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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05B
管理番号 1294737
審判番号 不服2013-17226  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-06 
確定日 2014-12-04 
事件の表示 特願2007-190437「電気光学装置および電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 2月 5日出願公開,特開2009- 26671〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成19年7月23日の出願であって,平成24年1月5日付けで拒絶理由が通知され,同年3月16日に意見書及び手続補正書が提出され,同年10月15日付けで拒絶理由が通知され,同年12月19日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成24年12月19日提出の手続補正書による補正が平成25年6月11日付けで却下されるとともに,同日付けで拒絶査定がなされたところ,同年9月6日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され,当審において,平成26年6月18日付けで拒絶の理由が通知され,同年8月25日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
(1)本願の請求項1ないし7に係る発明は,平成26年8月25日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7によって特定されるものであるところ,請求項1の記載は次のとおりである。(なお,下線は,次項で検討を行う箇所を示す。)

「第1の発光領域,第2の発光領域および第3の発光領域を有し,前記第2の発光領域は,第1の方向において,前記第1の発光領域と隣り合って配置され,前記第3の発光領域は,前記第1の方向とは異なる第2の方向において,前記第1の発光領域と隣り合って配置された電気光学装置であって,
前記第1の発光領域,前記第2の発光領域および前記第3の発光領域を区画するように設けられた第1のバンクと,
前記第1のバンク上に配置され,前記第1の発光領域及び前記第3の発光領域と前記第2の発光領域とを区画するように設けられた第2のバンクと,
前記第1のバンクに区画された各々の発光領域に設けられた発光層と,を備え,
各々の前記発光領域は,前記第2の方向に沿った直線状の第1の辺と,前記第1の方向に沿った前記第1の辺より短い円弧状である第2の辺と,を有し,
前記バンクは,前記第1の発光領域の前記第1の辺と前記第2の発光領域の前記第1の辺との間第1の部分と,前記第1の発光領域の前記第2の辺と前記第3の発光領域の前記第2の辺との間第2の部分と,を有し,
前記第1の部分の液体に対する撥液性は,前記第2の部分の前記液体に対する撥液性よりも高いことを特徴とする電気光学装置。」

(2)請求項1の記載中の「前記バンク」なる記載が,「第1のバンク」を指すのか,「第2のバンク」を指すのか,それとも,「第1のバンク」及び「第2のバンク」の双方を指すのかが,特許請求の範囲の記載からは明確に特定できないから,本願明細書の記載及び図面を参酌する。
ア 本願明細書の発明の詳細な説明には,請求項1に係る発明の実施形態について,次のとおりの記載がある(なお,下線は,請求項1に記載の「前記バンク」が指し示す内容を検討する上で特に関係する箇所を示す。)。
(ア)「【0041】
(第1実施形態)
図1は,第1実施形態の電気光学装置としての有機EL装置の一部の構造を示す模式断面図である。図2は,有機EL装置におけるバンクが形成された段階でのバンクの構造を示す模式図である。(a)は,有機EL装置を上方から見た模式平面図である。(b)は,(a)に示す有機EL装置のA-A断面に沿う模式断面図である。(c)は,(a)に示す有機EL装置のB-B断面に沿う模式断面図である。なお,図1は,各構成要素の断面的な位置関係を示すものであり,相対関係は度外視されている。以下,有機EL装置の構造を,図1?図2を参照しながら説明する。
・・・(中略)・・・
【0047】
発光素子層15は,マトリックス状に配置された発光素子を具備してガラス基板13上に形成されている。詳述すると,発光素子層15は,画素電極32上に形成された機能層33と,機能層33を区画するバンク34とを主体として構成されている。機能層33上には,陰極16が配置されている。画素電極32と,機能層33と,陰極16とによって発光素子が構成されている。
【0048】
バンク34は,例えば,平面に見て開口部35がトラック状に形成されている(図2(a)参照)。詳述すると,バンク34の開口部35は,アスペクト比の異なる発光領域12と,発光領域12の短辺側に形成された円弧44の領域とを有する。
【0049】
また,バンク34は,ガラス基板13側に位置する第1層バンク41と,第1層バンク41よりもガラス基板13から離れて位置する第2層バンク42とが積層されて構成されている。第1層バンク41の材料としては,例えば,SiO2,TiO2,SiN等の無機材料が挙げられる。第2層バンク42の材料としては,例えば,ポリシロキサンと酸化チタンとを含む材料である。本実施形態では,バンク34を第1層バンク41と第2層バンク42との積層構造にて形成したが,第2層バンク42単層で形成するようにしてもよい。
【0050】
第1層バンク41は,隣り合う画素電極32間の絶縁性を確保するために,画素電極32の周縁部上に乗り上げるように形成されている。つまり,画素電極32と第1層バンク41は,平面的に一部が重なるように配置された構造となっている(図2(a)での図示は省略する)。言い換えれば,第1層バンク41は,発光領域12を除いた領域に形成されていることになる。また,第1層バンク41の端部は,第2層バンク42の端部より,画素電極32の中央側に配置されるように形成されている。
【0051】
本実施形態では第1層バンク41を画素電極32の周縁部上に乗り上げるように形成したが,第1層バンク41の側面を第2層バンク42の側面と面一となるように形成してもよい。この場合,第1層バンク41を画素電極32の周縁部上に乗り上げるように形成した場合に比べて,発光領域12を広く形成することができる。
【0052】
一方,第2層バンク42は,例えば,断面に見て傾斜面を有する台形状に形成されている。また,第2層バンク42は,第1部分42aと第2部分42bとを有し,第1部分42aの撥液性が第2部分42bの撥液性より相対的に低くなっている。撥液性が低い(すなわち,濡れ性が高い)第1部分42aは,第2層バンク42の開口部35における円弧44の部分を含む。撥液性の高い(すなわち,濡れ性が低い)第2部分42bは,第2層バンク42の開口部35における直線45の部分を含む。なお,第1部分42aは,円弧44の部分に形成された傾斜面を含んでいる(図2(b)参照)。また,第2部分42bは,直線45の部分に形成された傾斜面を含んでいる。
【0053】
ここで,「撥液性が低い」とは,液体との接触角が相対的に小さいことを指す。つまり,撥液性を低くした円弧44の領域(図2(a)参照)に,液体が充填しやすくなったと言える。一方,「撥液性が高い」とは,液体との接触角が相対的に大きいことを指す。つまり,撥液性を高くした直線45の部分(図2(a)参照)から外部に,液体が溢れにくくなったと言える。第2層バンク42の詳細な材料及び製造方法については後述する。
・・・(中略)・・・
【0077】
以上詳述したように,第1実施形態によれば,以下に示す効果が得られる。
【0078】
(1)第1実施形態によれば,第2層バンク42の開口部35のうち,比較的機能液が充填しにくい円弧44の部分が撥液性の低い第1部分42aとなっているので,第1部分42aに機能液(例えば,発光層52の機能液)を馴染ませることが可能となり,円弧44の内側の領域に機能液を充填させることができる。また,開口部35の直線45の部分が撥液性の高い第2部分42bとなっているので,機能液がバンク34の外側に溢れることを抑えることができる。この結果,発光領域12における発光層52の厚みを均一に形成することができ,均一に発光させることができる。」

(イ)「【0080】
(第2実施形態)
図5は,第2実施形態の有機EL装置の製造方法を示す工程図である。以下,有機EL装置の製造方法を,図5を参照しながら説明する。なお,第2実施形態の有機EL装置11の製造方法は,第2層バンク42の第1部分42aにアクリル系樹脂(第1材料)を用い,第2部分42bにフッ素系材料が添加されたアクリル系樹脂(第2材料)を用いる部分が,第1実施形態と異なっている。以下,第1実施形態と同じ構成部材には同一符号を付し,ここではそれらの説明を省略又は簡略化する。
【0081】
まず,第2実施形態の有機EL装置11の構造を説明する。有機EL装置11は,上記したように,例えば,第2層バンク42の開口部35における円弧44を含む第1領域が,アクリル系材料からなる第1部分42aとなっている。また,第2層バンク42の開口部35における直線45を含む第2領域が,フッ素系材料を添加したアクリル系材料からなる第2部分42bとなっている。
【0082】
ここで,アクリル系材料に添加されるフッ素について説明する。フッ素は,極めて低い表面エネルギーを有するものであり,このため,フッ素を多く含有する物質の表面は,臨界表面張力がより小さくなる。したがって,フッ素の含有量の多い物質の表面の臨界表面張力に比較して,フッ素の含有量の少ない物質の表面の臨界表面張力は大きくなる。これはすなわち,フッ素含有量の少ない物質の表面は,フッ素含有量の多い物質の表面に比較して親液性領域となっていることを意味する。以下,第2実施形態の有機EL装置11の製造方法を説明する。なお,ステップS1?ステップS3までの工程は,第1実施形態と同様である。
【0083】
ステップS21では,第1層バンク41上に,第2層バンク42の第1部分42aを形成する。撥液性の低い第1部分42aの材料としては,例えば,上記したようにアクリル系樹脂が挙げられる。まず,第1層バンク41を含むガラス基板13上に,アクリル系樹脂を蒸着により形成する。次に,フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術により,第1部分42aの形状にパターンニングする。
【0084】
ステップS22では,第1層バンク41上の第1部分42aに隣接して,第2部分42bを形成する。撥液性の高い第2部分42bの材料としては,例えば,上記したようにフッ素系材料が添加されたアクリル系樹脂が挙げられる。まず,第1層バンク41及び第2層バンク42の第1部分42aを含むガラス基板13上に,フッ素系材料が添加されたアクリル系樹脂を蒸着により形成する。次に,フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術により,第2部分42bの形状にパターンニングする。なお,撥液性の高い(接触角の高い)第2部分42bの膜厚が,撥液性の低い(接触角の低い)第1部分42aの膜厚より厚いことが好ましい。これにより,バンク34の開口部35において液体が溢れ易い直線45の部分から液体が溢れることを抑えることができる。
【0085】
以上により,アクリル系樹脂からなる第1部分42a,フッ素系材料が添加されたアクリル系樹脂からなる第2部分42bを有する第2層バンク42が完成する。」

(ウ)「【0088】
(第3実施形態)
図6は,第3実施形態の有機EL装置の製造方法を示す工程図である。以下,有機EL装置の製造方法を,図6を参照しながら説明する。なお,第3実施形態の有機EL装置11は,第1部分42aに相当する第1領域に施すプラズマ処理時間と比較して,第2部分42bに相当する第2領域に施すプラズマ処理時間を長くする(回数を多くする)ことにより,撥液性の低い第1部分42aと撥液性の高い第2部分42bと分ける部分が,第1実施形態と異なっている。以下,第1実施形態と同じ構成部材には同一符号を付し,ここではそれらの説明を省略又は簡略化する。なお,ステップS1?ステップS3までの工程は,第1実施形態と同様である。
【0089】
ステップS31では,第1層バンク41を含むガラス基板13上に第2層バンク42を形成するための,例えば,アクリル系樹脂を積層して第2層バンク層を形成する。第2層バンク層を形成する方法としては,例えば,蒸着法が挙げられる。
【0090】
ステップS32では,第2層バンク層から第2層バンク42の形状にパターンニングする。詳しくは,フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いてパターンニングする。
【0091】
ステップS33では,第2層バンク42において,撥液性の低い第1部分42aと,撥液性の高い第2部分42bとを形成する。詳しくは,第2層バンク42における第1部分42aに相当する第1領域には,例えば,酸素(O_(2))ガスを用いた酸素プラズマ処理を行う。一方,第2部分42bに相当する第2領域には,例えば,テトラフルオロメタンを用いた四フッ化炭素(CF_(4))プラズマ処理を行う。また,第1領域に施すプラズマ処理と比較して,第2領域に施すプラズマ処理を,例えば,10倍多く行う。
・・・(中略)・・・
【0094】
以上により,撥液性の低い第1部分42aと,撥液性の高い第2部分42bとを有する第2層バンク42が完成する。」

イ 前記ア(ア)ないし(ウ)から,本願明細書に記載された請求項1に係る発明の実施形態は,いずれも,第1層バンク41上に第2層バンク42が形成され,当該第2層バンクが,撥液性の低い第1部分42aと撥液性の高い第2部分42bとを有していて,第1層バンクには撥液性の低い部分と撥液性の高い部分が存在しないことを把握できる。
また,本願明細書の発明の詳細な説明の前記ア(ア)ないし(ウ)以外の箇所にも,第2層バンクの下層である第1層バンクに撥液性の低い部分と撥液性の高い部分が存在することは,記載も示唆もされていない。

(3)請求項1に記載された「第1のバンク」は,「第2のバンク」が「第1のバンク上に配置され」たものであり,請求項1に記載された「前記バンク」は,「第2の部分」と,「液体に対する撥液性」が「第2の部分の前記液体に対する撥液性よりも高い」「第1の部分」とを有しているところ,前記(2)イに照らせば,請求項1に記載された「第1のバンク」が本願明細書に記載された第1ないし第3実施形態の「第1層バンク41」に対応する発明特定事項であり,請求項1に記載された「前記バンク」が本願明細書に記載された第1ないし第3実施形態の「第2層バンク42」に対応する発明特定事項であって,「前記バンク」は,「第1層バンク41」に対応する「第1のバンク」でも当該「第1のバンク」及び「第2のバンク」の双方でもなく,「第2層バンク42」に対応する「第2のバンク」を指していると解するほかない。
したがって,本願の請求項1に係る発明は,「前記バンク」について明確にし,かつ,明らかな誤記を訂正した次のとおりのものと認められる(なお,下線は訂正箇所を示す。)。

「第1の発光領域,第2の発光領域および第3の発光領域を有し,前記第2の発光領域は,第1の方向において,前記第1の発光領域と隣り合って配置され,前記第3の発光領域は,前記第1の方向とは異なる第2の方向において,前記第1の発光領域と隣り合って配置された電気光学装置であって,
前記第1の発光領域,前記第2の発光領域および前記第3の発光領域を区画するように設けられた第1のバンクと,
前記第1のバンク上に配置され,前記第1の発光領域及び前記第3の発光領域と前記第2の発光領域とを区画するように設けられた第2のバンクと,
前記第1のバンクに区画された各々の発光領域に設けられた発光層と,を備え,
各々の前記発光領域は,前記第2の方向に沿った直線状の第1の辺と,前記第1の方向に沿った前記第1の辺より短い円弧状である第2の辺と,を有し,
前記第2のバンクは,前記第1の発光領域の前記第1の辺と前記第2の発光領域の前記第1の辺との間の第1の部分と,前記第1の発光領域の前記第2の辺と前記第3の発光領域の前記第2の辺との間の第2の部分と,を有し,
前記第1の部分の液体に対する撥液性は,前記第2の部分の前記液体に対する撥液性よりも高いことを特徴とする電気光学装置。」(以下「本願発明」という。)

3 当審で通知した拒絶理由の概要
当審において平成26年6月18日付けで通知した拒絶の理由のうち,請求項1に係る発明に対して通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は,本願の請求項1に係る発明は,特開2006-162882号公報及び特開2005-326799号公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

4 引用例
(1)特開2005-326799号公報
ア 特開2005-326799号公報の記載
前記当審拒絶理由で引用した特開2005-326799号公報(以下「引用刊行物1」という。)は,本願の出願前に頒布された刊行物であって,当該引用刊行物1には次の記載がある(なお,下線は,後述する引用発明の認定に特に関係する箇所を示す。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は,薄膜を用いて構成される電気光学装置とこの電気光学装置に使用される電気光学装置用基板,および半導体装置に関するものである。また,これらの製造方法及び電気光学装置を用いた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年,有機エレクトロルミネッセンス(以下,ELという)素子やカラーフィルタなどの製造工程において,インクジェットプロセス(液滴吐出法を用いた製造方法)を用いたパターン形成方法が注目されている。例えば有機EL薄膜を用いた電気光学装置では,この製造方法を用い,表示基板上の所定の領域に所定のパターンで複数の画素を形成し,各画素における発光を制御することによって表示を行っている。以下では,インクジェットプロセスを用いた薄膜形成方法について,有機EL薄膜を用いた電気光学装置の場合を例に説明をする。
【0003】
図28は,従来の電気光学装置の画素部の要部断面図であり,図29は,従来の電気光学装置における薄膜形成時における乾燥工程を模式的に示す図である。上述したように,有機EL薄膜は基板上に所定のパターンで所定の区画ごと作製される。基板上には,インクジェットプロセスによる有機EL薄膜の吐出された液体材料(薄膜材料液)が隣接する画素に流出しないように,断面形状が凸状の仕切部材(以下,隔壁という)242が互いに隣接する画素間に設けられている。この隔壁は,基板260に形成された画素電極上(図示しない)に第1の隔壁243と,その上部に形成される第2の隔壁244とから構成され,液滴充填領域R_(S)を囲むように形成される。ここでは,第1の隔壁243の上面の開口部よりも第2の隔壁244の下面の開口部が大きくなるようにして,その断面を階段状に構成する。また,第1の隔壁243と画素電極は,薄膜材料液に対して親液性を有する無機材料によって形成され,第2の隔壁244は,同薄膜材料液に対して撥液性を有する有機材料によって形成される。
【0004】
このような隔壁によって囲まれた各発光領域に,インクジェットプロセスを用い薄膜材料液が充填される。最初の状態は液滴の表面が,図29の線分L1に示されるように第2の隔壁244の上面より盛り上がっている。しかし,この薄膜材料液を乾燥させることによって,液滴の表面が線分L1?線分L4に示されるように徐々に下がり,最終的には表面が線分L4で示されるような薄膜245が形成される。なお,この乾燥課程において,液滴は第2の隔壁244の表面ではじかれ,第1の隔壁243の表面及び画素電極の表面ではなじむので,画素電極上の液滴充填領域R_(S)内にほぼ平坦な有機EL薄膜が形成される。(特許文献1参照)
【0005】
【特許文献1】特許第3328297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし,上記方法は図30に示すように,両端が半円状である細長い形状の発光領域を形成する場合や,図31に示すような角部を有する発光領域を隔壁242内に形成する場合には,画素電極上に均一な膜厚の有機EL薄膜を形成できないという問題がある。
【0007】
すなわち,図30に示すように発光領域が細長い楕円形である場合には,インクジェットプロセスにより充填した薄膜材料液滴250は,最初隔壁242によって囲まれた領域の全体に広がるが(図左),その後この液滴は表面張力により次第に球形に戻ろうとして,隔壁242内の中央近傍に溜まってしまう。また,図31に示すように角部を有する隔壁242内に液滴を充填させた場合も,薄膜材料液滴250は最初隔壁242によって囲まれた領域の全体に広がるが(図左),その後同様に前記領域の中央部に溜まってしまう。したがっていずれの場合にも,発光領域の周縁部,すなわち細長い形状の発光領域の場合には長手方向の両端部近傍で,また角部を有する発光領域の場合は,その角部近傍で有機EL薄膜の膜厚が薄くなり,発光領域の中央では膜厚が厚くなる。その結果,この膜厚のばらつきに起因して1つの画素内における発光輝度の不均一が生じるという問題が生じる。
【0008】
本発明は,上記課題を鑑みてなされたものであり,隔壁に囲まれた区画領域内において均一な膜厚,均一な膜質にて機能薄膜層を形成し得る構造を具備し,もって発光輝度の均一性が良好な表示を可能とした電気光学装置,及び,これを用いた電子機器を提供することを目的としている。また,これらを製造するための製造方法を提供することを他の目的としている。」

(イ)「【課題を解決するための手段】
【0009】
・・・(中略)・・・
【0013】
また,上述した課題を解決し,その目的を達成するために,本発明による電気光学装置は,所定の領域を区画する隔壁で囲われた薄膜形成面に薄膜が形成されてなる電気光学装置であって,該薄膜形成面と略平行であり,かつ第2隔壁によって被覆されていない平坦面を有し,かつ表面が親液性を有する第1隔壁と,前記第1隔壁上に積層設置され,前記第1隔壁の平坦面の露出面積が前記所定の領域内において異なるよう形成され,かつ表面が撥液性を有する第2隔壁と,前記第1隔壁と第2隔壁で囲まれた領域内に形成された機能薄膜層とを備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明においては,第1隔壁の平坦面の露出面積が所定の領域内において異なるように構成する。第1隔壁の平坦面の露出面積が大きい部分では,薄膜材料液は乾燥する際に該第1隔壁の平坦面側に強く引っ張られた状態で乾燥する。この事により,薄膜材料液が表面張力により第1隔壁及び第2隔壁で囲まれた領域の中央部に集まることが防止され,薄膜材料液は第1隔壁及び第2隔壁で囲まれた領域の中央部と周縁部とで,膜厚のばらつきを生じることなく乾燥する。
【0015】
その結果,薄膜は第1隔壁及び第2隔壁で囲まれた領域の隅々まで膜厚が均一な状態にあるので,膜厚が均一な機能薄膜層(発光層)を得ることができ,薄膜の膜厚ばらつきに起因する画素内の発光輝度の不均一,ばらつきが生じることが無い。したがって,本発明にかかる電気光学装置は,品質低下のない高品質な電気光学装置を提供できるという効果がある。
・・・(中略)・・・
【0018】
また,本発明の好ましい態様によれば,隔壁で囲われた薄膜形成面が細長い形状となるように第1隔壁を形成し,細長い形状の長手方向における両端部近傍の第1隔壁の平坦面の露出面積が,該両端部近傍以外の部分の第1隔壁の平坦面の露出面積よりも大きくなるように第2隔壁を形成することを特徴とする。これにより隔壁に囲まれた細長い形状の領域内の隅々まで,膜厚の均一性の良好な状態で薄膜を簡便且つ確実に形成することができる。例えば半円と長方形組み合わせた細長い形状を有する画素において,画素領域内の隅々まで,膜厚の均一性の良好な状態で機能薄膜層(発光層)を確実に形成することができる。その結果,機能薄膜層(発光層)の膜厚のばらつきに起因した品質低下のない,高品質な電気光学装置を提供できる。
【0019】
また,本発明の好ましい態様によれば,細長い形状の長手方向における両端部近傍の第2隔壁の開口部が円弧状であり,細長い形状の長手方向における両端部近傍の第2隔壁の傾斜角が,該両端部近傍以外の部分の傾斜角と比して小さくなるように第2隔壁を形成することを特徴とする。すなわち,細長い形状の長手方向の両端部近傍に形成された略円弧の第2隔壁の傾斜角を,細長い形状の直線部(長辺部)近傍に形成された第2隔壁の傾斜角と比較して低く形成する。例えば,有機樹脂を含む液体から第2隔壁を形成する場合,第2隔壁材料の圧縮応力は直線部分に加わる応力に比べて円弧部に加わる応力が強くなるので,細長い形状の直線部(長辺部)近傍より,細長い形状の長手方向の両端部の略円弧状に形成された第2隔壁の傾斜角が小さくなる。このようにすることにより,薄膜材料を含む液面と第1隔壁により囲まれた薄膜形成領域との間隔を遠ざけることができ,したがって薄膜材料液が表面張力により薄膜形成面の中央部に集まることが防止される。
・・・(中略)・・・
【0027】
本発明の電気光学装置では,前記第1隔壁層が,無機材料を主体としてなり,前記第2隔壁層が,有機材料を主体としてなるものであることが好ましい。この構成によれば,表面特性が互いに異なる第1隔壁層と第2隔壁層とを容易に得ることができる。」

(ウ)「【0048】
以下,図面を参照しながら,本発明にかかる電気光学装置,半導体装置,電気光学装置用基板,そしてこれらを作製する電気光学装置の製造方法,半導体装置の製造方法,電気光学装置用基板の製造方法,並びに電子機器について説明する。以下においては,電気光学装置の発光層に半導体薄膜である有機EL薄膜を使用した有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置を例に挙げて説明するが,本発明は以下の記述に限定されるものではなく,適宜変更が可能である。また,以下の実施例で用いられる電気光学装置の断面図は模式的なものであり,層の厚みと幅との関係や各層の厚みの比率などは現実のものとは異なる。
【0049】
〔実施例1-1〕
<電気光学装置,半導体装置,電気光学装置用基板>
図1は,本実施例にかかる電気光学装置の配線構造の平面模式図である。この図に示されるように,電気光学装置1は,複数の走査線101と,走査線101に対して空間を隔てて略直角に交差する方向に延びる複数の信号線102と,信号線102に並列に延びる複数の電源線103とが,それぞれ配線された構成を有する。そして,走査線101と信号線102の各交点に,マトリックス状に画素領域Aが設けられている。
・・・(中略)・・・
【0051】
画素領域Aのそれぞれには,走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT112と,このスイッチング用TFT112を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量capと,この保持容量capによって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT113と,この駆動用TFT113を介して電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(陽極)41と,この画素電極41と対になる対向電極(陰極)46と,両者の間に挟み込まれた機能層45とが設けられる。これらの画素電極41と対向電極46,および,機能層45によって発光素子部が構成されている。なお,機能層45は,後述する発光層を含む有機EL薄膜に対応する。
・・・(中略)・・・
【0053】
図2及び図3は,本実施例にかかる電気光学装置の画素領域Aの構造を模式的に示す断面図であり,図2は,図1における機能層45および駆動用TFT113のより詳細な構造を示す断面図である。また,図3は,画素領域Aのうち1つの画素を模式的に示す平面図である。図3に示すように1つの画素は細長い形状を有する略矩形とされ,その周縁部には4つの角部を有している。そして,後述する第1隔壁43に囲まれた領域が発光領域となる。なお,本発明においては,後述する隔壁42に囲まれた領域全体を1つの画素と定義する。この電気光学装置1は,基板10と,この基板10上にTFTなどの能動素子や配線が形成された駆動素子部20と,有機EL薄膜が形成される機能素子部40とから構成される。
・・・(中略)・・・
【0055】
駆動素子部20は,スイッチング用TFT112,駆動用TFT113,その他の素子や配線を含んで構成される。・・・(中略)・・・
【0057】
隔壁42は,所定の領域,すなわち機能層45を形成する際に薄膜材料液が充填される液滴充填領域R_(S)を取り囲むように駆動素子部20上に形成され,その表面が薄膜材料液に対して良好な親液性を有する第1隔壁43と,第1隔壁43上に形成され,かつその表面が薄膜材料液に対して撥液性を有する第2隔壁44とから構成されている。第1隔壁43の開口上部は開口下部よりも広く形成されている。すなわち,第1隔壁43の側面は,基板表面に垂直な方向に対して傾斜部43aを有するように形成されている。同様に,第2隔壁44の開口上部は開口下部よりも広く形成されている。すなわち,第2隔壁44の側面も,基板表面に垂直な方向に対して傾斜部44aを有するように形成されている。
【0058】
また,第1隔壁43の開口上部は,第2隔壁44の開口下部よりも機能層45の面内の中心側に位置している。換言すると,第2隔壁44は上部から見て第1隔壁の平坦面43bが露出するように第1隔壁43上に形成されている。すなわち,図2に示されるように,隔壁42を構成する第1隔壁43と第2隔壁44の断面形状は階段状となっている。
【0059】
また,第1隔壁43は開口部の外周部,すなわち機能層45の外周部に第1隔壁の平坦面43b,43b´を有しており,この平坦面43bは機能層45の角部近傍が略円弧状に形成されている。そして,角部近傍の第1隔壁の平坦面43b´は,直線部(長辺部,短辺部)近傍に形成された第1隔壁の平坦面43bよりも面積が大とされ,親液性の第1隔壁43の面積が広く確保されている。第2隔壁44は,第1隔壁の平坦面43b,43b´の外周に沿って傾斜部44aが立ち上がり,その外周部に平坦な面が形成されている。第1隔壁の角部に形成された略円弧状の第2隔壁の傾斜角は,開口部の直線部(長辺部,短辺部)近傍に形成された第2隔壁の傾斜角と比較して低くなっている。一般に有機樹脂を含む液体から第2隔壁を形成する場合,第2隔壁材料の圧縮応力は直線部分に加わる応力に比べて円弧部に加わる力が強くなる。したがって,開口部の直線部(長辺部,短辺)近傍より,略円弧状に形成された第2隔壁の傾斜角が小さくなる。このようにすることにより,薄膜材料を含む液面と第1隔壁により囲まれた薄膜形成領域との間隔を遠ざけることができる。その結果,薄膜材料液が表面張力により開口部の中央部に集まることが防止できる。
【0060】
この第1隔壁43は,後述する薄膜作製用液体材料と親液性を有し,下地の陽極41との密着性が良く,フォトリソグラフィによるパターニングが容易な絶縁材料から構成されている。このような材料としては,SiO_(2)やTiO_(2)などの無機材料を用いることができる。また,第2隔壁44は,前述の液体材料と撥液性を有し,下地の第1隔壁43との密着性が良く,フォトリソグラフィによるパターニングが容易な絶縁材料から構成されている。このような材料としては,例えばポリイミドやアクリルなどの有機材料を用いることができる。
・・・(中略)・・・
【0082】
次に,機能層形成工程(S6)では,インクジェットによる液滴吐出法を用い,発光層45b,正孔輸送層45aからなる機能層45を,図5-8に示すように形成する。手順は,正孔輸送層45aを構成する材料組成物を液滴充填領域R_(S)内に充填して乾燥させ,図5-9の正孔輸送層45aを形成する。このとき,乾燥後の正孔輸送層45aの膜厚が第1隔壁43の厚み以下となるように,液滴充填領域R_(S)内に充填する薄膜材料液の量を調整しておく。
【0083】
次に発光層45bを構成する材料組成物が含まれた薄膜材料液を,液滴充填領域R_(S)内の正孔輸送層45a上に充填して乾燥させ,図5-10に示すように発光層45bを形成する。このとき上記同様に,乾燥後の機能層45の膜厚が第1隔壁43の厚みと略同等となるように液滴充填領域R_(S)内に充填する薄膜材料液の量を調整しておく。
【0084】
本発明では,前述したように第2隔壁から露出した第1隔壁の平坦面のうち第1隔壁43の開口部の角部,すなわち機能層45の角部近傍を略円弧状とし,平坦面43b´の角部近傍を,開口部の直線(長辺部,短辺部)近傍43bより面積が大きくなるように設計している。そのため,発光材料液は面積が広く確保された略円弧状の第1隔壁平坦面43b´により,開口部の外周側に強く引っ張られながら乾燥するので,薄膜材料液が表面張力により開口部の中央部に集まることが防止される。
【0085】
一般的に,薄膜が液層から固相になる際には液体に圧縮応力が加わる。この圧縮応力は直線部分に加わる応力に比べて円弧部に加わる応力が強くなる。したがって,開口部の直線(長辺部,短辺部)近傍より,開口部の角部近傍の略円弧状とされた第1隔壁の平坦面43b´において強い圧縮応力が薄膜材料液に加わり,薄膜材料液の液滴外縁部のテーパー角が小さくなる。テーパー角が小さくなることにより液面が広範囲に濡れ広がり,薄膜材料液が表面張力により開口部の中央部に集まることが防止される。
その結果,発光層45bは,第1隔壁43に囲まれた領域(第1隔壁43の開口部領域)の角部の隅々まで,全体的に膜厚が均一な状態で形成され,発光層45bの膜厚のばらつきに起因した1つの画素内における発光輝度の不均一,ばらつきを生じることが防止される。
・・・(中略)・・・
【0095】
〔実施例2-1〕
<電気光学装置>
図11及び図12は,本実施例にかかる電気光学装置1の画素領域B(図1)の構造を模式的に示す断面図であり,図11は,図1における機能層45および駆動用TFT113の部分のより詳細な構造を示す断面図である。また,図12は,画素領域A(審決注:誤記であり,正しくは「画素領域B」と認められる。)のうち1つの画素を模式的に示す平面図である。図12に示すように1つの画素は細長い形状を呈し,長手方向の両端が円弧状形状とされる。そして後述する第1隔壁52に囲まれた領域が発光領域とされている。この電気光学装置1は,基板10と,この基板10上にTFTなどの能動素子や配線が形成された駆動素子部20と,有機EL薄膜が形成される機能素子部40とからなる。
【0096】
機能素子部40は,発光層と正孔注入層とからなる機能層45と,機能層45を動作させるための一対の電極41(陽極),46(陰極)と,機能層45を所定の領域に形成するための隔壁51と,機能層45を周囲の雰囲気から遮断するためのシール層47とを備えている。
【0097】
隔壁51は,機能層45を形成する際の液滴充填領域R_(S)を形成し,その表面が薄膜材料液に対して良好な親液性を有する第1隔壁52と,第1隔壁52上に形成され,その表面が薄膜材料液に対して撥液性を有する第2隔壁53とから構成されている。第1隔壁52の開口上部は開口下部よりも広く形成されている。すなわち,第1隔壁52の側面は,基板表面に垂直な方向に対して傾斜部52aを有するように形成されている。同様に,第2隔壁53の上部開口は下部開口よりも広く形成され,第2隔壁53の側面も,基板表面に垂直な方向に対して傾斜53aするように形成されている。
【0098】
また,第1隔壁52の開口上部は,第2隔壁53の開口下部よりも機能層45の面内の中心側に位置している。換言すると,第2隔壁53は上部から見て第1隔壁の平坦面52bが露出するように第1隔壁52上に形成されている。すなわち,図11に示されるように,隔壁51を構成する第1隔壁52と第2隔壁53の断面形状は階段状となっている。
【0099】
また,第1隔壁52は該第1隔壁52の開口部の外周部,すなわち機能層45の外周部に第1隔壁の平坦面52b,52b´を有しており,該第1隔壁の平坦面52bは開口部の長手方向の両端が略半円状に形成されている。ここで,開口部の長手方向の両端近傍の第1隔壁の平坦面52b´は,開口部の直線部(長辺部)近傍に形成された第1隔壁の平坦面52bよりも面積が大とされており,表面が親液性を有する第1隔壁の面積が広く確保されている。そして,第2隔壁53は,第1隔壁の平坦面52b,52b´の外周に沿って傾斜部53aが立ち上がり,その外周部に平坦な面が形成されている。
【0100】
さらには,この第1隔壁の平坦面52b´の幅(第1隔壁52の長手方向の端部と第2隔壁44の下部開口部との距離)L2は,第1隔壁の平坦面52bの幅(第1隔壁52の開口部の長辺部と第2隔壁44の下部開口部との距離)L1よりも長く形成されている。これにより機能層45の略円弧状に形成された第2隔壁の傾斜角が,開口部の直線部(長辺部)の傾斜角と比較して低くなる。そのため有機樹脂を含む液体から第2隔壁を形成する場合,第2隔壁材料の圧縮応力は直線部分に加わる応力に比べて円弧部に加わる応力が強くなり,隔壁傾斜角は開口部の直線部(長辺部)近傍より,両端の略円弧状に形成された第2隔壁が小さくなる。このようにすることにより,薄膜材料を含む液面と第1隔壁により囲まれた薄膜形成領域との間隔を遠ざけることができる。したがって,薄膜材料液が表面張力により開口部の中央部に集まることが防止される。
【0101】
上記画素領域では,機能層45全体の膜厚は第1隔壁52の厚みと略同等の厚みに形成され,正孔輸送層45aの膜厚は第1隔壁の厚み以下にできる。また,発光層45b(機能層45)は,第1隔壁52に囲まれた領域(第1隔壁52の開口部領域)において長手方向の両端部の隅々まで,全体的に膜厚が均一な状態で形成され,発光層45bは,発光領域の中央近傍では膜厚が厚く,周縁部では膜厚が薄いといった膜厚のばらつきはなくなり,,全面において一様の膜厚で形成される。これにより,発光層45bの膜厚のばらつきに起因した画素内における発光輝度の不均一が生じることがない高品質な電気光学装置が実現される。
【0102】
<電気光学装置の製造方法>
次に,本実施例にかかる電気光学装置1の製造方法の一例について説明する。製造方法の基本的な流れは上述した実施例1と同様であるため,実施例1と異なる部分について説明する。
【0103】
第1隔壁形成工程(S3)では,パターニングした画素電極(陽極)41上および第3の層間絶縁膜28上に第1隔壁52となる薄膜として,例えばSiO_(2)膜を形成する。次に,図13-1及び図13-2に示すように,このSiO_(2)膜を,機能層45を形成する開口部が画素電極(陽極)41上の所定の位置に形成されるようにパターニングする。この結果,第1隔壁52は,機能層45の形成領域を囲うように画素電極(陽極)41の周縁部上に乗り上げた状態で形成される。本実施例においては,機能層45を形成するための開口部は,図13-2に示すように細長い形状を呈し,長手方向の両端が円弧状とされる。また,第1隔壁52の開口上部は,開口下部よりも広く形成される。すなわち,第1隔壁52の側面は,図13-1に示すように基板表面に垂直な方向に対して傾斜部52aを有するように形成される。
【0104】
第2隔壁形成工程(S4)では,図13-3及び図13-4に示すように,機能層45の形成領域を囲うように第2隔壁53を形成する。 ここで,第2隔壁53は,上部から見て第1隔壁52の上面部が露出するように,第1隔壁の平坦面52b,52b´を露出させて第1隔壁52上に形成される。そして,第2隔壁53は,第1隔壁52の開口部の長手方向の両端部,すなわち機能層45の長手方向の両端部近傍を略半円状とするようにパターニングして形成する。このように第2隔壁53を形成することにより,開口部の長手方向の両端部近傍の第1隔壁の平坦面52b´は,開口部の直線部(長辺部)近傍の第1隔壁の平坦面52bよりも面積が大とされ,親液性の第1隔壁52の面積を広く確保することができる。
【0105】
そして,本実施例においては,第1隔壁52の開口部長手方向両端における平坦面52b´の幅(第1隔壁52の長手方向の端部と第2隔壁44の開口下部との距離)L2が,第1隔壁52の開口部の直線部(長辺部)におけるの平坦面52bの幅(第1隔壁52の開口部の長辺と第2隔壁44の開口下部との距離)L1よりも長くなるように形成する。L2をL1よりも長くすることにより,開口部の両端部近傍の平坦面52b´の面積を,開口部の直線部の平坦面52bよりも大きくし,親液性の第1隔壁52の面積を広く確保することができる。本実施例においては,開口部の長手方向の両端部が円弧状形状とされているが,この形状が直線状とされる場合も同様である。
【0106】
上述したように本実施例においては,第1隔壁の平坦面のうち第1隔壁52の開口部の長手方向の両端部,すなわち機能層45の長手方向の両端部近傍が略半円状とされることにより第1隔壁の平坦面52b´は開口部の直線部(長辺部)近傍に形成された第1隔壁の平坦面52bよりも面積が大とされ,親液性の第1隔壁52の面積が広く確保されている。これにより,発光層45bの薄膜材料液は,面積が広く確保された略半円状の第1隔壁の平坦面52b´により開口部の外周側に強く引っ張られながら乾燥する。そして,引っ張られながら乾燥することにより,薄膜材料液が表面張力により開口部の中央部に集まることが防止される。
【0107】
一般的に薄膜膜が液層から固相になる際には圧縮応力が加わり,この圧縮応力は直線部分に加わる応力に比べて円弧部に加わる応力が強くなる。したがって,開口部の直線部(長辺部)より,開口部が略半円状とされた第1隔壁の平坦面52b´での液滴の接触角が小さくなり,液滴が広範囲に濡れ広がり,開口部の中央部に集まることが防止される。
その結果,発光層45bは,第1隔壁52に囲まれた領域の隅々まで膜厚が均一な状態で形成され,膜厚のばらつきに起因する1つの画素内における発光輝度の不均一が生じることがない。」

(エ)「【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】図1は,実施例1にかかる電気光学装置の配線構造を示す平面図。
・・・(中略)・・・
【図11】図11は,実施例2にかかる電気光学装置の画素領域の構造を示す断面図。
【図12】図12は,画素領域のうちの1つの画素を模式的に示す平面図。
・・・(中略)・・・
【図13-4】図13-4は,電気光学装置の製造工程を示す平面図。
・・・(中略)・・・
【図1】

・・・(中略)・・・
【図11】

【図12】

・・・(中略)・・・
【図13-4】



イ 引用刊行物1に記載された発明
前記ア(ア)ないし(エ)から,引用刊行物1には,次の発明が記載されていると認められる。

「基板10と,当該基板10上にTFTなどの能動素子や配線が形成された駆動素子部20と,有機EL薄膜が形成される機能素子部40とからなり,
前記駆動素子部20が,スイッチング用TFT112,駆動用TFT113,その他の素子や配線を含んで構成され,
前記機能素子部40が,発光層と正孔注入層とからなる機能層45と,前記機能層45を動作させるための一対の画素電極41及び対向電極46と,前記機能層45を所定の領域に形成するための隔壁51と,前記機能層45を周囲の雰囲気から遮断するためのシール層47とを備える電気光学装置1であって,
複数の走査線101と,走査線101に対して空間を隔てて略直角に交差する方向に延びる複数の信号線102と,信号線102に並列に延びる複数の電源線103とが,それぞれ配線された構成を有し,走査線101と信号線102の各交点に,マトリックス状に画素領域Bが設けられ,
前記画素領域Bのそれぞれには,走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給される前記スイッチング用TFT112と,当該スイッチング用TFT112を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量capと,当該保持容量capによって保持された画素信号がゲート電極に供給される前記駆動用TFT113と,当該駆動用TFT113を介して電源線103から駆動電流が流れ込む前記画素電極41と,当該画素電極41と対になる前記対向電極46と,両者の間に挟み込まれた前記機能層45とが設けられ,これらの画素電極41と対向電極46,および,機能層45によって発光素子部が構成されており,
前記隔壁51は,その表面が薄膜材料液に対して良好な親液性を有するとともに開口部を有し,SiO_(2)膜からなる第1隔壁52と,当該第1隔壁52上に形成され,その表面が薄膜材料液に対して撥液性を有するとともに開口部を有し,有機材料からなる第2隔壁53とから構成され,かつ,前記機能層45を形成する際の液滴充填領域R_(S)を形成しており,
前記第1隔壁52の開口部及び前記第2隔壁53の開口部は,いずれも,長辺部となる直線部と長手方向の両端に位置する円弧状の部分とで構成される細長い形状を呈しており,
前記第1隔壁52の開口上部が開口下部よりも広く形成されて,前記第1隔壁52の側面が基板10表面に垂直な方向に対して傾斜部52aを有し,,前記第2隔壁53の開口上部も開口下部よりも広く形成されて,第2隔壁53の側面も基板10表面に垂直な方向に対して傾斜部53aを有するように形成され,
前記第1隔壁52の開口上部は,前記第2隔壁53の開口下部よりも前記機能層45の面内の中心側に位置していて,上部から見て前記第1隔壁の平坦面が露出するように前記第2隔壁53が前記第1隔壁52上に形成され,
前記第1隔壁52の開口部の円弧状の部分近傍で露出する第1隔壁の平坦面52b´は,前記第1隔壁52の開口部の直線部近傍で露出する第1隔壁の平坦面52bよりも面積が大とされて,表面が親液性を有する第1隔壁の面積が広く確保されており,
前記第1隔壁の平坦面52b´の幅L2は,前記第1隔壁の平坦面52bの幅L1よりも長く形成され,これにより前記第2隔壁53の開口部の円弧状の部分における前記第2隔壁53の傾斜角が直線部近傍における前記第2隔壁53の傾斜角より小さくされており,
前記機能層45は,正孔輸送層を構成する材料組成物をインクジェットによる液滴吐出法を用いて前記液滴充填領域R_(S)内に充填して乾燥させた後,発光層を構成する材料組成物をインクジェットによる液滴吐出法を用いて前記液滴充填領域R_(S)内に充填して乾燥させて,機能層45全体の膜厚が前記第1隔壁52の厚みと略同等の厚みとなるように前記第1隔壁52の開口部に形成されたものであり,
前記第1隔壁52に囲まれた領域が発光領域とされている,
電気光学装置1。」(以下「引用発明」という。)

(2)特開2006-162882号公報
ア 特開2006-162882号公報の記載
前記当審拒絶理由で引用した特開2006-162882号公報(以下「引用刊行物2」という。)は,本願の出願前に頒布された刊行物であって,当該引用刊行物2には次の記載がある(下線は,後述する引用刊行物2記載の技術の認定に特に関係する箇所を示す。)。
(ア)「【請求項4】
基板上にバンクが形成された表示装置用基板であって,
該バンクは,組成が共通でインク溶媒に対する接触角が異なる樹脂領域を有するものであり,かつバンク隅部のインク溶媒に対する接触角が相対的に低い
ことを特徴とする表示装置用基板。
【請求項5】
基板上にバンクが形成された表示装置用基板であって,
該バンクは,組成が共通でドライエッチング速度が異なる樹脂領域を有するものであり,かつバンク隅部のドライエッチング速度が相対的に高い
ことを特徴とする表示装置用基板。
【請求項6】
基板上にバンクが形成された表示装置用基板であって,
該バンクは,組成が共通で重量平均重合度が異なる樹脂領域を有するものであり,かつバンク隅部の重量平均重合度が相対的に小さい
ことを特徴とする表示装置用基板。」

(イ)「【0009】
すなわち,本発明は,基板上にバンクが形成された表示装置用基板であって,(1)上記バンクは,組成が共通でインク溶媒に対する接触角が異なる樹脂層が積層された構造を有するものであり,かつ上層側のインク溶媒に対する接触角が相対的に高い表示装置用基板,(2)上記バンクは,組成が共通でドライエッチング速度が異なる樹脂層が積層された構造を有するものであり,かつ上層側のドライエッチング速度が相対的に遅い表示装置用基板,及び,(3)上記バンクは,組成が共通で重量平均重合度が異なる樹脂層が積層された構造を有するものであり,かつ上層側の重量平均重合度が相対的に大きい表示装置用基板のいずれか,又は,(1)?(3)の形態を組み合わせたものである。なお,本発明の表示装置用基板では,バンクの少なくとも一部が上記(1)?(3)の形態の特徴を有していればよく,その全体が上記(1)?(3)の形態の特徴を有していなくてもよい。上記(1)?(3)の形態は,いずれも上層側を下層側よりも高撥水性にしたバンク構成において実現されるものであり,この場合,バンク上層側の撥水性が高いことにより,液状の機能膜材料がバンクを乗り越えて混合することを防止することができ,また,バンク下層側(テーパ部)の親水性が高いことにより,バンク内の隅部等に未充填領域が発生することを抑制することができる。更に,本発明では,バンクが同一組成の樹脂層の積層体からなり,露光条件等の重合条件の調整等により上層側と下層側とを作り分けることができるので,生産性においても優れている。
なお,上記(1)の形態の表示装置用基板は,上記(2)及び/又は(3)の形態の表示装置用基板に対してCF_(4)等のフッ素系ガスを用いたプラズマ処理を行うことにより得ることができるものである。
【0010】
本発明において,バンク(土手)は,複数の機能膜形成領域同士を隔てる構造物(凸物)であれば特に限定されるものではない。また,上記(1)の形態におけるインク溶媒としては,アルコール系の溶媒,例えばカルビトール系の溶媒が好適に用いられる。更に,上記(2)の形態におけるドライエッチング速度とは,O_(2)ガスを用いたアッシングを行ったときの速度である。
上記(1)の形態において,上層側のインク溶媒に対する接触角は,50°以上であることが好ましく,下層側のインク溶媒に対する接触角は,40°以下であることが好ましい。上層側と下層側とのインク溶媒に対する接触角の差は,10°以上であることが好ましい。また,上記(2)の形態において,上層側に対する下層側のドライエッチング速度の比(下本発明において,バンク(土手)は,複数の機能膜形成領域同士を隔てる構造物(凸部)であれば特に限定されるものではない。また,上記(1)の形態におけるインク溶媒としては,アルコール系の溶媒,例えばカルビトール系の溶媒が好適に用いられる。更に,上記(2)の形態におけるドライエッチング速度層側/上層側)は,1.5以上であることが好ましい。更に,上記(3)の形態において,下層側に対する上層側の重量平均重合度の比(上層側/下層側)は,1.3以上であることが好ましい。
【0011】
本発明はまた,基板上にバンクが形成された表示装置用基板であって,(4)上記バンクは,組成が共通でインク溶媒に対する接触角が異なる樹脂領域を有するものであり,かつバンク隅部のインク溶媒に対する接触角が相対的に低い表示装置用基板,(5)上記バンクは,組成が共通でドライエッチング速度が異なる樹脂領域を有するものであり,かつバンク隅部のドライエッチング速度が相対的に高い表示装置用基板,及び,(6)上記バンクは,組成が共通で重量平均重合度が異なる樹脂領域を有するものであり,かつバンク隅部の重量平均重合度が相対的に小さい表示装置用基板のいずれか,又は,(4)?(6)の形態を組み合わせたものでもある。また,上記(1)?(3)の形態と組み合わせたものであってもよい。なお,上記(4)?(6)の形態におけるバンク隅部とは,例えば,図7に示すように,バンク31が四角形の辺を構成する場合には,四角形の頂点近傍(図7中,点線で囲まれる部分)が該当する。また,本発明の表示装置用基板では,バンク隅部の少なくとも1つが上記(4)?(6)の形態の特徴を有していればよく,その全てが上記(4)?(6)の形態の特徴を有していなくてもよい。上記(4)?(6)の形態は,いずれもバンク隅部をバンクの他の部分よりも高親水性にしたバンク構成において実現されるものであり,この場合,バンク隅部の親水性が高いことにより,バンク内の隅部に未充填領域が発生することを抑制することができる。更に,本発明では,バンクが同一組成の樹脂層からなり,露光条件等の重合条件の調整等によりバンク隅部と他の部分とを作り分けることができるので,生産性においても優れている。
なお,上記(4)の形態の表示装置用基板は,上記(5)及び/又は(6)の形態の表示装置用基板に対してCF_(4)等のフッ素系ガスを用いたプラズマ処理を行うことにより得ることができるものである。
【0012】
上記(4)の形態において,バンク隅部以外の部分のインク溶媒に対する接触角は,50°以上であることが好ましく,バンク隅部のインク溶媒に対する接触角は,40°以下であることが好ましい。バンク隅部以外の部分とバンク隅部とのインク溶媒に対する接触角の差は,10°以上であることが好ましい。また,上記(5)の形態において,バンク隅部以外の部分に対するバンク隅部のドライエッチング速度の比(バンク隅部/バンク隅部以外の部分)は,1.5以上であることが好ましい。更に,上記(6)の形態において,バンク隅部に対するバンク隅部以外の部分の重量平均重合度の比(バンク隅部以外の部分/バンク隅部)は,1.3以上であることが好ましい。
【0013】
本発明では,上記バンクは,光硬化性及び熱硬化性を有する樹脂により形成されたものであることが好ましい。この場合,バンク樹脂材料側からの光照射,現像,焼成(熱硬化),フッ素プラズマ処理という一連の処理により,上記(1)?(3)の形態を実現することができる。さらには,上記バンク樹脂材料側からの光照射に関して,バンク樹脂材料の隅部とバンク樹脂材料の隅部以外の部分との光照射量に差をつけ(光照射量:隅部以外の部分>隅部),現像,焼成(熱硬化),フッ素プラズマ処理という一連の処理を行うことで,上記(1)?(3)の形態と上記(4)?(6)の形態とを組み合わせた形態を実現することができる。
また,上記バンクは,遮光性を有することが好ましい。この場合,バンクを遮光部材として利用することが可能であり,例えば,液晶表示装置等で用いられるカラーフィルタ基板のブラックマトリクスとしてバンクを利用することができる。
【0014】
本発明の表示装置用基板は,更にインク固化物により構成される機能膜がバンク内に設けられたものであることが好ましい。このような形態によれば,本発明の作用効果を充分に奏することが可能である。なお,インク固化物としては,インクジェット装置により吐出可能な液状材料(インク)を乾燥固化させたものであれば特に限定されるものではない。また,機能膜としては,着色材,導電性材料等の機能性材料を含有するものであれば特に限定されず,例えば,カラーフィルタ基板における着色層,有機エレクトロルミネセンス表示装置における発光層や正孔輸送層等の有機層,薄膜トランジスタ(TFT)アレイ基板等の配線基板における配線や画素電極等が挙げられる。中でも,本発明の表示装置用基板は,カラーフィルタ基板であることが好ましく,この場合には,バンク内の隅部等に着色層の未充填領域が発生することを抑制して絵素の周辺領域での光抜けを防止することが可能である。
・・・(中略)・・・
【0016】
本発明は更に,基板上にバンクが形成された表示装置用基板の製造方法であって,上記表示装置用基板の製造方法は,少なくとも,バンク樹脂材料の表面(上層側)を半硬化させる工程と,バンク樹脂材料を本硬化させる工程と,バンク表面に撥水性及び/又は親水性を付与する表面処理を施す工程とを含む表示装置用基板の製造方法でもある。このような本発明の表示装置用基板の製造方法は,上記(1)?(3)の形態の本発明の表示装置用基板を製造するのに好適である。
本発明は更に,基板上にバンクが形成された表示装置用基板の製造方法であって,上記表示装置用基板の製造方法は,少なくとも,光硬化性を有するバンク樹脂材料の隅部以外の部分の硬化度が隅部の硬化度よりも大きくなるように光照射量を変化させて露光する工程(半硬化工程)と,バンク樹脂材料を本硬化させる工程と,バンク表面に撥水性及び/又は親水性を付与する表面処理を施す工程とを含む表示装置用基板の製造方法でもある。このような本発明の表示装置用基板の製造方法は,上記(4)?(6)の形態の本発明の表示装置用基板を製造するのに好適である。
なお,上記半硬化とは,バンク材料樹脂のバンクパターンに対応する部分のうち一部(上層側や隅部)のみを部分的に硬化させる硬化処理のことをいい,上記本硬化とは,バンク樹脂材料のバンクパターンに対応する部分を全体的に硬化させる硬化処理,又は,バンク樹脂材料のバンクパターンに対応する部分のうちで,半硬化されなかった部分を半硬化された部分よりも小さい硬化度で硬化させる硬化処理のことをいう。
これらの本発明の表示装置用基板の製造方法によれば,バンクを構成する樹脂材料(バンク樹脂材料)の半硬化及び本硬化を行った部分と本硬化のみを行った部分とでは,重量平均重合度及びドライエッチング速度等の特性に差が生じ,表面処理を行うことで,親撥水性(接触角)に差が生じることとなる。その結果,液状の機能膜材料がバンクを乗り越えて混合することを防止しつつ,バンク内の隅部等に未充填領域が発生することを抑制することが可能な表示装置用基板を製造することができる。また,本発明の表示装置用基板の製造方法では,半硬化工程,本硬化工程及び表面処理工程が連続する工程でなくてもよく,一般的には,半硬化工程と本硬化工程との間に実際のバンクパターンを形成するための工程(現像工程)が含まれる。
【0017】
本発明では,上記半硬化工程は,マスク越しの光照射によりバンク樹脂材料を半硬化させるものであり,上記本硬化工程は,基板両面からの光照射又は焼成によりバンク樹脂材料を本硬化させるものであることが好ましい。これにより,高い生産性を実現しつつ,バンク内の隅部等での未充填領域の発生が抑制された表示装置用基板を製造することが可能である。また,半硬化工程で照射する光量を調整することで,容易にバンクの親撥水性を制御することが可能である。
【0018】
また,上記表面処理工程は,酸素分圧を20%以下にしたフッ素系ガスを用いたプラズマ処理により行われるものであることが好ましい。これにより,バンクの所望の部分に充分な撥水性を付与することができる。プラズマ処理における酸素分圧は,5%以下であることがより好ましい。プラズマ処理に使用するフッ素系ガスとしては,CF_(4),SF_(6),CHF_(3),C_(2)F_(6)等が好適に用いられる。
更に,本発明の表示装置用基板の製造方法は,インクジェット装置を用いてバンク内にインク材料を塗布する工程を有することが好ましい。これにより,本発明の作用効果を充分に奏することが可能である。
【0019】
本発明はそして,上記表示装置用基板,又は,上記表示装置用基板の製造方法により製造された表示装置用基板を備えてなる液晶表示装置及び有機エレクトロルミネセンス表示装置でもある。本発明の液晶表示装置によれば,カラーフィルタ基板の着色層,薄膜トランジスタ(TFT)アレイ基板の配線や画素電極(ITO)等を高精度に形成し,表示品位を向上させることが可能である。また,本発明の有機エレクトロルミネセンス表示装置によれば,発光層や正孔輸送層等の有機層,配線,電極等を高精度に形成し,表示品位を向上させることが可能である。」

(ウ)「【発明の効果】
【0020】
本発明の表示装置用基板によれば,インク溶媒に対する接触角,ドライエッチング速度及び重量平均重合度の少なくとも1つが異なる領域を有する単一組成の樹脂によりバンクが形成されていることから,インクジェット法等の塗布法による機能膜の形成に際し,液状の機能膜材料がバンクを乗り越えて混合することを防止しつつ,バンク内の隅部に未充填領域が発生することを抑制することができる。更に,露光条件等の重合条件の調整等により領域を作り分けることができるので,生産性においても優れている。」

(エ)「【図面の簡単な説明】
【0043】
・・・(中略)・・・
【図7】バンク隅部を説明する平面模式図である。
・・・(中略)・・・



イ 引用刊行物2に記載された技術的事項
前記ア(ア)ないし(エ)から,引用刊行物2には次の技術的事項が記載されていると認められる。

「表示装置用基板上に形成されたバンク内に発光層や正孔輸送層等の有機機能層を形成する有機エレクトロルミネセンス表示装置において,
インクジェット装置により液状材料(インク)を前記バンク内に吐出し,乾燥固化させて,前記有機機能層を形成する際に,四角形の頂点近傍等のバンク隅部に未充填領域が発生することを抑制するために,
前記バンクについて,光硬化性及び熱硬化性を有する樹脂により樹脂層を形成し,当該樹脂層のバンクパターンに対応する部分のうち前記バンク隅部のみを,マスク越しの光照射により部分的に硬化させてから,バンクパターンに対応する部分を全体的に硬化させ,その後,酸素分圧を20%以下にしたフッ素系ガスを用いたプラズマ処理によりバンク表面に撥水性及び/又は親水性を付与するという方法によって形成することで,バンク隅部をバンク隅部以外の部分よりも高親水性にするという手段を採用すること。」(以下「引用刊行物2記載の技術」という。)

5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「発光領域」,「電気光学装置1」,「第1隔壁52」,「第2隔壁53」及び「機能層45」中の「発光層」は,本願発明の「発光領域」,「電気光学装置」,「第1のバンク」,「第2のバンク」及び「発光層」にそれぞれ相当する。

(2)引用発明では,複数の走査線101と,走査線101に対して空間を隔てて略直角に交差する方向に延びる複数の信号線102の各交点に,マトリックス状に画素領域Bが設けられ,当該各画素領域Bにはそれぞれ発光層を含む機能層45が設けられて,当該機能層45は第1隔壁52の開口部に形成されるところ,当該第1隔壁52の開口部とはすなわち第1隔壁52に囲まれた領域にほかならず,当該第1の隔壁52の開口部が発光領域となるのであるから,複数の発光領域が,画素領域Bと同様に,2次元にマトリックス配列されていることは明らかである。
ここで,2次元にマトリックス配列された前記複数の発光領域のうち,一つの発光領域に注目すると,当該発光領域には,第1隔壁52の開口部の直線部が延びる方向と直交する方向(以下,便宜上「第1隔壁52の開口部の短手方向」という。)に隣接する発光領域と,第1隔壁52の開口部の長手方向(すなわち,直線部が延びる方向に平行な方向)に隣接する発光領域とが存在するのであって,注目した「一つの発光領域」を「第1の発光領域」と,「第1隔壁52の開口部の短手方向に隣接する発光領域」を「第2の発光領域」と,「第1隔壁52の開口部の長手方向に隣接する発光領域」を「第3の発光領域」と,「第1隔壁52の開口部の短手方向」を「第1の方向」と,「第1隔壁52の開口部の長手方向」を「第2の方向」ということができるから,引用発明は,「第1の発光領域,第2の発光領域および第3の発光領域を有し,前記第2の発光領域は,第1の方向において,前記第1の発光領域と隣り合って配置され,前記第3の発光領域は,前記第1の方向とは異なる第2の方向において,前記第1の発光領域と隣り合って配置された」という本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備している。

(3)引用発明においては,第1隔壁52で囲まれた領域が発光領域となるのであって,「第1隔壁52」(第1のバンク)が,前記(2)で述べた「第1の発光領域」,「第2の発光領域」及び「第3の発光領域」を区画しているということができる。
したがって,引用発明は,「前記第1の発光領域,前記第2の発光領域および前記第3の発光領域を区画するように設けられた第1のバンク」を備えるという本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備している。

(4)引用発明の「第2隔壁53」(第2のバンク)は,「第1隔壁52」(第1のバンク)上に形成されているから,本願発明の「第2バンク」と引用発明の「第2隔壁53」は,「第1のバンク上に配置される」点で一致する。

(5)引用発明において,「発光領域」(発光領域)となる第1隔壁52の各開口部には,「発光層」(発光層)と正孔注入層とからなる機能層45がそれぞれ形成されているから,引用発明は,「前記第1のバンクに区画された各々の発光領域に設けられた発光層」を備えるという本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備している。

(6)前記(2)で述べたとおり,引用発明においては,第1隔壁52の開口部が発光領域となるところ,当該第1隔壁52の開口部は,長辺部となる「直線部」と長手方向の両端に位置する「円弧状の部分」とで構成される細長い形状を呈していて,前記「直線部」は「第1隔壁52の開口部の長手方向」(第2の方向)に沿って延び,前記「円弧状の部分」は「第1隔壁52の開口部の短手方向」(第1の方向)に沿って延びているということができ,前記「直線部」を「直線状の第1の辺」と,前記「円弧状の部分」を「第1の辺より短い円弧状である第2の辺」ということができるから,引用発明の各発光領域は,「直線状の第1の辺」(直線部)と「第1の辺より短い円弧状である第2の辺」(円弧状の部分)とを有しており,前記「直線状の第1の辺」は「第2の方向」(第1隔壁52の開口部の長手方向)に沿って延び,前記「第1の辺より短い円弧状である第2の辺」は「第1の方向」(第1隔壁52の開口部の短手方向)に沿って延びているということができる。
したがって,引用発明は,「各々の前記発光領域は,前記第2の方向に沿った直線状の第1の辺と,前記第1の方向に沿った前記第1の辺より短い円弧状である第2の辺と,を有」するという本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備している。

(7)引用発明において,第2隔壁53の開口部以外の箇所には第2隔壁53が存在するところ,前記(2)で述べた「第1の発光領域」(一つの発光領域)となる第1隔壁52の開口部の「直線部」(第1の辺)と,「第2の発光領域」(第1隔壁52の開口部の短手方向に隣接する発光領域)となる第1隔壁52の開口部の「直線部」(第1の辺)との間の「第2隔壁53」(第2のバンク)を「第1の部分」と,「第1の発光領域」(一つの発光領域)となる第1隔壁52の開口部の「円弧状の部分」(第2の辺)と,「第3の発光領域」(第1隔壁52の開口部の長手方向に隣接する発光領域)となる第1隔壁52の開口部の「円弧状の部分」(第2の辺)との間の「第2隔壁53」(第2のバンク)を「第2の部分」ということができる。
したがって,引用発明は,「前記第2のバンクは,前記第1の発光領域の前記第1の辺と前記第2の発光領域の前記第1の辺との間の第1の部分と,前記第1の発光領域の前記第2の辺と前記第3の発光領域の前記第2の辺との間の第2の部分と,を有」するという本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備している。

(8)前記(1)ないし(7)のとおりであるから,本願発明と引用発明とは,
「第1の発光領域,第2の発光領域および第3の発光領域を有し,前記第2の発光領域は,第1の方向において,前記第1の発光領域と隣り合って配置され,前記第3の発光領域は,前記第1の方向とは異なる第2の方向において,前記第1の発光領域と隣り合って配置された電気光学装置であって,
前記第1の発光領域,前記第2の発光領域および前記第3の発光領域を区画するように設けられた第1のバンクと,
前記第1のバンク上に配置された第2のバンクと,
前記第1のバンクに区画された各々の発光領域に設けられた発光層と,を備え,
各々の前記発光領域は,前記第2の方向に沿った直線状の第1の辺と,前記第1の方向に沿った前記第1の辺より短い円弧状である第2の辺と,を有し,
前記第2のバンクは,前記第1の発光領域の前記第1の辺と前記第2の発光領域の前記第1の辺との間の第1の部分と,前記第1の発光領域の前記第2の辺と前記第3の発光領域の前記第2の辺との間の第2の部分と,を有する電気光学装置。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点1:
本願発明では,「第2のバンク」が第1の発光領域及び第3の発光領域と第2の発光領域とを区画するように設けられているのに対して,
引用発明では,発光層を含む機能層45全体の膜厚が第1隔壁52の厚みと略同等の厚みとなるように形成されていて,「第2隔壁53」の開口部は発光領域となっていないから,「第2隔壁53」が第1の発光領域及び第3の発光領域と第2の発光領域とを区画するよう設けられているとはいえない点。

相違点2:
本願発明では,「第2のバンク」の「第1の部分」及び「第2の部分」について,第1の部分の液体に対する撥液性が第2の部分の液体に対する撥液性よりも高いのに対して,
引用発明では,「第2隔壁53」の「第1の部分」及び「第2の部分」について,それらの液体に対する撥液性に違いはない点。

6 判断
(1)相違点1の容易想到性について
ア 例えば,特開2006-278101号公報(【0027】,【0030】ないし【0033】,図9等を参照。),特開2006-253443号公報(【0024】,【0031】,【0032】,【0036】,【0037】,図2等を参照。),特開2003-249377号公報(【0040】,【0044】,【0046】,【0047】,図19等を参照。)等の記載からみて,「基板上に形成された撥液性の低い第1隔壁と,当該第1隔壁上に形成され,当該第1隔壁よりも撥液性の高い第2隔壁とによって囲まれた開口部に,発光層を含む機能層を形成する有機EL装置であって,前記機能層の厚さが第1バンクの厚さよりも大きく,当該機能層が前記第1隔壁と第2隔壁とに接して形成される構成を有する有機EL装置。」(以下「周知技術」という。)は,本願出願前に周知であったと認められる。

イ 引用発明は,機能層45全体の膜厚が前記第1隔壁52の厚みと略同等の厚みとなるように形成されたものであって,当該機能層45が第1隔壁52の開口部のみに形成されたものであるが,前記アからみて,発光層または第1隔壁52の膜厚等を変更することによって,機能層45全体の膜厚を第1隔壁52の厚みよりも大きなものとし,発光層が第1隔壁52の開口部と第2隔壁53の開口部の一部とにわたって形成されるような構成のものとすることは,当業者が適宜行う設計変更というほかない。

ウ 前記イの「機能層45が第1隔壁52の開口部と第2隔壁53の開口部の一部とにわたって形成されるような構成のものとする」という構成の変更を行った引用発明では,発光層が第1隔壁52と第2隔壁53とによって他の発光層と区画されることとなり,当該発光層が形成された領域を発光領域ということができるから,引用発明において前記イの構成の変更を行うことは,引用発明を「第2隔壁53」(第2のバンク)が「第1の発光領域」及び「第3の発光領域」と「第2の発光領域」とを区画するように構成すること,すなわち,引用発明を,相違点1に係る本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることにほかならない。
したがって,引用発明を,相違点1に係る本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者が適宜行う設計変更である。

(2)相違点2の容易想到性について
ア 引用刊行物1の【0003】,【0007】,【0100】,【0106】等の記載から理解できるように,引用発明は,基板上の互いに隣接する画素間に隔壁が設けられ,当該隔壁の開口部に有機EL薄膜が形成された電気光学装置において,長手方向両端に円弧状の部分を有する細長い形状を呈する隔壁の開口部に,インクジェットプロセスにより薄膜材料液滴を充填して有機EL薄膜を形成する際に,薄膜材料液滴が中央近傍に溜まってしまい,長手方向の両端部近傍で有機EL薄膜の膜厚が薄くなり,中央では膜厚が厚くなってしまうことで,1つの画素内における発光輝度の不均一が生じるという問題を解決するために,「第1隔壁52の開口部の円弧状の部分近傍で露出する第1隔壁の平坦面52b´は,第1隔壁52の開口部の直線部近傍で露出する第1隔壁の平坦面52bよりも面積が大とされて,表面が親液性を有する第1隔壁の面積が広く確保されて」いるという構成を採用することで,発光層45bの薄膜材料液が,面積が広く確保された略半円状の第1隔壁の平坦面52b´により開口部の外周側に強く引っ張られながら乾燥するようにし,さらに,「第1隔壁の平坦面52b´の幅L2は,第1隔壁の平坦面52bの幅L1よりも長く形成され,これにより前記第2隔壁44の開口部の円弧状の部分における前記第2隔壁44の傾斜角が直線部近傍における前記第2隔壁44の傾斜角より小さくされて」いるという構成を採用することで,薄膜材料を含む液面と第1隔壁により囲まれた薄膜形成領域との間隔を遠ざけるようにするという手段を採用したものである。
また,引用刊行物1の【0007】,【0053】,【0057】ないし【0059】,【0084】,【0085】等には,引用発明の「長手方向両端に円弧状の部分を有する細長い形状を呈する隔壁の開口部」ばかりでなく,「角部を有する略矩形の隔壁の開口部」における角部についても同様の対策を講じる必要があることが記載されている。
しかるに,前記4(2)イで認定したとおり,引用刊行物2記載の技術は,表示装置用基板上に形成されたバンク内に発光層や正孔輸送層等の有機機能層を形成する有機エレクトロルミネセンス表示装置において,インクジェット装置により液状材料(インク)を前記バンク内に吐出し,乾燥固化させて,前記機能層を形成する際に,四角形の頂点(前述の引用刊行物1に記載された「角部を有する略矩形の隔壁の開口部」における角部に該当する。)近傍等のバンク隅部に未充填領域が発生するという,引用発明が解決しようとする問題と同じ問題を解決するために,「バンクについて,光硬化性及び熱硬化性を有する樹脂により樹脂層を形成し,当該樹脂層のバンクパターンに対応する部分のうち前記バンク隅部のみを,マスク越しの光照射により部分的に硬化させてから,バンクパターンに対応する部分を全体的に硬化させ,その後,酸素分圧を20%以下にしたフッ素系ガスを用いたプラズマ処理によりバンク表面に撥水性及び/又は親水性を付与するという方法によって形成することで,バンク隅部をバンク隅部以外の部分よりも高親水性にする」という手段を採用する技術である。
そうすると,引用発明において,長手方向両端に円弧状の部分を有する細長い形状を呈する隔壁の開口部に,インクジェットプロセスにより薄膜材料液滴を充填して有機EL薄膜を形成する際に,薄膜材料液滴が中央近傍に溜まってしまい,長手方向の両端部近傍で有機EL薄膜の膜厚が薄くなり,中央では膜厚が厚くなってしまうことで,1つの画素内における発光輝度の不均一が生じるという問題を解決する手段として,「第1隔壁52の開口部の円弧状の部分近傍で露出する第1隔壁の平坦面52b´は,第1隔壁52の開口部の直線部近傍で露出する第1隔壁の平坦面52bよりも面積が大とされて,表面が親液性を有する第1隔壁の面積が広く確保されているという構成を採用することで,発光層45bの薄膜材料液が,面積が広く確保された略半円状の第1隔壁の平坦面52b´により開口部の外周側に強く引っ張られながら乾燥するようにし,さらに,第1隔壁の平坦面52b´の幅L2は,第1隔壁の平坦面52bの幅L1よりも長く形成され,これにより前記第2隔壁44の開口部の円弧状の部分における前記第2隔壁44の傾斜角が直線部近傍における前記第2隔壁44の傾斜角より小さくされているという構成を採用することで,薄膜材料を含む液面と第1隔壁により囲まれた薄膜形成領域との間隔を遠ざけるようにするという手段」に代えて(あるいは,当該手段に加えて),引用刊行物2記載の技術における「バンクについて,光硬化性及び熱硬化性を有する樹脂により樹脂層を形成し,当該樹脂層のバンクパターンに対応する部分のうち前記バンク隅部のみを,マスク越しの光照射により部分的に硬化させてから,バンクパターンに対応する部分を全体的に硬化させ,その後,酸素分圧を20%以下にしたフッ素系ガスを用いたプラズマ処理により,バンク表面に撥水性及び/又は親水性を付与するという方法によって形成することで,バンク隅部をバンク隅部以外の部分よりも高親水性にする」という手段を採用し,もって,有機材料からなる第2隔壁53における開口部の長手方向両端の円弧状の部分近傍が直線部近傍よりも高親水性となる構成とすることは,引用刊行物2の記載に基づいて当業者が容易になし得たことである。

イ 前記アの,引用発明において,引用刊行物2記載の技術における問題解決手段を採用して,第2隔壁53における開口部の長手方向両端の円弧状の部分近傍が直線部近傍よりも高親水性となる構成とすることは,「第2のバンク」(第2隔壁53)の「第1の部分」(「直線部」間に位置する部分)の液体に対する撥液性を「第2の部分」(「円弧状の部分」間に位置する部分)の液体に対する撥液性よりも高いものとすること,すなわち,相違点2に係る本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることにほかならない。
したがって,引用発明を,相違点2に係る本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,引用刊行物2記載の技術に基づいて当業者が容易になし得たことである。

(3)効果について
本願発明の奏する効果は,引用刊行物1及び2の記載及び周知技術に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。

(4)まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,当業者が引用発明,引用刊行物2記載の技術及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

7 むすび
本願発明は,当業者が引用発明,引用刊行物2記載の技術及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,当審拒絶
理由によって拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-06 
結審通知日 2014-10-07 
審決日 2014-10-20 
出願番号 特願2007-190437(P2007-190437)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野田 定文東松 修太郎清水 裕勝  
特許庁審判長 西村 仁志
特許庁審判官 鉄 豊郎
清水 康司
発明の名称 電気光学装置および電子機器  
代理人 上柳 雅誉  
代理人 渡辺 和昭  
代理人 宮坂 一彦  
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