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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2012800042 審決 特許
無効2010800088 審決 特許
無効2012800032 審決 特許
無効2011800071 審決 特許
無効2014800135 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 1項2号公然実施  A61K
審判 全部無効 2項進歩性  A61K
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部無効 1項1号公知  A61K
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1295625
審判番号 無効2013-800221  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-12-10 
確定日 2014-12-22 
事件の表示 上記当事者間の特許第5230965号発明「乳化組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 理 由
第1 手続の経緯
本件特許第5230965号の請求項1?4に係る発明は、平成19年5月22日に特許出願がされ、平成25年3月29日に特許権の設定登録がなされたものであり、審判の手続の経緯は、以下のとおりである。

平成25年12月10日付け 審判請求書、甲第1?12号証提出
平成26年 3月 4日付け 審判事件答弁書、乙第1?5号証提出
同年 4月14日付け 上申書、甲第11号証の抄訳提出
(請求人)
同年 5月 9日付け 審理事項通知
同年 6月 4日付け 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
同年 6月 6日付け 口頭審理陳述要領書、
甲第13?18号証提出(請求人)
同年 6月20日 口頭審理
同年 7月 4日付け 上申書、甲第19?24号証提出
(請求人)

第2 本件特許に係る発明
本件特許に係る発明は、本件特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める(以下、「本件特許発明1」?「本件特許発明4」といい、まとめて「本件特許発明」ともいう。)。

「【請求項1】
スフィンゴ糖脂質の1種以上と、分子内に水酸基を2個もつ多価アルコールの1種以上と、グリセリン、ジグリセリンより1種以上選択される分子内に水酸基を3個以上もつ多価アルコールと、ソルビトール、マルチトール、グリコシルトレハロース、水添デンプン分解物混合物から選択される糖の1種以上と、全体の30%以下の油分を配合した界面活性剤を含まない乳化組成物(メークアップ化粧料を除く)
【請求項2】
分子内に水酸基を2個もつ多価アルコールが1,3ブチレングリコール、プロピレングリコールの1種以上である請求項1の乳化組成物
【請求項3】
請求項1乃至請求項2の乳化組成物を乳化する際に50MPa以上で乳化することを特徴とする乳化組成物
【請求項4】
請求項1乃至請求項2の乳化組成物に水相を乳化させた乳化組成物」

第3 請求人の主張する無効理由の概要及び請求人が提出した証拠方法
1 審判請求書における無効理由の概要
請求人は、「特許第5230965号の特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、以下の無効理由を主張している。

<無効理由1-1>
本件特許発明1、2、及び4は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、同法同条に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
<無効理由1-2>
本件特許発明1、2、及び4は、その出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明、すなわち、株式会社ブルーム・クラシックにより日本国内で販売された美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」(甲第1号証、甲第2号証)と同一であるから、特許法第29条第1項第1号に該当し、特許を受けることができないものであり、同法同条に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
<無効理由1-3>
本件特許発明1、2、及び4は、その出願前に日本国内又は外国において公然実施された発明、すなわち、株式会社ブルーム・クラシックにより日本国内で販売された美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」(甲第1号証、甲第2号証)と同一であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができないものであり、同法同条に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
<無効理由2-1>
本件特許発明1?4は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証、及び甲第9?12号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、同法同条に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
<無効理由2-2>
本件特許発明1?4は、その出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明、すなわち、株式会社ブルーム・クラシックにより日本国内で販売された美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」(甲第1号証、甲第2号証)、及び甲第9?12号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、同法同条に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
<無効理由2-3>
本件特許発明1?4は、その出願前に日本国内又は外国において公然実施された発明、すなわち、株式会社ブルーム・クラシックにより日本国内で販売された美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」(甲第1号証、甲第2号証)、及び甲第9?12号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、同法同条に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
<無効理由3-1>
本件特許発明1?4は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものあり、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
<無効理由3-2>
本件の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、本件特許発明1?4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものあり、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
<無効理由4>
本件特許発明1?4は、発明の範囲が明確でないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものあり、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

2 請求人が提出した証拠方法
請求人の提出した証拠方法は以下のとおりである。
なお、請求人が提出した証拠方法には、異なる証拠方法を組み合わせて一式としたものがあるため、それらについては「甲第3号証の2」などの枝番を当審で付与した。

(1)審判請求書、及び平成26年4月14日付け上申書に添付
甲第1号証:「アッシュ・エルSEエッセンスn」の1ケ函
甲第2号証:美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」の写真
甲第3号証:「HL得意先別売上実績」
甲第3号証の2:株式会社アッシュ・エルボーテによる「証明書」
甲第4号証:株式会社ブルームフォーラムの「販売管理商品売上分析」
甲第4号証の2:株式会社ブルーム・クラシックによる「証明書」
甲第5号証:「アッシュ・エルSEエッセンスn」の化粧品製造販売届書
甲第6号証:「アッシュ・エルSEエッセンスn」の1ケ函の版下
甲第7号証:上六印刷株式会社による甲第1号証及び甲第6号証に関する
「証明書」
甲第8号証:「調製記録票」
甲第9号証:「新 化粧品ハンドブック」、日光ケミカルズ株式会社他、
平成18年10月30日、第755、762、765頁、
表紙、及び奥付
甲第10号証:日本化粧品工業連合会 特許委員会、「化粧料分野における
公知技術集 2010年版」、平成22年2月15日、
第188?190頁、及び表紙
甲第11号証:P.Elsner及びH.I.Maibach編、
“Cosmeceuticals and Active
Cosmetics:Drugs Versus
Cosmetics,Second Edition”,
2005年、第603?607頁、表紙、奥付、及び
甲第11号証の抄訳
甲第12号証:「日本香粧品学会誌」、2005年、第29巻、第3号、
第221?224頁

(2)口頭審理陳述要領書に添付
甲第13号証:株式会社ブルーム・クラシックによる「アッシュ・エルSE
エッセンスn」に関する「証明書」
甲第14号証:「改正薬事法の施行に伴う製造販売の承認を要しない医薬品
等の取扱い等について」、薬食審査発第0331015号、
平成17年3月31日
甲第15号証:株式会社フードケミファ作成の「発酵セラミドについて」
甲第15号証の2:株式会社ブルーム・クラシックによる「アッシュ・エル
SEエッセンスn」に関する「証明書」
甲第16号証:愛媛県産業技術研究所長による「成績表」
甲第16号証の2:「医薬部外品原料規格2006」、薬事日報社、
平成18年6月16日、第53頁、及び表紙
甲第17号証:「ビオセラミドCH」のパンフレット、山川貿易株式会社
(LABORATOIRES SEROBIOLOGIQU
ES)
甲第18号証:日本化粧品工業連合会編、「日本化粧品原料集 2007」
、薬事日報社、2007年6月28日、第29頁、表紙、
及び奥付

(3)平成26年7月4日付け上申書に添付
甲第19号証:有限会社ティクレの「証明書」
甲第20号証:有限会社デュアルワン「証明書」
甲第21号証:有限会社ピュア・ニルバーナの「証明書」
甲第22号証:「日本化粧品技術者会誌」、2004年、第38巻、
第4号、第299?303頁
甲第23号証:「油化学」、1985年、第34巻、第12号、
第1041?1048頁
甲第24号証:「機能性リポソームの医薬応用」、奥直人、1997年、
第83号、インターネットURL<<http://www
.dojindo.co.jp/letterj/083/
83reviews2.html>>、
及び「ドージンニュース(2000年?1997年発刊)」
、同仁化学研究所、インターネットURL<<http:/
/www.dojindo.co.jp/
dojinnews/2000-1997.html>>

第4 被請求人の主張の概要及び被請求人が提出した証拠方法
1 被請求人の主張の概要
被請求人は、「本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」旨の審決を求め、請求人の主張する上記無効理由はいずれも理由がない旨主張している。

2 被請求人が提出した証拠方法
被請求人の提出した証拠方法は以下のとおりである。

乙第1号証:「化粧品の全成分表示の表示方法等について」、医薬審発
第163号/医薬監麻発第220号、平成13年3月6日
乙第2号証:日本化粧品工業連合会編、「日本化粧品成分表示名称事典
第3版」、薬事日報社、2013年4月15日、表紙、奥付、
及び第581頁
乙第3号証:株式会社桃谷順天館社の商品「C vitage
VC美容液20」の1ケ函
乙第4号証:菰田衛、「レシチン その基礎と応用」、幸書房、
1991年7月25日、表紙、奥付、第111、128頁
乙第5号証:「香粧品原料便覧 第5版」、フレグランスジャーナル社、
2005年7月25日、表紙、奥付、第225、226
、262、及び518頁

第5 当審の判断
当審は、本件特許は、上記無効理由によって無効とすべきものではない、と判断する。
その理由は、以下のとおりである。

1 甲第1号証及び甲第2号証について
<無効理由1-1>?<無効理由1-3>の個別の理由の検討に先立ち、甲第1号証及び甲第2号証が本件特許出願前に公衆に知られた状態になっていたといえるか否かについて検討する。

ア 甲第1号証には、1ケ函の底面に当たる部分にロット番号「015G」が記載されており、甲第2号証の第3図には、美容液の容器の底面を撮影した写真が示され、同じロット番号「015G」が記載されている。
そうすると、美容液を入れた容器と、容器入りの美容液を梱包するための1ケ函とに、同じロット番号が記載されているから、甲第2号証に写真で示された美容液は、甲第1号証に梱包されたものといえる。

イ したがって、甲第1号証の1ケ函とそれに梱包された甲第2号証に写真で示された美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」が、本件特許出願前に販売されていたとすると、本件特許出願前に公衆に知られた状態になっていたといえる。
そこで、本件特許出願前に該美容液が販売されていたといえるかについて検討する。
なお、以下、甲第1号証の1ケ函とそれに梱包された甲第2号証に写真で示された美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」をまとめて、甲第1及び2号証の美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」ともいう。

ウ 甲第1号証及び甲第2号証のいずれにも、甲第1及び2号証の美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」が販売された時期を直接把握できる記載はない。そこで、他の証拠方法に基づき販売された時期がわかるかどうか検討する。

エ 甲第3号証の「HL得意先別売上実績」と題した書面には、「日付」、「得意先名」、「商品名」、「数量」などが記載されている。このうち、「日付」の欄には、「20051215」(「2005年12月15日」を意味すると解される。)、「20051226」(「2005年12月26日」を意味すると解される。)などと記載されており、これから2005年12月の売上実績を示したものであることが理解できる。また、「商品名」の欄には、「HL SEエッセンスn」とあるが、これが「アッシュ・エルSEエッセンスn」を意味するものであることは、甲第1号証に記載された「H・L(アッシュ・エル)化粧品は南フランスH・L社との提携により、日本で創られたものです。」から理解できる。
これらのことは、甲第3号証の2の株式会社アッシュ・エル ボーテによる「証明書」の記載とも一致し、そうすると、甲第3号証には、平成17(2005)年12月に、複数の得意先に美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」が販売された売上実績が示されているといえる。

オ 甲第4号証の表を含む書面には、表の上方に「株式会社ブルームフォーラム」、「作成日時:2006/12/07 17:00:08」、「販売管理商品売上分析」、「売上期間:2004/01?2006/11」などの記載がある。そして表には、「得意先名」、「商品名」の欄があり、表の欄外上部に「200512」、「200601」などの記載と、それぞれに「売上金額」、「売上数量」の項目がある。これらのことから、「200512」の欄は、2005年12月の売上について記されたものと理解でき、「商品名」の欄の「HL SEエッセンスn」は、甲第3号証と同様に、「アッシュ・エルSEエッセンスn」を意味するものといえる。
これらのことは、甲第4号証の2の株式会社ブルーム・クラシックによる「証明書」の記載とも一致し、そうすると、甲第4号証には、2005年12月に、複数の得意先に美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」が販売された売上実績が示されているといえる。

カ 甲第3号証と甲第4号証の記載を対比すると、両者の2005年12月の売上実績に関して、甲第3号証には、「得意先名」「数・・・」欄に、それぞれ「有限会社ティクレ」「3」、「有限会社デュアル・ワンHL福島鎌田店」「5」、「HL沖縄うらそえ店」「2」、「HLサロン倉敷沖新店」「4」、「HL足利店」「2」、「八瀬護」「1」、「営業本部」「1」の7箇所の得意先及び数字が記載されており、同様に甲第4号証の「200512」の欄の「売上数量」が入力されている「得意先名」は、「得意先名」「売上数量」を示すと、上から順に「営業本部」「1」、「HL沖縄うらそえ店」「2」、「HLサロン倉敷沖新店」「4」、「HL足利店」「2」、「八瀬護」「1」、「有限会社ティクレ」「3」、「有限会社デュアル・ワンHL福島鎌田店」「5」の7箇所であり、その売上数量も含めて、甲第3号証の記載と一致している。
2つの書面の内容が一致していることは、甲第3号証の2と甲第4号証の2の各証明書に、甲第3号証は、美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」の発売元である株式会社アッシュ・エル ボーテが作成した書面であること、甲第4号証は、美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」の製造及び販売について、発売元である株式会社アッシュ・エル ボーテと製造販売元である株式会社ブルーム・クラシックとを管理していた株式会社ブルームフォーラムが作成した書面であることが証明されていることとも矛盾しない。

キ 以上のことから、甲第3号証及び甲第4号証によれば、美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」は遅くとも本件特許の出願日前の平成17(2005)年12月に販売されていたといえる。
そこで次に、甲第3号証及び甲第4号証に記載の美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」が、甲第1及び2号証の美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」を意味するものであるか否かについて検討する。

ク 甲第5号証は、株式会社ブルーム・クラシックが大阪府知事宛てに提出した化粧品製造販売届書であり、販売名が「アッシュ・エルSEエッセンスn」であって、その届けの日が「平成17年5月30日」であり、収受の印には、「平17.5.30」の日付が記されている。これから、株式会社ブルーム・クラシックが、少なくとも平成17年5月30日以降に「アッシュ・エルSEエッセンスn」を製造販売する予定であったことが理解できる。
また、甲第6号証は、甲第1号証の「アッシュ・エルSEエッセンスn」の1ケ函の記載内容と全く同一であることが確認できる版下であり、右下に「得意先名」「ブルーム・クラシック」、「品名」「アッシュ・エルSEエッセンスn1ヶ函」、「提出回数」「初回」「’05 5/17」と記載されている。これらから、甲第6号証の版下は、甲第1号証の1ケ函を印刷するためのものであり、2005年5月17日に納品されたものであることが推認され、このことは、甲第7号証の上六印刷株式会社による「証明書」の内容とも矛盾しない。

ケ そうすると、甲第6号証及び甲第7号証からみて、甲第1号証の1ケ函は少なくとも2005年5月17日以降に印刷が予定され、甲第5号証からみて、美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」は少なくとも2005年5月30日以降に販売が予定されていたものであると解されるところ、甲第3号証及び甲第4号証が、甲第5号証乃至甲第7号証から予想される時期とほど遠くない2005年12月の美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」の販売実績を示したものであるから、甲第3号証及び甲第4号証の美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」は、甲第1及び2号証の美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」を販売した売上実績ということができる。

コ よって、甲第2号証に写真で示された美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」は、甲第1号証の1ケ函に梱包されて、本件特許出願前に販売されたものといえる。

サ 小括
したがって、甲第1号証及び甲第2号証は、本件特許出願前に公衆に知られた状態になっていたといえる。
これを踏まえて、以下検討する。

2 <無効理由1-1>について
(1)特許法第29条第1項第3号における「頒布された刊行物」であるかについて
ア 特許法第29条第1項第3号における、「頒布された刊行物」とは、公衆に対し頒布により公開することを目的として複製された文書、図面その他これに類する情報伝達媒体をいい、「頒布」とは、上記のような刊行物が不特定の者が見得るような状態におかれることをいう。

イ 上記「1 甲第1号証及び甲第2号証について」で検討したとおり、甲第1号証は、本件特許出願前に公衆に知られた状態になっていたといえる。
すなわち、甲第1及び2号証の美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」は販売されたといえ、販売するとは、甲第1号証が不特定の者が見得るような状態におかれることであるから、「頒布された」といえるし、甲第1号証である1ケ函は、そこに印刷された「アッシュ・エルSEエッセンスn」の成分表示その他の情報を、公衆に対し頒布により公開することを目的として複製された情報伝達媒体であるから、「頒布された刊行物」と解釈して差し支えないものである。

ウ よって、甲第1号証は、本件特許出願前に頒布された刊行物といえる。そこで、甲第1号証に記載された発明について検討する。

(2)甲第1号証に記載された発明について
ア 甲第1号証には、「成分:水,BG,グリセリン,ローズ水,ペンチレングリコール,テトラヘキシルデカン酸アスコルビル,ビタミンA油,トコフェロール,リン酸アスコルビルMg,クレアチン,加水分解酵母,グリコシルトレハロース,加水分解水添デンプン,加水分解酵母エキス,アロエベラエキス-1,カッコンエキス,クロレラエキス,ノバラエキス,キハダ根皮エキス,ベタイン,スフィンゴモナスエキス,水添レシチン,ヒドロキシプロリン,リゾレシチン,アラニン,マルチトール,コレステロール,ソルビトール,ジグリセリン,ノバラ油,アルギン酸Na,エタノール,ヒドロキシエチルセルロース,乳酸Ca,DPG,フェノキシエタノール,メチルパラベン」と記載されている。

イ そして、化粧品においては全成分表示が義務づけられていることから(乙第1号証「化粧品の全成分表示の表示方法等について」も参照)、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「水、BG、グリセリン、ローズ水、ペンチレングリコール、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル、ビタミンA油、トコフェロール、リン酸アスコルビルMg、クレアチン、加水分解酵母、グリコシルトレハロース、加水分解水添デンプン、加水分解酵母エキス、アロエベラエキス-1、カッコンエキス、クロレラエキス、ノバラエキス、キハダ根皮エキス、ベタイン、スフィンゴモナスエキス、水添レシチン、ヒドロキシプロリン、リゾレシチン、アラニン、マルチトール、コレステロール、ソルビトール、ジグリセリン、ノバラ油、アルギン酸Na、エタノール、ヒドロキシエチルセルロース、乳酸Ca、DPG、フェノキシエタノール、メチルパラベンからなる美容液。」(以下、「甲1発明」という。)

(3)本件特許発明1について
ア 本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明には、37種類の成分が配合されており、その中に「水添レシチン」と「リゾレシチン」が配合されているのに対し、本件特許発明1では、これらが明記されていないとともに、界面活性剤を含まないとされている。
そこで、以下この点について検討する。

イ 乙第5号証の「香粧品原料便覧 第5版」には、例えば、「水添ダイズリン脂質」に関する項目には、「[表示名]水添レシチン」とあり、「[分類]界面活性剤,植物抽出成分,保湿剤」と記載され(225頁右欄)、「ダイズリゾリン脂質・グリセリン液」の項目には、「[表示名]リゾレシチン・グリセリン」とあり、「[基原]ダイズリン脂質を酵素処理して得たリゾリン脂質のグリセリン溶液」、「[分類]乳化剤,保湿剤」と記載されている(262頁右欄)。乳化剤が界面活性剤に該当するものであることは自明な事項である。

ウ そうすると、甲1発明には、化粧品の技術分野で界面活性剤としても取り扱われる「水添レシチン」及び「リゾレシチン」が配合されているといえるから、甲1発明は本件特許発明1の「界面活性剤を含まない」という要件を満たしていない。

エ よって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明とはいえない。

(4)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1の分子内に水酸基を2個もつ多価アルコールについて、1,3ブチレングリコール、プロピレングリコールの1種以上であると特定するものであるところ、これらの多価アルコールは甲1発明にも配合されている。
しかしながら、本件特許発明2は、本件特許発明1を引用するので「界面活性剤を含まない」ものであるから、上記(3)と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明とはいえない。

(5)本件特許発明4について
ア 本件特許発明4は、本件特許発明1又は2の乳化組成物に水相を乳化させた乳化組成物である。
ここで、本件特許明細書には、水相に、水、多価アルコール、エタノール、水溶性ビタミン、防腐剤、水溶性の動植物抽出物、その他水溶性薬剤等が配合できることが記載されている(【0010】)。
そうすると、「水添レシチン」、「リゾレシチン」が界面活性剤であるとしても、本件特許発明1又は2の乳化組成物に水相を乳化させた後の乳化組成物は、界面活性剤の配合を許容するとも解されるので、この点について検討する。

イ 本件特許発明1は、請求項1で特定される成分を配合した乳化組成物であって、粒子が非常に小さく、界面活性剤を用いない乳化物に関する(本件特許明細書【0001】、実施例)。
そうすると、本件特許発明1の乳化組成物が、請求項4でいう水相との乳化によって、前記特定の成分を配合して得られた乳化組成物の非常に小さい粒子が破壊され、前記特定の成分と後から添加される水相に含まれる成分の全成分を、順を問わずに混合した場合と同じ乳化状態になるのであれば、本件特許発明4が、甲1発明と区別し得ないといえるかもしれない。

ウ しかしながら、本件特許明細書には、「さらに用途によっては上記の乳化物に対して水相を添加して製剤にすることも可能である。水相には・・・が配合できる。しかし乳化安定性を低下させる物質についてはその量や種類が限定されることはいうまでもない。」(段落【0010】)と、本件特許発明1の乳化組成物に水相を添加して製剤にする際には、乳化安定性を低下させない配慮が必要である旨の記載がなされているし、また、本件特許発明1の乳化組成物を作成した後、その粒径は、適当に精製水で希釈して乳度分布計で測定したと説明されているように(【0021】)、本件特許発明1の乳化組成物をさらに水相と乳化する際に、既に形成された非常に小さい粒子の粒子径が概ね維持されると解するのが技術的には合理性があると考えられ、これを否定すべき事情が示されているものではない。また、粒子径が維持されたまま水相を乳化させた場合と、全成分を、順を問わずに混合した場合とでは、粒子を形成する際に存在する成分が異なるから、同様の粒子が形成されるとは考えにくく、同じ乳化状態になるとはいえない。
これに対して、「甲第1号証に記載された発明」は、単に全成分表示に基づいて把握される発明とせざるを得ないことから、本件特許発明1で特定される成分を配合した界面活性剤を含まない乳化組成物に、次いで他の成分を含む水相を乳化させた乳化組成物に限定されるものではない。すなわち、単に全成分表示に基づいて把握される甲1発明は、いわば本件特許発明4の上位概念の発明に相当するというべきものである。そして、本件特許発明4は、本件特許発明1で特定される成分を配合することにより、従来技術では得られなかった小さな粒子径の乳化組成物を得て、これに水相を乳化させるものである。
そうすると、本件特許発明4は、甲1発明が単に37種類の配合成分のみが特定されたものであるのに対して、それら成分のうちの特定の4種類の成分を使用して一旦小さな粒子径の乳化組成物を得て、更に該組成物を水相と乳化させて得られた乳化組成物に関するものであり、このような特定事項が付加されることによって、特有の効果を奏するものといえるので、本件特許発明4は甲1発明とは別異の技術思想を表現するものというべきである。

エ よって、本件特許発明4は、甲第1号証に記載された発明とはいえない。

(6)小括
以上のとおり、審判請求人の主張する<無効理由1-1>によっては、本件特許を無効とすることはできない。

3 <無効理由1-2>について
(1)特許法第29条第1項第1号における「公然知られた発明」であるかについて
特許法第29条第1項第1号における、「公然知られた発明」とは、不特定の者に秘密でないものとしてその内容が知られた発明を意味すると解される。
上記「1 甲第1号証及び甲第2号証について」で検討したとおり、甲第1及び2号証の美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」は、本件特許出願前に公衆に知られた状態になっていたといえるから、不特定の者に秘密でないものとしてその内容が知られたものといえる。

(2)甲第1及び2号証の美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」から把握される「公然知られた発明」について
甲第1及び2号証の美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」に含まれる成分等、すなわち、美容液の内容を知るには、美容液の成分分析に依らなければならないと解されるところ、甲第1号証の成分表示によれば、美容液は37種類という多数の成分からなり、しかも、そのそれぞれが異なる量比で配合され、さらには表示成分以外も含まれていることも技術的に明らかというべきである(乙第1号証も参照)。
そうすると、当業者といえども、これら多数の成分や微量の未記載の成分についても分析して特定することは極めて困難といえることから、美容液の成分等の「発明の内容」を知るには、結局のところ、甲第1号証に記載された全成分表示に基づいて把握される発明とならざるを得ないものと解される。
よって、甲第1及び2号証の美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」から把握される「公然知られた発明」は、上記「2 <無効理由1-1>について」で検討した、甲第1号証に記載された発明と同一となる。

(3)小括
したがって、上記「2 <無効理由1-1>について」で検討したのと同様の理由により、本件特許発明1、2、及び4は、甲第1及び2号証の美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」から把握される「公然知られた発明」と同一とはいえない。
以上のとおり、審判請求人の主張する<無効理由1-2>によっては、本件特許を無効とすることはできない。

4 <無効理由1-3>について
(1)特許法第29条第1項第2号における「公然実施された発明」であるかについて
特許法第29条第1項第2号における、「公然実施された発明」とは、その内容が公然知られる状況又は公然知られるおそれのある状況で実施をされた発明を意味すると解される。
上記「1 甲第1号証及び甲第2号証について」で検討したとおり、甲第1及び2号証の美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」は、本件特許出願前に公衆に知られた状態になっていたといえるから、その内容が公然知られる状況又は公然知られるおそれのある状況で実施をされたものといえる。

(2)甲第1及び2号証の美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」から把握される「公然実施された発明」について
上記「3 <無効理由1-2>について」で検討したのと同様に、甲第1及び2号証の美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」から把握される「公然実施された発明」は、結局のところ、甲第1号証に記載された全成分表示に基づいて把握される発明とならざるを得ないものと解される。
よって、甲第1及び2号証の美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」から把握される「公然実施された発明」は、上記「2 <無効理由1-1>について」で検討した、甲第1号証に記載された発明と同一となる。

(3)小括
したがって、上記「2 <無効理由1-1>について」で検討したのと同様の理由により、本件特許発明1、2、及び4は、甲第1及び2号証の美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」から把握される「公然実施された発明」と同一とはいえない。
以上のとおり、審判請求人の主張する<無効理由1-3>によっては、本件特許を無効とすることはできない。

5 <無効理由2-1>?<無効理由2-3>について
(1)はじめに
上記「2 <無効理由1-1>について」?「4 <無効理由1-3>について」で検討したとおり、甲第1号証に基づいて把握される「刊行物に記載された発明」、甲第1及び2号証の美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」から把握される「公然知られた発明」、及び甲第1及び2号証の美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」から把握される「公然実施された発明」は、いずれも同一となる。
したがって、特許法第29条第2項の規定に該当するか否かの検討に際して、<無効理由2-1>?<無効理由2-3>は、いずれも同一の発明、すなわち、上記「甲1発明」に対して検討すれば良いこととなるので、以下これら3つの理由について併せて検討する。

(2)本件特許発明1について
ア 本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、両発明は少なくとも、前者が、界面活性剤を含まないとするのに対し、後者が、界面活性剤である「水添レシチン」及び「リゾレシチン」を配合している点で相違する。

イ そこで、上記相違する点について検討する。
(ア)本件特許発明1は、本件特許明細書の【0001】にあるとおり、粒子が非常に小さく、界面活性剤を用いない乳化物に関する。
そして、本件特許明細書の実施例に示されるように、請求項1で特定された 「スフィンゴ糖脂質の1種以上」、「分子内に水酸基を2個もつ多価アルコールの1種以上」、「グリセリン、ジグリセリンより1種以上選択される分子内に水酸基を3個以上もつ多価アルコール」、及び「ソルビトール、マルチトール、グリコシルトレハロース、水添デンプン分解物混合物から選択される糖の1種以上」の4つの成分(以下、「特定された4成分」という。)を配合することで、界面活性剤を使用することなく、粒子が非常に小さい乳化組成物を得ることができるものである。

(イ)一方、甲第1号証及び甲第2号証を、技術常識を踏まえつつ詳細に検討しても、全成分表示として37種類の成分が記載されているだけであって、このような表示に基づいて、界面活性剤である「水添レシチン」及び「リゾレシチン」を含有しない乳化組成物を得ようとする動機付けが生ずるともいえない。
また仮に、何らかの根拠によりそのような動機付けが生ずるとしても、残りの成分の中から、どのような成分を選択すれば、(「水添レシチン」及び「リゾレシチン」を含めた)界面活性剤を使用することなく粒子が非常に小さい乳化組成物が得られるかについて、何ら示すところはない。ましてや、甲1発明から、本件特許発明1で特定された4成分を特に選択することによって、粒子が非常に小さい乳化組成物が得られることについて、何ら教示するところはないと言わざるをえない。

(ウ)このことは、甲第9号証乃至甲第12号証を考慮しても同様である。
甲第9号証及び甲第10号証は、一般的な美容液に配合される油の含有量を示したものであり、また、甲第11号証及び甲第12号証は、機械的手段により小さい粒子の乳化組成物を得る方法を示したものであり、これらを考慮しても、本件特許発明1で特定された4成分を特に選択することを示唆するものでも、それにより非常に粒子が小さい乳化組成物が得られることを示唆するものでもない。

(エ)そして、本件特許明細書には、請求項1で特定された4成分を配合することで、界面活性剤を用いることなく、非常に粒子が小さい乳化組成物を得ることができることが、実施例、比較例によって示されている。

ウ よって、本件特許発明1は、甲第1号証に基づいて把握される「刊行物に記載された発明」、甲第1及び2号証の美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」から把握される「公然知られた発明」、又は甲第1及び2号証の美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」から把握される「公然実施された発明」と、甲第9号証乃至甲第12号証及び周知の事項に基づいて、当業者が容易になし得たものということはできない。

(3)本件特許発明2?4について
本件特許発明2?4は、いずれも本件特許発明1を引用して、その発明を特定するために必要な事項の一部をさらに限定するものであるから、上記「(2)本件特許発明1について」と同様な理由により、当業者が容易になし得たものということはできない。

(4)小活
以上のとおり、審判請求人の主張する<無効理由2-1>?<無効理由2-3>によっては、本件特許を無効とすることはできない。

6 <無効理由3-1>?<無効理由3-2>について
請求人の主張は、要するに、本件特許発明1?4は、油分以外の成分の量が特定されていないから、効果を発揮できない部分や、製造することができない部分を含んでいる、というものである。
しかしながら、本件特許発明1?4の課題は、請求項1で特定された4成分と、全体の30%以下の油分を配合することで、界面活性剤を用いることなく、非常に粒子が小さい乳化組成物を得ることと認められる。
そして、本件特許明細書には、請求項1で特定された4成分について、「スフィンゴ糖脂質の1種以上」以外のいずれかの成分を配合しない場合との比較や、油分の配合量を30%以上とした場合との比較が示されるとともに、本件特許発明の実施例では、いずれも前記課題を解決できたことが示されている。
そうすると、本件特許明細書は、特に実施例、比較例の記載を参酌することにより、本件特許発明の課題が解決できることを当業者が認識できる程度に記載されているといえるし、当業者が実施できる程度に記載されているということができる。
そして、配合量が特定されていなくても、従来技術に対する本件特許発明の内容は明確に特定されているというべきである。

以上のとおり、審判請求人の主張する<無効理由3-1>?<無効理由3-2>によっては、本件特許を無効とすることはできない。

7 <無効理由4>について
請求人の主張は、油分の配合量について下限値が記載されていないから、配合しない場合を含むのかどうか不明確というものである。
しかしながら、本件特許発明1における、「全体の30%以下の油分を配合した」(下線は当審にて付与)との記載から、油分が必須成分であることは当業者がただちに理解できることである。
したがって、下限値を規定しないことで配合しない場合を含むことになって不明確であるという主張は、採用することはできない。

以上のとおり、審判請求人の主張する<無効理由4>によっては、本件特許を無効とすることはできない。

8 審判請求人の主張に対する補足
審判請求人は、口頭審理陳述要領書及び平成26年7月4日付け上申書において、甲第11号証、甲第22号証及び甲第23号証を示して、粒子が小さい乳化組成物を得ることや、化粧品において界面活性剤を含まない製品とすることは、技術分野における共通の技術課題であるから、本件特許発明1?4は、当業者が容易になし得たものである旨主張する。
これらの事項が本出願前から周知の技術事項であるとしても、甲第1及び2号証の美容液「アッシュ・エルSEエッセンスn」に含まれる37種類もの成分から、請求項1で特定された4成分を選択することで、界面活性剤を用いることなく、非常に粒子が小さい乳化組成物を得られることが示唆されるものではないから、審判請求人の主張は採用できない。

また、審判請求人は、平成26年7月4日付け上申書において、さらに甲第24号証を示して、本件特許発明1?4は、油分以外の成分の量が特定されていないため、いわゆるサポート要件及び実施可能要件を満たしていない旨主張する。
しかしながら、甲第24号証には、リポソームの乳化に関する模式図などが示されているに過ぎず、既に検討した判断に影響を与えるものではないから、審判請求人の主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件請求項1?4に係る発明の特許を無効とすることができない。また、他に本件請求項1?4を無効にすべき理由を発見しない。
審判に関する費用については、特許法第169条2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-28 
結審通知日 2014-10-30 
審決日 2014-11-11 
出願番号 特願2007-135688(P2007-135688)
審決分類 P 1 113・ 536- Y (A61K)
P 1 113・ 113- Y (A61K)
P 1 113・ 537- Y (A61K)
P 1 113・ 121- Y (A61K)
P 1 113・ 112- Y (A61K)
P 1 113・ 111- Y (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川島 明子  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 関 美祝
冨永 保
登録日 2013-03-29 
登録番号 特許第5230965号(P5230965)
発明の名称 乳化組成物  
代理人 早川 裕司  
代理人 村雨 圭介  

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