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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08C 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G08C 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G08C |
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管理番号 | 1293199 |
審判番号 | 不服2013-3578 |
総通号数 | 180 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-12-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-02-25 |
確定日 | 2014-10-22 |
事件の表示 | 特願2008-557347「環境検出」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月 7日国際公開、WO2007/100856、平成21年 8月 6日国内公表、特表2009-528629〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 平成19年 2月28日 :国際特許出願 (優先権 平成18年2月28 アメリカ合衆国) 平成22年 2月26日 :手続補正書 平成24年 2月21日付け:拒絶理由通知(同年同月28日発送) 平成24年 4月10日 :意見書 平成24年 4月10日 :手続補正書 平成24年10月16日付け:拒絶査定(同年同月23日送達) 平成25年 2月25日 :手続補正書(以下「本件補正」という。) 平成25年 2月25日 :審判請求 平成25年 5月30日 :前置報告 平成25年 9月 2日付け:審尋(同年同月3日発送) 平成26年 2月26日 :回答書 第2 補正却下の決定 [結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 (1) 本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである。 「【請求項1】 周囲の状態を検出するための環境センサと, データ記憶部を提供するメモリと, 時間を測定し,且つ,環境センサにて,周囲の状態の測定である環境測定を実行し,前記環境測定に基づいて,動作すべきかを判断するとともに,イベントが発生したときに,アラーム報知する論理回路と, 前記アラーム状態を表示するために,前記論理回路に接続されたインジケータ部と, 前記論理回路,及び,前記メモリのうちの少なくとも1つに,電力を供給するための電源と, を備える電子機器アセンブリ。」 (2) 本件補正後の特許請求の範囲 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである。なお,下線は補正箇所を示す。 「【請求項1】 周囲の状態を検出するための環境センサと, データ記憶部を提供するメモリと, 時間を測定し,且つ,環境センサにて,周囲の状態の測定である環境測定を実行し,前記環境測定に基づいて,動作すべきかを判断するとともに,イベントが発生したときに,アラーム報知する論理回路と, 前記アラーム状態を表示するために,前記論理回路に接続されたインジケータ部と, 前記論理回路,及び,前記メモリのうちの少なくとも1つに,電力を供給するための電源と,を備え, 前記論理回路は, 前記環境測定に基いて,情報が変動しない場合,あるいは,情報の変動量が許容される限界を超えない場合にデータ点を破棄し,あるいは前記環境測定に基いて,許容可能と判断される特定の範囲内にデータ点がある場合,データ点を圧縮する ことを特徴とする電子機器アセンブリ。」 2 本件補正の目的 本件補正は,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)を特定するために必要な事項である「論理回路」について,「前記環境測定に基いて,情報が変動しない場合,あるいは,情報の変動量が許容される限界を超えない場合にデータ点を破棄し,あるいは前記環境測定に基いて,許容可能と判断される特定の範囲内にデータ点がある場合,データ点を圧縮する」と限定して減縮する補正を含む。 そうしてみると,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 そこで,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて,以下に検討する。 3 判断 (1) 本件補正後発明 本件補正後発明は,以下のとおりである。 「【請求項1】 周囲の状態を検出するための環境センサと, データ記憶部を提供するメモリと, 時間を測定し,且つ,環境センサにて,周囲の状態の測定である環境測定を実行し,前記環境測定に基づいて,動作すべきかを判断するとともに,イベントが発生したときに,アラーム報知する論理回路と, 前記アラーム状態を表示するために,前記論理回路に接続されたインジケータ部と, 前記論理回路,及び,前記メモリのうちの少なくとも1つに,電力を供給するための電源と,を備え, 前記論理回路は, 前記環境測定に基づいて,情報が変動しない場合,あるいは,情報の変動量が許容される限界を超えない場合にデータ点を破棄し,あるいは前記環境測定に基づいて,許容可能と判断される特定の範囲内にデータ点がある場合,データ点を圧縮する ことを特徴とする電子機器アセンブリ。」 なお,「基づいて」及び「基いて」の記載は,「基づいて」で統一した。 【図1】 (2) 引用例に記載の事項 本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特表平7-502594号公報(発明の名称:「使い捨て可能な電子監視装置」,出願人:「センシテク インコーポレイテッド」,国際出願日:平成4年(1992年)10月16日,公表日:平成7年(1995年)3月16日,以下「引用例」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。 ア 2頁右下欄3行ないし3頁左上欄9行 「発明の概要 本発明は,包装品において使い捨て可能な使用目的に供される電子監視装置に関する。かかる装置は,温度,湿度,圧力,加速度および輸送される品物に悪影響を与え得る他のパラメータを監視し得る。 温度監視装置は温度に敏感な製造物を包含するいずれの産業においても重要である。これは,食料および飲料,医薬品および薬剤,生化学品,および工業化学品および接着剤など広範な範疇のものを含む。製造物の環境を監視することは,これら産業分野の範囲内の製造者に加えて,分配業,供給業,貯蔵設備そして病院,軍隊および大型レストランチェーンなどの大型サービス提供主体にとって重要である。 これらの産業分野のそれぞれにおいて,環境監視装置を使用するための種々の理由がある。たとえば,かかる監視装置は,製造物の品質を制御し,輸送者の作業を監視し,温度暴露による製造物の損失をできるだけ最小限にしそして製造物損失の場合に信頼できる関係者の識別を助けるのに使用可能である。相当量の生鮮品が分配の輸送段階において主に輸送中の温度変化により年ごとに浪費されていることが知られている。 温度は輸送品に対する損傷の重大な原因であるがそれは損傷の唯一の原因ではない。他の識別される原因には,包装物に衝撃を招く不適当に積み重ねられた箱,破損へと導く不適当な包装材料,装填中の製造品の損傷および湿分損失が含まれる。不適当な取扱いは,食料品などの包装出荷工場から始まった問題をさらに悪化し得る輸送中の振動を招くことが多い。これらの要因の任意の一つまたは全てを監視し品物に対する輸送損失を制御することが所定の分野において重要である。」 イ 4頁右上欄1行ないし左下欄3行 「 本発明は,一般的には,周囲温度および湿度などの選択パラメータを測定するためのプログラム可能な電子監視装置である。 例示の好ましい実施例は温度監視装置に関し以下で叙述されるけれども,圧力,湿度および加速度などの他のパラメータを測定するための等価な装置は本発明の技術思想内に包摂されるべきものである。 一般に,本装置は品物の輸送および/または貯蔵に関連付けられる所定のパラメータを監視する。パラメータについて得られる値は所定の一組の閾値と内部的に比較される。閾値と実際の測定値との間の不連続性および連続性の識別された具体例が報告される。パラメータおよび値は最終使用者による引き続く探索のためにメモリ装置に記憶可能である。 監視されるパラメータが温度である一実施例において,装置は貯蔵または輸送中に経験する温度と許容可能な値の予め設定されたレンジないし範囲とを比較する。装置は引き続き,(1)許容可能レンジの外側への偏位の発生,(2)許容可能レンジの外側への偏位について,許容可能値から(許容可能な値のレンジに関して測定される)過剰および/または不足へ向う最初の交差および最後の交差の時間,(3)許容可能レンジの外側への偏位中の極限値の大きさおよびその発生の時間,および(4)レンジ外偏位の数を表わすデータなど選択されたデータを記憶し得る。一般に,記憶された情報は1)表示装置の使用者による賦活の際の視覚的表示,または2)外部コンピュータ装置へのダウンロードという2つの方法で検索され得る。」 【第1図(FIG.1)】 ウ 4頁左下欄4行ないし右下欄19行 「 本発明の好ましい実施例が第1図に示されている。図示の実施例において,装置10はハウジング部材12を具備する。ハウジング部材12は内部サーミスタ14および関連の回路14a(両方とも第2図に図示されている)および一対の発光ダイオードLED1(赤)およびLED2(緑)などの光学ポートを囲包している。第1図の実施例において,装置10は,データ出力動作を開始するようになされたデータ出力制御スイッチ16を具備する。図示の実施例において,光学ポート18および出力制御スイッチ16は(第3図に図示の)出力装置と接続するために機械的に連結される。出力装置50は,スイッチ16の賦活の際にポート18を通じて装置10から入力を受信するためコンピュータ,プリンタまたは特別に適合された型の装置とし得る。 図示の装置10のハウジング部材12は,従来の成形方法を使用し所望の形状に形成されるアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂を使用し製造されるのが好ましい。ハウジング部材の形状は円形,長円形,または任意のその他の幾何形状とし得る。図示のハウジング部材は,約2.5インチの径と,約0.625インチの高さと,約42グラムの重さとを有する。ところで,ハウジング部材は内部に包含される個別の構成部品の寸法に応じて種々の寸法を有し得る。一対の電気絶縁性の可撓性の引張りストリップ部材40および42がハウジング12の側壁の開口から延びている。 内部のサーミスタは監視されるべき外部環境に熱力学的に結合されそして温度などの指定されたパラメータの変化に反応する半導体材料などの任意の材料から構成される。代替え例(当審注:原文ママ)として,衝撃,湿度または周囲圧力などの他のパラメータに選択的に感応する装置が使用可能である。 装置10は,装置の監視機能を中断することなく,任意の時点で作動するかどうかを示すポート18での視覚的読出しを起こさせるため指示器試験ボタン20を別途具備してもよい。代替え例(当審注:原文ママ)として,別個の明滅する発光ダイオードが装置の作動状態を示すのに使用してもよい。他の特徴が,監視活動または読み出し能力を強化するために装置に付加されてもよい。これら追加の補助的特徴は本発明の技術思想内に包含されるべきものである。」 【第2図(FIG.2)】 エ 4頁右下欄20行ないし5頁右上欄1行 「 第2図は,装置10のためのサーミスタ14および回路14aを示す。回路14aはサーミスタ14と出力ポート18との間に結合されるマイクロプロセッサ制御回路網である。回路14aは,サーミスタ14とマイクロプロセッサ32および関連のメモリ(蓄積)装置34との間に直列に接続されたアナログ-ディジタル変換器30を具備する。開始装置36および停止装置38が開始信号線36aおよび停止信号線38aを経てマイクロプロセッサ32に結合される。マイクロプロセッサ32は入出力(I/O)バス39を通じて光学ポート18に結合される。回路14aは,低コスト,小型および低電力の実施を可能にする単一の集積回路であるのが好ましい。かかる実施例において,装置10は,電池の電力の下で相当に長い時間にわたり動作せられ得,特に従来の監視装置と比較し,依然としてなお「使い捨て可能」と考えられるほど十分低コストである。 好ましい実施例において,マイクロプロセッサ32は(1)スリープモード,(2)監視モードおよび(3)停止モードという3つのモードで動作するようプログラムされている。スリープモードにおいて,装置10は,許容される温度値の所定レンジを設定(それゆえ許容されないレンジを固有に画定する)するようプログラムされる。このモードにおいて,監視モードの動作に備えプログラム装置を維持するよう相当に低い電力が電池から引き出される。 監視モードにおいて,回路14aの測定および処理機能が賦活され,装置は温度を能動的に監視し,順次,装置10の環境に関係する温度データを決定および記憶する。停止モードにおいて,測定および処理機能は取消し不能に停止されそして装置10は低電力消費モードに維持されそしてメモリ34からの記憶データの外部トリガ読み出しのために適当なようになされる。」 オ 5頁右上欄2行ないし左下欄8行 「 開始装置36および停止装置38はマイクロプロセッサ32の入力ラインに接続される。装置36および38は,装置10の動作モードの所望される変化を合図するために使用者によって独立に賦活される。図示の実施例において,装置36,38は,装置36について開始信号ライン36aの端部の端子36bとアース接続部との間に,そして装置38について停止信号ライン38aの端部の端子38bとアース接続部との間に配置された電気絶縁性「引っ張りストリップ部材」(装置36について引っ張りストリップ部材40,装置38について引っ張りストリップ部材42)を具備する。引っ張りストリップ部材の遠方の端部はハウジング12の側壁の関連の開口を通じて延びる。端子36bおよび38bは両方ともそれぞれのアース接続部に対してばね偏倚が与えられ,絶縁性引っ張りストリップ部材40および42のそれぞれが装置から除去され得,ライン36aおよび38aのそれぞれに接地電位を確立する。マイクロプロセッサ32は,引っ張りストリップ部材40が開始装置36から除去されるとき,装置10がそのスリープモードからその監視モードへ移るようそして引っ張りストリップ部材42が停止装置38から除去されるとき,装置が監視モードから停止モードへ移るようプログラムされている。この構成において,経済的で耐変更操作性である監視装置が提供される。 光学ポート18は選択的に動作可能であり,使用者が一定の選択された状態の視覚的な指示を得るのが可能である。たとえば,好ましい実施例において,光学ポートは赤色発光ダイオードおよび緑色発光ダイオードLED1(赤)およびLED2(緑)から構成される。これらの発光ダイオードは,押圧されるとデータ探索動作がこれに応答して開始されるべきことをマイクロプロセッサに合図するデータスイッチ16に動作接続される。」 カ 5頁左下欄9行ないし右下欄2行 「 もし,装置10が(後述するごとく)その監視モードにおいて活性化されてから何らのレンジ外移行もなければ,マイクロプロセッサ32は緑色LED2がコード化された態様で照射せられる(当審注:ママ)ようにし,活性化以来の最も高い温度および最も低い温度そして(発生時間)を指示するメモリ34からの記憶データを表わす光学信号を発生する。 もし活性化してから少くとも(当審注:ママ)一回のレンジ外移行があれば,マイクロプロセッサ32は赤色LED1がコード化された態様で照射せられる(当審注:ママ)ようにし,後述するごとく,レンジ外関係データを指示するメモリ34からの記憶データを表わす光学信号を発生する。 こうして,本発明では,装置10は,(1)(レンジ外移行が発生しなかった(緑色)かどうかまたはかかる移行があった(赤色)かどうかを決定するため)使用者により視覚的に判断され得る光学データをそして(2)監視温度の一定特性を与えるようコンピュータにダウンロードされ得る光学データを提供する光学ポートを具備した。」 キ 5頁右下欄27行ないし6頁左上欄1行 「 図示の実施例において,サーミスタ14は温度の変化を表わす環境からの信号を受け取る。サーミスタ14は温度変化を,所定のパラメータを記憶しそしてサーミスタ14により検出される温度変化を記憶するためのメモリ装置34を具備する回路14aに伝達する。」 【第4図(FIG.4)】 ク 6頁左上欄2行ないし右上欄13行 「 装置10は,予めプログラムされたパラメータと実際のパラメータの読みとを比較するようプログラムされ得るのが好ましい。第4図は,後の検索のために装置10のメモリに記憶される出力データ例を示す。第4図において,温度対時間のグラフ図が,上限と下限との間の許容される温度レンジに関して図示されている。グラフ図の点Aが,最初の過剰温度読みが発生した時間T1を画定する。点Bが,装置が受けるピーク温度とピーク温度が生じた時間T2の両方を画定する。点Cが最後の過剰温度事象発生時間T3を画定し,そして曲線の下方および上限よりも上の領域Dは時間T1とT3との間の偏位についての過剰温度の時間積分を表わす,過剰温度偏位の連続が生ずる場合,過剰温度偏位の累積的な時間積分が記憶される。これらの測定は,最終使用者または製造者により装置のメモリに予めプログラムされるところにしたがって装置の上限に関して行われる。 予めプログラムされた装置の下限に関して行われる測定についてこれらは上限に関して行われる測定と比較できる。第4図に図示されるごとく,経験する最初の不足温度の測定時間T4は点Eとして図示されている。点Fが,経験する最も低い温度とその温度を経験する時間T5を表わす。最後の不足温度読みが発生する時間T6は点Gで示されている。温度曲線と下限との間の領域は不足温度の偏位の時間積分を表わす(当審注:領域H)。不足温度偏位の連続がある場合,これらの偏位の累積的な積分が記憶される。データA?Hのすべてが,温度のレンジ外偏位の数(すなわち2つ)を表わすデータとともに,装置10のメモリ34に記憶される。これらのパラメータは例であり,他のパラメータおよび動的な測定が本発明の実施例により実行され得る。 一例として,表1は,2分の温度間隔(送信中:「温度間隔」は,「測定間隔」の誤記である。)および2分の始動遅れで80°F(当審注:約27℃)および60°F(当審注:約16℃)の温度限界に関し設定され,始動引っ張りストリップ部材が9/19/91日(当審注:ママ)の午前8時50分に引っ張られそして停止引っ張りストリップ部材が10/1/91日の午前11時16分に引っ張られた場合の一装置例の読出し値を表わすデータ組を示す。」 ケ 6頁左下欄の「表1」 「 表1 読みの記録:午前11時16分 温度76°F (75.73) 構 成: 連続番号:100 温度限界:80°F 60°F 測定間隔:2分 始動遅れ:2分 オフセット:0 カウンタ閾値:2°F 被測定データ: 記録開始:午前8時50分 1991年9 月16日 終 了 :午前11時16分 1991年10月 1日 温度極限 84°F 午前8時56分 1991年9 月19日 54°F 午前7時26分 1991年9 月29日 過剰温度 時間:76分 領域138°F×分 最初の時間:午前10:50分 1991年9 月18日 最後の時間:午後06:42分 1991年9 月27日 事象の数:2 不足温度 時間:2346分 領域:8190°F×分 最初の時間:午前03:20分 1991年9 月28日 最後の時間:午前08:42分 1991年9 月30日 事象の数:3」 (当審注:「午前10:50分」,「午後06:42分」,「午前03:20分」及び「午前08:42分」は,それぞれ,「午前10時50分」,「午後06時42分」,「午前03時20分」及び「午前08時42分」の誤記。) (3) 引用発明 そうしてみると,引用例には,以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。 監視されるべき外部環境に熱力学的に結合され,温度などの指定されたパラメータの変化に反応する半導体材料などの任意の材料から構成されるサーミスタ14, サーミスタ14により検出される温度変化を記憶するためのメモリ装置34, 赤色発光ダイオードLED1及び緑色発光ダイオードLED2から構成される光学ポート18, 入出力(I/O)バス39を通じて光学ポート18に結合されたマイクロプロセッサ32, 電池,を備え, マイクロプロセッサ32は,(1)スリープモード,(2)監視モード,及び,(3)停止モードという3つのモードで動作するようプログラムされ, スリープモードにおいて,許容される温度値の所定レンジを設定し, 監視モードにおいて,測定及び処理機能が賦活され,一例として,2分の測定間隔で温度を能動的に監視し,順次,環境に関係するデータAないしHを決定及び記憶し, A:最初の過剰温度読みが発生した時間T1 B:装置が受けるピーク温度とピーク温度が生じた時間T2 C:最後の過剰温度事象発生時間T3 D:時間T1とT3との間の偏位についての過剰温度の時間積分 E:経験する最初の不足温度の測定時間T4 F:経験する最も低い温度とその温度を経験する時間T5 G:最後の不足温度読みが発生する時間T6 H:不足温度の偏位の時間積分 監視モードにおいて活性化されてから何らのレンジ外移行もなければ,緑色発光ダイオードLED2を照射し,活性化してから少なくとも一回のレンジ外移行があれば,赤色発光ダイオードLED1を照射し, 電池の電力の下で相当に長い時間にわたり動作する,使い捨て可能な使用目的に供される電子監視装置。 (4) 対比 ア 環境センサ 引用発明は,「監視されるべき外部環境に熱力学的に結合され,温度などの指定されたパラメータの変化に反応する半導体材料などの任意の材料から構成されるサーミスタ14」を具備する。 したがって,引用発明の「サーミスタ14」は,本件補正後発明の「周囲の状態を検出するための環境センサ」に相当する。 イ メモリ 引用発明は,「サーミスタ14により検出される温度変化を記憶するためのメモリ装置34」を具備する。 したがって,引用発明の「メモリ装置34」は,本件補正後発明の「データ記憶部を提供するメモリ」に相当する。 ウ 論理回路,インジケータ部 引用発明は,「赤色発光ダイオードLED1及び緑色発光ダイオードLED2から構成される光学ポート18」及び「入出力(I/O)バス39を通じて光学ポート18に結合されたマイクロプロセッサ32」を具備するところ,引用発明の「マイクロプロセッサ32」は,「(1)スリープモード,(2)監視モード,及び,(3)停止モードという3つのモードで動作するようプログラムされ」ており,「スリープモードにおいて,許容される温度値の所定レンジを設定し」,「監視モードにおいて,測定及び処理機能が賦活され,一例として,2分の測定間隔で温度を能動的に監視し,順次,環境に関係するデータAないしHを決定及び記憶し」,「監視モードにおいて活性化されてから何らのレンジ外移行もなければ,緑色発光ダイオードLED2を照射し」,「活性化してから少なくとも一回のレンジ外移行があれば,赤色発光ダイオードLED1を照射し」の処理が行われる。 したがって,引用発明の「マイクロプロセッサ32」と本件補正後発明の「論理回路」は,「時間を測定し,且つ,環境センサにて,周囲の状態の測定である環境測定を実行し,前記環境測定に基づいて,イベントが発生したときに,アラーム報知する論理回路」の点で共通する。 また,引用発明の「光学ポート18」は,本件補正後発明の「前記アラーム状態を表示するために,前記論理回路に接続されたインジケータ部」に相当する。 エ 電池 引用発明の電子監視装置は,「電池の電力の下で相当に長い時間にわたり動作する」から,引用発明の「電池」は,本件補正後発明の「前記論理回路,及び,前記メモリのうちの少なくとも1つに,電力を供給するための電源」に相当する。 オ 電子機器アセンブリ 以上の対比結果を踏まえると,引用発明の「電子監視装置」は,本件補正後発明の「電子機器アセンブリ」に相当する。 (5) 一致点及び相違点 本件補正後発明と引用発明の一致点及び相違点は,以下のとおりである。 (一致点) 「 周囲の状態を検出するための環境センサと, データ記憶部を提供するメモリと, 時間を測定し,且つ,環境センサにて,周囲の状態の測定である環境測定を実行し,前記環境測定に基づいて,イベントが発生したときに,アラーム報知する論理回路と, 前記アラーム状態を表示するために,前記論理回路に接続されたインジケータ部と, 前記論理回路,及び,前記メモリのうちの少なくとも1つに,電力を供給するための電源と,を備える電子機器アセンブリ。」 (相違点1) 本件補正後発明の論理回路は,「動作すべきかを判断するとともに」の構成を具備するのに対し,引用発明の論理回路は,これが明らかではない点。 (相違点2) 本件補正後発明の論理回路は,「前記環境測定に基づいて,情報が変動しない場合,あるいは,情報の変動量が許容される限界を超えない場合にデータ点を破棄し,あるいは前記環境測定に基づいて,許容可能と判断される特定の範囲内にデータ点がある場合,データ点を圧縮する」構成を具備するのに対し,引用発明の論理回路は,これが明らかではない点。 (6) 判断 (相違点1について) 本件補正後発明の論理回路は,イベントが発生したときにアラーム報知するものであるから,イベントが発生しないときにはアラーム報知しないものである。また,「アラーム報知」は「動作」といえる。 したがって,特許請求の範囲の「前記環境測定に基づいて,動作すべきかを判断するとともに」の記載を,「前記環境測定に基づいて,アラーム報知すべきかを判断するとともに」の意味と解するならば,引用発明は,「活性化してから少なくとも一回のレンジ外移行があれば,赤色発光ダイオードLED1を照射し」の構成を具備するから,相違点1は,実質的な相違点ではなく,少なくとも,当業者ならば,容易に克服することができるものである。 判断に誤りがないことを確認するために,念のために,本件出願の発明の詳細な説明の記載を参照する。 本件出願の明細書の段落【0099】には,以下のとおり記載されている(下線は当審が付した,以下同じ。)。 「【0099】顧客固有の項目を環境検出アセンブリに追加することは,いくつかの事項のうち,例えば,顧客固有の項目を封入材料の外表面に印刷すること,受信した検出情報に基づいて動作すべきかを判断する論理回路により使用されるように,論理回路に項目のデータを提供すること,受信した検出情報,及び/または,他の顧客固有情報に基づいて動作すべきかを判断するために用いられるように,顧客固有の構成にて論理回路を形成すること,により実現される。このような項目は,顧客固有のロゴ,識別子(例えば,顧客の名前やその他の識別子),ユニット固有の識別番号,しきい値情報,サンプリング期間等を含みうる。」 そうしてみると,段落【0099】の記載からは,本件補正後発明の論理回路が,「しきい値情報」という項目のデータを使用して動作すべきかを判断する構成が把握できる。そして,本件補正後発明は,温度がしきい値を超えた場合にアラーム報知する態様を含む。 したがって,本件出願の発明の詳細な説明の記載を参酌しても,相違点1は実質的な相違点ではなく,少なくとも,当業者ならば,容易に克服することができるものであるとする判断に,誤りはない。 あるいは,引用発明は,「監視モードにおいて,測定及び処理機能が賦活され,一例として,2分の測定間隔で温度を能動的に監視し,順次,環境に関係するデータAないしHを決定及び記憶し」の構成を具備するから,環境測定に基づいて,データAないしHの決定及び記憶を行ったり,行わなかったりするものである。 このような観点からも,引用発明は,「前記環境測定に基づいて,動作すべきかを判断する」ものといえるから,いずれにせよ,相違点1は,実質的な相違点ではなく,少なくとも,当業者ならば,容易に克服することができるものである。 (相違点2について) 相違点2の記載は,本件補正後発明が,(a)前記環境測定に基づいて,情報が変動しない場合にデータ点を破棄する,(b)前記環境測定に基づいて,情報の変動量が許容される限界を超えない場合にデータ点を破棄する,(c)前記環境測定に基づいて,許容可能と判断される特定の範囲内にデータ点がある場合,データ点を圧縮する,の,いずれかの構成を具備することを意味する。 また,「データ点を圧縮する」ことに関して,本件出願の明細書の段落【0017】には,以下のとおり記載されている。 「【0017】本開示はまた,装置がより多くの情報を記憶できるようにするメモリ圧縮技術を取り入れた実施形態を含んでいる。例えば,装置の実施形態は,情報が変動しない場合,あるいは,情報の変動量が許容される限界を超えない場合にデータ点を廃棄しうる,変動量の限界に基づくデータ圧縮手段を備えていてもよい。」 そうしてみると,本件補正後発明において,「データ点を圧縮する」とは,「データ点を破棄する」ことを含む意味と解するのが妥当である。 すでに述べたとおり,引用発明は,「監視モードにおいて,測定及び処理機能が賦活され,一例として,2分の測定間隔で温度を能動的に監視し,順次,環境に関係するデータAないしHを決定及び記憶し」の構成を具備する(賦活後,測定温度が所定レンジ内の場合は積分等すらされず破棄される)から,引用発明のマイクロプロセッサ32は,所定レンジ内にあるデータの大半を破棄する。 そうしてみると,引用発明は,「前記環境測定に基づいて,許容可能と判断される特定の範囲内にデータ点がある場合,データ点を圧縮する」構成を具備するから,相違点2も,実質的な相違点ではなく,少なくとも,当業者ならば,容易に克服することができるものである。 あるいは,計測された情報をメモリ等に記録するに際し,「情報が変動しない場合にデータ点を破棄する」技術,「情報の変動量が許容される限界を超えない場合にデータ点を破棄する」技術は,当業者における常套手段である(必要ならば,特開昭61-138119号公報の特許請求の範囲の(2),特開平10-142002号公報の段落【0007】,特開昭58-5834号公報の特許請求の範囲,特開平8-305732号公報の【請求項3】を参照。)。 引用発明は,「使い捨て可能な使用目的に供される電子監視装置」であり,そうであるからには,コスト削減のためにメモリ容量の削減が求められるから,引用発明において上記常套手段を採用し,相違点2に係る構成を克服することは当業者が容易にできることである。 そして,本件補正後発明の作用効果は,引用例に記載された効果であるか,当業者が引用発明から予測できる範囲内のものであって,格別のものとはいえない。 (7) 小括 したがって,本件補正後発明は,その優先日前に日本国内において頒布された引用例に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。あるいは,本件補正後発明は,その優先日前に日本国内において頒布された引用例に記載された発明に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。 4 補正却下の決定についてのまとめ 本件補正は,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので,本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は,明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,以下のとおりである(再掲:本願発明)。 「【請求項1】 周囲の状態を検出するための環境センサと, データ記憶部を提供するメモリと, 時間を測定し,且つ,環境センサにて,周囲の状態の測定である環境測定を実行し,前記環境測定に基づいて,動作すべきかを判断するとともに,イベントが発生したときに,アラーム報知する論理回路と, 前記アラーム状態を表示するために,前記論理回路に接続されたインジケータ部と, 前記論理回路,及び,前記メモリのうちの少なくとも1つに,電力を供給するための電源と, を備える電子機器アセンブリ。」 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は,概略,以下の理由を含むものである。 (理由B)この出願の請求項1に係る発明は,その優先日前に日本国内又は外国において頒布された引用例(特表平7-502594号公報)に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができない。 (理由C)この出願の請求項1に係る発明は,その優先日前に日本国内又は外国において頒布された引用例(特表平7-502594号公報)に記載された発明に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 3 引用例に記載の事項及び引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用例に記載の事項及び引用発明は,前記「第2」「3」の(2)及び(3)に記載したとおりである。 4 対比及び判断 本願発明は,本件補正後発明の論理回路から,「前記環境測定に基づいて,情報が変動しない場合,あるいは,情報の変動量が許容される限界を超えない場合にデータ点を破棄し,あるいは前記環境測定に基づいて,許容可能と判断される特定の範囲内にデータ点がある場合,データ点を圧縮する」の発明特定事項を省いたものである。 そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに,他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正後発明が,前記「第2」「3」の(4)ないし(6)で述べたとおり,引用例に記載された発明であり,少なくとも,引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたことを考慮すると,本願発明も,同様に,引用例に記載された発明であり,少なくとも,引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。 第4 回答書記載の補正案について 請求人は,回答書において,補正案を示しているところ,その趣旨は,概略,補正案で新たに追加する発明特定事項である,「前記論理回路は,予め設定可能な時間の間,前記環境検出情報に反応しないように構成される」(以下「補正案の構成」という。)については,引用例に一切開示も示唆もされておらず,補正案の発明は,特許性を有する発明である,というものである。 しかしながら,引用例の6頁左下欄の表1には,「始動遅れ:2分」との記載があるから,補正案の構成は引用例に記載された構成であり,少なくとも,引用例の記載から容易に推考できる構成である。 そもそも,引用発明は温度測定を目的とする電子監視装置であるところ,温度測定において,測定開始指示から所定のタイムラグを設けて測定開始することは当然のことであり,引用発明と同様の電子監視装置に限ったとしても,例えば,特開平7-63583号公報の段落【0011】にも記載されている。 したがって,補正案は採用できない。 第5 まとめ 以上のとおり,本願発明は,その優先日前に日本国内又は外国において頒布された引用例に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができず,あるいは,本願発明は,その優先日前に日本国内において頒布された引用例に記載された発明に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,他の請求項に係る発明について審理するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-05-26 |
結審通知日 | 2014-05-27 |
審決日 | 2014-06-09 |
出願番号 | 特願2008-557347(P2008-557347) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G08C)
P 1 8・ 575- Z (G08C) P 1 8・ 113- Z (G08C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 関根 裕 |
特許庁審判長 |
飯野 茂 |
特許庁審判官 |
中塚 直樹 樋口 信宏 |
発明の名称 | 環境検出 |
代理人 | 名古屋国際特許業務法人 |