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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01W
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01W
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G01W
管理番号 1293616
審判番号 不服2013-9921  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-29 
確定日 2014-11-05 
事件の表示 特願2008-558619「環境モニタリング方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月20日国際公開、WO2007/104240、平成21年 8月20日国内公表、特表2009-529684〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年3月7日(優先権主張2006年3月10日、中国)を国際出願日とする出願であって、平成23年10月25日及び平成24年8月10日に手続補正がなされたが、平成25年1月24日付けで、上記平成24年8月10日付けの手続補正についての補正の却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、平成25年5月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされた。

第2 平成25年5月29日付けの手続補正の補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成25年5月29日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の発明
平成25年5月29日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、以下のとおりのものに補正された。

「異なる環境パラメータの値を取得する異なる種類の複数のセンサと、
前記環境パラメータの前記取得値を受け取り、前記取得値を、前記異なる環境パラメータのパラメータ範囲を定める所定の規格及び基準と比較する制御ユニットと、
実時間空気質レポートを表示する表示ユニットであって、
該実時間空気質レポートは、
前記パラメータ範囲に基づいた前記取得値のユーザに分かり易い解釈と、
前記複数のセンサによって取得されない或る環境パラメータの即時のレベル評価を提供する、前記取得された環境パラメータに基づく同時予測であって、前記或る環境パラメータは、温度、相対湿度、揮発性有機化合物、一酸化炭素、二酸化炭素、ダスト、オゾン、二酸化炭素、空気流量、ラドン及びホルムアルデヒドから成る群のうちの何れか1つである、同時予測と、
非技術者のユーザが容易に理解できる、前記パラメータ範囲に基づいた前記取得値に応じた推奨事項と、
を含む、表示ユニットと、
を備え、
前記取得値を解釈し、前記取得値に基づいて推奨事項を作成するために、前記異なる環境パラメータの前記取得値の実時間分析が、前記異なる環境パラメータの前記取得値の相互関係を考慮することにより行われる、環境モニタリング装置。」(以下「補正発明」という。)

2.特定事項
補正発明は、「前記或る環境パラメータは、温度、相対湿度、揮発性有機化合物、一酸化炭素、二酸化炭素、ダスト、オゾン、二酸化炭素、空気流量、ラドン及びホルムアルデヒドから成る群のうちの何れか1つである」(以下「特定事項」という。)という事項を有する。
請求人は、上記特定事項に関して、「補正前の請求項1及び9に補正前の請求項6及び11に規定された限定事項を加え、・・・これらの補正事項は、規定済みの「或る環境パラメータ」をより具体的に限定するものですので、特許請求の範囲の減縮に該当します。よって、この補正は、特許法第17条の2第4項補正要件を満たしています。」(審判請求書参照)と主張している。

3.本願明細書等の記載
本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。(当審注:下線は当審で付与。)

(1)「【請求項1】
異なる環境パラメータの値を取得する異なる種類の複数のセンサと、
前記環境パラメータの前記取得値を受け取り、前記取得値を、前記異なる環境パラメータのパラメータ範囲を定める所定の規格及び基準と比較する制御ユニットと、
前記パラメータ範囲に基づいた前記取得値のユーザに分かり易い解釈と、前記パラメータ範囲に基づいた前記取得値に応じた推奨事項とを含む、非技術者のユーザが容易に理解できる実時間空気質レポートを表示する表示ユニットと、
を備え、
前記取得値を解釈し、前記取得値に基づいて推奨事項を作成するために、前記異なる環境パラメータの前記取得値の実時間分析が、前記異なる環境パラメータの前記取得値の相互関係を考慮することにより行われる、環境モニタリング装置。」
(2)「【請求項6】
前記環境パラメータが、温度、相対湿度、揮発性有機化合物、一酸化炭素、二酸化炭素、ダスト、オゾン、二酸化炭素、空気流量、ラドン及びホルムアルデヒドから成る群のうちの何れか1つである、請求項1に記載の装置。」
(3)「【請求項9】
環境パラメータの値を取得するステップと、
前記環境パラメータの前記取得値を、前記異なる環境パラメータのパラメータ範囲を定める所定の規格及び基準と比較するステップと、
前記パラメータ範囲に基づいた前記取得値のユーザに分かり易い解釈と、前記パラメータ範囲に基づいた前記取得値に応じた推奨事項とを含む、非技術者のユーザが容易に理解できる実時間空気質レポートを表示するステップと、
を含み、
前記取得値を解釈し、前記取得値に基づいて推奨事項を作成するために、前記異なる環境パラメータの前記取得値の実時間分析が、前記異なる環境パラメータの前記取得値の相互関係を考慮することにより行われる、環境モニタリング方法。
【請求項10】
前記所定の規格及び基準が、第1の判定原則、第2の判定原則及び第3の判定原則を含み、
前記第1の判定原則が、前記環境パラメータに対してパラメータ範囲を定め、
前記第2の判定原則が、条件配列を定め、各条件配列を定めるパラメータ範囲として、前記第1の判定原則によって定められた少なくとも2つのパラメータ範囲が用いられ、
前記第3の判定原則が、各環境パラメータに対して少なくとも2つのカテゴリを定め、
前記取得値の様々なカテゴリの組み合わせに基づいて、空気質レベルに対する空気質レベル判定規格が定められ、
前記空気質レベル判定規格による空気質レベルに対応するメッセージが提供される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記環境パラメータが、温度、相対湿度、揮発性有機化合物、一酸化炭素、二酸化炭素、ダスト、オゾン、二酸化炭素、空気流量、ラドン及びホルムアルデヒドから成る群のうちの何れか1つである、請求項10に記載の方法。」
(4)「【0018】
環境パラメータは、温度、相対湿度、揮発性有機化合物、一酸化炭素、二酸化炭素、ダスト、オゾン、二酸化炭素、空気流量、ラドン及びホルムアルデヒドから成る群のうちの何れか1つである。」
(5)「【0020】
実時間空気質レポートが提供される。実時間空気質レポートは、ユーザに分かり易い取得値の解釈と、取得値に応じた推奨事項とを含み、非技術者のユーザが容易に理解できるものである。(すなわち、レポートは、パラメータ範囲に基づいた潜在的な問題に対応するメッセージと、潜在的な問題に対処するための推奨事項と、空気質レベルに対応するメッセージとを含む。)空中浮遊菌及び空中菌類などの、或る環境パラメータに関して、従来の方法では、より長い試験時間を要し、何時間もの定温放置が必要であるが、本発明では、異なる測定環境パラメータ間の(相互関係/相関関係)に基づいて予測することによって、即時のレベル評価を提供することができる。たとえば、ダストレベルが或る高レベルに達している温暖で湿潤な環境(吸入性浮遊粉塵レベルが高い環境)では、空中浮遊菌を成長させ、培養するための前提条件が実際に成り立っている。温度、相対湿度及び吸入性浮遊粉塵レベルの値に基づいて、空中浮遊菌のレベルが同時に予測できる。他の例に関して、二酸化炭素濃度が高レベルであり続けている環境では、換気が悪い又は占有人数が多すぎることが意味される。本発明を用いると、ユーザに分かり易い環境取得値の解釈が作成される。ユーザに分かり易い解釈は、「排気システムをつけてください」、「占有人数を減らしてください」、「窓を開けてください」などの推奨事項メッセージであってもよい。本発明による装置は構造的に簡単で低コストである。装置は非技術者のユーザによって容易に操作され得る。」
(6)「【0023】
センサ10は異なる環境パラメータの値を取得する。制御ユニット20は該取得値を収集する。本実施形態では、センサ10は、温度センサ、相対湿度センサ12、揮発性有機化合物センサ13、一酸化炭素センサ14、二酸化炭素センサ15及び吸入性浮遊粉塵センサ16である。オゾンセンサ、二酸化窒素センサ、空気流量センサ、ラドンレベルセンサ及びホルムアルデヒドセンサなどの他の環境センサを同様の目的に適用することができる。」

4.請求人の審査段階での主張
特定事項によって限定されることになった「前記複数のセンサによって取得されない或る環境パラメータ」という事項は、平成23年10月25日の手続補正(「第1 手続の経緯」参照)で導入されたものである。
当該手続補正とともに提出された意見書において、請求人は、当該事項は「明細書の段落0020の記載「実時間空気質レポートが提供される。実時間空気質レポートは、ユーザに分かり易い取得値の解釈と、取得値に応じた推奨事項とを含み、非技術者のユーザが容易に理解できるものである。(すなわち、レポートは、パラメータ範囲に基づいた潜在的な問題に対応するメッセージと、潜在的な問題に対処するための推奨事項と、空気質レベルに対応するメッセージとを含む。)空中浮遊菌及び空中菌類などの、或る環境パラメータに関して、従来の方法では、より長い試験時間を要し、何時間もの定温放置が必要であるが、本発明では、異なる測定環境パラメータ間の(相互関係/相関関係)に基づいて予測することによって、即時のレベル評価を提供することができる。たとえば、ダストレベルが或る高レベルに達している温暖で湿潤な環境(吸入性浮遊粉塵レベルが高い環境)では、空中浮遊菌を成長させ、培養するための前提条件が実際に成り立っている。温度、相対湿度及び吸入性浮遊粉塵レベルの値に基づいて、空中浮遊菌のレベルが同時に予測できる。」より自明です。」と主張している(上記摘記事項(5)の下線部参照)。

5.判断
(1)本件補正前の技術的事項
上記摘記事項を含む本願明細書等の記載によれば、本件補正前の「環境パラメータ」には、
(a)「温度、相対湿度、揮発性有機化合物、一酸化炭素、二酸化炭素、ダスト、オゾン、二酸化炭素、空気流量、ラドン及びホルムアルデヒドから成る群のうちの何れか1つである」「センサによって取得される環境パラメータ」と、
(b)「従来の方法では、より長い試験時間を要し、何時間もの定温放置が必要である」「センサによって取得されない」が、異なる測定環境パラメータ間の(相互関係/相関関係)に基づいて予測することができる「或る環境パラメータ」の2種類があることがわかる。

(2)本件補正発明に含まれる事項
これに対して、上記特定事項を導入した補正発明は、「或る環境パラメータ」として、「従来の方法でも、長い試験時間を要さず、何時間もの定温放置が不要である」「センサによって取得可能な」「温度、相対湿度、揮発性有機化合物、一酸化炭素、二酸化炭素、ダスト、オゾン、二酸化炭素、空気流量、ラドン及びホルムアルデヒドから成る群のうちの何れか1つ」を含むことになる。
すなわち、「或る環境パラメータ」が、本件補正前には異なる測定環境パラメータ間の(相互関係/相関関係)に基づいて予測することができるが「従来の方法では、センサによって取得されない環境パラメータ」であったものが、本件補正後には「従来の方法でも、センサによって取得可能な環境パラメータ」であって、しかも、異なる測定環境パラメータ間の(相互関係/相関関係)に基づいて予測することができる環境パラメータを含むものとなった。
そして、当初明細書等のすべての記載を参酌しても、このようなことを示唆する記載はない。
また、そのような事項が、本願の出願時点で当業者にとって自明な事項であるともいえない。
してみると、上記事項は、当初明細書等に記載された事項とすることはできない。

(c)結論
したがって本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものでない。

(d)小括
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成25年5月29日付けの手続補正は上記のとおり却下され、平成24年8月10日付けの手続補正は、上記のとおり、平成25年1月24日付けで補正の却下の決定がなされているので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成23年10月25日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「異なる環境パラメータの値を取得する異なる種類の複数のセンサと、
前記環境パラメータの前記取得値を受け取り、前記取得値を、前記異なる環境パラメータのパラメータ範囲を定める所定の規格及び基準と比較する制御ユニットと、
実時間空気質レポートを表示する表示ユニットであって、
該実時間空気質レポートは、
前記パラメータ範囲に基づいた前記取得値のユーザに分かり易い解釈と、
前記複数のセンサによって取得されない或る環境パラメータの即時のレベル評価を提供する、前記取得された環境パラメータに基づく同時予測と、
非技術者のユーザが容易に理解できる、前記パラメータ範囲に基づいた前記取得値に応じた推奨事項と、
を含む、表示ユニットと、
を備え、
前記取得値を解釈し、前記取得値に基づいて推奨事項を作成するために、前記異なる環境パラメータの前記取得値の実時間分析が、前記異なる環境パラメータの前記取得値の相互関係を考慮することにより行われる、環境モニタリング装置。」(以下「本願発明」という。)

2.引用刊行物及び該刊行物に記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2003-106904号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、温度及び湿度を表示するための温湿度計の改良に関するものである。」
(2)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上述のような温湿度計では、その直接の目的である現在温度や現在湿度自体に関する表示について、視覚的に把握しやすくするように工夫されてはいても、温度や湿度に関する二次的な情報の表示に関しては必ずしも十分ではない。つまり、計測された現在温度や現在湿度は、その環境下にある使用者等にとってどのような意味をもつのか、健康に過ごすためには、温度は高いのか低いのか、湿度は高いのか低いのか高いのか等といった二次的な情報を認識しやすい形態で提供するという点については、未だ不十分であった。」
(3)「【0006】すなわち、温湿度計の使用者にとっては、現在温度や湿度の具体的な情報だけでなく、むしろ、そのような温度,湿度の環境においては、どのような注意が必要であるかといった情報により大きい価値がある場合もある。例えば、現在温度や湿度の環境下で、使用者自身が自己のためにどのような注意を払う必要があるかだでなく、使用者と共に過ごしている乳幼児や高齢者等にとって、介助や介護を行う立場から、どのような注意を払う必要があるかといった情報は、現在温度や湿度から、直ちに想起できるとは限らないので、このような注意喚起を内容とする二次的情報をわかりやすく表示する手段の必要性はきわめて高いものである。
【0007】本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、現在温度や湿度の環境下で必要とされる注意情報を、温度及び湿度の情報と共に、わかりやすく表示することができる温湿度計及び温湿度計による注意表示方法を提供することを目的としている。」
(4)「【0023】図4は、温湿度計10の本体11内部に収容された機構の電気的構成を示すブロック図である。図において、本体11内には、上述した蓋17を開閉することにより収容される乾電池等の電源23が収容されている。また、本体11内には、上述した連通部16,16に近接して、温度検出手段としての温度センサ21と、湿度検出手段としての湿度センサ22が収容されている。温度センサ21と湿度センサ22は、電源23と接続されて、駆動されることにより、周辺環境の現在温度と現在湿度に対応した抵抗値を生成して出力するようになっている。この実施形態の場合、電源23である電池を本体11内に収容すると、直ちに駆動されるようになっているが、電源23から各供給先との間には、スイッチイング素子等の操作子を設けて、使用者の操作によりオン,オフできるようにしてもよい。
【0024】また、制御手段30は、例えば、集積回路から構成することができる。制御手段30である集積回路には、例えば、中央処理装置(CPU)や、計時手段を含むように構成することができる。この制御手段30には、温度センサ21と湿度センサ22と接続され、これらの出力から現在温度及び現在湿度を演算する演算部32と、この演算部32に接続され、温度及び湿度情報を用いて、必要な判断機能を実行する制御部33を備えている。この制御部33には、後述するように、温度及び/または湿度の条件と対応して、予め決められた、後述する注意表示に関するデータ等を格納した記憶手段としてのメモリ31と、各種判断部が接続されている。このメモリ31は、予め用意された各判断部で利用できるように判断基準に関するデータを格納するだけでなく、温湿度計10の動作中に、各判断部で行われた判断結果を一時蓄積し、制御部33が参照するための作業領域を有している他、必要により、さらに他のデータを格納することができるようにしてもよい。
【0025】制御部33と接続された判断部は、この実施形態では、警告表示判断部35、高低温表示判断部36、多少表示判断部37、表情表示判断部38、心情表示判断部39である。これらの各判断部の機能は後述する。制御部33からの指示は、各判断部に伝えられる。これらの各判断部は、表示駆動部40と接続され、表示駆動判断部40は、表示部15としての液晶パネル26と接続されている。すなわち、表示駆動判断部40は、液晶パネル26の駆動回路を用いることができ、各判断部の判断結果に基づいて、注意表示すべき内容に適合するように、液晶パネル26に駆動電圧を供給するようになっている。また、警告表示判断部35、高低温表示判断部36、多少表示判断部37、表情表示判断部38、心情表示判断部39の判断結果に基づいて、直ちに表示駆動判断部40により、液晶パネル26の表示を行うだけでなく、後述するフロー図で説明するように、各判断部の判断結果は、制御部33に戻されて、制御部33は、この判断結果により、他の判断部に指示を与えることもできるようになっている。尚、表示部15を形成するための手段としては、液晶パネル以外にも、視覚画像を形成できる他の手段、例えば、ELパネル等の適宜の手段が採用できる。
【0026】また、制御部33には、例えば、駆動回路等の駆動部34を介して、必要により、ブザ25等の音発生手段を接続するようにしてもよい。つまり、表示手段による注意表示と対応させて、もしくはその時の注意表示とは別に、ブザ25等の鳴動手段もしくは、予め用意した音声による音声発生手段により、注意を促すようにすることができる。つまり、ブザ25に代えて、もしくはブザ25に加えて、スピーカ等の音声生成手段を接続し、音もしくは音声により注意表示を行うことができるようにすることができる。これにより、使用者等が温湿度計10を注視していなくても、注意を促すことができる。」
(5)「【0029】この温湿度計10においては、表示部15にキャラクターによる表情別表示及び、これに付随した文字及びマークによる表示を用いることにより、特定の温度及び/または湿度の条件下において、乳幼児の介助を行う者(以下、「母親等」という)に対して、乳幼児に所定の注意を払うことを喚起するようにしている。このため、注意表示を図6にまとめたような注意表示を行うようにしているが、この注意表示は、図5のような考え方がその背景となっている。
【0030】図5において、縦方向の温度基準について説明すると、低い方から、マイナス0.1度(摂氏表示、以下、本書において温度は全て摂氏表示とする)以下は、注意表示の対象となる測定を行うことができない「範囲外」とし、温度が高くなるにしたがって、0.0度から9.9度までを「警告範囲」、10.0度から17.9度までを「注意範囲」、18.0度から26.0度までを「快適範囲」、26.1度から30.0度までを「注意範囲」、30.1度から50.0度までを「警告範囲」、50.1度以上を注意表示の対象となる「範囲外」としている。
【0031】同様に、横方向の湿度基準について説明すると、低い方から、湿度24パーセント以下は、注意表示の対象となる測定を行うことができない「範囲外」とし、湿度が高くなるにしたがって、25パーセントから29パーセントまでを「警告範囲」、30パーセントから39パーセントまでを「注意範囲」、40パーセントから60パーセントまでを「快適範囲」、61パーセントから70パーセントまでを「注意範囲」、71パーセントから80パーセントまでを「警告範囲」、81パーセント以上を注意表示の対象となる「範囲外」としている。このように、縦軸の温度基準と、横軸の温度基準について、それぞれ同じ数だけ、例えば、6つずつの閾値を設けることで、特に、温度と湿度とを組み合わせた条件下、適切な注意表示を行うことができるようにしている。」
(6)「【0032】このような区分をした図5において、例えば、湿度29パーセント以下となる領域A1では、一般に乾燥により細菌やウイルスの活動が活発化することから、風邪対策が必要とされる領域である。温度18.0度以上で、湿度71パーセント以上の高温多湿となるA2の領域では、食中毒による被害を心配する必要がある食中毒対策領域である。また、A3の領域では、ダニ発生の対策が、A4の領域では、カビ対策が必要であると言われている。このような各領域に関しては、注意範囲または警告範囲として、注意を喚起する表示を行う必要がある。
【0033】このような各区分に対応して、具体的な注意表示をまとめたのが、図6である。図において、符号Dで示すのは、図5の区分毎の実際の表示部15の画面表示例である。 画面表示Dにおいては、図示するように、乳幼児の顔のイメージを簡略した絵柄キャラクタが使用されており、例えば、表情別にF1,F2,F3の3種類の絵柄キャラクタが使用されている。絵柄キャラクタF1は、乳幼児の泣き顔を絵柄化しており、乳幼児のコンディションにとって、温度及び/または湿度の環境がひどく悪いことを示す。絵柄キャラクタF2は、乳幼児の落ちついた表情を絵柄化したものであり、乳幼児のコンディションにとって、温度及び/または湿度の環境がひどく悪いわけではないが、快適ではないことから、注意を怠ってはならず、エアコン等で快適な状態となるように対応を取ることを促す。絵柄キャラクタF3は、乳幼児の笑顔を絵柄化したものであり、乳幼児のコンディションにとって、温度及び/または湿度の環境が良好であり、快適な状態であることを示す。
【0034】本実施形態では、これら絵柄キャラクタにより、母親等に対して、当該温度及び/または湿度の環境下における乳幼児のコンディションを、視覚的に簡単に把握させようとするものである。そして、これら絵柄キャラクタの表示の種類を決定するのが、図4の表情表示判断部38である。例えば、図5で説明した表示範囲外及び警告範囲では、絵柄キャラクタF1を、注意範囲では、絵柄キャラクタF2を、快適範囲では、絵柄キャラクタF3を選択するようにしている。
【0035】また、この実施形態の温湿度計10では、図6に示すように、絵柄キャラクタと同時に、絵柄キャラクタの上方の左に摂氏による温度表示、右のパーセントによる湿度表示を行うとともに、記号や文字により、補助的な注意情報を表示するようにしている。具体的には、温度基準と湿度基準とが測定対象外である範囲外である場合、温度表示箇所にLoまたはHi表示が、湿度表示箇所にLoまたはHi表示がそれぞれ表示されるようになっており、この表示を決定するのが、図4の警告表示判断部である。警告表示判断部は、湿度表示箇所にLoまたはHi表示を行うことで、温度環境と湿度環境について、別々に強い注意を促すことができる。」
(7)「【0056】例えば、このように構成した温湿度計を、外出前に屋外のベランダ等に一定時間出すだけで、室温と異なる外の温度及び湿度の環境と、外出に際して必要とされる服装等の情報を得ることができ、便利である。同様にして、介護老人をかかえた介護者が使用する場合の温湿度計では、上述の情報を介護対象の年齢の人の情報に変えて用意することにより、乳幼児の場合と同等の効果を得ることができる。また、上述の実施形態では、設定していないが、例えば、図5で説明した細菌やウイルスに関する風邪対策領域A1、食中毒対策領域A2、ダニ対策領域A3、カビ対策領域A4等について、それぞれ専用のキャラクタを設定し、現在温度及び/または湿度が、これらの領域にある場合に、それぞれ注意表示を行い、予防に役立てるようにしてもよい。
【0057】同様にして、注意表示の内容として、ユーザの特定の用途、例えば、アトピー性皮膚炎等の諸注意事項と対応した現在温度及び/または湿度条件に関する注意表示の内容に関するデータ、その他の特定の目的に対応した現在温度及び/または湿度条件との関係での注意表示データを予め用意し、これらを、温湿度計10に組み込んで、切り替えスイッチ等で切り替え表示または追加表示できるようにしてもよい。」
(8)「【図5】


(9)「【図6】



これらの記載事項を含む引用文献1全体の記載及び当業者の技術常識を総合すれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。

「温度センサ(21)と湿度センサ(22)と接続され、これらの出力から現在温度及び現在湿度を演算する演算部(32)と、この演算部に接続され、温度及び湿度情報を用いて、必要な判断機能を実行する制御部(33)を備えている制御手段(30)を有し、
制御部には温度及び/または湿度の条件と対応して、予め決められた注意表示に関するデータ等を格納した記憶手段としてのメモリ(31)と、各種判断部が接続されており、
該判断部として警告表示判断部(35)、高低温表示判断部(36)、多少表示判断部(37)、表情表示判断部(38)及び心情表示判断部(39)が制御部と接続され、
制御部からの指示は各判断部に伝えられ、各判断部は表示駆動部(40)と接続され、表示駆動部は表示部(15)としての液晶パネル(26)と接続されており、
表示部にキャラクターによる表情別表示及び、これに付随した文字及びマークによる表示を用いることにより、特定の温度及び/または湿度の条件下において、乳幼児の介助を行う母親等に対して、乳幼児に所定の注意を払うことを喚起するようにしており、
縦軸の温度基準と、横軸の湿度基準について、それぞれ同じ数の閾値を設けることで、温度と湿度とを組み合わせた条件下の範囲領域に関して適切な注意表示を行うことができるようにしており、
所定の領域に関しては、警告表示判断部が警告範囲として注意を喚起する表示を行い、
現在温度や湿度の環境下で必要とされる注意情報を、温度及び湿度の情報と共に、わかりやすく表示することができる、
温湿度計。」(以下「引用発明」という。)

3.対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「温度センサと湿度センサ」は本願発明の「異なる環境パラメータの値を取得する異なる種類の複数のセンサ」に相当する。
(2)引用発明の「縦軸の温度基準と、横軸の湿度基準について、それぞれ同じ数の閾値を設けることで、温度と湿度とを組み合わせた条件下の範囲領域」は、本願発明の「前記異なる環境パラメータのパラメータ範囲を定める所定の規格及び基準」に相当する。
引用発明の「現在温度及び現在湿度」は本願発明の「環境パラメータの前記取得値」に相当する。
引用発明の「判断機能を実行する制御部と接続された警告表示判断部」は「所定の領域に関しては警告範囲として注意を喚起する表示を行」うから、引用発明が「現在温度及び現在湿度」と「温度と湿度とを組み合わせた条件下の範囲領域」の比較を行っていることは自明である。
してみると、引用発明は本願発明の「前記環境パラメータの前記取得値を受け取り、前記取得値を、前記異なる環境パラメータのパラメータ範囲を定める所定の規格及び基準と比較する制御ユニット」に相当する構成を有する。
(3)引用発明の「温度及び湿度の情報」は本願発明の「実時間空気質レポート」に相当し、同じく「表示部」は「表示ユニット」に相当する。
(4)引用発明が温度及び湿度の環境下における乳幼児のコンディションを、視覚的に簡単に把握させようとするもの(上記摘記事項(6)段落【0034】参照)であって、そのための表示が範囲ごとに指定されている(同摘記事項参照)ことに照らせば、引用発明は本願発明の「該実時間空気質レポートは、前記パラメータ範囲に基づいた前記取得値のユーザに分かり易い解釈を含む」構成に相当する構成を有する。
同様に、引用発明が、計測された現在温度や現在湿度は、その環境下にある使用者等にとってどのような意味をもつのか、健康に過ごすためには、温度は高いのか低いのか、湿度は高いのか低いのか高いのか等といった二次的な情報を提供するもの(上記摘記事項(2)参照)であって、食中毒対策やダニ発生の対策、及びカビ対策等に関して注意を喚起する表示を行うもの(上記摘記事項(6)参照)であることに照らせば、引用発明が、本願発明の「該実時間空気質レポートは、前記複数のセンサによって取得されない或る環境パラメータの即時のレベル評価を提供する、前記取得された環境パラメータに基づく同時予測を含む」構成に相当する構成を有する。なお、引用発明が閾値を用いて範囲領域を特定していることから、引用発明も当然レベル評価を行っている。
(5)本願発明の「推奨事項」の指し示す技術的意味は必ずしも明確ではないものの、本願明細書の段落【0034】の記載を参酌すれば、「ユーザーに動作を促すこと」を含むものと認められる。
また、引用発明の「乳幼児の介助を行う母親等」は本願発明の「非技術者のユーザ」に相当する。
そして、引用発明の「乳幼児の介助を行う母親等に対して、乳幼児に所定の注意を払うことを喚起する」ことは、「非技術者のユーザ」である母親等に所定の促しを行っていることに他ならないから、本願発明と引用発明は、ともに「該実時間空気質レポートは、非技術者のユーザが容易に理解できる、前記パラメータ範囲に基づいた前記取得値に応じた促しを含む」点で共通する。
(6)同様に、本願発明と引用発明は、ともに「前記取得値を解釈し、前記取得値に基づいて促しを作成するために、前記異なる環境パラメータの前記取得値の実時間分析が、前記異なる環境パラメータの前記取得値の相互関係を考慮することにより行われる」点で共通する。
(7)引用発明の「温湿度計」は本願発明の「環境モニタリング装置」に相当する。

以上のことから、両者は、
「異なる環境パラメータの値を取得する異なる種類の複数のセンサと、
前記環境パラメータの前記取得値を受け取り、前記取得値を、前記異なる環境パラメータのパラメータ範囲を定める所定の規格及び基準と比較する制御ユニットと、
実時間空気質レポートを表示する表示ユニットであって、
該実時間空気質レポートは、
前記パラメータ範囲に基づいた前記取得値のユーザに分かり易い解釈と、
前記複数のセンサによって取得されない或る環境パラメータの即時のレベル評価を提供する、前記取得された環境パラメータに基づく同時予測と、
非技術者のユーザが容易に理解できる、前記パラメータ範囲に基づいた前記取得値に応じた促しと、
を含む、表示ユニットと、
を備え、
前記取得値を解釈し、前記取得値に基づいて促しを作成するために、前記異なる環境パラメータの前記取得値の実時間分析が、前記異なる環境パラメータの前記取得値の相互関係を考慮することにより行われる、環境モニタリング装置。」
の点で一致し、次の点で相違している。

(相違点)
「促し」が、本願発明ではユーザーに動作を促す「推奨事項」であるのに対して、引用発明では「所定の注意を払うことを喚起する」ことである点。

4.判断
上記相違点について検討する。
引用発明が所定の注意を払うことを喚起するのは、現時点での環境パラメータから予測される状況に対して、何らかの対策を取る必要があるから(上記摘記事項(6)段落【0032】参照)である。
そうであるから、引用発明が、所定の注意を払うことを喚起することに加えて、必要な対策を推奨事項として促すことに格別の阻害要因はない。また、そのことに特段の技術的困難性もない。
してみると、引用発明に上記相違点に係る構成を採用することは当業者が容易になしうる事項である。

また、本願発明全体の効果も、引用発明から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-05 
結審通知日 2014-06-10 
審決日 2014-06-23 
出願番号 特願2008-558619(P2008-558619)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G01W)
P 1 8・ 575- Z (G01W)
P 1 8・ 121- Z (G01W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 秀直  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 右▲高▼ 孝幸
神 悦彦
発明の名称 環境モニタリング方法及び装置  
代理人 山口 和弘  
代理人 城戸 博兒  
代理人 野田 雅一  
代理人 池田 正人  
代理人 山田 行一  
代理人 池田 成人  
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