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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09J
管理番号 1291347
審判番号 不服2013-19361  
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-04 
確定日 2014-08-28 
事件の表示 特願2010-127202「両面粘着テープ」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月15日出願公開、特開2011-252095〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 主な手続の経緯
本願は,平成22年6月2日を出願日とする特許出願であって,平成24年11月27日付けで拒絶理由が通知され,平成25年2月1日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲及び明細書が補正され,同年7月4日付けで拒絶査定がされ,これに対して,同年10月4日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明について
本願の請求項1?3に係る発明は,平成25年2月1日に補正された特許請求の範囲及び明細書並びに図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?3に記載されている事項により特定されるとおりのものであると認める。そのうち,請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりである。
「総厚みが500μm以下であり,発泡体層,厚みが4?25μmの補強層,及び,両表層としての粘着剤層を有し,なおかつ,少なくとも一方の側の表層の粘着剤層が,炭素数4?9の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル,カルボキシル基含有単量体,及び,水酸基含有単量体を必須の単量体成分として構成されるアクリル系ポリマー,粘着付与樹脂,架橋剤を含む粘着剤組成物より形成され,
前記アクリル系ポリマーにおいて,炭素数4?9の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル,カルボキシル基含有単量体,及び,水酸基含有単量体の割合が,アクリル系ポリマーを構成する単量体成分全量に対して,炭素数4?9の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル80?99.9重量%,カルボキシル基含有単量体0.1?10重量%,水酸基含有単量体0.01?5重量%であることを特徴とする両面粘着テープ。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,要するに,本願発明は,本願の出願前に頒布された刊行物である下記引用文献1に記載された発明及び周知慣用技術(その根拠として,下記引用文献2が引用されている。)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,という理由を含むものである。
引用文献1: 特開2009-108314号公報
引用文献2: 特開2010-13648号公報

第4 合議体の認定,判断
1 引用発明
(1) 査定の理由で引用された引用文献1には,次の記載がある。(下線は審決で付記。以下同じ。)
「【請求項1】
発泡体基材と粘着剤層とを有する両面粘着テープであって,前記発泡体基材の25%圧縮強度が40?160kPa,引張強度が300?1500N/cm^(2)であることを特徴とする防水用両面粘着テープ…
【請求項7】
前記粘着剤層が,アクリル系共重合体と粘着付与樹脂とを含有し,アクリル系共重合体100質量部に対する粘着付与樹脂の含有量が,5?40質量部である請求項1?6のいずれかに記載の防水用両面粘着テープ。…」(【特許請求の範囲】)
「【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は,薄いテープ厚さであっても被着体との良好な接着性を示し,防水機能に優れた両面粘着テープを提供することにある。
さらには,上記課題に加え,優れた耐衝撃性を有し,携帯電子機器用途に適した防水用の両面粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究した結果,基材として特定の柔軟性と強度を有する発泡体基材を使用することにより,剛体同士の貼り合わせに際しても両面粘着テープと被着体との間の優れた密着性を実現でき,水の浸漬を効果的に防止できることを見出し,上記課題を解決した。」(【0006】?【0008】)
「【発明の効果】
本発明の防水用両面粘着テープは,被着体との好適な密着性を示し,密着間隙からの水の浸入を効果的に防止でき,優れた防水機能を有する。このため,薄型化が進み,筐体内での容積制限が厳しく,別途の水封止手段を設けることが困難な携帯電子機器等においても効果的に防水機能を付与できる。」(【0010】)
「[発泡体基材]
本発明に使用する発泡体基材は,25%圧縮強度が40?160kPa,好ましくは50?140kPa,より好ましくは60?130kPaの発泡体基材である。25%圧縮強度が当該範囲の発泡体基材を使用することにより,被着体との優れた密着性を有し,特に凹凸形状や粗面を有する被着体に対しても好適に追従して優れた密着性を有する。また,当該圧縮強度の発泡体基材は,適度なクッション性を有するため,貼付の際の圧力が接合部に集中して接着界面に存在する空気を押し出しやすいため,剛体同士の接合においても,水が入り込む隙間を生じさせない優れた密着性を実現できる。」(【0012】)
「[粘着剤層]
本発明の防水用両面粘着テープの粘着剤層を構成する粘着剤組成物は,上記特性を有する粘着剤層を形成できればよく,通常の両面粘着テープに使用される粘着剤組成物を用いることができる。当該粘着剤組成物としては,(メタ)アクリレート単独又は(メタ)アクリレートと他のモノマーとの共重合体からなるアクリル系共重合体をベースポリマーとし,これに必要に応じて粘着付与樹脂や架橋剤等の添加剤が配合されたアクリル系粘着剤組成物を好ましく使用できる。
(メタ)アクリレートとしては,例えば,メチル(メタ)アクリレート,エチル(メタ)アクリレート,n-ブチル(メタ)アクリレート,イソブチル(メタ)アクリレート,t-ブチル(メタ)アクリレート,n-オクチル(メタ)アクリレート,イソオクチル(メタ)アクリレート,イソノニル(メタ)アクリレート,シクロヘキシル(メタ)アクリレート,2-エチルヘキシルメタクリレート等のモノマーがあげられ,これらの1種または2種以上が用いられる。なかでも,アルキル基の炭素数が1?8の(メタ)アクリレート,特にn-ブチルアクリレートは被着体との密着性を確保しやすく,凝集力に優れるため好ましい。
アクリル系共重合体中の(メタ)アクリレートの含有量は,アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の80?98.5質量%であることが好ましく,90?98.5質量%であることがより好ましい。
また,本発明に使用するアクリル系共重合体は高極性ビニルモノマーを共重合してもよく,高極性ビニルモノマーとしては,水酸基を有するモノマー,カルボキシル基を有するモノマー,アミド基を有するモノマー等が挙げられる。
水酸基を有するモノマーとしては,例えば,2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート,4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート,6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等などの水酸基含有(メタ)アクリレートを使用できる。
カルボキシル基を有するモノマーとしては,アクリル酸,メタクリル酸,イタコン酸,マレイン酸,(メタ)アクリル酸2量体,クロトン酸等を使用でき,なかでもアクリル酸を共重合成分として使用することが好ましい。
…高極性ビニルモノマーの含有量は,アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の1.5?20質量%であることが好ましく,1.5?10質量%であることがより好ましく,2?8質量%であることが更に好ましい。当該範囲で含有することにより,粘着剤の凝集力や保持力,接着性を好適な範囲に調整しやすい。
なお,架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を用いる場合は,これと反応する官能基を有するビニルモノマーとしては水酸基含有ビニルモノマーが好ましく,4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート,6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートが特に好ましい。イソシアネート系架橋剤と反応する水酸基含有ビニルモノマーの含有量は,アクリル系共重合体を構成するモノマー成分の0.01?1.0質量%であることが好ましく,0.03?0.3質量%が特に好ましい。」(【0027】?【0036】)
「本発明に使用するアクリル系粘着剤組成物中には,被着体との密着性を向上させるため,粘着付与樹脂を使用することが好ましい。粘着付与樹脂としては,ロジン系,重合ロジン系,重合ロジンエステル系,ロジンフェノール系,安定化ロジンエステル系,不均化ロジンエステル系,水添ロジンエステル系,テルペン系,テルペンフェノール系,石油樹脂系,(メタ)アクリレート系樹脂等が例示できる。…」(【0039】)
「アクリル系粘着剤組成物中には,粘着剤層の凝集力を上げるために粘着剤を架橋することが好ましい。このような架橋剤としては,イシアネート系架橋剤,エポキシ系架橋剤,金属キレート系架橋剤,アジリジン系架橋剤等が挙げられる。そのなかでも,重合終了後に添加し,架橋反応を進行させるタイプの架橋剤が好ましく,(メタ)アクリル系共重合体との反応性に富むイソシアネート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤が好ましい。…」(【0043】)
「本発明の防水用両面粘着テープの実施形態としては,発泡体基材を中芯とし,当該基材の両面に粘着剤層が設けられた構成を基本構成とする。基材と粘着剤層との間は直接積層されていても,他の層を有していても良い。これら態様は使用用途によって適宜選択すればよく,テープにさらに寸法安定性や引張強さを付与する場合には,ポリエステルフィルムなどのラミネート層を,テープに遮光性を付与する場合には遮光層を,光反射性を確保する際には光反射層を設けても良い。これら他の層を設ける場合には,当該他の層として防水性の層を使用する。」(【0053】)
「本発明の防水用両面粘着テープの厚さは使用する態様によって適宜調整すれば良いが,70?1400μmである。電子機器の部品固定用,特に小型,薄型の携帯電子機器の場合には,薄いテープ厚さが求められるため,100?300μmであることが好ましく,150μm?250μmであることが特に好ましい。テープ厚さを当該厚さとすることで,薄型・小型の携帯電子機器に対しても好適に適用でき,また良好な防水機能を実現できる。」(【0056】)

(2) 上記(1)の摘記,特に【請求項1】,【請求項7】,【0029】?【0036】,【0053】及び【0056】の記載から,引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「発泡体基材と,アクリル系共重合体,粘着付与樹脂及びイソシアネート系架橋剤を含有する粘着剤層と,上記発泡体基材と粘着剤層との間に設けられたラミネート層とを有する両面粘着テープであって,
上記アクリル系共重合体は,モノマー成分として,(メタ)アクリレート並びに高極性ビニルモノマーである水酸基含有ビニルモノマー及びカルボキシル基を有するモノマーから少なくとも構成され,
上記アクリル系共重合体を構成する各モノマー成分の割合について,アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中,(メタ)アクリレートが80?98.5質量%,高極性ビニルモノマーとして1.5?20質量%及び水酸基含有ビニルモノマーが0.01?1.0質量%であり,
前記発泡体基材の25%圧縮強度が40?160kPa,引張強度が300?1500N/cm^(2)である
厚さ100?300μmの電子機器部品固定用の防水用両面粘着テープ」

2 対比
本願発明と引用発明を対比すると,引用発明の「発泡体基材」は本願発明の「発泡体層」に,「ラミネート層」は「補強層」にそれぞれ相当する。
また,粘着剤層がアクリル系ポリマー(アクリル系共重合体),粘着付与樹脂及び架橋剤(イソシアネート系架橋剤)を含むものより形成されてなる点で本願発明と引用発明とは一致するところ,上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分について,引用発明の「(メタ)アクリレート」は,引用文献1の【0028】の記載からみて,本願発明の「炭素数4?9の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル」に相当し,また「(高極性ビニルモノマーである)水酸基含有ビニルモノマー」は「水酸基含有単量体」に,「(高極性ビニルモノマーである)カルボキシル基を有するモノマー」は「カルボキシル基含有単量体」にそれぞれ相当するといえる。
したがって,両発明の一致点,相違点はそれぞれ次のとおりと認めることができる。
・ 一致点
「総厚みが100?300μmであり,発泡体層,補強層及び両表層としての粘着剤層を有し,なおかつ,少なくとも一方の側の表層の粘着剤層が,炭素数4?9の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル,カルボキシル基含有単量体及び水酸基含有単量体を必須の単量体成分として構成されるアクリル系ポリマー,粘着付与樹脂,架橋剤を含む粘着剤組成物より形成され,前記アクリル系ポリマーにおいて,炭素数4?9の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル,カルボキシル基含有単量体及び水酸基含有単量体の割合が,アクリル系ポリマーを構成する単量体成分全量に対して,炭素数4?9の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル80?98.5重量%,水酸基含有単量体0.01?1.0重量%である両面粘着テープ」である点
・ 相違点1
補強層(ラミネート層)の厚みについて,本願発明は「4?25μm」と特定するのに対し,引用発明はそのような特定を有しない点。
・ 相違点2
アクリル系ポリマー(アクリル系共重合体)を構成するカルボキシル基含有単量体(高極性ビニルモノマーであるカルボキシル基を有するモノマー)のアクリル系ポリマーを構成する単量体成分全量に対する割合について,本願発明は「0.1?10重量%」と特定するのに対し,引用発明はカルボキシル基を有するモノマー単体としての割合を特定しないが,高極性ビニルモノマーとして1.5?20質量%であると特定してなる点。

3 相違点1についての判断
(1) 引用文献1の記載(上記1(1))から,引用発明は,薄いテープ厚さであっても被着体との良好な接着性を示し,優れた耐衝撃性を有しかつ防水機能にも優れる携帯電子機器用途に適した両面粘着テープを提供するとの解決課題のもと,基材として特定の柔軟性と強度を有する発泡体基材を使用することにより,その課題の解決を図るものであるといえる(【0006】?【0008】)。また,発泡体基材と粘着剤層との間に設けられたラミネート層は,薄いテープ厚さを維持しつつ(【0006】,【0056】),両面粘着テープに寸法安定性や引張強さをさらに付与するという技術的意義を有するものである(【0053】)。

(2)ア ところで,引用文献2には,次の記載がある。
「【請求項1】
二枚の外側にある接着剤層,
発泡されたポリマー材料よりなる支持体層,
発泡された支持体層に貼り付けられた,ポリマー材料よりなるフィルム状の支持体層を含む電子部品接合用両面接着テープにおいて,発泡支持体層が400μmより厚くない厚みを有しそしてフィルム状の支持体層が40μmより厚くない厚みを有することを特徴とする,上記両面接着テープ。
【請求項2】
全体の厚みが500μmより厚くない,請求項1に記載の接着テープ。…」(【特許請求の範囲】)
「本発明は電子部品を接合するために特に用いられる黒色接着テープに関する。」(【0001】)
「用途分野は,コンピュータ,テレビジョン,ラップトップ,PDAs(携帯情報端末),携帯電話,デジタルカメラ等に必要とされるLCディスプレー(液晶データー表示装置,液晶ディスプレー)である。」(【0003】)
「本発明の課題は,電子部品の接合の分野における要求に良好に適合する接着テープを提供することである。」(【0017】)
「本発明の両面接着テープは補強フィルム(接着テープを安定化する支持体フィルム;以下,フィルム支持体ともフィルム支持体層とも称する)を備えることによって強化されている。フィルム支持体としてはポリエチレンテレフタレート(PET)よりなるフィルムを使用するのが有利である。該フィルム支持体層は2?36μm,特に8?15μm,中でも12μmの厚みを有しているのが有利である。…薄く,特に光不透過性で又は低光透過性の補強フィルム,特に灰色,無煙炭色又は黒色の支持体フィルムを使用することによって接着テープの全厚は,特に電子部品の貼り付けに使用するのに特に望まれている様に,従来技術に比較して著しく低減され得る。この場合,接合時に不均一な圧縮を許容するために,接着テープの十分な圧縮安定性を維持しなければならない。
この圧縮安定性要求のため,相応して使用した接着テープの場合には発泡支持体を省くことはできない。しかしながら発泡体の厚さを薄くすることは2つの欠点,即ち接着テープの安定性の低下及び光透過性の増加をもたらす。安定性の低下は本発明に従って前述の如き補強フィルムの使用によって相殺され又は場合によっては過大に相殺される。…」(【0034】?【0035】)
イ すなわち,引用文献2には,その記載を総合すると(特に【0034】参照),両表面にある接着剤層(粘着剤層),発泡支持体層(発泡体基材),当該発泡支持体層に貼り付けられたフィルム状支持体層(ラミネート層)を有する電子部品接合用の両面接着(粘着)テープに係る技術分野において,薄いテープ厚さを維持しつつ(例えば,【請求項2】には,全体の厚みが500μmよりも厚くないとの記載がある。),両面接着テープを強化・安定化するために設けられた上記フィルム状支持体層(なお,上記(1)で検討のとおり,フィルム状支持体層が設けられることの技術的意義は,引用発明のラミネート層と同じと解される。)の厚みを,「2?36μm,特に8?15μm,中でも12μm」に設定するとの技術が開示されている。すなわち,そのような技術は,本願の出願時における公知の技術事項であるということができる。

(3) さすれば,上記(1)で述べたように,引用発明のラミネート層は,両面粘着テープに寸法安定性や引張強さをさらに付与するという技術的意義を有するものであると解されるところ,引用発明の両面粘着テープの総厚さが100?300μmであることを考慮しつつ,この厚みの範囲内でラミネート層の厚みについての具体的数値範囲を設定しようとした当業者が,当該ラミネート層の設置と同様の技術的意義を有する引用文献2のフィルム状支持体層に着目し,そこに記載されている数値範囲を採用する程度のことは何ら困難でない。
そして,その採用にあたり,「2?36μm,特に8?15μm,中でも12μm」との引用文献2の記載に基づき,その範囲内で「4?25μm」を設定することは,単なる設計的事項にすぎない。特に,下限値の設定については,ラミネート層の厚みをテープの強度・安定化が担保できないような薄さとしないのが当然であるとの自明の課題のもと,テープに破断が生じない程度の厚さの範囲で下限値を4μmと設定したにすぎないといえる。

(4)ア 上記(3)の判断に関連して,請求人は,本願発明の両面粘着テープは,「再剥離性」(本願の明細書【0017】)に優れるという効果を奏するものであるのに対し,引用文献1及び2には再剥離性の点より所定の粘着剤層や補強層を選択するとの思想について記載も示唆もなく,被着体との良好な接着性を示すテープが記載されているにすぎないから,本願発明は引用発明から想到容易であるとはいえない旨主張する(意見書2?3頁など)。
そこで検討するに,なるほど,確かに本願の明細書によれば,本願発明は,粘着テープを被着部から剥がす際に生ずる,被着部への粘着剤の残存,粘着テープの破損などの問題を解決するものと一応いえそうである(【0008】,【0176】など)。
しかし,請求人の上記主張は,本願発明のテープの用途が,部品同士をいったん接合し且つその後被着部より引き剥されることを前提に使用されるものであり,そのような前提のもとで本願発明には再剥離性に優れるといった効果があると主張するものである。
他方,上記第2で認定のとおり,本願発明は,上述のような用途を発明特定事項として有するものではない。すなわち,本願発明は,被着部より引き剥されるといった用途に限定されるものとして解釈しなければならないとする理由はない。そうすると,請求人の主張は,特許請求の範囲の記載に基づくものでなく,その前提を欠くといわざるを得ない。
そして,本願発明は,本願の明細書からみて,上述の再剥離性のみならず,衝撃吸収性,段差追従性,防水性などといった被着体との良好な接着性を示すものであるといえるところ(【0059】,【0152】など),良好な接着性を示す防水性の両面粘着テープであるという点において,引用発明と何ら変わらない。
イ(ア) また,請求人は,意見書において,比較実験(比較例3?5)の結果に基づく主張をする。具体的には,各実施例と比較例3との対比から,補強層の厚みが本願発明の下限4μmよりも薄いとき(比較例3:2μm),再剥離性評価の点で比較例3はテープに破断が生じ,また,各実施例と比較例5との対比から,補強層の厚みが本願発明の上限25μmよりも厚いとき(比較例5:38μm),防水性評価の点で比較例5は防水性に劣る結果となるから,本願発明の補強層の厚みの数値限定(4?25μm)には,再剥離性と防水性の点で,範囲外のものに比して有利な効果を奏する旨主張する(意見書4?6頁)。
しかし,請求人の上記主張は,出願の後に補充した追加実験データの結果を踏まえてするものであるところ,このような本願発明の補強層厚みの数値限定による有利な効果の発揮は,本願の当初明細書において明らかにしていなかった事項であり(本願の当初明細書には,【0059】に,「…特に限定されないが,再剥離性,衝撃吸収性,段差追従性,止水性,加工性,シール性の点から,2?250μmが好ましく,好ましくは4?25μmである。」との記載があるにすぎない。),しかも本願の当初明細書に当業者において当該効果を認識できる程度の記載やこれを推論できる記載があるとは認められない(【0059】には,再剥離性や段差追従性・止水性の点で4?25μmが好適である旨の記載があるが,併せて「2?250μmが好ましく」との記載があり,この範囲は上記比較例3や比較例5を含むものである。)。
よって,上記実験結果を参酌することは許されず,これを踏まえた請求人の上記主張は採用できない。
(イ) 仮に,上記追加実験データの結果を参酌することが許されるとしても,上記下限値(4μm)の設定については,上記(3)で検討のとおり,当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎないといえる。
また上限値(25μm)の設定については,そもそも引用発明は,発泡体基材を特定の構成とすることで,凹凸形状や粗面を有する被着体に対しても好適に追従して水が入り込む隙間を生じさせない優れた密着性を実現するといった本願発明と同様の課題を解決するものであるところ(引用文献1の【0012】),当該発泡体基材に隣接して設けられるラミネート層が厚くなればなるほど,その剛性によって凹凸形状や粗面に対する追従性が損なわれるようになるのは,当業者に自明の技術的事項である。
さすれば,その追従性が損なわれない範囲でラミネート層の厚みの上限値を設定することは,当業者が容易に想到しうることであるといえる。
本願発明の補強層の厚さの数値限定による効果は,当業者が予測しうる程度のものである。

4 相違点2についての判断
上記1(2)で認定のとおり,引用発明は,高極性ビニルモノマーの割合,すなわち,カルボキシル基を有するモノマーと水酸基含有ビニルモノマーとから少なくとも構成されるものの割合の計が1.5?20質量%であると特定し,また,そのうち水酸基含有ビニルモノマーが0.01?1.0質量%であると特定するものであるところ,上記高極性ビニルモノマー中のカルボキシル基を有するモノマーについて,その割合をその範囲内で設定することは,当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。

5 小活
以上のとおり,本願発明は,引用文献1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

第5 むすび
したがって,本願発明は,本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明を主たる引用発明として,この引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
原査定の拒絶の理由は,妥当である。
そうすると,本願の他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-26 
結審通知日 2014-07-01 
審決日 2014-07-14 
出願番号 特願2010-127202(P2010-127202)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C09J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤村 茂実  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 田口 昌浩
須藤 康洋
発明の名称 両面粘着テープ  
代理人 後藤 幸久  
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