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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正しない H04L
審判 訂正 判示事項別分類コード:857 訂正しない H04L
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正しない H04L
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正しない H04L
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正しない H04L
管理番号 1295621
審判番号 訂正2014-390095  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2014-07-18 
確定日 2014-12-22 
事件の表示 特許第5432999号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件審判に係る出願(以下,「本願」という。)は,2010年6月23日(国内優先権基礎出願に基づく国内優先権の主張2009年6月23日)を国際出願日とする出願であって,平成23年12月21日付けで審査請求がなされ,平成25年5月13日付けで拒絶理由通知(平成25年5月21日発送)がなされ,これに対して平成25年7月22日付けで意見書が提出されると共に同日付けで手続補正がなされ,平成25年8月7日付けで拒絶理由通知(平成25年8月20日発送)がなされ,この拒絶理由通知において,「平成25年7月22日付け手続補正の本旨が,同日付け意見書に記載された『願書に最初に添付した特許請求の範囲のうち,請求項3-5に係る発明の内容を,新たな請求項1-3に係る発明とする補正を致しました。』であるならば,当該手続補正により補正された請求項2の末尾の「請求項1記載の暗号鍵配布システム。」は「暗号鍵配布システム。」の誤記であり,当該手続補正により補正された請求項3の末尾の「暗号鍵配布システム。」は「請求項2記載の暗号鍵配布システム。」の誤記であるといえる。当該誤記の訂正を目的とする補正を検討されたい。」との補正の示唆がなされた。
これに対して平成25年10月21日付けで意見書が提出されると共に同日付けで手続補正がなされ,この手続補正において,請求項3のみが補正され,平成25年11月7日付けで特許査定(平成25年11月12日謄本送達)がなされ,平成25年12月13日に特許第5432999号としての設定の登録がなされたものである。
そして,平成26年7月18日付けで「特許第5432999号の明細書,特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書,特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することを認める,との審決を求める。」ことを趣旨として,本件審判請求がなされ,平成26年8月26日付けで訂正拒絶理由通知(平成26年8月29日発送)がなされ,これに対して平成26年9月29日付けで意見書が提出された。


第2.本件審判請求
1.訂正事項
本件審判において請求された訂正事項は,以下に示すとおりのものである。

<訂正事項1>
特許請求の範囲の請求項2に「ことを特徴とする請求項1記載の暗号鍵配布システム。」とあるのを,「ことを特徴とする暗号鍵配布システム。」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する)。

2.特許請求の範囲
(1) 平成25年12月13日に特許第5432999号としての設定の登録がなされた際の特許請求の範囲は,以下に示すとおりのものである。(以下,この請求項を「訂正前の請求項」という。)

「【請求項1】
第1ノードと,
第2ノードと,
上記第1ノードと上記第2ノードとの間の暗号化通信に使用されるセッション鍵を生成する認証サーバと,を備え,
上記第1ノードと上記認証サーバとは,上記第1ノードと上記認証サーバとの間の暗号化通信に使用される第1秘密鍵を保持するように構成され,
上記第2ノードと上記認証サーバとは,上記第2ノードと上記認証サーバとの間の暗号化通信に使用される第2秘密鍵を保持するように構成され,
上記第1ノードは,上記セッション鍵の発行を上記認証サーバに要求するにあたっては,第1ノンスを生成して上記認証サーバに送信するように構成され,
上記第2ノードは,上記セッション鍵の発行を上記認証サーバに要求するにあたっては,第2ノンスを生成して上記認証サーバに送信するように構成され,
上記認証サーバは,
上記第1ノンスと上記第2ノンスとを受け取ると上記セッション鍵を新たに生成し,
上記受け取った第1ノンスと上記新たに生成されたセッション鍵と所定の第1付加情報とを含む第1メッセージと上記第1秘密鍵とを用いて第1メッセージ認証コードの値を計算し,
上記受け取った第1ノンスと上記新たに生成されたセッション鍵と上記第1付加情報とを上記第1秘密鍵を用いて暗号化して第1暗号文を作成し,
上記第1暗号文と上記第1メッセージ認証コードの値とを上記第1ノードに送信し,
上記受け取った第2ノンスと上記新たに生成されたセッション鍵と所定の第2付加情報とを含む第2メッセージと上記第2秘密鍵とを用いて第2メッセージ認証コードの値を計算し,
上記受け取った第2ノンスと上記新たに生成されたセッション鍵と上記第2付加情報とを上記第2秘密鍵を用いて暗号化して第2暗号文を作成し,
上記第2暗号文と上記第2メッセージ認証コードの値とを上記第2ノードに送信するように構成され,
上記第1ノードは,
上記第1暗号文および上記第1メッセージ認証コードの値を受け取ると,上記第1秘密鍵を用いて上記第1暗号文を復号して上記セッション鍵と上記第1付加情報とを取得し,
上記第1ノードが記憶する上記第1ノンスと,上記第1暗号文を復号して得られた上記セッション鍵および上記第1付加情報と,上記第1秘密鍵とを用いて上記第1メッセージ認証コードの値を計算し,
上記第1ノードが計算した上記第1メッセージ認証コードの値が上記認証サーバから受け取った上記第1メッセージ認証コードの値に一致するか否かを判定することで上記認証サーバから受け取った上記セッション鍵の認証を行うように構成され,
上記第2ノードは,
上記第2暗号文および上記第2メッセージ認証コードの値を受け取ると,上記第2秘密鍵を用いて上記第2暗号文を復号して上記セッション鍵と上記第2付加情報とを取得し,
上記第2ノードが記憶する上記第2ノンスと,上記第2暗号文を復号して得られた上記セッション鍵および上記第2付加情報と,上記第2秘密鍵とを用いて上記第2メッセージ認証コードの値を計算し,
上記第2ノードが計算した上記第2メッセージ認証コードの値が上記認証サーバから受け取った上記第2メッセージ認証コードの値に一致するか否かを判定することで上記認証サーバから受け取った上記セッション鍵の認証を行うように構成され,
上記第1付加情報および上記第2付加情報は,アクセス制御の許可情報であって,
上記認証サーバは,
上記第1ノードまたは上記第2ノードからアクセス制御の要求情報を受け取ると,受け取った上記アクセス制御の要求情報とあらかじめ登録されたアクセス制御の登録情報とを比較し,上記受け取ったアクセス制御の要求情報が上記アクセス制御の登録情報に含まれていない場合,上記アクセス制御の登録情報を上記アクセス制御の許可情報として用いるように構成される
ことを特徴とする暗号鍵配布システム。
【請求項2】
第1ノードと,
第2ノードと,
上記第1ノードと上記第2ノードとの間の暗号化通信に使用されるセッション鍵を生成する認証サーバと,を備え,
上記第1ノードと上記認証サーバとは,上記第1ノードと上記認証サーバとの間の暗号化通信に使用される第1秘密鍵を保持するように構成され,
上記第2ノードと上記認証サーバとは,上記第2ノードと上記認証サーバとの間の暗号化通信に使用される第2秘密鍵を保持するように構成され,
上記第1ノードは,上記セッション鍵の発行を上記認証サーバに要求するにあたっては,第1ノンスを生成して上記認証サーバに送信するように構成され,
上記第2ノードは,上記セッション鍵の発行を上記認証サーバに要求するにあたっては,第2ノンスを生成して上記認証サーバに送信するように構成され,
上記認証サーバは,
上記第1ノンスと上記第2ノンスとを受け取ると上記セッション鍵を新たに生成し,
上記受け取った第1ノンスと上記新たに生成されたセッション鍵と所定の第1付加情報とを含む第1メッセージと上記第1秘密鍵とを用いて第1メッセージ認証コードの値を計算し,
上記受け取った第1ノンスと上記新たに生成されたセッション鍵と上記第1付加情報とを上記第1秘密鍵を用いて暗号化して第1暗号文を作成し,
上記第1暗号文と上記第1メッセージ認証コードの値とを上記第1ノードに送信し,
上記受け取った第2ノンスと上記新たに生成されたセッション鍵と所定の第2付加情報とを含む第2メッセージと上記第2秘密鍵とを用いて第2メッセージ認証コードの値を計算し,
上記受け取った第2ノンスと上記新たに生成されたセッション鍵と上記第2付加情報とを上記第2秘密鍵を用いて暗号化して第2暗号文を作成し,
上記第2暗号文と上記第2メッセージ認証コードの値とを上記第2ノードに送信するように構成され,
上記第1ノードは,
上記第1暗号文および上記第1メッセージ認証コードの値を受け取ると,上記第1秘密鍵を用いて上記第1暗号文を復号して上記セッション鍵と上記第1付加情報とを取得し,
上記第1ノードが記憶する上記第1ノンスと,上記第1暗号文を復号して得られた上記セッション鍵および上記第1付加情報と,上記第1秘密鍵とを用いて上記第1メッセージ認証コードの値を計算し,
上記第1ノードが計算した上記第1メッセージ認証コードの値が上記認証サーバから受け取った上記第1メッセージ認証コードの値に一致するか否かを判定することで上記認証サーバから受け取った上記セッション鍵の認証を行うように構成され,
上記第2ノードは,
上記第2暗号文および上記第2メッセージ認証コードの値を受け取ると,上記第2秘密鍵を用いて上記第2暗号文を復号して上記セッション鍵と上記第2付加情報とを取得し,
上記第2ノードが記憶する上記第2ノンスと,上記第2暗号文を復号して得られた上記セッション鍵および上記第2付加情報と,上記第2秘密鍵とを用いて上記第2メッセージ認証コードの値を計算し,
上記第2ノードが計算した上記第2メッセージ認証コードの値が上記認証サーバから受け取った上記第2メッセージ認証コードの値に一致するか否かを判定することで上記認証サーバから受け取った上記セッション鍵の認証を行うように構成され,
上記第1付加情報および上記第2付加情報は,アクセス制御の許可情報であって,
上記第1ノードと上記第2ノードとの間の通信を中継するプロキシノードを有し,
上記認証サーバは,上記プロキシノードに上記アクセス制御の許可情報を送信するように構成され,
上記プロキシノードは,上記認証サーバから受け取った上記アクセス制御の許可情報に基づいて上記第1ノードと上記第2ノードとの間の通信を中継するように構成される
ことを特徴とする請求項1記載の暗号鍵配布システム。
【請求項3】
上記第1ノードおよび上記第2ノードにはグループ識別子が付与され,
上記第1付加情報および上記第2付加情報は,グループ識別子を含み,
上記プロキシノードは,上記グループ識別子を用いてアクセス制御を行うように構成される
ことを特徴とする請求項2記載の暗号鍵配布システム。」

(2) 本件審判請求書に添付された特許請求の範囲は,以下に示すとおりのものである。(以下,この請求項を「訂正後の請求項」という。当審注:下線は請求人が付与したものである。)

「【請求項1】
第1ノードと,
第2ノードと,
上記第1ノードと上記第2ノードとの間の暗号化通信に使用されるセッション鍵を生成する認証サーバと,を備え,
上記第1ノードと上記認証サーバとは,上記第1ノードと上記認証サーバとの間の暗号化通信に使用される第1秘密鍵を保持するように構成され,
上記第2ノードと上記認証サーバとは,上記第2ノードと上記認証サーバとの間の暗号化通信に使用される第2秘密鍵を保持するように構成され,
上記第1ノードは,上記セッション鍵の発行を上記認証サーバに要求するにあたっては,第1ノンスを生成して上記認証サーバに送信するように構成され,
上記第2ノードは,上記セッション鍵の発行を上記認証サーバに要求するにあたっては,第2ノンスを生成して上記認証サーバに送信するように構成され,
上記認証サーバは,
上記第1ノンスと上記第2ノンスとを受け取ると上記セッション鍵を新たに生成し,
上記受け取った第1ノンスと上記新たに生成されたセッション鍵と所定の第1付加情報とを含む第1メッセージと上記第1秘密鍵とを用いて第1メッセージ認証コードの値を計算し,
上記受け取った第1ノンスと上記新たに生成されたセッション鍵と上記第1付加情報とを上記第1秘密鍵を用いて暗号化して第1暗号文を作成し,
上記第1暗号文と上記第1メッセージ認証コードの値とを上記第1ノードに送信し,
上記受け取った第2ノンスと上記新たに生成されたセッション鍵と所定の第2付加情報とを含む第2メッセージと上記第2秘密鍵とを用いて第2メッセージ認証コードの値を計算し,
上記受け取った第2ノンスと上記新たに生成されたセッション鍵と上記第2付加情報とを上記第2秘密鍵を用いて暗号化して第2暗号文を作成し,
上記第2暗号文と上記第2メッセージ認証コードの値とを上記第2ノードに送信するように構成され,
上記第1ノードは,
上記第1暗号文および上記第1メッセージ認証コードの値を受け取ると,上記第1秘密鍵を用いて上記第1暗号文を復号して上記セッション鍵と上記第1付加情報とを取得し,
上記第1ノードが記憶する上記第1ノンスと,上記第1暗号文を復号して得られた上記セッション鍵および上記第1付加情報と,上記第1秘密鍵とを用いて上記第1メッセージ認証コードの値を計算し,
上記第1ノードが計算した上記第1メッセージ認証コードの値が上記認証サーバから受け取った上記第1メッセージ認証コードの値に一致するか否かを判定することで上記認証サーバから受け取った上記セッション鍵の認証を行うように構成され,
上記第2ノードは,
上記第2暗号文および上記第2メッセージ認証コードの値を受け取ると,上記第2秘密鍵を用いて上記第2暗号文を復号して上記セッション鍵と上記第2付加情報とを取得し,
上記第2ノードが記憶する上記第2ノンスと,上記第2暗号文を復号して得られた上記セッション鍵および上記第2付加情報と,上記第2秘密鍵とを用いて上記第2メッセージ認証コードの値を計算し,
上記第2ノードが計算した上記第2メッセージ認証コードの値が上記認証サーバから受け取った上記第2メッセージ認証コードの値に一致するか否かを判定することで上記認証サーバから受け取った上記セッション鍵の認証を行うように構成され,
上記第1付加情報および上記第2付加情報は,アクセス制御の許可情報であって,
上記認証サーバは,
上記第1ノードまたは上記第2ノードからアクセス制御の要求情報を受け取ると,受け取った上記アクセス制御の要求情報とあらかじめ登録されたアクセス制御の登録情報とを比較し,上記受け取ったアクセス制御の要求情報が上記アクセス制御の登録情報に含まれていない場合,上記アクセス制御の登録情報を上記アクセス制御の許可情報として用いるように構成される
ことを特徴とする暗号鍵配布システム。
【請求項2】
第1ノードと,
第2ノードと,
上記第1ノードと上記第2ノードとの間の暗号化通信に使用されるセッション鍵を生成する認証サーバと,を備え,
上記第1ノードと上記認証サーバとは,上記第1ノードと上記認証サーバとの間の暗号化通信に使用される第1秘密鍵を保持するように構成され,
上記第2ノードと上記認証サーバとは,上記第2ノードと上記認証サーバとの間の暗号化通信に使用される第2秘密鍵を保持するように構成され,
上記第1ノードは,上記セッション鍵の発行を上記認証サーバに要求するにあたっては,第1ノンスを生成して上記認証サーバに送信するように構成され,
上記第2ノードは,上記セッション鍵の発行を上記認証サーバに要求するにあたっては,第2ノンスを生成して上記認証サーバに送信するように構成され,
上記認証サーバは,
上記第1ノンスと上記第2ノンスとを受け取ると上記セッション鍵を新たに生成し,
上記受け取った第1ノンスと上記新たに生成されたセッション鍵と所定の第1付加情報とを含む第1メッセージと上記第1秘密鍵とを用いて第1メッセージ認証コードの値を計算し,
上記受け取った第1ノンスと上記新たに生成されたセッション鍵と上記第1付加情報とを上記第1秘密鍵を用いて暗号化して第1暗号文を作成し,
上記第1暗号文と上記第1メッセージ認証コードの値とを上記第1ノードに送信し,
上記受け取った第2ノンスと上記新たに生成されたセッション鍵と所定の第2付加情報とを含む第2メッセージと上記第2秘密鍵とを用いて第2メッセージ認証コードの値を計算し,
上記受け取った第2ノンスと上記新たに生成されたセッション鍵と上記第2付加情報とを上記第2秘密鍵を用いて暗号化して第2暗号文を作成し,
上記第2暗号文と上記第2メッセージ認証コードの値とを上記第2ノードに送信するように構成され,
上記第1ノードは,
上記第1暗号文および上記第1メッセージ認証コードの値を受け取ると,上記第1秘密鍵を用いて上記第1暗号文を復号して上記セッション鍵と上記第1付加情報とを取得し,
上記第1ノードが記憶する上記第1ノンスと,上記第1暗号文を復号して得られた上記セッション鍵および上記第1付加情報と,上記第1秘密鍵とを用いて上記第1メッセージ認証コードの値を計算し,
上記第1ノードが計算した上記第1メッセージ認証コードの値が上記認証サーバから受け取った上記第1メッセージ認証コードの値に一致するか否かを判定することで上記認証サーバから受け取った上記セッション鍵の認証を行うように構成され,
上記第2ノードは,
上記第2暗号文および上記第2メッセージ認証コードの値を受け取ると,上記第2秘密鍵を用いて上記第2暗号文を復号して上記セッション鍵と上記第2付加情報とを取得し,
上記第2ノードが記憶する上記第2ノンスと,上記第2暗号文を復号して得られた上記セッション鍵および上記第2付加情報と,上記第2秘密鍵とを用いて上記第2メッセージ認証コードの値を計算し,
上記第2ノードが計算した上記第2メッセージ認証コードの値が上記認証サーバから受け取った上記第2メッセージ認証コードの値に一致するか否かを判定することで上記認証サーバから受け取った上記セッション鍵の認証を行うように構成され,
上記第1付加情報および上記第2付加情報は,アクセス制御の許可情報であって,
上記第1ノードと上記第2ノードとの間の通信を中継するプロキシノードを有し,
上記認証サーバは,上記プロキシノードに上記アクセス制御の許可情報を送信するように構成され,
上記プロキシノードは,上記認証サーバから受け取った上記アクセス制御の許可情報に基づいて上記第1ノードと上記第2ノードとの間の通信を中継するように構成される
ことを特徴とする暗号鍵配布システム。
【請求項3】
上記第1ノードおよび上記第2ノードにはグループ識別子が付与され,
上記第1付加情報および上記第2付加情報は,グループ識別子を含み,
上記プロキシノードは,上記グループ識別子を用いてアクセス制御を行うように構成される
ことを特徴とする請求項2記載の暗号鍵配布システム。」


第3.訂正拒絶理由及び請求人の主張
1.訂正拒絶理由
平成26年8月26日付け訂正拒絶理由(以下,単に「訂正拒絶理由」という。)の内容は,概略以下のとおりである。

「2. 訂正の目的
(1) 誤記又は誤訳の訂正
ア. 請求人は,審判請求書において,本件訂正は,誤記の訂正を目的とするものである旨を主張しているから,以下において,本件訂正が,誤記の訂正を目的とするものであるかを検討する。

イ. 訂正前の請求項2は,その字句のとおりに記載を解釈すると,請求項1に係る発明が備える,「第1ノードと,第2ノードと,上記第1ノードと上記第2ノードとの間の暗号化通信に使用されるセッション鍵を生成する認証サーバと,を備え,・・・(中略)・・・上記第1付加情報および上記第2付加情報は,アクセス制御の許可情報であって」との発明特定事項(以下,<発明特定事項1-1>という。)と,「上記認証サーバは,上記第1ノードまたは上記第2ノードからアクセス制御の要求情報を受け取ると,受け取った上記アクセス制御の要求情報とあらかじめ登録されたアクセス制御の登録情報とを比較し,上記受け取ったアクセス制御の要求情報が上記アクセス制御の登録情報に含まれていない場合,上記アクセス制御の登録情報を上記アクセス制御の許可情報として用いるように構成される」との発明特定事項(以下,<発明特定事項1-2>という。)に加えて,「第1ノードと,第2ノードと,上記第1ノードと上記第2ノードとの間の暗号化通信に使用されるセッション鍵を生成する認証サーバと,を備え,・・・(中略)・・・上記第1付加情報および上記第2付加情報は,アクセス制御の許可情報であって」との発明特定事項(以下,<発明特定事項2-1>という。)と,「上記第1ノードと上記第2ノードとの間の通信を中継するプロキシノードを有し,上記認証サーバは,上記プロキシノードに上記アクセス制御の許可情報を送信するように構成され,上記プロキシノードは,上記認証サーバから受け取った上記アクセス制御の許可情報に基づいて上記第1ノードと上記第2ノードとの間の通信を中継するように構成される」との発明特定事項(以下,<発明特定事項2-2>という。)を備えるものであるといえる。
そして,<発明特定事項1-1>と<発明特定事項2-1>が,同一であることを考慮すると,訂正前の請求項2に係る発明は,実質的には,<発明特定事項1-1>,<発明特定事項1-2>,及び<発明特定事項2-2>からなるものであるといえる。

ウ. 一方,本願明細書には,下記の事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)
<明細書記載事項1>
「【0151】
(実施形態2)
本実施形態の暗号鍵配布システムは,図5に示すように,主に認証サーバSがアクセス情報生成ユニット36と,アクセス情報記憶ユニット37とを備えている点で実施形態1の暗号鍵配布システムと異なる。
・・・(中略)・・・
【0157】
本動作例では,実施形態1の動作に加えてアクセス制御を行う場合について説明する。すなわち,実施形態1では付加情報α,βとしてセッション鍵Ksの有効期間,アクセス回数,課金情報を例示したが,本実施形態では,付加情報α,βをアクセス制御に利用する例について説明する。アクセス制御には,各ノードA,Bが保有する情報を他のノードA,Bに提供するか否か(提供)と,各ノードA,Bが他のノードA,Bの提供している情報に加える操作(読出,書込,実行)とが含まれる。つまり,アクセス制御の情報は,各ノードA,Bが保有する情報からどの情報を提供可能かを決定し,また提供される情報に対してどのような操作を行うかを決定する。
・・・(中略)・・・
【0191】
なお,認証サーバは,ノードからアクセス制御の要求情報を受信すると,アクセス制御の要求情報とあらかじめ登録されたアクセス制御の登録情報とを比較し,アクセス制御の要求情報がアクセス制御の登録情報に含まれていない場合,アクセス制御の登録情報をアクセス制御の許可情報に用い,アクセス制御の許可情報を含む暗号文に,メッセージ認証コードの値を付加してグループ内の各ノードに送信してもよい。
【0192】
すなわち,認証サーバS(アクセス情報生成ユニット36)は,第1ノードAまたは第2ノードBからアクセス制御の要求情報を受け取ると,受け取ったアクセス制御の要求情報とあらかじめ登録されたアクセス制御の登録情報とを比較し,受け取ったアクセス制御の要求情報がアクセス制御の登録情報に含まれていない場合,アクセス制御の登録情報をアクセス制御の許可情報として用いるように構成されていてもよい。」

<明細書記載事項2>
「【0198】
(実施形態3)
本実施形態の暗号鍵配布システムは,図7に示すように,主として第1ノードAと第2ノードBとの間の通信を中継するプロキシノードCを有する点で実施形態2の暗号鍵配布システムと異なる。
【0199】
本実施形態において,ノードは,プロキシノードCを通じて間接的に別のノードと通信するように構成される。
【0200】
本実施形態において,認証サーバSは,プロキシノードCにアクセス制御の許可情報を送信するように構成される。
【0201】
プロキシノードCは,通信ユニット(第4通信ユニット)40と,許可情報記憶ユニット41と,アクセス制御ユニット42と,を備えている。
【0202】
通信ユニット40は,情報通信網を通じて各ノードA,Bおよび認証サーバSと通信可能に構成される。
【0203】
許可情報記憶ユニット41は,認証サーバSから受け取ったアクセス制御の許可情報を記憶するように構成される。
【0204】
アクセス制御ユニット42は,許可情報記憶ユニット41に記憶されたアクセス制御の許可情報を参照して,ノードA,B間のアクセス制御を行うように構成される。」

エ. ここで,<明細書記載事項1>は,実施形態2についての記載事項であって,<明細書記載事項1>の段落【0157】に記載された「本実施形態では,付加情報α,βをアクセス制御に利用する例について説明する」との記載事項は,請求項1に係る発明の特定事項である<発明特定事項1-1>のうち,「上記第1付加情報および上記第2付加情報は,アクセス制御の許可情報であって」に対応するものであり,<明細書記載事項1>の段落【0192】に記載された事項は,請求項1に係る発明の特定事項である<発明特定事項1-2>に対応するものであるから,請求項1に係る発明は,明細書記載の実施形態2に対応するものであるといえる。
そして,<明細書記載事項2>は,「主として第1ノードAと第2ノードBとの間の通信を中継するプロキシノードCを有する点で実施形態2の暗号鍵配布システムと異なる」(段落【0198】)もの,すなわち,実施形態2を前提とした実施形態である実施形態3についての記載事項であって,<明細書記載事項2>の段落【0199】ないし【0204】に記載された「プロキシノードC」に関する記載事項は,「プロキシノード」に関する<発明特定事項2-2>に対応するものである。してみれば,<発明特定事項1-2>に加えて<発明特定事項2-2>を備える,訂正前の請求項2に係る発明は,実施形態2の構成に加えて「プロキシノードC」を有する実施形態3に対応するものであるといえる。
してみれば,請求項1を引用する訂正前の請求項2に係る発明は,明細書に記載された実施形態3に対応するものであるから,訂正前の請求項2が請求項1を引用する形式であること自体が,明細書の記載との関係で明らかな誤りであるとはいえない。

オ. また,そもそも,「誤記の訂正」とは,「本来その意であることが明細書,特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな字句・語句の誤りを,その意味内容の字句・語句に正すことをいい,訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるもの」(審判便覧 54-10訂正の可否決定上の判断及び事例 3.誤記の訂正 (1))をいう。そして,訂正前の請求項2が請求項1を引用する形式である点が明らかな字句・語句の誤りであるとは到底いえないし,請求項1を引用する訂正前の請求項2の記載が,独立形式である訂正後の請求項2の記載と同一の意味を表示するものであるともいえない。
さらに,訂正前の請求項2の記載自体に明らかな誤りがあるともいえない。
なお,本件審判に係る出願は,外国語書面出願ではないので,本件訂正が誤訳の訂正ではないことは明らかである。
したがって,本件訂正は,特許法第126条ただし書第3号の「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものではない。

(2) 特許請求の範囲の減縮
上記「(1) 誤記の訂正」のイ.に記載したとおり,訂正前の請求項2に係る発明は,実質的には,<発明特定事項1-1>,<発明特定事項1-2>,及び<発明特定事項2-2>からなるものである。
一方,訂正後の請求項2は,請求項1を引用しないのであるから,訂正後の請求項2に係る発明は,実質的には,<発明特定事項1-1>及び<発明特定事項2-2>からなるものである。
してみれば,訂正前の請求項2に係る発明が備えていた<発明特定事項1-2>を,訂正後の請求項2に係る発明は備えないのであるから,本件訂正は,特許法第126条ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものではない。

(3) 明瞭でない記載の釈明
上記「(1) 誤記の訂正」のイ.に記載したとおり,<発明特定事項1-1>と<発明特定事項2-1>は同一であるが,同一の記載が含まれることで,直ちに,請求項の記載そのものの意味が明瞭でないということはできない。また,その他に,訂正前の請求項2の記載が明瞭でないといえる点もない。
してみれば,本件訂正は,特許法第126条ただし書第2号の「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものではない。

(4) 引用形式
本件訂正は,請求項1を引用する訂正前の請求項2の記載を,請求項1の記載を引用しないものとするものであるといえる。
一方,特許法第126条ただし書第4号は,「一群の請求項」として一体的に取り扱われないように,請求項ごとに訂正審判の審理が行われることを審判請求人が求める場合には,請求項間の引用関係を解消する必要があるため,そのような訂正ができるよう設けられた規定であるから,本号における「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」とは,請求項に係る発明の技術範囲を変更することなく,請求項の記載の形式を他の請求項の記載を引用しない形式とすることを意味する。
そして,上記「(2) 特許請求の範囲の減縮」に記載したとおり,訂正前の請求項2に係る発明が備えていた<発明特定事項1-2>を,訂正後の請求項2に係る発明は備えないのであるから,本件訂正は,請求項の記載の形式を他の請求項の記載を引用しない形式とする際に,請求項に係る発明の技術範囲が変更されるものである。
してみれば,本件訂正は,特許法第126条ただし書第4号の「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものとはいえない。

(5) 小括
以上のとおり,本件訂正は,特許法第126条ただし書第1号ないし第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない。


3. 特許請求の範囲の拡張,変更
上記「2. 訂正の目的」の「(1) 誤記又は誤訳の訂正」のイ.に記載したとおり,訂正前の請求項2に係る発明は,<発明特定事項2-2>に加えて,<発明特定事項1-2>を備えるものである。
一方,訂正後の請求項2は,請求項1を引用しないのであるから,訂正後の請求項2に係る発明は,<発明特定事項1-2>を備えない構成を含むことは明らかである。
すなわち,訂正前の請求項2に係る発明が備えていた<発明特定事項1-2>を,訂正後の請求項2に係る発明は備えないのであるから,本件訂正は,請求項2に係る発明の技術的範囲を拡張するものである。
そして,上記「2. 訂正の目的」の「(1) 誤記又は誤訳の訂正」でも述べたように,訂正前の請求項2の記載が明らかな誤りであるともいえない。
したがって,本件訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張するものであるから,特許法第126条第6項の規定に違反するものである。


4. むすび
以上のとおり,本件訂正は,特許法第126条ただし書第1号ないし第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもなく,特許法第126条第6項に規定する要件にも適合しないから,本件訂正は認められない。」


2.意見書
平成26年9月29日付けの意見書(以下,単に「意見書」という。)の内容は,概略以下のとおりである。(当審注:「○1」は数字の1を○で囲ったフォントを意味する。以下,同じ。)

「(2)本件訂正が認められるべき理由
ア 訂正の目的
訂正前の請求項2の「ことを特徴とする請求項1記載の暗号鍵配布システム。」は「ことを特徴とする暗号鍵配布システム。」の誤記であるため,本件訂正は誤記の訂正を目的とするものである。
本件訂正が,特許法126条ただし書第2号の「誤記又は誤訳の訂正」を目的とすることについて,以下に説明する。

(ア)形式面
上記訂正事項1は,請求項1を引用する引用形式で記載された訂正前の請求項2を,独立形式の請求項2へと訂正するものである。そもそも「引用形式請求項」は,「特許請求の範囲における文言の重複記載を避けて請求項の記載を簡明にするものとして利用される・・・(中略)・・・請求項を引用形式で記載できる典型的な例は,先行する他の一の請求項の全ての特徴を含む請求項を記載する場合である。このような場合に引用形式で請求項を記載すると,文言の繰り返し記載が省略できると共に,引用される請求項とそれを引用して記載する請求項との相違をより明確にして記載できるので,出願人の手間が軽減されると共に,第三者の理解が容易になるといった利点がある。」(審査基準 第I部 第1章 2.2.4.2 請求項の記載形式-独立形式と引用形式- (2)引用形式請求項 ○1)ことは周知である。
しかし,訂正前の請求項2記載の特許発明によれば,「第1ノードと,第2ノードと,上記第1ノードと上記第2ノードとの間の暗号化通信に使用されるセッション鍵を生成する認証サーバと,を備え,・・・(中略)・・・上記第1付加情報および上記第2付加情報は,アクセス制御の許可情報であって,」の部分が請求項1と完全に重複している。
さらに,特許掲載公報において,請求項2の記載を引用する請求項3では「第1ノード」,「第2ノード」などのように請求項2で既出の構成要件を挙げる場合にはすべて「上記」を付しているのに対し,訂正前の請求項2においては請求項1で既出の構成要件(「第1ノード」,「第2ノード」など)を「上記」を付さずに用いている。
これらの事実から,訂正前の請求項2の記載は,そもそも文言の重複記載(繰り返し記載)を避けて請求項の記載を簡明にする,という典型的な引用形式請求項には形式上当て嵌らないものであって,特許請求の範囲の記載に接した当業者に,訂正前の請求項2の「ことを特徴とする請求項1記載の暗号鍵配布システム。」が「ことを特徴とする暗号鍵配布システム。」の誤記であることの疑念を抱かせ,本願明細書を参酌する契機を与えるには十分である。

(イ)実体面
本願明細書には,実施形態2および実施形態3に下記の事項が記載されている(注:下線は,請求人が付したものである)。
<実施形態2に記載の事項>
・・・(中略)・・・

<実施形態3に記載の事項>
・・・(中略)・・・

ここで,訂正拒絶理由通知書によれば,「<発明特定事項1-2>に加えて<発明特定事項2-2>を備える,訂正前の請求項2に係る発明は,実施形態2の構成に加えて『プロキシノードC』を有する実施形態3に対応するものであるといえる。してみれば,請求項1を引用する訂正前の請求項2に係る発明は,明細書に記載された実施形態3に対応するものであるから,訂正前の請求項2が請求項1を引用する形式であること自体が,明細書の記載との関係で明らかな誤りであるとはいえない。」と認定されている。
しかしながら,訂正拒絶理由通知書で取り上げられている本願明細書の段落【0198】の記載「主として第1ノードAと第2ノードBとの間の通信を中継するプロキシノードCを有する点で実施形態2の暗号鍵配布システムと異なる」は,単に実施形態3を実施形態2と対比した場合の主たるシステム構成の違い(プロキシノードの有無)を表しているのであって,直ちに実施形態2の技術を実施形態3に適用できることを保証するものではない。以下に,動作の違いまで含めて,実施形態2と実施形態3との対比を行う。

上記の記載事項(特に下線部分)によれば,実施形態2には,認証サーバ自身がアクセス制御の登録情報をアクセス制御の許可情報としてノードA,Bに送信(発行)すること,が記載されている。一方,実施形態3には,認証サーバからアクセス制御の許可情報を受信したプロキシノードが,許可情報記憶ユニットに記憶されアクセス制御の許可情報を参照して,ノードA,B間のアクセス制御を行うこと,が記載されている。
すなわち,実施形態2に対応する請求項1に係る発明は「上記認証サーバは,上記第1ノードまたは上記第2ノードからアクセス制御の要求情報を受け取ると,受け取った上記アクセス制御の要求情報とあらかじめ登録されたアクセス制御の登録情報とを比較し,上記受け取ったアクセス制御の要求情報が上記アクセス制御の登録情報に含まれていない場合,上記アクセス制御の登録情報を上記アクセス制御の許可情報として用いるように構成される」との発明特定事項(以下,<発明特定事項1-2>という)を備えている。
してみると,当業者であれば,請求項1に係る発明の意義を解釈するに当たって実施形態2を参酌することにより,<発明特定事項1-2>は,認証サーバ自身がアクセス制御の許可情報を第1ノードまたは第2ノードに送信する構成である,と当然に理解する。
一方,実施形態3に対応する請求項2に係る発明は「上記第1ノードと上記第2ノードとの間の通信を中継するプロキシノードを有し,上記認証サーバは,上記プロキシノードに上記アクセス制御の許可情報を送信するように構成され,上記プロキシノードは,上記認証サーバから受け取った上記アクセス制御の許可情報に基づいて上記第1ノードと上記第2ノードとの間の通信を中継するように構成される」との発明特定事項(以下,<発明特定事項2-2>という)を備えている。
してみると,当業者であれば,請求項2に係る発明の意義を解釈するに当たって実施形態3を参酌することにより,<発明特定事項2-2>は,認証サーバ自身がアクセス制御の許可情報を第1ノードまたは第2ノードに送信するのではなく,プロキシノードが認証サーバから取得したアクセス制御の許可情報を用いて第1ノードと第2ノードとの間の通信を中継する構成である,と当然に理解する。

すなわち,本願明細書によれば,請求項1に係る発明に対応した実施形態2と,請求項2に係る発明に対応した実施形態3とでは,前提としているシステム構成の違い(プロキシノードの有無)に関連して基本的な動作が全く異なっているのであって,請求項1を引用する形式で記載された訂正前の請求項2にあっては,本願明細書の記載との間に実体面で明らかに矛盾が生じることになる。したがって,訂正前の請求項2の「ことを特徴とする請求項1記載の暗号鍵配布システム。」との記載が「ことを特徴とする暗号鍵配布システム。」の誤記であることは,訂正前の特許明細書および図面に接する当業者にとっては自明である。

(ウ)小括
このように,訂正前の請求項2が請求項1を引用する形式である点が明らかな字句・語句の誤りであり,また請求項1を引用する訂正前の請求項2の記載が,独立形式である訂正後の請求項2の記載と同一の意味を表示するものであることは,形式面・実体面より当業者であれば当然に理解されるところである。よって,審判便覧における「誤記の訂正」の規定「本来その意であることが,明細書,特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな字句,語句に正すことをいい,訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるもの」に照らしても,上記訂正事項1が,特許法第126条ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものであることは明らかである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように,上記訂正事項1は,請求項2の記載が,それ自体で,又は特許明細書等の記載との関係で,誤りであることが明らかであり,かつ,特許明細書等の記載全体から,正しい記載(「ことを特徴とする暗号鍵配布システム。」)が自明な事項として定まる場合において,その誤りを正しい記載にする訂正であるから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第126条第6項に適合するものである。

6.むすび
以上のとおり,本件訂正は,特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものであり,特許法第126条第6項に規定する要件にも適合するものと思料致しますので,お手数ながら今一応のご審理をお願い申し上げます。」


第4.当審判断
1.訂正の目的
(1)誤記又は誤訳の訂正
特許法第126条第1項ただし書き第2号の「誤記の訂正」とは,「本来その意であることが明細書,特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな字句・語句の誤りを,その意味内容の字句・語句に正すことをいい,訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるもの」(審判便覧 54-10訂正の可否決定上の判断及び事例 3.誤記の訂正 (1))をいう。よって,訂正前の請求項2の記載を訂正後の請求項2の記載とすることが「誤記の訂正」であるといえるためには,訂正前の請求項2が訂正前の請求項1(訂正前の請求項1と訂正後の請求項1は同一であるから,以下,単に「請求項1」という。)を引用する形式である点が,明らかな字句・語句の誤りであって,請求項1を引用する訂正前の請求項2の記載が,独立形式である訂正後の請求項2の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものでなければならない。
以下において,その点について検討する。

ア.請求項の記載について
(ア) 訂正前の請求項2は,その字句のとおりに記載を解釈すると,請求項1に係る発明が備える,「第1ノードと,第2ノードと,上記第1ノードと上記第2ノードとの間の暗号化通信に使用されるセッション鍵を生成する認証サーバと,を備え,・・・(中略)・・・上記第1付加情報および上記第2付加情報は,アクセス制御の許可情報であって」との発明特定事項(以下,<発明特定事項1-1>という。)と,「上記認証サーバは,上記第1ノードまたは上記第2ノードからアクセス制御の要求情報を受け取ると,受け取った上記アクセス制御の要求情報とあらかじめ登録されたアクセス制御の登録情報とを比較し,上記受け取ったアクセス制御の要求情報が上記アクセス制御の登録情報に含まれていない場合,上記アクセス制御の登録情報を上記アクセス制御の許可情報として用いるように構成される」との発明特定事項(以下,<発明特定事項1-2>という。)に加えて,「第1ノードと,第2ノードと,上記第1ノードと上記第2ノードとの間の暗号化通信に使用されるセッション鍵を生成する認証サーバと,を備え,・・・(中略)・・・上記第1付加情報および上記第2付加情報は,アクセス制御の許可情報であって」との発明特定事項(以下,<発明特定事項2-1>という。)と,「上記第1ノードと上記第2ノードとの間の通信を中継するプロキシノードを有し,上記認証サーバは,上記プロキシノードに上記アクセス制御の許可情報を送信するように構成され,上記プロキシノードは,上記認証サーバから受け取った上記アクセス制御の許可情報に基づいて上記第1ノードと上記第2ノードとの間の通信を中継するように構成される」との発明特定事項(以下,<発明特定事項2-2>という。)を備えるものであるといえる。
そして,<発明特定事項1-1>と<発明特定事項2-1>は,同一である。

(イ) そもそも,引用形式請求項とは,「文言の繰り返し記載が省略できると共に,引用される請求項とそれを引用して記載する請求項との相違をより明確にして記載できるので,出願人の手間が軽減されると共に,第三者の理解が容易になるといった利点がある。」(審査基準 第I部 第1章 2.2.4.2 請求項の記載形式-独立形式と引用形式- (2)引用形式請求項 ○1)ものであるといえるところ,上記したように<発明特定事項1-1>と<発明特定事項2-1>が同一であることから,訂正前の請求項2は,引用形式請求項であるが,「文言の繰り返し記載が省略」されていないといえる。
しかしながら,引用形式請求項とすることで「文言の繰り返し記載が省略」できるということは,文言の繰り返し記載を必ず省略する必要があることを意味するわけではないから,「文言の繰り返し記載が省略」されていないことが,直ちに誤りであるということはできない。
また,仮に,「文言の繰り返し記載が省略」されていないことが,誤りであるということができたとしても,訂正前の請求項2の記載が有する誤りが,省略することができる記載が省略されていないという誤りであるのか,独立形式請求項とすべきところ引用形式請求項とされているという誤りであるのかを,訂正前の請求項2の記載自体から特定することはできない。
さらに,訂正前の請求項2の記載において,請求項1で既出の特定事項である「第1ノード」及び「第2ノード」などに「上記」と付されていないが,この点が,仮に,誤りであるといえるとしても,単に「上記」と付されていない誤りであるのか,独立形式請求項とすべきところ引用形式請求項とされているという誤りであるのかを,訂正前の請求項2の記載自体から特定することはできない。
してみれば,訂正前の請求項2の記載において,文言の繰り返し記載が省略されていない点,及び「上記」と付されていない点から,すなわち,請求人が上記意見書で主張するところの「形式面」から,訂正前の請求項2が請求項1を引用する形式である点が,明らかな字句・語句の誤りであって,請求項1を引用する訂正前の請求項2の記載が,独立形式である訂正後の請求項2の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものということはできない。

イ.明細書の記載との関係について
上記「ア.請求項の記載について」において示したように,訂正前の請求項2が請求項1を引用する形式であることが明らかな誤りであるということを,訂正前の請求項2の記載自体からいうことはできない。そこで,明細書の記載との関係において,訂正前の請求項2が請求項1を引用する形式であることが明らかな誤りであるといえるかについて,以下において検討する。

(ア) 本願明細書には,上記訂正拒絶理由において引用した<明細書記載事項1>及び<明細書記載事項2>に加えて,下記の事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

<明細書記載事項3>
「【0217】
ここで,ノードBによるアクセス制御の要求情報が「B provide RB1,RB2」である場合には,ノードAによる情報RB2の操作が可能になる。また同様に,認証サーバSにおいて,アクセス制御の許可情報として,アクセス制御の要求情報とアクセス制御の登録情報との共通部分(積集合)ではなく和集合を用いる場合にも,ノードBは情報RB2を提供することができる。プロキシノードCを設けている点を除けば,他の構成および動作は実施形態2と同様である。」

(イ) <明細書記載事項3>には,「プロキシノードCを設けている点を除けば,他の構成および動作は実施形態2と同様である」と記載されている。また,<明細書記載事項2>の段落【0198】の「(実施形態3)」との記載を参酌すれば,<明細書記載事項3>が,実施形態3についての記載であることは明らかである。
してみれば,実施形態3は,「プロキシノードCを設けている点を除けば,他の構成および動作は実施形態2と同様である」もの,すなわち,実施形態3は,実施形態2の構成の全部を包含し,「プロキシノードC」に係る動作以外の動作は,実施形態2と同様の動作をするものであるといえる。

(ウ) 上記「ア.請求項の記載について (ア)」に示したとおり,訂正前の請求項2に係る発明は,請求項1に係る発明が備える<発明特定事項1-1>と<発明特定事項1-2>に加えて,<発明特定事項2-1>と<発明特定事項2-2>を備えるものであって,<発明特定事項1-1>と<発明特定事項2-1>は同一である。よって,訂正前の請求項2に係る発明は,請求項1に係る発明に「プロキシノード」に関する<発明特定事項2-2>を加えただけのものといえるから,訂正前の請求項2に係る発明は,「プロキシノード」に関する<発明特定事項2-2>を有する点を除けば,他の構成は,請求項1に係る発明と同様であるといえる。

(エ) <明細書記載事項1>は,実施形態2についての記載事項であって,<明細書記載事項1>の段落【0157】に記載された「本実施形態では,付加情報α,βをアクセス制御に利用する例について説明する」との記載事項は,請求項1に係る発明の特定事項である<発明特定事項1-1>のうち,「上記第1付加情報および上記第2付加情報は,アクセス制御の許可情報であって」に対応するものであり,<明細書記載事項1>の段落【0192】に記載された事項は,請求項1に係る発明の特定事項である<発明特定事項1-2>に対応するものであるから,請求項1に係る発明は,明細書記載の実施形態2に対応するものであるといえる。
一方,<明細書記載事項2>は,実施形態3についての記載事項であって,<明細書記載事項2>の段落【0199】ないし【0204】に記載された「プロキシノードC」に関する記載事項は,「プロキシノード」に関する<発明特定事項2-2>に対応するものであるから,訂正前の請求項2に係る発明は,実施形態3に対応するものであるといえる。

(オ) 上記(イ)に示したとおり,実施形態3は,実施形態2の構成の全部を包含するものといえ,上記(ウ)に示したとおり,訂正前の請求項2に係る発明は,請求項1に係る発明の全部を包含するものといえる。さらに,上記(エ)に示したとおり,請求項1は実施形態2に対応するものであり,訂正前の請求項2は実施形態3に対応するものであるといえる。
してみれば,実施形態3に対応するものである訂正前の請求項2に係る発明が,実施形態2に対応するものである請求項1に係る発明の全部を包含することには,特に矛盾する点はない。よって,訂正前の請求項2が請求項1を引用する形式であることは,明細書の記載と矛盾することではないから,明細書の記載との関係において,すなわち,請求人が上記意見書で主張するところの「実体面」からみても,明らかな誤りであるとはいえない。

ウ.誤訳の訂正について
本件審判に係る出願は,外国語書面出願ではないので,本件訂正が誤訳の訂正ではないことは明らかである。

エ.小括
したがって,本件訂正は,特許法第126条第1項ただし書第2号の「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものではない。


(2) 特許請求の範囲の減縮
上記「(1) 誤記又は誤訳の訂正」の「ア.請求項の記載について (ア)」に記載したとおり,訂正前の請求項2に係る発明は,実質的には,<発明特定事項1-1>,<発明特定事項1-2>,及び<発明特定事項2-2>からなるものである。
一方,訂正後の請求項2は,請求項1を引用しないのであるから,訂正後の請求項2に係る発明は,実質的には,<発明特定事項1-1>及び<発明特定事項2-2>からなるものである。
してみれば,訂正前の請求項2に係る発明が備えていた<発明特定事項1-2>を,訂正後の請求項2に係る発明は備えないのであるから,本件訂正は,特許法第126条第1項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものではない。

(3) 明瞭でない記載の釈明
上記「(1) 誤記又は誤訳の訂正」の「ア.請求項の記載について (ア)」に記載したとおり,<発明特定事項1-1>と<発明特定事項2-1>は同一であるが,同一の記載が含まれることで,直ちに,請求項の記載そのものの意味が明瞭でないということはできない。また,その他に,訂正前の請求項2の記載が明瞭でないといえる点もない。
してみれば,本件訂正は,特許法第126条第1項ただし書第3号の「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものではない。

(4) 引用形式
本件訂正は,請求項1を引用する訂正前の請求項2の記載を,請求項1の記載を引用しないものとするものであるといえる。
一方,特許法第126条第1項ただし書第4号は,「一群の請求項」として一体的に取り扱われないように,請求項ごとに訂正審判の審理が行われることを審判請求人が求める場合には,請求項間の引用関係を解消する必要があるため,そのような訂正ができるよう設けられた規定であるから,本号における「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」とは,請求項に係る発明の技術範囲を変更することなく,請求項の記載の形式を他の請求項の記載を引用しない形式とすることを意味する。
そして,上記「(2) 特許請求の範囲の減縮」に記載したとおり,訂正前の請求項2に係る発明が備えていた<発明特定事項1-2>を,訂正後の請求項2に係る発明は備えないのであるから,本件訂正は,請求項の記載の形式を他の請求項の記載を引用しない形式とする際に,請求項に係る発明の技術範囲が変更されるものである。
してみれば,本件訂正は,特許法第126条第1項ただし書第4号の「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものとはいえない。

(5) 中括
以上のとおり,本件訂正は,特許法第126条第1項ただし書第1号ないし第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない。


2.特許請求の範囲の拡張,変更
上記「1.訂正の目的」の上記「(1) 誤記又は誤訳の訂正」の「ア.請求項の記載について (ア)」に記載したとおり,訂正前の請求項2に係る発明は,<発明特定事項2-2>に加えて,<発明特定事項1-2>を備えるものである。
一方,訂正後の請求項2は,請求項1を引用しないのであるから,訂正後の請求項2に係る発明は,<発明特定事項1-2>を備えない構成を含むことは明らかである。
すなわち,訂正前の請求項2に係る発明が備えていた<発明特定事項1-2>を,訂正後の請求項2に係る発明は備えないのであるから,本件訂正は,請求項2に係る発明の技術的範囲を拡張するものである。
そして,上記「1.訂正の目的」の「(1) 誤記又は誤訳の訂正」でも述べたように,訂正前の請求項2の記載が明らかな誤りであるともいえない。
したがって,本件訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張するものであるから,特許法第126条第6項の規定に違反するものである。


第5.むすび
上記第4.1.のとおり,本件訂正は,特許法第126条第1項ただし書第1号ないし第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものではない。また,上記第4.2.のとおり,特許法第126条第6項に規定する要件にも適合しない。
よって,上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-29 
結審通知日 2014-10-31 
審決日 2014-11-11 
出願番号 特願2011-519917(P2011-519917)
審決分類 P 1 41・ 854- Z (H04L)
P 1 41・ 853- Z (H04L)
P 1 41・ 857- Z (H04L)
P 1 41・ 851- Z (H04L)
P 1 41・ 852- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金沢 史明  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 石井 茂和
小林 大介
登録日 2013-12-13 
登録番号 特許第5432999号(P5432999)
発明の名称 暗号鍵配布システム  
代理人 北出 英敏  
代理人 西川 惠清  
代理人 坂口 武  
代理人 仲石 晴樹  
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