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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C12N 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 C12N 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C12N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N |
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管理番号 | 1291868 |
審判番号 | 不服2013-7103 |
総通号数 | 179 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-11-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-04-17 |
確定日 | 2014-09-10 |
事件の表示 | 特願2010-532817「インテグロン検出方法、環境中におけるインテグロン汚染検出方法、並びにプライマー対」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月15日国際公開、WO2010/041444〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、特許法第41条に基づく優先権を伴う平成21年10月7日(優先日 平成20年10月7日、特願2008-261167号)を国際出願日とする出願であって、平成24年12月20日付で手続補正がなされたが、平成25年1月15日付で拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月17日に審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。 第2 平成25年4月17日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成25年4月17日付の手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 上記補正により、補正前の平成24年12月20日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?4が補正され、そのうち請求項1は、補正前の 「【請求項1】クラス1?クラス4のインテグロンのうち、複数のクラスのインテグロンにそれぞれ存在する所定領域の配列を同時に増幅しうる一又は二以上のプライマー対を用いて核酸増幅を行い、環境試料からインテグロンを検出する手順を含む、環境中におけるインテグロンの汚染状況を検出するインテグロン汚染検出方法。」から、 「【請求項1】クラス1?クラス4のうちの複数のクラスのインテグロンの、インテグラーゼコード領域における共通配列に基づいて設計された一又は二以上のプライマー対を用いて核酸増幅を行い、環境試料からインテグロンを検出し、環境中におけるインテグロンの汚染状況を検出することにより、人間の生活領域への多剤耐性菌の拡散リスクを検出するインテグロン拡散リスク検出方法。」へと補正された。 2.目的要件について 上記請求項1に係る補正のうち、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「環境中におけるインテグロンの汚染状況を検出するインテグロン汚染検出方法」を、「環境中におけるインテグロンの汚染状況を検出することにより、人間の生活領域への多剤耐性菌の拡散リスクを検出するインテグロン拡散リスク検出方法」とする補正は、発明を、補正前の「インテグロン汚染検出方法」から補正後の「インテグロン拡散リスク検出方法」へと変更するものであるから、この補正は特許請求の範囲を変更するものであり、特許請求の範囲に記載された事項を減縮するものではない。 そして、このような特許請求の範囲を変更しようとする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、また、請求項の削除、誤記の訂正、又は明りょうでない記載の釈明の何れかを目的とするものでもない。 よってこの補正は、同法第17条の2第5項の規定に違反するものである。 3.独立特許要件について また仮に、上記2.に記載した補正前の請求項1の「環境中におけるインテグロンの汚染状況を検出するインテグロン汚染検出方法」を、「環境中におけるインテグロンの汚染状況を検出することにより、人間の生活領域への多剤耐性菌の拡散リスクを検出するインテグロン拡散リスク検出方法」とする補正が、特許請求の範囲を変更するものではなく、上記1.の請求項1についての補正が特許請求の範囲の限定的減縮であるとした場合には、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当することになるので、以下念のため、本願補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明1」という。)が、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下検討する。 3-1.引用例の記載事項 (1)引用例1 原査定の拒絶の理由で引用文献3として引用された本願優先日前の2001年に頒布された刊行物であるFEMS Microbiol.Lett.(2001)Vol.195,p.59-65(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 なお、翻訳は当審によるものであって、下線は当審が付与したものである。以下、同様である。 (1-a)「インテグロンは、抗生物質耐性を与える遺伝子の獲得及び発現において役割を果たすことで知られている遺伝的要素である。このような獲得はインテグロンがエンコードされるインテグラーゼによって媒介され、このインテグラーゼが遺伝子カセットの一部の遺伝子を捕獲する。これまでに知られていない抗生物質の曝露下の環境においてインテグロンが生じるか否かを検証するために、インテグラーゼ遺伝子及び遺伝子カセット組換え部位の保存された領域に対するPCRプライマーを設計した。4つの環境中のDNA試料から生成されたアンプリコンは、抗生物質耐性で感染性のバクテリアに見いだされるインテグロンに特有の性質を含んでいた。これらクローンにおけるインテグラーゼ遺伝子の配列多様性は、それらをインテグロンの新しい3つのクラスに分類するのに十分であった。それらは抗生物質の使用とは関連しない環境に由来することから、インテグロンは以前に観察されたものよりも広く行き渡っているようである。」(59頁要約) (1-b)「PCRにより環境中のDNAからインテグロンを回収するために、2つのプライマーが設計された。HS298はInt1-4のC末端から14-22アミノ酸に位置する保存されたドメインのコード領域に特異的である(図3)[17]。2番目のプライマーであるHS286は、59-be部位の左方向の単純部位の内側に結合するように設計された。」(61頁左欄下から6?1行目) (1-c)「HS286及びHS298を使用して、4つの場所、Pulgamurtie、Balmain及びHomebushの2箇所からの環境中のDNAを、PCRによるインテグロンの存在を調べるために採取した。4つの場所全てから1000塩基対を超える産物が得られた。」(61頁右欄7?11行目) (1-d)「ここで示された技術は、捕獲された遺伝子そのものだけでなく、遺伝子カセットの場所に特異的な捕獲に関与するものとして知られている遺伝的システムの大半を回収することができる。それは、微生物界におけるこの遺伝子捕獲システムの流行を調査するための新規な方法である。我々は現在、ここで採取されたものよりも広範囲の環境型を採取するのにこの技術を使っている。」(64頁右欄下から11?7行目) そして、63頁の図3には、クラス1?7のインテグロンのインテグラーゼのアミノ酸配列のアラインメントが示されている。 上記引用例1記載事項(1-a)?(1-c)の下線部分より、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「インテグラーゼ遺伝子Int1-4の保存された領域及び遺伝子カセット組換え部位の保存された領域に対するPCRプライマー対を用いて核酸増幅を行い、環境試料からインテグロンを検出する方法。」 (2)引用例2 本願優先日前の2007年に頒布された刊行物である日本細菌学雑誌(2007)Vol.62,No.1,p.149(P2-74)(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。 (2-a)「近年,薬剤耐性菌の広がりが感染性治療を困難なものとしており,大きな問題となっている。薬剤耐性遺伝子は,プラスミドやトランスポゾン,インテグロンのような様々な可動性遺伝因子を介して様々な宿主に伝播している。」(【目的】の1?4行目) (2-b)「広島市安佐動物公園の飼育動物から2006年に様々な菌株を分離し,薬剤耐性遺伝子の解析に用いた。耐性遺伝子の検出は,クラス1とクラス2インテグロンに対するプライマーと5種類のESBLs(TEM,CMY,OXA,CTX-M,SHV)に対するプライマーを用いるPCR法に基づいて行った。」(【材料・方法】の1?5行目) (2-c)「今回解析を行なったほとんどの株で薬剤耐性遺伝子が検出され,動物園の飼育動物にも薬剤耐性菌が広がっていることが明らかになった。」(【結果と考察】の5?7行目) (3)引用例3 本願優先日前の2008年2月に頒布された刊行物である日本細菌学雑誌,Vol.63,No.1(2008)p.107(1-G-5/P303)(以下、「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。 (3-a)「薬剤耐性細菌の出現は感染症の予防や治療を困難にしてきた。薬剤耐性遺伝子は可動性遺伝因子上に存在することが多く,細菌間に伝播することで細菌の多剤耐性化を促進させると考えられている。」(【目的】の1?4行目) (3-b)「そこで本研究では,食品衛生的観点から食肉より細菌を分離し、分離株の薬剤耐性化機構を調べた。」(【目的】の7?8行目) (3-c)「PCR法には,インテグロン(クラス1,クラス2),基質拡張型β-ラクタマーゼ(ESBLs)遺伝子(CTX-M,CMY,OXA,SHV,TEM),キノロン剤耐性遺伝子(qnr,aac(6’)-Ib-cr)のプライマーを用いた。」(【方法】の3?6行目) (3-d)「すべての種類の肉から薬剤耐性細菌が検出されたことから,食肉によって薬剤耐性菌および薬剤耐性遺伝子が伝播している可能性が強く示唆された。」(【結果・考察】の6?8行目) 3-2.対比 本願補正発明1と引用発明を対比すると、引用発明における「インテグラーゼ遺伝子Int1-4の保存された領域に対するPCRプライマー」は、本願補正発明1における「クラス1?クラス4のうちの複数のクラスのインテグロンの、インテグラーゼコード領域における共通配列に基づいて設計された一又は二以上のプライマー」に相当し、両者は「クラス1?クラス4のうちの複数のクラスのインテグロンの、インテグラーゼコード領域における共通配列に基づいて設計された一又は二以上のプライマーを用いて核酸増幅を行い、環境試料からインテグロンを検出する」ことを含む発明である点で一致するが、以下の2点で相違する。 相違点1:本願補正発明1では、核酸増幅に用いるプライマー対の両方が「クラス1?クラス4のうちの複数のクラスのインテグロンの、インテグラーゼコード領域における共通配列に基づいて設計されたプライマー」であるのに対して、引用発明では、プライマー対の一方のプライマーが「遺伝子カセット組換え部位の保存された領域に対するプライマー」である点。 相違点2:本願補正発明1は、「環境試料からインテグロンを検出し、環境中におけるインテグロンの汚染状況を検出することにより、人間の生活領域への多剤耐性菌の拡散リスクを検出するインテグロン拡散リスク検出方法」の発明であるのに対して、引用発明は「環境試料からインテグロンを検出する方法」の発明である点。 3-3.当審の判断 相違点1について: 上記引用例1記載事項(1-a)には「インテグラーゼ遺伝子の配列多様性は、それらをインテグロンの新しい3つのクラスに分類するのに十分であった。それらは抗生物質の使用とは関連しない環境に由来することから、インテグロンは以前に観察されたものよりも広く行き渡っているようである。」と記載されており、しかも、引用例1の図3には、クラス1?4のインテグラーゼのアミノ酸配列を含むアラインメントが示されている。 このように、引用例1にはインテグラーゼ遺伝子の配列多様性を基にインテグロンのクラスを決定できることが記載されているのであるから、引用発明において、インテグラーゼ遺伝子Int1-4に着目し、PCRのプライマー対のもう一つのプライマーも、引用例1の図3に示されたクラス1?クラス4のうちの複数のクラスのインテグロンのインテグラーゼコード領域における共通配列に基づいて設計することは、当業者であれば容易になし得ることである。 相違点2について: 上記引用例1記載事項(1-d)には、「それは、微生物界におけるこの遺伝子捕獲システムの流行を調査するための新規な方法である。我々は現在、ここで採取されたものよりも広範囲の環境型を採取するのにこの技術を使っている。」と記載されており、PCRによるインテグロンの検出を広く環境全般において適用することが記載され、さらに上記引用例1記載事項(1-a)にも記載のように、インテグロンが「抗生物質耐性を与える遺伝子の獲得及び発現において役割を果たすことで知られている遺伝的要素である」ことは本願優先日前の技術常識である。 そうすると、引用例1には、環境中のインテグロンを検出することで微生物界における多剤耐性遺伝子捕獲システムの流行を調査する方法が記載されているといえ、これは「環境中におけるインテグロンの汚染状況を検出することにより、人間の生活領域への多剤耐性菌の拡散リスクを検出するインテグロン拡散リスク検出方法」に他ならない。 よって、上記相違点は実質的な相違点ではない。 また、仮に上記相違点2が、実質的な相違であるとした場合であっても、上記引用例2記載事項(2-a)?(2-c)及び上記引用例3記載事項(3-a)?(3-d)に記載されているように、本願優先日前において、様々な環境中からの単離された微生物において複数のクラスにわたるインテグロン等の可動性遺伝因子を検出することにより、多剤耐性菌及び多剤耐性遺伝子の伝搬状況を検証することは、当業者にとって既に周知の課題であったから、引用発明において、「環境中におけるインテグロンの汚染状況を検出することにより、人間の生活領域への多剤耐性菌の拡散リスクを検出する」ことは、当業者であれば容易に想到し得ることである。 そして、本願補正発明において奏せられる効果についても、引用例1?3の記載から当業者の予測し得ない格別なものとも認められない。 したがって、本願補正発明1は引用例1、又は引用例1?3の記載から当業者が容易になし得るものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものではない。 4.むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 さらに仮に、本件補正が、特許法第17条の2第5項の規定に違反しないとした場合であっても、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 平成25年4月17日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、平成24年12月20日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】クラス1?クラス4のインテグロンのうち、複数のクラスのインテグロンにそれぞれ存在する所定領域の配列を同時に増幅しうる一又は二以上のプライマー対を用いて核酸増幅を行い、環境試料からインテグロンを検出する手順を含む、環境中におけるインテグロンの汚染状況を検出するインテグロン汚染検出方法。」 1.特許法第29条第1項第3号 本願発明1と引用発明を対比すると、引用発明における「インテグラーゼ遺伝子Int1-4の保存された領域及び遺伝子カセット組換え部位の保存された領域に対するPCRプライマー対」は、本願補正発明1における「クラス1?クラス4のインテグロンのうち、複数のクラスのインテグロンにそれぞれ存在する所定領域の配列を同時に増幅しうる一又は二以上のプライマー対」に相当し、両者は「クラス1?クラス4のインテグロンのうち、複数のクラスのインテグロンにそれぞれ存在する所定領域の配列を同時に増幅しうる一又は二以上のプライマー対を用いて核酸増幅を行い、環境試料からインテグロンを検出する方法」である点で一致するが、以下の点で一応相違する。 相違点3:本願発明1は、「環境試料からインテグロンを検出する手順を含む、環境中におけるインテグロンの汚染状況を検出するインテグロン汚染検出方法」であるが、引用発明は「環境試料からインテグロンを検出する方法」である点。 上記相違点について検討するに、引用例1には、環境中のインテグロンを検出することで微生物界における多剤耐性遺伝子捕獲システムの流行を調査する方法が記載されていることから、これは「環境中におけるインテグロンの汚染状況を検出するインテグロン汚染検出方法」に他ならない。よって、上記相違点3は、実質的な相違点ではない。 したがって、本願発明1は引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-07-17 |
結審通知日 | 2014-07-18 |
審決日 | 2014-07-29 |
出願番号 | 特願2010-532817(P2010-532817) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(C12N)
P 1 8・ 57- Z (C12N) P 1 8・ 113- Z (C12N) P 1 8・ 121- Z (C12N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 伊藤 佑一 |
特許庁審判長 |
鈴木 恵理子 |
特許庁審判官 |
高堀 栄二 三原 健治 |
発明の名称 | インテグロン検出方法、環境中におけるインテグロン汚染検出方法、並びにプライマー対 |
代理人 | 丹羽 俊輔 |