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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G04B
管理番号 1291333
審判番号 不服2013-7642  
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-25 
確定日 2014-08-28 
事件の表示 特願2012-97615「表示板およびそれを備えた機器類」拒絶査定不服審判事件〔平成24年8月30日出願公開,特開2012-163568〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
平成19年 8月 9日 :原出願(特願2008-528878号)
(国内優先権 平成18年8月9日及び同年同月29日)
平成24年 4月23日 :特許出願
平成24年 5月23日 :手続補正書(以下「手続補正1」という。)
平成24年10月 1日付け:拒絶理由通知(同年同月9日発送)
平成24年12月10日 :意見書
平成24年12月10日 :手続補正書(以下「手続補正2」という。)
平成25年 1月25日付け:拒絶査定(同年同月29日送達)
平成25年 4月25日 :手続補正書(以下「本件補正」という。)
平成25年 4月25日 :審判請求

第2 補正却下の決定
[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである。
「【請求項1】
視認側に設けられる表示板基体を備えた表示板であって,
前記表示板基体が,光透過性基板と反射型偏光板とを備え,
前記反射型偏光板に対し,前記光透過性基板を最も視認側に配置し,
前記反射型偏光板の少なくとも一方の表面に凹凸状の模様を有することにより,該反射型偏光板で,光の反射と拡散とを生じさせ,
前記光透過性基板と前記反射型偏光板に針軸を挿通する軸孔が形成され,指針を有する時計の文字板とするとともに,前記光透過性基板を通して前記模様が金属感を伴って視認されるように構成したことを特徴とする表示板。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである。下線は,補正箇所を示す。
「【請求項1】
視認側に設けられる表示板基体を備えた表示板であって,
前記表示板基体が,厚さが200μmから700μmである光透過性基板と,2種類の偏光性フィルム層を交互に複数積層した反射型偏光板とを備え,
前記反射型偏光板に対し,前記光透過性基板を最も視認側に配置し,
前記反射型偏光板の視認側の表面に,熱転写加工又はプレス加工により形成された凹凸状の模様を有することにより,該反射型偏光板で,光の反射と拡散とを生じさせ,
前記光透過性基板と前記反射型偏光板に針軸を挿通する軸孔が形成され,指針を有する時計の文字板とするとともに,前記光透過性基板を通して前記模様が金属感を伴って視認されるように構成したことを特徴とする表示板。」

(3) 本件補正の目的
本件補正は,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)を特定するために必要な事項である「光透過性基板」,「反射型偏光板」及び「凹凸状の模様」について,それぞれ,「厚さが200μmから700μmである光透過性基板」,「2種類の偏光性フィルム層を交互に複数積層した反射型偏光板」及び「熱転写加工又はプレス加工により形成された凹凸状の模様」と限定して減縮する補正を含む。
そうしてみると,本件補正は,特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて,以下,検討する。

2 独立特許要件
(1) 本件補正後発明
本件補正後発明は,手続補正1及び本件補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの,以下のものである(再掲)。
「【請求項1】
視認側に設けられる表示板基体を備えた表示板であって,
前記表示板基体が,厚さが200μmから700μmである光透過性基板と,2種類の偏光性フィルム層を交互に複数積層した反射型偏光板とを備え,
前記反射型偏光板に対し,前記光透過性基板を最も視認側に配置し,
前記反射型偏光板の視認側の表面に,熱転写加工又はプレス加工により形成された凹凸状の模様を有することにより,該反射型偏光板で,光の反射と拡散とを生じさせ,
前記光透過性基板と前記反射型偏光板に針軸を挿通する軸孔が形成され,指針を有する時計の文字板とするとともに,前記光透過性基板を通して前記模様が金属感を伴って視認されるように構成したことを特徴とする表示板。」
【図15】


【図17】


なお,本件補正後の特許請求の範囲の請求項2ないし7の記載は以下のとおりである。
「【請求項2】
前記反射型偏光板が一枚であり,
前記反射型偏光板の背面側に,ソーラーセルを設けたことを特徴とする請求項1に記載の表示板。
【請求項3】
前記光透過性基板の視認側の表面に,時字又はマークを取り付けたことを特徴とする請求項1または2に記載の表示板。
【請求項4】
前記光透過性基板に,前記模様が視認可能な光透過性着色層を設けるか,もしくは,前記光透過性基板に,前記模様が視認可能に着色剤を含有させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の表示板。
【請求項5】
前記反射型偏光板の表面に,前記模様が視認可能な光透過性着色層を設けるか,もしくは,前記反射型偏光板に,前記模様が視認可能に着色剤を含有させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の表示板。
【請求項6】
前記光透過性基板に,前記模様が視認可能な拡散層を設けるか,もしくは,前記光透過性基板に,前記模様が視認可能に拡散剤を含有させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の表示板。
【請求項7】
前記光透過性基板の表面に,さらに,前記反射型偏光板の前記模様とは異なる模様を設けることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の表示板。」

(2) 引用例1に記載の事項
本件出願の最先の優先日前に頒布された刊行物である国際公開2006/006390号(拒絶理由の「引用文献1」,発明の名称:「ソーラー時計用文字板及び時計」,出願人:「セイコーエプソン株式会社」,公開日:平成18年1月19日,以下「引用例1」という。)には,以下の事項が記載されている。
ア 「[0043] [基材]
基材11は,光透過性を有する材料で構成されたものである。
[0044] 基材11の構成材料としては,例えば,各種プラスチック,各種ガラス,各種セラミックス等を用いることができるが,基材11はプラスチック(特に,耐熱性プラスチック)で構成されたものであるのが好ましい。これにより,例えば,一般に,比較的軽量で携帯しやすいソーラー時計用文字板1を提供することができる。また,例えば,比較的容易に,所望の形状に成形することができる。また,非金属材料であるため,電波時計用文字板にも好適に適用することができる。
[0045]基材11を構成するプラスチック材料としては,・・・ポリカーボネート(PC),・・・アクリル系樹脂・・・が挙げられ,・・・特に,基材11は,主として,ポリカーボネートおよび/またはアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体で構成されたものであるのが好ましい。これにより,例えば,後述する拡散層12との密着性を特に優れたものとすることができる。また,ソーラー時計用文字板1全体としての強度を特に優れたものとすることができるとともに,ソーラー時計用文字板1(基材11)の製造時における成形の自由度が増す(成形のし易さが向上する)。また,基材11の表面に好適に印刷層を形成することもできる。
[0046] 基材11は,各部位でその組成が実質的に均一な組成を有するものであってもよいし,部位によって組成の異なるものであってもよい。例えば,基材11は,基部と,該基部上に設けられた着色層等のコート層とを有するものであってもよい。このような場合,コート層は,例えば,各種塗装法,印刷法,湿式めっき法,乾式めっき法等により形成されたものであってもよい。
[0047] また,基材11の形状,大きさは,特に限定されず,通常,ソーラー時計用文字板1の形状,大きさに基づいて決定される。なお,図示の構成では,基材11(ソーラー時計用文字板1)は,平板状をなすものであるが,例えば,湾曲板状等をなすものであってもよい。
[0048] 基材11は,光透過性(太陽電池9の駆動,蓄電に利用可能な波長の光についての透過性)を有するものであれば,その色は特に限定されない。基材11が白色のものである場合,ソーラー時計用文字板1の美的外観(特に,時計100に適用した際の美的外観)を特に優れたものとすることができ,ソーラー時計用文字板1,時計100をより優れた高級感を備えたものとすることができる。また,基材11が実質的に透明のもの(より具体的には,可視光領域の光の透過率が90%以上のもの)である場合,ソーラー時計用文字板1としての光の透過率をより高くすることができ,太陽電池9の小型化等にも寄与することができる。
[0049] 基材11の平均厚さは,特に限定されないが,200?700μmであるのが好ましく,300?600μmであるのがより好ましい。基材11の平均厚さが前記範囲内の値であると,ソーラー時計用文字板1の光透過性を十分に高いものとしつつ,太陽電池9の自色が透けて見えるのをより効果的に防止することができ,装飾性(美的外観)を特に優れたものとすることができる。」

(3) 引用例2に記載の事項
本件出願の最先の優先日前に頒布された刊行物である特開2005-189019号公報(拒絶理由の「引用文献2」,発明の名称:「ソーラセル付時計用文字板及びそれを備えた携帯時計」,出願人:「河口湖精密株式会社」及び「シチズン時計株式会社」,公開日:平成17年7月14日,以下「引用例2」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。

ア 「【請求項1】下面側にソーラセルを備えるソーラセル付時計用文字板において,前記時計用文字板は,下面にサークル状又は渦巻き状のプリズム反射面を形成した透過性文字板と,該透過性文字板の下面側に設けた反射型偏光板とからなることを特徴とするソーラセル付時計用文字板。
【請求項2】下面側にソーラセルを備えるソーラセル付時計用文字板において,前記時計用文字板は,下面にサークル状又は渦巻き状のプリズム反射面と上面に凹凸のパターン模様面とを形成した透過性文字板と,該透過性文字板の下面側に設けた反射型偏光板とからなることを特徴とするソーラセル付時計用文字板。
【請求項3】下面側にソーラセルを備えるソーラセル付時計用文字板において,前記時計用文字板は,上面又は下面の少なくとも一方の面に凹凸のパターン模様面を形成した透過性文字板と,該透過性文字板の下面側に設けた反射型偏光板とからなることを特徴とするソーラセル付時計用文字板。」

イ 「【技術分野】
【0001】本発明は,時計用文字板に関し,ソーラセル付時計用文字板,及びそれを備えた携帯時計に関する。」

ウ 「【発明の効果】
【0022】本発明の効果として,本発明の請求項1に記載の発明の下では,下面にプリズム反射面を形成した透過性文字板を使用すると,プリズム面の下側からこの透過性文字板に入射した光はこのプリズム面によって屈折・分散し,光を散乱させる作用が生まれる。特に,プリズム面をサークル状や渦膜状の模様に形成すると光が四方に分散されるので散乱が著しく起きる。また,反射型偏光板は,反射軸と透過容易軸を有していて,反射軸と平行な振動面を持つ直線偏光成分は反射し,透過容易軸と平行な振動面を持つ直線偏光成分は透過する。このため,反射型偏光板に入射した光は約50%近くが透過し,また,約50%近くが反射する。しかも,この反射型偏光板からの反射色に銀色(シルバー色)や金色(ゴールド色)などが有って,その明度も格段と高い。透過性文字板と反射型偏光板を透過した光はソーラセルに入射するが,反射型偏光板によって先ず入射光が半減する。更に,ソーラセルに入射した光の内で吸収される光などがあってそこから反射される光の量は更に少なくなる。更にまた,その少なくなった反射光の内,約50%位しか反射型偏光板を透過しないから透過性文字板側に戻ってくる光の量は非常に少なくなってくる。そして,その透過性文字板側に戻ってきた少ない光量はプリズム面を介して散乱されるので殆どソーラセルの濃紫色は視認されない。そして,反射型偏光板から明度の高い反射光が得られることから,文字板の表面が明るく鮮明になって視認される。特に,シルバー色が得られる反射型偏光板を使用すると白さが尚一層増した状態が得られる。
【0023】次に,本発明の請求項2に記載の発明は,請求項1に記載の発明の透過性文字板に,上面に凹凸のパターン模様を形成した発明である。透過性文字板の上面に凹凸のパターン模様があることによって,文字板の装飾性が高められる。凹凸のパターン模様として,梨地模様,格子模様,ストライプ模様,ピアジカット模様,編目模様などの種々の模様が選択できるのでデザインバリエーションを豊富に取ることができる。更に,この凹凸の模様によって光を分散させる作用が生れるので,ソーラセルの色調を消し去る効果を助長する。
【0024】次に,本発明の請求項3に記載の発明の下では,凹凸のパターン模様によって文字板の装飾性が高める。また,凹凸のパターン模様によってソーラセルからの反射光が散乱されるので,ソーラセルの色調が消し去られて視認されなくなる。」

【図1】


【図2】

エ 「【0029】図1,図2より,発明の携帯時計30は,ケース31内に中枠37を介して透過性文字板41,反射型偏光板45,ムーブメント38,ムーブメント38上に一体的に設けられたソーラセル39が配設されている。ムーブメント38には指針軸が透過性表示板41の上面側にまで突出しており,その先端に長針,短針の指針34が取付けられている。そして,それらを覆うようにしてカバーガラス32がケース31に固定されている。また,裏面側には裏蓋36が固定され,ケース31の嵌又部分にバンド33が取付いている。また,ケース31の側面にはリューズ35が取付いている。また,透過性文字板41には所定の位置に時字49が設けられており,透過性文字板41の下面側に反射型偏光板45が配設され,更に,この反射型偏光板45の下にソーラセル39が配置される構造になっている。そして,時字49が設けられた透過性文字板41と反射型偏光板45とでソーラセル付時計用文字板40(以降,時計用文字板と呼ぶことにする)を構成している。」

【図3】

オ 「【0030】図3は本発明の第1実施形態に係る時計用文字板の要部断面図を示したもので,携帯時計30に取付けられ時計用文字板40を指しているものである。この時計用文字板40は,上面に第1の透過性着色膜42を設けた透過性文字板41と反射型偏光板45とからなっている。尚,時字は透過性着色膜42の上に取付けられるが,この図では省略してある。また,以降の実施形態の説明においても時字は省略して説明する。
【0031】透過性文字板41は透明なポリカーボネイト樹脂やアクリル樹脂などから形成され,その下面にはプリズム反射面41aが形成されている。また,上面には第1の透過性着色膜42が設けられている。透過性文字板41は射出成形で成形するが,その時,プリズム反射面41aも金型から転写して同時に成形する。このプリズム反射面41aは三角形のプリズム形状をなしており,サークル模様状または渦巻き模様状に形成する。三角形の角度は,凹部,凸部共に75?100度の範囲内に形成している。また,高さは15?100μm,ピッチは略150μm位に形成している。この高さやピッチは金型の加工が容易で且つ目に見えない程度の寸法に形成するのが好ましい。第1の透過性着色膜42は,本実施形態では白色顔料を樹脂に混ぜ合わせ印刷方法で形成している。白色顔料を用いている理由は時計用文字板40に白さを出すためで,膜厚を厚くすると白さは出るが透過率が悪くなる。従って,約7?10μm程度の薄い膜厚にしてこれによる透過率が約10%程度ダウンする位にしている。他の色調を出したい場合は他の顔料を用いる。また,蒸着方法で非常に薄い金属膜を形成しても良く,求める色調に応じて適宜選択するのが好ましい。」

【図4】

カ 「【0032】反射型偏光板45は,図4に示すように,反射軸Nと透過容易軸Mを有していて,反射軸Nと平行な振動面を持つ直線偏光成分は反射し,透過容易軸Mと平行な振動面を持つ直線偏光成分は透過する特性を持っている。また,約50%の光を透過し,約50%の光を反射する特性を持っている。本実施形態では,住友3M社製の商品名DBEFを用い,光沢のある銀色(シルバー色)を呈する強い反射光を得ている。そして,この銀色の反射光と第1の半透過着色膜42の白色とが混ざり合って更なる白さを出現させている。また更に,この強い反射光により表面が明るくなり,白さに鮮明さを出現させている。この反射型偏光板45には銀色の他に金色を呈する反射光が得られるものもあり,デザインなどに応じて適宜選択すると良い。」

【図5】

キ 「【0033】次に,反射型偏光板45の作用について図5を用いて説明する。透過性文字板41に入射した光P1は第1の半透過着色膜42を設けた透過性文字板41内で屈折を繰り返して透過性文字板41を透過し,反射型偏光板45に入射する。ここで,透過性文字板41に入射した光が全て透過するわけではなく,一部の光はプリズム反射面41aで反射されて再び透過性文字板41内を透過して外に放射される。反射型偏光板45に入射した光で,反射型偏光板45の反射軸と平行な振動面を持つ直線偏光成分の光n1は反射型偏光板45から反射されて,反射光P2となって外に放射される。反射型偏光板45の透過容易軸と平行な振動面を持つ直線偏光成分の光m1は反射型偏光板45を透過してソーラセル39に入射する。ソーラセル39に入射した光は,そこで吸収される光と,そこから反射される光とに分けられる。ソーラセル39から反射される光は,その内の反射型偏光板45の透過容易軸と平行な振動面を持つ直線偏光成分の光m2は反射型偏光板45を透過して透過性文字板41に入射する。そして,屈折を繰り返して反射光P3となって外に放射される。一方,反射型偏光板45の反射軸と平行な振動面を持つ直線偏光成分の光n2は反射型偏光板45から反射されてソーラセル39側に戻ってくる。このことによって,透過性文字板41に入射した光で,ソーラセル39から反射されて透過性文字板41に戻ってくる光の量は非常に少なくなる。更に,透過性文字板41のプリズム反射面41aで反射される光やソーラセル39からの反射光でプリズム反射面41aを透過する光は,プリズム反射面41aがサークル状や渦巻き状に形成されているので一様な方向への反射にならず,四方に分散・散乱した状態の反射光になって外に放射される。ソーラセル39からの反射光が少なくなること,プリズム反射面41aの作用で散乱が生じることなどによってソーラセル39の濃紫色色調は完全に消し去られて全く視認されなくなる。
【0034】以上述べたように,時計用文字板を上記のような構成にすることによって,ソーラセルの色調を完全に消し去ると共に時計用文字板の表面を鮮明にさせる。本実施形態では白さが一層増し,そして,鮮明に視認されることから文字板としての綺麗さと高級感をかもしだす。」

【図6】

ク 「【0035】次に,本発明の第2実施形態に係る時計用文字板を図6を用いて説明する。この時計用文字板50は,上面に第1の透過性着色膜52を設け,更に,透明膜53を設けた透過性文字板51と,下面側に配設した反射型偏光板55とで構成している。本実施形態での反射型偏光板55は光沢のある金色の反射光が得られる反射型偏光板を使用しており,光の透過と反射の作用は前述の第1実施形態で説明したのと全く同じ作用を持っている。また,透過性文字板51は透明なポリカーボネイト樹脂から出来ており,下面にサークル状又は渦巻き状のプリズム反射面51a,上面に凹凸のある格子状のパターン模様51bが形成されている。何れも射出成形で金型から転写して形成している。尚,ここでのプリズム反射面51aは前述の第1実施形態のプリズム反射面41aと全く同一形状に仕上げている。第1の透過性着色膜52は銅金属粉を透明なウレタン樹脂に混ぜ合わせてインク化し,印刷方法で形成している。そして,反射型偏光板55の反射光と透過性着色膜52との色とで全体的に金色色調が現れるように仕上げている。透明膜53は保護のために設けているもので,透明なウレタン樹脂などを印刷して形成する。そして,表面を平滑面に仕上げている。
【0036】格子状のパターン模様51bは,凹部の深さや幅,凸部の幅などは目に視認できる程度の大きさに形成してあり,上面側からははっきりと模様が視認できる。また,このパターン模様51bは下からの反射光を屈折させて散乱させる働きもなす。以上のような構成を取ることによって,反射型偏光板55の強い反射光により格子模様と金色色調が明るく鮮明に視認されてくる。そして,貴金属感を感じさせて高級感をかもし出す。そして,ここにおいてはソーラセルの色調は全く消し去られて視認することはできない。
【0037】本実施形態のパターン模様51bは格子状に形成しているが,凹凸のある他のパターン模様でも構わない。例えば,梨地模様,ストライプ模様,ピアジカット模様,幾何学模様,編目模様など色々な模様が選択できる。それぞれ求めるデザインに応じて選択すると良い。」

【図9】

ケ 「【0043】次に,本発明の第5実施形態に係る時計用文字板を図9を用いて説明する。図9より,この時計用文字板80は,上面側に第1の透過性着色膜82を設けた透過性文字板81と,この透過性文字板81の下面側に設けた反射型偏光板85とから構成される。本実施形態での反射型偏光板85は第1実施形態で用いた反射型偏光板と同じものを用いており,銀色の反射色が得られるものを用いている。透過性文字板81はその上面に凹凸のある梨地模様81bが形成されていて,樹脂成形時に金型からの転写して成形している。梨地模様81bの上に設けた第1の透過性着色膜82は,これも第1実施形態の第1の透過性着色膜と同じ仕様のもので形成している。
【0044】上記の構成を取る時計用文字板80は,銀色が強く現れて,しかも,光の当たり方によって梨地部分の凸部の所が,ちょうど砂地が太陽光線を受けてキラキラと光る如く,キラキラと光る現象が現れる。外観的に貴金属感が現れ,更に,キラキラとした輝きによって光輝感も現れる。」

【図11】

コ 「【0047】次に,本発明の第7実施形態に係る時計用文字板を図11を用いて説明する。図11より,この時計用文字板100は,上面側に透明膜103と下面に第1の透過性着色膜102とを設けた透過性文字板101と,上面に第2の透過性着色膜106を設けた反射型偏光板105とで構成されている。また,透過性文字板101の上面には一様に梨地模様101bが形成されており,透明膜103はこの梨地模様101bの上面に設けられている。この透明膜103は前述の第2実施形態の透明膜と同じ仕様で形成している。透過性文字板101の下面に設けた第1の透過性着色膜102は,それ自体の透過率が90%位になるように白色顔料を混ぜ合わせて7?10μmの厚みに形成している。反射型偏光板105は,前述の第2実施形態で用いた反射型偏光板と同じ,反射光から光沢のある金色の色調が得られる反射型偏光板を用いている。また,この反射型偏光板105の上面に設けた第2の透過性着色膜106は,透過性文字板101の下面に設けた第1の透過性着色膜102と全く同じ仕様で形成していて,白色色調を持っている。
【0048】第1の透過性着色膜102と第2の透過性着色膜106を白色色調の塗膜にしたのは反射型偏光板105から得られる光沢のある金色を薄めるために用いたものである。金色がかなり薄められて,薄い黄色の色調を持った文字板が得られる。透明膜103は保護膜として設けてあり,キズなどからの梨地模様の損傷防止を行っている。
【0049】上記の構成を取ることによって,僅かに薄く黄色味がかった色調での明るい文字板表面が得られ,更に,その表面も梨地の作用で落ち着いた雰囲気の現れる文字板表面が得られる。
【0050】第1の透過性着色膜102と第2の透過性着色膜106の色の組み合わせによって色々な色調を出すことができる。反射型偏光板105から発する金色色調そのものを出したいときは,第1の透過性着色膜102及び第2の透過性着色膜106に銅金属粉などを配合した塗膜にすることによって金色色調が保たれ,そして,光沢のない落ち着きのある金色文字板が得られる。これは,金属文字板の梨地の上に金メッキを施したものと殆ど遜色のない金属調文字板になる。」

【図13】

サ 「【0053】次に,本発明の第9実施形態に係る時計用文字板を図13を用いて説明する。この実施形態では使用するソーラセルは小型のものを使用している。図13より,この時計用文字板120は,下面側に第1の透過性着色膜122と透過性が殆どない着色膜124とを設けた透過性文字板121と,反射型偏光板125とから構成している。また,透過性文字板121の下面には梨地模様121bが一様に形成されており,第1の透過性着色膜122と透過性が殆どない着色膜124は梨地模様121bの上に設けられている。ここで,本実施形態では,透過性が殆どない着色膜124はアルミ金属を蒸着して形成したもので,文字板の外周域に一周に渡ってリング状に設けてある。そして,このリング状の着色膜124から外れた内側部分から光を採光し,その下部に外径が10mm四方の小型のソーラセルを配設した構造を取っている。透過性文字板121の下面に設けた第1の透過性着色膜122は銅金属粉などを配合した塗膜から形成している。それ自体の透過率が80?90%程度になるように僅か銅金属粉を配合したもので,非常に薄く金色系の色調が現れる程度のものである。また,透過性文字板121の下面に形成された梨地模様121bは,前述の第5実施形態?第7実施形態での梨地模様と同じ目の細かい粗さの梨地模様になっている。反射型偏光板125は,前述の第2実施形態で用いた反射型偏光板と同じ,反射光から光沢のある金色の色調が得られる反射型偏光板を用いている。
【0054】上記の構成を取る時計用文字板120は,アルミ金属の蒸着膜で形成した透過性が殆どない着色膜124の部分は白色色調の金属色が視認され,その内側部分は光沢のない金色色調が視認される。細かい目の梨地模様121bによって反射型偏光板125からの強い反射光がかき消されて光沢のないものに変化する。時計用文字板120全体が白色と金色との色調でまとめられて,落ち着きのでた明るい文字板になる。また,白色色調の着色膜124を設けた部分の透過性文字板121の上面側は時字が設けられる場所になっている。金色色調の金属時字などを貼付けすると時字が鮮明に視認できるようになる。本実施形態の構成を取ると,色調が異なる金属色を2種,文字板表面に出現させることができる。ソーラセルの発電機能に影響が出ない程度の透過率の下で,色調の異なる金属蒸着膜を2種,3種と形成することは可能である。そして,複数の金属色が得られる文字板表面にすることができる。また,透過性が殆どない着色膜124として金属蒸着膜に限定するものではなく,印刷膜であっても良いものである。」

(引用発明1)
引用例2の第5実施形態(段落【0043】及び【0044】,並びに,図9)を前提にすると,引用例2には,以下の発明が記載されている(以下「引用発明1」という。)。なお,第1実施形態と同じと説明されている構成(反射型偏光板及び第1の透過性着色膜)については,第1実施形態に関する記載を参照した。また,時計用文字板の前提となる時計の構成として,段落【0029】の記載を参照した。
「 携帯時計の時計用文字板であって,
携帯時計は,ケース内に中枠を介して透過性文字板,反射型偏光板,ムーブメント,ムーブメント上に一体的に設けられたソーラセルが配設され,ムーブメントには指針軸が透過性表示板の上面側にまで突出しており,その先端に長針,短針の指針が取付けられ,透過性文字板の下面側に反射型偏光板が配設され,更に,この反射型偏光板の下にソーラセルが配置され,
時計用文字板は,上面側に第1の透過性着色膜を設けた透過性文字板と,この透過性文字板の下面側に設けた反射型偏光板とから構成され,
透過性文字板はその上面に凹凸のある梨地模様が形成されていて,梨地模様の上に設けた第1の透過性着色膜は,白色顔料を樹脂に混ぜ合わせ印刷方法で形成し,約7?10μm程度の薄い膜厚にしてこれによる透過率が約10%程度ダウンする位にし,
反射型偏光板は,反射軸Nと透過容易軸Mを有していて,反射軸Nと平行な振動面を持つ直線偏光成分は反射し,透過容易軸Mと平行な振動面を持つ直線偏光成分は透過する特性を持つ,住友3M社製の商品名DBEFのうち,銀色の反射色が得られるものを用い,
銀色が強く現れて,しかも,光の当たり方によって梨地部分の凸部の所が,ちょうど砂地が太陽光線を受けてキラキラと光る如く,キラキラと光る現象が現れ,外観的に貴金属感が現れ,更に,キラキラとした輝きによって光輝感も現れ,
凹凸のパターン模様によって文字板の装飾性が高められ,また,凹凸のパターン模様によってソーラセルからの反射光が散乱されるので,ソーラセルの色調が消し去られて視認されなくなる,
携帯時計の時計用文字板。」

(引用発明2)
また,引用例2の第7実施形態(段落【0047】ないし【0050】,及び,図11)において,金色文字板とする場合を前提にすると,引用例2には,以下の発明が記載されている(以下「引用発明2」という。)。
「 携帯時計の時計用文字板であって,
携帯時計は,ケース内に中枠を介して透過性文字板,反射型偏光板,ムーブメント,ムーブメント上に一体的に設けられたソーラセルが配設され,ムーブメントには指針軸が透過性表示板の上面側にまで突出しており,その先端に長針,短針の指針が取付けられ,透過性文字板の下面側に反射型偏光板が配設され,更に,この反射型偏光板の下にソーラセルが配置され,
時計用文字板は,上面側に透明膜と下面に第1の透過性着色膜とを設けた透過性文字板と,上面に第2の透過性着色膜を設けた反射型偏光板とで構成され,
透過性文字板の上面には一様に梨地模様が形成されており,透明膜はこの梨地模様の上面に設けられ,
反射型偏光板は,反射軸Nと透過容易軸Mを有していて,反射軸Nと平行な振動面を持つ直線偏光成分は反射し,透過容易軸Mと平行な振動面を持つ直線偏光成分は透過する特性を持つ,住友3M社製の商品名DBEFのうち,反射光から光沢のある金色の色調が得られる反射型偏光板を用い,
第1の透過性着色膜及び第2の透過性着色膜に銅金属粉などを配合した塗膜にすることによって金色色調が保たれ,そして,光沢のない落ち着きのある金色文字板が得られ,これは,金属文字板の梨地の上に金メッキを施したものと殆ど遜色のない金属調文字板であり,
凹凸のパターン模様によって文字板の装飾性が高められ,また,凹凸のパターン模様によってソーラセルからの反射光が散乱されるので,ソーラセルの色調が消し去られて視認されなくなる,
携帯時計の時計用文字板。」

(引用発明3)
さらにまた,引用例2の第9実施形態(段落【0053】及び【0054】,並びに,図13)を前提にすると,引用例2には,以下の発明が記載されている(以下「引用発明3」という。)。
「 携帯時計の時計用文字板であって,
携帯時計は,ケース内に中枠を介して透過性文字板,反射型偏光板,ムーブメント,ムーブメント上に一体的に設けられたソーラセルが配設され,ムーブメントには指針軸が透過性表示板の上面側にまで突出しており,その先端に長針,短針の指針が取付けられ,透過性文字板の下面側に反射型偏光板が配設され,更に,この反射型偏光板の下にソーラセルが配置され,
時計用文字板は,下面側に第1の透過性着色膜と透過性が殆どない着色膜とを設けた透過性文字板と,反射型偏光板とから構成され,透過性が殆どない着色膜はアルミ金属を蒸着して形成したもので,文字板の外周域に一周に渡ってリング状に設け,第1の透過性着色膜は銅金属粉などを配合した塗膜から形成し,それ自体の透過率が80?90%程度になるように僅か銅金属粉を配合したもので,非常に薄く金色系の色調が現れる程度のものであり,
透過性文字板の下面には梨地模様が一様に形成されており,第1の透過性着色膜と透過性が殆どない着色膜は梨地模様の上に設けられ,
反射型偏光板は,反射軸Nと透過容易軸Mを有していて,反射軸Nと平行な振動面を持つ直線偏光成分は反射し,透過容易軸Mと平行な振動面を持つ直線偏光成分は透過する特性を持つ,住友3M社製の商品名DBEFのうち,反射光から光沢のある金色の色調が得られる反射型偏光板を用い,
アルミ金属の蒸着膜で形成した透過性が殆どない着色膜の部分は白色色調の金属色が視認され,その内側部分は光沢のない金色色調が視認され,細かい目の梨地模様によって反射型偏光板からの強い反射光がかき消されて光沢のないものに変化し,時計用文字板全体が白色と金色との色調でまとめられて,落ち着きのでた明るい文字板になり,
凹凸のパターン模様によって文字板の装飾性が高められ,また,凹凸のパターン模様によってソーラセルからの反射光が散乱されるので,ソーラセルの色調が消し去られて視認されなくなる,
携帯時計の時計用文字板。」

(引用発明4)
さらにまた,引用例2の第1実施形態(段落【0030】ないし【0034】,並びに,図3)を前提にすると,引用例2には,以下の発明が記載されている(以下「引用発明4」という。)。
「 携帯時計の時計用文字板であって,
携帯時計は,ケース内に中枠を介して透過性文字板,反射型偏光板,ムーブメント,ムーブメント上に一体的に設けられたソーラセルが配設され,ムーブメントには指針軸が透過性表示板の上面側にまで突出しており,その先端に長針,短針の指針が取付けられ,透過性文字板の下面側に反射型偏光板が配設され,更に,この反射型偏光板の下にソーラセルが配置され,
時計用文字板は,上面に第1の透過性着色膜を設けた透過性文字板と反射型偏光板とから構成され,
透過性文字板は透明なポリカーボネイト樹脂やアクリル樹脂などから形成され,その下面には,サークル模様状または渦巻き模様状に形成したプリズム反射面が形成され,
反射型偏光板は,反射軸Nと透過容易軸Mを有していて,反射軸Nと平行な振動面を持つ直線偏光成分は反射し,透過容易軸Mと平行な振動面を持つ直線偏光成分は透過する特性を持つ,住友3M社製の商品名DBEFのうち,光沢のある銀色(シルバー色)を呈する強い反射光が得られる反射型偏光板を用い,
凹凸のパターン模様によって文字板の装飾性が高められ,また,凹凸のパターン模様によってソーラセルからの反射光が散乱されるので,ソーラセルの色調が消し去られて視認されなくなる,
携帯時計の時計用文字板。」

(4) 引用例3に記載の事項
本件出願の最先の優先日前に配付された刊行物である特開2006-98937号公報(発明の名称:「表示装置および電子機器」,出願人:「セイコーエプソン株式会社」,公開日:平成18年4月13日,以下「引用例3」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。
ア 「【0013】
本発明では,第一の偏光板または第二の偏光板の,光散乱型液晶表示層に対向する面には,凹凸によって模様が形成されることが望ましい。
この発明によれば,第一の偏光板または第二の偏光板に凹凸による模様が形成されているので,模様付けされた表示が可能となり,デザインの多様性が促進される。」

イ 「【0021】
以下,本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお,後述する第二実施形態以降で,以下に説明する第一実施形態での構成部品と同じ部品および同様な機能を有する部品には同一符号を付し,説明を簡単にあるいは省略する。
[第一実施形態]
図1および図2には,本発明の第一実施形態にかかる電子機器としての時計1が示されている。ここで,図1は時計1の正面図であり,図2は,図1の側断面図である。これらの図1および図2において,時計1は,デジタル表示式の腕時計であり,ケース11と,時刻をデジタル表示する時刻表示手段としての表示装置2とを備えている。」
【図1】


ウ 「【0057】
[第五実施形態]
次に,本発明の第五実施形態について説明する。第五実施形態は,第一実施形態の表示装置に凹凸による模様が形成された模様形成層が設けられたものである。」

エ 「【0058】
模様形成層31は,任意の材料の透明シート,透明フィルム,透明板状部材などから構成され,液晶パネル21に対向する面,つまり表面側の面に凹凸が形成されている。この凹凸は,例えば透明シートの表面を傷つけたり,透明板状部材の表面に所定の模様の凹凸を切削するなどして形成すればよい。」

オ 「【0060】
このような第五実施形態によれば,第一実施形態の(1)?(4)の効果と同様の効果が得られる他,次のような効果が得られる。
(10) 模様形成層31が設けられているので,時刻表示に模様を付すことができる。したがって,時計1の時刻表示の表現の多様化および時計1のデザインの多様化を促進できる。
また,模様形成層31が設けられているので,表示装置2の最下層に配置された発光手段24をより視認しにくくできる。したがって,表示装置2の外観を向上させることができる。」

カ 「【0074】
模様形成層は,第一の偏光板および第二の偏光板と別体で設けられているものに限らない。例えば第一の偏光板および/または第二の偏光板において光散乱型液晶表示層に対向する面,つまり表面側の面に凹凸を形成することで,これらの第一の偏光板および/または第二の偏光板を模様形成層として兼用してもよい。このような構成によれば,第一の偏光板の表面側,あるいは第二の偏光板の表面側に模様形成層を別途設ける必要がないので,表示装置の薄型化を促進できる。」

そうしてみると,引用例3には,以下の技術が記載されている(以下「引用例3記載技術」という。)。
「 【0021】デジタル表示式の腕時計であって,
【0074】第一の偏光板および/または第二の偏光板において光散乱型液晶表示層に対向する面,つまり表面側の面に凹凸を形成することで,これらの第一の偏光板および/または第二の偏光板を模様形成層として兼用し,【0013】模様付けされた表示が可能となり,デザインの多様性が促進され,また,【0060】表示装置の最下層に配置された発光手段をより視認しにくくできる,【0021】デジタル表示式の腕時計。」

(5) 対比及び判断(引用発明1)
ア 対比
本件補正後発明と,引用発明1を対比すると,以下のとおりとなる。
(ア) 表示板基体
引用発明1は,「時計用文字板は,上面側に第1の透過性着色膜を設けた透過性文字板と,この透過性文字板の下面側に設けた反射型偏光板とから構成され」の構成を具備する。また,引用発明1の反射型偏光板は,「反射軸Nと透過容易軸Mを有していて,反射軸Nと平行な振動面を持つ直線偏光成分は反射し,透過容易軸Mと平行な振動面を持つ直線偏光成分は透過する特性を持つ」。さらに,引用発明1の反射型偏光板は,本件補正発明の実施例の反射型偏光板と同じ「住友3M社製の商品名DBEF」であり,偏光性の異なる2種類のフィルム層を交互に複数積層して構成したものである。
したがって,引用発明1の「時計用文字板」と本件補正後発明の「表示板基体」は,「光透過性基板と,2種類の偏光性フィルム層を交互に複数積層した反射型偏光板とを備え」る点で共通する。

(イ) 配置
引用発明1の時計用文字板は携帯時計の時計用文字板である。また,引用発明1の携帯時計は,「透過性文字板の下面側に反射型偏光板が配設され,更に,この反射型偏光板の下にソーラセルが配置され」の構成を具備する。
したがって,引用発明1は,本件補正後発明の「前記反射型偏光板に対し,前記光透過性基板を最も視認側に配置し」の要件を満たす。
なお,本件補正後発明は,請求項2ないし7に係る発明の上位概念の発明であり,本件出願の明細書には,段落【0042】及び【0043】の記載もある。

(ウ) 軸孔,指針を有する時計の文字板
引用発明1の時計用文字板は携帯時計の時計用文字板である。また,引用発明1の携帯時計は,「携帯時計は,ケース内に中枠を介して透過性文字板,反射型偏光板,ムーブメント,ムーブメント上に一体的に設けられたソーラセルが配設され,ムーブメントには指針軸が透過性表示板の上面側にまで突出しており,その先端に長針,短針の指針が取付けられ」の構成を具備する。
したがって,引用発明1は,本件補正後発明の「前記光透過性基板と前記反射型偏光板に針軸を挿通する軸孔が形成され,指針を有する時計の文字板とする」の要件を満たす。

(エ) 表示板
以上の対比結果を踏まえると,引用発明の時計用文字板は,本件補正後発明の「表示板基体」に対応する構成であるとともに,携帯時計の時計用文字板としてみると,本件補正後発明の「視認側に設けられる表示板基体を備えた表示板」にも相当する。

イ 一致点及び相違点
本件補正後発明と引用発明1の一致点及び相違点は,以下のとおりである。
(一致点)
「 視認側に設けられる表示板基体を備えた表示板であって,
前記表示板基体が,光透過性基板と,2種類の偏光性フィルム層を交互に複数積層した反射型偏光板とを備え,
前記反射型偏光板に対し,前記光透過性基板を最も視認側に配置し,
前記光透過性基板と前記反射型偏光板に針軸を挿通する軸孔が形成され,指針を有する時計の文字板とする,表示板。」

(相違点1)
本件補正後発明の「光透過性基板」は,「厚さが200μmから700μmである光透過性基板」であるのに対し,引用発明1は,これが明らかでない点。

(相違点2)
本件補正後発明は,「前記反射型偏光板の視認側の表面に,熱転写加工又はプレス加工により形成された凹凸状の模様を有することにより,該反射型偏光板で,光の反射と拡散とを生じさせ」の構成を具備し,また,「前記光透過性基板を通して前記模様が金属感を伴って視認されるように構成した」ものであるのに対し,引用発明1は,この構成を具備しない点。

ウ 判断
(相違点1について)
引用発明1の「透過性文字板」の材質は,引用例2記載の第5実施形態としては明示されていないものの,第1実施形態では「透過性文字板41は透明なポリカーボネイト樹脂やアクリル樹脂などから形成され」(段落【0031】)とされている。したがって,引用例2の記載に接した当業者ならば,引用発明1の「透過性文字板」の材質は,透明なポリカーボネイト樹脂やアクリル樹脂等であると理解する。また,引用発明1の携帯時計30は,「携帯時計は,ケース内に中枠を介して透過性文字板,反射型偏光板,ムーブメント,ムーブメント上に一体的に設けられたソーラセルが配設され」の構成を具備する。
そうしてみると,引用発明1の「透過性文字板」の厚さは,貧弱なほど薄いのは問題があるとしても,「携帯時計」の部材としての薄さが求められるものである。したがって,引用発明1の「透過性文字板」の厚さを200?700μmの範囲内の値とすることは,引用発明1を具体化するに際し,当業者が適宜採用しうるものである。なお,引用例1の段落【0045】においても,基材11として同一の材料が示され,さらに,段落【0049】に「基材11の平均厚さは,特に限定されないが,200?700μmであるのが好ましく」と記載されている。

(相違点2について)
引用発明1の梨地模様は,「凹凸のパターン模様」の一例であり,梨地模様の他にも,「格子模様,ストライプ模様,ピアジカット模様,編目模様などの種々の模様が選択できる」(段落【0023】)。また,梨地模様等の「凹凸のパターン模様」は,第1の透過性着色膜及び反射型偏光板と相まって,「凹凸のパターン模様によって文字板の装飾性が高められ,また,凹凸のパターン模様によってソーラセルからの反射光が散乱されるので,ソーラセルの色調が消し去られて視認されなくなる」という効果を奏するところ,当業者ならば,引用発明1と同じ技術分野に属し,かつ,作用効果の観点からも組み合わせるに好適な,引用例3記載技術を知悉している。
そうしてみると,当業者が,引用発明1の梨地模様を,必要に応じて他の種々の模様に変形し,また,(必要に応じて第1の透過性着色膜とともに,)反射型偏光板の視認側の表面に設けることは,当業者における通常の創意工夫の範囲内の事項である。また,エンボス加工等が施された光拡散層を,表面加工又は積層により有する反射型偏光板は周知技術である(必要ならば,特開2001-51268号公報の段落【0053】,特開平11-231303号公報の段落【0056】,国際公開2006/073644号の9頁30行ないし10頁9行を参照。そもそも,住友3M社の「DBEF」には,「DBEF-E」と称されるエンボス加工タイプがある。)。そうしてみると,引用発明1の反射型偏光板を,その表面に梨地模様等の適宜の凹凸パターン模様を有するものとするに際し,模様に応じて,「熱転写加工又はプレス加工」を採用することは,上述の創意工夫に付随して発生する自明な選択作業にすぎない。
そうしてみると,引用発明1を容易推考の出発点として「前記反射型偏光板の視認側の表面に,熱転写加工又はプレス加工により形成された凹凸状の模様を有することにより,該反射型偏光板で,光の反射と拡散とを生じさせ」の構成に至り,その結果,光透過性基板を通して梨地模様等の凹凸パターン模様が金属感を伴って視認されるように構成することは,当業者が容易にできることである。

なお,引用発明1の梨地模様は,光を散乱するものであるから,質感により「模様」として視認できるとしても,目の細かい粗さのものである(引用例2の段落【0053】)。したがって,本件出願の明細書の段落【0196】及び【0197】に開示のストライプ状の模様のように,形状により視認される模様とは言いがたい。しかしながら,引用例2の段落【0023】及び【0035】ないし【0037】には,凹凸のあるパターンとして,目に視認できる程度の大きさの模様も開示されている。そうしてみると,引用発明1の梨地模様を,その光輝感がはっきり見える大きなものとすること,あるいは,梨地模様に替えて目に視認できる程度の大きさのピアジカット模様や編目模様等を採用すること,さらには,引用発明1の梨地模様による光輝感に加えて目に視認できる程度の大きさのピアジカット模様や編目模様を追加してソーラセルの色調を消し去る効果を助長することは,当業者が容易にできることである。
なお,そもそも,特許請求の範囲には,模様について,「形状により視認される模様」とは記載されていないから,本件補正後発明の要旨には,「質感により視認される模様」も含まれるものである。

また,請求人は,審判請求書において,「引用文献3における凹凸は,引用文献3の段落[0058]に記載されているように,『例えば透明シートの表面を傷つけたり,透明板状部分の表面に所定の模様の凹凸を切削するなどして形成』している。」と主張する。
しかしながら,引用文献3の段落【0058】の記載は,偏光板に模様を形成する方法に関するものではない。そもそも,切削は,梨地模様を形成するに適した加工方法ではなく,梨地模様は,サンドブラストや型押しにより形成するのが通常である。また,ピアジカット模様や編み目模様は,型押しにより形成するのが通常である。

そして,本件補正後発明が奏する効果は,当業者が引用例等から予測できる範囲内のものである。

エ 小括
したがって,本件補正後発明は,その最先の優先日前に日本国内又は外国において頒布された引用例2に記載された引用発明1及び引用例3記載技術,並びに,周知技術に基づいて,その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定によって,特許を受けることができない。

(6) 対比及び判断(引用発明2)
ア 対比
本件補正後発明と引用発明2の対比は,前記(5)アと同様である。

イ 一致点及び相違点
本件補正後発明と引用発明2の一致点及び相違点は,前記(5)イと同様である。

ウ 判断
(相違点1について)
相違点1の判断は,前記(5)ウの(相違点1について)と同様である。

(相違点2について)
相違点2の判断は,前記(5)エの(相違点2について)と同様である。

また,本件補正後発明が奏する効果は,当業者が引用例等から予測できる範囲内のものである。

エ 小括
したがって,本件補正後発明は,その最先の優先日前に日本国内又は外国において頒布された引用例2に記載された引用発明2及び引用例3記載技術,並びに,周知技術に基づいて,その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものでもあるから,特許法29条2項の規定によって,特許を受けることができない。

(7) 対比及び判断(引用発明3)
ア 対比
本件補正後発明と引用発明2の対比は,前記(5)アと同様である。

イ 一致点及び相違点
本件補正後発明と引用発明2の一致点及び相違点は,前記(5)イと同様である。

ウ 判断
(相違点1について)
相違点1の判断は,前記(5)ウの(相違点1について)と同様である。

(相違点2について)
相違点2の判断は,前記(5)エの(相違点2について)と同様である。

また,本件補正後発明が奏する効果は,当業者が引用例等から予測できる範囲内のものである。

エ 小括
したがって,本件補正後発明は,その最先の優先日前に日本国内又は外国において頒布された引用例2に記載された引用発明3及び引用例3記載技術,並びに,周知技術に基づいて,その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものでもあるから,特許法29条2項の規定によって,特許を受けることができない。

(8) 対比及び判断(引用発明4)
ア 対比
本件補正後発明と引用発明2の対比は,前記(5)アと同様である。

イ 一致点及び相違点
本件補正後発明と引用発明2の一致点及び相違点は,前記(5)イと同様である。

ウ 判断
(相違点1について)
引用発明4の「透過性文字板」の材質は,透明なポリカーボネイト樹脂やアクリル樹脂等である。そして,その余の判断は,前記(5)ウの(相違点1について)と同様である。

(相違点2について)
引用発明4のプリズム反射面は,「模様」である。また,プリズム反射面は,第1の透過性着色膜及び反射型偏光板と相まって,「凹凸のパターン模様によって文字板の装飾性が高められ,また,凹凸のパターン模様によってソーラセルからの反射光が散乱されるので,ソーラセルの色調が消し去られて視認されなくなる」という効果を奏するところ,当業者ならば,引用発明4と同じ技術分野に属し,かつ,作用効果の観点からも組み合わせるに好適な,引用例3記載技術を知悉している。
そうしてみると,当業者が,引用発明4のプリズム反射面を,(必要に応じて第1の透過性着色膜とともに,)反射型偏光板の視認側の表面に設けることは,当業者における通常の創意工夫の範囲内の事項である。
そして,引用発明4の反射型偏光板はプラスチックフィルム状のものであり,また,エンボス加工等が施された光拡散層を,表面加工又は積層により有する反射型偏光板は周知技術である(必要ならば,特開2001-51268号公報の段落【0053】,特開平11-231303号公報の段落【0056】,国際公開2006/073644号の9頁30行ないし10頁9行を参照。そもそも,住友3M社の「DBEF」には,「DBEF-E」と称されるエンボス加工タイプがある。)。そうしてみると,引用発明4の反射型偏光板を,その表面にプリズム反射面等の適宜の模様を有するものとするに際し,「熱転写加工又はプレス加工」を採用することは,上述の創意工夫に付随して発生する自明な選択作業にすぎない。
そうしてみると,引用発明4を容易推考の出発点として「前記反射型偏光板の視認側の表面に,熱転写加工又はプレス加工により形成された模様を有することにより,該反射型偏光板で,光の反射と拡散とを生じさせ」の構成に至り,その結果,光透過性基板を通して模様が金属感を伴って視認されるように構成することは,当業者が容易にできることである。

なお,引用発明4のプリズム反射面は,光を散乱するものであるから,質感により「模様」として視認できるとしても,目に見えない程度の寸法に形成するのが好ましいものである(引用例2の段落【0031】)。したがって,本件出願の明細書の段落【0196】及び【0197】に開示のストライプ状の模様のように,形状により視認される模様とは言いがたい。しかしながら,引用例2には,「目に見えない程度の寸法に形成するのが好ましい」(段落【0031】)と記載されているのであるから,引用例2には,「目に見える程度の寸法に形成する態様」も開示されている。そもそも,プリズム反射面の形状に関して,引用例2の段落【0031】には,「三角形のプリズム形状をなしており」,「三角形の角度は,凹部,凸部共に75?100度の範囲内」,「高さは15?100μm,ピッチは略150μm位に形成している」と記載されているところ,本件出願の明細書の段落【0124】には,凹凸状の模様の一例として「断面形状が三角形」,「三角形の角度は,凹部,凸部のいずれも,75?100度の範囲内」,「高さhの値は,10?20μm,ピッチpの値は,略100μm位」(段落【0124】)と,引用例2記載のものより細かなものが記載され,それを「この高さやピッチは,金型の加工が容易で,且つ目に見える程度の寸法に形成するのが好ましい」と評価しているのであるから,引用発明4の模様と本件補正後発明の模様は,官能評価では相違するとしても,物としての実体においては何ら相違しないといえる。なお,三角形状を成すことができる数値範囲が妥当であるか否かと,模様が視認できるか否かは,別論である。
あるいは,引用例2の段落【0023】及び【0035】ないし【0037】には,凹凸のあるパターンとして,目に視認できる程度の大きさの模様も開示されており,プリズム反射面に加えて凹凸のパターン模様を形成すると,ソーラセルの色調を消し去る効果を助長するとの開示もある(段落【0023】)。そうしてみると,引用発明4のプリズム反射面に加えて,目に見える程度の凹凸のパターン模様も形成することとし,その際,プリズム反射面及び凹凸のパターン模様のうち,その一方を透過性文字板の下面に,他方を反射型偏光板の上面に形成することは,凹凸のパターン模様を鮮明に視認させるか地味に視認させるかに応じて,当業者が適宜選択できる事項である。
なお,そもそも,特許請求の範囲には,模様について,「形状により視認される模様」とは記載されていないから,本件補正後発明の要旨には,「質感により視認される模様」も含まれるものである。

また,本件補正後発明が奏する効果は,当業者が引用例等から予測できる範囲内のものである。

エ 小括
したがって,本件補正後発明は,その最先の優先日前に日本国内又は外国において頒布された引用例2に記載された引用発明4及び引用例3記載技術,並びに,周知技術に基づいて,その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものでもあるから,特許法29条2項の規定によって,特許を受けることができない。

3 補正却下の決定の結論
本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

4 付記
光透過性基板の厚さについて,本件出願当初の明細書,特許請求の範囲及び図面には,ポリカーボネイト樹脂やアクリル樹脂において200から700μm程度との数値範囲は記載されているが,強度や光学特性等を限定しない任意の材質において200から700μm程度との数値範囲は記載も示唆もされていない。本件補正は,17条の2第3項の規定に適合しないし,少なくとも,36条6項1号及び2号並びに36条4項の規定に違反し特許を受けることができないから,いずれにせよ,本件補正は却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本件出願の特許請求の範囲に係る発明(本願発明)は,前記「第2」1(1)に記載のとおりである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,概略,この出願の請求項1に係る発明は,その最先の優先日前に日本国内又は外国において頒布された引用例2に記載された発明及び引用例3記載技術に基づいて,その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

3 引用例に記載の事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例に記載の事項及び引用発明は,前記「第2」2(2)ないし(4)に記載したとおりである。

4 対比及び判断
本願発明は,本件補正後発明を特定するために必要な事項である「光透過性基板」,「反射型偏光板」及び「凹凸状の模様」について,それぞれ,「厚さが200μmから700μmである光透過性基板」,「2種類の偏光性フィルム層を交互に複数積層した反射型偏光板」及び「熱転写加工又はプレス加工により形成された凹凸状の模様」との発明特定事項を省くとともに,「凹凸状の模様」について,反射型偏光板「の視認側」に有するという当たり前の構成を省いたものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに,他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正後発明が,前記「第2」2の(5)ないし(8)で述べたとおり,引用例2に記載された発明(引用発明1ないし4のいずれか)及び引用例3記載技術,並びに,周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたこと,さらには,「厚さが200μmから700μmである光透過性基板」との発明特定事項が,相違点1に関するものであり,また,凹凸状の模様に関する「熱転写加工又はプレス加工により形成された」との発明特定事項が,相違点2のうち周知技術に対応するものであることを考慮すると,本願発明は,引用例2に記載された発明(引用発明1ないし4のいずれか)及び引用例3記載技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
また,本願発明が奏する効果は,当業者が引用例等から予測できる範囲内のものである。

第4 まとめ
以上のとおり,本件出願の請求項1に係る発明は,その最先の優先日前に日本国内において頒布された引用例2に記載された発明及び引用例3記載技術に基づいて,その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について審理するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-25 
結審通知日 2014-07-01 
審決日 2014-07-14 
出願番号 特願2012-97615(P2012-97615)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G04B)
P 1 8・ 121- Z (G04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤田 憲二  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 樋口 信宏
中塚 直樹
発明の名称 表示板およびそれを備えた機器類  
代理人 特許業務法人SSINPAT  

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