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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02F
管理番号 1293519
審判番号 不服2013-24188  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-09 
確定日 2014-10-29 
事件の表示 特願2009-75849「内燃機関用ピストン」拒絶査定不服審判事件〔平成22年2月12日出願公開、特開2010-31835〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成21年3月26日(優先権主張 平成20年6月23日)の出願であって、平成25年3月8日付けで拒絶理由が通知され、平成25年4月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年9月6日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年12月9日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

2 本件補正、本願発明
(1)本件補正の内容
平成25年12月9日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、下記Aに示す本件補正前の(すなわち、平成25年4月24日に提出された手続補正書により補正された)請求項1ないし9を、下記Bに示す請求項1ないし8へと補正するものである。

A 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし9
「【請求項1】
コンプレッションリングとオイルリングをそれぞれ少なくとも1本備えた内燃機関用ピストンに用いられる上記オイルリングであって、外周面に硬質炭素、CrN及びTiNから成る群より選ばれた少なくとも1種を被覆して成り、外周先端における摺動方向の曲率半径rが0.3mm以上であることを特徴とする内燃機関用オイルリング。
【請求項2】
上記曲率半径rが6mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用オイルリング。
【請求項3】
上記曲率半径rが3mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用オイルリング。
【請求項4】
外周面の硬さが2000Hv以上であることを特徴とする請求項1?3のいずれか1つの項に記載の内燃機関用オイルリング。
【請求項5】
外周面の粗さがRa0.1μm以下であることを特徴とする請求項1?4のいずれか1つの項に記載の内燃機関用オイルリング。
【請求項6】
外周面にダイヤモンドライクカーボンを被覆して成り、当該ダイヤモンドライクカーボン膜に含まれる水素量が10at%以下であることを特徴とする請求項1?5のいずれか1つの項に記載の内燃機関用オイルリング。
【請求項7】
請求項1?6のいずれか1つの項に記載のオイルリングと、コンプレッションリングの少なくとも2本のピストンリングを備えたことを特徴とする内燃機関用ピストン。
【請求項8】
上記コンプレッションリングの外周面にダイヤモンドライクカーボン膜を備えていることを特徴とする請求項7に記載の内燃機関用ピストン。
【請求項9】
上記ダイヤモンドライクカーボン膜に含まれる水素量が10at%以下であることを特徴とする請求項8に記載の内燃機関用ピストン。」

B 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし8
「【請求項1】
外周面に硬質炭素、CrN及びTiNから成る群より選ばれた少なくとも1種を被覆して成り、外周先端における摺動方向の曲率半径rが0.3mm以上であるオイルリングと、コンプレッションリングの少なくとも2本のピストンリングを備えたことを特徴とする内燃機関用ピストン。
【請求項2】
オイルリングの上記曲率半径rが6mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用ピストン。
【請求項3】
オイルリングの上記曲率半径rが3mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用ピストン。
【請求項4】
オイルリングの外周面の硬さが2000Hv以上であることを特徴とする請求項1?3のいずれか1つの項に記載の内燃機関用ピストン。
【請求項5】
オイルリングの外周面の粗さがRa0.1μm以下であることを特徴とする請求項1?4のいずれか1つの項に記載の内燃機関用ピストン。
【請求項6】
オイルリングの外周面にダイヤモンドライクカーボンを被覆して成り、当該ダイヤモンドライクカーボン膜に含まれる水素量が10at%以下であることを特徴とする請求項1?5のいずれか1つの項に記載の内燃機関用ピストン。
【請求項7】
上記コンプレッションリングの外周面にダイヤモンドライクカーボン膜を備えていることを特徴とする請求項1?6のいずれか1つの項に記載の内燃機関用ピストン。
【請求項8】
上記ダイヤモンドライクカーボン膜に含まれる水素量が10at%以下であることを特徴とする請求項7に記載の内燃機関用ピストン。」

(2)本件補正の適否について
本件補正の請求項1に関しては、本件補正前の請求項1を削除するとともに、本件補正前の請求項1を引用して記載する請求項7を本件補正後の請求項1にするものである。
したがって、本件補正は、請求項の削除を目的とするものに該当する。

(3)本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記B【請求項1】のとおりのものである。

3 引用文献
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2007-232026号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動面に非晶質硬質炭素皮膜を被覆した摺動部材であって、前記非晶質硬質炭素皮膜表面の十点平均粗さ(Rz)が0.7μm以下であり、且つ初期摩耗粗さ(Rpk)が0.07?0.14μmであることを特徴とする摺動部材。
・・・
【請求項6】
前記摺動部材がピストンリングであり、前記摺動面が少なくともピストンリング外周面であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の摺動部材。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項6】)

イ 「【0001】
本発明は、自動車用エンジンなど往復動内燃機関に使用される摺動部材、特に鋳鉄シリンダライナのボアと摺動するピストンリングに関する。」(段落【0001】)

ウ 「【0015】
本発明による摺動部材は、非晶質硬質炭素皮膜が硬質クロムめっき層、窒化層又は窒化クロム層の上に形成されるか、基材表面の上に直接形成しても良い。窒化クロム層はイオンプレーティング法などの方法で形成され、柱状組成やポーラスを含むものを用いることもできる。非晶質硬質炭素皮膜には、水素を含まない実質的に炭素のみからなる非晶質硬質炭素皮膜を適用することが好ましい。ここで、水素を含まない実質的に炭素のみからなるとは、HFS(Hydrogen Forward Scattering)分析による皮膜の水素含有率が5atm%以下であり、残部が実質的に炭素のみからなるものである。この非晶質硬質炭素皮膜の膜厚は0.01?2.0μmが好適である。更に、非晶質硬質炭素皮膜のビッカース硬度がHv2000以上であることが好適である。」(段落【0015】)

エ 「【0024】
ピストンリングの基材としてSUS440相当材を用い、ガス窒化処理により基材表面に窒化層を形成した呼び径86.0mmのTOPリング、2NDリング、OILリングの外周摺動面に、水素を含まない実質的に炭素のみからなる非晶質硬質炭素皮膜を膜厚1μm形成した後、ダイヤモンド粒子を用いた後処理(ラップ、微粉ブラストなど)を行ない表面粗さRzが0.7μm以下であり且つRpkが0.07?0.14μmである実施例1を作製した。」(段落【0024】)

オ 「【0027】
このように製作した実施例及び比較例のピストンリングセット(TOPリング、2NDリング、OILリング)をピストン6に組み付けた後、浮動ライナー式フリクション測定用エンジンに組み込み、摩擦損失を摩擦平均有効圧力(FMEP)により評価した。ピストンリングと摺動する相手材には鋳鉄シリンダライナを用い、面粗度は十点平均粗さ(Rz)で2?4μmのものを使用した。図4は浮動ライナー式フリクション測定用エンジンの構造について示したものである。」(段落【0027】)

(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)アないしオの記載、並びに図1、2及び4の記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「外周面に非晶質硬質炭素皮膜を被覆して成るOILリングと、TOPリング及び2NDリングを備えた往復動内燃機関用ピストン。」

4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「外周面に非晶質硬質炭素皮膜を被覆して」、「OILリング」、「TOPリング及び2NDリング」及び「往復動内燃機関用ピストン」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本願発明における「外周面に硬質炭素、CrN及びTiNから成る群より選ばれた少なくとも1種を被覆して」、「オイルリング」、「コンプレッションリング」及び「内燃機関用ピストン」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明の「OILリングと、TOPリング及び2NDリングを備え」ることは、少なくとも2本のピストンリングを備えるものであることが明らかであるから、本願発明と引用発明とは、
「外周面に硬質炭素、CrN及びTiNから成る群より選ばれた少なくとも1種を被覆して成り、オイルリングと、コンプレッションリングの少なくとも2本のピストンリングを備えた内燃機関用ピストン。」の点で一致し、次の点で相違する。
(相違点)
オイルリングについて、本願発明においては、「外周先端における摺動方向の曲率半径rが0.3mm以上である」のに対し、引用発明においては、その構成が不明である点(以下、「相違点」という。)。

5 判断
本願発明の「オイルリング」の「曲率半径」について、本願の明細書を参照すると、「〔オイルリングの作製〕JIS G 3506(硬鋼線材)に規定される炭素鋼材料SWRH72を冷間で線引きした後、焼入れ焼戻し処理を施し、0.4×2.0mmの矩形断面のうち、0.4mm幅の1面を図1(b)に示す外周面の曲率半径r(0.2?2mm)とする線材を得た。次いで、この線材を外形(呼び径)93mmのリング状に成形し、合口となる部分を切削した。次に、歪取り熱処理を実施し、外周研磨を行った後、イオンプレーティング法によって、それぞれの外周面にCrN膜又はDLC膜による被膜処理を施し、さらに仕上げ研磨によってそれぞれの表面粗さを得た。なお、DLC膜の水素含有量については、原料中の水素濃度を変更することによって調整した。上記の要領で作製した2枚のサイドレールaの間に、図1(b)に示すように、SUS304からなるスペーサーbを組合せることで、組み込み時20Nの張力を持つオイルリングとした。」(段落【0029】)と記載されており、本願発明の「オイルリング」の「曲率半径」とは、2枚のサイドレール間にスペーサを組み合わされる、すなわち3ピースからなる「オイルリング」の各サイドレールにおける外周面の「曲率半径」であることが理解できる。これに対し、同様の3ピースからなるオイルリングは、日本工業規格として、「内燃機関-小径ピストンリング-第13部:スチール組合せオイルコントロールリング」(JIS B 8032-13、平成10年12月20日制定、p.1-14。以下、「JIS規格」という。)の「4.」ないし「6.」に各部の形状が記載されており、特に「6.3 サイドレール幅」における「サイドレール」は、クロムめっきが施される摺動箇所において半円形状であることが記載されている。また、特開2005-113684号公報(以下、「参考文献1」という。)には、JIS規格の説明とともに、「サイドレール摺動面」の形状として、一般的に「バレル状又は略半円形状のもの」が使用されることについて記載されている(特に、段落【0005】及び【0006】参照。)。
さらに、本願発明の「外周先端における摺動方向の曲率半径r」とは、本願の明細書において、「なお、本発明において「曲率半径r」とは、図1(a)に示すようなリング外周部の縦断面において、外周径の最大部tを中心とする摺動方向(板厚方向)の幅200μmの範囲で、径方向の高低差Zを測定し、次式(1)を用いて求められる平均の曲率半径を意味するものとする。
r=Z/2+(2×104)/8Z (単位:μm) ・・・ (1)」(段落【0019】。なお、平成25年4月24日付け補正により、上記式(1)の「8Z」は、「4Z」に補正された。)と記載されているとおり、摺動方向(板厚方向)の幅200μmの範囲で求められる平均の曲率半径であることが理解できる。これに対し、例えば、特開2001-82605号公報(以下、「参考文献2」という。)には、最外周面より内方の評価位置を弦長さで0.20mm位置としたときのバレル高さを用いた、サイドレールの外周面形状の設定が記載されており(段落【0020】及び【0021】並びに図1及び2参照。)、実願平2-402079号(実開平4-95169号)のマイクロフィルム(以下、「参考文献3」という。)には、コイルエキスパンダを用いたオイルリングの上下レール部においても、同様の評価幅を用いて半径方向高さにより曲率半径を設定することが記載されている(段落【0006】ないし【0008】並びに図1及び2参照。)。したがって、JIS規格並びに参考文献1ないし3の記載によれば、オイルリングの技術分野において、「外周先端における摺動方向の曲率半径」とは、当業者において通常採用し得る技術的事項、すなわち技術常識であったといえる(以下、「技術常識」という。)。
一方、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平3-144170号公報には、ピストンリングの曲率半径を5?25mmとすることで、摩擦力を低減する技術が記載されている(特に、4ページ左下欄7行ないし右下欄3行参照。以下、「参考技術」という。)。そして、摩擦力低減は、トップリング、セカンドリング及びオイルリング等の全てのピストンリングにおいて採用すべき普遍的な技術課題であるから、上記技術常識をふまえ、引用発明のピストンリングの特にOILリングにおいて、参考技術の曲率半径の数値を採用することは、当業者が適宜なし得る設計事項である。特に、オイルリングはJIS規格においてオイルコントロールリングと記載されるとおり、摺動面におけるオイル量を適正量とすることで、トップリングやセカンドリングを含めピストンリングの摩擦力の低減を図るものであるから、摩擦力低減に係るオイルリングについての数値範囲を実験的に最適化又は好適化することは当業者の通常の創作能力の発揮であって、そこに進歩性はない。
そして、本願発明の「曲率半径rが0.3mm以上」に関する試験結果である表1の平均摩擦力の記載(段落【0034】)及び図4の記載を参照しても、その数値範囲の全てにおいて効果の顕著性が満たされているとはいえないし、数値限定の臨界的意義も認められない。したがって、本願発明を全体として検討しても、その作用効果は格別顕著なものではない。
よって、本願発明は、引用発明及び参考技術並びに技術常識に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び参考技術並びに技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-29 
結審通知日 2014-09-01 
審決日 2014-09-17 
出願番号 特願2009-75849(P2009-75849)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F02F)
P 1 8・ 121- Z (F02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩▲崎▼ 則昌稲村 正義  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 藤原 直欣
金澤 俊郎
発明の名称 内燃機関用ピストン  
代理人 的場 基憲  
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