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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1293211
審判番号 不服2013-11682  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-19 
確定日 2014-10-22 
事件の表示 特願2010- 60976「移動局において受信ダイバーシティを決定するための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月 9日出願公開、特開2010-200329〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成15年4月4日(パリ条約に基づく優先権主張 2002年4月5日 米国)を国際出願日とする国際出願である特願2003-585319号の一部を平成22年3月17日に特願2010-060976号として新たな特許出願としたものであって、平成22年4月16日に手続補正がなされ、平成24年4月10日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成24年9月18日に意見書が提出されたが、平成25年2月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成25年6月19日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。


第2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年4月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次の事項により特定されるものである。

「【請求項1】
通信システムにおいて受信ダイバーシティを決定するための装置であって、
前記通信システム内の通信資源の使用についてのデマンドレベルを決定するための、そして、使用されるべき複数の受信器チェーンの数を制御するために前記デマンドレベルを使用するための、制御システムと、
移動局での受信ダイバーシティの量を示すメッセージを通信するための送信器と、
を備え、
前記メッセージは、前記決定されたデマンドレベルに基づいており、
前記メッセージは、前記移動局で受信ダイバーシティのスケールを減少させること、および前記スケールを増加させること、の少なくとも1つを示す、
装置。」


第3.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(国際公開第01/05088号)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(a)第6頁第1-3行
「Summary and Objects of the Invention
The present inventors have reduced the power penalty of introducing diversity in the mobile station by using the diversity branch only when needed. 」
(当審訳:発明の概要及び目的
本発明の発明者はダイバーシチブランチを必要な場合にのみ用いることで、移動局にダイバーシチを導入することによる電力損失を削減した。)

(b)第12頁第1-11行
「In addition or as an alternative to local control, the criteria for when to use a diversity branch can be global. In the global control criteria, the network evaluates the load in different cells and signals to the mobiles when they are allowed to switch off diversity processing. As illustrated in Figure 6, at step 610, a network determines the loads on various cells in a cellular system. If the load of a cell is determined to be light at step 620, there is excess capacity. This means that some of the capacity can be exploited to make some mobile stations perform well without diversity, such as by raising the base station output power for these links at step 630. Then, at step 630, the network signals the mobile stations that they are allowed to switch off diversity processing in some of the less congested cells. 」
(当審訳:局所制御に加え、あるいはその代わりに、ダイバーシチブランチをいつ用いるかという基準を全体的にすることも可能である。全体的な制御基準において、ネットワークは異なるセル内の負荷を評価し、移動局がダイバーシチ処理をオフ可能な際、移動局へ通知する。図6に示されるように、ステップ610において、ネットワークはセルラシステム内の様々なセルの負荷を測定する。ステップ620でセルの負荷が軽いと判断された場合、余剰な能力が存在する。これは、ステップ630においていくつかの移動局のリンクに対する基地局出力電力を上昇させることなどにより、これら移動局をダイバーシチ無しで申し分なく動作させるために、能力のいくらかを使用可能であることを意味する。そして、ステップ630において、ネットワークは移動局に、余り混雑していないセルの一部においてダイバーシチ処理をオフしてもよいことを通知する。)

したがって、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「異なるセル内の負荷を評価し、移動局がダイバーシチ処理をオフ可能な際、移動局へ通知するネットワークであり、
ステップ610において、ネットワークはセルラシステム内の様々なセルの負荷を測定し、ステップ620でセルの負荷が軽いと判断された場合、余剰な能力が存在することになり、この「余剰な能力が存在する」とは、ステップ630においていくつかの移動局のリンクに対する基地局出力電力を上昇させることなどにより、これら移動局をダイバーシチ無しで申し分なく動作させるために、能力のいくらかを使用可能であることを意味しており、ステップ630において、ネットワークは移動局に、余り混雑していないセルの一部においてダイバーシチ処理をオフしてもよいことを通知する、
ダイバーシチブランチを必要な場合にのみ用いることで、移動局にダイバーシチを導入することによる電力損失を削減するネットワーク。」


第4.本願発明と引用発明の一致点・相違点
引用発明のネットワークは、ステップ610において、セルラシステム内の様々なセルの負荷を測定し、ステップ620でセルの負荷が軽いと判断された場合、ステップ630において、移動局に、余り混雑していないセルの一部においてダイバーシチ処理をオフしてもよいことを通知している。したがって、引用発明のネットワークは、移動局において、受信ダイバーシチをオフにするか否かを決定しており、本願発明の装置と、「通信システムにおいて受信ダイバーシティを決定するための装置」である点で一致している。

セルの負荷は、「通信をしたい」という要求(デマンド)を反映しており、またセルの負荷が重いということは、通信資源が多く使用されているということであるから、引用発明のセルの負荷は、本願発明の「デマンドレベル」に相当し、引用発明のステップ610において、ネットワークがセルラシステム内の様々なセルの負荷を測定していることは、本願発明の「前記通信システム内の通信資源の使用についてのデマンドレベルを決定する」ことに相当する。

引用発明のステップ630の通知は、本願発明の「メッセージ」と、「メッセージ」である点で一致している。また、引用発明のステップ630の、移動局に、余り混雑していないセルの一部においてダイバーシチ処理をオフしてもよいことを通知することは、本願発明の「移動局での受信ダイバーシティの量を示すメッセージを通信する」ことと、「移動局での受信ダイバーシティの実行に関するメッセージを通信する」点で一致している。

したがって、本願発明と引用発明の一致点・相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「通信システムにおいて受信ダイバーシティを決定するための装置であって、
前記通信システム内の通信資源の使用についてのデマンドレベルを決定するための、制御システムと、
移動局での受信ダイバーシティの実行に関するメッセージを通信するための送信器と、
を備え、
前記メッセージは、前記決定されたデマンドレベルに基づいている、
装置。」である点。

[相違点1]
本願発明では、使用されるべき複数の受信器チェーンの数を制御するために前記デマンドレベルを使用するのに対して、引用発明では、ダイバーシチ処理をオフにするか否かを制御するためにデマンドレベル(セルの負荷)を使用している点。

[相違点2]
メッセージが、本願発明では、移動局での受信ダイバーシティの量を示すのに対して、引用発明では、ダイバーシチ処理をオフにするか否かを示す点。

[相違点3]
メッセージが、本願発明では、前記移動局で受信ダイバーシティのスケールを減少させること、および前記スケールを増加させること、の少なくとも1つを示すのに対して、引用発明では、ダイバーシチ処理をオフにするか否かを示す点。


第5.相違点についての検討

[相違点1-3について]
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-150497号公報(以下、「周知文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(c)段落番号【0022】-【0026】
「【0022】(実施の形態2)本発明の実施の形態2のダイバーシティ受信機の構成を図2のブロック図に示す。
【0023】図中の1、2、21、22は飛来電磁波を受ける第1?4の受信ブランチのアンテナ、3、4、23、24は各アンテナで受信した信号をダウンコンバートし、ベースバンド信号と受信電界強度(RSSI)を出力する受信部、5は、受信部3、4、23、24から受け取ったRSSI信号をもとにベースバンド信号に重み付けをして合成するダイバーシティ合成部、6はダイバーシティ合成部5からの出力を受け、データを復調する復調部である。この実施の形態2の特徴は、受信電界強度に応じて電源ON/OFFの制御を行う電源制御部25を備えたことにある。
【0024】また、受信電界強度RがRt1[dBm]以上であった場合はアンテナ数が1本でも十分通信品質が保てるとし、受信電界強度RがRt2[dBm]以上であった場合はアンテナ数が2本で十分通信品質が保てるとし、さらに受信電界強度RがRt3[dBm]以上であった場合はアンテナ数が3本で十分通信品質が保てるとする。これらRt1、Rt2、Rt3[dBm]をしきい値として受信ブランチ数を切り替えることとする。
【0025】このダイバーシティ受信機の構成において、もし受信電界強度RがRt2<R<Rt1であったとすると、電源制御部25で制御し、2つの受信ブランチの電源をONとし、残りの2つをOFFとする。電源がONである受信ブランチが複数の場合は、それらの受信ブランチで合成ダイバーシティ受信を行う。
【0026】このようにして、アンテナ数が増えた場合も、受信電界強度に応じて受信する受信ブランチ数を制御し、消費電力を低減する。また、使用しない受信ブランチを受信電界強度の弱い受信ブランチから選択すれば受信品質の向上を図ることができる。」


原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-165272号公報(以下、「周知文献2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(c)段落番号【0031】-【0033】
「【0031】(実施の形態5)図6は本発明の実施の形態5における無線基地局装置のブロック図であって、AGCを含む同期検波システムの無線基地局装置の構成を示している。ブランチ数としてはnブランチの構成でも当てはまるが、図6に示すようにここでは4ブランチのダイバーシチ構成の場合について考える。図6において、1はアンテナで受信した信号を増幅し、IF周波数まで周波数変換を行うRF部、2Cはあらゆるレベルの信号を増幅し出力レベルは一定レベルで出力するAGC(自動利得制御回路)、3はAGC出力を増幅し、さらにベースバンドまで周波数変換をおこなうIF部、4は搬送波に乗った変調信号を同期検波方式で復調する復調部、5CはAGC2CからのRSSIレベルにより各ブランチの電源をON/OFF制御する制御部であり、各ブランチ全体の電源をON/OFFする。13はダイバーシチ合成部である。
【0032】以上のように構成された無線基地局装置について、以下にその動作を説明する。受信信号はRF部1に入力され、信号を増幅し、又IF周波数まで周波数変換される。AGC2Cではさまざまなレベルの信号をさまざまなゲインで増幅し、一定の出力レベルで出力する。その時のAGC2Cのゲインは、AGC2C内で信号レベル検波を行いゲインを決定する。ゲインはAGC2Cへの入力信号レベルが大きければゲインは小さくなるように制御され、AGC2Cへの入力信号レベルが小さければゲインは大きくなるように制御される(制御部5CにはRSSIを渡すが、AGC2Cのみでゲイン制御電圧が決定される。)。IF部3はAGC2の出力信号を増幅し、ベースバンド周波数まで周波数変換をおこなう。復調部4は搬送波に乗った変調信号を同期検波方式で復調する。
【0033】ダイバーシチ合成部13は各ブランチの復調部4の出力信号を適切な位相で足しあわせて、信号を合成し、SN比の向上した信号を作る。又、AGC2CからはRSSIを制御部5Cにわたす。そこで、各ブランチのRSSIレベルを比較し、制御部に記憶されているしきい値より大きければ、RSSIレベルの大きなブランチの信号をnブランチで受信し、ダイバーシチ合成を行う。nは各ブランチのRSSIレベルにより決定される。ダイバーシチ合成に用いない(4-n)ブランチは、ブランチ全体の電源をOFFにして低消費電力化を図る(ここでは4ブランチのダイバーシチを仮定しているので)。上記方法により、高入力時にダイバーシチブランチの数を減らし、ブランチ内の回路の電源をOFFすることで低消費電力化が行える。」

周知文献2の「RSSI」は、「Received Signal Strength Indicator」の略であり、「受信信号強度」、「受信電界強度」などと訳されている。

周知文献1,2では、ダイバーシティ受信機において、3つ以上の受信ブランチを設け、受信電界強度に応じて、電源をONさせる受信ブランチ数を切り換えることにより、ダイバーチシティ受信機の消費電力を低減している。ここで、引用発明のようにダイバーシチ処理をオフさせるのではなく、電源をONさせる受信ブランチ数を切り換えている理由は、設けられているブランチ数が、引用発明のように2ではなく、3以上であるからであり、制御の要因が受信電界強度であることが理由ではないことは、明らかである。

このように、
「ダイバーシティ受信機において、3つ以上の受信ブランチを設け、電源をONさせる受信ブランチ数を切り換えることにより、ダイバーチシティ受信機の消費電力を低減すること。」が周知事項である。

引用発明と周知事項とは、「ダイバーチシティ受信機の消費電力を低減すること。」をその目的としている点で同じであるから、引用発明において、移動局側では、移動局に設ける受信ブランチの数Mを2から3つ以上に変更し、ネットワーク側では、セルの負荷に応じて、電源をONさせる受信ブランチ数Nを1以上M以下の整数に設定したメッセージ、または現状のNと新規なNとの差分を設定したメッセージを移動局に通知するように変更することは、容易に想到できたことである。
このように変更することにより、引用発明のセルの負荷は、使用されるべき複数の受信器チェーンの数を制御することとなり(相違点1)、引用発明の通知は、移動局での受信ダイバーシティの量を示すこととなり(相違点2)、引用発明の通知は、前記移動局で受信ダイバーシティのスケールを減少させること、および前記スケールを増加させること、の少なくとも1つを示すこととなる(相違点3)。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-21 
結審通知日 2014-05-27 
審決日 2014-06-09 
出願番号 特願2010-60976(P2010-60976)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小池 堂夫  
特許庁審判長 近藤 聡
特許庁審判官 江口 能弘
吉田 隆之
発明の名称 移動局において受信ダイバーシティを決定するための方法及び装置  
代理人 中村 誠  
代理人 竹内 将訓  
代理人 堀内 美保子  
代理人 赤穂 隆雄  
代理人 峰 隆司  
代理人 河野 直樹  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 白根 俊郎  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 佐藤 立志  
代理人 井関 守三  
代理人 井上 正  
代理人 砂川 克  
代理人 野河 信久  
代理人 岡田 貴志  
代理人 福原 淑弘  
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