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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1295945
審判番号 不服2014-8610  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-09 
確定日 2015-01-07 
事件の表示 特願2013-245029「端子付電気化学セル」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月19日出願公開、特開2014-112676〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2002年9月24日(優先権主張2001年9月28日)を国際出願日とする特願2003-533364号(以下「原原原出願」という。)の一部を平成20年8月8日に新たな特許出願とした特願2008-205484号(以下「原原出願」という。)の一部を平成24年3月30日に新たな特許出願とした特願2012-079631号(以下「原出願」という。)の一部をさらに平成25年11月27日に新たな特許出願としたものであって、平成26年1月6日付けで拒絶の理由が通知され、同年1月27日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年2月10日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、同年5月9日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 本願発明に対する判断
1 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年1月27日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。

「【請求項1】
正極と負極となる2つのセルケースを有し、非プロトン性溶媒を用いた電解液を備え、リフローハンダ付けが可能である所定高さのボタン型或いはコイン型の電気化学セルと、該電気化学セルを基板上に表面実装するために2つのセルケースにそれぞれ溶接された2つの端子とを備えた端子付電気化学セルにおいて、
前記2つのセルケースの一方は、前記電気化学セルを基板上に表面実装するときに該基板に近接しないセルケースであり、
前記2つのセルケースの他方は、前記電気化学セルを基板上に表面実装するときに該基板に近接するセルケースであり、
前記2つの端子の一方は、前記2つのセルケースの一方に溶接されたA面と、該A面と連続するセル高さ方向のB面と、該B面と連続し且つA面と略平行なハンダ付け用のC面とを有しており、
前記2つの端子の他方は、前記2つのセルケースの他方に溶接された面と、該面と連続するハンダ付け用の面とを有しており、
前記2つの端子の一方における前記A面は、前記B面との境界部の長さが該長さと略平行な前記電気化学セルの中心部における幅よりも短く、
前記2つのセルケースのうちの直径が大きい方のセルケースに外接する正方形を描いたとき、前記2つの端子の一方における前記C面は前記外接正方形の2辺に略平行で、且つ、角部を構成する2辺を有していると共に、前記2つの端子の他方における前記ハンダ付け用の面は前記外接正方形の2辺に略平行で、且つ、角部を構成する2辺を有している、
ことを特徴とする端子付電気化学セル。」

2 原査定の根拠となった拒絶理由の概要
理由1.この出願の下記の請求項に係る発明は、原原原出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、原原原出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由3.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
理由1
引用文献1(特開2000-286153号公報)の図1-5に開示された発明の「電気二重層コンデンサ」(「端子付電気化学セル」に相当)は(・・・省略・・・)本願の請求項1-3に係る発明の「端子付電気化学セル」との比較においては、以下の点で相違をし、その他の点で一致している。
(・・・省略・・・)
以上のとおり、上記相違点(1-a)乃至(1-d)に示した本願の請求項1-3に係る発明の発明特定事項は、引用文献1,3-5に記載された発明及び平成25年12月12日に提出された上申書記載の「親出願」の出願時の周知技術に基づき、いずれも当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、本願の請求項1-3に係る発明は、依然として特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

理由3
本願の請求項1-3に係る発明が解決しようとする課題は、明細書の段落【0008】に記載されるような「耐熱性に優れ且つリフローハンダ付が可能であり、基板上に表面実装する際、占有スペースが最小限である端子付電気化学セルを提供する」ことと理解される。
しかしながら、本願の請求項1-3に係る発明は、(・・・省略・・・)、必ずしも「占有スペースが最小限である」とはいえないような態様、すなわち、上記課題を解決しえない場合を包含する。
したがって、本願の請求項1-3には、特に「占有スペースが最小限である」と認めるに足るだけの発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、本願の請求項1-3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。
よって、本願の請求項1-3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、依然として特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
よって、請求項1-3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2000-286153号公報
3.特開平8-97092号公報
4.特開平8-45767号公報
5.実願平3-84485号(実開平5-28024号)のCD-ROM

3 引用刊行物の記載事項
(1)原査定の根拠となった平成26年1月6日付けの拒絶の理由において引用文献1として引用された、原原原出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-286153号公報(以下「引用例1」という。)には、「電気二重層コンデンサ」(発明の名称)に関し、図1?5、10、11とともに以下の事項が記載されている(なお、以下の下線は当合議体が付加したものである。)。

(1ア) 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はコイン型の電気二重層コンデンサに関し、さらに詳しく言えば、そのコンデンサセルに座板を装着して回路基板への表面実装を可能とした電気二重層コンデンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】コイン型(もしくはボタン型)の電気二重層コンデンサを回路基板上に表面実装するにあたっては、特にリフローハンダ付け時の耐熱性と、回路基板に載置する際の安定性が問題となる。
【0003】そこで、本出願人は例えば実願平3-84484号(実開平5-28023号)において、座板付きの電気二重層コンデンサを提案しており、その構成を図10の斜視図および図11の断面図により説明する。
【0004】これによると、この電気二重層コンデンサ1は、コイン型のコンデンサセル2を備えており、その各電極面2a,2bには導電性の帯板からなるリード端子3,4がそれぞれ溶接されている。なお、コンデンサセル2には各電極面2a,2bを除いて熱収縮性で電気絶縁性のスリーブ6が被せられている。」

(1イ) 「【0007】
【発明が解決しようとする課題】これによれば、リフローハンダ時の熱が座板5によって緩和されるとともに、座板5が平板であることにより実装時の安定性が得られるのであるが、なおも次のような課題がある。
【0008】まず、組み立て性について言えば、スリーブ6を被覆する工程や、それに加えてリード端子3,4を2度にわたって折り曲げる工程を必要とするため、その作業に手間がかかる。また、リード端子3,4の各先端部3a,4aを折り曲げて座板5を保持するようにしているため、コンデンサセル2と座板5との間でガタつきが発生するおそれがある。これは、特に振動や衝撃を受ける車載用の場合に問題となる。
【0009】また、リード端子3,4の各先端部3a,4aにスプリングバックが生じやすく、これが原因で実装時の安定性が損なわれるおそれも含んでいる。次に、回路基板上での占有スペースの面から言えば、リード端子3,4の各先端部3a,4aを座板5の外側に向けて折り曲げているため、その分、座板5も大型となり、高密度実装に支障が生ずる。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的は、組み立て性が良好のもとで、コンデンサセルと座板とを強固に連結し得、しかも回路基板上での占有スペースを可及的に小さくできるようにした電気二重層コンデンサを提供することにある。
(・・・途中省略・・・)
【0014】これとは別に、一方のリード端子を、あらかじめその両端側が互いに平行となるように断面コ字型に折り曲げておき、射出成形後の座板に対してその端縁側からはめ込むようにしてもよく、この態様も本発明に含まれる。」

(1ウ) 「【0020】
【発明の実施の形態】次に、本発明を図面に示されている実施例により説明する。図1は、この実施例において、コンデンサセルに座板を取り付けた状態での断面図である。図2?図5は座板のみの図で、図2の平面図を基準として、図3はその底面図、図4は正面図、図5は背面図である。
【0021】図1に示されているように、この電気二重層コンデンサ10は、コイン型(もしくはボタン型)のコンデンサセル11と、座板21と、コンデンサセル11の各電極面に接続される一対のリード端子31,32とを備えている。
【0022】コンデンサセル11は皿状のケース本体12と、それに被せられるキャップカバー13とからなるコイン状のケースを有し、その内部にはセパレータを挟んで対向的に配置された一対の分極性電極シートが所定の電解液を含んだ状態で封入されている。
【0023】ケース本体12とキャップカバー13はともにステンレス材からなり、この実施例では、ケース本体12側の大径電極面121が正極で、キャップカバー13側の小径電極面131が負極とされている。これとは異なり、大径電極面121側が負極で、小径電極面131側が正極であってもよいが、いずれにしても、この実施例では図示されていないが大径電極面121には、定格電圧や静電容量などの製品属性が印刷もしくは刻印により表示されている。
【0024】座板21は平板状の基板部22と、この基板部22上に一体に形成された囲壁部23とを有し、その全体が耐熱性の合成樹脂から構成されている。この場合、基板部22の隣接する2つの角部には極性判別用の角切り221,221が設けられている。
【0025】基板部22の上面側には、囲壁部23によってコンデンサセル11の収納凹部24が形成されている。この収納凹部24は、コンデンサセル11の大径側のケース本体12にほぼ合致する円形凹部であり、その底部には一方のリード端子31が配置されている。」

(1エ) 「【0029】図1の断面図に示されているように、リード端子31は断面コ字型に折り曲げられており、その一方の端部311が収納凹部24内において、その底面と同一面となるように配置されている。そして、このリード端子31の他方の端部312は、壁体231側から引き出され、基板部22の端縁に沿ってコ字状に折り曲げられた上で、基板部22の底面側に回り込んでいる。
【0030】もっとも、この実施例においては、リード端子31はあらかじめ上記のように断面コ字型に折り曲げられ、座板21の成形金型内にインサート金具として挿入され、座板21の射出成形時に同座板21に対して一体的に組み込まれている。」

(1オ) 「【0034】座板21の基板部22には、リード端子31の一方の端部311を同基板部22の底面側に露出させる貫通孔26が設けられている。したがって、これによればその貫通孔26を通して、リード端子31をコンデンサセル11にレーザー溶接や抵抗溶接などの溶接手段を用いて接続することができる。貫通孔26の形状に特に制限はない。
【0035】座板21の壁体232側には、他方のリード端子32が取り付けられる。このリード端子32も断面コ字型に折り曲げられている。すなわち、リード端子32は、コンデンサセル11の負極側電極面131に対してほぼ平行に延在する一方の端部321と、座板21の底面に対してほぼ平行に延在する他方の端部322と、それらの間にあって壁体232の側面に沿わされる中間部323とを有している。
【0036】このリード端子32もあらかじめ断面コ字型に折り曲げ成形され、収納凹部24内にコンデンサセル11をはめ込んだ後、その負極側電極面131と座板21の底面とを、その両端部321と322とで挟み込むように、座板21に取り付けられる。
【0037】この意味で、リード端子32はバネ弾性を有する金属板からなり、あらかじめその両端部321,322間の間隔が中間部323の高さ幅よりも若干狭くなるように折り曲げ加工されていることが好ましい。
【0038】座板21の基板部22の底面には、リード端子31,32の各端部312,322を同一面内に収納するリード収納溝222,223が設けられており、また、座板21の壁体232側には、リード端子32の中間部323を同一面内に収納するリード収納溝224が形成されている。」

(1カ) 「【0041】そして、他方のリード端子32を壁体232側から上記のように取り付け、そのリード端子32の端部321とコンデンサセル11の負極側電極面131とをレーザー溶接や抵抗溶接などで溶接するとともに、一方のリード端子31の端部311とコンデンサセル11の正極側電極面121とを貫通孔26を通してレーザー溶接や抵抗溶接などで溶接すればよい。」

(1キ)「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電気二重層コンデンサの一実施例を示した断面図。
【図2】上記実施例に用いられている座板の平面図。
【図3】上記座板の底面図。
【図4】上記座板の正面図。
【図5】上記座板の背面図。
(・・・途中省略・・・)
【図10】従来例を示した斜視図。
【図11】上記従来例の断面図。」

4 引用発明
ア 摘記した上記(1ア)の段落【0001】の「本発明はコイン型の電気二重層コンデンサに関し、さらに詳しく言えば、そのコンデンサセルに座板を装着して回路基板への表面実装を可能とした電気二重層コンデンサに関するものである。」及び上記(1イ)の段落【0007】の「リフローハンダ時の熱が座板5によって緩和されるとともに、座板5が平板であることにより実装時の安定性が得られる」との記載を参照すると、本発明の電気二重コンデンサは、座板21を介して、リフローハンダ付けによって回路基板へ表面実装されるものであることが理解できる。そして、摘記した上記(1ウ)の段落【0025】の記載を参照すると、電気二重層コンデンサ10の断面図である図1と座板21の平面図である図2から、「ケース本体12」が座板21と接するように、コンデンサセル11が座板21の収納凹部24にはめ込まれるとともに、「キャップカバー13」が座板12から離れた位置にあることが見て取ることができるから、「ケース本体12」は、回路基板に近接するケースであり、また、「キャップカバー13」は、回路基板に近接しないケースであることが理解できる。

イ 摘記した上記(1エ)、(1オ)、(1カ)の記載を参照すると、図1から、リード端子32は、断面コ字型に折り曲げられた形状であり、キャップカバー13の負極側電極面131に対してほぼ平行に延在し、該負極側電極面131に溶接された「一方の端部321」と、座板21の底面に対してほぼ平行に延在し、該底面に設けられたリード収納溝223に収納された「他方の端部322」と、これらの間で連続するとともに、コンデンサセル11の高さ方向に延在する「中間部323」とを有していることが見て取れ、また、「リード端子31」は、断面コ字型に折り曲げられた形状であり、ケース本体12の正極側電極面121に溶接された「一方の端部311」と、座板21の底面に設けられたリード収納溝222に収納された「他方の端部312」とを有していることが見て取れる。

ウ 上記アで検討したように、電気二重層コンデンサ10は、座板21を介して、リフローハンダ付けによって回路基板に表面実装されるものであることを勘案すると、電気二重層コンデンサ10がリフローハンダ付けによって表面実装される際に、座板21の基板部22の底面のリード収納溝に収納された「他方の端部322」及び「他方の端部312」が、ハンダ付けされる箇所であることは明らかである。

エ 摘記した上記(1オ)の段落【0036】には「このリード端子32もあらかじめ断面コ字型に折り曲げ成形され、収納凹部24内にコンデンサセル11をはめ込んだ後、その負極側電極面131と座板21の底面とを、その両端部321と322とで挟み込むように、座板21に取り付けられる。」と記載されており、また、図1から、コンデンサセル11の負極側電極面131と座板21の底面はほぼ平行な位置関係を有していることが見て取ることができ、さらに、摘記した上記(1イ)の段落【0014】には「一方のリード端子を、あらかじめその両端側が互いに平行となるように断面コ字型に折り曲げておき、射出成形後の座板に対してその端縁側からはめ込むようにしてもよく」とも記載されているので、リード端子32の両端部321と322は、ほぼ平行な位置関係にあるものと認められる。

オ 摘記した上記(1オ)の段落【0038】を参照すると、座板21の底面図である図3から、座板21の基板部22の底面には、対向する辺が略平行であるいずれも矩形状のリード収納溝222と223が形成され、上記リード収納溝222には、リード端子31の他方の端部312が収納されていることが見て取れる。また、図3において、リード収納溝223には、リード端子32の他方の端部322が収納されるものであり、摘記した上記(1イ)の段落【0014】の「一方のリード端子を、あらかじめその両端側が互いに平行となるように断面コ字型に折り曲げておき、射出成形後の座板に対してその端縁側からはめ込むようにしてもよく」との記載から、上記リード収納溝223には、リード端子32の他方の端部322が、端縁部から、すなわち、図3の下方から、嵌め込まれるものと認められ、リード端子32の他方の端部322の形状も、リード収納溝223と同様の矩形状となっているものと認められる。
したがって、座板21の底面には、いずれも矩形状で、対向する辺が略平行となっている、他方の端部322及び他方の端部312が形成されているものと認められる。

上記3(1)の記載事項(1ア)?(1キ)と、上記ア?オの検討事項に基づいて、図1?図5に記載された実施例に注目して、本願発明の記載ぶりに則して整理すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「正極となるケース本体12及び負極となるキャップカバー13からなるコイン状のケースを有し、該ケースの内部には所定の電解液が封入され、リフローハンダ付けが可能であるボタン型或いはコイン型のコンデンサセル11と、座板21と、該コンデンサセル11を回路基板上に表面実装するために前記ケース本体12及びキャップカバー13にそれぞれ溶接された一対のリード端子31、32とを備えた電気二重層コンデンサ10において、
前記キャップカバー13は、前記コンデンサセル11を回路基板上に表面実装するときに該回路基板に近接しないケースであり、
前記ケース本体12は、前記コンデンサセル11を回路基板上に表面実装するときに該回路基板に近接するケースであり、
前記一対のリード端子31、32の一方であるリード端子32は、前記キャップカバー13の負極側電極面131に溶接された一方の端部321と、該一方の端部321と連続するとともに、コンデンサセル11の高さ方向に延在している中間部323と、該中間部323と連続し且つ前記一方の端部321と平行な位置関係にある、ハンダ付け用の他方の端部322とを有しており、
前記一対のリード端子31、32の他方であるリード端子31は、前記ケース本体12の正極側電極面121に溶接された一方の端部311と、該一方の端部311と連続するハンダ付け用の他方の端部312とを有しており、
前記リード端子32の他方の端部322と、前記リード端子31の他方の端部312は、いずれも矩形状であり、対向する辺が略平行となっている、
電気二重層コンデンサ10。」

5 対比
(1)本願発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「正極となるケース本体12及び負極となるキャップカバー13からなるコイン状のケース」は、本願発明の「正極と負極となる2つのセルケース」に相当する。

イ 引用発明の「所定の電解液」と、本願発明の「非プロトン性溶媒を用いた電解液」は、「電解液」の点で共通する。

ウ-1 引用発明の「コンデンサセル11」とは、摘記した上記(1ウ)の段落【0022】の記載によれば、「コイン状のケースを有し、その内部にはセパレータを挟んで対向的に配置された一対の分極性電極シートが所定の電解液を含んだ状態で封入されている」もので、「電気二重層コンデンサ」として機能するものである。

ウ-2 一方、本願発明の「電気化学セル」について、本願明細書の段落【0020】?【0021】には、次の記載がある。
「 本発明における発電素子は、電気化学エネルギーを蓄え外部にエネルギーを取り出すことが可能であれば特に限定されず1次、2次の種は問わないが、リフローハンダ付け処理を考慮すると電解液が非プロトン性溶媒からなる有機電解質電池であることが好ましい。
例えば、正極に二酸化マンガン、負極に金属リチウムを用いたリチウム一次電池や、正極にマンガン酸化物、負極にリチウムアルミ合金や珪素酸化物を用いたマンガン-リチウム合金系やマンガン-珪素酸化物系などの3V級電池、正・負極に活性炭の如き多孔質炭素材やポリアセン系有機半導体を用いた有機系キャパシタ、その他ニオブ酸化物-リチウム合金系、マンガン酸化物-チタン酸リチウム系などが挙げられる。」
ここに記載された「発電素子」とは本願発明の「電気化学セル」をその発電という機能の点から言い換えたものと理解されるから、本願発明の「電気化学セル」とは、セル内に電気化学エネルギーを蓄え外部にエネルギーを取り出すことが可能な発電素子のことであり、具体的には、「正・負極に活性炭の如き多孔質炭素材やポリアセン系有機半導体を用いた有機系キャパシタ」を含むものである。
そして、電気二重層を利用して電気を蓄積する電気二重層コンデンサは、キャパシタとも呼ばれており、電解液の種類によって大きく2種類に分けられ、1つは硫酸水溶液を電解質とした「水系キャパシタ」と呼ばれるもので、もう1つは第四アンモニウム塩/プロピレンカーボネート溶液などが電解液に使用される「有機系キャパシタ」と呼ばれるものであることは周知の技術事項である(この点については、例えば、特開2000-103610号公報(以下「周知文献1」という。)の段落【0002】、特開2000-143225号公報(以下「周知文献2」という。)の段落【0003】参照のこと。)。
つまり、本願発明の「電気化学セル」は、有機系キャパシタ、すなわち、電気二重層コンデンサを含むものである。

ウ-3 したがって、引用発明の「電気二重層コンデンサ10」を構成する「コンデンサセル11」は、本願発明の「電気化学セル」に相当する。
また、引用発明の「コンデンサセル11」が、本願発明の「電気化学セル」と同様に、所定高さを有していることは明らかである。

エ 引用発明の「回路基板」は、本願発明の「基板」に相当する。

オ 引用発明の「一対のリード端子31、32」は、本願発明の「2つの端子」に相当する。また、引用発明の「一対のリード端子31、32」が「前記ケース本体12及びキャップカバー13にそれぞれ溶接され」ていることは、本願発明の「2つの端子」が「2つのセルケースにそれぞれ溶接され」ていることに相当する。

カ 引用発明の「電気二重層コンデンサ10」は、「ケース本体12及びキャップカバー13にそれぞれ溶接された一対のリード端子31、32」を備えた「コンデンサセル11」であるから、上記ウの検討事項を勘案すると、引用発明の「電気二重層コンデンサ10」と本願発明の「端子付電気化学セル」は、「端子付き」の「充放電可能なセル」である点で共通する。

キ 引用発明の「キャップカバー13」は「前記コンデンサセル11を回路基板上に表面実装するときに該回路基板に近接しないケース」であり、引用発明の「ケース本体12」は「前記コンデンサセル11を回路基板上に表面実装するときに該回路基板に近接するケース」であるから、上記ア、ウ、エの検討事項を勘案すると、引用発明の「キャップカバー13」は、「前記電気化学セルを基板上に表面実装するときに該基板に近接しないセルケース」である本願発明の「2つのセルケースの一方」に相当し、引用発明の「ケース本体12」は、「前記電気化学セルを基板上に表面実装するときに該基板に近接するセルケース」である本願発明の「2つのセルケースの他方」に相当する。

ク 上記オにおいて検討したとおり、引用発明の「一対のリード端子31、32」は、本願発明の「2つの端子」に相当するものであるところ、引用発明の「一対のリード端子31、32の一方であるリード端子32」が有する「一方の端部321」、「中間部323」、及び「他方の端部322」は、それぞれ、本願発明の「2つの端子の一方」が有する「A面」、「B面」、及び「C面」に相当する。
そして、引用発明の「一方の端部321」が「前記キャップカバー13の負極側電極面131に溶接され」ていることは、本願発明の「A面」が「前記2つのセルケースの一方に溶接され」ていることに相当する。
また、引用発明の「中間部323」が「該一方の端部321と連続するとともに、コンデンサセル11の高さ方向に延在している」ことは、本願発明の「B面」が「該A面と連続」し「セル高さ方向」であることに相当する。
また、引用発明の「他方の端部322」が「該中間部323と連続」し「前記一方の端部321と平行な位置関係にあ」り「ハンダ付け用」であることは、本願発明の「C面」が「該B面と連続し且つA面と略平行なハンダ付け用」であることに相当する。

ケ 上記オにおいて検討したとおり、引用発明の「一対のリード端子31、32」は、本願発明の「2つの端子」に相当するものであるところ、引用発明の「一対のリード端子31、32の他方であるリード端子31」が有する「前記ケース本体12の正極側電極面121に溶接された一方の端部311」及び「該一方の端部311と連続するハンダ付け用の他方の端部312」は、それぞれ、本願発明の「2つの端子の他方」が有する「前記2つのセルケースの他方に溶接された面」及び「該面と連続するハンダ付け用の面」に相当する。

コ 引用発明において、「リード端子32」のうち、「他方の端部322」の平面形状については、図3に記載されたリード収納溝223と合致する形状と認められるから、略長方形状であるものと認められ、「中間部323」の平面形状については、図4に記載されたリード収納溝224と合致する形状と認められるから、略長方形状であるものと認められるが、引用文献1には、「中間部323」と連続して形成された「一方の端部321」の平面形状と大きさについては特に記載されておらず、不明である。
したがって、本願発明においては「前記2つの端子の一方における前記A面は、前記B面との境界部の長さが該長さと略平行な前記電気化学セルの中心部における幅よりも短く」なっているのに対して、引用発明においては「一方の端部321」と「中間部323」の境界部の長さと、該長さと略平行な、コンデンサセル11の中心部における「一方の端部321」の幅との関係がどのようになっているか不明である。

サ-1 上記ク及びケにおいて検討したとおり、引用発明の「他方の端部322」及び「他方の端部312」は、それぞれ、本願発明の「C面」及び「ハンダ付け用の面」に相当するところ、上記「他方の端部322」及び「他方の端部312」はいずれも矩形状であり、したがって、いずれも隣接する2辺とその間の角部を有しているものであるということができる。

サ-2 また、摘記した上記(1ウ)の段落【0025】を参照すると、座板21の平面図である図2から、座板21の基板部22の平面形状が、2箇所の角を切り落とした略正方形状であり、当該基板部22の上面には、コンデンサセル11の大径側のケース本体12に合致する円形の収納凹部24が形成されていることが見て取れる。ここで、円形の収納凹部24にはめ込まれたコンデンサセル11のケース本体12に接し、かつ、基板部22の略正方形状の4つの辺のそれぞれに平行な辺を有する、「仮想的な外接正方形」を想定することができる。このような「仮想的な外接正方形」の各辺は、図3に記載された座板21の基板部22の底面から見た場合においても、基板部22の略正方形状の対応する各辺と平行になっていることは明らかである。
そして、座板21の底面図である図3から、いずれも矩形状である上記「他方の端部322」及び「他方の端部312」の各辺が、座板21の基板部22の略正方形状の対応する各辺と略平行な位置関係にあることが見て取れる。
したがって、上記「仮想的な外接正方形」の各辺は、底面から見た基板部22の略正方形状の対応する各辺と平行であり、また、底面から見た基板部22の略正方形状の各辺は、矩形状の「他方の端部322」及び「他方の端部312」の対応する各辺と平行であるから、「仮想的な外接正方形」の各辺は、「他方の端部322」及び「他方の端部312」それぞれの対応する各辺と平行であるといえる。

サ-3 以上から、引用発明において、コンデンサセル11の大径側のケース本体12に接し、かつ、基板部22の略正方形状の4つの辺のそれぞれに平行な辺を有する、「仮想的な外接正方形」を想定した場合に、「他方の端部322」及び「他方の端部312」はいずれも、隣接する2辺とその間の角部を有しており、当該隣接する2辺は、上記「仮想的な外接正方形」の対応する各辺と略平行な辺である、ということができ、このことは、本願発明において「前記2つのセルケースのうちの直径が大きい方のセルケースに外接する正方形を描いたとき、前記2つの端子の一方における前記C面は前記外接正方形の2辺に略平行で、且つ、角部を構成する2辺を有していると共に、前記2つの端子の他方における前記ハンダ付け用の面は前記外接正方形の2辺に略平行で、且つ、角部を構成する2辺を有している」ことに相当する。

(2)そうすると、本願発明と引用発明との一致点と相違点は次のとおりである。
《一致点》
「正極と負極となる2つのセルケースを有し、電解液を備え、リフローハンダ付けが可能である所定高さのボタン型或いはコイン型の電気化学セルと、該電気化学セルを基板上に表面実装するために2つのセルケースにそれぞれ溶接された2つの端子とを備えた端子付電気化学セルにおいて、
前記2つのセルケースの一方は、前記電気化学セルを基板上に表面実装するときに該基板に近接しないセルケースであり、
前記2つのセルケースの他方は、前記電気化学セルを基板上に表面実装するときに該基板に近接するセルケースであり、
前記2つの端子の一方は、前記2つのセルケースの一方に溶接されたA面と、該A面と連続するセル高さ方向のB面と、該B面と連続し且つA面と略平行なハンダ付け用のC面とを有しており、
前記2つの端子の他方は、前記2つのセルケースの他方に溶接された面と、該面と連続するハンダ付け用の面とを有しており、
前記2つのセルケースのうちの直径が大きい方のセルケースに外接する正方形を描いたとき、前記2つの端子の一方における前記C面は前記外接正方形の2辺に略平行で、且つ、角部を構成する2辺を有していると共に、前記2つの端子の他方における前記ハンダ付け用の面は前記外接正方形の2辺に略平行で、且つ、角部を構成する2辺を有している、
ことを特徴とする端子付電気化学セル。」

《相違点》
《相違点1》
「電気化学セル」に封入される「電解液」が、本願発明においては「非プロトン性溶媒を用いた電解液」であるのに対して、引用発明においては「所定の電解液」であり、どのような電解液であるか特定されていない点。
《相違点2》
本願発明においては「前記2つの端子の一方における前記A面は、前記B面との境界部の長さが該長さと略平行な前記電気化学セルの中心部における幅よりも短く」なっているのに対して、引用発明においては「一方の端部321」と「中間部323」の境界部の長さと、該長さと略平行な、コンデンサセル11の中心部における「一方の端部321」の幅との関係は特定されていない点。

6 相違点についての当審の判断
(1)相違点1について
引用文献1において解決しようとする課題は、上記3で摘記した(1イ)の段落【0010】に記載されているように、組み立て性が良好のもとで、コンデンサセルと座板とを強固に連結し、回路基板上での占有スペースを可及的に小さくすることであるから、上記コンデンサセルとしては、電気二重層コンデンサとして充放電可能なものであれば、その内部構造や組成等について何ら特定されるものではなく、周知の電気二重層コンデンサが採用可能であることは明らかである。
そして、上記5(1)ウ-2で検討したように、電気二重層コンデンサとして、硫酸水溶液等の水系電解液を使用する水系キャパシタと、プロピレンカーボネート等の有機系(非水系)電解液を使用する有機系キャパシタは周知のものであり、また、有機系電解液を利用することによって、水系電解液を利用するよりもエネルギー密度を向上させることができることも周知の事項である(この点については、例えば、特開2001-217158号公報(以下「周知文献3」という。)の段落【0005】参照のこと。)。
したがって、引用発明の「電気二重層コンデンサ10」を構成する「コンデンサセル11」に封入される「所定の電解液」として、硫酸水溶液等の水系電解液と、プロピレンカーボネート等の有機系(非水系)電解液のいずれも採用し得るものであるが、特に、エネルギー密度の点から有利であるプロピレンカーボネート等の有機系(非水系)電解液を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。そして、プロピレンカーボネートが「非プロトン性溶媒」であることは、例えば、上記「周知文献3」の段落【0056】に記載されているように、技術常識である。
以上の検討から、引用発明において、「所定の電解液」として、プロピレンカーボネートのような「非プロトン性溶媒」を採用すること、すなわち、
上記相違点1に係る本願発明の構成事項を採用することは、当業者が容易になし得ることである。
また、上記相違点1に係る本願発明の構成事項を採用することによる効果も当業者が予想し得るものにすぎない。

(2)相違点2について
引用文献1から摘記した上記(1イ)の段落【0003】?【0004】を参照すると、従来例の斜視図を示した図10から、従来の電気二重層コンデンサにおいて、電極面2aに溶接されるリード端子3は、コイン型のコンデンサセル2の側面に沿って高さ方向に延在する部分(以下「側面部」という。)と、コンデンサセル2の上部の電極面2aに沿って水平方向に延在し溶接される部分(以下「電極面上の端部」という。)を有しており、上記「側面部」と「電極面上の端部」を接続する境界部分(以下「境界部」という。)において「側面部」と「電極面上の端部」は同じ幅を有するとともに、「電極面上の端部」は、「境界部」と略平行で、「境界部」の幅よりも幅が広い部分(以下「幅広部分」という。)を有しており、また、「電極面上の端部」の先端部が、コンデンサセル2の中心部付近に位置していることが見て取れる。
そして、上記5(1)コに記載したように、引用発明において、「中間部323」と連続して形成された「一方の端部321」の平面形状と大きさがどのようなものであるかは不明であるが、引用発明の電気二重層コンデンサは、引用文献1の図10と図11に記載された従来の電気二重層コンデンサを改良したものであり、表面実装を可能とするリード端子をコンデンサセルに溶接するという基本的な構成は、本願発明と従来の電気二重層コンデンサにおいて共通するから、引用発明においても、「コンデンサセル11」に溶接される「リード端子32」の「一方の端部321」の形状は、従来の電気二重層コンデンサと同様に、「幅広部分」を備えた形状となっているか、仮にそうではないとしても、「幅広部分」を備えた形状を採用することは、当業者が容易になし得ることであるといえる。

そして、上記「幅広部分」を備えた「リード端子32」を、「コンデンサセル11」のどの位置に溶接するかを検討するに、引用文献1の図10を参照すると、「電極面上の端部」の「幅広部分」はコンデンサセル2の中心部には位置しておらず、中心部からずれた箇所に位置していることが見て取れる。
しかしながら、コンデンサセルに表面実装用のリード端子を溶接するにあたり、当該リード端子の「幅広部分」を当該コンデンサセルの略中心部に位置させることは、原査定の根拠となった平成26年1月6日付けの拒絶の理由において引用文献3として引用された次の周知文献4と、同引用文献4として引用された次の周知文献5に、以下のとおり記載されているように、当業者によって普通に行われていることと認められる。

したがって、引用発明の「コンデンサセル11」に溶接された「リード端子32」について、上述のように、「リード端子32」の「一方の端部321」の形状として、「幅広部分」を備えた形状を採用するとともに、そのような「幅広部分」を「コンデンサセル11」の略中心部に位置させることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、このとき、引用発明において、「リード端子32」の「中間部323」と「一方の端部321」との境界部の長さは、該長さと略平行な、「コンデンサセル11」の略中央部における「一方の端部321」の「幅広部分」の幅よりも短くなっていることは明らかであるから、上記相違点2に係る本願発明の構成事項を採用することは、当業者が容易になし得たことであるということがいえる。
また、上記相違点2に係る本願発明の構成事項を採用することによる効果も当業者が予想し得るものにすぎない。

・周知文献4:特開平8-97092号公報
原原原出願の優先日前に頒布され、原査定の根拠となった平成26年1月6日付けの拒絶の理由において引用文献3として引用された周知文献4には、次の記載がある。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電子部品に係り、さらに詳しく言えば、回路基板に面実装される電気二重層コンデンサ等の電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】電子回路は、一般に、プリント配線された回路基板上に多数の電子部品を取り付けることにより構成されている。その電子部品の1つに、例えば図6に示す電気二重層コンデンサ60のように回路基板61に対して面実装可能に構成されているものがある。この電気二重層コンデンサ60は、例えばコイン状の部品素子62である2つのコイン型コンデンサセルを積層した部品本体63と、この部品本体63の軸線方向両端面の各電極面64,65に取り付けられた一対のリード端子66,67とを備えている。
【0003】リード端子66,67は、一方の前記電極面65(図中下方を向く電極面)を回路基板61に対して略平行、かつ、所定の高さに保持する脚部68,69を含んで構成されている。脚部68,69は、各々の先端68A,69Aが前記回路基板61に沿うとともに、同一線上において互いに離れる方向に折り曲げられている。このような電気二重層コンデンサ60は、前記先端68A,69Aを介して回路基板61上に載置され、これらの先端68A,69Aにハンダ付けすることにより電極面65を回路基板61から所定の高さに保持した状態で回路基板61に面実装される。」

イ 「【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する各実施例において、既に図6において説明した部材については、図中に同一符号を付すことにより説明を簡略あるいは省略する。図1には、本発明に係る第1実施例が示されている。本実施例において、電子部品である電気二重層コンデンサ10は、例えばコイン状の部品素子であるコイン型コンデンサセルを2つ積層した部品本体63と、この部品本体63の各電極面64,65に取り付けられた一対のリード端子11,67とを備え、回路基板61上に面実装されるものである。
(・・・省略・・・)
【0017】次に、本実施例における電気二重層コンデンサ10の組立手順を説明する。まず、所定の直径を有する丸棒材とを用意し、この丸棒材の長尺方向中央部および両端部を圧延により変形させることにより電極面接続部13および当接面15を形成するとともに、所定位置において折り曲げ加工を施すことにより一対の脚部14を形成してリード端子11を得る。そして、レーザ溶接等により、電極面64に電極面接続部13を接続するとともに、電極面65に既存部品のリード端子67を接続することにより、前記リード端子11,67を部品本体63に接続して電気二重層コンデンサ10を得る。この際、各リード端子11,67は、当接面15および脚部69の先端69Aが電極面65と平行になるとともに、回路基板61に対して同時に当接するようにしておく。」

ウ 摘記した上記段落【0002】の記載を参照すると、図6から、電気二重層コンデンサ60の電極面64に取り付けられるリード端子66は、その先端部近傍に幅広部分が形成され、当該幅広部分は、電極面64の略中央部に位置していることが見て取れる。

エ 摘記した上記段落【0012】と【0017】の記載を参照すると、図1(A)と(B)から、電気二重層コンデンサ10の電極面65に取り付けられるリード端子67は、その先端部近傍に幅広部分が形成され、当該幅広部分は、電極面65の略中央部に位置していることが見て取れる。

オ 段落【0017】には、図1に記載された電気二重層コンデンサ10において、リード端子67は電極面65に、レーザ溶接等により取り付けられることが記載されている。また、図6に記載された電気二重層コンデンサ60において、リード端子66はどのような方法で電極面64に取り付けられているか明記されていないが、図1の実施例と同様に、レーザ溶接等により取り付けられているものと認められる。

以上、上記ウ、エ、オで指摘した記載事項に基づくと、周知文献4には、電気二重層コンデンサの電極面64、65のそれぞれに、レーザ溶接等により、リード端子66、67を取り付けるにあたり、上記リード端子66、67の幅広部分をそれぞれ上記電極面64、65の略中央部に位置させることが記載されている。

・周知文献5:特開平8-45767号公報
原原原出願の優先日前に頒布され、原査定の根拠となった平成26年1月6日付けの拒絶の理由において引用文献4として引用された周知文献5には、次の記載がある。

ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電子部品に係り、さらに詳しく言えば、回路基板に面実装される電気二重層コンデンサ等の電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】電子回路は、一般に、プリント配線された回路基板上に多数の電子部品を取り付けることにより構成されている。このような電子部品においては、例えば図6に示す電気二重層コンデンサ60のように回路基板61に対して面実装可能に構成されているものがある。この電気二重層コンデンサ60は、例えば2つのコイン型コンデンサセル62を積層した部品本体63と、この部品本体63の軸線方向両端面の各電極面64,65に取り付けられた一対のリード端子66,67とを備えている。
【0003】リード端子66,67は、前記電極面65(図中下方を向く電極面)を回路基板61に対して略平行、かつ、所定高さに保持する脚部68,69を含んで構成されている。脚部68,69は、各々の先端68A,69Aが前記回路基板61に沿うとともに、同一線上において互いに離れる方向に折り曲げられている。このような電気二重層コンデンサ60は、前記先端68A,69Aを介して回路基板61上に載置され、これらの先端68A,69Aにハンダ付けすることにより電極面65を回路基板61から所定高さに保持した状態で回路基板61に面実装される。」

イ 「【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する各実施例において、既に図6において説明した部材については、図中に同一符号を付すことにより説明を簡略あるいは省略する。図1には、本発明に係る第1実施例が示されている。本実施例において、電子部品である電気二重層コンデンサ10は、先に説明した従来と同様の部品本体63と、この部品本体63の各電極面に取り付けられた一対のリード端子11,12とを備え、回路基板61上に面実装されるものである。
【0013】一方のリード端子11は、回路基板61と対面する電極面65に接続される電極面接続部13と、この電極面接続部13に接続される一対の脚部14と、この脚部14の先端に設けられた当接面15とを含んで構成され、電極面65を回路基板61に対して略平行、かつ、所定高さに保持可能とされている。電極面接続部13は電極面65に面当接可能な平面長方形状とされ、その長手方向を部品本体63の周面接線方向に向けて電極面65に接続されている。
(・・・省略・・・)
【0016】他方のリード端子12は、電極面接続部13が部品本体63における電極面65と反対側の電極面64に接続される関係上、当該リード端子12における脚部14の第2脚部材14Bがリード端子11における脚部14の第2脚部材14Bよりも所定寸法長く形成されている点がリード端子11と異なり、この他は基本的にリード端子11と同様に構成されている。
【0018】次に、本実施例における電気二重層コンデンサ10の作用を説明する。まず、所定直径を有する丸棒材を用意し、この丸棒材の長尺方向中央部および両端部を圧延により変形させることにより電極面接続部13および当接面15を形成するとともに、所定位置において折り曲げ加工を施すことにより一対の脚部14を形成してリード端子11,12を得る。そして、電極面64,65に電極面接続部13をレーザ溶接で接続することにより、前記リード端子11,12を部品本体63に接続して電気二重層コンデンサ10を得る。この際、各リード端子11,12は、各々の当接面15の平面が電極面65と平行になるとともに、回路基板61に対して同時に面当接するようにしておく。」

ウ 摘記した上記段落【0002】の記載を参照すると、図6から、電気二重層コンデンサ60の電極面64に取り付けられるリード端子66は、その先端部近傍に幅広部分が形成され、当該幅広部分は、電極面64の略中央部に位置していることが見て取れる。

エ 摘記した上記段落【0013】、【0016】及び【0018】には、図1に記載された電気二重層コンデンサ10において、リード端子11は電極面65に、リード端子12は電極面64に、それぞれ、レーザ溶接等により取り付けられることが記載されている。そして、図6に記載された電気二重層コンデンサ60において、リード端子66はどのような方法で電極面64に取り付けられているか明記されていないが、図1の実施例と同様に、レーザ溶接等により取り付けられているものと認められる。

以上、上記ウ、エで指摘した記載事項に基づくと、周知文献5には、電気二重層コンデンサの電極面64に、レーザ溶接等により、リード端子66を取り付けるにあたり、上記リード端子66の幅広部分を上記電極面64の略中央部に位置させることが記載されている。

(3)以上、上記(1)と(2)で検討したとおり、本願発明は、周知文献1?5に記載された周知の技術と引用文献1の従来技術を勘案することによって、引用発明から、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)請求人の主張について
請求人は、審判請求書の請求の理由の「(2)拒絶理由1に対する反駁」において、『引用文献1の図1?9に記載されている電気二重層コンデンサは「リード端子31」及び「リード端子32」を保持するための「座版21」を必須とするものであり、図10及び11に記載されている電気二重層コンデンサも「リード端子3」及び「リード端子4」を保持するための「座版5」を必須の部品とするものであるが、本願の請求項1に係る発明はこのような座板を必須とするものではない。』と主張している。
しかしながら、本願請求項1には、本願発明の前提となる構成について、「正極と負極となる2つのセルケースを有し、非プロトン性溶媒を用いた電解液を備え、リフローハンダ付けが可能である所定高さのボタン型或いはコイン型の電気化学セルと、該電気化学セルを基板上に表面実装するために2つのセルケースにそれぞれ溶接された2つの端子とを備えた端子付電気化学セルにおいて」と記載されており、「端子付電気化学セル」が「電気化学セル」及び「2つの端子」を備えるものであることは記載されているものの、本願発明の「端子付電気化学セル」が、「電気化学セル」及び「2つの端子」以外の構成を全く備えないものであることを特定するような記載は、請求項1にはされておらず、引用発明のような「座板」を備えるか否かを問わないものとなっている。
したがって、上記主張は、本願請求項1の記載に基づくものではないから、これを採用することはできない。

7.原査定の根拠となった理由3についての当審の判断
本願発明の課題は、本願明細書の段落【0008】に記載されているように、基板上に表面実装する際、占有スペースが最小限である端子付電気化学セルを提供することを含むものである。
そこで、本願発明が、上記の課題を解決しているかを検討するために、本願図1に記載された実施例1では、図1の中断左側の側面図から明らかなように、C面がセルケース側に折り曲げられているものであるのに対して、C面がセルケース側とは反対側に折り曲げられている点のみにおいて実施例1と異なるセル(以下「想定例」という。)を想定する。また、実施例1のC面に対応する、想定例の端子の折り曲げられた部分をC’面というものとする。
上記想定例のC’面は、セルの底面側から見たときに、実施例1のC面と線対称な図形になっているから、C面が「外接正方形の2辺に略平行で、且つ、角部を構成する2辺を有している」ならば、C’面も「外接正方形の2辺に略平行で、且つ、角部を構成する2辺を有している」ことは明らかであり、したがって、上記想定例が、本願発明の技術的範囲に含まれるものであることは明らかである。
そして、想定例のC’面はセルケースとは反対側に折り曲げられているものであり、また、C面の面積が限定されていないように、C’面の面積も限定されていないから、このような想定例を基板上に表面実装すると、C’面を有する「2つの端子の一方」及び「2つの端子の他方」による占有スペースは、どのような大きさにも、例えば、本願明細書の段落【0032】に記載されている比較例の「面積比137%」を超える大きさにもなり得るものであり、上記占有スペースが最小限となっていないことは明らかである。
つまり、本願発明の技術範囲に含まれる上記想定例は、基板上に表面実装する際に占有スペースが最小限である端子付電気化学セルであるとはいえない。
したがって、請求人は、審判請求書の請求の理由の「(3)拒絶理由3に対する反駁」において、本願発明は、「前記2つのセルケースのうちの直径が大きい方のセルケースに外接する正方形を描いたとき、前記2つの端子の一方における前記C面は前記外接正方形の2辺に略平行で、且つ、角部を構成する2辺を有している」との発明特定事項を有することによって、「外接正方形」から外側に突出するC面の一部の形を「外接正方形」に沿う最小の形に仕上げることができるので、「占有スペース」を極力小さくできると主張しているが、このような主張は上述の理由によって採用することができない。
よって、本願発明は、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することとなっている。

第3 結言
以上のとおり、本願発明は、周知文献1?5に記載された周知の技術と引用文献1の従来技術を勘案することによって、引用発明から、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願発明は、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することとなっているから、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-11 
結審通知日 2014-11-13 
審決日 2014-11-26 
出願番号 特願2013-245029(P2013-245029)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01G)
P 1 8・ 537- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 市川 篤  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 池渕 立
小川 進
発明の名称 端子付電気化学セル  
代理人 宮原 貴洋  
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