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審決分類 審判 一部無効 1項3号刊行物記載  E04F
審判 一部無効 2項進歩性  E04F
審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E04F
管理番号 1292388
審判番号 無効2013-800161  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-09-02 
確定日 2014-09-29 
事件の表示 上記当事者間の特許第3661154号発明「重ね塗りによって生じる着色漆喰塗膜の色差を抑制する方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
平成15年 2月14日:原出願(特願2003-36293号)
平成16年 7月 6日:本件出願(特願2004-198846号)
平成17年 4月 1日:設定登録(特許第3661154号)
平成24年 8月22日:別件訂正審判請求
(訂正2012-390107号)
平成24年10月25日:別件審決(訂正を認める)
平成25年 9月 2日:本件審判請求
平成25年11月15日:被請求人より答弁書提出
平成26年 2月14日:審理事項通知書
平成26年 3月 4日:請求人より上申書提出
平成26年 3月12日:被請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成26年 3月13日:請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成26年 3月27日:被請求人より口頭審理陳述要領書(2)提出
平成26年 3月27日:口頭審理


第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、平成24年8月22日付け訂正審判の審判請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1ないし4に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
(A1)着色漆喰組成物を重ね塗りすることによる着色漆喰塗膜の形成において、
(B1)着色漆喰組成物として石灰、白色顔料、着色顔料、結合剤及び水を含有する組成物を用いることにより、
(C1)重ね塗りによる着色漆喰塗膜の白色化に伴う色差発生を抑制する方法。
【請求項2】
(B2)上記着色漆喰組成物が、白色顔料を石灰100重量部に対して5重量部以上の割合で含むものである、請求項1に記載する方法。
【請求項3】
(B3)上記着色漆喰組成物が、白色顔料として白色顔料の使用態様を備える酸化チタンを含むものである、請求項1または2に記載する方法。
【請求項4】
(B4)請求項1乃至3のいずれかに記載する方法において、着色顔料として酸化金属またはカーボンブラックを用いる方法。」

なお、(A1),(B1)等は、当審で付与した。

第3 当事者の主張
1.請求人の主張、及び提出した証拠の概要
請求人は、特許第3661154号発明の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書、平成26年3月4日付け上申書、平成26年3月13日付け口頭審理陳述要領書において、甲第1?20号証を提示し、以下の無効理由を主張した。

[無効理由1]
(1)本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

(具体的理由)
(1)審判請求書
ア 甲第1号証は、「施工性に優れた無機質仕上げ材組成物及びそれを用いた工法」に係るものであり、その段落[0022]、[0023]には、A1に相当する、(a1)「下塗り材組成物と上塗り材組成物(両者は同色のものでもよい)を用いて漆喰壁を形成すること」が記載されている。また、段落[0025]?[0038]には、B1に相当する、(b1)「下塗り材組成物及び上塗り材組成物として、消石灰、炭酸カルシウム粉(白色顔料)、顔料(大日本インキ化学工業(株)製)、合成樹脂エマルジョン及び水を含有する組成物を用いること」が記載されている。なお、段落[0018]に、炭酸カルシウムは、白色顔料の作用を持つことが記載されている。さらに、段落[0036]及び[0037]の表4及び5には、C1に相当する、(c1)「色ムラが抑制できたこと」が記載されている。また、表1及び2の炭酸カルシウムの含有量を計算すると、消石灰100部に対して炭酸カルシウム粉1?72部となり、請求項2に係る特許発明の構成B2と大部分重複する。
そして、甲第1号証に記載された発明は、上記の構成により、色漆喰をムラなく仕上げることと共に様々なテクスチャーと多彩仕上げが容易にできる(段落[0046])、という効果を有するものである。(9頁3?17行)

イ 炭酸カルシウムが水性塗料中では、白色顔料として機能することは甲第6号証(化学大辞典)から明白である。(12頁12?13行)

ウ 請求項1に係る発明では「白色化に伴う色差発生を抑制する」のに対して、甲第1号証記載の発明では、「色ムラを抑制する」ものである点で相違するが、「色差発生を抑制する」理由は、「色ムラが抑制」されたことによる結果であり、この両者は実質的に同義である。(12頁23行?13頁2行)

(2)陳述要領書
ア 白色度の高い塗工紙を製造するための、製紙用塗工剤(水性塗料)の白色顔料成分として炭酸カルシウムは使用されており、炭酸カルシウム製造会社は、炭酸カルシウムを良好な白色顔料として広告宣伝し販売している(甲第12、13号証)。(3頁22?25行)

イ 製紙用塗料、ペイント塗料、その他多分野の水性塗料用に使用される、結合剤や顔料分散剤を開発、製造、及び販売している代表的会社である、東亜合成株式会社の技術者による論文においても、炭酸カルシウムを白色顔料として捉えている(甲第14号証)。このように、塗料分野に携わる当業者にとっては、塗料メーカーの技術者はもちろん、塗料に使用される添加剤メーカーの技術者においても、炭酸カルシウムは溶媒が水である水性塗料には白色顔料として使用されるということは、技術常識である。(4頁6?12行)

[無効理由2]
本件特許の請求項1?4に係る発明は、甲第1号証?甲第5号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

(具体的理由)
(1)審判請求書
甲第2号証?甲第5号証には、上記したように酸化チタン等の白色顔料、及びカーボンブラック、酸化鉄等の着色顔料が記載されており、これらは全て、壁塗装材という同一分野に係るものである。特に、甲第1号証?甲第4号証は、優れた漆喰壁を形成する技術に係るものであり、分野が同一だけでなく、その課題とするところも共通する点が多い。従って、甲第2号証?甲第5号証記載の構成を、甲第1号証に記載されたものに適用することは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に想到し得るものである。(13頁4?11行)

(2)陳述要領書
ア 甲第2号証において好ましい白色顔料とされている「酸化チタン」は、屈折率が炭酸カルシウムよりも高く(酸化チタン:約2.5、炭酸カルシウム:約1.6(甲第14号証))隠蔽力に優れている。酸化チタンが、その良好な隠蔽力に着目されて各種塗料、化粧料等各分野で組成物として配合されることは公知である(甲第16?20号証)。
・・・(略)・・・
そうであれば、隠蔽力および着色力に優れ、白色顔料としては炭酸カルシウム以上の性能を期待できる酸化チタンを甲第1号証の塗料組成物に適用してみようという動機付けは十分にある。また、甲第1号証の実施例の各表から分かるように、炭酸カルシウムでは色ムラ抑制が必ずしも十分ではなく、炭酸カルシウムより良好な効果の期待できる酸化チタンを炭酸カルシウムに代えて使用すれば、色ムラ抑制がより向上する蓋然性が高い。(5頁末?6頁20行)

[無効理由3]
本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載の発明特定事項のうち、C1「重ね塗りによる着色漆喰塗膜の白色化に伴う色差発生を抑制する方法。」は、効果を記載しているのみで、何をどのようにすれば、「重ね塗りによる白色化に伴う色差を抑制する」ことができるのか、不明瞭である。また、請求項1を引用する請求項2?4も同様に不明瞭である。従って、本件特許の請求項1?4に係る発明は、特許請求の範囲の記載が明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであり、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

(具体的理由)
(1)審判請求書
ア 本件請求項1に記載の発明特定事項(構成要件)のうち、C1「重ね塗りによる着色漆喰塗膜の白色化に伴う色差発生を抑制する方法」において、「重ね塗り」及び「白色化」が、その程度、頻度、状態及び判断基準に関して一義的に何を意味するのかが不明瞭である。
また、C1は「重ね塗りによる着色漆喰塗膜の白色化が発生し、それによる色差を抑制する」と規定しているのか、「当該白色化そのものが発生しない」と規定しているのか、どのように解釈すべきか不明瞭である。(15頁9?15行)

イ さらに、構成要件B1に記載されている着色漆喰組成物を使用して、何をどのようにすれば、「重ね塗りによる白色化に伴う色差を抑制する」ことができるのか不明瞭である。(16頁6?8行)

(2)口頭審理陳述要領書
ア 構成要件A1及びB1を充足するのみでは、構成要件C1を充足しない、すなわち、本件発明の目的を達成できないことは、甲第7?11号証で示した通りである。すなわち、上申書の甲第7?11号証で示したとおり、構成要件A1及びB1を充足するだけでは、B1から白色顔料を排除したものであっても、「白色化(石灰の白色が浮き立った結果によるもの)」現象が発生せず、色差発生が抑制されたか否かが判定できない場合(甲第7?10号証)があり、一方、白色顔料を含有していても、「白色化(石灰の白色が浮き立った結果によるもの)」現象が発生し、その色差が大きい場合がある(甲第11号証)。(9頁末行?10頁7行)

[証拠方法]
甲第1号証:特開平7-196355号公報
甲第2号証:特開2000-313841号公報
甲第3号証:特開平9-235852号公報
甲第4号証:特開平9-85879号公報
甲第5号証:特開平10-18566号公報
甲第6号証:化学大事典5,1987年2月15日縮刷版第30刷発行,
共立出版株式会社,572頁左欄35?53行
甲第7号証:新MKブレス漆喰グレー/ローラー塗装比較写真
甲第8号証:新MKブレス漆喰グレー/スプレー塗装比較写真
甲第9号証:新MKブレス漆喰イエロー/ローラー塗装比較写真
甲第10号証:新MKブレス漆喰イエロー/スプレー塗装比較写真
甲第11号証:漆喰組成物2グレー/ローラー塗装比較写真
甲第12号証:白石カルシウム株式会社ホームページ,取扱商品,
製紙分野
甲第13号証:株式会社イメリス ミネラルズ ジャパンのホームページ
甲第14号証:竹本貴之,無機顔料用高性能分散剤 T-AXシリーズ,
東亞合成グループ研究年報,TREND 2010
第13号
甲第15号証:誰にもわかる 左官工学,243?247頁,
430?433頁
甲第16号証:塗料原料便覧 第8版,333?335頁
甲第17号証:テイカ株式会社,商品紹介,酸化チタン,2009年
甲第18号証:特開平9-263718号公報
甲第19号証:特開平7-144304号公報
甲第20号証:特開平10-87421号公報

2.被請求人の主張、及び提出した証拠の概要
これに対して、被請求人は、平成25年11月15日付けの審判事件答弁書、平成26年3月12日付け口頭審理陳述要領書及び平成26年3月27日付け口頭審理陳述要領書(2)において、乙第1?11号証を提示し、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めた。

[無効理由1について]
(1)答弁書
ア 甲第6号証でも、炭酸カルシウムは「体質顔料」として分類されているように、塗料業界において炭酸カルシウムは「体質顔料」として位置づけられており、「白色顔料」とは明らかに一線を画する。
その証拠として、甲第6号証と同じ出典である「化学大辞典」の「白色顔料」の記載を挙げることができる(乙第4号証)。乙第4号証には、亜鉛華、リトポン、チタン白(酸化チタン)、及び鉛白が記載されているものの、炭酸カルシウムは記載されていない。また、塗料や顔料に関する教科書的な書籍である塗料用語辞典(乙第1号証)、色材工学ハンドブック(乙第2号証)、及び塗料原料便覧第7版(乙第3号証)にも、炭酸カルシウムは「体質顔料」として分類されている。つまり、炭酸カルシウムは、仮に白色顔料として機能する場面があるとしても、分類としては「体質顔料」であって「白色顔料」ではない。(17頁15?27行)

イ 甲第1号証が対象とする「色ムラ」も消石灰による白化を原因とする現象である点で、本件特許発明が対象とする「重ね塗りによる色差」と原因は共通する。しかしながら、甲第1号証が課題・効果とする「色ムラ抑制」は、重ね塗りとは無関係に、ムラなく均一な壁面にするという意味での「色ムラ抑制」であるのに対して、本件特許発明の「色差発生の抑制」は、重ね塗りした場合に生じる塗り継ぎ面(下塗り面と上塗り面との間)の色差を抑制するものである点で相違する。また、色ムラが抑制されると、重ね塗りした場合に生じる塗り継ぎ面の色差も抑制できるという技術常識もない。(18頁11?19行)

(2)陳述要領書
ア 炭酸カルシウムについては、本件特許明細書の段落【0048】において、体質顔料であると明記しております。
このように、本件特許明細書において、「炭酸カルシウム」は白色顔料ではなく「体質顔料」であると明確に位置づけております。(3頁3?6行)

イ 実験例3,4に示すように、本件特許明細書において、体質顔料である「炭酸カルシウム」には、本件特許発明における「白色顔料」の作用効果(水含有着色漆喰組成物を重ね塗りすることによる着色漆喰塗膜の白色化に伴う色差抑制効果)がないことが明記されています。(3頁18行?4頁15行)

ウ 塗料などの色材工業の分野において、「炭酸カルシウム」が体質顔料として塗料のコスト低下、つや消し、塗装性の改良、塗膜性能の向上等を目的として広く使用されていること(乙第5号証、乙第6号証);体質顔料は着色顔料と異なり、屈折率が低く隠ぺい性の寄与はあまり期待できないこと(乙第5号証);しかし、酸化チタン(チタン白)と併用すると、酸化チタンの分散を高め、且つ再凝集性を抑制することで、酸化チタンの隠ぺい力等を高める作用があることなどが記載されているものの(乙第5号証、乙第6号証)、「炭酸カルシウム」そのものが白色顔料として使用できることについては記載も示唆もされていません。(7頁2?13行)

[無効理由2について]
(1)答弁書
ア 甲第1号証の記載によれば、「炭酸カルシウム粉」は甲1発明における色ムラ抑制効果に貢献していないから、石灰の白化を抑制する目的で、(白色顔料の作用を有する)「炭酸カルシウム粉」に代えて同作用を有する「白色顔料」を敢えて用いる動機付けはない。(21頁24行?22頁1行)

イ 甲第2号証?甲第4号証には、前述するように、石灰、結合剤、及び水に加えて顔料を含む組成物(甲2:建築用塗料組成物、甲3:漆喰スラリー、甲4:硬化性組成物)が記載されており、顔料の例として酸化チタン等の白色顔料が挙げられているものの、甲第1号証そのものに「炭酸カルシウム粉」に代えて「白色顔料」を用いる動機付けがないことは前述の通りであり、また甲第2号証?甲第4号証のいずれにも、着色漆喰組成物を重ね塗りすることで生じる問題、つまり本件特許発明の課題を想到しえる記載もない以上、当該課題を解決するために、甲第1号証に、甲第2号証?甲第4号証を組み合わせる動機付けはない。
さらに、甲第5号証についても、前述するように、石灰を含む着色漆喰組成物を重ね塗りすることで生じる問題、つまり本件特許発明の課題を想起させる記載も示唆もないから、甲第1号証に組み合わせる動機付けはないばかりか、これを解決する目的で石灰と白色顔料と着色顔料を併用する動機付けを与えるものでもない。
従って、甲第2?5号証を考慮したとしても、特許発明1の課題解決手段として、甲第1号証開示の「炭酸カルシウム粉」に代えて「白色顔料」を用いることは容易に想到することはできない。(22頁2?18行)

[無効理由3について]
(1)答弁書
ア 本件特許明細書の段落【0059】,【0072】,【0105】,【0062】,【0108】,【0119】,【0126】の説明から、本件特許発明でいう「重ね塗り」には、順次塗り継ぎながら塗工する場合、1回塗り後に2回塗り(またはさらに3回、4回、5回・・と)と順次塗り重ねていく場合、並びに補修塗りする場合が含まれ、またその方法には、塗材や塗料の塗工に使用される通常の方法〔鏝塗り、刷毛塗り、ローラー塗り、スプレー塗り(エアレスガン、エアスプレー)など〕が用いられることが明らかである。
このように本件の請求項1に記載する「重ね塗り」という用語の意味は至極明らかであるから、本件特許発明は、当該用語により不明瞭になるものではない。(25頁8行?27頁5行)

イ 本件特許明細書の段落【0070】,【0057】,【0121】の説明から、本件特許発明でいう「白色化」が、水含有着色漆喰組成物を塗工した後、乾燥時の色飛びに伴って生じる白化現象(着色漆喰塗膜に石灰の白色が浮きたつ現象)を意味することは明らかである。かかる現象は、水含有着色漆喰組成物を順次重ね塗りした際に、特に顕著に発生し、このため、塗り重ねて塗工する場合の色差発生の原因となる。
この場合の色差は、実験例1及び3?5に示すように、目視で観察することもできるし、また色差計で測定評価することもできる。なお、色差(例えば、△E(*ab))の絶対値にかかわらず、石灰に白色顔料を併用することによって、白色顔料を用いない場合よりも、重ね塗りによる白色化に伴う色差が抑えられていれば(低ければ)、特許発明1のC1「重ね塗りによる着色漆喰塗膜の白色化に伴う色差発生を抑制する方法」を充足するとして、本件特許発明の技術的範囲に属するものである(本件特許明細書、段落【0058】参照)。
このように本件の請求項1に記載する「白色化」、並びに「白色化に伴う色差発生」という用語の意味は至極明らかであるから、本件特許発明は、これらの用語により何ら不明瞭になるものではない。(27頁7行?29頁6行)

[証拠方法]
乙第1号証:塗料用語辞典「体質顔料」233頁、及び「白色顔料」
301-302頁 1993年1月20日発行、
編者 社団法人色材協会、技報堂出版株式会社発行
乙第2号証:色材工学ハンドブック 目次iii-iv、1997年1月20
日発行、編集者 (社)色材協会、株式会社朝倉書店発行
乙第3号証:塗料原料便覧第7版 目次(15)-(16)及び(19)、
平成11年5月31日 編者 社団法人日本塗料工業会、
社団法人日本塗料工業会発行
乙第4号証:化学大辞典「白色顔料」52頁、1993年6月1日
編集者 化学大辞典編集委員会、共立出版株式会社発行
乙第5号証:「セメント・セッコウ・石灰ハンドブック」第632?
641頁 編者:無機マテリアル学会、発行所:
技報堂出版株式会社、1995年11月1日発行
乙第6号証:「顔料の事典」第166?177頁
総編集者:伊藤征司郎、発行所:株式会社朝倉書店、
2000年9月25日発行
乙第7号証:一般財団法人日本塗料検査協会西支部作成の「試験結果報
告書」(依頼No.136500)(作成日:平成26年1月20日)
一請求人製品「新MKブレス漆喰」(MKグレー、MKイ
エロー)及びこれから酸化チタンを除いた塗料組成物
(MK-TiO_(2)グレー、MK-TiO_(2)イエロー)をそれぞれスプレ
ーで重ね塗りした下塗面と上塗面との色差を測定した試験
結果報告
乙第8号証:請求人の製品「新MKブレス漆喰」の使用方法を記載する
下田通商株式会社のホームページ(http://www.shimoda-
kaemon.co.jp/news/n20111125b.html)の出力物
乙第9号証:白石カルシウム株式会社のホームページの「取引商/塗料
分野」のページ(http://www.shiraishi.co.jp/calcium/
product/paints/ 及びhttp://www.shiraishi.co.jp/
calcium/product/paints/column/001/)の出力物
乙第10号証-1:漆喰塗料「酸化チタンなし」(パステルブルー、ピ
ンク、アイボリー)を重ね塗り(下塗り、上塗り)した漆
喰塗膜形成板の写真
乙第10号証-2:漆喰塗料「酸化チタン入り」(パステルブルー、ピ
ンク、アイボリー)を重ね塗り(下塗り、上塗り)した漆
喰塗膜形成板の写真
乙第11号証-1:一般財団法人日本塗料検査協会西支部作成の「試験
結果報告書」(依頼No. 136388-2)(作成日:平成26年1
月8日)-漆喰塗料「酸化チタンなし」(パステルブル
ー、ピンク、アイボリー)を重ね塗りした下塗面と上塗面
との色差を測定した試験結果報告書
乙第11号証-2:一般財団法人日本塗料検査協会西支部作成の「試験
結果報告書」(依頼No. 136388-1)(作成日:平成26年1
月8日)-漆喰塗料「酸化チタン入り」(パステルブル
ー、ピンク、アイボリー)を重ね塗りした下塗面と上塗面
との色差を測定した試験結果報告書


第4 無効理由についての当審の判断
1.甲第1?5号証の記載事項
(1)甲第1号証の記載事項
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第1号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審において付与。以下同様。)
ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、内外装仕上げに用いることができ、耐久性、防火性、呼吸性に富み、且つ施工性に優れた無機質仕上げ材組成物及びそれを用いた工法に関する。」

イ 「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記何れの組成物もこて塗りにより塗工されるのであるが、この仕上げ塗りには左官の熟練した技術が要求されるものであった。即ち、白壁をムラなく均一な壁面にすることは難しく、さらに着色した色漆喰をムラなく仕上げることはそれ以上難しいものであった。しかも、左官技能者の老齢化や若年技能者の減少が深刻な問題となっている今日、“漆喰仕上げ”は減少の一途をたどっていた。
【0006】また、漆喰は施工後長時間かけて、空気中の炭酸ガスを吸収して硬化し、耐久性が向上するものであるが、その過程でクラックが発生し易いため、施工後も壁面として美観を保ち、耐久性の高い仕上げ材が要求されていた。
【0007】さらに、建築様式の変化でテクスチャーが平滑面だけでは顧客の要求に対応できないため、施工し易いことは勿論、様々なテクスチャーに対応できる仕上げ材が要求されていた。また、素朴さ、味のある壁面が要求され、併せて呼吸機能、透湿機能、耐久性等も要求され、新しい仕上げ材が望まれてきた。尚、塗料等の有機質素材をベースにした仕上げ材は既に開発され、施工し易いことから広く用いられてきたが、無機質素材が有する重厚感、高級感、耐久性を発現できるものではなかった。したがって、有機質素材の施工性の良さ、仕上げの均一さを備え、様々なテクスチャーが表現でき、しかも無機質素材の持つ、高級感、重厚感、耐久性を併せ持ち、多彩仕上げが可能となるような無機質仕上げ材組成物及び工法が希求されていた。」

ウ 「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記に鑑み提案されたもので、上塗り材組成物と下塗り材組成物とからなって、下塗り材組成物は、消石灰に、シリカヒューム、アルコール、エチレングリコール、水溶性増粘剤、ベントナイト等を含有し、必要に応じてパルプ質、アクリル、ポリエステル、ビニロン繊維等の化学繊維、或いは麻等の天然繊維を含有し、ポリカルボン酸系、ナフタリンスルホン酸系等の分散剤を用いて水と混練したものであることを特徴とする無機質仕上げ材組成物に関するものである。
【0009】上記下塗り材組成物中の消石灰は、重油焼、塩焼どちらも使用できるが、塩焼の方が作業性が良好である。
【0010】また、シリカヒューム、アルコール、エチレングリコールは、ムラ乾きをできるだけなくし、仕上げ後の色調を均一にするためのものである。即ち、上記成分を含まない従来の漆喰組成物は、粘度が高く、保水性が高いために乾燥が非常に遅く、色ムラが発生し易く、強度の発現も遅かった。上記シリカヒュームは、下塗り材組成物中に溶解しているCaイオンと反応して下塗り材組成物の仕上げ表面に遊離析出するのを防止するので、色ムラを防止することができる。また、混練り物に流動性の向上を付与し、作業性を向上させる。また、一般に揮発性が高いアルコールは、下塗り材組成物中に存在する水を抱き込んで蒸発するので樹脂系仕上げ材と同様な乾燥性を示し、強度の発現を速める。さらに、一般に揮発性が低いエチレングリコールは、下塗り材組成物の表面のみの乾燥を防止し、組成物の内部を含めた全体から均等に乾燥させるようにするものであり、凸部の形成(造形)、こて押さえなどを容易にする。
【0011】さらに、ベントナイトは、こて塗りの際のこて伸び、こて切れを向上させ、凸部を形成(造形)した後のたれを防止する。特に、白色として仕上げるためには白色度80%以上のものを用いることが好ましい。
【0012】必要に応じて添加するパルプ質、アクリル、ポリエステル、ビニロン繊維等の化学繊維、或いは麻等の天然繊維は、クラックの発生を防止し、こて塗りの際のこて伸びを向上させる。上記パルプ質としてはパルププロック、或いは古紙の粉砕品を用いることができる。
【0013】水溶性増粘剤は、前記ベントナイトと同様に凸部を形成(造形)した後のたれを防止する。また、粘性挙動、増粘効果、混練り時の混和性、粘度の安定性、保水性を付与する。上記水溶性増粘剤としてはメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等通常用いられているものの中から適宜に選定して用いることができ、添加量は保水性、作業性を考慮して決めれば良い。
【0014】ポリカルボン酸系、ナフタリンスルホン酸系等の分散剤は、できるだけ少ない水で下塗り材組成物を分散混合することにより、乾燥性を向上させ、さらに水に溶解するCaイオンの量を低減し、色ムラを防止する。また、着色剤を添加する場合には、着色剤を安定に分散させ、色別れや色ムラを防止する。さらに、下塗り材組成物の混練り物を適宜な包装材に充填する場合には、混練り物の粘性が変化して組成物がしまり、流動性がなくなることを防止し、包装材から出したそのままの状態での使用を可能にする。この分散剤は、用いた着色剤の色別れや混練り物の粘性の変化のないものを予め試験して適宜に選択すれば良い。
【0015】尚、上記各成分の作用を阻害しない限り付加させる目的に応じてどのような成分を添加しても良い。例えばアクリル系、酢酸ビニル系等の合成樹脂エマルジョンを混入することにより、初期の乾燥を速め、初期強度、接着性、耐水性等を向上させることができる。」

エ 「【0016】また、本発明は、上塗り材組成物と下塗り材組成物とからなって、上塗り材組成物は、消石灰に、シリカヒューム、エチレングリコール、水溶性増粘剤、炭酸カルシウム等を含有し、必要に応じてパルプ質、アクリル、ポリエステル、ビニロン繊維等の化学繊維、或いは麻等の天然繊維を含有し、ポリカルボン酸系、ナフタリンスルホン酸系等の分散剤を用いて水と混練したものであることを特徴とする無機質仕上げ材組成物をも提案するものである。
【0017】前記下塗り材組成物を塗工し、乾燥後その表面に塗工する上塗り材組成物として有機質樹脂系組成物を用いると、前記下塗り材組成物が炭酸ガスを吸収することができずに硬化が不十分となって十分な物性を得ることができない。また、施工後の乾燥が速いため、例えば凸部を形成させた下塗り材組成物の表面全面に上塗り材組成物を塗布して凸部に付着した上塗り材組成物を拭き取ろうとしても乾燥して拭き取ることができない。したがって、通気性、呼吸性、適当な乾燥性を有する必要があり、前記下塗り材組成物と同様の組成を有するものでなければならない。また、デザイン上濃色も要求されるため、白化による色ムラにならないような組成物が必要である。
【0018】上塗り材組成物中のシリカヒュームは、前述同様組成物中のCaイオンと反応し、色ムラの防止になる。また、エチレングリコールは、下塗り材凸部に付着した上塗り材を拭き取るまで乾燥しないよう添加されるものであり、好ましくは1?10%の範囲で添加する。さらに、炭酸カルシウムは、白色顔料の作用と漆喰の強度調整、こて塗りの際のこてのすべりを向上させる。また、本発明の上塗り材組成物にも、接着性の向上、耐水性の向上のため、拭き取り作業を阻害しない範囲内でアクリル系、酢酸ビニル系等の合成樹脂エマルジョンを混入しても良い。」

オ 「【0019】尚、下塗り材組成物、上塗り材組成物はそれぞれ単体で仕上げに使用することも可能であり、極めて施工性が良好である。しかし、単色仕上げとなるため、特に平滑面に仕上げる場合には視覚的に面白みがあるものではない。そこで、本発明は、前記構成の下塗り材組成物及び上塗り材組成物を用いて、様々なテクスチャーを表現でき、しかも各組成物の色彩により多彩な仕上げを可能とした工法をも提案する。即ち、本発明は、前記構成の下塗り材組成物をこて或いは治具、ローラー等を用いて凸部が形成(造形)されるように塗工し、乾燥した後、上記下塗り材組成物と同色または異色の前記構成の上塗り材組成物を上記凸部を除く部分に塗工する工法を提案するものである。
【0020】上記凸部は、前記下塗り材組成物を塗工して流動性を有しているうちに適宜方法で所望の表面模様(凸部)を形成し、見掛け上水浮き等がなくなって生乾きの状態で凸部表面処理をすれば良く、特にその方法を限定するものではないが、例えば以下の方法がある。下塗り材組成物をこてで壁面に塗り付けた後、木製治具を壁面に直角に押し当てて引き上げ、水引き後に上下にこてを動かして押さえると、あやめ状の模様が形成される。また、木製治具を壁面に直角に押し当てて廻しながら引き上げ、水引き後にこてを廻しながら押さえると、ばら状の模様が形成される。さらに、マスチックローラーでパターン出しを行い、水引後、こてで押えるとくちなし状の模様が形成され、金ごての尻を用いてランダムにパターン出しを行うとあじさい状の模様が形成される。
【0021】凸部を形成(造形)させた後には、合成樹脂エマルジョン又は合成樹脂溶液を凸部に塗布しても良い。上記合成樹脂エマルジョン又は合成樹脂溶液は、凸部の艶出し効果を有するが、下塗り材組成物が炭酸ガスを吸収することができるような通気性を有していることが必要である。上記合成樹脂溶液としては、例えばイソシアネート基10?0.5重量%及び加水分解性シラン基(珪素原子を基準として)7.5?0.4重量%を含有して平均分子量が50000?3000であるポリマーを主成分とする一液硬化型樹脂組成物またはフッ素系エマルジョン樹脂等の透湿性能の高い樹脂を用いることができる。
【0022】その後、前記上塗り材組成物を、上記凸部を除く部分(凹部)に塗工するのであるが、凹部のみに塗り付けるようにしても良いし、或いは全面に塗り付けて凸部に付着した上塗り材組成物を拭き取るようにしても良い。上記上塗り材組成物は、下塗り材組成物と同色のものを用いても良いが、下塗り材組成物と異色のものを用いて多彩仕上げとする方が視覚的興趣に富むものとなる。
【0023】このような工法により施工された漆喰壁は、極めて視覚的興趣に富んだものとすることができ、しかも無機質素材が有する高級感、重厚感、耐久性を併せ持ち、呼吸性、通気性、素朴さ等をも有するものとなる。」

カ 「【0024】
【実施例】以下に、本発明の実施例を示す。
【0025】[配合例1?8]下記表1に示す配合組成により下塗り材組成物を調合し、以下に示す性能評価試験を行った。
【0026】
【表1】

【0027】[配合例9?16]下記表2に示す配合組成により上塗り材組成物を調合し、以下に示す性能評価試験を行った。
【0028】
【表2】

【0029】[比較例1?4]下記表3に示す配合組成の組成物を調合し、以下に示す性能評価試験を行った。
【0030】
【表3】
・・・(略)・・・
【0031】[下塗り材組成物の作業性、ダレの有無、乾燥状態、色ムラの確認]温度20℃、湿度65%のシュミレーション環境試験室に石膏ボード厚9mm(1820×910)を2枚貼り、SSプラスター(富士川建材工業株式会社製)を約3mm厚に施工し、1週間乾燥養生後試験用下地とした。配合例1?8の下塗り材組成物を3.3m^(2)分施工し、10×5cm角程度の押さえ面を有する木製治具を直角に押し当てて(押さえ面を塗布面と平行にして垂直方向から押さえる)引き上げ、水引後に上下にこてを動かしてこて押さえを行い、あやめ状の凸部を形成した。そして、作業性、パターン出し後のダレの有無を確認し、施工後の乾燥状態、色ムラの状態を目視により観察し、評価した。
【0032】[保存安定性の確認]配合例1?8の下塗り材組成物及び配合例9?16の上塗り材組成物を500ccのポリビンに入れ、50℃の恒温水槽に7日間放置し、下塗り材組成物の粘度の変化(しまり具合)を確認した。
【0033】[拭き取り易さの確認]下塗り材組成物の作業性を評価した試験面に、短毛ローラーを用いて合成樹脂エマルジョン(東洋インキ株式会社製)を凸部に塗布し、乾燥後、配合例9?16の上塗り材組成物をゴムこてを用いて塗り付け、凸部にできる限り残らないように伸ばし、凹部が水引後、硬めのスポンジを用いて凸部に付着している上塗り材組成物を拭き取り評価した。
【0034】[上塗り材組成物の作業性、乾燥状態、色ムラ、アクの確認]拭き取り易さを評価した際の作業性、壁面の乾燥状態、色ムラ、アクの発生状態を目視により評価した。
【0035】尚、上記各試験項目の評価基準は以下の通りである。
作業性は、こての伸び・こてぎれ等の良いものを ◎、
こての伸び・こてぎれ等の普通のものを ○、
こての伸び・こてぎれ等の悪いものを ×、
と評価し、表4?6に示した。
パターン出具合は、パターンの出具合が良く、ダレの無いものを ◎、
パターンの出具合が良いが、ダレの有るものを○、
パターンの出具合が悪く、ダレの有るものを ×、
と評価し、表4,6に示した。
乾燥状態は、乾燥時間が適当であるもの ○、
乾燥時間が早過ぎるか遅過ぎるもの ×、
と評価し、表4?6に示した。
色ムラは、色ムラの発生が無いものを ◎、
色ムラの発生が少ないものと ○、
色ムラの発生が多いものを ×、
と評価し、表4?6に示した。
保存安定性は、50℃の温水に7日間浸し、凝固しないものを ○、
50℃の温水に7日間浸し、凝固するものを ×、
と評価し、表4?6に示した。
拭き取り易さは、スポンジ等で拭き取り易いものを ○、
スポンジ等で拭き取り難いものを ×、
と評価し、表5,6に示した。
アクは、アクの発生が無いものを ◎、
アクの発生が少ないものと ○、
アクの発生が多いものを ×、
と評価し、表5,6に示した。
【0036】
【表4】

【0037】
【表5】



キ 「【0046】
【発明の効果】以上説明したように本発明の無機質仕上げ材組成物は、左官の熟練した技術を必要としなくても容易に白壁をムラなく均一な壁面にすることができ、さらに着色した色漆喰をムラなく仕上げることと共に様々なテクスチャーと多彩仕上げが容易にできるものである。
【0047】また、本発明により形成される漆喰構造は、施工後もクラックを発生させることが無く、壁面として美観を保ち、耐久性の高い仕上げ材となる。
【0048】さらに、本発明の無機質仕上げ材組成物は、様々なテクスチャーに対応できるものであって、有機質素材の施工性の良さ、仕上げの均一さを備え、しかも無機質素材の持つ、高級感、重厚感、耐久性を併せ持ち、多彩仕上げが可能となるものである。
【0049】したがって、本発明の工法は、従来にない優れた外観を呈する壁面構造を形成することができるものである。」

ク 下塗り組成物の配合組成である【表1】を参照すると、配合例1?8の全てに炭酸カルシウム粉及び顔料が配合され、上塗り組成物の配合組成である【表2】を参照すると、配合例9?16の全てに顔料が配合され、配合例9?15には炭酸カルシウムが配合されていることがみてとれる。

ケ 上記アないしクからみて、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「下塗り材組成物をこて或いは治具、ローラー等を用いて凸部が形成(造形)されるように塗工し、乾燥した後、上記下塗り材組成物と同色または異色の上塗り材組成物を上記凸部を除く部分に塗工する工法において、
前記下塗り材組成物は、消石灰に、シリカヒューム、アルコール、エチレングリコール、水溶性増粘剤、ベントナイト、炭酸カルシウム、合成樹脂エマルジョン,顔料等を含有し、分散剤を用いて水と混練したものであり、
上記上塗り材組成物は、消石灰に、シリカヒューム、エチレングリコール、水溶性増粘剤、炭酸カルシウム、合成樹脂エマルジョン,顔料等を含有し、分散剤を用いて水と混練したものであって、
上記炭酸カルシウムは、白色顔料の作用を有し、
上記シリカヒュームは、両組成物中に溶解しているCaイオンと反応して下塗り材組成物の仕上げ表面に遊離析出するのを防止するので、色ムラを防止することができ、
上記分散剤は、できるだけ少ない水で下塗り材組成物を分散混合することにより、乾燥性を向上させ、さらに水に溶解するCaイオンの量を低減し、色ムラを防止し、また、着色剤を添加する場合には、着色剤を安定に分散させ、色別れや色ムラを防止し、
着色した色漆喰をムラなく仕上げることと共に、様々なテクスチャーを表現でき、しかも各組成物の色彩により多彩な仕上げを可能とした工法。」

(2)甲第2号証の記載事項
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第2号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 「【0010】すなわち本発明は、下記1.?7.に掲げる塗料組成物である:
1.消石灰、アクリル系樹脂、無機顔料及び水を含有する塗料組成物であって、(a)消石灰の配合割合が30?80重量%(固形換算)、(b)アクリル系樹脂が(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド類及び(メタ)アクリロニトリルよりなる群から選択されるいずれか少なくとも1種をモノマー成分として含有するホモポリマーまたはコポリマーであって、該樹脂の消石灰100重量部に対する配合割合が10重量部未満(固形換算)、(c)無機顔料の消石灰100重量部に対する配合割合が1?220重量部(固形換算)である建築用塗料組成物。
・・・(略)・・・
3.無機顔料が酸化チタン,亜鉛華,リトポン,硫化亜鉛及びアンチモン白よりなる群から選択される少なくとも1種の白色顔料、好ましくは酸化チタンである1または2に記載の建築用塗料組成物。
・・・(略)・・・
5.乾燥塗膜の隠蔽力が500μm以下である1乃至4のいずれかに記載の建築用塗料組成物。」

イ 「【0024】本発明においては、上記消石灰及びアクリル系樹脂に加えて、更に顔料(白色顔料、有色顔料)並びに各種の添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、例えば顔料分散剤、湿潤剤、消泡剤、増粘剤、凍結融解安定剤、皮膜形成助剤及びレオロジー調整剤等の塗膜形成助剤の他、無機材料(細骨材などの無機充填剤)、界面活性剤、可塑剤、減水剤、流動化剤、防腐剤、防水剤、抗菌剤等を挙げることができる。
【0025】顔料としては、水性塗料に用いられるものであれば特に制限されず、いずれの顔料をも採用することもできるが、好ましくは無機顔料である。かかる無機顔料としては、酸化チタン,亜鉛華,リトポン,硫化亜鉛,アンチモン白、鉛白、ジルコニア等の白色顔料;カーボンブラックや酸化鉄等の黒色顔料:カドミウムレッド,べんがら(酸化鉄),モリブデンレッド、鉛丹等の赤色顔料:黄鉛(クロムイエロー),チタンイエロー,カドミウムイエロー,黄色酸化鉄,タン,アンチモンイエロー,バナジウムスズイエロー,バナジウムジルコニウムイエローの黄色顔料:酸化クロム,ビリジアン,チタンコバルトグリーン,コバルトグリーン,コバルトクロムグリーン,ビクトリアグリーン等の緑色顔料:群青,紺青,コバルトブルー,セルリアンブルー,コバルトシリカブルー,コバルト亜鉛シリカブルーなどの青色顔料といった各種の有色顔料を例示することができる。本発明の塗料組成物中に配合する顔料の割合は特に制限されず、所望の隠蔽力並びに色彩(明度、色度、彩度)に応じて適宜選択調整することができる。
【0026】無機顔料のうち好ましいものとして酸化チタン,亜鉛華,リトポン,硫化亜鉛またはアンチモン白等の白色顔料を挙げることができる。隠蔽力や着色力の観点から好ましくは酸化チタンである。・・・(略)・・・
【0027】・・・(略)・・・
【0028】酸化チタン等の上記白色無機顔料の配合割合は、消石灰100重量部に対する割合として1?220重量部、好ましくは1?100重量部、より好ましくは2?50重量部、さらに好ましくは2?30重量部、また更に好ましくは2?16重量部の範囲を挙げることができる。
【0029】また上記無機顔料の隠蔽力を向上させるためには、更に体質顔料を組み合わせて使用することができる。かかる体質顔料としては、制限はされないが、タルク,カオリンクレー,水酸化アルミニウム,炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム),ベントナイト、硫酸バリウム(沈降性硫酸バリウム、バライト粉),ホワイトカーボン及びシリカなどを挙げることができる。なお、これらの体質顔料は1種単独で使用しても、2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。中でも好ましい体質顔料は炭酸カルシウム、タルクまたはホワイトカーボンである。
【0030】消石灰を主成分とする塗料組成物に酸化チタンなどの無機顔料を上記割合で配合することにより調製される本発明の塗料組成物は、より少ない塗布量で被塗布面を隠蔽することができ、しかもかかる少量の塗料で形成された塗膜は、薄塗膜ながら所望の外観や物性を有しており、調湿性やそれに伴う結露防止性等の機能を発揮させることも可能である。」

ウ 「【0048】具体的には、本発明の塗料組成物には、JIS K 5663-1995の規定に従ってJIS K5400の方法に準じて測定した場合に少なくとも下記の品質(JIS K 5663-1995)を有する建築用塗料組成物が含まれる:
(1) 容器の中での状態:かき混ぜた場合に塊がなく中身全体が一様になる:
(2) 塗装作業性:2回塗りで塗装作業に支障がない:
(3) 低温安定性:-5℃に冷やしたとき変質しない:
(4) 塗膜の外観:塗膜の外観が正常である:
(5) 耐アルカリ性:水酸化カルシウム飽和溶液(20±1℃)に18時間浸したときに異常がない:
(6) 耐洗浄性:100回の洗浄に耐える:
(7) 隠蔽率:0.95以上
・・・(略)・・・」

エ 「【0079】例6
例1及び4で調製した塗料組成物をそれぞれエアレススプレーに入れて、石膏ボード(タテ20cm×ヨコ20cm×厚さ1cm、吉野石膏製)の一面に満遍なく吹き付け、通風乾燥によって塗膜(合計塗布量(塗料総量)500g/m^(2)、乾燥塗膜0.35mm)を形成した。石膏パネルは、直射日光、斜光、照明等の様々の光に対して、いずれも吹きムラ、色ムラ及び艶ムラが見られず、均一な外観を有していた。該パネルは、吸湿性及び放湿性に優れており湿度80%の環境下においても結露の発生を有意に防止することができた。さらに、該パネルの塗膜層の表面に直火を近づけても発火せず、また煙も発生せず、耐燃性に優れていることが確認された。」

(3)甲第3号証の記載事項
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第3号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 「【0010】緩衝下地層として、前記無機質ボード張り面の目地を塞ぐ目地処理層を含むことができる。目地処理層としては、寒冷紗、ガラス繊維、ビニロンネットなどの繊維質材料を用いることができる。目地処理層は、目地とその周辺のみに設けておけばよい。目地処理層により、目地の隙間によって漆喰壁の表面に凹凸やヒビ割れなどが生じたりする問題を防げる。
〔漆喰スラリー〕
(a) 漆喰
漆喰は、通常の建築施工に用いられる漆喰と基本的には同様の材料および配合からなる。漆喰は消石灰を主成分とするが、その割合や添加する他の成分には特に限定はない。具体的には、消石灰以外に、無機材料、すさ、漆喰用糊等を適宜割合で含有させておくことができる。
【0011】漆喰に含まれる無機材料としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸バリウムおよび水酸化バリウムを挙げることができる。無機材料は、消石灰と混和して強度を高めることから、炭酸カルシウムが好ましい。無機材料の配合量は、消石灰100重量部に対して、5?100重量部の範囲が好ましい。すさは、漆喰組成物を壁材等に使用した時にひび割れを防止する働きがあり、例えば、マニラ麻、和紙、しゅろ、木材パルプ、合成繊維およびガラス繊維を挙げることができる。すさは、漆喰の質感を損なうことなく、繊維が細く、強度が高いものがよい。このような観点からは、すさとしては和紙が好ましい。すさの配合量は、消石灰100重量部に対して、0.5?2重量部の範囲が好ましい。
【0012】漆喰用糊は、古来から使用されている天然の糊、合成糊のいずれであってもよく、これらを適宜混合して使用してもよい。漆喰用糊としては、例えば、にかわ、うるち米、こんにゃく粉および布海苔等の天然の糊;ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の合成糊を挙げることができる。漆喰用糊の配合量は、消石灰100重量部に対して、0.5?1.5重量部の範囲が好ましい。」

イ 「【0015】(d) その他の成分
漆喰スラリーには、混練剤、顔料、減水剤あるいは消泡剤等が配合されていてもよい。混練剤は樹脂および水を含んでいる。混練剤に含まれる樹脂としては、例えば、水系アクリル樹脂、水系酢酸ビニル系樹脂、水系エポキシ系樹脂および水系ウレタン系樹脂が挙げられる。混練剤中の樹脂および水の配合比は、樹脂20?60重量%に対して、水40?80重量%である。必要に応じて、混練剤中に樹脂および水以外の成分が配合されていてもよい。」
【0016】・・・(略)・・・
【0017】顔料としては、例えば、酸化鉄、シアニングリーン、酸化チタン、カーボンが挙げられる。顔料の配合量は、漆喰100重量部に対して、0?3重量部であるのが好ましい。減水剤としては、例えば、フェノール系粉末、ナフタレン系粉末、リグニン系粉末を含むものが挙げられる。減水剤の配合量は、漆喰100重量部に対して、0.3?1.0重量部であるのが好ましい。」

(4)甲第4号証の記載事項
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第4号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 「【0018】本発明においては、建築用ボードの用途に求められる物性および製造時の操作性に応じて、水酸化カルシウム、短繊維および水性エマルジョンと水との混練物に各種の添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、無機細骨材、微粒子、顔料、増粘剤、流動化剤、消泡剤等を例示することができる。
【0019】上記の無機細骨材としては、例えば、平均粒子径が0.05?2.0mmである炭酸カルシウム、珪砂、寒水砂、マイカ、施釉珪砂、施釉マイカ、セラミックサンド、ガラスビーズ、パーライト等を挙げることができる。該無機細骨材の添加方法としては、水酸化カルシウム、短繊維および水性エマルジョンとを水と混練時に混入する方法のほか、該硬化性組成物を基材に塗布した後、その表面に無機細骨材を均一に散布する方法が用いられる。
【0020】・・・(略)・・・
【0021】また、前記した顔料としては左官用に一般に用いられるもの、例えば、平均粒子径が1?50μmの酸化鉄、酸化チタン、酸化クロム等の金属酸化物および各種石粉が挙げられる。」

イ 「【0028】(3)顔料;水酸化カルシウム100重量部に対して10重量部以下であれば特に問題なく使用できる。」

(5)甲第5号証の記載事項
本件特許の原出願日前に頒布された刊行物である甲第5号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 「【0012】本発明にいう表面仕上げ塗料には、先ず親水性糊剤が使用されるが、該糊剤はセメント系の材料の分散性を向上し、コンクリート打設面によく誘導、浸透させ、且つ接着させるはたらきを有するものであり、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物水溶液、エチレン-酢酸ビニル共重合体又はその部分ケン化物の水溶液又は水性エマルション、エチレン-アクリル酸共重合体水溶液又は水性エマルション、カルボキシメチルセルロース水溶液、メチルセルロース水溶液、デンプン水溶液等が好ましく使用される。
【0013】上記表面仕上げ塗料には上記糊剤に加えて、コンクリートに対して浸透性のあるセメントノロ、セメントモルタル、ポリマーセメントモルタル等が配合されたものであり、更に仕上げ材の色調、硬化性、不陸対策としての固化容積を考慮してセメント、ドロマイト、石灰等を適宜加えることもできる。
【0014】セメント成分としては通常使用されるポルトランドセメント、高炉セメント、アルミナセメント、ジェットセメント、白色セメント等、更には適宜石膏の配合されたものが適宜使用される。・・・(略)・・・
【0015】・・・(略)・・・
【0016】表面仕上げ材には、必要に応じて着色材が使用され、該着色材の浸透性の差がコンクリート打設面の不定形模様の形成に貢献する。使用される着色材としては水性染料、水性ペイント、水分散型顔料等が好ましく、又コンクリート打設面の色調に近いものが好ましいから、カーボンブラック、墨汁等黒色のものと、酸化チタン等の白色顔料の分散型顔料の適宜な配合が特に好適である。特に上記墨汁は、にかわの存在に起因するためか、凝集性が観察され、模様が発生し易い材料の一である。顔料としては、酸化鉄、カーボンブラック(黒色)、酸化チタン(白色)、黄土(黄色)、ベンガラ(赤色)、群青(青色)等が耐候性もよいため特に好ましく使用される。」

2.当審の判断
[無効理由1]
(1)本件発明1について
ア 対比
甲1発明の「消石灰」,「合成樹脂エマルジョン」,及び「顔料」が、本件発明1の「石灰」,「結合剤」及び「着色顔料」にそれぞれ相当する。
甲1発明は、「着色した白漆喰をムラなく仕上げる」「工法」であるので、甲1発明の「下塗り材組成物」及び「上塗り材組成物」は、本件発明1の「着色漆喰組成物」に相当する。
甲1発明の「下塗り材組成物をこて或いは治具、ローラー等を用いて凸部が形成(造形)されるように塗工し、乾燥した後、上記下塗り材組成物と同色または異色の上塗り材組成物を上記凸部を除く部分に塗工」は、「着色漆喰組成物を重ね塗りする着色漆喰塗膜の形成」に相当する。
また、甲1発明の「工法」は、「方法」といえるので、本件発明1と甲1発明とは、下記の一致点を有し、そして下記の相違点1及び2で相違している。
一致点:着色漆喰組成物を重ね塗りすることによる着色漆喰塗膜の形成において、着色漆喰組成物として石灰、着色顔料、結合剤及び水を含有する組成物を用いる、方法。
相違点1:本件発明1は、「白色顔料」を含有しているのに対し、甲1発明は、白色顔料の作用を有する炭酸カルシウムを含有している点。
相違点2:本件発明1は、「重ね塗りによる着色漆喰塗膜の白色化に伴う色差発生を抑制する」のに対し、甲1発明は、着色漆喰塗膜を重ね塗りするものであって、色ムラを抑制するものであるが、上記白色化に伴う色差発生を抑制するものであるかどうか不明な点。

イ 判断
上記相違点について検討する。
〔相違点1〕
(ア)まず炭酸カルシウムについて、甲第1号証の記載事項を確認する。
上記「1.(1)カ」の【表1】,【表2】,【表4】及び【表5】をみると、上塗り材組成物の配合例16は、炭酸カルシウムを配合していないものであるが、色ムラの発生は少ない評価結果となっており、炭酸カルシウムを配合している下塗り材組成物1?8及び上塗り組成物9?15の評価結果は、色ムラの発生の無いもの、色ムラの発生の少ないもの、色ムラの発生の多いものといろいろある。
これらの評価結果からみて、甲1発明における炭酸カルシウムは、その有る無しによって、色ムラの発生の大小に影響を与えるものではないことから、甲1発明の炭酸カルシウムが白色顔料の作用を有するものであったとしても、本件発明の白色顔料の様な機能を有するものではない。
また乙第1号証?乙第6号証をみると、塗料一般においては、炭酸カルシウムは体質顔料であって、白色顔料とは区別して用いられていることが判る。

(イ)一方、本件明細書をみると、「漆喰組成物には、その他の任意成分として、本発明の効果を妨げない範囲で、体質顔料・・・等を配合することもできる。」(段落【0047】)こと、及び「体質顔料としては、・・・炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム、軽質(沈降性)炭酸カルシウム)・・・などを例示することができる。」ことが記載されているように、本件発明1においても、炭酸カルシウムはあくまで体質顔料であって、白色顔料として扱っていない。

(ウ)さらに、本件明細書の実験結果を検証する。
【表2】において、無機白色顔料を含有した実施例4と、無機白色顔料は含有していないが体質顔料として炭酸カルシウムを含有した比較例2の観察結果をみると、【0118】に「白色顔料を含まない比較組成物は、水を含んだ乾燥前の状態(湿潤塗膜)では白色顔料を含む本発明組成物に比して濃い茶色を有していたのに対し、乾燥後は本発明組成物の乾燥塗膜に比して顕著に白色化しており、色飛びが生じていることが観察された。」と記載されているので、無機白色顔料の代わりに炭酸カルシウムを含有しても、本件発明の効果を奏するものではない。
次に【表3】において、無機白色顔料を含有した実施例5と、無機白色顔料は含有していないが体質顔料として炭酸カルシウムを含有した比較例3の観察結果をみると、【0212】に「その結果、石灰(水酸化カルシウム)に代えて沈降炭酸カルシウムを用いた比較組成物4(白色顔料を含まず)は、2回塗り及び3回塗りと塗り重ねるにつれて段々と塗工面の色が濃くなる(重ね塗りによる濃色化)のに対し、石灰を用いた比較組成物3(白色顔料を含まず)は、2回塗り及び3回塗りと塗り重ねるにつれて段々と塗工面の色が白くなる(重ね塗りによる白色化)ことがわかった。・・・(省略)・・・一方、石灰に白色顔料を配合した本発明の着色漆喰組成物(本発明組成物)は、色飛び及び白色化が有意に抑制されており、重ね塗りして調製した2回塗工面及び3回塗工面はいずれも1回塗工面と同じ色目(色度、色相、色彩)を有しており、目視によって色差は認められなかった。」と記載されているように、無機白色顔料の代わりに炭酸カルシウムを含有しても、本件発明の効果を奏するものではない。
また【表4】において、無機白色顔料を含有した実施例6,7と、無機白色顔料は含有していないが体質顔料として炭酸カルシウムを含有した比較例5,6の観察結果を【0127】?【0129】と併せてみると、実施例6,7は、色むらが全くなく、色差は0.5以下であって、さらに塗工乾燥時の塗膜面と1週間後の塗膜面を対比した色むらの発生が殆ど認められないものであるのに対し、比較例4,5は、色むらが認められ、色差が1より大きく、さらに塗工乾燥時の塗膜面と1週間後の塗膜面を対比した色むらの発生が認められる、という結果となっている。そうすると、無機白色顔料の代わりに炭酸カルシウムを含有しても、本件発明の効果を奏するものではない。

(エ)以上のことから、炭酸カルシウムが、仮に白色顔料の作用を有するものであって、また甲第6号証によると、体質顔料である炭酸カルシウムが、白色顔料として用いられる場合があり、さらに、甲第12号証?甲第14号証によると、塗工紙の分野に限れば、炭酸カルシウムが白色顔料として扱われているとしても、上記(ア)ないし(ウ)のとおりの一般的な顔料の定義や本件明細書における定義、甲第1号証及び本件明細書における実験結果等に照らして、甲1発明の炭酸カルシウムは、本件発明1の白色顔料ということはできず、相違点1は、実質的な相違点であることに変わりはない。

〔相違点2〕
甲1発明は、着色した色漆喰をムラなく仕上げるものであって、着色漆喰塗膜を重ね塗りするものの、その色差については考慮しているかどうか不明である。
また甲1発明は、「下塗り材組成物をこて或いは治具、ローラー等を用いて凸部が形成(造形)されるように塗工し、乾燥した後、上記下塗り材組成物と同色または異色の上塗り材組成物を上記凸部を除く部分に塗工する工法」であって、「様々なテクスチャーを表現でき」ることからみても、上塗り材組成物と下塗り材組成物の色差、つまり重ね塗りの色差発生を抑制することについて考慮しているかどうか不明である。
そうすると、甲第1号証には、「重ね塗りによる着色漆喰塗膜の白色化に伴う色差発生を抑制する」ことが記載されているとはいえない。
さらに請求人が主張するように、甲1発明の「着色した色漆喰をムラなく仕上げる」ことが、実質的に本件発明の「重ね塗りによる着色漆喰塗膜の白色化に伴う色差発生を抑制する」ことともいえず、相違点2が実質的な相違点であることに変わりはない。

ウ 小括
以上のことから、甲1発明は、甲第1号証に記載された発明とは認められない。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成をすべて含み、さらに「上記着色漆喰組成物が、白色顔料を石灰100重量部に対して5重量部以上の割合で含むものである」ことを付加して限定するものである。
そうすると、本件発明1が上記(1)イで述べたように、甲1発明は、甲第1号証に記載された発明とは認められないので、本件発明1の構成要件をすべて含み、さらに限定を加えたものである本件発明2も、同様の理由により甲第1号証に記載された発明とは認められない。

(3)まとめ
以上のことから、本件発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明ではないので、請求人が主張する無効理由1は理由はない。

[無効理由2]
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、上記[無効理由1](1)アに記載した一致点で一致し、相違点1及び2で相違している。

イ 判断
上記相違点1及び2について検討する。
〔相違点1〕
上記「[無効理由1](1)イ〔相違点1〕(エ)」に記載したとおり、甲1発明の炭酸カルシウムは、白色顔料とは認められない。
次に、甲第2?5号証に記載された白色顔料である酸化チタンを甲1発明に適用するかどうかについて検討する。
請求人は、「甲1発明の炭酸カルシウムは、白色顔料の作用を有しているので、白色顔料として周知な酸化チタンを甲1発明の炭酸カルシウムの代わりに用いることは、当業者にとって容易である。また、酸化チタンは、屈折率が炭酸カルシウムと比べて高く、隠蔽力に優れ、また着色力にも優れているので、白色顔料として炭酸カルシウム以上の性能を期待できる酸化チタンを甲1発明に適用してみようとする動機付けは十分にある。」と主張している。
しかしながら、上記「[無効理由1](1)イ〔相違点1〕(ウ)」に記載したように、甲第1号証において、炭酸カルシウムの有る無しが、色ムラの発生の大小に影響を与えないことから、甲1発明は色ムラを抑制することに着目しておらず、色差発生を抑制する動機付けが存在しない。
また、甲第1号証の記載をみても、白色顔料の作用がある炭酸カルシウムは「白色顔料」の一例としてとらえることができず、炭酸カルシウムを添加する目的に照らして、他の白色顔料一般が代換物となることを思い付くとはいえない。仮に、甲1発明の炭酸カルシウムが白色顔料の一例ととらえられるとしても、炭酸カルシウムを色ムラ抑制のために添加しているのではないので、色ムラ抑制に着目して白色顔料に代換することを思い付くものでもない。
さらにいえば、白色顔料と色差発生の抑制に関する証拠も他にないことから、色差発生を抑制するために、白色顔料をさらに添加することも容易ではない。
したがって、請求人が主張するように、甲1発明に甲第2?5号証に記載された酸化チタンを加えることが当業者にとって容易とはいえない。

〔相違点2〕
上記「[無効理由1](1)イ〔相違点2〕」に記載したとおり、甲第1号証には、「重ね塗りによる白色化に伴う色差発生を抑制する」ことが記載されているとはいえない。
また、甲第2?5号証、さらには請求人が提出する他の証拠にも、「重ね塗りによる白色化に伴う色差発生を抑制する」ことが記載されているとはいえない。
したがって、甲1発明において、「重ね塗りによる白色化に伴う色差発生を抑制する」ものとすることは、当業者が容易に成し得たとすることはできない。

ウ 小括
以上のことから、甲1発明は、甲第1?5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(2)本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、本件発明1の構成をすべて含み、さらに本件発明2は「上記着色漆喰組成物が、白色顔料を石灰100重量部に対して5重量部以上の割合で含むものである」ことを、本件発明3は「上記着色漆喰組成物が、白色顔料として白色顔料の使用態様を備える酸化チタンを含むものである」ことを、本件発明4は「着色顔料として酸化金属またはカーボンブラックを用いる」ことを付加して限定するものである。
そうすると、本件発明1が上記(1)で述べたように、甲第1?5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められないので、本件発明1の構成要件をすべて含み、さらに限定を加えて本件発明2ないし4も、同様の理由により甲第1?5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものとすることはできない。

(3)まとめ
以上のことから、本件発明1ないし4は、甲第1?5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものではないので、請求人が主張する無効理由2に理由はない。

[無効理由3]
(1)本件発明1の発明特定事項である「重ね塗りによる着色漆喰塗膜の白色化に伴う色差発生を抑制する」ことは、その一般的意味において明確である。

(2)また請求人は、甲第7?11号証を提示して、A1及びB1を充足するのみ(特に酸化チタンの有無)では、構成要件C1を充足しない、すなわち本件発明の目的を達成できない点、主張している。
しかしながら、甲第7?10号証の色差測定結果(平成26年3月4日付け上申書5頁の表2)における上塗り層と下塗り層の色差をみると、新MKプレス漆喰の上記色差は、新MKブレス漆喰から酸化チタンを抜いたものの上記色差よりも小さい値となることが多い。
全体的に色差が1以下であって、特別大きな色差が発生しているものではないかもしれないが、少なくとも酸化チタンを加えることによって、多少であっても色差が改善されている以上、A1及びB1を充足することで、本件発明の効果を奏することができるものと認められる。
また、甲第11号証については、酸化チタンの有無にかかわらず、下塗り層と上塗り層の色差の値が2以上であるが、そもそも白色化が発生している部分とそうでない部分との色差を測定しているのであって、下塗り層全体と上塗り層全体の色差ではないので、当該色差の値に意味があるのか不明である。
以上のことから、本件発明1は、A1及びB1を充足することで、構成要件C1を充足するものと認められる。

(3)上記(1),(2)のとおり、本件発明1は明確であるので、本件2?4についても同様に明確である。

(4)以上のとおり、本件発明1?4は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしており、無効理由3には理由がない。

第5 むすび
以上のとおり、請求人の主張する理由及び証拠方法によって、本件発明1ないし4に係る特許を、無効とすることはできない。
審判に間する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-05 
結審通知日 2014-08-07 
審決日 2014-08-20 
出願番号 特願2004-198846(P2004-198846)
審決分類 P 1 123・ 537- Y (E04F)
P 1 123・ 121- Y (E04F)
P 1 123・ 113- Y (E04F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永田 史泰  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 竹村 真一郎
住田 秀弘
登録日 2005-04-01 
登録番号 特許第3661154号(P3661154)
発明の名称 重ね塗りによって生じる着色漆喰塗膜の色差を抑制する方法  
代理人 酒井 一  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
代理人 蔵合 正博  
代理人 葛谷 稔  
代理人 平野 和宏  
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