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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1293381
審判番号 不服2013-16562  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-27 
確定日 2014-10-30 
事件の表示 特願2010-251044「画像表示装置の光学フィルム用粘着シート、粘着型光学フィルムおよび画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 5月 6日出願公開、特開2011- 90312〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
(1)手続の経緯
本願は、平成19年6月7日に出願した特願2007-151611号の一部を平成22年11月9日に新たな特許出願としたものであって、平成25年2月20日に手続補正がなされ、同年5月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月27日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、当審において、平成26年5月28日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月28日に手続補正がなされたものである。
なお、請求人は、当審拒絶理由に対して平成26年7月28日に意見書を提出している。

(2)本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成26年7月28日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、平成26年7月28日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものであると認める。

「離型シート上に粘着剤層を有する画像表示装置の光学フィルム用粘着シートであって、
離型シート上の粘着剤層表面の表面粗さ(Ra)が、30?100nmであることを特徴とする画像表示装置の光学フィルム用粘着シート(但し、高分子材料からなるフィルムの片面に微細な凹凸を形成してなるレンズフィルムを構成材料とし、ディスプレイの表示画面前面に取付けて可視範囲をコントロールするための表示画面用光学フィルターにおいて、この表示画面用光学フィルターの厚さ方向の任意箇所に空気層を設けたことを特徴とする表示画面用光学フィルターを除く)。」(以下「本願発明」という。)

2 当審拒絶理由
当審拒絶理由は概ね次のとおりである。

「本件出願の請求項1?3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1.特開2005-179467号公報
引用文献2.特開2001-30427号公報
引用文献3.特開2001-219520号公報」


3 刊行物の記載事項
(1)当審拒絶理由で引用文献1として引用した「特許法第44条第2項の規定により本願がもとの特許出願の時にしたものとみなすとされた出願の出願(以下「本願の出願」という。)前に頒布された刊行物である特開2005-179467号公報(以下「引用例1」という。)」には、次の事項が記載されている(下線は審決で付した。)。

ア 「【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、120℃程度の高温条件下においても光漏れや窓枠状ムラを効果的に抑制することができる光学フィルム用粘着剤組成物を提供することを目的とする。また本発明は当該光学フィルム用粘着剤組成物により形成される光学フィルム用粘着剤層を提供することを目的とする。さらには本発明は、当該粘着剤層を有する粘着型光学フィルムや画像表示装置を提供することを目的とする。」

イ 「【0050】
本発明の粘着型光学フィルムは、光学フィルムの片面または両面に、前記光学フィルム用粘着剤組成物により粘着剤層を形成することにより得られる。
【0051】
光学フィルムへの粘着剤層の形成方法は特に制限されず、前記粘着剤組成物を剥離処理した支持体(剥離シート)に塗布、乾燥、架橋処理して粘着剤層を形成し、これを光学フィルムに転写する方法、光学フィルムに直接粘着剤組成物を塗布、乾燥、架橋処理して粘着剤層を形成する方法等があげられる。塗布の方法としては、リバースコーターやグラビアコーターなどのロールコーター、カーテンコーターやリップコーター、ダイコーターなど任意の塗布方法を採用できる。通常、乾燥後の粘着剤層の厚さは2?500μmであることが好ましく、さらに好ましくは5?100μmである。
【0052】
粘着剤層の表面は、実用に供されるまで保護シートで保護されていてもよい。なお、保護シートの構成材料としては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体等があげられる。保護シートの表面には、粘着剤層からの剥離性を高めるために必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、又はフッ素処理などの剥離処理が施されていても良い。
【0053】
光学フィルムとしては液晶表示装置等の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。たとえば、光学フィルムとしては偏光板があげられる。偏光板は偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。」

ウ 上記アないしイから、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。
「120℃程度の高温条件下においても光漏れや窓枠状ムラを効果的に抑制することができる光学フィルム用粘着剤組成物により形成される光学フィルム用粘着剤層を有する粘着型光学フィルムや画像表示装置を提供することを目的として、
光学フィルム用粘着剤組成物を剥離処理した支持体(剥離シート)に塗布、乾燥、架橋処理して粘着剤層を形成したシートであって、液晶表示装置等の形成に用いられる光学フィルムの片面または両面に該粘着剤層を転写して該光学フィルムに粘着剤層を形成するためのシート。」(以下「引用発明」という。)


(2)当審拒絶理由で引用文献2として引用した「本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-30427号公報(以下「引用例2」という。)」には、次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は表面保護用積層フィルムおよびそれからなる積層体に関し、詳しくは貼り合せた後の表面保護フィルムがずれることなく、またそれを剥がす時は軽く、しかも経時でも重くなることなく、かつ糊残りが生じない粘着剤層を有し、さらには平滑な粘着表面を有し、高透明で、貼り合せた相手基材の検査性を損なわない表面保護用積層フィルムおよびそれからなる積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】表面保護フィルムは、一般的にプラスチックフィルムを基材とし、そのフィルムの片面に粘着剤層を設けた構成である。表面保護フィルムは、例えばスチール板、銅板、アルミ板等の金属板や、ガラス板等の表面保護のために一時的に貼られたり、自動車等の屋根やボンネット等を輸送時や保管時に小石やゴミ等から守るため一時的に貼られる。また塗装などの際のマスキングとしても使用される。一方、表面保護フィルムは光学用途部品の製造でも使用されており、例えばテレビ、コンピュータ、ワードプロセッサやカーナビゲーション等の各種ディスプレイの表面保護、中でも液晶ディスプレイ表示板等の表面保護、詳しくはその製造工程中の偏光板、位相差板や視野角拡大フィルム等の光学部品や光学積層体の表面保護に使用されている。一般的には、表面保護フィルムの基材として、ポリエチレンやポリプロピレン等の透明なオレフィン系フィルムが使用されている。そして液晶ディスプレイ等の製造組み立てが完了した後や実際の使用に際して、これらの表面保護フィルムは剥離により除去される。
【0003】近年、TFT方式による液晶ディスプレイがその高精細さ等により特に注目されており、その製造工程中で用いられる表面保護フィルムの役割も重要になってきている。すなわち、液晶ディスプレイの製造工程において、その部品である偏光板、位相差板や視野角拡大フィルムに表面保護フィルムを貼り合せたまま、それらの欠陥検査を行う際、欠陥検査で問題を起こさないことが要求されるようになってきた。しかし、基材がオレフィン系フィルムの従来の表面保護フィルムでは透明性が劣ったり、またフィシュアイ等のゲル状異物による突起が多いため、欠陥検査を精度よく行うことが困難であった。
【0004】また、表面保護フィルムを製造する際粘着剤層を設ける主な方法として、基材フィルムに直接粘着剤を塗設し、必要に応じその面を一時的に保護するために剥離フィルムを貼り合せる方法と、剥離フィルム等に一度粘着剤を塗設し、その後その粘着剤を基材フィルムと貼り合せ、粘着剤を転写する方法がある。両方法において、基材にフィシュアイ等の突起があると粘着層を設ける際、その突起部分で粘着剤が均一に塗布されず欠陥検査性が不良となることがある。同様に、剥離フィルムに突起がある場合でも、その部分だけ粘着剤の凹凸が生じ、その凹凸が表面保護フィルムの粘着層に転写され、欠陥検査性が不良となる問題がある。
【0005】さらに、表面保護フィルムは、液晶ディスプレイの製造工程において、その部品である偏光板、位相差板や視野角拡大フィルムに長時間貼合されたままであることが多く、その間、保護フィルムが経時的にずれたり、さらに表面保護フィルムを剥がす際、剥離に力がかかったり、また剥離後に粘着剤の一部が部品に残り、液晶ディスプレイの表示検査等で異物やひずみ等の欠陥が生じたりする問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、かかる従来技術の問題を解消し、高透明で、貼り合せた後の表面保護フィルムがずれることなく、また適度の力で剥離ができ、しかもその剥離力が経時変化することなく、剥離の際粘着剤残りが生じず、平滑な表面の粘着剤層を有し、さらには貼り合せた状態においての欠陥検査性を損なわない表面保護用積層フィルムおよびそれからなる積層体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の特性を有する粘着剤を、特定の特性を有するプラスチックフィルムに積層させたフィルムとすることで、上記問題が解決された表面保護用積層フィルムおよびそれからなる積層体が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0008】すなわち、本発明は、プラスチックフィルム(A)の少なくとも片面に粘着剤層(B)を設けた積層フィルムであって、該積層フィルムの粘着剤層(B)の特性が下記(1)?(5)の条件を全て満足することを特徴とする表面保護用積層フィルム、および粘着剤層(B)の上に剥離フィルムを積層した積層体である。
(1)常態粘着力が1?50g/25mmであり、かつ常温1週間後の粘着力の変化率が0.5以上2.0以下。
(2)ボールタック測定でのボールのサイズが1/32?10/32インチ。
(3)荷重1kg、温度80℃の条件で保持力を測定したときのズレが1時間後で0?1mm。
(4)80℃×1週間ステンレス板に貼り合せた後のステンレス面において、付着する1mm角サイズ以上の粘着剤残留物が100cm^(2)当り0個。(5)粘着層の表面粗さ(Ra)が2?500nm。」

イ 「【0025】粘着剤の塗工方法としては、任意の公知の方法が使用でき、例えばダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、デップコート法等が好ましく挙げられ、単独または組合せて用いることができる。プラスチックフィルムへの粘着剤の塗布は、先の塗工方式にて、直接基材フィルム(A)に塗布しても良く、また、一度剥離フィルムに(D)塗工して乾燥させた後、基材フィルム(A)を貼り合せて粘着剤を転写させても良い。より平滑な粘着層面を有する表面保護フィルムを作成するためには、平滑な表面を有する剥離フィルム(D)に一度塗工し、これを基材フィルム(A)に転写させる方が好ましい。この時の乾燥温度は、残留溶剤ができるだけ少なくなることが好ましく、そのためには乾燥温度や時間は特定されないが、好ましくは50?150℃の温度で、10秒?5分の乾燥時間を設けることが良い。粘着剤は流動性があるため、また、イソシアネート系硬化剤等を使用する場合、加熱乾燥直後はまだ反応が完結しておらず、その反応を完了させ、安定した粘着力を得るためにも養生が必要である。一般的には、室温で約1週間以上、加熱した場合、例えば50℃位であると3日以上が好ましい。加熱の場合、温度を上げすぎるとプラスチックフィルムの平面性が悪化するおそれがあるため、あまり上げすぎない方が良い。」

ウ 「【0031】(5)粘着剤層の表面粗さ(Ra)が2?500nmであること。また、粘着層の表面粗さ(Ra)は2nm以上500nm以下が好ましい。表面粗さが小さいものにおいては特に大きな支障はないが、500nmより大きいと、偏光版等に貼り合せた際に、完全に密着せずに、歪みが生じたり、また凹みの部分で気泡等が生じたりする。なお、粘着剤層の表面粗さ(Ra)は、非接触式3次元表面粗さ計で測定した値である。粘着剤層の表面粗さをかかる範囲とするには、基材フィルム(A)および/または剥離フィルム(D)の表面粗さ(Ra)を特定範囲とすること、さらに最大径の大きい(25μm以上)異物が存在しないことにより達成でき、特に表面粗さ(Ra)を調整することで達成できる。」

エ 「【0037】[表面保護用積層フィルム]本発明の表面保護用積層フィルムは、容易な検査性のため高い透明性が要求される。具体的には、光線透過率が70%以上かつヘーズが10%以下であることが好ましい。光線透過率が70%未満、あるいはヘーズが10%より大きいと、透明性が悪いために、例えば表面保護フィルムを偏光版と貼り合せた時の異物等の欠点検査において、異物を検知できないことが懸念される。光線透過率およびヘーズを上記範囲とするには、粘着剤層(B)の粘着剤の種類、厚み、基材フィルム(A)の厚み、および含まれる添加剤、特に滑剤の種類、添加量を調整することが好ましい。
【0038】本発明の表面保護用積層フィルムは、そのままあるいは剥離フィルム(D)を積層した積層体の形態で提供され液晶ディスプレイなどの部品である偏光板、位相差板あるいは視野角拡大フィルムなどの表面保護の目的で貼合せられ、多くの場合、貼合せた状態のまま部品の欠陥検査が行われる。」

オ 上記アないしエから、引用例2には次の事項が記載されているものと認められる。
「従来、プラスチックフィルムを基材とし、そのフィルムの片面に粘着剤層を設けた表面保護フィルムは光学用途部品の製造でも使用され、液晶ディスプレイ表示板等の表面保護、詳しくはその製造工程中の偏光板、位相差板や視野角拡大フィルム等の光学部品や光学積層体の表面保護に使用され、液晶ディスプレイの製造工程において、その部品である偏光板、位相差板や視野角拡大フィルムに表面保護フィルムを貼り合せたまま、それらの欠陥検査を行う際、欠陥検査で問題を起こさないことが要求されるようになってきており、剥離フィルム等に一度粘着剤を塗設し、その後その粘着剤を基材フィルムと貼り合せ、粘着剤を転写する方法では、剥離フィルムに突起がある場合、その部分だけ粘着剤の凹凸が生じ、その凹凸が表面保護フィルムの粘着層に転写され、欠陥検査性が不良となる問題があったため、かかる従来技術の問題を解消し、高透明で、貼り合せた状態においての欠陥検査性を損なわない表面保護用積層フィルムを提供することを目的として、
プラスチックフィルム(A)の少なくとも片面に粘着剤層(B)を設けた表面保護用積層フィルムにおける該粘着剤層(B)の上に剥離フィルムを積層することにより、高透明で、貼り合せた状態においての欠陥検査性を損なわないようにした積層体であって、
該粘着剤層(B)の特性が、以下(1)?(5)の条件を全て満足し、
(1)常態粘着力が1?50g/25mmであり、かつ常温1週間後の粘着力の変化率が0.5以上2.0以下。
(2)ボールタック測定でのボールのサイズが1/32?10/32インチ。
(3)荷重1kg、温度80℃の条件で保持力を測定したときのズレが1時間後で0?1mm。
(4)80℃×1週間ステンレス板に貼り合せた後のステンレス面において、付着する1mm角サイズ以上の粘着剤残留物が100cm^(2)当り0個。
(5)粘着層の表面粗さ(Ra)が2?500nm。
プラスチックフィルムへの粘着剤の塗布は、一度剥離フィルムに(D)塗工して乾燥させた後、基材フィルム(A)を貼り合せて粘着剤を転写させても良く、
粘着層の表面粗さが小さいものにおいては特に大きな支障はないが、500nmより大きいと、偏光板等に貼り合せた際に、完全に密着せずに、歪みが生じたり、また凹みの部分で気泡等が生じたりする、積層体。」(以下「引用例2の記載事項」という。)

(3)当審拒絶理由で引用文献3として引用した「本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-219520号公報(以下「引用例3」という。)」には、次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表面保護フィルムを巻き取ったフィルムロールに関し、詳しくは表面保護フィルムの粘着剤層に剥離紙を貼合せることなくロール状に巻くことができ、また、ロールから巻き出した表面保護フィルムの粘着剤層面を相手基材に貼り合せても必要に応じて軽く剥がすことができ、しかも経時させた後でも剥離力が重くなることなく、さらには、高透明で、貼り合せた相手基材の検査性を損なわない表面保護フィルムを巻き取ったフィルムロールに関する。
【0002】
【従来の技術】表面保護フィルムは、一般的にプラスチックフィルムを基材とし、そのフィルムの片面に粘着剤層を設けた構成である。近年、光学用部品の表面保護用として、その用途はますます伸びている。例えば、テレビ、コンピュータ、ワードプロセッサやカーナビゲーション等の各種ディスプレイの製造時の表面保護に使用されており、中でも現在急激に伸びている液晶ディスプレイ表示板等の表面保護、さらにその製造工程中の偏光板、位相差板や視野角拡大フィルム等の光学部品や光学積層体の表面保護に使用されている。一般的に、その表面保護フィルムの基材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等の透明なオレフィン系フィルムが使用されており、液晶ディスプレイ等の製造組み立てが完了した後や実際の使用に際して、これらの表面保護フィルムは剥離により除去される。
【0003】近年、TFT方式(薄膜トランジスター方式)による液晶ディスプレイがその高精細さ、高応答性等の点により特に注目されており、その製造中における表面保護フィルムへの要求も厳しくなっている。例えば、偏光板や液晶ディスプレイ等の製造時、表面保護フィルムを貼り合せたまま製品の欠陥検査を行うことが多く、従来の様に、その基材がポリエチレンフィルム等のようなオレフィン系フィルムでは透明性が劣ったり、またフィシュアイ等のゲル物が多いため、その欠陥検査において異物欠点となり、製品自体の検査を高精度に行うことが困難となってきた。また、表面保護フィルムは、偏光板や液晶ディスプレイ等に一度貼られると次の製造工程まで長時間貼られたままであることが多い。そして検査等の終了後、剥がした時に剥離が重くなると作業性が悪くなったり、また、そのフィルムの粘着剤の一部が残り、ディスプレイの表示検査等で異物やひずみ等の欠陥が生じたりする問題があった。
【0004】一方、使用前の表面保護フィルムの粘着剤層面には、一般的に粘着剤層を形成するための製造工程に剥離紙が使用されており、そのまま巻き取られ、製品となる。しかし、表面保護フィルムの使用時は、この剥離紙は剥がされ捨てられるだけであり、廃棄物の発生やコストの面で問題となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、かかる従来技術の問題を解消し、表面保護フィルムの粘着剤層に剥離紙を貼合せることなくロール状に巻くことができ、また、ロールから巻き出した表面保護フィルムの粘着剤層面を相手基材に貼り合せても必要に応じて軽く剥がすことができ、しかも経時させた後でも剥離力が重くなることなく、さらには、高透明で、貼り合せた相手基材の検査性を損なわない表面保護フィルムを巻き取ったフィルムロールを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、粘着剤層として特定の物性を有する粘着剤を用い、またその反対面に形成される表面保護層面にこの粘着剤層に適した離形層を設け、さらに付加性能を持たせた二軸配向ポリエステルフィルムと組合せることで、改善された表面保護フィルムのフィルムロールが得られることを見出し、本発明に到達した。
【0007】すなわち、本発明は、二軸配向ポリエステルフィルム(A)の片面に粘着剤層(B)を設け、その反対面に保護層(C)を設けた表面保護フィルムを、粘着剤層(B)と保護層(C)とを接触させて巻き取って得られるフィルムロールであって、下記(1)?(6)の条件を全て満足することを特徴とするフィルムロールである。
(1)二軸配向ポリエステルフィルム(A)に、一辺の長さ210mmとそれに直行する辺の長さ148mmの広さ(面積310.8cm^(2))当り大きさ25μm以上の異物が存在しない。
(2)二軸配向ポリエステルフィルム(A)に、一辺の長さ210mmとそれに直行する辺の長さ148mmの広さ(面積310.8cm^(2))当り大きさ5μm以上25μm未満の異物が高々10個しか存在しない。
(3)保護層(C)が離形剤および帯電防止剤を含む。
(4)保護層(C)を粘着剤層(B)から剥がした時の剥離力が10mN/25mm以上1000mN/25mm以下。
(5)粘着剤層(B)のステンレス板に対する常態粘着力が30mN/25mm以上500mN/25mm以下であり、また60℃、1週間後の粘着力の変化率が0.5倍以上2倍以下。
(6)粘着剤層(B)の厚みが3μm以上50μm以下。
【0008】さらに、上記フィルムロールを構成する表面保護フィルムの可視光線透過率は70%以上であり、かつヘーズが10%以下であることが好ましい。」

イ 「【0018】[粘着剤層]二軸配向ポリエステルフィルムの片面に積層する粘着剤層は、屋内だけでなく屋外での放置を考慮し、また検査時の様々な光線に耐えるため、特に紫外線に耐えることが必要なため、さらには、粘着剤層から貼り合せた相手基材への成分移行を防ぐため、アクリル系粘着剤からなる層が特に好ましい。
・・・略・・・
【0024】また、粘着剤層の中心線平均粗さ(Ra)は2nm以上500nm以下が好ましい。中心線平均粗さが小さいものにおいては特に大きな支障はないが、500nmより大きいと、偏光板等に貼り合せた際に、粘着剤層の厚みや粘着力、剥離力が上記の範囲を満足していても完全に密着せず、歪みが生じたり、また凹みの部分で気泡等が生じたりすることがある。」

ウ 「【0054】【発明の効果】本発明における表面保護フィルムは、剥離紙を使用せずに、粘着剤を形成でき、使用時にロールから容易に剥がせ、偏光板等の液晶ディスプレイ関連部品製造時に使用することで、その粘着力の低さおよび経時変化の小さいことから生産性、歩留り向上等となり、また、異物の少ないポリエステルフィルムを基材とすることで透明性が良く検査性も向上できる。さらには、粘着剤層の反対面に帯電防止処理や離形処理を持たせることで、剥離時の帯電の抑制や表面のゴミ等の除去も容易になる。」

エ 上記アないしウから、引用例3には次の事項が記載されているものと認められる。
「高透明で、貼り合せた相手基材の検査性を損なわない表面保護フィルムを巻き取ったフィルムロールを提供するために、
二軸配向ポリエステルフィルム(A)の片面に粘着剤層(B)を設け、その反対面に保護層(C)を設けた表面保護フィルムを、粘着剤層(B)と保護層(C)とを接触させて巻き取って得られるフィルムロールであって、
粘着剤層の中心線平均粗さ(Ra)は2nm以上500nm以下が好ましく、中心線平均粗さが小さいものにおいては特に大きな支障はないが、500nmより大きいと、偏光板等に貼り合せた際に、粘着剤層の厚みや粘着力、剥離力が上記の範囲を満足していても完全に密着せず、歪みが生じたり、また凹みの部分で気泡等が生じたりすることがある、フィルムロール。」(以下「引用例3の記載事項」という。)


3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「『剥離処理した支持体』又は『剥離シート』」、「粘着剤層」、「液晶表示装置」及び「シート」は、それぞれ、本願発明の「離型シート」、「粘着剤層」、「画像表示装置」及び「光学フィルム用粘着シート」に相当する。

(2)引用発明は、光学フィルム用粘着剤組成物を「離型シート(『剥離処理した支持体』又は『剥離シート』)」に塗布、乾燥、架橋処理して「粘着剤層(粘着剤層)」を形成した「光学フィルム用粘着シート(シート)」であって、「画像表示装置(液晶表示装置)」の形成に用いられる光学フィルムの片面または両面に該「粘着剤層」を転写して該光学フィルムに「粘着剤層」を形成するための「光学フィルム用粘着シート」であるから、引用発明と本願発明とは「離型シート上に粘着剤層を有する画像表示装置の光学フィルム用粘着シート」である点で一致する。

(3)引用発明を認定した引用例1には、「光学フィルム用粘着シート(シート)」が、高分子材料からなるフィルムの片面に微細な凹凸を形成してなるレンズフィルムを構成材料とし、ディスプレイの表示画面前面に取付けて可視範囲をコントロールするための表示画面用光学フィルターにおいて、この表示画面用光学フィルターの厚さ方向の任意箇所に空気層を設けたことを特徴とする表示画面用光学フィルターに用いられることが記載されていないから、引用発明と本願発明とは、「高分子材料からなるフィルムの片面に微細な凹凸を形成してなるレンズフィルムを構成材料とし、ディスプレイの表示画面前面に取付けて可視範囲をコントロールするための表示画面用光学フィルターにおいて、この表示画面用光学フィルターの厚さ方向の任意箇所に空気層を設けたことを特徴とする表示画面用光学フィルター」に「光学フィルム用粘着シート」を用いるものでない点で一致する。

(4)上記(1)ないし(3)からみて、本願発明と引用発明とは、
「離型シート上に粘着剤層を有する画像表示装置の光学フィルム用粘着シート(但し、高分子材料からなるフィルムの片面に微細な凹凸を形成してなるレンズフィルムを構成材料とし、ディスプレイの表示画面前面に取付けて可視範囲をコントロールするための表示画面用光学フィルターにおいて、この表示画面用光学フィルターの厚さ方向の任意箇所に空気層を設けたことを特徴とする表示画面用光学フィルターを除く)。」の点で一致し、次の点で相違する。

・相違点
前記離型シート上の粘着剤層表面の表面粗さ(Ra)が、
本願発明では、30?100nmであるのに対し、
引用発明では、明らかでない点。

4 判断
上記相違点について検討する。
(1)引用例2の記載事項(上記3(2)オ)及び引用例3の記載事項(上記3(3)エ)は、要するに、高透明で、偏光板、位相差板や視野角拡大フィルムに貼り合せた状態においての欠陥検査性を損なわない表面保護用積層フィルムを提供するために、粘着層の表面粗さ(Ra)を2?500nmとしたものであって、粘着層の表面粗さが小さいものにおいては特に大きな支障はないが、500nmより大きいと、偏光板等に貼り合せた際に、完全に密着せずに、歪みが生じたり、また凹みの部分で気泡等が生じたりするものである。

(2)引用発明は、離型シート上に粘着剤層を有する画像表示装置の光学フィルム用粘着シートであり、粘着対象である光学シートの光学性能を妨げないように、透明性や視認性に優れたものとすることは、その明示がなくても当業者にとって自明な課題であり、引用例2の記載事項及び引用例3の記載事項における表面保護フィルムも欠陥検査の際には光学フィルムとしての役割を果たすことを踏まえれば、上記(1)からみて、引用発明において、粘着剤層の離型シートの表面粗さの影響を受けない側の表面であって、該離型シートに接する表面とは反対側の表面である、離型シート上の粘着剤層表面の表面粗さ(Ra)を2?500nmとなすことは当業者が引用例2の記載事項及び引用例3の記載事項に基づいて適宜なし得たことである。
なお、引用発明の粘着剤層が光学フィルムとともに画像表示装置に組み込まれるために高い粘着力を必要とされ、引用例2の記載事項及び引用例3の記載事項における表面保護フィルム用の粘着剤層が最終的に剥がされるため求められる粘着力が小さい、すなわち、引用発明の粘着剤層と引用例2の記載事項及び引用例3の記載事項の粘着剤層とで、それぞれ求められる粘着力等の特性が異なるといえる。
しかしながら、粘着力については、特に定義しない限り、粘着対象の表面粗さ等により剥がれやすいか否かにも依る相対的なものであり、例えば、引用発明の粘着剤層と光学フィルムとの間の粘着力は、粘着剤層と剥離シートとの間の粘着力よりも強く、引用例2の記載事項及び引用例3の記載事項の粘着剤層と表面保護用積層フィルムとの間の粘着力は、粘着剤層と画像表示装置側との粘着力よりも強いものであるとともに、そもそも粘着剤層の粘着力は、用途によって粘着剤の材料を選択したり粘着剤層の表面粗さを調整する等して適宜設計し得るものであるから、粘着剤層の求められる粘着力等の特性の相違が引用例2の記載事項及び引用例3の記載事項を引用発明に適用することの阻害要因とはならない。

(3)フィルムに積層される粘着層であって、その表面粗さ(Ra)を80nm以下となした粘着層は本願の出願前に周知である(以下「周知技術」という。例.特開2005-306996号公報(以下「周知例1」という。【0070】【表2】の実施例1の粘着剤表面のRa(μm)が「0.05」、実施例2の粘着剤表面のRa(μm)が「0.06」の記載。)、特開2002-328206号公報(以下「周知例2」という。「【0030】・・・自己粘着層側のカバーフィルムBを剥離し、自己粘着層の特性を評価したところ、平均表面粗度(Ra )は0.04μm、・・・」の記載、【0041】【表1】の実施例4の自己粘着層の平均表面粗度(μm)が「0.05」、実施例5の自己粘着層の平均表面粗度(μm)が「0.04」、実施例6の自己粘着層の平均表面粗度(μm)が「0.05」の記載。)、特開2003-287607号公報(以下「周知例3」という。「【0023】上記の自己粘着力は、柔軟性ポリマーからなる粘着層表面を平滑に形成することによって発生する。この場合の好ましい平均表面粗度(Ra )は0.12μm以下である。特に好ましいのは0.08μm以下であり、0.05μm以下が最も好ましい。」の記載。))。

(4)上記(2)で、離型シート上の粘着剤層表面の表面粗さ(Ra)を2?500nmとなした際に、粘着剤層が転写された光学フィルムの透明性や粘着剤層との密着性等を考慮すれば、上記(3)の周知例1,2や周知例3で示された実際に採り得る表面粗さとなるように、製造が可能であるか、あるいは、製造が容易であるか否か等の観点を考慮して、粘着剤層の表面粗さの範囲として0.04μm?0.05μm、0.04μm?0.08μmあるいは0.04μm?0.12μm程度、言い換えれば40nm?50nm、40nm?80nmあるいは40nm?120nm程度のいずれかとなすことは当業者が適宜なし得た設計的事項である。

(5)よって、引用発明において、離型シート上の粘着剤層表面の表面粗さ(Ra)を30?100nmとなすこと、すなわち、相違点に係る本願発明の構成となすことは当業者が引用例2の記載事項、引用例3の記載事項及び周知技術に基づいて容易になし得たものである。

(6)本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、引用例2の記載事項の奏する効果、引用例3の記載事項の奏する効果及び周知技術の奏する効果から当業者が予測することができた程度のことである。

(7)したがって、本願発明は、当業者が引用例1ないし3に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
本願発明は、当業者が引用例1ないし3に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-29 
結審通知日 2014-09-02 
審決日 2014-09-16 
出願番号 特願2010-251044(P2010-251044)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井海田 隆  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 清水 康司
鉄 豊郎
発明の名称 画像表示装置の光学フィルム用粘着シート、粘着型光学フィルムおよび画像表示装置  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  
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