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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B66B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B66B
管理番号 1292181
審判番号 不服2013-12181  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-26 
確定日 2014-09-17 
事件の表示 特願2007-100138「エレベータ設備の複数の操作ユニットの階関連付けを設定する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月 8日出願公開、特開2007-290868〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、特許法第36条の2第1項の規定による平成19年4月6日(パリ条約による優先権主張2006年4月20日、ヨーロッパ特許庁)の出願であって、平成19年6月7日に明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の翻訳文が提出され、平成24年5月18日付けで拒絶理由が通知され、平成24年8月16日に意見書及び手続補正書が提出され、平成25年2月14日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、平成25年6月26日に拒絶査定に対する審判の請求がなされると同時に、手続補正書が提出されて特許請求の範囲を補正する手続補正がなされたものである。
そして、平成25年8月23日付けで当審において書面による審尋がされ、平成26年2月25日に審尋に対する回答書が提出されたものである。

第2.平成25年6月26日付けの特許請求の範囲を補正する手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年6月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
平成25年6月26日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成24年8月16日付けの手続補正書によって補正された)下記Aに示す記載を、下記Bに示す記載へと補正するものである。
A 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
エレベータ設備(20)の複数の操作ユニット(50から57)の階およびアクセス関連付けを設定する方法であって、操作ユニット(50から57)が複数の階(11、13、15、17)にわたっておよびエレベータケージ(30)の複数のアクセスにわたって分散して配置されており、階(11、13、15、17)にはエレベータケージ(30)によって移動することができ、エレベータケージ(30)は送信器ユニット(35)を有し、方法が、
a)エレベータケージ(30)を所定の階(11、13、15、17)へ移動するステップと、
b)行き先階(11、13、15、17)に割り当てられた操作ユニット(50から57)を起動するステップと、
c)操作ユニット(50から57)が位置している階(11、13、15、17)を記述している位置データ、および階(11、13、15、17)のエレベータケージ(30)へのアクセスを特徴づけるアクセスデータを、送信器ユニット(35)から操作ユニット(50から57)および/または中央制御装置(40)へ通信するステップと、
d)位置データおよびアクセスデータを操作ユニット(50から57)の記憶装置(60)および/または中央制御装置(40)内に格納するステップと、
を備える、方法。」

B 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
エレベータ設備(20)の複数の操作ユニット(50から57)の階およびアクセス関連付けを設定する方法であって、操作ユニット(50から57)が複数の階(11、13、15、17)にわたっておよびエレベータケージ(30)の複数のアクセスにわたって分散して配置されており、階(11、13、15、17)にはエレベータケージ(30)によって移動することができ、エレベータケージ(30)は送信器ユニット(35)を有し、方法が、
a)エレベータケージ(30)を所定の階(11、13、15、17)へ移動するステップと、
b)行き先階(11、13、15、17)の各アクセスに割り当てられた操作ユニット(50から57)を起動するステップと、
c)操作ユニット(50から57)が位置している階(11、13、15、17)を記述している位置データ、および階(11、13、15、17)のエレベータケージ(30)への各アクセスを特徴づけるアクセスデータを、送信器ユニット(35)から操作ユニット(50から57)および/または中央制御装置(40)へ通信するステップと、
d)位置データおよびアクセスデータを操作ユニット(50から57)の記憶装置(60)および/または中央制御装置(40)内に格納するステップと、
を備える、方法。」(アンダーラインは補正箇所を示すもので、請求人が付したものである。)

2.本件補正の目的
本件補正は、本件補正後の請求項1について、「行き先階(11、13、15、17)に割り当てられた操作ユニット」に関して、「行き先階(11、13、15、17)に割り当てられた操作ユニット(50から57)を起動する」を「行き先階(11、13、15、17)の各アクセスに割り当てられた操作ユニット(50から57)を起動する」と補正するもの、及び、「階(11、13、15、17)のエレベータケージ(30)へのアクセスを特徴づけるアクセスデータ」を「階(11、13、15、17)のエレベータケージ(30)への各アクセスを特徴づけるアクセスデータ」と補正するものであって、階におけるアクセスが「各」であることを限定するものであり、しかも、その補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正後の請求項1に関する補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下 、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

3-1.引用文献記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-146546号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア.「【0002】
【従来の技術】エレベーターは、主に各階床に設置されたホール呼び釦とかご内に設置された行き先登録釦の情報を元に運行する。これらの情報はエレベーターを制御する制御装置に集められる。なお、各階床のホール呼び釦と、かご内の行き先登録釦は各階床及びかごに設けられたホール用端末、かご用端末でそれぞれ管理され、各釦の状態は逐次、各端末から制御装置(ホスト)へ送られる。」(段落【0002】)

イ.「【0004】
【発明が解決しようとする課題】無線通信を用いれば、ホストとかご端末およびホール端末間のケーブルを省くことができるが、各ホール用端末が何階床の端末であるかをホール用端末とホストに認識させる必要がある。その一手段としてDIPスイッチ等を用いて、エレベーター設置時に階床番号を手動で設定することができる。しかし、DIPスイッチを手動で設定する場合には、現地作業が増大したり、誤設定が発生したりする。
【0005】本発明の目的は、前記従来技術を考慮し、無線通信によってホール用端末の階床番号設定できるエレベーターの通信システムおよび通信方法を提供する。」(段落【0004】及び【0005】)

ウ.「【0010】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の第1の実施例であるエレベーターの通信システムを示す。本図は階床数が4の場合を示す。図1において、20?23は各階のホール用無線端末であり、それぞれ固有コードD?Aを保持する。また31はかご用無線端末、10はホスト用無線端末である。かご用無線端末31が設けられるかご30と釣合い錘40は、ロープ100によって吊られる。ロープ100は、綱車50と反らせ車60に巻き掛けられる。綱車50がモータ51によって回転することにより、ロープ100が駆動される。これによって、かご30と釣合い錘40は、互いに上下反対方向に上昇または下降する。ホール用無線端末に階床番号(1?4(階))を設定する場合には、かご30を、1階に停止している状態から、モータ51により上昇させる。この時かご用無線端末31の通信エリアは、1?6のように移動する。通信エリアの移動により、各階のホール用無線端末が、順に通信エリアに出入りする。この順番をもとに、各階床のホール用無線端末に階床番号を設定する。」(段落【0010】)

エ.「【0022】図5は本発明の第2の実施例であるエレベーターの通信システムを示し、図6は本実施例におけるかご用無線端末の動作を表すフローを示す。本実施例では、かご30を各階床で停止させると同時に、かご用無線端末31に図6に示す動作を行わせる。まず、停止階において、かご用無線端末31はホール用無線端末を検出する。応答する端末がない場合(図5の通信エリア1)、かご用無線端末31の無線通信の出力を増加させ、かご用無線端末31の通信エリア内にホール用無線端末が存在するような(図5の通信エリア2)出力値にかご用無線端末の出力を調整する。また、通信エリア内に複数のホール用無線端末が存在した場合(図5の通信エリア3)、かご用無線端末31の出力を減少させ、かご用無線端末31の通信エリア内にホール用無線端末が1個存在するように(図5の通信エリア2)かご用無線端末の出力を調整する。この時応答したホール用無線端末の固有コードに停止階の階床番号を設定する。本動作を各階床で実施することにより、各ホール用無線端末の固有コードに階床番号を設定することができる。なお、かご用無線端末の出力は、停止階において通信エリア内にホール用無線端末が1個存在するような出力値に固定されていても良い。
【0023】以上、第2の実施例によれば簡単なアルゴリズムで各ホール用無線端末の階床番号の設定を自動化できる。」(段落【0022】及び【0023】)

オ.「【0024】図7は、上記第1および第2の実施例における各無線端末の構成を示したものである。201はアンテナ、202は送受信器、203はマイクロコンピュータのような演算処理装置、204は不揮発メモリである。上記各実施例において、図3のスタックはかご用無線端末が持つ不揮発メモリ204内に有り、図2,図6の動作は、かご用無線端末の演算処理装置203によって制御される。すなわち、演算処理装置203が送受信器202や不揮発メモリ204を制御することによって、他の端末との無線通信,ホール用無線端末の検出,固有コードの格納や無線通信の出力の調整が行われる。かご用無線端末31の送受信器202から無線通信によって送信されるホール用無線端末の固有コードと階床番号を設定するための情報は、ホスト用およびホール用無線端末において、送受信器202によって受信され、演算処理装置203により不揮発メモリ204に書き込まれる。このため、停電が発生した場合でも、ホール端末の固有コードと階床番号を設定するための情報は不揮発メモリ204に格納されているので、再度設定のためにエレベーターを動作させる必要はない。なお、不揮発メモリ204は、演算処理装置203に内蔵されていても良い。このような無線端末により、上記各実施例においては、自動的にホール用無線端末に階床番号を自動的に設定できる。
【0025】上記各実施例においては、階床数が4階であるが、他の複数階床数の場合や地下階が有る場合でも本発明を適用できる。また、エレベーターの駆動方法や無線端末の構成も、種々の変形が可能である。」(段落【0024】及び【0025】)

(2)ここで、上記(1)ウ.ないしオ.及び図面から、次のことが分かる。
カ.上記(1)ウ.及びエ.並びに図1及び図5から、エレベータの複数のホール用無線端末20,21,22,23の階関連付けを設定する方法であって、複数のホール用無線端末20,21,22,23が1階ないし4階にわたって分散して配置されており、階にはかご30によって移動することができ、かご30はかご用無線端末31を有していることが分かる。

キ.上記(1)ウ.及びエ.並びに図1及び図5から、エレベータの複数のホール用無線端末20,21,22,23の階関連付けを設定する際に、かご30を所定の階へ移動することが分かる。

ク.上記(1)ウ.及びエ.並びに図1及び図5から、エレベータの複数のホール用無線端末20,21,22,23の階関連付けを設定する際に、行き先階のホール用無線端末20,21,22,23は、かご用無線端末31からの無線通信に応答して階床番号が設定されることが分かり、このことから、階床番号の設定に先立ちホール用無線端末20,21,22,23はかご用無線端末31からの無線通信に応答すること、すなわち、階床番号の設定に先立ち、行き先階のホール用無線端末20,21,22,23が起動されることが分かる。

ケ.上記(1)ウ.及びエ.並びに図1及び図5から、エレベータの複数のホール用無線端末20,21,22,23の階関連付けを設定する際に、ホール用無線端末20,21,22,23が位置している階を記述している階床番号を、かご用無線端末31からホール用無線端末20,21,22,23およびホスト用無線端末10へ通信することが分かる。

コ.上記(1)ウ.ないしオ.並びに図1、図5及び図7から、エレベータの複数のホール用無線端末20,21,22,23の階関連付けを設定する際に、階床番号をホール用無線端末20,21,22,23の不揮発メモリ204およびホスト用無線端末10内に格納することが分かる。

(3)引用文献1記載の発明
上記(1)及び(2)より、引用文献1には、次の発明が記載されている。
「エレベータの複数のホール用無線端末20,21,22,23の階関連付けを設定する方法であって、複数のホール用無線端末20,21,22,23が1階ないし4階にわたって分散して配置されており、階にはかご30によって移動することができ、かご30はかご用無線端末31を有し、方法が、
a)かご30を所定の階へ移動するステップと、
b)行き先階のホール用無線端末20,21,22,23を起動するステップと、
c)ホール用無線端末20,21,22,23が位置している階を記述している階床番号を、かご用無線端末31からホール用無線端末20,21,22,23およびホスト用無線端末10へ通信するステップと、
d)階床番号をホール用無線端末20,21,22,23の不揮発メモリ204およびホスト用無線端末10内に格納するステップと、
を備える、方法。」(以下、「引用文献1記載の発明」という。)

(4)原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平5-8975号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
サ.「【特許請求の範囲】
【請求項1】 2箇所の出入口を有するかごと、必要サービス階床に前記出入口に対応する2箇所の乗場出入口を設けた二方向戸貫通型エレベータにおいて、
前記複数乗場出入口を設けた階床の夫々の出入口に、かごの停止順位を付けて各出入口を一つの停止階とみなす運転制御手段を備えると共に、乗場及びかごインジケータに前記各乗場の複数出入口を区別して表示することを特徴とする二方向戸貫通型エレベータ。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

シ.「【0010】このエレベータの構成を図1に示す。即ち1階から4階の前面と2階の後面の各乗場には乗場呼び釦1があり、乗場呼び釦1を押すと乗場呼び入力信号2がエレベータ制御装置3に登録され、乗場呼びランプ信号4により、乗場呼び釦1のランプが点灯する。」(段落【0010】)

(5)上記(4)サ.及びシ.並びに図面から次のことが分かる。
タ.上記(4)サ.及びシ.並びに図1から、二方向戸貫通型エレベータは、乗場呼び釦1がかごの2箇所の出入口にわたって分散して配置されていることが分かる。

(6)引用文献2記載の発明
上記(4)及び(5)並びに図面によると、引用文献2には、次の発明が記載されている。
「乗場呼び釦1がかごの2箇所の出入口にわたって分散して配置されている二方向戸貫通型エレベータ。」(以下、「引用文献2記載の発明」という。)

3-2.本件補正発明と引用文献1記載の発明との対比
本件補正発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「エレベータ」は、その技術的意義及び機能からみて、本件補正発明における「エレベータ設備」に相当し、以下同様に、それぞれの技術的意義及び機能からみて、引用文献記載の発明における「ホール用無線端末20,21,22,23」は「操作ユニット」に、「1階ないし4階」は「複数の階」に、「かご30」は「エレベータケージ」に、「かご用無線端末31」は「送信器ユニット」に、「階床番号」は「位置データ」に、「不揮発メモリ204」は「記憶装置」に、「ホスト用無線端末10」は「中央制御装置」に、「書き込む」は「格納する」に、それぞれ相当する。

したがって、本件補正発明と引用文献1記載の発明は、
「エレベータ設備の複数の操作ユニットの階関連付けを設定する方法であって、複数の操作ユニットが複数の階にわたって分散して配置されており、階にはエレベータケージによって移動することができ、エレベータケージは送信器ユニットを有し、方法が、
a)エレベータケージを所定の階へ移動するステップと、
b)行き先階の操作ユニットを起動するステップと、
c)操作ユニットが位置している階を記述している位置データを、送信器ユニットから操作ユニットおよび中央制御装置へ通信するステップと、
d)位置データを操作ユニットの記憶装置および中央制御装置内に格納するステップと、
を備える、方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本件補正発明においては、エレベータ設備の複数の操作ユニットの階及びアクセス関連付けを設定するものであって、操作ユニットがエレベータケージの複数のアクセスにわたって分散して配置されており、階のエレベータケージへの各アクセスを特徴づけるアクセスデータを、送信器ユニットから操作ユニットおよび中央制御装置へ通信し、アクセスデータを操作ユニットの記憶装置および中央制御装置内に格納するのに対し、引用文献1記載の発明においては、複数のホール用無線端末20,21,22,23(本件補正発明における「操作ユニット」に相当。)がアクセス関連付けを設定するものであるかどうかが明らかでなく、ホール用無線端末が複数の階にわたってかご30(本件補正発明における「エレベータケージ」に相当。)の複数のアクセスにわたって分散して配置されているかどうかが明らかでなく、階のかご30への各アクセスを特徴づけるアクセスデータを、かご用無線端末31(本件補正発明における「送信器ユニット」に相当。)からホール用無線端末20,21,22,23およびホスト用無線端末10(本件補正発明における「中央制御装置」に相当。)へ通信し、アクセスデータを操作ユニットの記憶装置および中央制御装置内に格納するかどうかが明らかでない点(以下、「相違点」という。)。

3-3.当審の判断
上記相違点について検討する。
引用文献1記載の発明においては、各階におけるホール用無線端末20,21,22,23の数が明らかでないが、引用文献1の図1及び図5を参酌すれば、各階において、ホール用無線端末20,21,22,23は1つ存在し、また、そのホール用無線端末に対応するホールの出入口は1つ存在し、さらに、このホールの出入口に対応するかご30の出入口も1つ存在することは明らかである。
そして、1つの階につきホールの出入口が1つで、かご30の出入口と1つであれば、かごの出入口の方向、すなわち、階のエレベータケージへのアクセスは1つしかないから、ホール用無線端末と各階の関連付けが設定されれば、階のエレベータケージへのアクセスも階とともに関連付けれることとなる。
そうすると、引用文献1記載の発明は、複数のホール用無線端末20,21,22,23(本件補正発明における「操作ユニット」に相当。)が階及びアクセス関連付けを設定されているといい得るとともに、さらに、引用文献1記載の発明は、階のエレベータケージへのアクセスを特徴づけるアクセスデータを、送信器ユニットから操作ユニットおよび中央制御装置へ通信し、アクセスデータを操作ユニットの記憶装置および中央制御装置内に格納するものであるともいい得る。
してみれば、結局のところ、本件補正発明と引用文献1記載の発明との相違点は、「操作ユニットの関連付けを行う対象であるエレベータ設備が、本件補正発明においては、操作ユニットがエレベータケージの複数のアクセスにわたって分散して配置されているものであるのに対して、引用文献記載の発明においては、ホール用無線端末20,21,22,23(本件補正発明における「操作ユニット」に相当。)がかご30(本件補正発明における「エレベータケージ」に相当。)の複数のアクセスにわたって分散して配置されているものであるかどうかが明らかでない点。」であるともいい得る。
ここで、引用文献2記載の発明は、上記3.3-1.(4)ないし(6)で検討したように、「乗場呼び釦1がかごの2箇所の出入口にわたって分散して配置されている二方向戸貫通型エレベータ。」というものである。
そして、 本件補正発明と引用文献2記載の発明とを対比すると、引用文献2記載の発明における「乗場呼び釦1」は、その技術的意義及び機能からみて、本件補正発明における「操作ユニット」に相当し、以下同様に、それぞれの技術的意義及び機能からみて、引用文献2記載の発明における「かご」は「エレベータケージ」に、「2箇所の出入口」は「複数のアクセス」に、「二方向戸貫通型エレベータ」は「エレベータ設備」に、「二方向戸貫通型エレベータ」は「エレベータ設備」に、それぞれ相当する。
そうすると、引用文献2に記載の発明は、本件補正発明の用語を用いて表現すると、「操作ユニットがエレベータケージの複数のアクセスにわたって分散して配置されているエレベータ設備。」ということになる。
また、この引用文献2記載の発明は「操作ユニットがエレベータケージの複数のアクセスにわたって分散して配置されているエレベータ設備。」であるが、このような設備は、周知の技術(例えば、特開2004-43086号公報の図2及び特開2002-274771号公報の図3等参照。)でもある。
ここで、引用文献1記載の発明の課題は、上記3-1.(1)ア.及びイ.で摘記したように、エレベータ設置時に、スイッチ等を用いずに、通信によって、ホール用端末等の関連付けを行うという点で、本件補正発明と軌を一にするものである。
そして、引用文献1記載の発明及び周知の技術ともいい得る引用文献2記載の発明は、いずれも、エレベータの制御技術に関するものであり、また、引用文献1記載の発明を周知の技術ともいい得る引用文献2記載の発明に適用することを阻害する要因もない。
してみれば、引用文献1記載の発明を、周知の技術ともいい得る引用文献2記載の発明の「操作ユニットがエレベータケージの複数のアクセスにわたって分散して配置されているエレベータ設備。」に適用して、「エレベータ設備の複数の操作ユニットの階及びアクセス関連付けを設定するものとして、操作ユニットがエレベータケージの複数のアクセスにわたって分散して配置されており、階のエレベータケージへの各アクセスを特徴づけるアクセスデータを、送信器ユニットから操作ユニットおよび中央制御装置へ通信し、アクセスデータを操作ユニットの記憶装置および中央制御装置内に格納する」という上記相違点に係る本件補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得ることと認められる。

また、本件補正発明は、全体としても、引用文献1記載の発明及び周知の技術ともいい得る引用文献2記載の発明から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するとも認められない。

以上から、本件補正発明は、引用文献1記載の発明及び周知の技術ともいい得る引用文献2記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

3-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.本願発明の内容
平成25年6月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし6に係る発明は、平成19年6月7日付けの明細書及び図面の翻訳文並びに平成24年8月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2.[理由]1.Aに記載したとおりである。

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2003-146546号公報)及び引用文献2(特開平5-8975号公報)の記載事項並びに引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の発明は、前記第2.[理由]3-1.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本件補正発明は、前記第2.[理由]2.で検討したように、本件補正前の請求項1を限定したものであるから、本件補正発明は、本願発明の発明特定事項を減縮したものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が、前記第2.[理由]3-3.に記載したとおり、引用文献1記載の発明及び周知の技術ともいい得る引用文献2記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1記載の発明及び周知の技術ともいい得る引用文献2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1記載の発明及び周知の技術ともいい得る引用文献2記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-04-14 
結審通知日 2014-04-15 
審決日 2014-05-02 
出願番号 特願2007-100138(P2007-100138)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B66B)
P 1 8・ 575- Z (B66B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 多佳子武井 健浩  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 加藤 友也
中川 隆司
発明の名称 エレベータ設備の複数の操作ユニットの階関連付けを設定する方法  
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所  

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