複数の薬品収容部16bは、複数の腔部がロウとカラムを有するアレー状に配列された状態となっているから、甲1に「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部」が記載されていると主張し、上記複数の薬品収容部16a及び複数の薬品収容部16bは、最終的には製品包装に用いられるものであり、複数の型が平面上に配列された状態となっているから、これらは、製品包装用型板に該当すると主張する(平成26年3月13日付け口頭審理陳述要領書3ページ20行?31行)。
しかし、甲1の複数の薬品収容部16a及び複数の薬品収容部16bは、それぞれ、コンベヤ15a及びコンベヤ15bに形成されているものであって、「型板」に形成されたものではない。しかも、コンベヤ15a及びコンベヤ15bは、個々に駆動されるため、複数の薬品収容部16a及び複数の薬品収容部16bの位置関係は一定に定まるものではなく、複数の腔部がロウとカラムを有するアレー状に配列された状態であるとはいえない。
また、本件特許発明1の「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ製品包装用型板」は、「型板」という具体的な物であるから、甲1の複数の薬品収容部16a及び複数の薬品収容部16bが平面上に配列された状態となっているとしても、そのような抽象的な配列状態が「型板」に相当するということはできない。
よって、上記請求人の主張は失当であり、甲1には、本件特許発明1の「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ製品包装用型板」が開示されているとはいえない。
また、甲1に、本件特許発明1の製品包装用型板が開示されていない以上、相違点a2、a4、a5、a6に係る本件特許発明1の構成も、甲1に開示されているとはいえない。
したがって、本件特許発明1が甲1発明であるということはできない。

(4)本件特許発明2、5、6について
本件特許発明2、5、6は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定を付加したものに相当するから、少なくとも、前記(3)ア.に示した相違点a1ないし相違点a6で甲1発明と相違する。
よって、本件特許発明2、5、6は、いずれも甲1発明であるということはできない。

(5)小括
無効理由1によって、本件特許発明1、2、5、6についての特許を無効とすることはできない。

2.無効理由2について
(1)請求人の主張
請求人は、本件特許発明1と甲1に記載された発明は、構成AないしD、F、Gで一致し、構成Eが甲1に明示的に記載されていない点が相違するが、甲1の選択部材18を「コンベヤの進行方向」に垂直に移動する形態を採用することは当業者が容易に想到し得ることであり、また、甲2に、ホッパー51と分割機59の腔部との間で「コンベヤの進行方向」に垂直な方向に相対移動を起こさせることが記載されているから、本件特許発明1は、甲1に記載された発明から、又は、甲1及び甲2に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。
また、本件特許発明2の構成Hは甲1、甲3に開示され、本件特許発明3、4の構成Iは甲3に開示され、本件特許発明5、6の構成Jは甲1、甲4に開示されており、これらの構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たと主張する(審判請求書16ページ表の下1行?18ページ5行)。

(2)本件特許発明1について
請求人の主張は、上記(1)のとおり、本件特許発明1の「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ製品包装用型板を供給する工程」(構成B、相違点a1)が、本件特許発明1と甲1発明との一致点であることを前提とするものであるが、上記1.(3)イ.に示したとおり、前提が誤りであるから採用できない。
もっとも、請求人は、本件特許発明1は、甲1発明及び甲1、甲2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができた旨を主張しているので、以下、相違点a1ないし相違点a6に係る本件特許発明1の構成を、甲1発明及び甲1、甲2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に想到し得たかを検討する。
甲2の記載事項は、後記4.(2)のとおりである。
相違点a1につき検討すると、甲1、甲2のいずれにも「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ製品包装用型板」という具体的な物は記載されておらず、上記型板を甲1発明に設けることを示唆する記載もない。
そして、甲1の「全く別個の設置空間に収容された薬品どうしであっても、適宜組み合わせて包装することのできる薬品包装システムを提供することを目的とする」(2ページ右上欄6行?9行)、「この発明は上記目的を達成するため……前記複数の薬品庫から取り出された薬品を前記包装装置へ搬送する複数の搬送装置とを具えたものである。」(2ページ右上欄11行?15行)との記載を参酌すれば、甲1発明のコンベヤ15a(15b)は、別個の設置空間に収容された薬品を包装装置へ搬送するための搬送装置として必要なものと理解されるから、たとえ甲1発明のコンベヤ15a(15b)に形成された薬品収容部16a(16b)の配列状態に着目したとしても、コンベヤ15a(15b)を「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ製品包装用型板」に変更することは、当業者が容易に想到し得ないことである。
よって、相違点a1に係る本件特許発明1の構成を、甲1発明及び甲1、甲2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に想到し得たということはできない。
また、相違点a2、a4、a5、a6に係る本件特許発明1の構成は、いずれも「製品包装用型板」を含んでいるから、同様に、甲1発明及び甲1、甲2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に想到し得たということはできない。
したがって、本件特許発明1は、甲1発明及び甲1、甲2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件特許発明2ないし6について
本件特許発明2ないし6は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定を付加したものに相当するところ、上記(1)のとおり、請求人は、当該他の限定は、甲1、甲3、甲4に記載された技術事項を考慮して、当業者が容易に想到し得たと主張する。
しかし、上記(2)のとおり、本件特許発明1は、甲1発明及び甲1、甲2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないのであるから、同様に、本件特許発明2ないし6も、甲1発明及び甲1ないし甲4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)小括
無効理由2によって、本件特許発明1ないし6についての特許を無効とすることはできない。

3.無効理由3について
(1)請求人の主張
請求人は、本件特許発明1と甲5に記載された発明は、構成A、B、D、F、Gで一致し、構成Cに関し「型板の該腔部と整列し得る複数の腔部をもつ」製品パッケージを供給する点、構成Eに関し「共通の漏斗と該複数の製品包装用型板腔部との間で直交する2方向に自動的に相対運動を起させ」る点で相違するが、上記相違点は甲2に記載されているから、本件特許発明1は、甲5及び甲2に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。
また、本件特許発明2の構成Hは甲3に記載され、本件特許発明3、4の構成Iは甲3に記載され、本件特許発明5、6の構成Jは甲5、甲4に開示されており、これらの構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たと主張する(審判請求書22ページ表の下1行?25ページ2行)。

(2)甲5の記載
甲5には、図面とともに、以下の記載がある。
「案内路26a、26b、26c、26dの下端はホッパ状に絞り込まれて、取り出し部27a、27b、27c、27dが形成されている。」(4ページ左欄18行?20行)

「案内装置23a(23b、23c)は、仕切板29、29、…によって相互に仕切られた複数の薬品収容部30、30、…が、長手方向に沿って1列に形成された無端ベルトで構成され、その両側には、固定側板31、31が設けられている。」(4ページ左欄29行?32行)

「包装装置22は、薬品導入部33から1回分ずつ導入される錠剤を、図示しない適宜の分包用シートに1包ずつ分包するものであり、……」(4ページ右欄13行?15行)

「まず、薬品庫21a、21b、21c、21dからの錠剤の取り出し動作は、つぎのようにして行う。
最初に、取り出すべき錠剤(たとえばA)を収容した錠剤フィーダ(すなわち25A)が設置された薬品庫21a(21b、21c、21d)を指定し、錠剤フィーダ25Aに対応した駆動部材によって当該錠剤フィーダ25Aの取出部を作動させて、錠剤Aを1錠ずつ1回分の錠数だけ排出させる。
すると、この最初の1回分の錠剤Aは、薬品庫21a(21b、21c、21d)の案内路26a(26b、26c、26d)を通って取り出し部27a(27b、27c、27d)に到達し、振り分け装置28によって選択された受け渡し位置28a(28b、28c)へ案内されて、それに対応した案内装置23a(23b、23c)の薬品収容部30に収容される。
これを受けて、案内装置23a(23b、23c)は、駆動部材32の作動により、薬品収容部30、30、…を1ピッチだけ移送させる。
つぎに、錠剤フィーダ25Aを作動させて錠剤Aをもう1回分排出させると、この2度目の錠剤Aは、薬品庫21a(21b、21c、21d)の案内路26a(26b、26c、26d)を通って取り出し部27a(27b、27c、27d)に到達し、振り分け装置28によって選択された受け渡し位置28a(28b、28c)へ案内されて、案内装置23a(23b、23c)のつぎの薬品収容部30に収容される。
これを受けて、案内装置23a(23b、23c)は、駆動部材32の作動により、薬品収容部30、30、…をもう1ピッチだけ移送させる。
さらに、つぎの1回分の錠剤Aが錠剤フィーダ25Aから排出されると、この3度目の錠剤Aは、薬品庫21a(21b、21c、21d)の案内路26a(26b、26c、26d)を通って取り出し部27a(27b、27c、27d)に到達し、振り分け装置28によって選択された受け渡し位置28a(28b、28c)へ案内されて、案内装置23a(23b、23c)のさらにつぎの薬品収容部30に収容される。
これを受けて、案内装置23a(23b、23c)は、駆動部材32の作動により、薬品収容部30、30、…をさらにもう1ピッチだけ移送させる。
以下同様にして、錠剤フィーダ25Aの作動により、薬品21a(21b、21c、21d)から錠剤Aが1回分ずつ取り出されるたびに、その取り出しタイミングにしたがって、案内装置23a(23b、23c)が薬品収容部30、30、…を1ピッチずつ移送させるため、取り出された錠剤Aは、薬品収容部30、30、…に順次収容されて、案内装置23a(23b、23c)の長手方向に沿って整列されることとなる。」(4ページ右欄19行?5ページ左欄12行)

「また、包装装置22による錠剤の分包動作は、つぎのようにして行う。
……
つぎに、案内装置23a(23b、23c)は、薬品収容部30、30、…を包装装置22の分包タイミングにしたがって1ピッチずつ移送させながら、包装装置22の薬品導入部33に対応した位置に来た薬品収容部30から順に、そこに収容された錠剤Aを薬品導入部33に落下させる。
すると、包装装置22はこれを受けて、薬品導入部33に導入された錠剤Aを、その導入の順番にしたがって1包ずつ順次分包することとなる。」(5ページ左欄下から13行?同右欄3行)

以上の記載によれば、甲5には、次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。

「錠剤を分包用シートに1包ずつ分包する方法であって:
錠剤フィーダ25Aの取出部を作動させて、錠剤Aを1錠ずつ1回分の錠数だけ排出させ、
この錠剤Aは、下端がホッパ状に絞り込まれた案内路26a(26b、26c、26d)を通って取り出し部27a(27b、27c、27d)に到達し、振り分け装置28によって選択された受け渡し位置28a(28b、28c)へ案内されて、それに対応した案内装置23a(23b、23c)の薬品収容部30に収容され、
駆動部材32の作動により、薬品収容部30を1ピッチだけ移送させ、
以下同様にして、錠剤Aが1回分ずつ取り出されるたびに、その取り出しタイミングにしたがって、薬品収容部30を1ピッチずつ移送させ、取り出された錠剤Aは、薬品収容部30に順次収容されて、案内装置23a(23b、23c)の長手方向に沿って整列され、
包装装置22の薬品導入部33に対応した位置に来た薬品収容部30から順に、そこに収容された錠剤Aを薬品導入部33に落下させ、
薬品導入部33に導入された錠剤Aを、その導入の順番にしたがって1包ずつ順次分包する方法。」

(3)本件特許発明1について
ア.本件特許発明1と甲5発明との対比
甲5発明の「錠剤」、「分包」は、本件特許発明1の「固形薬剤製品」、「充填」に相当する。
甲5発明の「分包用シート」と、本件特許発明1の「パッケージ」とは、錠剤(固形薬剤製品)を充填するための「製品容器」である限度で一致し、甲5発明と本件特許発明1は、「製品容器を供給する工程」を備える点で共通する。
甲5発明の「錠剤フィーダ25」は複数存在しているから(第3図参照)、本件特許発明1の「複数の異なった薬剤源」に相当し、甲5発明の「下端がホッパ状に絞り込まれた案内路26a(26b、26c、26d)」は、複数の錠剤フィーダ25に対して共通であるから、本件特許発明1の「共通の漏斗」に相当するといえる。そうすると、甲5発明の「錠剤フィーダ25Aの取出部を作動させて、錠剤Aを1錠ずつ1回分の錠数だけ排出させ、この錠剤Aは、下端がホッパ状に絞り込まれた案内路26a(26b、26c、26d)を通って取り出し部27a(27b、27c、27d)に到達し」との工程は、本件特許発明1の「複数の異なった薬剤源から一つ以上の固形薬剤製品を共通の漏斗内へ選択的に分配する工程」に相当する。

よって、本件特許発明1と甲5発明との一致点、相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
固形薬剤製品の製品容器を充填する方法であって:
製品容器を供給する工程と;
複数の異なった薬剤源から一つ以上の固形薬剤製品を共通の漏斗内へ選択的に分配する工程と;
を有している固形薬剤製品の製品容器を充填する方法。

[相違点b1]
本件特許発明1は「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ製品包装用型板を供給する工程」を備えるのに対し、甲5発明は該行程を備えない点。

[相違点b2]
製品容器が、本件特許発明1では「パッケージ」であって、「該製品包装用型板の該腔部と整列し得る複数の腔部をもつ製品パッケージ」であるのに対し、甲5発明では「分包用シート」である点。

[相違点b3]
本件特許発明1は「該共通の漏斗と該複数の製品包装用型板腔部との間で直交する2方向に自動的に相対運動を起させて、複数の異なった薬剤源から1つ以上の固形薬剤製品を、該複数の型板腔部の各々中に置くために選択的に個々の腔部の1つの上に該共通の漏斗を位置付ける工程」を備えるのに対し、甲5発明は該行程を備えない点。

[相違点b4]
本件特許発明1は「その後、該製品包装用型板の該腔部と該製品パッケージの腔部とを自動的に整列させ」る行程を備えるのに対し、甲5発明は該行程を備えない点。

[相違点b5]
本件特許発明1は「製品包装用型板腔部内に入れられていた固形薬剤を該製品パッケージの対応した腔部内へ転送する工程」を備えるのに対し、甲5発明は該行程を備えない点。

相違点b1に関し、請求人は、甲5の案内装置23a、23b、23cは、ロウとカラムを有するアレー状に配列された状態で配置され、最終的には製品包装に用いられるものであり、複数の型が平面上に配列された状態となっているから、甲5に「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ製品包装用型板を供給する工程」が開示されていると主張する(平成26年3月13日付け口頭審理陳述要領書6ページ下から11行?5行)。
しかし、甲5の案内装置23a、23b、23cは、無端ベルトで構成されているのであるから(4ページ左欄29行?32行参照。)、「型板」ということはできない。しかも、案内装置23a、23b、23cは、駆動部材32により個々に駆動されるため、複数の薬品収容部30の位置関係は一定に定まるものではなく、「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ」とはいえない。また、本件特許発明1の「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ製品包装用型板」は、「型板」という具体的な物であるから、甲5の案内装置23a、23b、23cの複数の薬品収容部30が平面上に配列された状態となっているとしても、そのような抽象的な配列状態が「型板」に相当するということはできない。
よって、上記請求人の主張は失当であり、甲5には、本件特許発明1の「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ製品包装用型板」が開示されているとはいえない。
また、甲5に、本件特許発明1の製品包装用型板が開示されていない以上、相違点b2ないし相違点b5に係る本件特許発明1の構成も、甲5に開示されているとはいえない。

イ.判断
請求人の主張は、上記(1)のとおり、本件特許発明1の「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ製品包装用型板を供給する工程」(構成B、相違点b1)が、本件特許発明1と甲5発明との一致点であることを前提とするものであるが、上記ア.に示したとおり、前提が誤りであるから採用できない。
もっとも、請求人は、本件特許発明1は、甲5発明及び甲5、甲2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができた旨を主張しているので、以下、相違点b1ないし相違点b5に係る本件特許発明1の構成を、甲5発明及び甲5、甲2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に想到し得たかを検討する。
甲2の記載事項は、後記4.(2)のとおりである。
相違点b1につき検討すると、甲5、甲2のいずれにも「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ製品包装用型板」という具体的な物は記載されておらず、上記型板を甲5発明に設けることを示唆する記載もない。
そして、甲5の【特許請求の範囲】、[課題を解決するための手段]、[作用]、[発明の効果]の欄の記載からみて、甲5においては、コンベア状の案内装置を複数列設けることが必須であると理解されるから、甲5発明の案内装置23a(23b、23c)を「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ製品包装用型板」に変更することは、当業者が容易に想到し得ないことである。
よって、相違点b1に係る本件特許発明1の構成を、甲5発明及び甲5、甲2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に想到し得たということはできない。
また、相違点b2ないし相違点b5に係る本件特許発明1の構成は、いずれも「製品包装用型板」を含んでいるから、同様に、甲5発明及び甲5、甲2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に想到し得たということはできない。
したがって、本件特許発明1は、甲5発明及び甲5、甲2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件特許発明2ないし6について
本件特許発明2ないし6は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定を付加したものに相当するところ、上記(1)のとおり、請求人は、当該他の限定は、甲3、甲4、甲5に記載された技術事項を考慮して、当業者が容易に想到し得たと主張する。
しかし、上記(3)のとおり、本件特許発明1は、甲5発明及び甲5、甲2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないのであるから、同様に、本件特許発明2ないし6も、甲5発明及び甲2ないし甲5に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)小括
無効理由3によって、本件特許発明1ないし6についての特許を無効とすることはできない。

4.無効理由4について
(1)請求人の主張
請求人は、本件特許発明1と甲2に記載された発明は、構成A、C、D、F、Gで一致し、構成Bに関し「(複数の腔部が)ロウとカラムを有するアレー内に配列された」ものである点、構成Eに関し「(共通の漏斗と型板腔部とが)直交する2方向に(相対移動する)」点で相違するが、上記相違点は甲6及び甲7に記載されているから、本件特許発明1は、甲2及び甲6、甲7に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。
また、本件特許発明2の構成Hは甲3に記載され、本件特許発明3、4の構成Iは甲3に記載され、本件特許発明5、6の構成Jは甲2に開示されており、これらの構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たと主張する(審判請求書29ページ表の下1行?32ページ12行)。

(2)甲2の記載
甲2には、図面とともに、以下の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は自動錠剤分包装置に係り、特に所望の種類の錠剤を各服用回分ずつブリスターパックに分包する包装装置に関する。」

「【0010】スライドキャビネット1は、たとえば、図2に示す如く、2台のフィーダ棚1a,1bを有し、各フィーダ棚には複数段の棚11?15が設けられていて、各棚に複数の錠剤収納器(ロータカセット)16が収容される。」

「【0021】次に搬送コンベア48は図5に示すように、トレー供給ユニット24aから供給されたブリスターパックBPを錠剤投入位置やトレー排出部5へ搬送するが、……。トレー始端検出器48cは新しいブリスターパックBPがスクレッパー・ユニット24dの前まで搬送されたことを検出し、この検出出力が得られることにより処方の1日目の錠剤投入準備が可能となる。」

「【0023】スクレッパー・ユニット24dは、たとえば、図6および図7に示すように構成される。同図において、51はホッパー、52は第1のシャッター、53は第2のシャッター、54はスクレッパー、55?58は分割機59の各区画室である。
【0024】前記スライドキャビネット1内のフィーダ棚に載置された錠剤収納器16より、スライドキャビネット内のダクト、シュートを経てホッパー51に、図示していない上位の処方入力端末により入力された処方の錠剤60が1回量ずつ集積される。
【0025】分割機59は、例えば、就寝前分の錠剤を収容する区画室55、夕分の区画室56、昼分の区画室57および朝分の区画室58を有し、区画室55がA位置を原点、区画室58がD位置を終点とし、X方向へ各区画毎に順次ホッパー51の下方に移動され、第1のシャッター52の開閉によりホッパー51内に集積された錠剤60を1回量ずつ夫々の区画室毎に受け取る。
【0026】任意の処方の1日量[分包1(最小)?分包4(最大)]の受取りを終了した分割機59においては、連動する夫々の第2のシャッター53が開放し、連動する夫々のスクレッパー54が第2のシャッター53に同期して錠剤60を押出し、ブリスターパックBPの各ホールへ受け渡す。
【0027】ブリスターパックBPは、たとえば、横方向4ホール(1日量:分包1?分包4)、縦方向7ホール(列)(1日量?7日量)計28ホールを有し、搬送コンベア48により縦方向(図7矢印方向)へ各ホール毎に順次分割機59の各対応する区画室の下方に移動され、前述のようにして1日量ずつ各ホールに錠剤が投入される。
【0028】前記制御ユニット21に対する任意の処方入力情報に基づいてブリスターパックBP1シートにつき1日分(最小)?7日分(最大)を分割、分包し、7日分以上の処方入力情報の場合は、必要に応じてブリスターパックBPを、2シート、3シート…と使用する。」

以上の記載によれば、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

「所望の種類の錠剤を各服用回分ずつブリスターパックに分包する方法であって:
区画室55?58を有する分割機59を準備し、
トレー供給ユニット24aからブリスターパックBPを供給し、
複数の錠剤収納器16よりホッパー51に錠剤60が1回量ずつ集積され、
分割機59の区画室55?58がX方向へ各区画毎に順次ホッパー51の下方に移動され、ホッパー51内に集積された錠剤60を1回量ずつ夫々の区画室毎に受け取り、
ブリスターパックBPは、搬送コンベア48により縦方向へ各ホール毎に順次分割機59の各対応する区画室の下方に移動され、
分割機59はブリスターパックBPの各ホールへ錠剤60を受け渡す方法。」

(3)本件特許発明1について
ア.本件特許発明1と甲2発明との対比
甲2発明の「錠剤」、「ブリスターパック」、「分包する」は、それぞれ、本件特許発明1の「固形薬剤製品」、「パッケージ」、「充填する」に相当する。
甲2発明の「区画室55?58を有する分割機59」と、本件特許発明1の「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ製品包装用型板」とは、「複数の腔部を持つ製品包装用型板」との限度で一致する。
甲2発明の「ブリスターパックBP」は、複数のホールを有しており、各ホールは分割機59の各対応する区画室の下方に移動されるものであることから、本件特許発明1の「該製品包装用型板の該腔部と整列し得る複数の腔部をもつ製品パッケージ」に相当する。
甲2発明の「複数の錠剤収納器16」は、本件特許発明1の「複数の異なった薬剤源」に相当し、甲2発明の「ホッパー51」は、複数の錠剤収納器16より錠剤60が集積されるものであることを考慮すると、本件特許発明1の「共通の漏斗」に相当する。よって、甲2発明の「複数の錠剤収納器16よりホッパー51に錠剤60が1回量ずつ集積され」る工程は、本件特許発明1の「複数の異なった薬剤源から一つ以上の固形薬剤製品を共通の漏斗内へ選択的に分配する工程」に相当する。
甲2発明の「分割機59の区画室55?58がX方向へ各区画毎に順次ホッパー51の下方に移動され」ることは、本件特許発明1の「該共通の漏斗と該複数の製品包装用型板腔部との間で」「自動的に相対運動を起させて」「選択的に個々の腔部の1つの上に該共通の漏斗を位置付ける」ことに相当する。また、甲2発明の上記移動は、「ホッパー51内に集積された錠剤60を1回量ずつ夫々の区画室毎に受け取」るためであり、これは、本件特許発明1の「複数の異なった薬剤源から1つ以上の固形薬剤製品を、該複数の型板腔部の各々中に置くため」に相当する。よって、甲2発明と本件特許発明1は、「該共通の漏斗と該複数の製品包装用型板腔部との間で自動的に相対運動を起させて、複数の異なった薬剤源から1つ以上の固形薬剤製品を、該複数の型板腔部の各々中に置くために選択的に個々の腔部の1つの上に該共通の漏斗を位置付ける工程」を有する点で共通する。
甲2発明の「ブリスターパックBPは、搬送コンベア48により縦方向へ各ホール毎に順次分割機59の各対応する区画室の下方に移動され」は、本件特許発明1の「該製品包装用型板の該腔部と該製品パッケージの腔部とを自動的に整列させ」に相当する。
甲2発明の「分割機59はブリスターパックBPの各ホールへ錠剤60を受け渡す」工程は、本件特許発明1の「製品包装用型板腔部内に入れられていた固形薬剤を該製品パッケージの対応した腔部内へ転送する工程」に相当する。
よって、本件特許発明1と甲2発明との一致点、相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
固形薬剤製品のパッケージを充填する方法であって:
複数の腔部を持つ製品包装用型板を供給する工程と;
該製品包装用型板の該腔部と整列し得る複数の腔部をもつ製品パッケージを供給する工程と;
複数の異なった薬剤源から一つ以上の固形薬剤製品を共通の漏斗内へ選択的に分配する工程と;
該共通の漏斗と該複数の製品包装用型板腔部との間で自動的に相対運動を起させて、複数の異なった薬剤源から1つ以上の固形薬剤製品を、該複数の型板腔部の各々中に置くために選択的に個々の腔部の1つの上に該共通の漏斗を位置付ける工程と;
その後、該製品包装用型板の該腔部と該製品パッケージの腔部とを自動的に整列させ;そして
製品包装用型板腔部内に入れられていた固形薬剤を該製品パッケージの対応した腔部内へ転送する工程とを有している固形薬剤製品のパッケージを充填する方法。」

[相違点c1]
複数の腔部を持つ製品包装用型板が、本件特許発明1は、「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ製品包装用型板」であるのに対し、甲2発明は、「区画室55?58を有する分割機59」である点。

[相違点c2]
本件特許発明1は、共通の漏斗と複数の製品包装用型板腔部との間で「直交する2方向に」自動的に相対運動を起させるのに対し、甲2発明は、分割機59の区画室55?58が「X方向へ」ホッパー51の下方に移動される点。

イ.判断
請求人は、上記(1)のとおり、相違点c1に係る構成(構成B)は甲6に記載された技術事項を適用し、相違点c2に係る構成(構成E)は甲7に記載された技術事項を適用して、いずれも当業者が容易に想到し得た旨を主張する(審判請求書30ページ4行?末行)。
まず、相違点c1について検討する。
甲6には、硬質ゼラチンカプセルへの錠剤充填装置に関し、「所定数の錠剤を保持するための複数の第2のガイド穴103aを有する錠剤保持ブロツク103」が記載されている(1ページ左欄下から2行?同右欄1行)。第2のガイド穴103aが、縦横方向に配列されていること(【図1】)、錠剤保持ブロツク103は、所定数の錠剤を蓄えて、製品たる硬質ゼラチンカプセルのボデイ200内に錠剤を転送する機能を有すること(2ページ右欄37行?45行)、に照らせば、甲6の「所定数の錠剤を保持するための複数の第2のガイド穴103aを有する錠剤保持ブロツク103」は、本件特許発明1の「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ製品包装用型板」に相当するといえる。しかしながら、甲6の錠剤保持ブロツク103は、錠剤ホッパ100との間で相対運動するものではなく、複数種類の錠剤に対応できるものでないことが明らかである(【0010】、図面)。そして、甲6には、複数種類の錠剤に対応することや、そのための構成について示唆する記載はない。更に、甲6は、硬質ゼラチンカプセルのボデイ内にカプセルの内径よりも若干小さい外径を有する錠剤を複数個充填するため(【0001】)のものであって、図示されるように、錠剤保持ブロック103の第2のガイド穴103a内に錠剤が高さ方向に積層されるものである。
一方、甲2の「本発明は自動錠剤分包装置に係り、特に所望の種類の錠剤を各服用回分ずつブリスターパックに分包する包装装置に関する。」(【0001】)との記載によれば、甲2発明は、所望の種類の錠剤をブリスターパックに分包することを前提とする発明である。
してみれば、甲6の錠剤保持ブロック103の目的や技術的意義が甲2発明の分割機59と相違し、甲6に記載された技術事項は、少なくとも錠剤の種類について甲2発明と前提が相違しているから、そのまま甲2発明に適用することはできず、甲2発明への適用を可能とする構成の示唆もないから、当業者は、甲2発明の分割機59に対し、甲6の錠剤保持ブロツク103の構成を適用しようと着想することはない。
また、甲2には、区画室55?58を有する分割機59について、区画室を縦横方向に配列して「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部」とすることを示唆する記載はなく、具体的な構成としても、分割機59は、例えば、就寝前分の錠剤を収容する区画室55、夕分の区画室56、昼分の区画室57および朝分の区画室58を有し、任意の処方の1日量[分包1(最小)?分包4(最大)]を受け取ること(【0025】、【0026】)、ブリスターパックBPは、たとえば、横方向4ホール(1日量:分包1?分包4)を有し、搬送コンベア48により縦方向に移動され、1日量ずつ各ホールに錠剤が投入されること(【0027】)、が開示されるにとどまる。
そうすると、甲2発明の分割機59としては、縦方向に移動されてきたブリスターパックBPの横方向ホールに1日量ずつ錠剤を投入するため、せいぜい1日分の錠剤を収容する区画室を有するものしか想定されていないから、分割機59の区画室を縦横方向に配列して「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部」とする動機付けはない。
したがって、相違点c1に係る本件特許発明1の構成を、甲2発明及び甲2、甲6に記載された技術事項に基いて当業者が容易に想到し得たということはできない。
次に、相違点c2について検討すると、上記のとおり、甲2発明の分割機59の区画室を縦横方向に配列して「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部」とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえず、そうすると、甲2発明のホッパー51(共通の漏斗)と分割機59の区画室55?58(複数の製品包装用型板腔部)を「直交する2方向に」相対運動させる必要はないから、甲7に記載された技術事項を考慮しても、相違点c2に係る本件特許発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲2発明及び甲2、甲6、甲7に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件特許発明2ないし6について
本件特許発明2ないし6は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定を付加したものに相当するところ、上記(1)のとおり、請求人は、当該他の限定は、甲3、甲2に記載された技術事項を考慮して、当業者が容易に想到し得たと主張する。
しかし、上記(3)のとおり、本件特許発明1は、甲2発明及び甲2、甲6、甲7に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないのであるから、同様に、本件特許発明2ないし6も、甲2発明及び甲2、甲3、甲6、甲7に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)小括
無効理由4によって、本件特許発明1ないし6についての特許を無効とすることはできない。

5.無効理由5について
(1)請求人の主張
請求人は、本件特許発明1と甲2に記載された発明の一致点、相違点は、前記4.(1)に示したとおりであるところ、上記相違点は甲8に記載されているから、本件特許発明1は、甲2及び甲8に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。
また、本件特許発明2ないし6についての主張は、前記4.(1)に示したとおりである旨主張する(審判請求書37ページ1行?38ページ13行)。

(2)甲2の記載
甲2の記載及び甲2発明は、前記4.(2)のとおりである。

(3)本件特許発明1について
ア.本件特許発明1と甲2発明との対比
、本件特許発明1と甲2発明との一致点、相違点は、前記4.(3)ア.のとおりである。

イ.判断
請求人は、上記(1)のとおり、相違点c1、c2に係る構成は、いずれも甲8に記載された技術事項を適用して、当業者が容易に想到し得た旨を主張する(審判請求書37ページ5行?38ページ1行)。
まず、相違点c1について検討する。
甲8に記載された、上方スライダ6及び下方スライダ5は、いずれも、「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ」といえる。しかしながら、上方スライダ6及び下方スライダ5の開口(腔部)は、錠剤を1つのみ受け入れるように構成されており(1ページ左欄下から1行?同右欄3行、図面)、供給ケース11から錠剤を受け入れるように構成されている(FIG.3)ことからみて、複数種類の錠剤に対応できるものでもない。
一方、甲2発明の、分割機59の区画室55?58は、ホッパー51内に集積された錠剤60を1回量ずつ受け取るものであり、また、甲2の「本発明は自動錠剤分包装置に係り、特に所望の種類の錠剤を各服用回分ずつブリスターパックに分包する包装装置に関する。」(【0001】)との記載によれば、甲2発明は、所望の種類の錠剤をブリスターパックに分包することを前提とする発明である。
してみれば、甲8に記載された技術事項は、少なくとも錠剤の量及び種類について甲2発明と前提が相違しており、そのまま甲2発明に適用することはできず、甲2発明への適用を可能とする構成の示唆もないから、当業者は、甲2発明の分割機59に対し、甲8の上方スライダ6及び下方スライダ5の構成を適用しようと着想することはない。
また、前記4.(3)イ.で述べたように、甲2発明の分割機59としては、縦方向に移動されてきたブリスターパックBPの横方向ホールに1日量ずつ錠剤を投入するため、せいぜい1日分の錠剤を収容する区画室を有するものしか想定されていないから、分割機59の区画室を縦横方向に配列して「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部」とする動機付けはない。
したがって、相違点c1に係る本件特許発明1の構成を、甲2発明及び甲2、甲8に記載された技術事項に基いて当業者が容易に想到し得たということはできない。
また、相違点c1に係る本件特許発明1の構成を、甲2発明及び甲2、甲8に記載された技術事項に基いて当業者が容易に想到し得たということができない以上、前記4.(3)イ.で述べたのと同様に、相違点c2に係る本件特許発明1の構成も、甲2発明及び甲2、甲8に記載された技術事項に基いて当業者が容易に想到し得たということができない。
したがって、本件特許発明1は、甲2発明及び甲2、甲8に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件特許発明2ないし6について
本件特許発明2ないし6は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定を付加したものに相当するところ、上記(1)のとおり、請求人は、当該他の限定は、甲3、甲2に記載された技術事項を考慮して、当業者が容易に想到し得たと主張する。
しかし、上記(3)のとおり、本件特許発明1は、甲2発明及び甲2、甲8に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないのであるから、同様に、本件特許発明2ないし6も、甲2発明及び甲2、甲3、甲8に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)小括
無効理由5によって、本件特許発明1ないし6についての特許を無効とすることはできない。

6.無効理由6について
(1)請求人の主張
請求人は、本件特許発明1と甲9に記載された発明は、構成A、B、D、Eで一致し、構成C、F、Gで相違するが、上記相違点は甲11に記載されているから、本件特許発明1は、甲9及び甲11に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。
また、本件特許発明2ないし6についての主張は、前記4.(1)に示したとおりである旨主張する(審判請求書42ページ9行?44ページ12行)。

(2)甲9の記載
甲9には、図面とともに、以下の記載がある。なお、日本語訳は甲10による。
「1. Verfahren zum automatischen Kommissionieren von …… der Auffangschale (5) aufgefangen wird.」(17ページ2行?23行)
「1. 複数の容器を有するストレージステーション(2)から異種の単個物品、特に単個ピルを自動的にディスパッチングするための方法において、あらかじめ選択した、同種の平らな単個物品包装物(ブリスタ包装物)を、ほぼ鉛直なストレージコラム(3)の形で、配属されたコンテナにパイルし、ディスパッチングしようとする異種の単個物品の1つのブリスタ包装物(4)の1つをパイルの外に配置された側方の取出し位置(E)へ移動させ、取出し位置(E)にあるディスパッチングしようとする単個物品(1)の下へコレクティングシェル(5)を位置決めし、当該ストレージコラム(3)に配属された、取出しフィンガ(7)を有する取出しユニット(6)を、取出し位置(E)にあるディスパッチングしようとする単個物品(1)の上に位置決めし、前記単個物品を残ったブリスタ包装物から分離することを目的として取出しフィンガ(7)を対応受け(8)に向って動かし、分離した前記単個物品を前記コレクティングシェル(5)の所定のキャビティ(9)に受容することを特徴とする、異種の単個物品を自動的にデイスパッチングする方法。」(甲10、2ページ2行?15行)

よって、甲9には、次の発明(以下、「甲9発明」という。)が記載されていると認められる。

「異種の単個物品、特に単個ピルをコレクティングシェル(5)の所定のキャビティ(9)に受容する方法であって:
キャビティ(9)を持つコレクティングシェル(5)を用意し、
異種の単個物品の1つのブリスタ包装物(4)の1つを取出し位置(E)へ移動させ、
単個物品(1)の下へコレクティングシェル(5)を位置決めし、
取出しフィンガ(7)を有する取出しユニット(6)を、取出し位置(E)にある単個物品(1)の上に位置決めし、
取出しフィンガ(7)を対応受け(8)に向って動かして前記単個物品をブリスタ包装物から分離し、
分離した前記単個物品を前記コレクティングシェル(5)の所定のキャビティ(9)に受容する方法。」

(3)本件特許発明1について
ア.本件特許発明1と甲9発明との対比
甲9発明の「単個物品」、「コレクティングシェル」、「受容する」は、それぞれ、本件特許発明1の「固形薬剤製品」、「パッケージ」、「充填する」に相当する。
甲9発明の「キャビティ(9)」は、本件特許発明1の「複数の腔部」に相当する。
よって、本件特許発明1と甲9発明との一致点、相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
固形薬剤製品のパッケージを充填する方法であって:
複数の腔部をもつ製品パッケージを供給する工程を有している固形薬剤製品のパッケージを充填する方法。

[相違点d1]
本件特許発明1は「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ製品包装用型板を供給する工程」を備えるのに対し、甲9発明は該行程を備えない点。

[相違点d2]
製品パッケージの複数の腔部が、本件特許発明1では「該製品包装用型板の該腔部と整列し得る」と特定されているのに対し、甲9発明では、そのように特定されていない点。

[相違点d3]
本件特許発明1は「複数の異なった薬剤源から一つ以上の固形薬剤製品を共通の漏斗内へ選択的に分配する工程」を備えるのに対し、甲9発明は該行程を備えない点。

[相違点d4]
本件特許発明1は「該共通の漏斗と該複数の製品包装用型板腔部との間で直交する2方向に自動的に相対運動を起させて、複数の異なった薬剤源から1つ以上の固形薬剤製品を、該複数の型板腔部の各々中に置くために選択的に個々の腔部の1つの上に該共通の漏斗を位置付ける工程」を備えるのに対し、甲9発明は該行程を備えない点。

[相違点d5]
本件特許発明1は「その後、該製品包装用型板の該腔部と該製品パッケージの腔部とを自動的に整列させ」る行程を備えるのに対し、甲9発明は該行程を備えない点。

[相違点d6]
本件特許発明1は「製品包装用型板腔部内に入れられていた固形薬剤を該製品パッケージの対応した腔部内へ転送する工程」を備えるのに対し、甲9発明は該行程を備えない点。

請求人は、甲9発明の「コレクティングシェル」は、本件特許発明1の「パッケージ」及び「製品包装用型板」の両者に相当すると主張する(平成26年3月13日付け口頭審理陳述要領書9ページ下から2行?1行)。
しかし、本件特許発明1において、「パッケージ」及び「製品包装用型板」が同一物ということはあり得ないから、甲9発明の「コレクティングシェル」が、本件特許発明1の「パッケージ」及び「製品包装用型板」の両者に相当するということはなく、請求人の主張は採用できない。
また、請求人は、甲9発明の「コレクティングシェル」が、本件特許発明1の「製品包装用型板」に相当する旨主張するようでもあるが(審判請求書42ページ下から4行?2行)、コレクティングシェル5は引渡しステーションで覆われかつ印刷され、適当な診療科の最終消費者(患者)へもたらされるものであって(甲9、16ページ1行?4行、甲10、18ページ下から4行?2行)、製品パッケージに対して薬剤を転送するものではないから、「製品包装用型板」に相当するとはいえない。

イ.判断
請求人の主張は、上記(1)のとおり、本件特許発明1の「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ製品包装用型板を供給する工程」(構成B、相違点d1)が、本件特許発明1と甲9発明との一致点であることを前提とするものであるが、上記ア.に示したとおり、前提が誤りであるから採用できない。
相違点d1について更に検討する。甲9発明は、ブリスタ包装物(4)から直接に単個物品(1)をコレクティングシェル(5)の所定のキャビティ(9)に受容するものである。その前の工程として、単個物品(1)を型板に分配する必要性は全く存在しないし、型板を用いることの示唆もない。
また、甲11には、複数の腔部を備える薬剤トレイ3が記載されているが、甲11は、「手撒きによる仕分けが必要である薬剤を分配するための分配装置に関するもの」であり(1ページ右欄下から3行?2行)、ブリスタ包装物から薬剤を分配するものではないから、甲9発明とは、前提構成が全く異なっており、甲9発明に甲11の技術事項を適用する動機付けがない。
したがって、甲9発明に「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ製品包装用型板を供給する工程」を採用すること、すなわち、相違点d1に係る本件特許発明1の構成は、甲9発明及び甲11に記載された技術事項に基いて当業者が容易に想到し得たということはできない。
また、相違点d2、相違点d4ないし相違点d6に係る本件特許発明1の構成は、いずれも「製品包装用型板」を含んでいるから、同様に、甲9発明及び甲11に記載された技術事項に基いて当業者が容易に想到し得たということはできない。
次に、相違点d3について検討する。甲9発明は、取出しフィンガ(7)を有する取出しユニット(6)により、単個物品(1)をブリスタ包装物(4)から取り出し、これを直接にコレクティングシェル(5)の所定のキャビティ(9)に受容するものであるから、本件特許発明1のような「漏斗」を用いる必要性がない。請求人は、甲9には、所望する位置に所望する薬剤を確実に投入するという支援機能及び技術思想が開示されており、甲9の、突き出し部材13の開口12の内壁と、アンビル8の開口部内壁とによって、「漏斗」の機能を構成している旨を主張する(平成26年3月13日付け口頭審理陳述要領書10ページ6行?10行)。しかし、「漏斗」とは、一般的な意味として、広がりのある物品の受け入れ口と絞られた物品の排出口を有するものであるから(答弁書10ページ10行?11行)、甲9の「突き出し部材13の開口12の内壁と、アンビル8の開口部内壁」が「漏斗」に該当しないことは明らかであり、上記請求人の主張は採用できない。
よって、相違点d3に係る本件特許発明1の構成は、甲9発明及び甲11に記載された技術事項に基いて当業者が容易に想到し得たということはできない。
したがって、本件特許発明1は、甲9発明及び甲9、甲11に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件特許発明2ないし6について
本件特許発明2ないし6は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定を付加したものに相当するところ、上記(1)のとおり、請求人は、当該他の限定は、甲3、甲2に記載された技術事項を考慮して、当業者が容易に想到し得たと主張する。
しかし、上記(3)のとおり、本件特許発明1は、甲9発明及び甲9、甲11に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないのであるから、同様に、本件特許発明2ないし6も、甲9発明及び甲2、甲3、甲9、甲11に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)小括
無効理由6によって、本件特許発明1ないし6についての特許を無効とすることはできない。

7.無効理由7について
無効理由7は、請求項7ないし11に係る発明についての主張であるところ、請求項7ないし請求項11に係る発明についての審判請求は、後記10.のとおり却下すべきものである。

8.無効理由8について
(1)請求人の主張
請求人は、本件明細書では、「最終パッケージを同時にシーリングする自動化された薬剤包装機械」を提供すること、より具体的には「一つ以上の固形薬剤製品を患者のための複数の薬物療法パッケージ内に自動的に選択して入れることができ、更に他方で同時にシーリングもできて、更に固形薬剤製品用パッケージを加工することができる自動化された薬剤包装機械」を提供することが課題とされているのに対し、請求項1、3、5に係る発明は、パッケージを「同時にシーリング」することが発明特定事項として明示されておらず、上記課題を解決できないから、請求項1、3、5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない、と主張する。

(2)判断
本件特許の発明の詳細な説明には、【従来の技術】及び【発明が解決しようとする課題】として、以下の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】
現在、広範囲の色々な利用可能な自動化された薬剤包装機械が存在している。これら機械の大部分は、ただ一つの薬剤製品を薬剤包装材内に包装するように設計されている。……
【0003】
これらの自動化された機械は、単一成品がパッケージ内に入れられることになる固形薬剤の包装必要条件の大部分を満足している。しかし……、一つ以上の薬剤を薬剤製品パッケージの個々の腔部の各々に選択的に分配できるような自動化された薬剤包装機械に対する大きなニーズが存在している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
……現在は、ただ一人の患者に対して複数の異なった固形薬剤の薬物療法量を複数の異なった投与腔部に選択的に充填して、更に、包装腔部を同時にシールすることができるような自動化されたシステムは無い。
【0005】
結果的に、管理されたケア施設では、所定期間に対する固形薬剤の患者の投与量を収容したパッケージを造るために、より多くの時間がかかる加工を行う必要がある。従って、一つ以上の固形薬剤製品を患者のための複数の薬物療法パッケージ内に自動的に選択して入れることができ、更に他方で同時にシーリングもできて、更に固形薬剤製品用パッケージを加工することができる自動化された薬剤包装機械に対するニーズが当業界に残存している。」

以上の記載によれば、自動化された薬剤包装機械について、本件特許の従来技術の大部分は、ただ一つの薬剤製品を薬剤包装材内に包装するように設計されたものであって、複数の異なった固形薬剤を複数の異なった腔部に選択的に充填して、更に、腔部を同時にシールすることができるような自動化されたシステムは無かったこと、これに対し、一つ以上の薬剤を薬剤製品パッケージの個々の腔部の各々に選択的に分配できるような自動化された薬剤包装機械に対するニーズが存在していたこと、が理解できる。
そうすると、本件特許の発明の詳細な説明の記載より、一つ以上の薬剤を薬剤製品パッケージの個々の腔部の各々に選択的に分配できるような自動化された薬剤包装機械を提供すること、あるいは、自動化された薬剤包装機械により一つ以上の薬剤を薬剤製品パッケージの個々の腔部の各々に選択的に分配すること、という課題を把握できる。

そこで、上記課題を前提として、本件特許発明1、3、5として特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討する。

本件特許発明1、3、5は、前記第5のとおりである。これに対し、本件特許の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【0007】
本発明のシステムは、機械式の供給機構内に配列された缶アレーを採用している。各缶は、缶の一つから選択的に分配された固形薬剤製品を製品包装用型板の腔部内に届ける漏斗や樋に供給するように設計されている。複数の薬剤が、ただ一つの腔部メンバーに対して選択され得るようにも構成される。この工程は、所定期間における患者の投薬必要量を用意してくれる腔部から成るただ一枚のシート又はカードにおける腔部に対応している型板の複数の腔部の各々に対して反復される。
【0008】
例えば、ただ一枚のシートでも一般に、一週間分について患者のために処方された固形薬剤製品の全てを収容することができよう。患者の医者は、一週間に3回又は4回の異なった投薬を処方することがありえ、従って、投薬カードは、一般に21と28の間の異なった個別の腔部を有することになる。腔部の各々は、患者の投薬必要量にとって必要な固形薬剤の量を保持できるようになっている。一旦薬の各組み合わせのために一時的な保管腔部を備えた型板が充填されると、型板は、その型板の腔部に対応した複数の腔部を備えた透明なプラスチック材のシート上に自動的に位置決めされる。型板の腔部と透明なプラスチック材のシートとの間の仕切りは、シフトされたり又は移動され、型板腔部内の薬剤は、透明なプラスチック材のシートの対応した腔部内に落下する。透明なプラスチック材のシートは、次に後続の製品包装ステーションへと操縦され、型板は缶領域の下方に戻される。型板部材は、缶に入れられた薬剤を転送するために型板の各腔部が供給機構の下方に選択的に位置決めされるように、X-Y軸線によって限定された移動範囲に渡って選択的に移動可能となっている。」
「【0011】
【発明の実施の形態】
複数の個々の患者の製品包装腔部の各々に対して一つ以上の異なった固形薬剤製品を個々の腔部内に選択的に入れることができる完全に自動化された薬剤製品の包装機械の一実施例が、図1において10で全体的に示されている。コンピュータ12は、システムの色々な部材とリンクされていて、それらの各々の作動を制御している。本システムは、各々が薬剤分配機構15に搭載されている複数の固形薬剤製品分配缶を採用されている。薬剤分配缶は、市場で入手できる製品である。薬剤分配機構15内に配置された固形薬剤分配缶の各々は、予め指定された数の固形薬剤製品を選択的に分配することができる。缶は、各々独立してプログラム制御可能となっており、コンピュータコントローラ12を介して操作される。缶は、個々のピルをそれらの寸法や形状に無関係に選択することができる。
【0012】
各缶は、一つ以上の缶から選択的に分配された固形薬剤製品を製品包装用型板17内に届ける漏斗や樋に供給するために薬剤分配機構内に配置される。この工程は、所定の期間分として患者の投薬必要量を用意してくれるパッケージの腔部から成るただ一枚のシートやカードにおける腔部に対応した型板17の複数の腔部の各々に対して反復される。型板部材17は、型板17の各腔部が投薬分配機構15内に配置された缶に入れられた薬剤を転送するために該機構15の供給機構の下方に選択的に位置決めされるように、X-Y軸によって限定された運動範囲に渡って選択的に移動可能となっている。分配機構15は、コンピュータからの信号によって制御される複数の缶を有している。缶の各々は、選択された缶に対して意図された命令に缶がただ応答するように別々のアドレスを有することができる。」
「【0015】
薬剤製品パッケージの腔部の各々は、患者の投薬必要量に必要な容量の固形薬剤を保持することができる。一旦、薬の各組み合わせのための一時保管の腔部を備えた型板17が充填されると、型板は、複数の腔部を備えた透明なプラスチック材のシートを有した薬剤製品パッケージの一部分の上方に自動的に位置決めされる。透明なプラスチック材の腔部は、型板の腔部に対応している。型板17における腔部と透明なプラスチック材のシートとの間の仕切りは、所望数の腔部が充填され且つ型板の腔部における薬剤が透明なプラスチック材シートにおける対応した腔部内に落下すると移動される。」

上記「薬の各組み合わせのための一時保管の腔部を備えた型板17」(【0015】)との記載や図面の記載より、「ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ製品包装用型板を供給する工程」を把握することができる。
上記「所定の期間分として患者の投薬必要量を用意してくれるパッケージの腔部から成るただ一枚のシートやカードにおける腔部に対応した型板17の複数の腔部」(【0012】)、「薬剤製品パッケージの腔部の各々は、患者の投薬必要量に必要な容量の固形薬剤を保持することができる。一旦、薬の各組み合わせのための一時保管の腔部を備えた型板17が充填されると、型板は、複数の腔部を備えた透明なプラスチック材のシートを有した薬剤製品パッケージの一部分の上方に自動的に位置決めされる。透明なプラスチック材の腔部は、型板の腔部に対応している。」(【0015】)との記載より、「該製品包装用型板の該腔部と整列し得る複数の腔部をもつ製品パッケージを供給する工程」及び「該製品包装用型板の該腔部と該製品パッケージの腔部とを自動的に整列させ」る工程を把握することができる。
上記「薬剤分配機構15内に配置された固形薬剤分配缶の各々は、予め指定された数の固形薬剤製品を選択的に分配することができる。……缶は、個々のピルをそれらの寸法や形状に無関係に選択することができる。」(【0011】)、「各缶は、一つ以上の缶から選択的に分配された固形薬剤製品を製品包装用型板17内に届ける漏斗」(【0012】)との記載や図面の記載より、「複数の異なった薬剤源から一つ以上の固形薬剤製品を共通の漏斗内へ選択的に分配する工程」を把握でき、更に、上記「型板部材17は、型板17の各腔部が投薬分配機構15内に配置された缶に入れられた薬剤を転送するために該機構15の供給機構の下方に選択的に位置決めされるように、X-Y軸によって限定された運動範囲に渡って選択的に移動可能となっている。」(【0012】)との記載も考慮すると、「該共通の漏斗と該複数の製品包装用型板腔部との間で直交する2方向に自動的に相対運動を起させて、複数の異なった薬剤源から1つ以上の固形薬剤製品を、該複数の型板腔部の各々中に置くために選択的に個々の腔部の1つの上に該共通の漏斗を位置付ける工程」を把握できる。
上記「型板の腔部と透明なプラスチック材のシートとの間の仕切りは、シフトされたり又は移動され、型板腔部内の薬剤は、透明なプラスチック材のシートの対応した腔部内に落下する。」(【0008】)、「複数の腔部を備えた透明なプラスチック材のシートを有した薬剤製品パッケージ……。型板17における腔部と透明なプラスチック材のシートとの間の仕切りは、所望数の腔部が充填され且つ型板の腔部における薬剤が透明なプラスチック材シートにおける対応した腔部内に落下すると移動される。」(【0015】)との記載より、「製品包装用型板腔部内に入れられていた固形薬剤を該製品パッケージの対応した腔部内へ転送する工程」を把握できる。
さらに、本件明細書の発明の詳細な説明の「本発明のシステムは、更に、製品包装シーリングステーション30と印刷ステーション32とを有している。」(【0014】)、「図5は、薬剤製品パッケージ転送軌道22の上方に搭載されている従来の印刷ステーションを示している。このステーションは、患者の識別や、薬剤が処方された時間と日付けや、内容物情報及び/若しくは有効期限情報等の事柄に関連するような情報をシールされた製品パッケージ上に印刷する。」(【0021】)との記載より、「固形薬剤製品パッケージ上に情報を印刷する工程」を把握できる。また、「本システムは、各々が薬剤分配機構15に搭載されている複数の固形薬剤製品分配缶を採用されている。」(【0011】)、「各缶は、一つ以上の缶から選択的に分配された固形薬剤製品を製品包装用型板17内に届ける漏斗や樋に供給するために薬剤分配機構内に配置される。」(【0012】)との記載より、複数の分配缶から固形薬剤製品を型板腔部内へ分配すること、すなわち「第一と第二の薬剤を第一と第二の分配缶から単一の型板腔部内へ少なくともほぼ同時に分配する工程」を把握することができる。
以上のとおり、本件特許の発明の詳細な説明の記載より、上記各工程を把握することができ、ひいては、上記各工程を有している固形薬剤製品のパッケージを充填する方法の発明を把握することができる。

そして、当業者は、上記各工程を有している固形薬剤製品のパッケージを充填する方法の発明は、1つ以上の固形薬剤製品を、複数の型板腔部の各々中に置き、型板腔部内に入れられていた固形薬剤を製品パッケージの対応した腔部内へ転送することを自動的に行うことができるから、自動化された薬剤包装機械により一つ以上の薬剤を薬剤製品パッケージの個々の腔部の各々に選択的に分配すること、という前記課題を解決できると認識できる。
したがって、本件特許発明1、3、5として特許請求の範囲に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
よって、本件特許発明1、3、5について、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。

請求人は、「最終パッケージを同時にシーリングする自動化された薬剤包装機械」を提供することが課題であるのに、請求項1、3、5に係る発明は、上記課題を解決できないから、発明の詳細な説明に記載したものでない旨を主張するので、この点につき検討する。
パッケージをシーリングすることについて本件特許の発明の詳細な説明の記載を参照すると、以下の記載がある。(下線は当審による。)
「この発明は、一般に自動化された薬剤包装機械の分野に関する。より具体的には、この発明は、製品包装用型板を所望の固形薬剤の投薬必要量で同時に充填し、更に他方で、複数の個々の患者の投与量を収容した最終パッケージを同時にシーリングする自動化された薬剤包装機械に指向されている。」(【0001】)
「現在は、ただ一人の患者に対して複数の異なった固形薬剤の薬物療法量を複数の異なった投与腔部に選択的に充填して、更に、包装腔部を同時にシールすることができるような自動化されたシステムは無い。」(【0004】)
「従って、一つ以上の固形薬剤製品を患者のための複数の薬物療法パッケージ内に自動的に選択して入れることができ、更に他方で同時にシーリングもできて、更に固形薬剤製品用パッケージを加工することができる自動化された薬剤包装機械に対するニーズが当業界に残存している。」(【0005】)
「有利なことには、本機械は、同時に型板を充填し、他方で更に予め選択された薬剤をパッケージ化することで大幅な時間を節約している。」(【0010】)
上記記載によれば、同時にパッケージをシーリングすることは、更なる課題として追加的に記載されたものといえる。
ところで、特許法第36条第6項第1号は、特許請求の範囲の記載について、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであることを要件とするものであって、発明の詳細な説明に記載された全ての目的及び効果について記載しなければならないと規定したものではなく、発明の詳細な説明に記載した発明の一部のみを特許請求の範囲に記載した場合であっても、発明として完結している限り、同号違反になるものではないと解するのが相当である。
そして、上述のとおり、本件特許の発明の詳細な説明の記載より、自動化された薬剤包装機械により一つ以上の薬剤を薬剤製品パッケージの個々の腔部の各々に選択的に分配すること、という課題を把握できるのであり、本件特許発明1、3、5として特許請求の範囲に記載された発明は、上記課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものである。
よって、本件特許発明1、3、5として特許請求の範囲に記載された発明は、発明として完結しているものであり、特許法第36条第6項第1号違反になるものではなく、上記請求人の主張は採用できない。

(3)小括
無効理由8によって、本件特許発明1、3、5についての特許を無効とすることはできない。

9.無効理由9について
(1)請求人の主張
請求項5及び6の「少なくともほぼ同時に」の記載は曖昧であるから、請求項5及び6に係る発明は明確でない。

(2)判断
請求項5及び6には「第一と第二の薬剤を第一と第二の分配缶から単一の型板腔部内へ少なくともほぼ同時に分配する」との記載がある。
ここで、異なる薬剤を異なる分配缶から単一の型板腔部内へ分配するタイミングについて、厳密な意味での同時とすることは、ほぼ不可能であるか極めて困難であることが、技術常識に照らし明らかである。
そうすると、上記「少なくともほぼ同時に」は、厳密な意味での同時ではなく、ある程度の誤差を許容する意味での同時であることが明らかである。
そして、このように誤差が許容される場合に、その程度を具体的に数値化しなければ発明が不明確となるものでもない。
よって、請求項5及び6の記載に不明確なところはなく、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。
(3)小括
無効理由9によって、本件特許発明5及び6についての特許を無効とすることはできない。

10.請求項7ないし請求項11に係る発明についての審判請求について
前記第4のとおり、請求項7ないし請求項11を削除する訂正である本件訂正が認められるから、請求項7ないし請求項11に係る発明についての審判請求は、その対象が存在しないものとなる。
したがって、請求項7ないし請求項11に係る発明についての審判請求は、不適法な審判の請求であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第135条の規定によって却下すべきものである。

第7 結び
請求人が主張する無効理由及び提出した証拠によっては本件特許発明1ないし6についての特許を無効とすることはできない。
請求項7ないし請求項11に係る発明についての審判請求は、特許法第135条の規定により却下すべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
自動化された固形薬剤製品包装機械
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形薬剤製品のパッケージを充填する方法であって:
ロウとカラムを有するアレー内に配列された複数の腔部を持つ製品包装用型板を供給する工程と;
該製品包装用型板の該腔部と整列し得る複数の腔部をもつ製品パッケージを供給する工程と;
複数の異なった薬剤源から一つ以上の固形薬剤製品を共通の漏斗内へ選択的に分配する工程と;
該共通の漏斗と該複数の製品包装用型板腔部との間で直交する2方向に自動的に相対運動を起させて、複数の異なった薬剤源から1つ以上の固形薬剤製品を、該複数の型板腔部の各々中に置くために選択的に個々の腔部の1つの上に該共通の漏斗を位置付ける工程と;
その後、該製品包装用型板の該腔部と該製品パッケージの腔部とを自動的に整列させ;そして
製品包装用型板腔部内に入れられていた固形薬剤を該製品パッケージの対応した腔部内へ転送する工程とを有している固形薬剤製品のパッケージを充填する方法。
【請求項2】
更に、固形薬剤製品を選択的に分配する工程中に、色々な固形薬剤で事前に充填完了された別の固形薬剤製品パッケージを同時にシーリングする工程を有している請求項1記載の方法。
【請求項3】
更に、固形薬剤製品パッケージ上に情報を印刷する工程を有している請求項1記載の方法。
【請求項4】
更に、固形薬剤製品パッケージ上に情報を印刷する工程を有している請求項2記載の方法。
【請求項5】
更に、第一と第二の薬剤を第一と第二の分配缶から単一の型板腔部内へ少なくともほぼ同時に分配する工程を有している請求項1記載の方法。
【請求項6】
更に、第一と第二の薬剤を第一と第二の分配缶から単一の型板腔部内へ少なくともほぼ同時に分配する工程を有している請求項2記載の方法。
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】(削除)
【請求項11】(削除)
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、一般に自動化された薬剤包装機械の分野に関する。より具体的には、この発明は、製品包装用型板を所望の固形薬剤の投薬必要量で同時に充填し、更に他方で、複数の個々の患者の投与量を収容した最終パッケージを同時にシーリングする自動化された薬剤包装機械に指向されている。
【0002】
【従来の技術】
現在、広範囲の色々な利用可能な自動化された薬剤包装機械が存在している。これら機械の大部分は、ただ一つの薬剤製品を薬剤包装材内に包装するように設計されている。これら機械は、一般に固形薬剤製品の個別の投与量を透明なプラスチックカーバー部材内に形成された腔部内に転送している。通常、複数の腔部が透明なプラスチック材の一枚のシートに形成されていて、対応した複数の固形薬剤製品が充填機械によって入れられている。一旦、固形薬剤の構成品が腔部内に入れられると、裏打ち材が、次に透明なプラスチックシートに接着剤で貼られて腔部内に固形薬剤製品をシールする。
【0003】
これらの自動化された機械は、単一成品がパッケージ内に入れられることになる固形薬剤の包装必要条件の大部分を満足している。しかし、特に管理されたケア施設では、一つ以上の薬剤を薬剤製品パッケージの個々の腔部の各々に選択的に分配できるような自動化された薬剤包装機械に対する大きなニーズが存在している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
管理されたケア施設では、今は、所定の期間に対する患者の処方箋薬の必要量を全て用意してくれる患者特有の包装方式が使用されている。在来の包装の解決法は、一般に、一週間分の全ての所定の患者の投与量を収容している固形薬剤製品パッケージカードを採用している。一つ以上の薬剤の各投与量は、透明なプラスチック腔部に入れられている。これらの投与量カードは、通常、患者の薬物療法の要請に応じて各処方された投薬時間に対応して、いずれかの所定日用に3から4つの異なった透明プラスチック腔部を有している。現在は、ただ一人の患者に対して複数の異なった固形薬剤の薬物療法量を複数の異なった投与腔部に選択的に充填して、更に、包装腔部を同時にシールすることができるような自動化されたシステムは無い。
【0005】
結果的に、管理されたケア施設では、所定期間に対する固形薬剤の患者の投与量を収容したパッケージを造るために、より多くの時間がかかる加工を行う必要がある。従って、一つ以上の固形薬剤製品を患者のための複数の薬物療法パッケージ内に自動的に選択して入れることができ、更に他方で同時にシーリングもできて、更に固形薬剤製品用パッケージを加工することができる自動化された薬剤包装機械に対するニーズが当業界に残存している。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、従来技術の短所を克服し、また複数の個々の患者の製品包装腔部の各々に対して一つ以上の異なった固形薬剤製品を個々の腔部内に選択的に入れることができる完全に自動化された薬剤製品包装機械を提供する。以下に説明するシステムは、コンピュータ制御され且つ複数の固形薬剤製品分配缶を採用した完全に自動化された機械である。これら固形薬剤分配缶の各々は、予め指定された数の固形薬剤製品を選択的に分配することができる。缶は、プログラム制御可能であり、またコンピュータコントローラで操作される。これらの缶は、個々のピルをそれらの寸法や形状に無関係に選択することができ、また市場で入手することができる。
【0007】
本発明のシステムは、機械式の供給機構内に配列された缶アレーを採用している。各缶は、缶の一つから選択的に分配された固形薬剤製品を製品包装用型板の腔部内に届ける漏斗や樋に供給するように設計されている。複数の薬剤が、ただ一つの腔部メンバーに対して選択され得るようにも構成される。この工程は、所定期間における患者の投薬必要量を用意してくれる腔部から成るただ一枚のシート又はカードにおける腔部に対応している型板の複数の腔部の各々に対して反復される。
【0008】
例えば、ただ一枚のシートでも一般に、一週間分について患者のために処方された固形薬剤製品の全てを収容することができよう。患者の医者は、一週間に3回又は4回の異なった投薬を処方することがありえ、従って、投薬カードは、一般に21と28の間の異なった個別の腔部を有することになる。腔部の各々は、患者の投薬必要量にとって必要な固形薬剤の量を保持できるようになっている。一旦薬の各組み合わせのために一時的な保管腔部を備えた型板が充填されると、型板は、その型板の腔部に対応した複数の腔部を備えた透明なプラスチック材のシート上に自動的に位置決めされる。型板の腔部と透明なプラスチック材のシートとの間の仕切りは、シフトされたり又は移動され、型板腔部内の薬剤は、透明なプラスチック材のシートの対応した腔部内に落下する。透明なプラスチック材のシートは、次に後続の製品包装ステーションへと操縦され、型板は缶領域の下方に戻される。型板部材は、缶に入れられた薬剤を転送するために型板の各腔部が供給機構の下方に選択的に位置決めされるように、X-Y軸線によって限定された移動範囲に渡って選択的に移動可能となっている。
【0009】
本システムは、次に、別の一週間分として同じ患者に対する投薬必要量か、又は所定期間分としてもう一人別の患者に対する投薬必要量のいずれかで型板を同時に充填する。型板が充填されている間に、第一の患者用に固形薬剤投与量の各々を今収容している透明なプラスチック材のシートは、その際同時に包囲され、処方された薬剤が製品パッケージから投与されるように患者や、患者の面倒をみている人に与えられる最終パッケージへと包装される。
【0010】
有利なことには、本機械は、同時に型板を充填し、他方で更に予め選択された薬剤をパッケージ化することで大幅な時間を節約している。本発明は、望ましい量の固形薬剤製品を選択的に分配するために市場で入手可能な缶を採用している。パッケージ化処理を完了するために、裏打ち材のシートが透明なプラスチック部材に取り付けられ、当業界で知られているように透明なプラスチック腔部内に薬剤製品を包囲する。本発明の機械は、製品をパッケージ化して取り扱うために空気圧で制御される自動化された機械を利用している。更に、本発明のシステムは、薬剤製品の包装ステーションとシーリングステーションとを有している。
【0011】
【発明の実施の形態】
複数の個々の患者の製品包装腔部の各々に対して一つ以上の異なった固形薬剤製品を個々の腔部内に選択的に入れることができる完全に自動化された薬剤製品の包装機械の一実施例が、図1において10で全体的に示されている。コンピュータ12は、システムの色々な部材とリンクされていて、それらの各々の作動を制御している。本システムは、各々が薬剤分配機構15に搭載されている複数の固形薬剤製品分配缶を採用されている。薬剤分配缶は、市場で入手できる製品である。薬剤分配機構15内に配置された固形薬剤分配缶の各々は、予め指定された数の固形薬剤製品を選択的に分配することができる。缶は、各々独立してプログラム制御可能となっており、コンピュータコントローラ12を介して操作される。缶は、個々のピルをそれらの寸法や形状に無関係に選択することができる。
【0012】
各缶は、一つ以上の缶から選択的に分配された固形薬剤製品を製品包装用型板17内に届ける漏斗や樋に供給するために薬剤分配機構内に配置される。この工程は、所定の期間分として患者の投薬必要量を用意してくれるパッケージの腔部から成るただ一枚のシートやカードにおける腔部に対応した型板17の複数の腔部の各々に対して反復される。型板部材17は、型板17の各腔部が投薬分配機構15内に配置された缶に入れられた薬剤を転送するために該機構15の供給機構の下方に選択的に位置決めされるように、X-Y軸によって限定された運動範囲に渡って選択的に移動可能となっている。分配機構15は、コンピュータからの信号によって制御される複数の缶を有している。缶の各々は、選択された缶に対して意図された命令に缶がただ応答するように別々のアドレスを有することができる。
【0013】
図1は、更にコンピュータコントローラ12を都合良く配置するカート19を図示している。移動可能なカート19は、更に、機械のステーションを駆動するのに使用される空圧駆動の発電機に場所を提供できよう。パッケージ転送軌道が22で示されており、また機械の別のステーションの各々の間で薬剤製品パッケージ23を転送するための機構を用意している。リフト機構24は、転送起動22から充填された薬剤製品パッケージ23を持ち揚げて転送する。
【0014】
製品パッケージ分配ユニットは、27で示されており、また空のパッケージ部材を転送軌道22上に転送する。当業者は、一つ以上の製品パッケージ分配部材が、パッケージの一部分を充填機械に転送するために使用されるものと認識することでしよう。本発明のシステムは、更に、製品包装シーリングステーション30と印刷ステーション32とを有している。製品パッケージ分配ユニット27は、印刷ステーション32に隣接して図示されているが、しかし、各パッケージ分配ステーションが薬剤製品分配ユニット15に隣接して、又は近くに配置されるのが望ましい。このことは、製造プロセス中の製品パッケージの移動を無くし、更に、薬剤包装用型板の充填が、別のパッケージメンバーのシーリング及び/若しくは更なる加工と同時に行われ得るようにする。
【0015】
薬剤製品パッケージの腔部の各々は、患者の投薬必要量に必要な容量の固形薬剤を保持することができる。一旦、薬の各組み合わせのための一時保管の腔部を備えた型板17が充填されると、型板は、複数の腔部を備えた透明なプラスチック材のシートを有した薬剤製品パッケージの一部分の上方に自動的に位置決めされる。透明なプラスチック材の腔部は、型板の腔部に対応している。型板17における腔部と透明なプラスチック材のシートとの間の仕切りは、所望数の腔部が充填され且つ型板の腔部における薬剤が透明なプラスチック材シートにおける対応した腔部内に落下すると移動される。
【0016】
透明なプラスチック材のシートは、次に少なくとも一つの包装シーリング部材の近傍に操縦され、今充填されたプラスチックシートとシーリング部材との組み合わせ構造が、次に移送軌道22に沿って製品包装シーリングステーション30に転送される。このことが起きている間に、型板17は薬剤分配機構15の下方へ戻される。
【0017】
本システム10は、次に同時に、同じ患者に対する別の一週間分の投薬必要量か、又は別の患者に対する或る所定期間分の投薬必要量のいずれかで型板を充填する。型板17が充填されている間に、第一の患者のための固形薬剤投与量の各々を今収容している透明なプラスチックのシートは、その際に同時に包囲され、処方された薬剤が製品パッケージから投与されるように、患者や、又は患者の世話人に与えられる最終パッケージへシーリングステーション30によってシールされる。裏打ち材のシートが、当業界で知られているように、透明なプラスチック腔部内に薬剤製品を包むために透明なプラスチック部材に取り付けられる。
【0018】
有利なことには、本機械は、同時に型板を充填し、他方で更に、予め選定された薬剤の包装も行うことで大幅な時間を節約している。本発明の機械は、望ましいことには、製品を包装して操作するために空気圧で制御された自動化された機械を利用しているが、しかし、当業者は、本発明の機械がいずれかの在来の又は将来開発される駆動機構によって動力を受けるものと認識している。例えば、ステッピングモータが、上述のように色々なエレメントの機械操作のために使用されよう。
【0019】
図2は、図1を参照して上述されたシステムの平面図を示している。図2は、上述の色々な製造ステーションの相対的間隔を図示している。お気付きのように、空の製品パッケージの分配ステーション27は、実際には薬剤分配ステーション15に隣接して配置されるのが事実上好ましいことである。更に、当業者は、追加の製品パッケージ分配ステーションが、シーリングステーション30によって共にシールされることになる別個のパッケージエレメントの数に応じてシーリングステーション30と薬剤分配機構との間に入れられることを認識することになろう。
【0020】
図3は、薬剤製品分配ユニット15及び型板部材17を示している。図3に示されているように、薬剤製品分配ユニット15は、構造支持部材36、37、38によって支持されている。制御ライン42は、所望の薬剤が本機械によって分配されるように缶をコンピユータに接続している。図4は、包装シーリングステーション30の詳細図である。図4に示されているように、製品パッケージ転送軌道22は、シーリングステーション30の下方に直接通っている。シーリングステーション30は、いずれかの在来のシーリング機構から構成されよう。例えば、このシーリングステーション30は、製品包装材に予め加えられているいずれかの接着剤を硬化させるために熱や、又は圧力や、又はあるタイプの電磁放射線や、又はこれらのシーリング技法の組み合わせを適用できるであろう。一つの重要な特長は、これらの構造関係が同時に製品型板を充填して、他方更に別の充填されたパッケージをシーリングすることができるようにするか、そうでなく更にパッケージを処理できるようにする点である。
【0021】
図5は、薬剤製品パッケージ転送軌道22の上方に搭載されている従来の印刷ステーションを示している。このステーションは、患者の識別や、薬剤が処方された時間と日付けや、内容物情報及び/若しくは有効期限情報等の事柄に関連するような情報をシールされた製品パッケージ上に印刷する。重要なことには、このステーションは、更に、薬剤分配ステーション15と平行に、また独立して作動できる。
【0022】
図6は、薬剤製品パッケージ分配ステーション27を示している。このステーションは、更に、公知の自動化された製品パッケージ分配装置が代表的なものとなっている。本ステーションは、望ましくは、製品パッケージ又は部分パッケージが軌道部材22上に容易に設置されるように製品パッケージ転送軌道22に隣接して搭載される。お気付きのように、これらのステーションの一つ以上が、シーリングステーション30と分配ステーション15との間に配置されるのが好ましい。
【0023】
図7は、完成した製品パッケージを転送軌道22から自動的に除去する自動化された装置24を示している。図7は、更に、製品パッケージ転送軌道22に搭載されている転送機構42上に配置された完成されたパッケージも示している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例を示している。
【図2】図1に示された装置の実施例の平面図を示している。
【図3】自動化された缶配給機構を示している。
【図4】固形薬剤を型板から、固形薬剤製品を受けるための腔部を有した透明なプラスチック材のシート内に転送するのに使用される機械を示している。
【図5】透明なプラスチックシート上へ裏打ち部材を選択的にシーリングするための機械を示している。
【図6】カード用裏打ち材を分配するのに使用される機械を示している。
【図7】組立ラインから完成した製品を持ち上げるために使用される機械を示している。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2014-04-03 
結審通知日 2014-04-08 
審決日 2014-04-25 
出願番号 特願2001-572370(P2001-572370)
審決分類 P 1 113・ 537- YAA (B65B)
P 1 113・ 113- YAA (B65B)
P 1 113・ 536- YAA (B65B)
P 1 113・ 121- YAA (B65B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊島 唯  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 紀本 孝
渡邊 真
登録日 2011-08-19 
登録番号 特許第4806153号(P4806153)
発明の名称 自動化された固形薬剤製品包装機械  
代理人 舛谷 威志  
代理人 小沢 慶之輔  
代理人 加藤 慎司  
代理人 小沢 慶之輔  

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