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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01D
管理番号 1295970
審判番号 不服2014-290  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-08 
確定日 2015-01-08 
事件の表示 特願2009-509173「目封止ハニカム構造体」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月23日国際公開、WO2008/126692〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年3月27日(優先権主張 平成19年3月27日)を国際出願日とする出願であって,平成25年5月17日付けで拒絶理由が通知され、平成25年6月18日付けで意見書が提出され、同年10月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成26年1月8日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明について
2-1.平成26年1月8日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)について
本件補正は、特許請求の範囲において、補正前の請求項1?4を引用する補正前の請求項8を補正後の請求項1?4とし、補正前の請求項5?7を引用する補正前の請求項8を補正後の請求項5?7とし、補正前の請求項1?7を削除し、補正前の請求項9、10の項番を変えて補正後の請求項8、9とするものであるから、特許法第17条の2第5項第1号に規定される請求項の削除を目的とする補正に該当する。
したがって、本件補正はこれを適法なものと認める。

2-2.本願発明の認定
上記のように本件補正が認められるので、本願の請求項1?9に係る発明は、平成26年1月8日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項5に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「【請求項5】
二つの端面の間を連通する複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、当該隔壁と一体的に形成された外周壁とを有するハニカム構造体であって、
前記セルが、前記ハニカム構造体の最外周部に位置し、その一部が前記外周壁と接触している不完全なセル断面を有する最外周部パーシャルセルと、当該最外周部パーシャルセル以外の完全なセル断面を有する完全セルとからなり、前記完全セルは、前記ハニカム構造体の端面が市松模様を呈するような目封止パターンで、その一端部に目封止部が形成され、前記最外周部パーシャルセルの内、下式により求められるセル面積率がS3未満のものについては、その全長に渡って閉塞されるよう前記外周壁と一体的に形成され、前記セル面積率がS3以上のものについては、前記目封止パターンにしたがってその一端部にのみ目封止部が形成され、前記目封止部の材質がチタン酸アルミニウム又はその複合材であり、かつ、前記隔壁の材質がコージェライト又はその複合材である目封止ハニカム構造体。
セル面積率(%)=最外周部パーシャルセルの面積/完全セルの面積×100」

第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の一つは、本願の補正前の請求項8に係る発明は、引用文献1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとするものである。

引用文献1:特開平7-246341号公報
引用文献2:特開昭58-45715号公報
引用文献3:特開2007-21483号公報

第4 引行物の記載
4-1.特開平7-246341号公報
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1である特開平7-246341号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(刊1-ア)「【請求項1】最外周部の不完全セルのみが選択的にセラミック材料によって塞がれていることを特徴とするセラミックハニカム構造体。
【請求項2】前記最外周部の不完全セルのうち、その面積が正規のセル面積の90%未満の不完全セルがセラミック材料によって塞がれている請求項1記載のセラミックハニカム構造体。
【請求項4】セラミックハニカム構造体の材料がコージェライトである請求項1?3のいずれか1項に記載のセラミックハニカム構造体。」
(刊1-イ)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、内燃機関の排ガス浄化用触媒および微粒子浄化用フィルタ、各種ガス・石油を燃料とする燃焼ガスの浄化および/または脱臭用触媒の担体として用いられるセラミックハニカム構造体に関するものである。」
(刊1-ウ)「【0009】【作用】上述した構成において、不完全セルのみを選択的に塞ぐことで安定的に高い強度が得られ、触媒担持時に触媒が不完全セルへは流入せずに触媒の無駄をなくすことができるとともに、完全セルを最大限触媒担持に使用でき触媒の性能を最大限に発揮させることができる。」
(刊1-エ)「【0011】【実施例】図1は本発明のセラミックハニカム構造体の一例の端面の状態を部分的に拡大して示す図である。図1に示す例において、セラミックハニカム構造体3は、隔壁1により流路方向(紙面に垂直)の貫通孔からなるセル2を形成して構成されており、材質としてはコージェライトを使用すると好ましい。そして、本例では、完全に四角形状を有する中央部の完全セル2aはそのまま流路方向に貫通した状態であるのに対し、円筒状の外周部のセルのうち四角形状を有さない不完全セル2b(好ましくは、完全セルの面積の90%未満のセル)には、好ましくはセラミックハニカム構造体3と同一の材料または耐熱性セラミックからなるセラミック材料4を詰めて閉塞させている。」
(刊1-オ)「【0012】図2および図3は本発明のセラミックハニカム構造体の一例の全体を示す図である。図2に示す例では、図1に示すように不完全セル2bのみをセラミック材料4で閉塞させたものに外周壁5を設けてセラミックハニカム構造体を構成した例を示している。図3に示す例では、図1に示すように不完全セル2bのみをセラミック材料4で閉塞させた状態でセラミックハニカム構造体を構成した例を示している。」
(刊1-カ)「【0016】本発明例の準備:焼成後の直径が101.6mmとなる部分に外壁形成用の溝を備え、その溝で区切ったとき正規の完全セルとの面積比が90%未満となる不完全セル部分の、セルを形成するための出口側区画部分を切除した口金を使用し、不完全セル部分の閉塞部も一体に押出成形・焼成し、図2に示す形状のコージェライト材料の本発明例1、3、4および5のセラミックハニカム構造体を得た。」
(刊1-キ)「【0025】耐熱衝撃性試験は、ハニカム構造体をまず700℃差(室温+650℃)に保った電気炉に入れ20分間保持した後室内に取り出し、取り出してから冷えるまで外観を観察しつつ細い金属棒でハニカム構造体の外側面を全周にわたって軽くたたくことにより行った。このとき、クラックが観察されずかつ打音が金属音なら合格とし、電気炉の温度をさらに25℃上げ、クラックが観察されるかまたは打音が濁音となるまで同様の試験を繰り返した。耐熱衝撃強度は、合格最高温度差として求めた。」
(刊1-ク)【図面の簡単な説明】に、それぞれ「本発明のセラミックハニカム構造体の一例の端面の状態を部分的に拡大して示す図」、「本発明のセラミックハニカム構造体の一例の全体を示す図」と題された【図1】、【図2】を以下に示す。



4-2.特開2007-21483号公報
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3である特開2007-21483号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(刊2-ア)「【請求項1】隔壁によって区画された流体の流路となる複数のセルを有し、所定の前記セルの一方の端部が目封止部材により目封止されてなるハニカム構造体であって、
前記目封止部材の剛性が、前記隔壁の剛性よりも低く、且つ、前記目封止部材の熱容量が、前記隔壁の熱容量よりも大きいハニカム構造体。
【請求項2】前記目封止部材の材質が、チタン酸アルミニウムあるいはその複合材であり、且つ前記隔壁の材質がコージェライトあるいはその複合材である請求項1に記載のハニカム構造体。」
(刊2-イ)「【0002】従来から、ディーゼルエンジンより排出される排気ガスのような含塵流体中に含まれる微粒子状物質(パティキュレートマター)を捕集除去するフィルタ(例えば、ディーゼルパティキュレートフィルタ:DPF)として、所定のセルを目封止部材で目封止したハニカム構造体が用いられている。この場合、ハニカム構造フィルタは、複数の多孔質隔壁により構成された多数のセル通路を互いに平行に形成するとともに、各セル通路の端部(あるいは中間部)を交互に目封止材により閉塞する構造を採用している。そして、捕集した微粒子状物質を燃焼しフィルタを再生するために、フィルタの排気上流に電気ヒーターあるいはバーナーが配置されていた。」
(刊2-ウ)「【0008】・・・排気ガスが比較的高温であり、かつ温度変化が激しくなるので、フィルタ入口における熱衝撃が厳しくなり、入口端面部においてクラックが発生するという問題が生じるようになってきた。」「【0011】本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、隔壁と目封止部との境界部や端面部にクラックあるいは溶損が生じ難く、耐久性に優れたハニカム構造体を提供することにある。」

4-3.特開昭58-45715号公報
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2である特開昭58-45715号公報(以下、「刊行物3」という。)には、以下の事項が記載されている。
(刊3-ア)「本発明は流体中に含まれる微粒子を除去するためのセラミツクフイルタに関するものであり」(1頁左下欄18-19行)
(刊3-イ)「一方最近自動車排気ガス用触媒担体・・・に広く利用されているセラミツクハニカム構造体は・・・単位体積当たりの表面積が大きな構造体である。
このセラミツクハニカム構造体の単位体積当たりの表面積が大きい点と多数の貫通孔を形成している隔壁が薄い点に着目して、第1図および第2図に示されるように多孔質セラミツク材料よりなる多数の貫通孔2を有するハニカム構造体の所定の貫通孔の一端部を封じ材4で封じるとともに、残りの貫通孔の他端部を封じ材4’で封じることにより隔壁3を濾過層(当審注:「濾」は原文では、さんずいに「戸」)とする単位体積当りのフイルタ面積が大きく圧力損失の少ないセラミツクハニカムフイルタ1が得られることが知られている。」(1頁右下欄8行-2頁左上欄2行)
(刊3-ウ)「具体例として第1図から第4図に示したセラミツクハニカムフイルタは開口形状が四角形、全体形状が円柱であり、端面が市松模様に封じられた場合を示した」(3頁右上欄3-6行)
(刊3-エ)「セラミツクハニカムフイルタの一例を示す正面図」(5頁左上欄5-6行)と題された第1図(5頁)を以下に示す。



第5 当審の判断
5-1.引用発明の認定
刊行物1の記載事項について検討する。
a)上記摘示事項(刊1-ア)から、請求項4を独立形式で記載して整理すれば、刊行物1には、
「セラミックハニカム構造体の材料がコージェライトであって、最外周部の不完全セルのうち、その面積が正規のセル面積の90%未満の不完全セルのみが選択的にセラミック材料によって塞がれているセラミックハニカム構造体。」について記載されているといえる。
b)(刊1-エ)には「セラミックハニカム構造体3は、隔壁1により流路方向(紙面に垂直)の貫通孔からなるセル2を形成して構成され」と記載され、(刊1-ク)の【図1】【図2】から「セラミックハニカム構造体3」は多数の「セル2」を有することがみてとれる。
また、(刊1-イ)には「セラミックハニカム構造体」が「内燃機関の排ガス浄化用触媒および微粒子浄化用フィルタ」として用いられることが示されており、そのような用途において、「排ガス」を流すあるいは「微粒子」を補足しガスを流すために「セル2」の「隔壁1」を多孔質とすることは技術常識である。
さらに、(刊1-オ)に「図1に示すように・・・外周壁5を設けてセラミックハニカム構造体を構成した」とあり、(刊1-ク)の【図1】【図2】から「外周壁5」は「セル2」と一体であるようにみてとれ、さらに(刊1-カ)に「本発明例の準備:焼成後の直径が101.6mmとなる部分に外壁形成用の溝を備え・・・一体に押出成形・焼成し、図2に示す形状の・・・セラミックハニカム構造体を得た。」とあることから、「セル2」を「形成」する「隔壁1」は「外周壁5」と一体に形成されているものといえる。
すると、「セラミックハニカム構造体」は、「流路方向の貫通孔」を形成する「多数」の「多孔質の隔壁」でなる「セルを形成して構成」され、「隔壁」と一体に形成されている「外周壁」を有するといえる。
c)(刊1-エ)には、「セル」が、「完全に四角形状を有する中央部の完全セル2aはそのまま流路方向に貫通した状態である」ものと、「円筒状の外周部のセルのうち四角形状を有さない不完全セル2b」とからなることが示されており、(刊1-ク)の【図1】【図2】から、「不完全セル2b」は「セラミックハニカム構造体」の「円筒状の外周部」に位置し、その一部が「外周壁」と接することがみてとれる。
すると、「セラミックハニカム構造体」の「セル」は、「セラミックハニカム構造体」の「円筒状の外周部」に位置し、その一部が「外周壁」と接する「四角形状を有さない不完全セル」と、当該「不完全セル」以外の「完全に四角形状を有する中央部の完全セル」とでなるものといえる。
d)上記a)から、「セラミックハニカム構造体」は「最外周部の不完全セルのうち、その面積が正規のセル面積の90%未満の不完全セルのみが選択的にセラミック材料によって塞がれている」ものである。
そして、(刊1-カ)には「正規の完全セルとの面積比が90%未満となる不完全セル部分の、セルを形成するための出口側区画部分を切除した口金を使用し、不完全セル部分の閉塞部も一体に押出成形・焼成し、図2に示す形状の・・・セラミックハニカム構造体を得た」と記載され、上記c)から「不完全セル部分」は「外周壁」と一体に形成されているものである。
すると、「セラミックハニカム構造体」の「正規の完全セルとの面積比が90%未満となる不完全セル部分」は「セラミックハニカム構造体」の長さ方向全長にわたって「閉塞」されて外周壁と一体に形成されているといえる。
e)上記a)?d)の検討結果から、本願発明の記載ぶりに則して表現すると、引行物1には、
「流路方向の貫通孔を形成する多数の多孔質の隔壁でなるセルを形成して構成され、隔壁と一体に形成されている外周壁を有するセラミックハニカム構造体であって、
前記セルが、セラミックハニカム構造体の円筒状の外周部に位置し、その一部が外周壁と接する四角形状を有さない不完全セルと、当該不完全セル以外の完全に四角形状を有する中央部の完全セルとからなり、
最外周部の不完全セルのうち、その面積が正規のセル面積の90%未満の不完全セルのみが選択的にセラミック材料によってセラミックハニカム構造体の長さ方向全長にわたって閉塞されて外周壁と一体に形成され、
セラミックハニカム構造体の材料がコージェライトである、セラミックハニカム構造体。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

5-2.本願発明と引用発明との対比
a)本願発明の「目封止ハニカム構造体」は「前記目封止部の材質がチタン酸アルミニウム又はその複合材であり、かつ、前記隔壁の材質がコージェライト又はその複合材である」から、その材質は「セラミック」といえる。
すると、本願発明の「目封止ハニカム構造体」と引用発明の「セラミックハニカム構造体」とは、「セラミックハニカム構造体」である限りにおいて一致する。
b)引用発明の「流路方向の貫通孔を形成する多数の多孔質の隔壁でなるセル」は、「貫通孔」を有するから「貫通孔」の両端面が存在することは当然である。
すると、引用発明の「セル」となる「流路方向の貫通孔を形成する多数の多孔質の隔壁」、「隔壁と一体に形成されている外周壁」は、それぞれ本願発明の「二つの端面の間を連通する複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁」、「当該隔壁と一体的に形成された外周壁」に相当する。
c)引用発明の「外周壁と接する四角形状を有さない不完全セル」、「当該不完全セル以外の完全に四角形状を有する中央部の完全セル」は、それぞれ本願発明の「外周壁と接触している不完全なセル断面を有する最外周部パーシャルセル」、「当該最外周部パーシャルセル以外の完全なセル断面を有する完全セル」に相当するから、引用発明の「前記セルが、セラミックハニカム構造体の円筒状の外周部に位置し、その一部が外周壁と接する四角形状を有さない不完全セルと、当該不完全セル以外の完全に四角形状を有する中央部の完全セルとからなり、」は、本願発明の「前記セルが、前記ハニカム構造体の最外周部に位置し、その一部が前記外周壁と接触している不完全なセル断面を有する最外周部パーシャルセルと、当該最外周部パーシャルセル以外の完全なセル断面を有する完全セルとからなり、」に相当する。
d)引用発明において、「正規のセル面積」は「完全に四角形状を有する中央部の完全セル」の面積であることは明らかだから、「面積が正規のセル面積の90%未満」とは
(「最外周部の不完全セル」の面積)/(「完全セル」の面積)×100=90%未満 であることを意味するといえる。
すると、上記式の左辺は本願発明の「下式」である「セル面積率(%)」に相当する。
そして、本願発明の「セル面積率」が「S3未満」の「セル」は「その全長に渡って閉塞され」るものであり、引用発明の「セル面積率」が「90%未満」の「セル」は「長さ方向全長にわたって閉塞され」るものであるから、本願発明の「S3未満」は引用発明の「90%未満」を包含するものである。
よって、引用発明の「最外周部の不完全セルのうち、その面積が正規のセル面積の90%未満の不完全セルのみが選択的にセラミック材料によってセラミックハニカム構造体の長さ方向全長にわたって閉塞されて外周壁と一体に形成され」るは、「最外周部の不完全セルのうち、セル面積率(%)が90%未満の不完全セルのみが選択的にセラミック材料によってセラミックハニカム構造体の長さ方向全長にわたって閉塞されて外周壁と一体に形成され」ると言い換えることができ、これは本願発明の「前記最外周部パーシャルセルの内、下式により求められるセル面積率がS3未満のものについては、その全長に渡って閉塞されるよう前記外周壁と一体的に形成され、」に相当する。
e)引用発明では「セラミックハニカム構造体の材料がコージェライトであ」るから、「セラミックハニカム構造体」を構成する「隔壁」の材料が本願発明と同様に「コージェライト」といえるから、本願発明と引用発明とは「セラミックハニカム構造体」の「隔壁の材質がコージェライト」である限りにおいて一致する。
f)以上から本願発明と引用発明とは
「二つの端面の間を連通する複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、当該隔壁と一体的に形成された外周壁とを有するハニカム構造体であって、
前記セルが、前記ハニカム構造体の最外周部に位置し、その一部が前記外周壁と接触している不完全なセル断面を有する最外周部パーシャルセルと、当該最外周部パーシャルセル以外の完全なセル断面を有する完全セルとからなり、
前記最外周部パーシャルセルの内、下式により求められるセル面積率がS3(=90%)未満のものについては、その全長に渡って閉塞されるよう前記外周壁と一体的に形成され、
前記隔壁の材質がコージェライトであるハニカム構造体。
セル面積率(%)=最外周部パーシャルセルの面積/完全セルの面積×100」
の点(一致点)で一致し、次の点で両者は相違する。

<相違点1>本願発明では「完全セルは、前記ハニカム構造体の端面が市松模様を呈するような目封止パターンで、その一端部に目封止部が形成され」るのに対して、引用発明では「目封止」していない点。

<相違点2>本願発明では「最外周部パーシャルセル」のうちの「セル面積率がS3以上のものについては、前記目封止パターン(市松模様を呈するような目封止パターン)にしたがってその一端部にのみ目封止部が形成され」るのに対して、引用発明では「面積が正規のセル面積」の「90%以上」の「不完全セル」を目封止していない点。

<相違点3>目封止部の材質について、本願発明は「チタン酸アルミニウム又はその複合材」を用いるのに対して、引用発明は目封止していない点。

5-3.相違点の検討
5-3-1.相違点1、2について
a)ハニカム構造体を用いた微粒子の捕集フィルタにおいて、「各セル通路の端部を交互に目封止材により閉塞」して、外周部に至るまで「市松模様を呈するような目封止パターン」とすることは、例えば上記刊行物2及び刊行物3に記載されており、周知技術である。
すなわち、刊行物2の記載事項(刊2-イ)には、「ディーゼルエンジンより排出される排気ガスのような含塵流体中に含まれる微粒子状物質(パティキュレートマター)を捕集除去するフィルタ(例えば、ディーゼルパティキュレートフィルタ:DPF)として、所定のセルを目封止部材で目封止したハニカム構造体が用いられている。この場合、ハニカム構造フィルタは、複数の多孔質隔壁により構成された多数のセル通路を互いに平行に形成するとともに、各セル通路の端部(あるいは中間部)を交互に目封止材により閉塞する構造を採用している。」と記載され、「各セル通路の端部(あるいは中間部)を交互に目封止材により閉塞する構造」は「市松模様を呈するような目封止パターン」に相当し、刊行物3の記載事項(刊3-ア)?(刊3-ウ)には、「自動車排気ガス用触媒担体」を発展させて「微粒子を除去するためのセラミックフィルタ」にする際に、「開口形状が四角形、全体形状が円柱であり、端面が市松模様に封じられた」ものが示され、その具体例として(刊3-エ)の第1図には、端面において貫通孔が外周部に至るまで市松模様に目封止された「セラミックハニカムフィルタ」がみてとれる。
b)また、当該周知技術においては、セルの開口部(一端部)へ流入した流体は、当該セルの反対側(他端部)が封止されていて透過できないので、セル間の多孔質隔壁を透過して隣接セルの開口する他端部へ流出し、多孔質隔壁がフィルターとして機能し「微粒子」を捕集できるものだから、「微粒子」の「捕集フィルタ」としての捕集の効率は、「市松模様を呈するような目封止パターン」となっている箇所が多いほどよいことは自明といえる。
c)そうすると、引用発明の「セラミックハニカム構造体」も、刊行物1の記載事項(刊1-イ)に「内燃機関」の「微粒子浄化用フィルタ」に用いられることが示されており、「微粒子浄化用」は微粒子の捕集を意味することは明らかなので、引用発明を微粒子浄化用フィルタとした場合に浄化効率や捕集効率を向上させることは自明の課題といえるから、引用発明において上記周知技術を適用して、フィルタの端面において、「各セル通路の端部を交互に目封止材により閉塞」して「市松模様を呈するような目封止パターン」とすること、及び、封止に際してセルの大半を占める「完全セル」が当該パターンで封止されるようにすること、並びに、その際に、「最外周部」のセルにおいても、「微粒子」捕集の効率化のために、「セル面積率がS3(90%)以上のものについては、前記目封止パターン(市松模様を呈するような目封止パターン)にしたがってその一端部にのみ目封止部が形成され」るようにすること、は当業者が容易に想到し得ることである。
よって、上記相違点1,2に係る本願発明の構成は、当業者が容易に想到し得ることである。

5-3-2.相違点3について
引用発明の「セラミックハニカム構造体」は、刊行物1の記載事項(刊1-イ)に「内燃機関」の「微粒子浄化用フィルタ」に用いられるものであることが示されており、同(刊1-キ)には、それらの用途に使用される場合にクラックの入らないような「耐熱衝撃強度」のような耐久性に優れることを要するものであることが示されている。
ここで、刊行物2の記載事項(刊2-ア)?(刊2-ウ)から、刊行物2には「ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)」として用いられる「ハニカム構造体」において、「熱衝撃」による「クラックあるいは溶損が生じ難く、耐久性に優れたハニカム構造体を提供する」ために、「目封止部材の材質が、チタン酸アルミニウムあるいはその複合材であり、且つ前記隔壁の材質がコージェライトあるいはその複合材である目封止の材質が、チタン酸アルミニウムあるいはその複合材」であることが示されている。
すると、引用発明において、「耐熱衝撃強度」のような耐久性をより向上させるために、上記「5-3-1.相違点1、2について」でみたように、「市松模様を呈するような目封止パターン」で目封止するに際し、目封止部材の材質を「チタン酸アルミニウムあるいはその複合材」とすることは当業者が容易に想到し得ることである。
よって、上記相違点3に係る本願発明の構成は、当業者が容易に想到し得ることである。

以上のように各相違点の構成について判断され、相違点1?3について総合判断しても、本願発明を当業者が容易に想到し得ないものであるとすることはできない。また、本願発明の作用効果も刊行物1?3の記載から想定される範囲を超えるものでもない。

5-4.むすび
したがって、本願発明は、引用発明、刊行物1、2の記載事項、および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に記載された発明に言及するまでもなく、本願は原査定の理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-06 
結審通知日 2014-11-11 
審決日 2014-11-25 
出願番号 特願2009-509173(P2009-509173)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 泰三  
特許庁審判長 河原 英雄
特許庁審判官 中澤 登
大橋 賢一
発明の名称 目封止ハニカム構造体  
代理人 木川 幸治  
代理人 渡邉 一平  
代理人 佐藤 博幸  
代理人 小池 成  

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