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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) F16L
管理番号 1294804
判定請求番号 判定2014-600027  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2015-01-30 
種別 判定 
判定請求日 2014-06-23 
確定日 2014-12-05 
事件の表示 上記当事者間の特許第4522178号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号構造図及びイ号説明書に示す「ひねりジョイント」は、特許第4522178号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の技術的範囲に属する。 
理由 1.請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号構造図及びイ号説明書に示す「ひねりジョイント」(以下「イ号物件」という。)は、特許第4522178号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

2.本件特許発明
本件特許発明は、特許明細書及び図面(以下「本件特許明細書等」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、構成要件を分説すると、以下のとおりである。
「A.二つの交差可能な被取付け面の一方に沿ってその被取付け面に横断面形状で長辺側の外側面が対面する状態で配設される横断面形状が略長方形状の第1ダクト部と、
B.他方の被取付け面に沿ってその被取付け面に横断面形状の長辺側の外側面が対面する状態で配設される横断面形状が略長方形状の第2ダクト部と
C.を連通接続するダクト継手であって、
D.継手本体の両端部に、第1ダクト部に対して嵌合接続可能な略長方形状の第1接続口部と、第2ダクト部に対して嵌合接続可能な略長方形状の第2接続口部とが、両取付け面の交差角度に相当する位相差を付けた状態で一体的に形成されているとともに、
E1.継手本体の外周面のうち、各被取付け面に対面する両外側面が、取付け面に沿う平坦面に形成され、
E2.残りの外側面が、第1接続口部と第2接続口部との位相差を吸収するねじれ状態の曲面に形成されている
F.ダクト継手。」

3.イ号物件
3-1.請求人の主張
請求人は、判定請求書の「(4-2-2)イ号物件の本件特許発明との対応」(判定請求書第5頁11行?第6頁3行)及び判定請求書に添付したイ号物件説明書において、イ号物件を本件特許発明に即して、次のとおり特定している。
「a.二つの交差可能な被取付け面(「第1仕上げ面」及び「第2仕上げ面」)の一方(「第1仕上げ面」)に沿ってその被取付け面(「第1仕上げ面」)に横断面形状で長辺側の外側面が対面する状態で配設される横断面形状が略長方形状の第1ダクト部(「第1配管ダクト」)と、
b.他方の被取付け面(「第2仕上げ面」)に沿ってその被取付け面(「第2仕上げ面」)に横断面形状の長辺側の外側面が対面する状態で配設される横断面形状が略長方形状の第2ダクト部(「第2配管ダクト」)と
c.を連通接続するダクト継手(「ひねりジョイント」)であって、
d.継手本体の両端部に、第1ダクト部(「第1配管ダクト」)に対して嵌合接続可能な略長方形状の第1接続口部(「第1接続ロ」)と、第2ダクト部に対して嵌合接続可能な略長方形状の第2接続口部(「第2接続ロ」)とが、両取付け面の交差角度に相当する位相差を付けた状態で一体的に形成されているとともに、
e1.継手本体の外周面のうち、各被取付け面(「第2仕上げ面」及び「第1仕上げ面」)に対面する両外側面(「取付面部」及び「対向面部」)が、取付け面に沿う微小な段差を有する有段面に形成され、
e2.残りの外側面(「曲面部」)が、第1接続口部(「第1接続口」)と第2接続口部(「第2接続ロ」)との位相差を吸収するねじれ状態の曲面に形成されている
f.ダクト継手(「ひねりジョイント」)。」

3-2.被請求人の主張
被請求人は、請求人の主張する構成e1は適切ではなく、イ号物件の構成は、乙第1号証の1及び乙第1号証の2(別添5-1及び5-2)を参照し、正しくは次のとおりであると主張している(判定請求答弁書第3頁4行?第4頁20行)。

「a.二つの交差可能な被取付け面(「第1仕上げ面」及び「第2仕上げ面」)の一方(「第1仕上げ面」)に沿ってその被取付け面(「第1仕上げ面」)に横断面形状で長辺側の外側面が対面する状態で配設される横断面形状が略長方形状の第1ダクト部(「第1配管ダクト」)と、
b.他方の被取付け面(「第2仕上げ面」)に沿ってその被取付け面(「第2仕上げ面」)に横断面形状の長辺側の外側面が対面する状態で配設される横断面形状が略長方形状の第2ダクト部(「第2配管ダクト」)と
c.を連通接続する全体長65mmのダクト継手(「ひねりジョイント」)であって、
d.長さ35mmの継手本体の両端部に、第1ダクト部(「第1配管ダクト」)に対して嵌合接続可能な縦65mm、横85mm、長さ15mmの略長方形状の第1接続口部(「第1接続口」)と、第2ダクト部に対して嵌合接続可能な縦85mm、横65mm、長さ15mmの略長方形状の第2接続口部(「第2接続口」)とが、両取付け面の交差角度に相当する傾斜角約45°の位相差を付けた状態で一体的に形成されているとともに、
e1.長さ35mmの継手本体の外周面のうち、各被取付け面(「第2仕上げ面」及び「第1仕上げ面」)に対面する両外側面(「取付面部」及び「対向面部」)が、最大高さが約3.5mmの、第1ダクト部、及び、第2ダクト部に接続される第3ダクト部を被取付け面に対向させて配設する際に、第1ダクト部及び第3ダクト部を弾性変形させて押し広げるための空間を形成するための段差部としてそれぞれ形成され、
段差部の突出側(取り付けた際に壁面に当接する側)の最大長さは20mmで、
段差部の陥没側(取り付けた際に壁面から浮き上がる側)の最小長さは15mmであり、
両側に第1接続口部、第2接続口部がそれぞれ存在して、
段差部の突出側を被取付け面に当接させると、段差部の陥没側と被取付け面との間、さらに、第1ダクト部と被取付け面との間、及び、第3ダクト部と被取付け面と、の間に間隙部が形成され、
e2.残りの外側面(「曲面部」)が、第1接続口部(「第1接続口」)と第2接続口部(「第2接続口」)との位相差を吸収するねじれ状態の曲面に形成されている
f.ダクト継手(「ひねりジョイント」)。」

3-3.イ号物件の特定
イ号物件の特定について、上記のとおり、特に構成要件e1において、当事者間に争いがあるので、当審において、イ号構造図(別添3-1及び3-2)、イ号参考図(別添4)及びイ号参考写真(別添2)に開示された事項に基づいて次のとおり特定する。
「a.二つの交差可能な仕上げ面の一方に沿ってその仕上げ面に横断面形状で長辺側の外側面が対面する状態で配設される横断面形状が略長方形状の第1配管ダクトと、
b.他方の仕上げ面に沿ってその仕上げ面に横断面形状の長辺側の外側面が対面する状態で配設される横断面形状が略長方形状の第2配管ダクトと
c.を連通接続するひねりジョイントであって、
d.継手本体の両端部に、第1配管ダクトに対して嵌合接続可能な略長方形状の第1接続口と、第2配管ダクトに対して嵌合接続可能な略長方形状の第2接続口とが、両仕上げ面の交差角度に相当する位相差を付けた状態で一体的に形成されているとともに、
e1.継手本体の外周面のうち、各仕上げ面に対面する両外側面が、仕上げ面に沿う平坦面及びその平坦面と段差部を介して仕上げ面から浮き上がる面により形成され、
e2.残りの外側面が、第1接続口と第2接続口との位相差を吸収するねじれ状態の曲面に形成されている
f.ひねりジョイント。」

4.対比・判断
本件特許発明とイ号物件とを対比すると、
イ号物件の「二つの交差可能な仕上げ面」、「第1配管ダクト」、「第2配管ダクト」、「第1接続口」及び「第2接続口」は、それぞれ本件特許発明の「二つの交差可能な被取付け面」、「第1ダクト部」、「第2ダクト部」、「第1接続口部」及び「第2接続口部」に相当し、また、イ号物件の「ひねりジョイント」は、「第1配管ダクト」と「第2配管ダクト」とを接続するものであるから、本件特許発明の「ダクト継手」に相当する。
よって、イ号物件の構成a?d、e2及びfが、それぞれ本件特許発明の構成要件A?D、E2及びFを充足していることは明らかである。

次に、本件特許発明の構成要件E1(「継手本体の外周面のうち、各被取付け面に対面する両外側面が、取付け面に沿う平坦面に形成され」ていること)について検討すると、本件特許明細書等には、構成要件E1に関連して、段落【0022】に「このダクト継手Aは、図1?図7に示すように、・・・継手本体A1の外周面のうち、各被取付け面B1,C1に対面する両外側面10C,10Dが、取付け面に沿う平坦面に形成され」と記載され、また、図6及び7には、「ダクト継手と被取付け面との関係を示す説明図」として、「両外側面10C,10D」を「各被取付け面B1,C1」に密着させて、「ダクト継手」を「各被取付け面B1,C1」に対して配設されていることが示されている。
そして、一般的に被取付け面は平坦に形成されているものであって、「ダクト継手」の取付け作業は、その平坦に形成された被取付け面への配設であることを考慮すれば、本件特許発明の「各被取付け面に対面する両外側面が、取付け面に沿う平坦面に形成され」ていることは、当該「両外側面」を「各被取付け面」に対して密着させて、「ダクト継手」を「各被取付け面」に対して安定して配設できるという技術上の意義を有するものと認められる。
また、図6及び7には、「外側面10C」と「外側面10D」との接続部にR部が形成され、当該R部に対応した面が各被取付け面から浮き上がっていることが示され、さらに、本件特許明細書等には、「両外側面」は、その全ての範囲で「平坦面」に形成されている必要がある旨の記載または示唆はない。
そうすると、本件特許発明において、両外側面に形成された「平坦面」は、「両外側面」を「各被取付け面」に密着させて、「ダクト継手」を「各被取付け面」に対して安定して配設できる程度の面積は必要ではあるが、「両外側面」は、その全ての範囲で「平坦面」に形成されている必要はなく、設計上または他の課題を解決するために段差部を有することを排除しないものと解するのが妥当である。
そして、イ号構造図の図3(別添3-2)、イ号参考図(別添4)及びイ号参考写真(別添2)からみて、イ号物件の各仕上げ面に対面する外側面に形成された「平坦面」は、「両外側面」を「各仕上げ面」に密着させて、「ひねりジョイント」を「各仕上げ面」に対して安定して配設できる程度の面積を有するものと認められることより、イ号物件の「各仕上げ面に対面する両外側面」は、本件特許発明でいう「平坦面に形成され」ているものと認められる。
以上のことから、イ号物件の構成e1は、本件特許発明の構成要件E1を充足しているということができる。

なお、被請求人は判定請求答弁書において、
「本件特許発明では、『(両)外側面』を平坦面に形成することで、継手本体の外側面に余計な段差等のない見栄えのよい形状としたり、継手本体と被取付け面とを密着させて配設したりして、『体裁のよいダクト配管状態を形成する』目的を達成し(段落[0004])、また、継手本体と被取付け面との全面で密着させて『継手本体の外側面のうちの各被取付け面に沿う平坦面に形成された外側面による配設時の良好な作業性や配設状態での安定性を得』る(平成22年3月16日付け『意見書』参照)ことを実現するものである」(第13頁7?13行)、
「一方、イ号物件は、上述した通り、長さ35mmの継手本体に対し、段差部の高さが約3.5mmに形成されている(乙第1号証の1、乙第1号証の2参照)。このような段差部が『外側面』に設けられていることにより、被取付け面に、イ号物件の外側面の、段差部が設けられた面を載置させると、イ号物件には段差部を基準にして前後方向にぐらつきが生じる。また、被取付け面に継手本体を設置した後も、段差部分が被取付け面に対する間隙部となって残るため、本件特許発明に比べると体裁も劣ったものとなる。」(第13頁15?21行)及び
「つまり、イ号物件は、段差部を設けたことによって、本件特許発明と同様の効果を奏することはできなくなっている。その一方で、イ号物件は、段差部を設けたことによって、『継手本体を被取付け面に取り付ける際に継手本体を弾性変形させて押し広げるための空間を形成する』という、本件特許発明にはない、イ号物件特有の効果を奏することができるようになっている。」(第13頁22行?第14頁2行)と効果に係る主張をしている。
しかし、本件特許明細書等において不体裁とされるのは、「ボックス状の継手本体に、T字状配置の三方向に、配管ダクトの配管接続口が形成され」た構成(本件特許明細書等の段落【0002】?【0004】)において、使用しない配管接続口を閉塞蓋で閉塞することに対してであって、それは、閉塞蓋を無くし、残りの外側面をねじれ状態の曲面に形成すること(構成要件E2)により解決されるものである。
また、被請求人は、上記の平成22年3月16日付け意見書において、本件特許発明の作用・効果に関して、「継手本体の両端部に、第1ダクト部に対して嵌合接続可能な略長方形状の第1接続口部と、略長方形状の第2接続口部とを、両取付け面の交差角度に相当する位相差を付けた状態で一体的に形成することで、二つの交差可能な被取付け面の各々に横断面形状で長辺側の外側面が対面する状態で配設される両ダクト部を、別途の部材を用いることなく容易に接続できるようにし、しかも、継手本体の外周面のうち、各被取付け面に対面する両外側面を取付け面に沿う平坦面に形成し、残りの外側面を略長方形状の第1接続口部と略長方形状の第2接続口部との位相差を吸収するねじれ状態の曲面に形成することで、継手本体の外側面のうちの各被取付け面に沿う平坦面に形成された外側面による配設時の良好な作業性や配設状態での安定性を得ながらも、継手本体の外側面のうち『ねじれ状態』の曲面に形成された外側面によって継手本体の両端部に両取付け面の交差角度に相当する位相差を付けた状態で両接続口部を一体的に形成することによる捩れた関係を体裁良く解消する。」(意見書第2頁7?18行)と意見を述べているところ、その意見は、継手本体と被取付け面が「全面で密着」させることをもって良好な作業性や配設状態での安定性が得られるものであるとまでいうものではない。そして、「平坦面」の設けられる範囲は、前記「4.対比・判断」の項で述べたとおりであるから、上記被請求人の主張は採用できない

5.むすび
以上のとおり、イ号物件の構成は、本件特許発明の構成要件を充足するから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
(別添1)

(別添2-1)

(別添2-2)

(別添3-1)

(別添3-2)

(別添4)

(別添5-1)

(別添5-2)
 
判定日 2014-11-25 
出願番号 特願2004-211580(P2004-211580)
審決分類 P 1 2・ 1- YA (F16L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 正浩  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 出口 昌哉
平田 信勝
登録日 2010-06-04 
登録番号 特許第4522178号(P4522178)
発明の名称 ダクト継手  
代理人 石井 明夫  
代理人 特許業務法人R&C  
代理人 佐野 弘  

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