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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A62B
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A62B
管理番号 1293280
審判番号 無効2013-800215  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-11-25 
確定日 2014-10-27 
事件の表示 上記当事者間の特許第5197235号発明「マスク」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5197235号の請求項1ないし7に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯及び本件特許発明1ないし7
特許第5197235号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明7」という。)についての出願は、平成20年8月26日に出願され、平成25年2月15日に特許権の設定登録がなされたものである。
その後、平成25年11月25日に請求人より本件特許発明1ないし7について無効審判が請求され、平成26年1月10日に請求人より審判請求書の請求の理由及び証拠方法について補正する手続補正書(方式)が提出されたものである。
そして、本件特許発明1ないし7は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
通気性を有する素材から成り、口と鼻とを覆う覆い部と、その覆い部の両側部から延び出して耳に掛けられる2つの耳掛部とを含むマスクであって、
前記覆い部が、四角形の前記素材に横方向に延びる複数のヒダが形成されるとともに各ヒダの両端部においてヒダの側壁同士が接合されて伸びない側縁部とされ、かつ、上端縁に沿って横方向に延びる上縁部を含み、その上縁部に当該マスクの装着者の鼻に係合することによりその上縁部が下方へずれることを防止する下ずれ防止部が設けられる一方、下端部にその下端部が上方にずれることを防止する上ずれ防止部を備え、その上ずれ防止部が、前記四角形の素材の下端部が内側へ折り返されるとともに、その折り返された部分の両側縁部の少なくとも各折返し点に隣接する部分がそれら両側縁部と対向する部分に接合される一方、その折り返された部分の横方向に平行な端縁部はその端縁部に対向する部分に接合されず、それら折り返された部分とその折り返された部分に対向する部分とによって、前記覆い部の内側に上方に向かって開いた凹部が形成されて成り、その凹部が当該マスクの装着者の顎に掛かって前記上ずれ防止部として機能するものであることを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記折返し部の両側縁部の折返し点に隣接する部分がそれら両側縁部に対向する部分に接合される一方、その折返し部の自由端側の両側縁部は接合されず、それら接合されない両側縁部に前記2つの耳掛部の各一端が接合されたことを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記折返し部の両側縁部の全部がそれら両側縁部に対向する部分に接合されるとともに、その折返し部の両側縁部に前記2つの耳掛部の各一端が接合されたことを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項4】
前記複数のヒダが1つの箱ヒダと、その箱ヒダの下方に形成された車ヒダとの両方を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のマスク。
【請求項5】
前記複数のヒダが、その覆い部の上下方向の中間部に形成された1つの箱ヒダと、その箱ヒダの下方に形成された複数の車ヒダとを含み、前記箱ヒダの上方にはヒダが形成されていないことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のマスク。
【請求項6】
前記上縁部に、塑性変形が可能な材料から成る長手形状の塑性変形部材が取り付けられ、前記下ずれ防止部とされた請求項1ないし5のいずれかに記載のマスク。
【請求項7】
前記通気性を有する素材が、複数枚の通気性を有するシートが重ね合わされたものであり、前記覆い部の少なくとも上端縁と下端縁とにおいて、1枚のシートが他のシートの縁から外方に延び出させられ、他のシートの縁部の上に折り返されて接合された請求項1ないし6のいずれかに記載のマスク。」

第2 請求人の主張の概要及び証拠方法
請求人は、審判請求書とともに下記甲第1ないし11号証を証拠方法として提出した。
また、平成26年1月10日に手続補正書(方式)を提出した。

1 請求人の主張の概要
請求人の主張の概要は、次のとおりである(審判請求書の第2ページ第15ないし20行を参照。)。

「本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載の発明と同一であり、また本件特許の請求項1?7に係る発明は、甲第1?11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。従って、本件特許発明は、特許法第29条第1項又は2項の規定により特許を受けることができなかったにも拘らず特許されたものであるから、当該特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。」

2 証拠方法
甲第1号証:米国特許第5,699,791号明細書
甲第2号証:特開2001-204833号公報
甲第3号証:特開2007-97904号公報
甲第4号証:特開2008-55035号公報
甲第5号証:特開平8-107939号公報
甲第6号証:実用新案登録第3126242号公報
甲第7号証:特開2007-159784号公報
甲第8号証:米国特許第4,688,566号明細書
甲第9号証:米国国立CDC(Centers for Disease Control and Prevention)Certified Equipment List 〔掲載日:2013年5月22日〕、インターネット<URL:http://www2a.cdc.gov/drds/cel/cel/_detail.asp?schedule=84A&approvalno=0457manufacturercode=&cbrn_scba=&startrecord=l&maxrecords=50&sqlstmt=>
甲第10号証:商品説明書「N-95 Particulate Respirator」、1999年9月 Alpha Pro Tech INCORPORATED発行
甲第11号証:学術論文集「3M JobHealth HIGHLIGHTS Volume 20 Number 1 2002」3M Occupational Health and Environmetal Safety Division 発行

第3 被請求人の主張の概要
被請求人に対して、平成26年1月21日付けで審判請求書副本を送達し、平成26年1月22日付けで請求人が平成26年1月10日に提出した手続補正書(方式)副本を送付し、答弁をするように指令をしたが、被請求人は、何ら答弁をしなかった。

第4 当審の判断
1 甲第1ないし11号証の記載
(1)甲第1号証の記載
甲第1号証には、「UNIVERSAL FIT FACE MASK」に関して、図面とともに概ね次の記載がある(以下、まとめて、「甲第1号証の記載」という。)(なお、下線は当審で付したものである。他の文献も同様。)。

・「As seen in FIG. 1, an embodiment of a bacteria filtering mask 1 includes a flexible porous filtering section 2 comprising a plurality of distinct rectangular layers. A head strap 24 is carried by the upper corners of the mask while the lower edge of the mask is folded to provide a pouch 30 for engaging the chin of a wearer. As seen in FIG. 2, edges 22, including the folded sides of the pouch, are sealed with the terminal ends of the strap 24 material. Alternatively, as seen in FIG. 8, the side edges 22 may be sealed with a separate length of binding.
Filter section 2 comprises an outer layer 4 of a non-woven spun-bonded material, at least one intermediate layer 6 of a non-woven meltblown material, and a non-woven inner layer 8 of a cellulose or combined cellulose and synthetic fiber material.」(第3欄第4ないし18行)(翻訳:図1に示す通り、細菌フィルターマスク1の実施形態は、複数の別個の長方形の層を含む柔軟性多孔質フィルター部2を含む。マスクの下端が着用者の顎を入れるためのポーチ30を提供するために折り曲げられている一方、ヘッドストラップ24がマスクの上の角に設置されている。図2に示す通り、そのポーチの折り返し側部を含む側端22は、ストラップ24の材料の終端末と共に接合されている。または、図8に示すように、側端22は異なる長さで接合されていてもよい。
フィルター部2はスパンボンド不織布材料の外側層4、少なくとも1つのメルトブロー不織布材料の中間層6、及びセルロースまたはセルロースと合成繊維が結合された材料の内側層8を含有する。)

・「As seen in reference to FIG. 2, one of the preferred embodiments of the mask provides a series of folded pleats 32 defined by filter section 2. The pleats allow a donned mask to expand to cover the wearer's face. However, an enormous variety of pad constructions and components can be provided.
As best seen in reference to FIGS. 2-4 and 7, all edges of filter section 2 have a seam or other sealed margin. In the preferred embodiments, an upper-edge 10 is enclosed by binding strip 12 which may be sewn, glued, sonically welded or sealed using a combination of heat and pressure. Upper-edge 10 further defines a first support stay 14 which runs the width of mask 1. Stay 14 provides an adjustable nose-piece support for mask 1 and may be provided by a thin strip of a deformable material such as a strip of aluminum, thin gauge steel, or a plastic bendable strip. Preferably, stay 14 is either carried by an inner surface of binding strip 12 or between the filter section layers using an adhesive strip or other securing means.」(第3欄第24ないし42行)(翻訳:図2に示す通り、本発明のマスクの好ましい実施形態の一つはフィルター部2で定義された一連の折り曲がったヒダ32を提供する。そのヒダは装着者の顔をカバーするために装着されたマスクを広げるのに役立つ。しかし、多種多様なパッド構造や構成部品を使用することができる。
図2?4、7に示す通り、フィルター部2の全ての端部は縫い目又はその他密封された余白を有する。好ましい実施形態において、上端10は縫合、接着、超音波溶接又は熱や圧力の組み合わせを用いた密封がなされてもよい結合ストリップ12によって閉じられている。上端10はマスク1の幅に渡って第1支持部材14をさらに備える。支持部材14はマスク1の鼻部分の支持を調整可能にするものであり、例えばアルミニウム、細いゲージ鋼又はプラスチック製の折り曲げストリップのような変形材料の細いストリップによって提供されてもよい。好ましくは、支持部材14は結合ストリップ12の内側表面または粘着性のストリップ又は他の安全な手段を用いているフィルター層の間に設置される。)

・「Alternatively, as seen in FIG. 3, ear loops may be provided in place of the headband. Each loop may be provided by either a latex or non-latex elastomeric material as taught above.」(第4欄第4ないし7行)(翻訳:また、図3に示す通り、ヘッドバンドに置き換えて耳かけが提供されてもよい。それぞれの耳掛け部は上記のゴム系又は非ゴム系の伸縮性材料によって提供される。)

・「A similar elastomeric fabric is secured to the terminal edge of the folded portion of filter section 2 and provides a chin-strap 26 which passes under the chin of the wearer. Strap 26 helps form a gasket or seal around the wearer's face. The resulting fold and chin-strap further provides a pouch 30 for engaging the wearer's chin.」(第4欄第23ないし28行)(翻訳:同様の伸縮性繊維がフィルター部2の折り曲げ部の終末端に固定され、着用者のあごの下を通るチンストラップ26を提供する。チンストラップ26は着用者の顔の周りの密閉性を高めるのに役立つ。折り曲げ部とチンストラップはさらに着用者のあごを入れるためのポーチ30を提供する。)

・Fig.7及びFig.9から、「素材の下端部の折り返しにより形成された、上方に向って開いた凹部」が看取される。

(2)甲第2号証の記載
甲第2号証には、「マスク」に関して、図面とともに概ね次の記載がある(以下、まとめて、「甲第2号証の記載」という。)。

・「【0002】
【従来の技術】従来、この種のマスクの一例として、図8(当審注:「図8」は「図4」の誤記である。)に示すように、略矩形状のマスク本体1と、その両側縁2にゴム状紐の両端を固着させて一対の耳掛け部3を構成し、上縁4近傍に塩ビ被覆ワイヤー5を封入し、中央の口鼻付近に相当する位置の不織布を上下方向に折り返して折り返し部6を形成させ、その全周縁をそれぞれマスク本体1と同質材料よりなる補強片7により表裏から補強して高周波や超音波によりミシン目状(点状)8に融着させることにより融着させた使い捨て用の衛生マスク9が知られている。
【0003】このマスク9の着用時には、この挿入された塩ビ被覆ワイヤ5を鼻頭の形状に沿って曲げることにより、マスクの上縁4が顔面にフィットできるので、マスクのズレが防止できるとともに吐息が鼻に沿って上方に漏れずに、眼鏡が曇るのを防止できる。」(段落【0002】及び【0003】)

・「【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】図1は、この発明の実施の形態のマスク10を示す正面図であり、図4に示すマスク9において、塩ビワイヤー5を挿入せずに作成したマスクの両側縁が重なるように二つ折りに折り畳んだ状態を示している。このマスク10は、略矩形状のマスク本体11とその両側縁12に設けられた一対の耳掛け部13とを備えている。
【0017】このマスク本体11を構成する不織布は、従来の使い捨てマスク、衛生マスクに用いられると同様な素材を用いることができる。たとえば、ポリプロピレンのメルトブローンにより得られた目の細かな不織布に超極細繊維を付着加工させたきめ細かなフィルターを2枚重ねして用いることにより、薄くて通気性を保持した状態で花粉やホコリの侵入を防ぐことができる。
【0018】このマスク本体11は、中央の口鼻付近に相当するほぼ全体位置に不織布が上下方向に折り返された折り返し部14を備えている。また、このマスク本体11の周縁は、それぞれマスク本体11と同質材料又は異なる材料よりなる補強片15により表裏から補強されている。この補強片15はマスク本体11ともども高周波や超音波によりミシン目状(点状)16に融着されることにより、2枚の不織布からなるマスク本体11の周縁はシール仕上げ加工されている。
【0019】また、このマスク本体11は図1に示す両側縁12が重なるように二つ折り状態で上縁17と中央の折り目18とともに小三角部20を画成する上縁接合線部19が形成されている。この上縁接合線部19の形成は、マスク本体11がこの上縁接合線部19により接合されておればよいので、図1に示すような周縁シール仕上げ加工と同様な超音波や高周波によるミシン目状(点状)16の融着であっても、また、帯状、面状の融着であってもよい。また、接合方法は融着のみならず接着剤による接着、縫合であってもよい。
【0020】以上のように構成されたマスク10によれば、マスク本体11の上縁17と中央の折り目18とは上縁接合線部19により接合されているので、上縁17の長さはマスク本体11の上下方向の中央付近の長さに比べて短くなる。一方、上縁接合線部19付近のマスク本体11の内側は、上縁17に対して膨出されて膨出部21を形成する。
【0021】これにより、このマスク10の着用時には、図2に示すように、口鼻付近22に位置するマスク本体11は、折り返し部14の折り返しが蛇腹状に解かれて広がり上下方向の長さが長くなる。これにより、着用時の口鼻付近22にゆとりができ、着用者がマスクを着用した状態で喋ることが容易となる。
【0022】また、膨出部21が鼻頭23に沿って顔面を覆うので、着用者の顔面にフィットさせることができ、これにより、マスク10のズレ防止ができる。また、マスク上縁17が着用者の鼻頭23の凹凸に沿い、マスク10の上縁17の折り目18と鼻頭23との間に隙間25がないので、上縁17から上方に吐息が漏れるのを防止することができ、眼鏡24を掛けて使用しても眼鏡24が吐息により曇ることがない。
【0023】また、以上のように構成されたマスク10は、ズレ防止に金属ワイヤーを必要としないので、廃棄時に金属材料と不織布材料とを分別する必要もない。また、製造工程では、金属ワイヤーを封入する工程がなく、マスク本体の周縁を自動シールするためのシール加工機(超音波又は高周波融着装置)により上縁接合線部19を接合できるので、不要な設備を必要とせずに、製造コストも低減できる。それゆえ、食品工場や半導体製造工場などで使用される使い捨ての衛生マスクとしての利用が期待される。
【0024】また、このマスク10は、上縁接合線部19を設けたので、常時折り畳んで保管される。これにより、金属ワイヤーを挿入したマスクは、折り畳み収納が困難であるので、それに比較してコンパクトに収納できるという効果も奏する。
【0025】
【変形例】実施の形態のマスク10においては、着用時に小三角部20が眼前に突出するので、視界を妨げる場合があるので、この変形例では、この小三角部20を溶断等により切断除去する。ここで、この小三角部20の溶断は、上縁接合線部19の形成と同時に行うこともできる。たとえば、ロールの円周上に点状(千鳥状を含む)又は帯状に融着を施す凸部と、その帯に沿って不織布を溶断するための切断刃(鋭角凸部)を備えた超音波(又は高周波)融着・切断装置を用いれば、切断刃による小三角部20の超音波溶断とともに縫い目状又は帯状の上縁接合線部19を超音波融着により一度に形成することができる。
【0026】また、この変形例では、図1の想像線により示すように、下縁26と中央の折り目18とともに下縁小三角部27を画成する下縁接合線部28を同様にしてこの下縁小三角部27の切断とともに形成している。
【0027】これにより、図3に示すように、着用時に小三角部20が、眼前に突出することが防止でき、視界が開けて使用感が良好となる。また、マスク10の下縁26の折り目18付近に上縁と同様に形成される下縁膨出部29が顎付近30の凹凸にも沿い、この下縁膨出部29が顎部付近30に空間を持たせ顎面を覆い、マスク10が顎面にフィットするのでマスク10のズレ防止ができるとともに顎の下方から空気が漏れるのを防止することができる。これにより、このマスクの着用により、病原菌などの侵入又は侵出を確実に防止できる。その他の構成・作用効果は実施の形態と同一又は均等であるので、詳細な説明は省略する。」(段落【0015】ないし【0027】)

(3)甲第3号証の記載
甲第3号証には、「マスク」に関して、図面とともに概ね次の記載がある(以下、「甲第3号証の記載」という。)。

・「【0011】
図1及び図2に示すマスク10は、マスク本体20と、マスク本体20の左右両側部にそれぞれ取り付けられた耳掛け紐21とを備えている。マスク本体20は全体として横長の矩形をしている。マスク本体20は、シート材料を折り畳んで構成されたものであり、その使用前の状態では実質的に平坦なものである。
【0012】
マスク本体20は、前記のシート材料の一部から構成される中心板22を備えている。中心板22は横長の矩形をしており、横方向に延び且つ相対向する上端縁23a及び下端縁23bを有する。中心板22の上側には上部板24が連設されている。上部板24は、中心板22の上端縁23aに折曲部を位置させて、前記のシート材料が中心板22の内側に部分的に折り重なるように折り畳まれて中心板22に連設されている。これによって、マスク本体20の横方向に延びる上向きひだ25が形成される。
【0013】
中心板22の下側には第1の下部板26が連設されている。第1の下部板26は、中心板22の下端縁23bに折曲部を位置させて、前記のシート材料が中心板22の内側に部分的に折り重なるように折り畳まれて中心板24に連設されている。これによって、マスク本体20の横方向に延びる第1の下向きひだ27が形成される。
【0014】
更に、第1の下部板26には第2の下部板28が連設されている。第2の下部板28は、第1の下部板26の下端縁26aに折曲部を位置させて、前記のシート材料が第1の下部板26の内側に部分的に折り重なるように折り畳まれて第1の下部板26に連設されている。これによって、第2の下向きひだ27の下方の位置に、マスク本体20の横方向に延びる第2の下向きひだ29が形成される。
【0015】
このように、マスク本体20はその横方向に延びる上向きひだ及び下向きひだを有している。前述の通り、上向きひだは1個形成されており、下向きひだは2個形成されている。即ち本実施形態のマスク10においては、上向きひだの数と下向きひだの数とが異なっている。
【0016】
マスク本体20の左右両側部にはサイドシート30がそれぞれ取り付けられている。サイドシート30は、幅狭の短冊状の縦長シートをその縦中心線に沿って二つ折りしたものから構成されている。詳細には、縦中心線に沿ってV字状に二つ折りされた状態のサイドシート30によってマスク本体20の側部を挟み込み、該側部が挟み込まれた状態で、該側部とサイドシート30とが接合されている。接合には例えばヒートシールによる融着、接着剤を用いた接着、縫合などが用いられる。図1には、断続的なヒートシール線31によって、サイドシート30によってマスク本体20の側部とが接合されている状態が示されている。サイドシート30は、該サイドシート30によってマスク本体20の側部のエッジを包み込むことで、該エッジが直接肌に触れることを防止するために用いられる。また、エッジ部分からの繊維の欠落、発塵を防止するために用いられる。また、サイドシート30は、上向きひだ25並びに第1の下向きひだ27及び第2の下向きひだ29を構成するシート材料の折り重なり部分を接合して、これらのひだの形態保持性を高めるために用いられる。
【0017】
マスク本体20がシート材料を折り畳んで構成されていることは先に述べた通りであるが、該シート材料としては1枚のシートを用いてもよく、或いは複数枚のシートを積層して用いてもよい。複数枚のシートを用いることは、各シートに別個の機能を付与することで、マスク本体20に種々の機能を付与することが容易になるという点で有利である。複数枚のシートを用いる場合には、シート間が全面接合されたラミネート状態で用いてもよく、或いはシート間が離間した状態で用いてもよい。本実施形態においては3枚のシートを重ね合わせて用いている。
【0018】
マスク本体20を構成するシート材料としては、通気性を有するものであればその種類に特に制限はない。加工のしやすさや経済性の観点からは不織布を用いることが好ましい。不織布としては、例えばメルトブローン不織布、スパンボンド不織布、エアスルー法によるサーマルボンド不織布、スパンレース不織布などの種々の不織布を用いることができる。これら種々の不織布を適宜組み合わせて、マスク本体20に所望の機能を付与することができる。本実施形態においては、最も内側に肌触りの良好な不織布であるサーマルボンド不織布を用い、最も外側に強度の高い不織布であるスパンボンド不織布を用い、両不織布の間に微小粒子のフィルター機能の高い不織布であるメルトブローン不織布を用いている。各不織布の坪量に特に制限はないが、マスク本体20の柔軟性や強度等を考慮すると、それぞれ10?50g/m^(2)程度であることが好ましい。
【0019】
図1に示すように、中心板22には、その横中心線Lに沿って細幅で長手形状の弾性部材32が取り付けられている。中心板22の横中心線Lとは、中心板22を上下に二等分する位置にある直線をいう。弾性部材32の長さは、マスク本体20の横幅よりも若干短くなっている。また、弾性部材32の取付位置は、マスク本体20の横中心線の位置とも一致している。マスク本体20の横中心線とは、マスク本体20を上下に二等分する位置にある直線をいう。弾性部材32の取付位置をこのようにすることで、本実施形態のマスク10を装着した場合、マスク本体20の略カップ形状を効果的に維持することができる。弾性部材32は、これをその幅方向に沿って折り曲げた場合に、曲げ回復性を有するものである。弾性部材32としては、例えば合成樹脂製の薄板などを用いることができる。
【0020】
弾性部材32はマスク本体20の外側又は内側に取り付けることができる。マスク本体20が複数枚のシートから構成されている場合には、シート間に挟持固定することもできる。本実施形態においては、最も外側に位置するシートと、そのすぐ内側に位置するシートとの間に弾性部材32が配されている。両シートは、マスク本体の横方向に延びる断続的な2本のヒートシール線33によって接合されており、この2本のヒートシール線33の間に筒状の空間が形成されている。この筒状の空間内に弾性部材32が配されている。
【0021】
図1に示すように、上部板24の上端縁の近傍、即ちマスク本体20の上端縁の近傍には、マスク本体20の横方向に延びるノーズクランプ34が取り付けられている。ノーズクランプ34は、細幅で長手形状をしている。ノーズクランプ34の長さは、マスク本体20の横幅よりも若干短くなっている。ノーズクランプ34は、マスク10を装着した場合に、マスク本体20の上端縁及びその近傍の部位が鼻の凹凸形状に沿うようにするために用いられる。この観点から、ノーズクランプ34は塑性変形可能な材料からなることが好ましい。ノーズクランプ34は、例えば金属製の薄板からなる。
【0022】
ノーズクランプ34はマスク本体20の外側又は内側に取り付けることができる。マスク本体20が複数枚のシートから構成されている場合には、シート間に挟持固定することもできる。本実施形態においては、最も外側に位置するシートと、そのすぐ内側に位置するシートとの間にノーズクランプ34が配されている。両シートは、マスク本体の横方向に延びる断続的な2本のヒートシール線35によって接合されており、この2本のヒートシール線35の間に筒状の空間が形成されている。この筒状の空間内にノーズクランプ34が配されている。
【0023】
先に説明したサイドシート30とは別に、マスク本体20の左右両側部には、マスクの縦方向に延びる一対の接合ライン36が形成されている。接合ライン36は連続又は不連続に形成することができる。本実施形態においては、図1に示すように、接合ライン36は不連続に形成されている。各接合ライン36は、マスク本体20の縦中心線に向かって凸状形状になっている。同図においては、接合ライン36滑らかに湾曲した曲線になっている。しかし、接合ライン36の形状はこれに限られず、例えば「く」字状の直線でもよく、或いは曲線と直線とを組み合わせた凸状形状でもよい。各接合ライン36は、マスク本体20の縦中心線に関して対称な位置に、対称な形で形成されている。マスク本体20の縦中心線とは、マスク本体20を左右に二等分する位置にある直線をいう。
【0024】
各接合ライン36は、中心板22の上下に形成されている上向きひだ25及び第1の下向きひだ27を構成するシート材料の折り重なり部分を接合するように形成されている。更に各接合ライン36は、第2の下向きひだ29を構成するシート材料の折り重なり部分も接合するように形成されている。接合ライン36は、例えばヒートシールによる融着、接着剤を用いた接着、縫合によって形成することができる。
【0025】
各接合ライン36は、それらの湾曲の頂点を結ぶ仮想直線を考えた場合、その仮想直線の位置が、中心板22の横中心線Lの位置と一致するように形成されている。更にその仮想直線の位置が、マスク本体20の横中心線の位置と一致するように形成されている。
【0026】
以上の構成を有するマスク10を装着するときには、マスク本体20の上端縁及び下端縁を指で把持し、マスク本体20を縦方向に引き伸ばす。これによって図3に示すように、マスク本体20に形成されていた各ひだが引き伸ばされて、マスク本体20は外側に凸状の略カップ形状に変形する。ここで、先に述べた説明から明らかなように、本実施形態においては、中心板22の横中心線Lに対して、マスク本体20の上側と下側とが非対称な形状になっている。詳細には、中心板22の横中心線Lに対して、マスク本体20の上側には上向きのひだが1個形成されているのに対して、マスク本体20の上側には下向きのひだが2個形成されている。その結果、マスク本体20を縦方向に引き伸ばしたときに、中心板22の横中心線Lに対して下側の方が上側に比べて引き伸ばしの程度が大きくなる。その結果、略カップ形状の空間が大きく形成される。下側の引き伸ばしの程度が大きくなることは、凹凸の変化が激しい部位である口から顎にかけての部位を十分に被覆できる点から有利である。更に、引き伸ばしの程度が大きくなることで、着用者の顔のサイズに合わせてマスク本体20の略カップ形状の大きさを調整しやすくなる。つまり、マスク本体20のサイズ適応性が広くなるという利点がある。更に、マスク10を装着する際に、マスク10の上部板24と下部板28をそれぞれ指でつまみ上下に引き伸ばすと、略カップ形状の空間が常に外側に向かって凸状に形成され、空間の内側面が常に装着者の口元側に位置するようになる。従ってマスク10を、その表裏面を間違えずに装着することができる。
【0027】
上述のように、本実施形態にマスク10においては、中心板22の横中心線Lに対してマスク本体20の上側と下側とでひだの数が異なることで、中心板22の横中心線Lに対して、マスク本体20の上側と下側とが非対称な形状になっている。しかし、本発明にいう非対称な形状とはこのような場合に限られず、それ以外に例えば、(イ)中心板22の横中心線Lに対して、マスクを装着する際の上側の引き伸ばしの程度と下側の引き伸ばしの程度が異なる場合、(ロ)中心板22の横中心線Lに対して上側と下側のシート形状が異なる場合などがあげられる。中心板22の横中心線Lに対して、マスク本体20の上側と下側とが非対称な形状になっていることで、マスク10を装着するときに着用者の口元に形成されるカップ形状の空間を十分に大きくすることができる。また、凹凸の変化が激しい部位である口から顎にかけての部位を十分に被覆することができる。更に、鼻の上部分におけるシートのだぶ付きをおさえることが可能となる。
【0028】
図4には、本実施形態のマスク10を装着した状態が示されている。マスク10においては、マスク本体20の中心板22が、着用者の口及びその周囲を覆っている。また上部板24が、着用者の鼻及びその周囲を覆っている。更に、第1の下部板26及び第2の下部板28が、着用者の顎及びその周囲を覆っている。中心板22には、弾性部材32が取り付けられているので、着用者の口と中心板22との間に形成される空間が安定的に保持される。その結果、マスク10の装着状態において着用者は呼吸をしやすく、また着用者の顔とマスクとの間の空間が蒸れにくくなる。
【0029】
更に特筆すべきは、マスク10の装着状態において、マスク本体20の左右両側部に形成された湾曲形状の接合ライン36が、着用者の頬骨の形状に沿うことである。これによって、マスク本体20が着用者の頬へ一層フィットしやすくなる。その結果、マスクと顔の間に隙間が一層生じづらくなり、花粉や埃などの微小粒子の吸入を効果的に阻止できる。特に、各接合ライン36の湾曲の頂点を結ぶ仮想直線の位置が、中心板22の横中心線Lの位置と一致する場合には、接合ライン36が、着用者の頬骨の形状に一層沿いやすくなる。同様に、仮想直線の位置が、マスク本体20の横中心線の位置と一致する場合にも、接合ライン36が、着用者の頬骨の形状に一層沿いやすくなる。
【0030】
接合ライン36を着用者の頬骨の形状に効果的に沿わせるためには、該接合ライン36が、マスク本体20を構成するシート材料の折りの起点となるように形成されていることが好ましい。この観点から、接合ライン36はヒートシールによる融着で形成されていることが好ましい。」(段落【0011】ないし【0030】)

(4)甲第4号証の記載
甲第4号証には、「マスク」に関して、図面とともに概ね次の記載がある(以下、「甲第4号証の記載」という。)。

・「【0026】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参考に説明する。図1は本発明に係るマスクの平面図、図2は口当てシート部の折り畳み状態を示した概略断面図、図3は斜視図、図4は使用状態斜視図を示している。
【0027】
図中1はマスク本体であり、このマスク本体1は、口当てシート部2と、口当てシート2の左右両側部に固着される耳掛け部材3,3からなっている。
【0028】
口当てシート部2は、図5に示すように、ここでは表面層2a、第1中間層2b,第2中間層2c及び裏面層2d(口当て側)の四層構造である。各層はポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性合成樹脂の不織布で構成されており、各層の目的に応じてスパンポンド、メルトブロー等の各種製法の不織布が使用される。なお、第2中間層2cには、抗菌性不織布を使用している。
【0029】
また口当てシート部2は、プリーツ状に折り畳まれている。即ち、図2に示すように、中央面部2xを中心に、両側に第1段面部2y,2yと、第2段面部2z,2zが形成されるように折り畳まれている。
【0030】
このような口当てシート部2は、周囲が溶着され、四層構造の不織布が固定される。即ち、口当てシート部2の左右両側部は、シート部側端縁部2f,2fから内側に寄った位置が所定幅で帯状溶着され、側部溶着部4a,4aが形成されている。また、口当てシート部2の上端部および下端部は、上下2条の点溶着により、上端縁溶着部4b及び下端縁溶着部4cが形成されている。
【0031】
口当てシート部2の側端縁部2f,2fの中央部には、応力逃げ部となるV字状の切込部5,5が形成されている。この切込部5,5は、V字先端部が側部溶着部4a,4aの幅長の途中まで切り込まれている。
【0032】
また、口当てシート部2の両側部の上下端部には、耳掛け部材3,3の両端部が溶着部3aにおいて固定されている。耳掛け部材3,3は、ここではゴム材が使用される。さらに、上下2条の上端縁溶着部4b,4bの間には、可撓性プラスチック等の保形帯部材6が挿入保持されている。ここでは、図2に示すように、口当てシート部2の上端部を折り曲げて、その空間部に保形帯部材6を挿入している。
【0033】
次に、上述したマスクの使用例を説明する。図3及び図4に示すように、プリーツ状となっている口当てシート部2を上下方向に広げると、折り畳んだ第1段面部2y,2yと第2段面部2z,2zが前方に膨らむように押し広けられる。この状態で耳掛け部材3,3を装着者の両耳に掛け渡すとともに、保形帯部材6を鼻の形状に沿わせて変形させる。
【0034】
この状態で、マスク本体1の左右側部には、耳掛け部材3,3の引張力も相俟って撓み応力(口当てシート部の側部が前方に膨らもうとする応力)が生じるが、その応力は切込部5,5で吸収される。即ち、切込部5,5の上下辺が接触または近接するように閉じた状態となる。
【0035】
このため、マスク本体1の左右側部は、装着者の顔面頬部に密着し、その部分からの粉塵等の侵入を防止することができる。また、保形帯部材6により鼻近辺の密着性が確保できることも相俟って、全体的な防塵性も向上する。」(段落【0026】ないし【0035】)

(5)甲第5号証の記載
甲第5号証には、「マスク」に関して、図面とともに概ね次の記載がある(以下、「甲第5号証の記載」という。)。

・「【0009】
【実施例】図1は、この発明のマスクの一実施例を示している。この実施例では、上記マスクは、マスク本体10と眼部被覆用の透明板11とで構成されている。上記マスク本体10は、合成繊維で形成された濾過効果を有する不織布で形成されており、正面視略四角形に形成されている。このマスク本体10は濾過部分18と、この濾過部分18の外周部に設けられたかがり部23a,23bとを備えており、上記濾過部18は、図2に示すように、異種の不織布を3層積重して形成されている。このうち、中央に配置されている第2層不織布21は、組織が最も緻密に形成されており、裏面側に配置されている第3層不織布20は、抗菌防臭加工を施している。また、表面側に配置された第1層不織布22は、上記第2層,第3層不織布21,20よりも上下方向にやや大きく形成されており、これらを3層積重した状態で上下端部の所定幅が裏面側へ折り返されており、この部分が、かがり部23a,23bに形成されている。この両かがり部23a,23bは、それぞれの上下端縁部が全長にわたって(マスク本体10の横方向に)鎖線状に熱融着されている。そして、マスク本体10の上側に位置するかがり部23aには、その上下の融着部15の隙間に形成された横方向に延びる袋状部分に、マスク本体の横幅よりも少し短く形成された折り曲げ自在な金属製の帯状ワイヤ13が装入されている。上記濾過部分18には、その中央部に横方向に延びる3個所の折り返し部14が形成されている。この折り返し部14は、上記3層積重された不織布が、その襞山の頂部19を表面側では上向き、裏面側では下向きとするように折り曲げられて形成されている。この濾過部分18の左右両側部には、上記第1層不織布22と同一の不織布で形成された二つ折りの耳部24および耳かけ用のゴム紐12が取り付けられている。これら両耳部24の左右端縁部は、その全長にわたって(マスク本体10の縦方向に)鎖線状に熱融着されており、この融着によって上記ゴム紐12の両端部が上記マスク本体の左右両側の上下部分に融着固定されている。
【0010】上記透明板11は、合成樹脂製で可撓性を有する薄板状に形成されており、図3に示すように、正面視略四角形でその下端辺がゆるやかな凹曲状に形成され、この下端辺の中央部には、切れ込み部16が形成されている。また、上記透明板11の表面は、防曇処理が施されている。そして、この透明板11は、その左右両端の下端部が、上記マスク本体の上側の左右両端部分と熱融着によって固定されている。図において17は融着部である。
【0011】このようなマスクは、例えばつぎのようにして使用することができる。すなわち、まず、マスク本体10を透明板11が上側に位置させる状態で顔面前部に配置し、上記透明板11の切れ込み部16を鼻梁に位置決めし、濾過部分18で鼻口を被覆する。つぎに、左右両側のゴム紐12を両耳の後側に引っかけて顔面に装着し、その状態で、マスク本体10の上縁部の帯状ワイヤ13を前側から押圧して折り曲げ、鼻梁から頬桁にかけての顔面の凹凸に沿わせてマスク本体10と顔面との間の隙間をなくす。このとき、上記切れ込み部16が癖つけ部として作用し、上記透明板11が顔面に沿って湾曲し、眼部の前面に位置して眼部を被覆する状態となる。
【0012】このように、上記マスクでは、マスク本体10を濾過効果を有する不織布で形成しているため、この不織布が細かな塵埃まで濾過し、この塵埃を体内に吸収することがない。また、このマスク本体10の中央部には、横方向に延びる折り返し部14を3個所形成しているため、上記不織布がこの折り返し部14で襞を形成し、外気が濾過される際、それに含まれる塵埃が上記襞部に集中的に捕集され、濾過効果が高くなる。しかも、襞を形成した分だけ濾過に寄与する不織布の表面積が大きくなるため、塵埃等の捕集効果がさらに高くなるとともに、目詰まりもし難くなり、呼吸がし難くなるようなことがない。さらに、上記3個所の折り返し部の折り目が上下方向に拡がるため、マスクを装着したまま喋る等して口を動かした場合にもマスク本体がずれることがなくなる。また、上記マスク本体10の上端部には、その上方に向かって突出する状態で可撓性を有する眼部被覆用の透明板11を取り付けている。このため、マスクを着用した状態で上記透明板11が眼部を被覆するようにその前面に位置するため、浮遊する塵埃が眼に入りにくくなる。特に、風の強い場所では上記透明板11が風よけの作用をして塵埃等が眼に入ることを防ぎ、粉塵や液体が飛び散った場合には上記透明板11が眼部保護板として作用してこれらが眼に入ることを防ぐため、安全性に優れる。また、上記透明板11には、その表面に防曇処理を施しているため、吐息等によって透明板11が曇って視界が妨げられることがない。
【0013】また、上記マスクでは、濾過部分18を3層の不織布で構成し、第2層不織布21を第1層不織布22よりも緻密に形成しているため、上記第2層不織布21に煤煙やすす等のさらに細かな塵埃が捕集されるようになる。さらにこの場合には、表面側に配置した第1層不織布22に比較的大きな塵埃が捕集されるため、緻密な第2層不織布21の早期の目詰まりを防ぐことができる。また、第3層不織布20に抗菌防臭性を付与しているため、着用中に濾過部分18に付着する唾液等に細菌が繁殖したり、悪臭を放ったりするようなことがなく、衛生的で使い心地がよい。また、上記マスク本体10の上縁部に帯状ワイヤ13を取付けているため、マスクを着用した状態で上記帯状ワイヤ13を折り曲げることにより、マスク本体10の上縁部を鼻梁から頬桁にかけての顔面の凹凸に沿わせることができる。このため、マスク本体10と顔面との間に隙間が殆ど出きず、この隙間からの塵埃等が進入することを防ぐことができる。
【0014】図4はこの発明の他の実施例を示している。この実施例では、透明板11が、その左右両側辺をそれぞれ横方向に凸状に延ばした形状に形成されている。これにより、マスク着用時に、上記透明板11が眼部の前面だけでなく左右両側面にも位置するようになる。したがって、横方向から塵埃が飛び込んで眼に入るようなことがなくなるため、眼部の保護が一層強化される。それ以外の部分については、図3と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0015】
【発明の効果】以上のように、この発明のマスクは、マスク本体の不織布が細かな塵埃まで濾過し、この塵埃を体内に吸収することがない。また、上記不織布がこの折り返し部で襞を形成し、外気が濾過される際、それに含まれる塵埃が上記襞部に集中的に捕集され、濾過効果が高くなる。しかも、襞を形成した分だけ濾過に寄与する不織布の表面積が大きくなるため、塵埃等の捕集効果がさらに高くなるとともに、目詰まりもし難くなり、呼吸がし難くなるようなことがない。さらに、顔面に着用する際に上記複数条の折り返し部の折り目を広げ、マスク本体の裏面側の中央部に凹部を形成し、マスク着用時に唇や鼻頭等の突出した部分を上記凹部に収容することができる。このようにすることにより、マスクを装着したまま喋る等して口を動かした場合にもマスク本体がずれることがなくなる。また、マスクを着用した状態で透明板が眼部を被覆するようにその前面に位置するため、浮遊する塵埃が眼に入りにくくなる。特に、風の強い場所では上記透明板が風よけの作用をして塵埃等が眼に入ることを防ぎ、粉塵や液体が飛び散ったりした場合には上記透明板が眼部保護板として作用してこれらが眼に入ることを防ぐため、安全性に優れる。」(段落【0009】ないし【0015】)

(6)甲第6号証の記載
甲第6号証には、「マスク」に関して、図面とともに概ね次の記載がある(以下、「甲第6号証の記載」という。)。

・「【0010】
以下に図面を参照して本考案の一実施形態について説明する。
図1は、本考案の一実施形態に係るマスクの使用時における外観斜視図であり、図2は、その外側表面図、図3は、その内側表面図、図4は、図1のA-A線での部分切欠断面図である。
これらの図において、マスク1は、被覆部2と、紐状耳掛部3とからなる。
被覆部2は、マスク1の装着者(以下単に、「装着者」という)の鼻及び口を覆う部分であり、長方形状の不織布層4と、鼻ワイヤー5a及び口ワイヤー5bからなる。不織布層4は、その材質や形状は特に限定されず、上下辺が円弧形状になっているものや、菱形形状など種々の形状をとることができる。
【0011】
そして、被覆部2の外表面側(外気にあたる側)の中心部(マスク1の水平鉛直方向の両中心線及びその近傍付近)には、左右方向(装着者がマスクを装着したときに顔の横方向に沿った方向)に沿ってボックスプリーツ6aが形成されるとともに、ボックスプリーツ6aの両側には外表面側プリーツ6bが形成されている。ボックスプリーツ6aや外表面側プリーツ6bの向きは特に限定されず、上下方向(装着者がマスクを装着したときに顔の縦方向に沿った方向)に沿っているものでもよい。また、ボックスプリーツ6aや外表面側プリーツ6bの折り目をつける側も外表面側又は内表面側(装着者の顔がある側)のいずれでも良い。装着者の顔に折り目を当てないという点では、プリーツに関しては外表面側にボックスプリーツ6aを設けてその両側に当該ボックスプリーツ6aと同じ向きに外表面側プリーツ6b,6bを設けることが望ましい。
【0012】
被覆部2を構成する不織布層4は、図4に示したように、三層からなり、外表面側から順番に、不織布4a、不織布4b、不織布4cで示される。不織布4aは、鼻ワイヤー5a及び口ワイヤー5bを介装するために設けられている。不織布4bは、外気や呼気のフィルターとして設けられ、不織布4a,4cと比べると目の細かい硬めの材質からなる。不織布4cは、肌触りの良い材質からなる。
被覆部2の鼻隆起部分(マスクの装着者の顔の鼻がある部分の盛り上がったところ)に相当する上端縁付近で不織布4a及び4cは折り返されている。上端縁付近では、不織布4bは、折り返されないか折り返しがあったとしてもごくわずかである。また、被覆部2の顎部分(マスクの装着者の顔の顎があるところ)に相当する下端縁付近で不織布4a、4b、4cは折り返されている。
マスク1の未使用状態では、マスク1は、ボックスプリーツ6a及び外表面側プリーツ6bが折り畳まれた状態であり、マスク1は、平面形状の物として扱うことができる。
【0013】
鼻ワイヤー5aは、鼻隆起部分の不織布層4に介装される。鼻ワイヤー5aは、不織布層4のうち、不織布4bは折り返さずに(図4参照)、不織布4a,4cを被覆部2の上端縁で折り返した状態の不織布4aと不織布4aとの間に介装されている。折り返したことによって、鼻隆起部分における被覆部2の強度が高められている。
口ワイヤー5bは、ボックスプリーツ6aを構成する部分に当たる不織布4aと不織布4bとの間に介装されている。
鼻ワイヤー5a及び口ワイヤー5bは、可撓性の板状部材であり、高分子樹脂から形成されるが、可撓性であれば特にその材質は限定されず、紙製、木製、金属製等種々の材質を適用できる。鼻ワイヤー5aは、マスク1が容易にずれたりしないようにするためと、通気を良くし、呼吸をしやすくするために設けられる。口ワイヤー5bは、装着者の鼻及び口とマスク1との間に空間を形成させるために設けられる。鼻及び口とマスク1との間に空間が形成されれば、通気が良くなり、呼吸がしやすくなり、話しやすくなるからである。
【0014】
紐状耳掛部3は、二本のウイリーゴムからなる紐状の耳掛け部である。紐状耳掛部3は、被覆部2の左右両側端縁(装着者の顔面両側縁)に、右耳用及び左耳用それぞれ別個に接合されてループを形成する。
【0015】
接合不織布7は、被覆部2の一部を構成するものであり、所定のプリーツが形成されるとともに、鼻ワイヤー5a及び口ワイヤー5bが介装された不織布4a、4b、4cの左右両側端縁に沿って、これらを包み込む。接合不織布7は、これらを間に挟んで包み込んだ状態で、その上下から熱融着により接合される。接合不織布7の外表面側には、紐状耳掛部3が熱融着により接合される。
【0016】
次に、本考案の一実施形態に係るマスクの製造方法について説明する。
(1)材料の準備
マスク1の材料として、所定の大きさに裁断した不織布4a、4b、4c、接合不織布7、所定の大きさに成形したプラスチック製の鼻ワイヤー5a、口ワイヤー5b、及び、二本の紐状耳掛部3として二本のウイリーゴムを準備する。
【0017】
(2)被覆部製作
不織布4a、4b、4cを重ね合わせてボックスプリーツ6a及び外表面側プリーツ6bをつける。次に、不織布4aと不織布4bとの間に口ワイヤー5bを介装し、口ワイヤー5bの両側に沿って熱融着を行い、口ワイヤー5bの位置決めを行い、必要以上にずれないようにする。次に、不織布4aの外表面側に鼻ワイヤー5aを載せた状態で、不織布4a及び4cの上端縁を折り目をつけて折り返して、その鼻ワイヤー5aを包む。そして、鼻ワイヤー5aの両側に沿って熱融着を行い、鼻ワイヤー5aの位置決めを行い、必要以上にずれないようにする。更に、不織布4a、4b、4cの下端縁に折り目をつけて、これらを折り返す。そして、折り返したところに、左右方向に沿って熱融着を行う。次に、接合不織布7でボックスプリーツ6aや外表面側プリーツ6bが形成された被覆部2の左右両側端縁を挟み込んで包み、高い温度と圧力をかけて、これらを熱融着させる。これにより、被覆部2が完成する。
【0018】
(3)紐状耳掛部3の取り付け
接合不織布7の内表面側に紐状耳掛部3の端部を当てて、これを接合不織布7に熱融着させる。これにより、マスク1が完成する。
なお、マスク1の製造方法は、特に限定されない。例えば、鼻ワイヤー5aや口ワイヤー5bの介装は熱融着の前後のいずれでもかまわない。不織布4a、4b、4cの上下端縁については、折り返しを設けても設けなくても良く、鼻ワイヤー5aや口ワイヤー5bを介装する層も限定されず、どの層に介装してもよい。
【0019】
次に、本考案の一実施形態に係るマスクの作用について説明する。
まず、マスク1の不使用時における作用について説明する。
マスク1は、不織布製であるため、軽くて携帯しやすく、使い捨てができる。マスク1の不使用時においては、ボックスプリーツ6aと外表面側プリーツ6bとが閉じた状態、すなわち、折り畳まれた状態であるため、被覆部2は、平面形状の物として取り扱うことができる。従って、マスク1は、携帯しやすいし、複数のマスクを重ね合わせて箱に入れることができ、便利である。
【0020】
次に、マスク1の使用時における作用について説明する。
マスク1は、ボックスプリーツ6a及び外表面側プリーツ6bが形成されているため、装着者がマスクをかけるとそのひだが開き、開いたところにできる空間を包む被覆部2の部分が装着者の鼻や口にあてがわれる。そのため、マスク1が鼻腔や口中央部に常時直接当たることはない。従って、装着者は息がしやすく、話もしやすく、心地よくマスク1を装着することができる。また、ボックスプリーツ6aや外表面側プリーツ6bが開くため、装着者の顔の広い部分を覆うことができる。
また、鼻ワイヤー5aが装着者の鼻の隆起部分にかかるため、マスク1がそこでひっかかり、簡単にずれることはない。更に、鼻ワイヤー5aによって鼻の隆起部分とマスク1との間に通気や呼吸のための隙間ができる。また、口ワイヤー5bのところは、装着者が紐状耳掛部3を耳に掛けて、鼻や口に被覆部2をあてがうときに外表面側へ膨出する態様で湾曲するため、その部分に空間ができる。そのため、マスクが鼻腔や口中央部に常時直接当たることはない。従って、装着者は息がしやすく、話もしやすく、心地よくマスク1を装着することができる。ボックスプリーツ6aや外表面側プリーツ6bの開きと口ワイヤー5bの湾曲による効果は相乗的な効果を奏する。また、マスク1は、鼻や口の前に空間ができることから、マスク1に唾液や口紅が付着することが回避され、衛生的である。また、被覆部2の上下端縁は不織布が折り返されているため、補強される。」(段落【0010】ないし【0020】)

(7)甲第7号証の記載
甲第7号証には、「マスク」に関して、図面とともに概ね次の記載がある(以下、まとめて、「甲第7号証の記載」という。)。

・「【0011】
中心パネル22の下端縁22bには、前記のシート材料の一部から構成される第2パネル26が連設されている。第2パネル26は、中心パネル22の下端縁22bに折曲部を位置させて、前記のシート材料が中心パネル22の内側に折り返されて中心パネル24に連設されている。これによって、中心パネル22の内側の下側半分が第2パネル26に被覆される。第2パネル26は、中心パネル22の下端縁22bと同一位置にある第1の端縁26aと、自由端縁になっていると共に、第1パネル24の自由端縁24bと対向する第2の端縁26bとを有している。各端縁26a,26bはそれぞれ横方向に延びている。」(段落【0011】)

・「【0013】
マスク本体20の左右両側部にはサイドシート30がそれぞれ取り付けられている。サイドシート30は、幅狭の短冊状の縦長シートをその縦中心線に沿って二つ折りしたものから構成されている。詳細には、縦中心線に沿ってV字状に二つ折りされた状態のサイドシート30によってマスク本体20の側部を挟み込み、該側部が挟み込まれた状態で、該側部とサイドシート30とが接合されている。接合には例えばヒートシールによる融着、接着剤を用いた接着、縫合などが用いられる。図1には、断続的なヒートシール線31によって、サイドシート30によってマスク本体20の側部とが接合されている状態が示されている。サイドシート30は、該サイドシート30によってマスク本体20の側部のエッジを包み込むことで、該エッジが直接肌に触れることを防止するために用いられる。また、エッジ部分からの繊維の欠落、発塵を防止するために用いられる。また、サイドシート30は、互いに重なり合った中心パネル22と第1パネル24、及び互いに重なり合った中心パネル22と第2パネル26を接合して、マスク本体20の側部におけるシート材料のばたつきを防止している。」(段落【0013】)

・「【0021】
図3には、以上の構成を有するマスク10を装着するときの状態が示されている。同図は、マスク10をその内側から(即ち図1とは反対側から)みた図である。図3に示すように、マスク本体20における第1パネル24の自由端縁24b及び第2パネル26の自由端縁26bを指で把持し、マスク本体20を縦方向に引き伸ばす。これによって同図に示すように、第1パネル24における一対の第1接合ライン27a,27b間に位置する部位が引き伸ばされる。同様に、第2パネル26における一対の第2接合ライン28a,28b間に位置する部位が引き伸ばされる。その結果、マスク本体20は外側に凸状の略カップ形状に変形する。各パネル24,26の引き伸ばしの程度を調整することで、着用者の顔のサイズに合わせてマスク本体20の略カップ形状の大きさを調整できる。つまり、マスク本体20のサイズ適応性が広くなる。更に、マスク10を装着する際に、第1パネル24の自由端縁24b及び第2パネル26の自由端縁26bをそれぞれ指でつまみ上下に引き伸ばすと、略カップ形状の空間が常に外側に向かって凸状に形成され、空間の内側面が常に装着者の口元側に位置するようになる。従ってマスク10を、その表裏面を間違えずに装着することができる。」(段落【0021】)

・「【0022】
図4には、本実施形態のマスク10を装着した状態が示されている。マスク10においては、マスク本体20の中心パネル22が、着用者の口及びその周囲を覆っている。また第1パネル24が、着用者の鼻及びその周囲を覆っている。更に、第2パネル26が、着用者の下顎及びその周囲を覆っている。中心パネル22における上端縁22aの幅方向中央部においては、接合ラインが形成されていないので、マスク本体20を構成するシート材料はその柔軟な風合いを維持した状態で着用者の鼻尖部ないしその近傍の部位に当接する。また、中心パネル22における下端縁22bの幅方向中央部においても接合ラインが形成されていないので、マスク本体20を構成するシート材料はその柔軟な風合いを維持した状態で着用者の下顎ないしその近傍の部位に当接する。従って、これらの部位において、肌とシート材料とが過度に擦れ合うことが効果的に防止される。」(段落【0022】)

・図2から、「素材の下端部の内側への折り返しにより形成された、上方に向って開いた凹部」が看取される。

(8)甲第8号証の記載
甲第8号証には、「FILTER MASK」に関して、図面とともに概ね次の記載がある(以下、まとめて、「甲第8号証の記載」という。)。

・「the reverse pleat serves the important function of forming a pocket-like recess for holding the mask on the lower jaw and around the chin area. As indicated by the arrow marked R in FIG. 1A, the reverse pleat, designated 24 in FIG. 1B, is created by folding approximately one inch of the bottom portion of filter material 14. 」(第9欄第46ないし52行)(翻訳:反転したプリーツは、下顎とその周囲にマスクを被せて保持するポケットのような凹所を形成すると云う重要な機能を果たしている。図1Aの矢印Rによって示されているように、反転したプリーツ(図IBにおいて24で示されている)は、フィルター部材14の下部において約1インチ折り重ねて形成されている。)

・「As shown best in FIG. 1B, the reverse pleat is formed by folding the bottom edge 30 toward the inner surface of filter material 14 such that the side edges 28 and 32 are folded back upon themselves at the lowermost portion thereof, and are then secured by heat activated tape along the depth D.」(第10欄第1ないし6行)(翻訳:図1Bに示されているように、反転プリーツは、側部エッヂ28及び32の最下端部が折り返されるように、底部エッヂ30をフィルター部材14の内面側に向って折り重ねて形成され、更に当該両側部エッヂは熱接着性テープにより、Dの深さに沿って固定されている。)

・「it can also be seen that reverse pleat 24 allows the creation of a pocket-like shape by which the inner surface of the filter material is held tightly against the lower jaw area of the wearer. 」(第10欄第45ないし48行)(翻訳:反転したプリーツ24は、フィルター部材の内部表面が装着者の顎部をしっかりと保持するポケット状形状の形成をもたらす。)

・FIG.1ないしFIG.3から、素材の下端部の折り返しにより形成された、上方に向って開いた凹部が看取される。

(9)甲第9号証の記載
甲第9号証には、概ね次の記載がある(以下、「甲第9号証の記載」という。)。

・「Respirator Details」(翻訳:マスクの詳細)の欄には、「Schedule 84A」(翻訳:計画84A)、「Approval # 0457」(翻訳:承認番号# 0457)、「Approval Date 5/22/1996」(翻訳:承認日 5/22/1996),「Product Line MAS695」(翻訳:製品種別 MAS695」と記載されている。

(10)甲第10号証の記載
甲第10号証には、写真とともに概ね次の記載がある(以下、まとめて、「甲第10号証の記載」という。)。

・「TC-84A-0457, Protection^(1) N-95, Respirator# 695」(第2頁右欄中程)(翻訳:TC-84A-0457, Protection^(1) N-95,マスク# 695)

・第2ページ左欄には、マスクの装着方法を示す1.ないし8.の計8枚の写真が掲載されていると共に、当該各写真の下部には、次のとおりマスクの装着方法が記載されている(以下、翻訳文を示す。)。
「1.一方の手でマスク上部のノーズピース部をつかむ。他方の手の指をチンピース部のうしろ側にスライドさせる。
2.チンピース部を引き下げつつ出して、マスクが十分に拡開するまで広げる。マスクを十分に拡開することは重要である。
3.形成されたポケット部にあごを入れる。下部バンドが耳の下側から首の後方に位置するように、また上部バンドが頭の頂部に近づくように、バンドを頭部の後方まで伸ばす。
4.Magic Arch ○R(当審注:Rを○で囲んだ記号で、登録商標であることを示すものである。)を鼻及び口から十分に伸ばして、ノーズピース部を鼻及び顔の輪郭に合せる。
5.ノーズピース部でマスクを保持し、1本の指を展性のあるアルミニウム製のチンピース部の上からマスクの内側に入れ、徐々に引き下げてマスクを顔にぴったり合せる。
6.あごの下の余分な部分は、はさんで締めつけたり、折り曲げたり、あるいは、より合せる。
7.顔へのフィット状態のチェック:フィット状態をチェックするために、両手をマスクのエッヂに沿って置き、息を吐き出す。もし、空気が鼻の回りから逃げるのであれば、ノーズピース部を調整する。もし、空気がマスクのエッヂから漏れ出るのであれば、チンピース部の折り曲げやよりを戻して、ステップ5.及び6.を繰り返す。
8.N95マスクは、顔に完全にフィットする。」

(11)甲第11号証の記載
甲第11号証には、概ね次の記載がある(以下、まとめて、「甲第11号証の記載」という。)。

・「Performance Testing Data for 21 N95 Filtering Facepiece Respirators for 25 Persons,1996」(第3ページ第1及び2行)(翻訳:1996年、21種類のN95顔用フィルターマスクについて25名で行なった試験データ)

・第3ページの表中に「Alpha Protect MAS695」と記載されている。

2 甲1発明及び構成A発明
(1)甲1発明
甲第1号証の記載及び図面を整理すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「柔軟性多孔質フィルター部2からなり、口と鼻とを覆う覆い部と、その覆い部の両側部から延び出して耳に掛けられる2つの耳掛け部とを含む細菌フィルターマスク1であって、
前記覆い部が、四角形の柔軟性多孔質フィルター部2に横方向に延びる複数のヒダ32が形成されるとともに各ヒダ32の両端部においてヒダ32の側壁同士が接合されて伸びない側縁部とされ、かつ、上端10に沿って横方向に延びる上縁部を含み、その上縁部に着用者の鼻部分の支持を調整可能にする支持部材14が設けられる一方、下端部に着用者のあごを入れるためのポーチ30を備え、そのポーチ30は、四角形の柔軟性多孔質フィルター部2の下端部が内側に折り返されるとともに、その折り返された部分の両側縁部の少なくとも各折返し点に隣接する部分がそれら両側縁部と対向する部分に接合される一方、その折り返された部分の横方向に平行な端縁部はその端縁部に対向する部分に接合されず、それら折り返された部分とその折り返された部分に対向する部分とによって、前記覆い部の内側に上方に向かって開いた凹部が形成されて成り、その凹部が着用者のあごを入れるためのポーチ30として機能するものである細菌フィルターマスク1。」

(2)構成A発明
ア 甲2発明
甲第2号証の記載及び図面を整理すると、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。

「不織布から成り、口と鼻とを覆うマスク本体1と、そのマスク本体の両側縁2から延び出して耳に掛けられる2つの耳掛け部3とを含むマスク9であって、
前記マスク本体1が、四角形の前記不織布に横方向に延びる複数の折り返し部14が形成されるとともに各折り返し部14の両端部において押し返し部14の側壁同士が接合されて伸びない側縁部とされ、かつ、上縁4に沿って横方向に延びる上縁4近傍を含み、その上縁4近傍に当該マスク9の着用者の鼻頭の形状に沿って曲がることにより、装着者の顔面にフィットして、マスク9のずれを防止する塩ビ被覆ワイヤー5が設けられるマスク9。」

そして、本件特許発明1と甲2発明を対比するに、甲2発明における「不織布」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本件特許発明1における「通気性を有する素材」に相当し、以下、同様に、「マスク本体1」は「覆い部」に、「両側縁2」は「両側部」に、「耳掛け部3」は「耳掛部」に、「マスク9」は「マスク」に、「折り返し部14」は「ヒダ」に、「上縁4」は「上端縁」に、「上縁4近傍」は「上縁部」に、「着用者」は「装着者」に、「鼻頭の形状に沿って曲がることにより、装着者の顔面にフィットして、マスク9のずれを防止する塩ビ被覆ワイヤー5」は「鼻に係合することによりその上縁部が下方へずれることを防止する下ずれ防止部」に、それぞれ、相当する。

したがって、甲第2号証には、次の発明(以下、「構成A発明」という。)が記載されていると認める。

「通気性を有する素材から成り、口と鼻とを覆う覆い部と、その覆い部の両側部から延び出して耳に掛けられる2つの耳掛部とを含むマスクであって、
前記覆い部が、四角形の前記素材に横方向に延びる複数のヒダが形成されるとともに各ヒダの両端部においてヒダの側壁同士が接合されて伸びない側縁部とされ、かつ、上端縁に沿って横方向に延びる上縁部を含み、その上縁部に当該マスクの装着者の鼻に係合することによりその上縁部が下方へずれることを防止する下ずれ防止部が設けられるマスク。」

イ 甲3発明
甲第3号証の記載及び図面を整理すると、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認める。

「通気性を有するシート材料から成り、口と鼻とを覆うマスク本体20と、そのマスク本体20の両側部から延び出して耳に掛けられる2つの耳掛け紐21とを含むマスク10であって、
前記マスク本体20が、四角形の前記シート材料に横方向に延びる複数のひだ25、27、29が形成されるとともに各ひだ25、27、29の両端部においてひだ25、27、29の側壁同士が接合されて伸びない側縁部とされ、かつ、上端縁に沿って横方向に延びる上端縁の近傍を含み、その上端縁の近傍に当該マスク10を装着した場合に鼻の凹凸形状に沿うようにするノーズクランプ34が設けられるマスク10。」

そして、本件特許発明1と甲3発明を対比するに、甲3発明における「通気性を有するシート材料」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本件特許発明1における「通気性を有する素材」に相当し、以下、同様に、「マスク本体20」は「覆い部」に、「耳掛け紐21」は「耳掛部」に、「マスク10」は「マスク」に、「ひだ25、27、29」は「ヒダ」に、「上縁縁の近傍」は「上縁部」に、「マスク10を装着した場合に鼻の凹凸形状に沿うようにするノーズクランプ34」は「マスクの装着者の鼻に係合することによりその上縁部が下方へずれることを防止する下ずれ防止部」に、それぞれ、相当する。

したがって、甲第3号証には、甲第2号証と同様の構成A発明が記載されていると認める。

ウ 甲4発明
甲第4号証の記載及び図面を整理すると、甲第4号証には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認める。

「不織布から成り、口と鼻を覆う口当てシート部2と、その口当てシート部の両側部から延びだして耳に掛けられる2つの耳掛け部材3,3とを含むマスクであって、
前記口当てシート部2が、四角形の前記不織布に横方向に延びる複数のプリーツ状に折り畳まれた部分が形成されるとともに各プリーツ状に折り畳まれた部分の両端部においてプリーツ状に折り畳まれた部分の側壁同士が接合されて伸びない側縁部とされ、かつ、上端縁に沿って横方向に延びる上縁部を含み、その上縁部に当該マスクの装着者の鼻の形状に沿わせて変形させることにより鼻近辺の密着性が確保できる保形帯部材6が設けられるマスク。」

そして、本件特許発明1と甲4発明を対比するに、甲4発明における「不織布」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本件特許発明1における「通気性を有する素材」に相当し、以下、同様に、「口当てシート部2」は「覆い部」に、「耳掛け部材3,3」は「耳掛部」に、「プリーツ状に折り畳まれた部分」は「ヒダ」に、「マスクの装着者の鼻の形状に沿わせて変形させることにより鼻近辺の密着性が確保できる保形帯部材6」は「マスクの装着者の鼻に係合することによりその上縁部が下方へずれることを防止する下ずれ防止部」に、それぞれ、相当する。

したがって、甲第4号証には、甲第2号証と同様の構成A発明が記載されていると認める。

エ 甲5発明
甲第5号証の記載及び図面を整理すると、甲第5号証には、次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認める。

「不織布から成り、口と鼻を覆うマスク本体10と、そのマスク本体の両耳部から延びだして耳に掛けられる2つのゴム紐12とを含むマスクであって、
前記マスク本体10が、四角形の前記不織布に横方向に延びる複数の折り返し部14が形成されるとともに各折り返し部14の両端部において折り返し部の側壁同士が接合されて伸びない側縁部とされ、かつ、上端縁に沿って横方向に延びる上縁部を含み、その上縁部に当該マスクの装着時に鼻梁から頬桁にかけて顔面の凹凸に沿わせてマスク本体10と顔面との間の隙間をなくすように折り曲げられる帯状ワイヤ13が設けられるマスク。」

そして、本件特許発明1と甲5発明を対比するに、甲5発明における「不織布」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本件特許発明1における「通気性を有する素材」に相当し、以下、同様に、「マスク本体10」は「覆い部」に、「両耳部」は「両側部」に、「ゴム紐12」は「耳掛部」に、「折り返し部14」は「ヒダ」に、「マスクの装着時に鼻梁から頬桁にかけて顔面の凹凸に沿わせてマスク本体10と顔面との間の隙間をなくすように折り曲げられる帯状ワイヤ13」は「マスクの装着者の鼻に係合することによりその上縁部が下方へずれることを防止する下ずれ防止部」に、それぞれ、相当する。

したがって、甲第5号証には、甲第2号証と同様の構成A発明が記載されていると認める。

オ 甲6発明
甲第6号証の記載及び図面を整理すると、甲第6号証には、次の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されていると認める。

「不織布層4から成り、口と鼻を覆う被覆部2と、その被覆部2の左右両側端縁から延びだして耳に掛けられる2つの紐状耳掛部3とを含むマスク1であって、
前記被覆部2が、四角形の前記不織布に横方向に延びる複数のプリーツ6a、6bが形成されるとともに各プリーツ6a、6bの両端部においてプリーツ6a、6bの側壁同士が接合されて伸びない側縁部とされ、かつ、上端縁に沿って横方向に延びる上縁部を含み、その上縁部に当該マスク1の装着者の鼻の隆起部分にかかり容易にずれないようにするための鼻ワイヤー5aが設けられるマスク1。」

そして、本件特許発明1と甲6発明を対比するに、甲6発明における「不織布層4」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本件特許発明1における「通気性を有する素材」に相当し、以下、同様に、「被覆部2」は「覆い部」に、「左右両側端縁」は「両側部」に、「紐状耳掛部3」は「耳掛部」に、「プリーツ6a、6b」は「ヒダ」に、「マスク1の装着者の鼻の隆起部分にかかり容易にずれないようにするための鼻ワイヤー5a」は「マスクの装着者の鼻に係合することによりその上縁部が下方へずれることを防止する下ずれ防止部」に、それぞれ、相当する。

したがって、甲第6号証には、甲第2号証と同様の構成A発明が記載されていると認める。

3 無効理由について
(1)本件特許発明1について
ア 甲第1号証を主引用文献とした場合
本件特許発明1と甲1発明を対比するに、甲1発明における「柔軟性多孔質フィルター部2」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本件特許発明1における「通気性を有する素材」に相当し、以下、同様に、「耳掛け部」は「耳掛部」に、「細菌フィルターマスク1」は「マスク」に、「ヒダ32」は「ヒダ」に、「上端10」は「上端縁」に、それぞれ、相当する。 また、甲1発明における「着用者の鼻部分の支持を調整可能にする支持部材14」は、甲第1号証の記載又は甲第2ないし6号証の記載からみて、下ずれ防止機能を有することは明らかであるから、本件特許発明1における「マスクの装着者の鼻に係合することによりその上縁部が下方へずれることを防止する下ずれ防止部」に相当する。
さらに、甲1発明における「着用者のあごを入れるためのポーチ30を備え、そのポーチ30は、四角形の柔軟性多孔質フィルター部2の下端部が内側に折り返されるとともに、その折り返された部分の両側縁部の少なくとも各折返し点に隣接する部分がそれら両側縁部と対向する部分に接合される一方、その折り返された部分の横方向に平行な端縁部はその端縁部に対向する部分に接合されず、それら折り返された部分とその折り返された部分に対向する部分とによって、前記覆い部の内側に上方に向かって開いた凹部が形成されて成り、その凹部が着用者のあごを入れるためのポーチ30として機能するものである」は、甲第1号証の記載又は甲第2ないし6号証の記載からみて、上ずれ防止機能を有することは明らかであるから、本件特許発明1における「下端部が上方にずれることを防止する上ずれ防止部を備え、その上ずれ防止部が、前記四角形の素材の下端部が内側へ折り返されるとともに、その折り返された部分の両側縁部の少なくとも各折返し点に隣接する部分がそれら両側縁部と対向する部分に接合される一方、その折り返された部分の横方向に平行な端縁部はその端縁部に対向する部分に接合されず、それら折り返された部分とその折り返された部分に対向する部分とによって、前記覆い部の内側に上方に向かって開いた凹部が形成されて成り、その凹部が当該マスクの装着者の顎に掛かって前記上ずれ防止部として機能するものである」に相当する。

したがって、本件特許発明1と甲1発明の間に相違点はなく、本件特許発明1は甲1発明であるし、仮に、本件特許発明1が甲1発明でないとしても、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件特許発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

イ 甲第2ないし6号証の何れかを主引用文献とした場合
本件特許発明1と甲第2ないし6号証の何れにも記載されている発明である構成A発明を対比するに、両者は、次の点で一致する。

「通気性を有する素材から成り、口と鼻とを覆う覆い部と、その覆い部の両側部から延び出して耳に掛けられる2つの耳掛部とを含むマスクであって、
前記覆い部が、四角形の前記素材に横方向に延びる複数のヒダが形成されるとともに各ヒダの両端部においてヒダの側壁同士が接合されて伸びない側縁部とされ、かつ、上端縁に沿って横方向に延びる上縁部を含み、その上縁部に当該マスクの装着者の鼻に係合することによりその上縁部が下方へずれることを防止する下ずれ防止部が設けられるマスク。」

そして、次の点で相違する。

<相違点1>
本件特許発明1においては、「下端部にその下端部が上方にずれることを防止する上ずれ防止部を備え、その上ずれ防止部が、前記四角形の素材の下端部が内側へ折り返されるとともに、その折り返された部分の両側縁部の少なくとも各折返し点に隣接する部分がそれら両側縁部と対向する部分に接合される一方、その折り返された部分の横方向に平行な端縁部はその端縁部に対向する部分に接合されず、それら折り返された部分とその折り返された部分に対向する部分とによって、前記覆い部の内側に上方に向かって開いた凹部が形成されて成り、その凹部が当該マスクの装着者の顎に掛かって前記上ずれ防止部として機能するものである」のに対し、構成A発明においては、そのようなものではない点(以下、「相違点1」という。)

そこで、上記相違点1について、以下に検討する。
甲第1号証の「同様の伸縮性繊維がフィルター部2の折り曲げ部の終末端に固定され、着用者のあごの下を通るチンストラップ26を提供する。チンストラップ26は着用者の顔の周りの密閉性を高めるのに役立つ。折り曲げ部とチンストラップはさらに着用者のあごを入れるためのポーチ30を提供する。」という記載、甲第7号証の記載、甲第8号証の記載及び甲第9ないし11号証の記載からみて、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項は周知である(以下、「周知技術」という。)。
したがって、構成A発明に、周知技術を適用し、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、本件特許発明1を全体としてみても、本件特許発明1により、構成A発明及び周知技術からみて、格別顕著な効果が奏されるともいえない。 よって、本件特許発明1は、構成A発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)本件特許発明2について
ア 甲第1号証を主引用文献とした場合
本件特許発明2と甲1発明を対比するに、両者は、次の点で相違し、それ以外には、実質的な相違点はない。

<相違点2a>
本件特許発明2においては、「折返し部の両側縁部の折返し点に隣接する部分がそれら両側縁部に対向する部分に接合される一方、その折返し部の自由端側の両側縁部は接合されず、それら接合されない両側縁部に前記2つの耳掛部の各一端が接合された」であるのに対し、甲1発明においては、そのようなものではない点(以下、「相違点2a」という。)。

そこで、相違点2aについて、以下に検討する。
マスクの両側縁部に耳掛部を接合することは、甲第2ないし7号証に記載されている(以下、「技術1」という。)。
また、耳掛部の接合位置の差や接合位置の状態によって、作用、効果に顕著な差は生じることなく、耳掛部の接合位置の差や接合位置の状態をどのようにするかは、当業者にとって、設計的事項である。
したがって、甲1発明において、技術1を適用し、相違点2aに係る本件特許発明2の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、本件特許発明2を全体としてみても、本件特許発明2により、甲1発明及び技術1からみて、格別顕著な効果が奏されるともいえない。
よって、本件特許発明2は、甲1発明及び技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

イ 甲第2ないし6号証の何れかを主引用文献とした場合
本件特許発明2と構成A発明を対比するに、両者は、相違点1に加え、次の点で相違する。

<相違点2b>
本件特許発明2においては、「前記折返し部の両側縁部の折返し点に隣接する部分がそれら両側縁部に対向する部分に接合される一方、その折返し部の自由端側の両側縁部は接合されず、それら接合されない両側縁部に前記2つの耳掛部の各一端が接合された」であるのに対し、構成A発明においては、そのようなものではない点(以下、「相違点2b」という。)。

そこで、相違点2bについて、以下に検討する。
上記第4 3(2)アと同様の理由で、構成A発明において、技術1を適用し、相違点2bに係る本件特許発明2の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、本件特許発明2を全体としてみても、本件特許発明2により、構成A発明、周知技術及び技術1からみて、格別顕著な効果が奏されるともいえない。
したがって、本件特許発明2は、構成A発明、周知技術及び技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3)本件特許発明3について
ア 甲第1号証を主引用文献とした場合
本件特許発明3と甲1発明を対比するに、両者は、次の点で相違し、それ以外には、実質的な相違点はない。

<相違点3a>
本件特許発明3においては、「前記折返し部の両側縁部の全部がそれら両側縁部に対向する部分に接合されるとともに、その折返し部の両側縁部に前記2つの耳掛部の各一端が接合された」であるのに対し、甲1発明においては、そのようなものではない点(以下、「相違点3a」という。)。

そこで、相違点3aについて、以下に検討する。
技術1として示したとおり、マスクの両側縁部に耳掛部を接合することは、甲第2ないし7号証に記載されている。
また、耳掛部の接合位置の差や接合位置の状態によって、作用、効果に顕著な差は生じることなく、耳掛部の接合位置の差や接合位置の状態をどのようにするかは、当業者にとって、設計的事項である。
したがって、甲1発明において、技術1を適用し、相違点3aに係る本件特許発明3の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、本件特許発明3を全体としてみても、本件特許発明3により、甲1発明及び技術1からみて、格別顕著な効果が奏されるともいえない。
よって、本件特許発明3は、甲1発明及び技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

イ 甲第2ないし6号証の何れかを主引用文献とした場合
本件特許発明3と構成A発明を対比するに、両者は、相違点1に加え、次の点で相違する。

<相違点3b>
本件特許発明3においては、「前記折返し部の両側縁部の全部がそれら両側縁部に対向する部分に接合されるとともに、その折返し部の両側縁部に前記2つの耳掛部の各一端が接合された」であるのに対し、構成A発明においては、そのようなものではない点(以下、「相違点3b」という。)。

そこで、相違点3bについて、以下に検討する。
上記第4 3(3)アと同様の理由で、構成A発明において、技術1を適用し、相違点3bに係る本件特許発明3の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、本件特許発明3を全体としてみても、本件特許発明3により、構成A発明、周知技術及び技術1からみて、格別顕著な効果が奏されるともいえない。
したがって、本件特許発明3は、構成A発明、周知技術及び技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(4)本件特許発明4について
以下、本件特許発明4のうち、本件特許の特許請求の範囲の請求項1のみを引用する請求項4に係る発明について判断する。
ア 甲第1号証を主引用文献とした場合
本件特許発明4と甲1発明を対比するに、両者は、次の点で相違する。

<相違点4a>
本件特許発明4においては、「前記複数のヒダが1つの箱ヒダと、その箱ヒダの下方に形成された車ヒダとの両方を含む」であるのに対し、甲1発明においては、そのようなものではない点(以下、「相違点4a」という。)。

そこで、相違点4aについて、以下に検討する。
複数のヒダが1つの箱ヒダと、その箱ヒダの下方に形成された車ヒダとの両方を含むようにすることは、甲第3号証(特に図2を参照。)、甲第4号証(特に図2を参照。)及び甲第6号証(特に図4を参照。)に記載されている(以下、「技術2」という。)。
したがって、甲1発明において、技術2を適用し、相違点4aに係る本件特許発明4の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、本件特許発明4を全体としてみても、本件特許発明4により、甲1発明及び技術2からみて、格別顕著な効果が奏されるともいえない。
よって、本件特許発明4は、甲1発明及び技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

イ 甲第2ないし6号証の何れかを主引用文献とした場合
本件特許発明4と構成A発明を対比するに、両者は、相違点1に加え、次の点で相違する。

<相違点4b>
本件特許発明4においては、「前記複数のヒダが1つの箱ヒダと、その箱ヒダの下方に形成された車ヒダとの両方を含む」であるのに対し、構成A発明においては、そのようなものではない点(以下、「相違点4b」という。)。

そこで、相違点4bについて、以下に検討する。
上記第4 3(4)アと同様の理由で、構成A発明において、技術2を適用し、相違点4bに係る本件特許発明4の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、本件特許発明4を全体としてみても、本件特許発明4により、構成A発明、周知技術及び技術2からみて、格別顕著な効果が奏されるともいえない。
したがって、本件特許発明4は、構成A発明、周知技術及び技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(5)本件特許発明5について
以下、本件特許発明5のうち、本件特許の特許請求の範囲の請求項1のみを引用する請求項5に係る発明について判断する。
ア 甲第1号証を主引用文献とした場合
本件特許発明5と甲1発明を対比するに、両者は、次の点で相違する。

<相違点5a>
本件特許発明5においては、「前記複数のヒダが、その覆い部の上下方向の中間部に形成された1つの箱ヒダと、その箱ヒダの下方に形成された複数の車ヒダとを含み、前記箱ヒダの上方にはヒダが形成されていない」であるのに対し、甲1発明においては、そのようなものではない点(以下、「相違点5a」という。)。

そこで、相違点5aについて、以下に検討する。
複数のヒダが、その覆い部の上下方向の中間部に形成された1つの箱ヒダと、その箱ヒダの下方に形成された複数の車ヒダとを含み、箱ヒダの上方にはヒダが形成されていないようにすることは、甲第3号証(特に図2を参照。)に記載されている(以下、「技術3」という。)。
したがって、甲1発明において、技術3を適用し、相違点5aに係る本件特許発明5の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、本件特許発明5を全体としてみても、本件特許発明5により、甲1発明及び技術3からみて、格別顕著な効果が奏されるともいえない。
よって、本件特許発明5は、甲1発明及び技術3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

イ 甲第2ないし6号証の何れかを主引用文献とした場合
本件特許発明5と構成A発明を対比するに、両者は、相違点1に加え、次の点で相違する。

<相違点5b>
本件特許発明5においては、「前記複数のヒダが、その覆い部の上下方向の中間部に形成された1つの箱ヒダと、その箱ヒダの下方に形成された複数の車ヒダとを含み、前記箱ヒダの上方にはヒダが形成されていない」であるのに対し、構成A発明においては、そのようなものではない点(以下、「相違点5b」という。)。

そこで、相違点5bについて、以下に検討する。
上記第4 3(5)アと同様の理由で、構成A発明において、技術3を適用し、相違点5bに係る本件特許発明5の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、本件特許発明5を全体としてみても、本件特許発明5により、構成A発明、周知技術及び技術3からみて、格別顕著な効果が奏されるともいえない。
したがって、本件特許発明5は、構成A発明、周知技術及び技術3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(6)本件特許発明6について
以下、本件特許発明6のうち、本件特許の特許請求の範囲の請求項1のみを引用する請求項6に係る発明について判断する。
ア 甲第1号証を主引用文献とした場合
本件特許発明6と甲1発明を対比するに、両者は、次の点で相違する。

<相違点6a>
本件特許発明6においては、「前記上縁部に、塑性変形が可能な材料から成る長手形状の塑性変形部材が取り付けられ、前記下ずれ防止部とされた」であるのに対し、甲1発明においては、そのようなものではない点(以下、「相違点6a」という。)。

そこで、相違点6aについて、以下に検討する。
上縁部に、塑性変形が可能な材料から成る長手形状の塑性変形部材が取り付けられ、下ずれ防止部とすることは、甲第1ないし6号証に記載されている(以下、「技術4」という。)。
したがって、甲1発明において、技術4を適用し、相違点6aに係る本件特許発明6の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、本件特許発明6を全体としてみても、本件特許発明6により、甲1発明及び技術4からみて、格別顕著な効果が奏されるともいえない。
よって、本件特許発明6は、甲1発明及び技術4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

イ 甲第2ないし6号証の何れかを主引用文献とした場合
本件特許発明6と構成A発明を対比するに、両者は、相違点1に加え、次の点で相違する。

<相違点6b>
本件特許発明6においては、「前記上縁部に、塑性変形が可能な材料から成る長手形状の塑性変形部材が取り付けられ、前記下ずれ防止部とされた」であるのに対し、構成A発明においては、そのようなものではない点(以下、「相違点6b」という。)。

そこで、相違点6bについて、以下に検討する。
上記第4 3(6)アと同様の理由で、構成A発明において、技術4を適用し、相違点6bに係る本件特許発明6の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、本件特許発明6を全体としてみても、本件特許発明6により、構成A発明、周知技術及び技術4からみて、格別顕著な効果が奏されるともいえない。
したがって、本件特許発明6は、構成A発明、周知技術及び技術4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(7)本件特許発明7について
以下、本件特許発明7のうち、本件特許の特許請求の範囲の請求項1のみを引用する請求項7に係る発明について判断する。
ア 甲第1号証を主引用文献とした場合
本件特許発明7と甲1発明を対比するに、両者は、次の点で相違する。

<相違点7a>
本件特許発明7においては、「前記通気性を有する素材が、複数枚の通気性を有するシートが重ね合わされたものであり、前記覆い部の少なくとも上端縁と下端縁とにおいて、1枚のシートが他のシートの縁から外方に延び出させられ、他のシートの縁部の上に折り返されて接合された」であるのに対し、甲1発明においては、そのようなものではない点(以下、「相違点7a」という。)。

そこで、相違点7aについて、以下に検討する。
通気性を有する素材が、複数枚の通気性を有するシートが重ね合わされたものであり、覆い部の少なくとも上端縁と下端縁とにおいて、1枚のシートが他のシートの縁から外方に延び出させられ、他のシートの縁部の上に折り返されて接合されるようにすることは、甲第5及び6号証に記載されている(以下、「技術5」という。)。
したがって、甲1発明において、技術5を適用し、相違点7aに係る本件特許発明7の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、本件特許発明7を全体としてみても、本件特許発明7により、甲1発明及び技術5からみて、格別顕著な効果が奏されるともいえない。
よって、本件特許発明7は、甲1発明及び技術5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

イ 甲第2ないし6号証の何れかを主引用文献とした場合
本件特許発明7と構成A発明を対比するに、両者は、相違点1に加え、次の点で相違する。

<相違点7b>
本件特許発明7においては、「前記通気性を有する素材が、複数枚の通気性を有するシートが重ね合わされたものであり、前記覆い部の少なくとも上端縁と下端縁とにおいて、1枚のシートが他のシートの縁から外方に延び出させられ、他のシートの縁部の上に折り返されて接合された」であるのに対し、構成A発明においては、そのようなものではない点(以下、「相違点7b」という。)。

そこで、相違点7bについて、以下に検討する。
上記第4 3(7)アと同様の理由で、構成A発明において、技術5を適用し、相違点7bに係る本件特許発明7の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、本件特許発明7を全体としてみても、本件特許発明7により、構成A発明、周知技術及び技術5からみて、格別顕著な効果が奏されるともいえない。
したがって、本件特許発明7は、構成A発明、周知技術及び技術5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
したがって、本件特許の請求項1ないし7に係る発明についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-26 
結審通知日 2014-08-29 
審決日 2014-09-09 
出願番号 特願2008-217144(P2008-217144)
審決分類 P 1 113・ 113- Z (A62B)
P 1 113・ 121- Z (A62B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山村 秀政  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 加藤 友也
伊藤 元人
登録日 2013-02-15 
登録番号 特許第5197235号(P5197235)
発明の名称 マスク  
代理人 中嶋 俊夫  
代理人 高野 登志雄  
代理人 山本 博人  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
代理人 村田 正樹  
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