• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1291933
審判番号 不服2013-7950  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-30 
確定日 2014-09-11 
事件の表示 特願2011- 53716「画像表示装置,映像信号供給装置,表示方法および表示プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 8月11日出願公開,特開2011-154382〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
平成13年 1月10日 :原出願(特願2001-552184号)
(優先権 平成12年1月12日,同年2月22日)
平成23年 3月11日 :分割出願(本件出願)
平成24年 9月14日付け:拒絶理由通知(同年同月25日発送)
平成24年11月19日 :意見書
平成24年11月19日 :手続補正書
平成25年 1月23日付け:拒絶査定(同年同月29日送達)
平成25年 4月30日 :手続補正書(以下「本件補正」という。)
平成25年 4月30日 :審判請求

第2 補正却下の決定
[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲の請求項7の記載は,以下のとおりである。
「【請求項7】
複数のデータ処理装置からそれぞれ供給された複数の映像を表示手段に対して同時に表示させる表示ステップと,
上記表示手段の表示に対応したユーザーからの位置の指定を入力デバイスで受け付ける入力ステップと,
上記入力ステップによって指定された上記表示手段上の表示に対応する位置に基づいて,上記表示手段に表示される上記複数の映像の境界を移動させるよう制御する制御ステップと,
上記入力デバイスから供給された制御信号を上記複数のデータ処理装置に出力し,上記入力ステップにおいて指定された上記表示手段上の表示に対応する位置が上記表示手段に表示されている上記複数の映像の境界を跨ぐか否かの判定結果に基づいて,上記入力デバイスからの制御信号の出力先を,アクティブ状態となっている一の上記データ処理装置から他の上記データ処理装置に切り替えることにより,アクティブな状態の上記データ処理装置を上記一のデータ処理装置から上記他のデータ処理装置に変更する出力制御ステップと
からなる表示方法。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項5は,以下のとおりである。下線は補正箇所を示す。なお,本件補正により請求項4及び5が削除されたため,本件補正後の請求項5が,本件補正前の請求項7に対応する。
「【請求項5】 複数のデータ処理装置からそれぞれ供給された複数の映像を表示手段に対して同時に表示させ,さらに,上記複数のデータ処理装置の動作を概略的に示す情報を上記表示手段に表示させる表示ステップと,
上記表示手段の表示に対応したユーザーからの位置の指定を入力デバイスで受け付ける入力ステップと,
上記入力ステップによって指定された上記表示手段上の表示に対応する位置に基づいて,上記表示手段に表示される上記複数の映像の境界を移動させるよう制御する制御ステップと,
上記入力デバイスから供給された制御信号を上記複数のデータ処理装置に出力し,上記入力ステップにおいて指定された上記表示手段上の表示に対応する位置が上記表示手段に表示されている上記複数の映像の境界を跨ぐか否かの判定結果に基づいて,上記入力デバイスからの制御信号の出力先を,アクティブ状態となっている一の上記データ処理装置から他の上記データ処理装置に切り替えることにより,アクティブな状態の上記データ処理装置を上記一のデータ処理装置から上記他のデータ処理装置に変更する出力制御ステップと
からなる表示方法。」

(3) 本件補正の目的
本件補正は,本件補正前の請求項7に係る発明(以下「本願発明」という。)を特定するために必要な事項である「複数のデータ処理装置からそれぞれ供給された複数の映像を表示手段に対して同時に表示させる表示ステップ」を,「複数のデータ処理装置からそれぞれ供給された複数の映像を表示手段に対して同時に表示させ,さらに,上記複数のデータ処理装置の動作を概略的に示す情報を上記表示手段に表示させる表示ステップ」に減縮して,本件補正後の請求項5に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)とする補正を含む。
本件補正は,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで,本件補正後の特許請求の範囲の請求項5に係る発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて,以下に検討する。

2 独立特許要件
(1) 引用例に記載の事項
本件出願の最も早い優先日(以下,単に「優先日」という。)前に頒布された刊行物である特開平11-167479号公報(発明の名称:「多入力モニタ装置」,出願人:「株式会社日立製作所」,公開日:平成11年(1999)6月22日,以下「引用例」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,表示装置に関し,特に,パーソナルコンピュータ(PC),ワークステーション(WS)などの情報処理装置に接続されるモニタ装置に関する。」

イ 「【0009】図1に,本発明の一実施形態であるモニタ装置の使用例を示す。
【図1】

【0010】図1において,モニタ装置1は,液晶モニタなどであり,第1および第2の情報処理装置(以下,PCという)2および3に接続され,これらからの表示データおよび通信データを受け付ける第1および第2のインタフェース部と,前記表示データを表示画面に表示する表示部とを備える。第1PC2および第2PC3は,表示データおよび通信データを生成し,生成した表示データおよび通信データを転送する。
【0011】また,第1PC2には,ユーザからの指示を受け付けるユーザインタフェースのキーボード4およびマウス5が接続される。キーボード4およびマウス5は,第1PC2における指示受け付けるとともに,第2PC3における指示も受けつける。
【0012】図1において,モニタ装置1には,第1PC2から転送される表示データおよび通信データに基づく表示画面上に,第2PC3から転送される表示データおよび通信データに基づく表示をウィンドウ表示する。」

ウ 「【0013】図2に,本実施の形態におけるモニタ装置の画面の表示例を示す。
【図2】

【0014】図2において,表示画面6は,第1PC2から転送された表示データおよび通信データに基づく表示画面であり,例えば,1024×768ドットの解像度とする。表示画面7は,第2PC3から転送された表示データおよび通信データに基づく表示画面であり,最初は第2PCにより指示された表示解像度,例えば,640×480ドットで表示しているものとする。また,図2において,8はウィンドウ表示左上端の垂直方向座標,9はウィンドウ表示の垂直方向の大きさ,10はウィンドウ表示左上端の水平方向座標,11はウィンドウ表示の水平方向の大きさをそれぞれ示す。上述した解像度の場合,ウィンドウ表示の水平方向の大きさ11と,垂直方向の大きさ9とは,最初は各々640,480ドットである。マウスカーソル12は,第1PC2のマウスによりコントロールされる。例えば,マウスカーソル12によって表示画面7のウィンドウ位置が変更された場合は,ウィンドウ表示左上端の垂直方向座標8および水平方向座標10が変更され,第2PC表示画面7の位置が変更される。ウィンドウサイズが変更された場合は,垂直方向の大きさ9および水平方向の大きさ11が変更され,第2PC表示画面7はそれに従った表示となる。ファイル等を移動,コピーする場合は,マウスカーソル12によってファイルを画面上で移動することにより,第1PC2から第2PC3へ,あるいは第2PC3から第1PC2へとファイルのデータが転送される。」

エ 「【0015】図3に,本発明の実施の形態におけるモニタ装置のブロック図を示す。
【図3】

【0016】図3において,第1PCコネクタ13は,第1のPCにおけるモニタ接続用のコネクタであり,第1表示データ14は第1のPCから転送される表示データであり,第1通信データ15は第1のPCとモニタ装置間で送受信される通信データである。第2PCコネクタ16は,第2のPCにおけるモニタ接続用のコネクタであり,第2表示データ17は第2のPCから転送される表示データであり,第2通信データ18は第2のPCとモニタ装置間で送受信される通信データである。第1モニタコネクタ19は,モニタ装置1が備えるモニタ接続用のコネクタであり,第2モニタコネクタ20は,第1モニタコネクタ19と同様のインタフェースを備える。第1PC2と,第2PC3とは,同様のインタフェースであるモニタ接続用の第1PCコネクタ13と,第2PCコネクタ16とを各々備える。第1PCコネクタ13および第1モニタコネクタ19は,第1表示データ14および第1通信データ15を送受信するインタフェースである。第2PCコネクタ16および第2モニタコネクタ20は,第2表示データ17および第2通信データ18をを送受信するインタフェースである。第1表示データ14および第2表示データ17は,カラー表示のための表示データであり,ここでは,小電圧差動信号(LVDS)方式で送られてくる各色8ビットのカラーデータとする。また,第1通信データ15および第2通信データ18は,各PCからの制御情報や,キーボード,マウス等の入力手段の指示情報をやり取りする制御データであり,ここでは,USB(Universal Serial Bus)と呼ばれるシリアル通信とする。」

オ 「【0017】次に,モニタ装置1の内部構成を説明する。図4に,モニタ装置1の内部構成の一実施の形態である。
【図4】

【0018】図4において,通信制御部21は,第1PC2と第2PC3との通信データの制御を行う。第2解像度信号22は,第2PC3についてのウィンドウ画面の解像度を示す。表示位置指定信号23は,第2PC3のウィンドウ画面について表示画面6上の位置を示す。表示制御部24は,第1PC2と第2PC3との表示画面の制御を行う。液晶表示データ25は,液晶ディスプレイ26に表示させるためのデータである。通信制御部21は,第1PC2と第2PC3間のファイルのやり取りを,第1通信データ15および第2通信データ18を介して行う。また,通信制御部21は,第1PC2と第2PC3との表示画面を重ね合わせ表示する場合に,ウィンドウの位置情報を,第1通信データ15を介して受け取り,第2PC3の表示を重ね合わせする大きさ(解像度)を示す第2解像度信号22と,重ね合わせする位置を示す表示位置信号23とを表示制御部24へ出力する。第1PC2から送られてくるウィンドウの位置情報及び解像度情報は,ウィンドウの左上点の座標情報,垂直方向ライン数,水平方向ドット数により示され,各々シリアルデータで転送される。また,通信制御部21が出力する表示位置信号23は,第1PC2の画面を表示する場合に“0”,第2PC3の画面を表示する場合に“1”となる1ビットの信号を指示する。また,解像度信号22は横方向ドット数を10ビット,縦方向ドット数を10ビットで表す信号とする。
【0019】また,本実施の形態では,第1PC2に接続されているマウスで受け付けた指示を,重ね合わせ表示した第2PC3の表示画面上でも有効にするため,モニタ装置1は,マウス情報を,第1通信データ15を介して受け取り,第2通信データ18を介して第2PC3へ出力する。表示制御部24は,第1PC2の表示データ14に,第2PC3の表示データ17を,表示位置信号23に従って重ね合わせ表示をするように処理をし,液晶表示データ25として出力する。マウスで受け付けた指示により,第1通信データ15を介して,重ね合わせ表示のウィンドウの大きさが変更された場合は,通信制御部21は,第1通信データ15から第2解像度信号を抽出し,第2解像度信号22介して解像度情報が送り,表示制御部24が解像度変換を行う。液晶ディスプレイ26は,液晶表示データ25に従って表示を行う。液晶ディスプレイ26の解像度は,ここでは,1024×768ドットとし,インタフェースは第1PC2および第2PC3とも同様に,LVDS信号とする。」

カ 「【0027】次に,通信制御部21の構成を説明する。図7に,図4に記載した通信制御部21の内部構成ブロック図を示す。
【図7】

【0028】図7において,通信制御部21は,第1通信データ15または第2通信データ17から,ウィンドウ表示情報45,ファイル移動指示情報46,第1ファイルデータ47,第1キーボード情報48,第1マウス情報49,第2解像度情報50および第2ファイルデータ51の各々を識別する通信データ識別部52と,ウィンドウ情報を生成するウィンドウ情報生成部53とを備える。なお,ウィンドウ表示情報45,ファイル移動指示情報46,第1ファイルデータ47,第1キーボード情報48,第1マウス情報49,第2解像度情報50および第2ファイルデータ51は,第1PC通信データ15及び第2PC通信データ17に含まれるデータの種類を示すものであり,信号線を示すものではない。これら種類は第1通信データ15または第2通信データ17に,識別子を付加することによって区別し,通信データ識別部52によって識別する。ウィンドウ表示情報45は,第1PC2で表示する第2PC3のウィンドウ表示の大きさと表示位置を表す情報を示す。ファイル移動指示情報46は,ファイルの移動またはコピーする場合の,各々のPCへの書き込み,読み出しの指示やファイル名の情報を示す。第1ファイルデータ47は,第1PC2から第2PC3へファイルがコピーまたは移動される場合のデータを示す。第1キーボード情報48は,第1PC2に接続されたキーボード操作の情報を示し,第1マウス情報49は,第1PC2に接続されたマウス操作の情報を示す。第2解像度情報50は第2PC3の表示解像度を示す情報であり,第2ファイルデータ51は,第2PC3から第1PC2へファイルがコピーまたは移動される場合のデータを示している。通信データ識別部52は,第1通信データ15または第2通信データ17の識別子から,情報の伝達先を判断し,この伝達先に情報を伝送する。例えば,ウィンドウ表示情報45はウィンドウ情報生成部53へ伝送され,ファイル移動指示情報46,第1ファイルデータ47,第1キーボード情報48および第1マウス情報49は,第2通信データ17として第2PC3へ伝送され,第2解像度情報50および第2ファイルデータ51は第1通信データ15として第1PC2へ伝送される。ウィンドウ情報生成部53は,ウィンドウ表示情報45から,第2解像度信号22および表示位置信号23を生成する。」

キ 「【0029】つぎに,情報処理装置の内部構成について説明する。図8に,第1PC2の内部構成のブロック図を示す。
【図8】

【0030】図8において,第1PC2は,第1CPU54と,第1記憶部55と,第1PC通信制御部65と,それらを接続させるための第1バス63とを備える。また,56はウィンドウ表示情報バスデータ,57はファイル移動指示情報第1バスデータ,58は第2解像度情報第1バスデータ,59は第1ファイル第1バスデータ,60は第2ファイル第1バスデータ,61は第1キーボード情報第1バスデータ,62は第1マウス情報第1バスデータ,64は第1バスデータであり,各々データの種類を示している。第1CPU54および第1記憶部55と第1バス63との間は,バスインタフェースであり,ウィンドウ表示情報バスデータ56,ファイル移動指示情報第1バスデータ57,第2解像度情報第1バスデータ58,第1キーボード情報第1バスデータ61および第1マウス情報第1バスデータ62が伝送される。第1ファイル第1バスデータ59および第2ファイル第1バスデータ60も同様に,第1記憶部55と第1バス63との間で伝送される。また,第1バス63と第1PC通信制御部65の間もバスインタフェースにより接続されている。
【0031】第1CPU54は,第2PC3の表示をウィンドウ表示するときの大きさおよび表示位置を示す情報であるウィンドウ表示情報バスデータ56を出力する。解像度の初期値は任意に設定しておいても良いし,キーボード4からユーザが設定することも可能である。ウィンドウの大きさや表示位置を変更した場合は,その都度,変更後の情報をウィンドウ表示情報バスデータ56として出力する。また,第1PC2のファイルを第2PC3にコピーまたは移動したいときは,キーボード4もしくはマウス5からのユーザの指示に従って,第1CPU54は,第1記憶部55へのファイル読み出し指示,第2PC3へのファイル書き込み指示,ファイル名等の情報をファイル移動指示情報第1バスデータ57として第1記憶部55および第1PC通信制御部65へ出力し,第1記憶部55は,それに従ったファイルのデータを第1ファイル第1バスデータ59として出力する。逆に,第2PC3のファイルを第1PC2にコピーまたは移動したいときは,キーボード4,マウス5からのユーザの指示に従って,第1記憶部55へのファイル書き込み指示,第2PC3へのファイル読み出し指示,ファイル名等の情報をファイル移動指示情報第1バスデータ57として第1記憶部55および第1PC通信制御部65へ出力する。第1記憶部55は,第2PC3からのファイルデータである第2ファイル第1バスデータ60を受け取る。キーボード4またはマウス5からの指示情報はキーボード情報第1バスデータ61,マウス情報第1バスデータ62を介して第1CPU54に送られる。上記ファイルのコピー,移動等も,キーボード4もしくはマウス5から指示されることになる。
【0032】第1PC通信制御部63は,第1バスデータ64から入力されるデータであるウィンドウ表示情報バスデータ56,ファイル移動指示情報第1バスデータ57,第1ファイル第1バスデータ59,キーボード情報第1バスデータ61またはマウス情報第1バスデータ62を,各々識別子のついたシリアルデータであるウィンドウ表示情報45,ファイル移動指示情報46,第1ファイルデータ47,第1キーボード情報48または第1マウス情報49に変換し,第1通信データ15として出力する。また,第1PC通信制御部63は,第1通信データ15から入力されるデータである第2解像度情報50または第2ファイルデータ51を,各々の識別子から第2PC3の解像度情報か,ファイルデータかを識別し,第2解像度情報第1バスデータ58または第2ファイル第1バスデータ60に変換し,第1バスデータ64,第1バス63を介して各々第1CPU54および第1記憶部55に出力する。」

ク 「【0039】図2において,第2PC表示画面7は,第1PC表示画面6上にウィンドウ表示されていることを示している。表示位置は第2PC表示画面左上端垂直方向座標8と,水平方向座標10によって決定され,大きさは第2PC表示画面垂直方向大きさ9と,水平方向大きさ11とによって決定される。どちらも第1PC2によって制御される。マウスカーソル12は,第1PC2に接続されたマウス5のカーソルであり,第1PC表示画面上6のアイコンの操作はもちろん,第2PC表示画面7の移動,大きさの変更等のウィンドウ操作,第2PC表示画面7上のアイコンの操作も可能とし,マウスカーソル12でファイルアイコンをクリックしながら,第1PC画面6上のファイルをウィンドウ内の第2PC画面7上に移動したり,第2PC画面7上のファイルをウィンドウ外の第1PC画面6上に移動することにより,第1PC2と第2PC3間のファイルのやり取りが可能となる。」

ケ 「【0050】また,図8に示す,第1キーボード情報第1バスデータ61または第1マウス情報第1バスデータ62は,第1バス63および第1バスデータ64を介して第1PC通信制御部65に入力される。第1PC通信制御部65は,各々にキーボード情報,マウス情報であることを示す識別子を付加したシリアルデータである第1キーボード情報47または第1マウス情報48に変換し,第1通信データ15を介して出力する。これらの情報は,キーボード4またはマウス5で受け付けた指示を,第1PC2の表示画面内にウィンドウ表示される第2PC3の表示画面上でも有効とするためのものである。」

コ 「【0066】次に,第2PC3から第1PC2へファイルを移動する場合について説明する。
【0067】図2において,第2表示画面7内の移動したいファイルのアイコンを,マウスカーソル12でクリックしながら第1表示画面6内へ移動させる。
【0068】図8でに示すマウス5の動きは,第1マウス情報第1バスデータ62および第1バス63を介して第1CPU54へ伝送される。ファイルの移動を認識した第1CPU54は,ファイルの第1記憶部67の書き込み,第2PC3の読み出し,ファイル名を指示するファイル移動指示情報第1バスデータ57として,第1バス63を介して第1記憶部55へ出力する。また,同時に第1バス63および第1バスデータ64を介してファイル移動指示情報第1バスデータ57を第1PC通信制御部65へ出力する。第1記憶部55は,書き込みの指示を受け,第2ファイル第1バスデータ60を待つ。第1PC通信制御部65は,ファイル移動指示情報第1バスデータ57を,ファイル移動情報であることを示す識別子を付加したパラレルデータであるファイル移動指示情報46に変換し,第1通信データ15として出力する。
【0069】図7に示すモニタ装置の通信データ識別部52は,第1通信データ15として送られてくるファイル移動指示情報46を,識別子からファイル移動情報であることを認識し,送り先を第2PC3とする第2通信データ17として出力する。
【0070】図9に示す第2PC通信制御部77では,第2通信データ17として送られてくるファイル移動指示情報46を,識別子からファイル移動情報であることを認識し,第1PC2へファイルデータを送ることを第2CPU66に知らせるためのファイル移動指示情報第2バスデータ70に変換し,第2バスデータ76および第2バス75を介して,第2CPU66へ出力する。
【0071】第2CPU66は,ファイル移動指示情報第2バスデータ70から,第2記憶部67から指示されたファイルを第2ファイル第2バスデータ73として読み出すための第2ファイル移動指示情報第2バスデータ69を,第2バス75を介して,第2記憶部67に出力する。
【0072】第2記憶部67は,第2ファイル移動指示情報第2バスデータ69に従って,指示されたファイルを読み出し,第2ファイル第2バスデータ73として,第2バス75および第2バスデータ76を介して,第2PC通信制御部77へ出力する。
【0073】第2PC通信制御部77は,第2ファイル第2バスデータ73を,ファイルデータであることを示す識別子を付加したパラレルデータである第2ファイルデータ51に変換し,第2通信データ17として出力する。
【0074】図7に示すモニタ装置の通信データ識別部52は,第2通信データ17として送られてくる第2ファイルデータ51を,識別子からファイルデータであることを認識し,送り先を第1PC2とする第1通信データ15として出力する。
【0075】図8に示す第1PC通信制御部65は,第1通信データ15として送られてくる第2ファイルデータ51を,識別子からファイルデータであることを認識し,第2ファイル第1バスデータ60に変換し,第1バスデータ64および第1バス63を介して,第1記憶部55へ出力する。
【0076】第1記憶部55は,先に説明したファイル移動指示情報第1バスデータ57に従って,第2ファイル第1バスデータ60を書き込みむ。このような処理により,第2PC3から第1PC2へのファイル移動が完了する。」


サ 「【0077】本実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すれば,以下のとおりである。
【0078】第2PCの表示画面を第1PCの表示画面上にウィンドウ表示するための制御部を,モニタ装置に設けたことにより,携帯性には優れているが,表示画面が小さいノートPCのような機器を,大画面のモニタ装置に簡単に接続させることができ,その表示が可能となる。また,第1PCに接続したキーボードや,マウス等の入力手段の通信データや,PC間のファイルのやり取り等の通信データを制御するための制御部を設けたことにより,第1PCのキーボード,マウス等の入力手段の通信データが,第2PCでも有効となり,ウィンドウ表示した画面上で,キーボード,マウス等を使って,第1PCと第2PC間のファイル転送を容易に行うことが可能となる。
【0079】また,第3の情報処理装置をモニタ装置に接続させる場合には,上述した構成と同様に,モニタ装置に第3モニタコネクタを設け,各情報処理装置間を通信データが送受信できるように,通信制御部で制御することにより,第3の情報処理装置における表示画面をモニタ装置にウィンドウ表示させることができる。この場合,第1PCにおいて,第2および第3のPCにおけるウィンドウ表示のコントロールを行わせるようにできる。本実施の形態によれば,マスタとなる情報処理装置を1台設けておくことにより,他の情報処理装置における表示画面の制御を行うことができる。
【0080】また,上述した第1および第2の情報処理装置において,上述した通信制御部における機能をアプリケーションソフトウエアにより実現してもよい。
【0081】
【発明の効果】本発明によれば,複数の情報処理装置を接続させることができる多入力モニタ装置を実現できる。また,モニタ装置において,複数の情報処理装置間のデータ転送を制御することができる。」

(2) 引用発明
「 モニタ装置1は,第1CPUを具備する第1PC2から転送される表示データおよび通信データに基づく表示画面6上に,第2CPUを具備する第2PC3から転送される表示データおよび通信データに基づく表示画面7をウィンドウ表示し,
キーボード4およびマウス5は,第1PC2における指示を受け付けるとともに,第2PC3における指示も受けつけ,キーボード4またはマウス5からの指示情報は第1キーボード情報第1バスデータ61,第1マウス情報第1バスデータ62を介して第1CPU54に送られ,キーボード4またはマウス5で受け付けた指示を,第1PC2の表示画面内にウィンドウ表示される第2PC3の表示画面上でも有効とするため,第1キーボード情報48および第1マウス情報49は,第2通信データ17として第2PC3へ伝送され,マウスカーソル12は,第1PC2に接続されたマウス5のカーソルであり,第1PC表示画面上6のアイコンの操作はもちろん,第2PC表示画面7上のアイコンの操作も可能とし,
マウスカーソル12によって表示画面7のウィンドウ位置が変更された場合は,ウィンドウ表示左上端の垂直方向座標8および水平方向座標10が変更され,第2PC表示画面7の位置が変更され,
ファイル等を移動,コピーする場合は,マウスカーソル12によってファイルを画面上で移動することにより,第1PC2から第2PC3へ,あるいは第2PC3から第1PC2へとファイルのデータが転送され,第2PC3から第1PC2へファイルを移動する場合,第2表示画面7内の移動したいファイルのアイコンを,マウスカーソル12でクリックしながら第1表示画面6内へ移動させ,マウス5の動きは,第1マウス情報第1バスデータ62および第1バス63を介して第1CPU54へ伝送され,ファイルの移動を認識した第1CPU54は,ファイルの第1記憶部67の書き込み,第2PC3の読み出し,ファイル名を指示するファイル移動指示情報第1バスデータ57を,第1バス63を介して第1記憶部55へ出力し,第1記憶部55は,先に説明したファイル移動指示情報第1バスデータ57に従って,第2ファイル第1バスデータ60を書き込み,第2PC3から第1PC2へのファイル移動が完了し,
第2PCの表示画面を第1PCの表示画面上にウィンドウ表示するための制御部を,モニタ装置に設けたことにより,携帯性には優れているが,表示画面が小さいノートPCのような機器を,大画面のモニタ装置に簡単に接続させることができ,その表示が可能となり,また,第1PCに接続したキーボードや,マウス等の入力手段の通信データや,PC間のファイルのやり取り等の通信データを制御するための制御部を設けたことにより,第1PCのキーボード,マウス等の入力手段の通信データが,第2PCでも有効となり,ウィンドウ表示した画面上で,キーボード,マウス等を使って,第1PCと第2PC間のファイル転送を容易に行うことが可能となる,
モニタ装置において,複数の情報処理装置間のデータ転送を制御すること。」

(3) 対比
本件補正後発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。
ア 表示ステップ
引用発明は,「モニタ装置1は,第1CPUを具備する第1PC2から転送される表示データおよび通信データに基づく表示画面6上に,第2CPUを具備する第2PC3から転送される表示データおよび通信データに基づく表示画面7をウィンドウ表示し」の構成を具備する。
そして,PCのCPUがデータ処理を行う装置であることを技術常識として勘案すると,本件補正後発明と引用発明は,「複数のデータ処理装置からそれぞれ供給された複数の映像を表示手段に対して同時に表示させる表示ステップ」の点で共通する。

イ 入力ステップ
引用発明は,「キーボード4およびマウス5は,第1PC2における指示を受け付けるとともに,第2PC3における指示も受けつけ」の構成を具備する。
そして,表示画面上におけるマウスの動作を技術常識として勘案すると,引用発明の「キーボード4およびマウス5は,第1PC2における指示を受け付けるとともに,第2PC3における指示も受けつけ」の構成は,本件補正後発明の「上記表示手段の表示に対応したユーザーからの位置の指定を入力デバイスで受け付ける入力ステップ」に相当する。

ウ 制御ステップ
引用発明は,「マウスカーソル12によって表示画面7のウィンドウ位置が変更された場合は,ウィンドウ表示左上端の垂直方向座標8および水平方向座標10が変更され,第2PC表示画面7の位置が変更され」の構成を具備する。
表示画面7のウィンドウ位置が変更されれば,表示画面6と表示画面7の境界が変更されることとなるから,引用発明の「マウスカーソル12によって表示画面7のウィンドウ位置が変更された場合は,ウィンドウ表示左上端の垂直方向座標8および水平方向座標10が変更され,第2PC表示画面7の位置が変更され」の構成は,本件補正後発明の「上記入力ステップによって指定された上記表示手段上の表示に対応する位置に基づいて,上記表示手段に表示される上記複数の映像の境界を移動させるよう制御する制御ステップ」に相当する。
なお,本件補正後発明は,その具体的実施態様においては,「表示ステップ」が,「複数のデータ処理装置からそれぞれ供給された複数の映像を表示手段に対して同時に左右2分割で表示させ」る構成を具備し,また,「制御ステップ」の「上記入力ステップによって指定された上記表示手段上の表示に対応する位置が上記表示手段の表示領域の端に対応する位置である時,上記表示手段に表示される上記複数の映像の境界を移動させるよう制御する」構成を具備するものであるが,特許請求の範囲には,下線部のような事項は記載されていない。

エ 出力制御ステップ
引用発明は,「キーボード4またはマウス5からの指示情報は第1キーボード情報第1バスデータ61,第1マウス情報第1バスデータ62を介して第1CPU54に送られ」及び「キーボード4またはマウス5で受け付けた指示を,第1PC2の表示画面内にウィンドウ表示される第2PC3の表示画面上でも有効とするため,第1キーボード情報48および第1マウス情報49は,第2通信データ17として第2PC3へ伝送され」の構成を具備する。したがって,引用発明は,本件補正後発明の「上記入力デバイスから供給された制御信号を上記複数のデータ処理装置に出力し」に相当する構成を具備する。
また,引用発明では,「マウスカーソル12は,第1PC2に接続されたマウス5のカーソルであり,第1PC表示画面上6のアイコンの操作はもちろん,第2PC表示画面7上のアイコンの操作も可能とし」ているところ,「第2PC3から第1PC2へファイルを移動する場合」には,引用発明において,「第2表示画面7内の移動したいファイルのアイコンを,マウスカーソル12でクリックしながら第1表示画面6内へ移動させ」る操作が行われ,「マウス5の動きは,第1マウス情報第1バスデータ62および第1バス63を介して第1CPU54へ伝送され,ファイルの移動を認識した第1CPU54は,ファイルの第1記憶部67の書き込み,第2PC3の読み出し,ファイル名を指示するファイル移動指示情報第1バスデータ57を,第1バス63を介して第1記憶部55へ出力し,第1記憶部55は,先に説明したファイル移動指示情報第1バスデータ57に従って,第2ファイル第1バスデータ60を書き込み,第2PC3から第1PC2へのファイル移動が完了」する。したがって,引用発明は,例えば,第2PC3から第1PC2へファイルを移動する場合に,マウスによって操作可能な状態のPCが,第2PCから第1PCに変更されている。そうしてみると,引用発明は,本件補正後発明の「上記入力デバイスからの制御信号の出力先を,アクティブ状態となっている一の上記データ処理装置から他の上記データ処理装置に切り替えることにより,アクティブな状態の上記データ処理装置を上記一のデータ処理装置から上記他のデータ処理装置に変更する出力制御ステップ」に相当する構成を具備する。

オ 表示方法
以上の対比結果を勘案すると,引用発明の「モニタ装置において,複数の情報処理装置間のデータ転送を制御すること」は,本件補正後発明の「表示方法」に相当する。

そうしてみると,本件補正後発明と引用発明の一致点及び(一応の)相違点は,以下のとおりとなる。
(一致点)
「 複数のデータ処理装置からそれぞれ供給された複数の映像を表示手段に対して同時に表示させる表示ステップと,
上記表示手段の表示に対応したユーザーからの位置の指定を入力デバイスで受け付ける入力ステップと,
上記入力ステップによって指定された上記表示手段上の表示に対応する位置に基づいて,上記表示手段に表示される上記複数の映像の境界を移動させるよう制御する制御ステップと,
上記入力デバイスから供給された制御信号を上記複数のデータ処理装置に出力し,上記入力デバイスからの制御信号の出力先を,アクティブ状態となっている一の上記データ処理装置から他の上記データ処理装置に切り替えることにより,アクティブな状態の上記データ処理装置を上記一のデータ処理装置から上記他のデータ処理装置に変更する出力制御ステップと
からなる表示方法。」

(相違点1)
本件補正後発明は,「上記複数のデータ処理装置の動作を概略的に示す情報を上記表示手段に表示させ」る表示ステップを具備するのに対して,引用発明は,これが明らかではない点。

(相違点2)
本件補正後発明は,「上記入力ステップにおいて指定された上記表示手段上の表示に対応する位置が上記表示手段に表示されている上記複数の映像の境界を跨ぐか否かの判定結果に基づいて」,上記入力デバイスからの制御信号の出力先を,アクティブ状態となっている一の上記データ処理装置から他の上記データ処理装置に切り替えることにより,アクティブな状態の上記データ処理装置を上記一のデータ処理装置から上記他のデータ処理装置に変更する出力制御ステップを具備するのに対して,引用発明は,これが明らかではない点。

(4) 判断
相違点についての判断は,以下のとおりである。

(相違点1について)
ファイルの移動は,ファイル容量によっては時間を要するものであるから,引用発明の第2PC3から第1PC2へファイルを移動する場合において,「PC2からPC1へファイルを移動中」などといった情報を表示することは,当業者が容易にできることである。
そうしてみると,引用発明の表示ステップにおいて,相違点1に係る構成を採用することは,当業者における通常の創意工夫の範囲内の事項である。

(相違点2について)
引用発明は「第2表示画面7内の移動したいファイルのアイコンを,マウスカーソル12でクリックしながら第1表示画面6内へ移動させ」の構成を具備するから,引用発明の第2PC3から第1PC2へファイルを移動する場合において,マウスカーソルがファイルのアイコンとともに第2PCのウィンドウと第1PCのウィンドウの境界を跨いでいることは,引用例に「跨ぐ」という文言記載がなくとも,当業者ならば理解できる事項である。そして,引用発明は,「第2表示画面7内の移動したいファイルのアイコンを,マウスカーソル12でクリックしながら第1表示画面6内へ移動させ」の処理が行われたとの判定結果に基づいて,マウスによってPC2のアイコンを操作していた状態から第1PCによるファイル移動制御に変更されており,「上記入力デバイスからの制御信号の出力先を,アクティブ状態となっている一の上記データ処理装置から他の上記データ処理装置に切り替えることにより,アクティブな状態の上記データ処理装置を上記一のデータ処理装置から上記他のデータ処理装置に変更する」出力制御が行われている。
そうしてみると,引用発明において相違点2の構成を採用することは,引用発明のファイル移動に伴うアイコンの動作を理解した当業者が容易に為しうる事項である。
引用例に明記が無いことに鑑みて念のために示すと,ウィンドウの境界を跨ぐか否かの判定結果に基づいて,アクティブウィンドウを切り替えることについては,例えば,特開平5-143238号公報の図2及び段落【0005】,特開平3-260697号公報の1頁右下欄最終行ないし2頁左上欄4行,特開昭62-102317号公報の特許請求の範囲の請求項1に開示されているように,オートレイズとも称される技術常識でもある。このような技術常識を考慮するとなおさら,引用発明において相違点2の構成を採用することは,当業者が容易に為しうる事項といえる。

また,本件補正後発明が奏する効果は,引用発明から予測できる範囲内のものであって,顕著なものとはいえない。

(5) 小括
以上のとおり,本件補正後発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

(6) 付記:請求項1及び請求項6について
請求項1についての補正は,本件補正後の請求項5と同様に,特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後請求項1発明」という。)の独立特許要件を検討すると,少なくとも本件出願の優先日において,モニタ一体型のPCは周知であるから,モニタ一体型のPCにおいて引用発明を具体化することは,引用発明が予定している事項である。また,この場合には,モニタ一体型PC,すなわち画像表示装置が,本件補正後発明の表示方法を行う装置となる。そうしてみると,本件補正後請求項1発明は,本件補正後発明と同様に,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。
さらにまた,本件補正前の請求項8を本件補正後の請求項6とする補正も,同様に,特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。そこで,本件補正後の請求項6に係る発明(以下「本件補正後請求項6発明」という。)の独立特許要件を検討すると,引用例には「上述した第1および第2の情報処理装置において,上述した通信制御部における機能をアプリケーションソフトウエアにより実現してもよい」と記載されている(段落【0080】)。この場合,アプリケーションソフトウェアがマウスの動作をフックして,マウスの制御信号を第1CPU又は第2CPUに送り,また,表示画面6上に表示画面7をウィンドウ表示する制御を行うこととなる。そうしてみると,本件補正後請求項6発明も,本件補正後発明及び本件補正後請求項1発明と同様に,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

3 補正却下についてのまとめ
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本件出願の請求項7に係る発明(本願発明)は,明細書及び図面の記載からみて,前記「第2」1(1)に記載されたとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,概略,この出願の請求項7に係る発明は,その優先日前に日本国内又は外国において頒布された引用例に記載された発明に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

3 引用例に記載の事項及び引用発明
引用例に記載の事項及び引用発明は,前記「第2」2(1)及び(2)に記載したとおりである。

4 対比及び判断
本願発明は,本件補正後発明を特定するために必要な事項である「表示ステップ」の構成において,「上記複数のデータ処理装置の動作を概略的に示す情報を上記表示手段に表示させる」との発明特定事項を省いたものである。
そうしてみると,本願発明の構成を全て具備し,さらに,他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正後発明が,前記「第2」2(3)ないし(6)で述べたとおり,引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたことを考慮すると,本願発明も同様に,引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
また,本願発明が奏する効果は,引用発明から予測できる範囲内のものであって,顕著なものとはいえない。
本件出願の特許請求の範囲の請求項1及び8に係る発明も,同様である。

第4 まとめ
以上のとおり,本件出願の特許請求の範囲の請求項1,7及び8に記載された発明は,その優先日前に日本国内又は外国において頒布された引用例に記載された発明に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について審理するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-25 
結審通知日 2014-07-01 
審決日 2014-07-30 
出願番号 特願2011-53716(P2011-53716)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
P 1 8・ 575- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 居島 一仁  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 新川 圭二
樋口 信宏
発明の名称 画像表示装置、映像信号供給装置、表示方法および表示プログラム  
代理人 杉浦 正知  
代理人 杉浦 拓真  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ