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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04J
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04J
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04J
審判 査定不服 原文新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04J
管理番号 1296004
審判番号 不服2012-24453  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-10 
確定日 2015-01-05 
事件の表示 特願2009-509865「OFDM-MIMOシステム向けランダムアクセスチャネル」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月22日国際公開、WO2007/133652、平成21年10月15日国内公表、特表2009-536806〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2007年5月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2006年5月9日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成24年8月1日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年12月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされ,平成25年10月3日付けで当審から拒絶理由が通知され,平成26年4月8日付けで手続補正がなされたものである。


第2 当審において通知した拒絶理由
当審において通知した平成25年10月3日付け拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)は,以下のとおりである。

理由1 この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号,第2号に規定する要件を満たしていない。

理由2 平成24年12月10日付けでした手続補正は,下記の点で国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る)の翻訳文,国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては,当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く)(以下,翻訳文等という)(誤訳訂正書を提出して明細書,特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあっては,翻訳文等又は当該補正後の明細書,特許請求の範囲若しくは図面)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。

理由3 この出願は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項が,下記の点で国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にないから,特許法第49条第6号に該当する(同法第184条の18参照)。

理由4 この出願は,発明の詳細な説明の記載が下記の点で,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由5 この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

[理由1について]
(1)「前記選択されたCAZACシーケンスの位相をサイクリックプレフィクスと結合」(請求項1,14)することは,発明の詳細な説明に記載も示唆もされておらず,位相とサイクリックプレフィクスとは技術的に全く異なる概念であって結合し得るものではないから自明でもない。
サイクリックプレフィクス(CP)については,【0008】,【0014】,【0020】,図1,図4に記載されるのみであるが,これらにも示されているように,サイクリックプレフィクス(CP)はIFFT後のOFDMシンボルの一部を冗長的にコピーして先頭に付け加えたものであって,CAZACシーケンスの「位相」とは技術的に全く異なる概念のものであるから,記載内容が技術的に意味不明である。
また,【0023】等の記載によれば,CAZACシーケンスの位相は,異なる位相を使用することによってRACHの数を増加するためのものであり,いわゆるサイクリック・シフトに関するものであるから,選択されたCAZACシーケンスの「位相」そのものには特段の意味はなく,「選択された位相のCAZACシーケンス」として意味を有するものと思われる。
このため,請求項1,14及びこれらの請求項を引用する各請求項に係る発明が不明になっており,技術的に特定できない。

(2)「増加した送信電力レベルで,もう1つのサイクリックプレフィクスと結合された前記CAZACシーケンスのもう1つの位相を送信する」(請求項1,14)ことは,発明の詳細な説明に記載も示唆もされておらず,自明でもない。
当該記載によれば,「選択されたCAZACシーケンスの位相が受信されたことの表示」(すなわち,ACK。)が受信されるまで,前回送信した時とは異なる「サイクリックプレフィクス」及び「CAZACシーケンスの位相」を送信することと解されるが,そのようなことは発明の詳細な説明及び図面に記載も示唆もされておらず,自明とする根拠も見いだせない。また,サイクリックプレフィクスは上記(1)のとおりのものであるから,ここでいう「もう1つのサイクリックプレフィクス」とはいかなるものか不明である。
このため,請求項1,14及びこれらの請求項を引用する各請求項に係る発明が不明になっており,技術的に特定できない。

(3)「前記表示とともに受信された時間アドバンスに応答して調整された送信タイミングで,・・・信号を送信する」(請求項1,14)ことは,発明の詳細な説明に記載されていない。
発明の詳細な説明には,【0019】に「ノードB730は,WTRUにTA情報も送信する(ステップ811)。WTRU710がノードB730からACKを受信すると,RACH送信電力の上昇を停止する(ステップ813)。次に,WTRU710はTAを調整し(ステップ815),RACHメッセージを送信する(ステップ817)。」と記載され,図8に同様の内容が示されているのみであるが,ここでいう「TA」が何を意味するのかは明らかにされていない。また,TAが「時間アドバンス(コマンド)」であるとしても,ACK応答(ステップ809)とTA情報の送信(ステップ811)とは独立したものであって,先にACKが受信されるものと解するのが自然であるから,時間アドバンスが「前記表示とともに受信され」ることは自明ではない。

(4)「調整された送信タイミングで,アクセスメッセージデータとCAZACシーケンスから導き出された参照シンボルとを含む信号を送信する」(請求項1,14)ことは,発明の詳細な説明に記載されていない。
参照シンボルについては,【0014】に「図4は,本発明によるRACHのOFDMサブフレーム構造を示す図である。・・・RACHは,LBに含まれる制御データおよび/またはSBに含まれる上り参照シンボルを含む。上り参照シンボルは,チャネル推定値およびチャネル品質情報(CQI:channel quality indication)値の両方を含む。上り参照シンボルは互いに直交しており,(1)自動的に多重化されるか(異なる組の副搬送波),(2)時分割多重されるか,または(3)符号多重化されるか(定振幅ゼロ自己相関(CAZAC)シーケンスの異なるシフト)のいずれかが実施される。」と記載され,アクセスメッセージデータについては,【0019】に「次に,WTRU710はTAを調整し(ステップ815),RACHメッセージを送信する(ステップ817)。」と記載され,図4,図8にそれぞれ当該内容が示されているのみであり,ここでいう「アクセスメッセージ」がいかなるものかは明らかにされていなく,「結合された選択されたCAZACシーケンスの位相および前記サイクリックプレフィクス」と「アクセスメッセージデータ」との関係が不明であるとともに,これらと図4のサブフレーム構造との関係も不明であり,また,アクセスメッセージデータとCAZACシーケンスと参照シンボルとの関係も不明であるから,当該記載は自明でもない。
このため,請求項1,14及びこれらの請求項を引用する各請求項に係る発明が不明になっており,技術的に特定できない。

(5)「前記結合された選択されたCAZACシーケンスの位相および前記サイクリックプレフィクスを送信するのに使用されるサブチャネルを示しているRACH割当て情報を受信する」(請求項1,14)ことは,発明の詳細な説明に記載されていない。
RACH割当てに関しては,【0016】に「複数のRACHを異なる組の副搬送波として定義してもよい。図6に,3つのRACH(RACH1,RACH2およびRACH3)を例として示す。それぞれのRACHが固有の1組の副搬送波を有する。RACH送信においては,定義されたRACHの1つをWTRUがランダムに選択してもよく,または所定の基準に基づいてWTRUに割り当てても良い。異なるユーザに異なるRACHを割り当てる方法の1つは,WTRUのシリアル番号を使用することである。または,各ユーザに固有の他の基準(ユーザIDなど)をRACH割り当てに使用しても良い。たとえば,ユーザ固有の番号の最終桁に基づいてスロットを割り当てる場合,まず番号が任意の数の場合には,ユーザを10のグループに分類することができる(0,1,2,...,9の各スロットに1グループ)。」と記載されるのみであり,「RACH割当て情報を受信する」ことは記載も示唆もされていなく,必ずしも「受信」しなければならないとはいえないから,自明でもない。

(6)「前記送信された結合され選択されたCAZACシーケンスの位相および前記サイクリックプレフィクス」の記載は,かかり受けが不明確であり,日本語として不明確である。また,「結合された選択されたCAZACシーケンスの位相および前記サイクリックプレフィクス」及び「アクセスメッセージデータ」と,他のWTRUからの「データ」及び「制御信号」との,データの内容としての関係が不明であり,後者はRACHに係るものか否か不明であるから,RACHとして周波数多重化されることなのか否か不明確である。このため,発明の詳細な説明との対応関係も不明になっている。

(7)「前記表示は,前記CAZACシーケンスのどの位相が受信されたかを示す」(請求項2,15)ことは,発明の詳細な説明に記載も示唆もされていなく,ACKメッセージの具体的内容も明らかにされておらず,上記(1)のとおり「位相」そのものに意味があるとも考えられないから,自明でもない。

(8)「前記処理装置および前記関連付けられた送信装置は,離散フーリエ変換(DFT)に続く逆高速フーリエ変換を使用して,前記CAZACシーケンスの前記選択された位相を処理する」(請求項3,16)ことは,発明の詳細な説明に記載も示唆もされていない。
図1の「ユーザデータ(シンボル)」と「結合された選択されたCAZACシーケンスの位相および前記サイクリックプレフィクス」との関係は明らかにされていなく不明であり,また,上記(1)のとおり位相とサイクリックプレフィクスとは技術的に全く異なる概念であるから,離散フーリエ変換(DFT)及び逆高速フーリエ変換にて「位相」が処理されることは技術的に意味不明である。したがって,上記構成は自明ともいえない。
このため,請求項3,16に係る発明が不明になっており,技術的に特定できない。

(9)「前記CAZACシーケンスの位相は,前記WTRUが前記無線通信システムへ伝達したい情報に基づいて決定される」(請求項8,21)こと,「前記処理装置および前記関連付けられた送信装置は,前記CAZACシーケンスの位相をランダムな方法で選択する」(請求項9,22)こと,「前記選択されたCAZACシーケンスの位相が割り当てられる」(請求項10,23)こと,「前記処理装置および前記関連付けられた送信装置は,前記選択されたCAZACシーケンスの位相が,ランダムな方法で選択され,および,前記選択されたCAZACシーケンスの位相が割り当てられる」(請求項11,24)ことは,いずれも発明の詳細な説明に記載も示唆もされていない。
CAZACシーケンスの位相の選択及び割り当てに関しては,発明の詳細な説明には何ら言及されていない。

(10)「前記処理装置は,前記アクセスメッセージを離散的フーリエ変換(DFT)し,前記DFTの結果をサブキャリアにマッピングし,および,前記マッピングされたサブキャリアを逆フーリエ変換することによって,前記アクセスメッセージを処理するよう構成されたこと」(請求項12,25)こと,「前記処理装置は,前記アクセスメッセージを離散的フーリエ変換(DFT)し,前記DFTの結果をサブキャリアにマッピングし,および,前記マッピングされたサブキャリアを逆フーリエ変換することによって,前記選択されたCAZACシーケンスの位相を処理する」(請求項13,26)ことは,いずれも発明の詳細な説明に記載も示唆もされていない。
上記(4)のとおり,ここでいう「アクセスデータ」がいかなるものか明らかにされていなく,図1の「ユーザデータ(シンボル)」と「アクセスデータ」との関係も不明であるから,上記構成は自明ともいえない。

以上に指摘した事項は,平成23年11月29日付けの手続補正により新たに追加され,平成24年12月10日付けで手続補正された特許請求の範囲にもそのまま含まれている事項であるが,補正の根拠が明らかにされていなく,不明である。補正に際しては,出願当初の明細書又は図面のどの記載に裏付けられているのか,その根拠を明らかにする必要がある。


[理由2について]
上記[理由1について]のとおりであるから,平成24年12月10日付けでした手続補正は,国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面の翻訳文,国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものでない。

なお,明示的な記載がなくても,「当初明細書等の記載から自明な事項」に補正することは,新たな技術的事項を導入するものではないから,許されるが,「当初明細書等の記載から自明な事項」といえるためには,当初明細書等に記載がなくても,これに接した当業者であれば,出願時の技術常識に照らして,その意味であることが明らかであって,その事項がそこに記載されているのと同然であると理解する事項でなければならず,その技術自体が周知・慣用技術であるということだけでは,当初明細書等の記載から自明な事項とはいえないことに留意されたい。(審査基準第III部第I節 新規事項 3.1参照。)


[理由3について]
上記[理由1について]のとおりであり,上記[理由1について]にて指摘した各事項は,国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものでない。


[理由4について]
(1)上記[理由1について]のとおりであり,発明の詳細な説明は,各請求項に係る発明を実施し得る程度に開示がなされているといえない。

(2)「既に説明したように,検出する符号がないためランプアップを高速に実施することができる。従来のOFDM方式では,符号探索は実行されない。しかし,本発明によれば,RACHを探索して副搬送波全体でパターンの存在を調べることができる。」(【0014】)について,ここでいう「符号の検出」,「符号探索」とはいかなることか明らかにされていなく不明であり,ランプアップの速度及びパターンとの関係も不明であるため,記載内容が意味不明である。

(3)「WTRU710は,オーバーレイされたCAZACシーケンスの位相を選択することが好ましい(ステップ803)。」(【0019】)について,ここでいう「オーバーレイ」とはいかなることか不明であり,記載内容が意味不明である。

(4)「追加の情報をRACHアクセスの位相において符号化してもよい。」(【0020】)について,ここでいう「追加の情報」とはいかなるものか不明であり,「アクセスメッセージ」との関係も不明であるとともに,「RACHアクセスの位相において符号化」なる記載は日本語として技術的に意味不明である。


[理由5について]
請求項1-26
引用文献1-8
引用文献1-8には,原審における拒絶理由通知書,拒絶査定及び審尋で提示した前置報告書にて指摘されている事項が記載されている。
請求人は,審尋に対する平成25年7月26日付け回答書にて,引用文献1にはノードBが実際の時間(タイミング)アドバンスを送ることについて何ら教示していない旨主張しているが,引用文献1の3頁の「1.2.3 Requirements and RACH purpose」の2段落目にはUEはアップリンクの送信タイミングを調整するためにNodeBからタイミング・アドバンス・コマンドを受信することが記載されており,34頁のFigure 5.2の「Response with timing adjustment」の記載によればACK応答とともタイミング・アドバンス・コマンドを受信することも格別ではなく,33?34頁の「5.1.1 Timing adjustment」,34?35頁の「5.1.3 Resource request」,42?43頁の「5.8.1 UE procedure」の記載をあわせてみても,「前記表示とともに受信された時間アドバンスに応答して調整された送信タイミングで,アクセスメッセージデータとCAZACシーケンスから導き出された参照シンボルとを含む信号を送信する」ことは何ら格別ではない。なお,上記[理由1について](3)のとおりであり,請求人の上記主張は明細書及び図面の開示内容に基づかない主張であるから,受け入れることはできない。
また,請求人は,上記回答書にて,引用文献1に記載された発明は本発明の無線送受信装置(WTRU)のように2ステップでランダムアクセス信号を処理することについて教示していない旨主張しているが,発明の詳細な説明及び図面を見ても,リソース割り当て情報がどの時点で送信されるのかは明らかでなく,2ステップでランダムアクセス信号を処理することは記載も示唆もされていなく自明でもない。そして,本願明細書の【0019】及び図8の記載によれば,WTRUによるアクセス試行(ステップ805,807)は引用文献1のFigure 5.2の「RACH signal」に対応し,ノードBによるACK応答(ステップ)809及びノードBによるTA送信(ステップ811)は引用文献1のFigure 5.2の「Response with timing adjustmentsl」に対応し,WTRUによるアクセスメッセージ送信(ステップ815,817)は引用文献1のFigure 5.2の「Resourse request」(RACH messageに関する事項)に対応するものと認められ,特段の差異は見出せない。したがって,請求人の主張は明細書及び図面の開示内容に基づかない主張であるから,受け入れることはできない。
更に,引用文献1の42?43頁の「5.8.1 UE procedure」には,UEがランダムアクセスに使用可能なシグネチャー,周波数帯,タイムスロットのセットに関する情報を受信し,当該セットの中からランダムに選択したシグネチャー,周波数帯,タイムスロットにて送信することが記載されており,12頁のFigure 2.9にRACH burstsとして示されるサブフレームを選択して送信することになるのであるから,他のWTRUからのアクセスと周波数多重化されることは明らかである。
以上のとおりであるから,請求項1-26に係る発明には特段の技術的特徴を見出すことはできず,引用文献1?8に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。


引 用 文 献 等 一 覧
1.ROMAIN MASSON,E-UTRA RACH within the LTE system,MASTER'S DEGREE PROJECT,2006年2月3日,1?64頁,[online],[平成25年10月1日検索],インターネット<URL:http://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/summary?doi=10.1.1.63.7134>
2.特開2004-297186号公報
3.Motorola,RACH Design for EUTRA,3GPP TSG RAN1#44 R1-060387,2006年2月17日
4.Motorola,EUTRA Uplink Numerology and Design,3GPP RAN1#41bis R1-050584,2005年6月21日
5.国際公開第2005/055527号
6.特表2006-504338号公報
7.Nortel Networks,On the performances of LTE RACH,3GPP RAN1 meeting#44-bis R1-060908,2006年3月31日
8.Panasonic,Random access design for E-UTRA uplink,3GPP TSG-RAN WG1 Meeting#45 R1-061114,2006年5月12日


第3 請求人の対応
当審からの拒絶理由に対して,請求人は,平成26年4月8日付けで,意見書,特許請求の範囲を補正する手続補正書,明細書及び図面を誤訳訂正する誤訳訂正書を提出した。


第4 当審の判断
1 「理由1」(特許法第36条第6項第1号,第2号違反)について
(1)理由1の「(1)」について
拒絶理由で指摘した請求項1の記載は,平成26年4月8日付け手続補正(以下,「本件補正」という。)により,「前記選択されたCAZACシーケンスの位相をサイクリックプレフィクスと組み合わせ,前記選択された位相を持つ前記CAZACシーケンスおよび前記サイクリックプレフィクスを含んでいるRACH送信を送信する」と補正された。
そして,平成26年4月8日付け意見書における,「したがって,選択された位相を持つCAZACシーケンスに対してCPが付加されること,すなわち,「選択されたCAZACシーケンスの位相をサイクリックプレフィクスと組み合わされること」は,発明の詳細な説明の各段落および図1,4に明示的に示されています。」,「上述の補正において,「前記選択された位相を持つ前記CAZACシーケンスおよび前記サイクリックプレフィクスを含んでいるランダムアクセスチャネル(RACH)送信」とした記載は,選択された位相を持つCAZACシーケンス(ビット列)に,これに対するCP(ビット列の末尾部分を先頭に付加するビット列)が組み合わされることによって,特定の位相を持つCAZACシーケンスおよびこのCAZACシーケンス対応するCPを含んでいる「RACH送信」信号を意味しており,技術的な意味は明確です。」との釈明によれば,「選択されたCAZACシーケンスの位相をサイクリックプレフィクスと組み合わされること」は,選択された位相を持つCAZACシーケンス(ビット列)に対して,そのビット列の末尾部分をCPとして先頭に付加することであると主張していると認められる。

しかしながら,サイクリックプレフィクス(CP)については,本願明細書の【0008】及び平成26年4月8日付け誤訳訂正(以下,「本件誤訳訂正」という。)により誤訳訂正された,【0014】,【0020】並びに図1,図4に記載されるのみであるところ,これらにも示されているように,サイクリックプレフィクス(CP)はIFFT後のOFDMシンボルの末尾部分の一部を冗長的にコピーして先頭に付け加えたものである。そして,図4に示されるフレーム構造も,各「CP LB」又は各「CP SB」が1シンボル期間に対応し,当該「CP」はOFDMシンボルの一部を冗長的にコピーして先頭に付け加えたものを示していることは明らかである。
すなわち,図1によれば,選択された位相を持つCAZACシーケンスは,OFDM方式で使用される基礎変調方式(例えば,QPSK,QAMなど。)に対応した信号点マッピングで決定されるシンボルにマッピングされることによりシンボル化され,DFTユニット101,マッピングユニット102,IFFTユニット103を経て,時間ドメインのOFDM信号が得られ,当該時間ドメインのOFDM信号が,CPユニット104によって,その末尾部分の一部がCPとして先頭部分に付加されるのである。そして,選択されたCAZACシーケンスの「位相」そのものは,基礎変調,DFT,IFFT処理前の信号に係る概念であり,これらの処理後の時間ドメインのOFDM信号においては当該「位相」は認識不可能なものであるから,時間ドメインのOFDM信号の末尾部分の一部であるサイクリックプレフィクスと組み合わせ得るものではないことは明らかである。

したがって,「前記選択されたCAZACシーケンスの位相をサイクリックプレフィクスと組み合わせ」ることは,発明の詳細な説明に記載も示唆もされておらず,位相とサイクリックプレフィクスとは技術的に全く異なる概念であって,直接組み合わせ得るものではないから自明でもない。また,当該記載は,技術常識に照らして意味不明であるため,不明瞭である。
このため,拒絶の理由1(1)は依然として解消されていない。

(2)理由1の「(2)」について
拒絶理由で指摘した請求項1の記載は,本件補正により,「増加した送信電力レベルで,別の位相を持つ別のCAZACシーケンスおよび別のサイクリックプレフィクスを含む別のRACH送信を送信する」と補正された。
そして,請求人は,平成26年4月8日付け意見書において,「異なるすなわち別の位相を持つCAZACシーケンスを送ることは,段落番号[0018]の「アクセス中のユーザ間でランダム化をさらに行い衝突を回避するために,各WTRUは,定振幅ゼロ自己相関(CAZAC)シーケンスのランダム位相を選択することができる」と記載されており,WTRU間でCAZACシーケンスがランダムに選択され得ることが明示されています。本発明におけるランダムアクセス手順では,送信電力をステップアップ(またはランプアップ)して,繰り返してRACH送信が送信されることが明示されており,個々のRACH送信を別個のものと考えれば,異なる位相が選択され得ることを含み得ると考えます。」と主張している。

しかしながら,本願明細書の【0018】の「この場合,RACHの総数は以下の式によって増加する。」及び本件誤訳訂正により誤訳訂正された【0019】の「RACHの総数=N_(サブチャネル)×N_(CAZAC-ランダム位相)」の記載によれば,CAZACシーケンスの位相をシフトすることによりRACHの総数が増加され,それにより衝突が回避される可能性が高くなることは自明である。
また,本願明細書の【0016】の「RACH送信においては,定義されたRACHの1つをWTRUがランダムに選択してもよく,または所定の基準に基づいてWTRUに割り当てても良い。異なるユーザに異なるRACHを割り当てる方法の1つは,WTRUのシリアル番号を使用することである。または,各ユーザに固有の他の基準(ユーザIDなど)をRACH割り当てに使用しても良い。たとえば,ユーザ固有の番号の最終桁に基づいてスロットを割り当てる場合,まず番号が任意の数の場合には,ユーザを10のグループに分類することができる(0,1,2,...,9の各スロットに1グループ)。」の記載も考慮すれば,WTRUのシリアル番号やユーザIDの最終桁に基づいてRACHを割り当てると当該割り当ては固定的なものとなると考えられるから,定義されたRACHの1つをランダムに選択する方が,所定の基準に基づいて割り当てるよりも,さらに衝突の可能性を低減し得ることは明らかである。
更に,国際出願における「Additionally, each WTRU may select a random phase of a Constant Amplitude Zero Auto Correlation (CAZAC) sequence to further randomize and avoid collisions between accessing users. In such case, the total number of RACHs is increased by the following formula: Total Number of RACH = N _(subchannels) × N_(CAZAC- Random phases).」の記載にも鑑みれば,請求人が根拠とする本願明細書の【0018】の「さらに,アクセス中のユーザ間でランダム化をさらに行い衝突を回避するために,各WTRUは,定振幅ゼロ自己相関(CAZAC)シーケンスのランダム位相を選択することができる。」との記載は,アクセスするユーザ間の衝突をさらに回避するために,CAZACシーケンスを位相シフトさせることによりRACHチャネルの数を増加させ,かつ,増加させたRACHをランダムに選択させることを開示していると理解するのが自然である。
また,ACKが受信されない理由は,必ずしも最初のアクセス試行が他のユーザと衝突したことによるとは限られないことは明らかである。また,最初のアクセス試行と,ACKが受信されない場合の再度のアクセス試行とは,同一ユーザに係るものであり,当該アクセス試行同士が衝突することはあり得ない。したがって,アクセスするユーザ間で衝突を回避するようRACHチャネルの数を増加するためにCAZACシーケンスの位相をシフトすることと,最初のアクセス試行とACKが受信されない場合の再度のアクセス試行との間で位相をシフトさせることとの関係は明らかではない。
したがって,個々のRACH送信を別個のものと考えたとしても,最初のアクセス試行時,ACKが受信されない場合の再度のアクセス試行時,アクセスメッセージ送信時に,それぞれ異なる位相のCAZACシーケンスを用いるようにすることが本願明細書に記載されていると同然とはいえない。

よって,「増加した送信電力レベルで,別の位相を持つ別のCAZACシーケンスおよび別のサイクリックプレフィクスを含む別のRACH送信を送信する」ことは,発明の詳細な説明に記載も示唆もされていなく,自明でもない。
このため,拒絶の理由1(2)は依然として解消されていない。

(3)理由1の「(5)」について
拒絶理由で指摘した請求項1の記載は,本件補正により,「ランダムアクセスチャネル(RACH)送信のために使用されることになるサブキャリアを示しているRACH割り当て情報を受信するように構成された処理装置および関連付けられた受信装置と」と補正された。
そして,請求人は,平成26年4月8日付け意見書において,「WTRUが利用可能なRACHとして,段落番号[0023]には,「RACHは異なる副搬送波割り当てを持った複数のチャネルを有することができ,またはCAZACシーケンスは複数のRACHチャネルを形成することができる」の記載があります。さらに,段落番号[0019]には,「WTRU710は,予め定義された複数のRACHからRACHを選択する」の記載があります。予め定義された複数のRACH,すなわち異なる副搬送波割り当てを持った複数のRACHチャネルは,無線通信システムでは,報知情報などによってノードBからWTRUへ報知することが可能であって,このような報知情報を受信する受信装置は,図7におけるWTRUにも当然に備えられているものです。」と主張している。

しかしながら,本件誤訳訂正により誤訳訂正された【0019】には「WTRU710は,予め定義された複数のRACHからRACHを選択する(ステップ801)。」と記載されるのみであり,図8及びその説明等をみても,予め定義された複数のRACHに関するRACH割り当て情報を受信することは記載も示唆もされていない。そして,例えばRACHが規格等により規定されている場合や,通信による方法以外で予め定義された複数のRACHが特定される場合等,RACH割り当て情報を受信しなくてもUEは予め定義された複数のRACHを認識し得るから,RACH割り当て情報を受信することが発明の詳細な説明に記載されているのと同然ということはできない。

したがって,「ランダムアクセスチャネル(RACH)送信のために使用されることになるサブキャリアを示しているRACH割り当て情報を受信するように構成された処理装置および関連付けられた受信装置」は,発明の詳細な説明に記載も示唆もされていなく,自明でもない。
このため,拒絶の理由1(5)は依然として解消されていない。

以上のとおり,少なくとも請求項1について拒絶の理由(1),(2),(5)を解消していないから,拒絶の理由1は依然として解消されていない。


2 「理由2」(特許法第17条の2第3項違反)及び「理由3」(特許法第49条第6項違反)について
上記1のとおりであり,本件補正の少なくとも上記1にて検討した各事項は,国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面の翻訳文(誤訳訂正後の明細書),国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものでない。また,当該事項は,国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものでもない。
このため,拒絶の理由2,3も依然として解消されていない。


3 「理由4」(特許法第36条第4項第1号違反)について
(1)理由4の「(1)」について
上記1のとおりであり,少なくとも上記1にて検討した各事項に関して,発明の詳細な説明に開示がなされているとはいえない。

(2)理由4の「(2)」について
拒絶理由で指摘した記載の引用箇所を示す「(【0014】)」の記載は,請求人が意見書で指摘しているように「(【0013】)」の誤りであったが,【0013】の記載は,本件誤訳訂正により「RACH送信には,シグネチャーシーケンスの送信における送信電力のランプアップが含まれる。既に説明したように,検出する符号がないため,ランプアップはより高速であり得る。従来のOFDM方式では,符号探索は実行されない。しかし,本発明によれば,RACHは,副搬送波上においてパターンの存在を探索することが可能である。」に訂正された。
そして,請求人は,平成26年4月8日付け意見書において,「審判官殿がご指摘の「符号の検出」については,本発明のWTRUが使用されるODFM方式における特性を一般的に述べたものです。ODFM方式ではないシステム,例えばTDMA方式やCDMA方式などの多重化方式のシステムにおいては,基地局と端末との間で最初のリンクを設定するためのランダムアクセス手順では,競合する複数のアクセスの存在を識別するためには,端末の識別を行う必要があります。基地局は,WTRUからの,一般にはバースト状のランダムアクセス信号と同期する必要があります。したがって,この端末からのアクセス信号と同期を達成して端末の識別のための情報(識別情報)を復号する必要があります。すなわち,「符号の検出」が必要です。同一のWTRUからのランダムアクセスのために,時間的に複数のバーストを検出しなければならない場合もあると考えます。
(中略)
システム側すなわちノードBは,システムにおいてあらかじめ定義された副搬送波のセットをWTRUと共有していれば,副搬送波の組み合わせすなわち,「副搬送波上においてパターンの存在を探索すること」によって,ある特定の副搬送波のセットのRACH上で,1つのランダムアクセスの存在を直ちに検知し,区別することができます。したがって,検出した副搬送波の組み合わせパターンに応じて,直ちに,段落番号[0019]にあるように,「ノードBプロセッサ732は,RACH上においてWTRUの試行を認識する(ステップ807)」ことができ,「ノードBは,関連付けられたACKチャネル上で応答する(ステップ809)」ことができます。つまり,検出されたパターンの副搬送波セットのRACHに対応した下りの共有チャネル(つまり,下りのOFDM信号において対応した副搬送波のセットを使用すること)で,WTRUは直ちに自らが送信したRACH送信(シグネチャーシーケンス)に対してACKが来たことを認知できます。このとき,WTRU(端末)の識別のための情報を識別すなわち,符号の検出を行っていません。 (中略)
したがって,本発明のWTRUによるランダムアクセス手順のシグネチャーシーケンスの送信(選択された位相を持つCAZACシーケンスを含むRACH送信の送信)では,ノードBで検出すべき情報(符号)がないため,WTRU側の送信電力のランプアップをすばやく実行できる可能性があります。段落番号[0013]の記載は,OFDM方式における上述の技術事項を簡潔に述べているものです。」と釈明している。

しかしながら,本件誤訳訂正により誤訳訂正された【0013】には,「既に説明したように,検出する符号がないため,」と記載されているが,それ以前に符号の検出に関する記載は存在しないから,当該記載は意味不明である。
また,【0013】以前には,「符号」としては「空間周波数ブロック符号(SFBC)」,「時空間ブロック符号(STBC)」しか記載されておらず,ここでいう「符号」が何を意味しているのか不明確であるが,本願の実施例においても,ランダムアクセス手順において,ノードBは少なくも「選択された位相を持つCAZACシーケンス」(シグネチャーシーケンス)を検出している。そして,【0014】の「または(3)符号多重化されるか(定振幅ゼロ自己相関(CAZAC)シーケンスの異なるシフト)のいずれかが実施される。」との記載によれば,当該「選択された位相を持つCAZACシーケンス」は「符号」に含まれると解するのが自然であるから,「検出する符号がない」とはいえない。
また,「ランプアップ」は,後続するRACH送信の送信電力を増加する「ステップアップ」と異なり,「RACH送信が送信されている間に送信電力を増加」すること(すなわち,図10のように各同一RACH内において送信電力が一定ではなく,図9のように各同一RACH内において送信電力が増加していること。)であるところ,上記釈明をみても「符号の検出」と「RACH送信が送信されている間に送信電力を増加」することとの技術的な因果関係は明らかにされていなく,不明である。
更に,上記釈明によると,「副搬送波上においてパターンの存在を探索する」とは,副搬送波の組み合わせのパターンを検出することであると主張していると認められるが,【0019】の式によれば,RACHは副搬送波の組み合わせのみならず,選択された位相を持つCAZACシーケンスによっても構成されるものであるから,その存在が探索される「パターン」が「副搬送波の組み合わせのパターン」を意味すると解するのは不自然である。

したがって,本件誤訳訂正により誤訳訂正された【0013】の記載は,依然として意味不明である。このため,本発明の技術的意義も不明になっている。

以上のとおり,拒絶の理由4は依然として解消されていない。


4 「理由5」(特許法第29条第2項違反)
上記「理由1」?「理由3」のとおり,各請求項に記載された発明は,発明の詳細な説明に記載されたものではなく,また,国際出願の明細書,請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものでないが,更に進んで,本件補正により補正された発明について進歩性があるか否かについて,以下検討する。

(1)本願発明
本件の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成26年4月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「無線送受信装置(WTRU)において,
ランダムアクセスチャネル(RACH)送信のために使用されることになるサブキャリアを示しているRACH割り当て情報を受信するように構成された処理装置および関連付けられた受信装置と,
定振幅ゼロ自己相関(CAZAC)シーケンスの位相のセットの中から,前記CAZACシーケンスの位相を選択し,前記選択されたCAZACシーケンスの位相をサイクリックプレフィクスと組み合わせ,前記選択された位相を持つ前記CAZACシーケンスおよび前記サイクリックプレフィクスを含んでいるRACH送信を送信することによって,無線通信システムにアクセスするように構成された前記処理装置および関連付けられた送信装置を備え,
前記処理装置および前記関連付けられた送信装置は,前記WTRUが,前記選択された位相を持つ前記CAZACシーケンスを含む前記RACH送信が受信されていたことの表示を共有チャネル上で受信していない条件で,増加した送信電力レベルで,別の位相を持つ別のCAZACシーケンスおよび別のサイクリックプレフィクスを含む別のRACH送信を送信するようにさらに構成され,
前記処理装置および前記関連付けられた送信装置は,前記WTRUが,前記選択された位相を持つ前記CAZACシーケンスを含む前記RACH送信が受信されていたことの表示および時間アドバンス(TA)を前記共有チャネル上で受信する条件で,前記受信された時間アドバンス(TA)に応答して調整された送信タイミングで,制御データと第3のCAZACシーケンスから導き出された参照シンボルとを含む信号を送信するようにさらに構成されたこと
を特徴とするWTRU。」

ここで,「前記選択されたCAZACシーケンスの位相をサイクリックプレフィクスと組み合わせ,前記選択された位相を持つ前記CAZACシーケンスおよび前記サイクリックプレフィクスを含んでいるRACH送信を送信すること」は,上記1(1)のとおり不明瞭であるが,発明の詳細な説明及び図1に開示されている内容に従って,選択された位相を持つCAZACシーケンスに対して,シンボル化,DFT,副搬送波にマッピング,IFFTを行い,それにより得たOFDMシンボルについて,当該OFDMシンボルの末尾部分の一部をCPとしてその先頭に付加したものとして送信することと認める。

(2)引用発明及び周知技術
[引用発明]
ア 当審拒絶理由に引用されたROMAIN MASSON,E-UTRA RACH within the LTE system([当審仮訳]:LTEシステムにおけるE-UTRA RACH),MASTER'S DEGREE PROJECT,2006年2月3日,1?64頁,[online],[平成25年10月1日検索],インターネット<URL:http://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/summary?doi=10.1.1.63.7134>(以下,「引用例1」という。)には,図面と共に以下の事項が記載されている。

(ア)「1.1.3 RACH
The Random Access Channel is a contention-based channel for initial uplink transmission, i.e. from UE (User Equipment) to NodeB (base station). This channel can be used for several purposes. The RACH function is different depending on the technology of the system. The RACH can be used to access the network, to request resources, to carry control information, to adjust the time offset of the uplink, to adjust the transmitted power, etc. It can even be used to transmit small amounts of data. Contention resolution is the key feature of the random access channel. Many UE can attend to access a same base simultaneously, leading to collisions. 」(2頁)
([当審仮訳]:
1.1.3 RACH
ランダムアクセスチャネルは,最初の上りリンク送信(すなわち,UE(ユーザ機器)からノードB(基地局)への送信)のための競合ベースのチャネルである。このチャネルは,いくつかの目的のために使用することができる。RACH機能は,システムの技術に応じて異なる。 RACHは,ネットワークにアクセスするため,リソースを要求するため,制御情報を運ぶため,上りリンクの時間オフセットを調整するため,送信電力を調整するため等に使用することができる。RACHは,少量のデータを送信するために使用することもできる。競合解決は,ランダムアクセスチャネルの重要な特徴である。多数のUEが同時に1つの基地局にアクセスすることができ,衝突が生じる。)

(イ)「1.2.3 Requirements and RACH purpose
The LTE requirements concerning the RACH are different from the UMTS ones. While the RACH as defined in the 3G systems is mainly used to register the terminal after power-on to the network, the LTE RACH will have to deal with new constraints.
In an OFDM based system, orthogonal messages can be sent. This leads to a new way of designing the physical layer. A major challenge in such a system is to maintain uplink orthogonality among UEs. Hence both frequency and time synchronization of the transmitted signals from the UEs are needed. Frequency synchronization can be achieved by fixing the UE local oscillator to the downlink broadcast signal. (中略) However, the timing estimation has to be performed by the NodeB when measuring the received signal. This can be achieved during a random access. The UE can then receive a timing advance command from the NodeB and adjust its uplink transmission timing accordingly. Consequently one purpose of the LTE random access procedure is to obtain uplink time synchronization. 」(3頁)
([当審仮訳]:
1.2.3 要件とRACHの目的
LTE RACHに関する要件は,UMTSのものとは異なる。3Gシステムで定義されているRACHは,主に電源投入後の端末をネットワークに登録するために使用されているが,LTE RACHは新しい制約に対処する必要がある。
OFDMベースのシステムでは,直交するメッセージが送信され得る。これは,物理層を設計するための新しい方法につながる。このようなシステムにおける主要な課題は,UE間の上りリンクの直交性を維持することである。したがって,UEから送信された信号の周波数及び時間の両方の同期が必要である。周波数同期は,UEの局部発振器を下りリンク・ブロードキャスト信号に固定することによって達成できる。 (中略) しかしながら,受信信号を測定するとき,タイミング推定がノードBによって実行されなければならない。これは,ランダムアクセスの間に達成することができる。UEは,ノードBからタイミング・アドバンス・コマンドを受信し,それに応じて上り送信タイミングを調整することができる。したがってLTEランダムアクセス手順の一つの目的は,上りリンク時間同期を得ることである。)

(ウ)「3.2 DFTs OFDMA
The structure of DFT spread OFDMA transmitter is represented in Figure 3.7.
(Figure 3.7.は省略。)
The data symbols are spread by performing an FFT before being mapped to the sub carriers. This means that each sub carrier carries a portion of superposed DFT spread data symbols. Various mappings are possible, which is illustrated in Figure 3.8. The allocation of the spread data can be either localized, pseudo randomized or equidistant.
(Figure 3.8.は省略。)」(17?18頁)
([当審仮訳]:
3.2 DFTs-OFDMA
DFT拡散OFDMA送信器の構造が図3.7.に示される。
(図3.7.は省略。)
データシンボルは,サブキャリアにマッピングされる前にFFTを実行することによって拡散される。これは,各サブキャリアがスーパーポーズされたDFT拡散データシンボルの一部を運ぶことを意味する。図3.8.に示される様々のマッピングが可能である。拡散されたデータの割り当ては,局在化されても,擬似ランダム化されても,等間隔に分散化されてもよい。
(図3.8.は省略。) )

(エ)「4.1.3 The power ramping technique
In order to enhance the success probability of a preamble retransmission and hence reduce the access delay, the transmission power is increased after every unsuccessful attempt. This technique is called power ramping. This method permits also to acquire information about the power to apply regarding the request message. The procedure is depicted in Figure 4.2.
(Figure 4.2は省略。)
Before any RACH access, the downlink power level is measured from the BCH. The initial power level is then computed from the measurement. After each attempt, the UE updates its transmission power according to:
P_(i+1) = P_(i) + ΔP (4.1)
where P is the power ramp step in dB.
When the UE receives an AI, the random access message is sent 3 or 4 access slots after the last preamble (depending on information received over BCH). The message part is transmitted with a power equal to:
P_(message) = P_(lastpreamble) + ΔP_(M-P) (4.2)
Where ΔP_(M-P) is a power step applied to ensure a correct reception of the message of interest. 」(22?23頁)
([当審仮訳]:
4.1.3 パワー・ランピング技術
プリアンブルの再送信の成功確率を向上させてアクセス遅延を低減するために,試行が失敗するたびに送信電力が増加される。この技術はパワー・ランピングと呼ばれる。この方法は,要求メッセージについて適用される電力に関する情報を取得する。手順は図4.2に示される。
(図4.2は省略。)
RACHアクセスの前に,下りリンク電力レベルは,BCHから測定される。初期電力レベルは,測定から計算される。各試行の後に,UEは P_(i+1)=P_(i)+ΔP (4.1式)に従ってその送信電力を更新する。ここで,PはdBにおける電力ランプのステップである。
UEは,AIを受信すると,(BCHを介して受信された情報に依存して)ランダムアクセスメッセージが,最後のプリアンブルの後,3又は4アクセススロット送信される。メッセージ部分は,P_(message)=P_(lastpreamble)+ΔP_(M-P) (4.2式)に等しい電力で送信される。ここで,ΔP_(M-P)は,対象となるメッセージが正しく受信されることを保証するために適用される電力ステップである。)

(オ)「4.1.4 Format of the preambles
A preamble is a short signal which consists of 4096 chips. It does not contain the identity of the user. It is simply a sequence of 256 repetitions of Hadamard codes of length 16. Hence, there exist 16 different preamble signatures (one for each code). The preamble signatures are listed in Table 4.1.4:
Also a scrambling code related to the cell identity is applied to the preamble. Before any attempt, the UE selects randomly a signature and sends the related preamble. If the base station detects successfully the preamble, it can send back an AI. This indicator contains a replica of the preamble so that the UE can be aware of its target. The AI can take 2 values (positive acknowledgment ACK or negative acknowledgment NACK) depending on whether the message transmission is allowed or not. Since a NodeB is able to detect two different signatures in the same access slot, a problem occurs only when two UEs have selected the same signature and the same access slot which is a very unlikely case.
(Table 4.1は省略。)

4.1.5 Format of the message
The message can be either 10ms or 20ms. Spreading and scrambling are applied to the message part. The message part scrambling code has a one-to-one correspondence to the scrambling code used for the preamble part. Spreading is performed using Orthogonal Variable Spreading Factor (OVSF) codes. The code-tree is showed in the Figure 4.3. 」(23?24頁)
([当審仮訳]:
4.1.4 プリアンブルのフォーマット
プリアンブルは4096チップからなる短い信号である。それはユーザIDを含まない。それは単に,長さ16のアダマール符号の256回の繰り返しのシーケンスである。したがって,16の異なるプリアンブルシグネチャ(各コードに1つ)が存在する。プリアンブルシグネチャを表4.1.4に示す。
また,セルIDに関連するスクランブリングコードは,プリアンブルに適用される。各試行の前に,UEは,ランダムにシグネチャを選択し,関連するプリアンブルを送信する。基地局が正常にプリアンブルを検出した場合,AIを送り返すことができる。UEは,その対象を認識することができるように,この標識はプリアンブルのレプリカを含んでいる。メッセージ送信が許可されているか否かに応じて,AIは2値(肯定応答ACK又は否定応答NACK)をとることができる。ノードBは同一のアクセススロットにおいて2つの異なるシグネチャを検出することができるので,2つのUEが同じシグネチャ及び同じアクセススロットを選択した場合に問題が発生するが,そのような場合はあまり起こりそうにない。
(表4.1は省略。)

4.1.5 メッセージのフォーマット
メッセージは,10ミリ秒又は20ミリ秒のいずれかになる。拡散及びスクランブリングは,メッセージ部分に適用される。メッセージ部分のスクランブリングコードは,プリアンブル部分に使用されるスクランブリングコードに一対一に対応している。拡散は,直交可変拡散率(OVSF)符号を用いて行われる。コードツリーは図4.3に示される。)

(カ)「Chater 5
RACH design within LTE
(中略)
5.1 Discussion on the RACH purpose
5.1.1 Timing adjustments
3GPP members seem to agree on the fact that one of the main purposes of the random access is to obtain fine time synchronization. The synchronization procedure prior to the random access only gives access to the slot and frame synchronization in the downlink. In other words, the mobile receives from a broadcast signal the start and the end of slots and frames but the transmission delay implies a time shift between the transmission and the reception of the broadcast signal. Hence, the mobile can not estimate when to send its data so that the NodeB receives them at the beginning of a slot.
The RACH procedure could be a solution to adjust the timing offset at the UE side by informing the UE how to compensate for the round trip delay.
(Figure 5.1は省略。)
After a successful random access procedure, the NodeB and the UE should be synchronized within a fraction of the uplink cyclic prefix. In this way, the subsequent uplink signals could be correctly decoded and would not interfere with other users. 」(33?34頁)
([当審仮訳]:
第5章
LTEにおけるRACHの設計
(中略)
5.1 RACHの目的についての検討
5.1.1 タイミング調整
3GPPのメンバーは,ランダムアクセスの主な目的の一つは,完璧な時間同期を得ることであることに同意しているようである。ランダムアクセスの前の同期化手順は,単にダウンリンクのスロット及びフレーム同期を与えるだけである。換言すれば,移動局は,ブロードキャスト信号からスロット及びフレームの開始及び終了を受信するが,伝送遅延は,ブロードキャスト信号の送信と受信との間の時間のずれを含んでいる。したがって,移動局は,ノードBがスロットの開始において受信するために,そのデータをいつ送信すべきかを推定することができない。
RACH手順は,どのようにラウンドトリップ遅延を補償するかをUEに知らせることにより,UE側でタイミングオフセットを調整する解決手段となり得る。
(図5.1は省略。)
成功したランダムアクセス手順の後では,ノードBとUEは上りリンク・サイクリックプレフィックスの部分内で同期されるべきである。このようにして,後続の上り信号は正しく復号され,他のユーザに干渉しない。)

(キ)「5.1.3 Resource request
Prior to sending any data, the UE has to obtain resources for transmission. The NodeB acts as a scheduler and provides the UEs with scheduling information. The E-UTRA random access could be an approach to request bandwidth and time resources. One can imagine several possible solutions:
・ The RACH procedure is only used to acquire timing and/or power adjustments. The only purpose is to be synchronized within a fraction of the cyclic prefix. Then a subsequent resource request has to be performed in order to acquire resource reservation. The resource request procedure is still contention-based but the system is synchronized.
(Figure 5.2は省略。)
・ The random access signal is composed of two distinct and independent parts: the RACH signature and the RACH message. The signature is the same frequency band and time slot. On the contrary, the message part contains information. For instance, this information can include a resource request (amount of data to transmit). At the NodeB side, only the signature is used for detection. In case of successful detection, the message part is decoded and analyzed. If the network presents available resources, the NodeB will send a resource grant to the UE. The signature part can also be used as reference symbols (pilots) for the demodulation of the message part.
(Figure 5.3は省略。)」(34?35頁)
([当審仮訳]:
5.1.3 リソース要求
データを送信する前に,UEは,送信用のリソースを取得しなければならない。ノードBは,スケジューラとして機能し,スケジューリング情報をUEに提供する。E-UTRAのランダムアクセスは,帯域幅と時間リソースを要求するためのアプローチであり得る。いくつかの可能な解決策を想像することができる。
・RACH手順は,タイミングのみ及び/又は電力調整を得るために使用される。唯一の目的は,サイクリックプレフィックスの部分内で同期されることである。それから,リソースの予約を取得するために,後続のリソース要求が実行されなければならない。リソース要求手順は,まだ競合ベースであるが,システムは同期されている。
(図5.2は省略。)
・ランダムアクセス信号は,RACHシグネチャ及びRACHメッセージの2つの別個の独立した部分で構成されている。シグネチャ部分は,同じ周波数帯及びタイムスロットである。逆に,メッセージ部分は情報を含んでいる。例えば,この情報にはリソース要求(送信するデータの量)が含まれる。ノードB側では,検出のためにシグネチャのみが使用される。検出に成功した場合に,メッセージ部分がデコードされ,分析される。ネットワークが利用可能なリソースを提示した場合,ノードBは,UEにリソース許可を送信する。シグネチャ部は,メッセージ部分の復調のための参照シンボル(パイロット)として使用することもできる。
(図5.3は省略。) )

(ク)「5.3 Signal parameters
As mentioned in [3], the parameters for uplink transmission scheme within LTE (SC FDMA and OFDMA concepts) are specified in Table 5.3.
The FFT size is adapted to the given system bandwidth. In this way, the sub-carrier spacing is kept constant in any system bandwidth, which was part of the LTE requirements. Δf is always equal to 15 kHz. Also the time duration of an OFDM symbol is also constant regardless of the system bandwidth: 66.67μs.
(Table 5.1は省略。)
Meanwhile the transmission bandwidth for a specified signal can be varied by changing the number of used sub carriers. A simple illustration of a basic transmission is given in Figure 5.7.
(Figure 5.7は省略。)
The design of the random access has to take into consideration these parameters. For instance, a RACH signature must be a finite number of OFDM symbols. Also, a CP may be added at the beginning of each symbol. The use of the CP will be discussed in the section 6.3. In a typical urban environment, the order of the maximum delay spread is of 5 μs. Therefore, if a CP prefix is used, about 77 (= 5×10^(-6) ×15.36×10^(6)) chip symbols will be copied from the end of the OFDM symbol and added at the beginning. 」(37?38頁)
([当審仮訳]:
5.3 信号パラメータ
[3]で述べたように,LTE(SC FDMAとOFDMAの概念)における上り伝送方式のためのパラメータが表5.3に特定されている。
FFTサイズは,所与のシステム帯域幅に適合される。このように,サブキャリア間隔は,LTE要件の一部であるどのシステム帯域幅においても,一定に保たれる。Δfは常に15KHzに等しい。また,OFDMシンボルの継続時間も,システム帯域幅に関係なく,一定(66.67μs)である。
(表5.1は省略。)
一方,特定の信号のための送信帯域幅は,使用されるサブキャリア数を変更することによって変えることができる。基本伝送の簡単な説明図を図5.7に示す。
(図5.7は省略。)
ランダムアクセスの設計は,これらのパラメータを考慮に入れる必要がある。例えば,RACHシグネチャは,OFDMシンボルの有限数でなければならない。また,CPを各シンボルの先頭に付加してもよい。CPの使用は6.3節で説明する。典型的な都市環境では,最大遅延拡散のオーダーは,5マイクロ秒である。したがって,CPが使用される場合には,約77(=5×10^(-6)×15.36×10^(6))チップのシンボルがOFDMシンボルの終わりからコピーされて先頭に付加される。)

(ケ)「5.4 Power ramping
In WCDMA, the random access is carried out in the same frequency band and time slots as the uplink data transmission. This prevents from assigning resources for random access but leads to interference. Therefore, a power ramping method, as mentioned in section 4.1.3, is performed to control the interference caused by the UE. A maximum power transmission would cause too much interuser interference and would result in a deterioration of data reception, which is to be highly avoided. As mentioned earlier, E-UTRA random access is made orthogonal to data transmission. In this way, no special procedure is necessary to control interference. Power ramping could hence be avoided to allow for faster detection. However, a trade off between detection delay and energy consummation has to be found. Transmitting every random access with high power would obviously result in shorter latency but the risk would be to waste a precious amount of energy. Also, in case of narrow transmission bandwidth (i.e. 1.25 MHz), power ramping could be a solution to prevent from being stuck in a deep fading dip. Moreover, power ramping is an efficient method to overcome a saturation due to high traffic load. Indeed, in case of high traffic load, many UE are likely to use the same frequency band at the same time interval. 」(39頁)
([当審仮訳]:
5.4 パワー・ランピング
WCDMAでは,ランダムアクセスは,上りリンクデータ送信と同じ周波数帯及びタイムスロットの中で行われる。これは,ランダムアクセスのためにリソースを割り当てることを防ぐが,干渉をもたらす。したがって,4.1.3節で述べたように,UEによって引き起こされる干渉を制御するために,電力ランピング方法が実行される。最大電力送信は,ユーザ間干渉を引き起こし,それは大いに避けるべきであるデータ受信の劣化をもたらす。前述したように,E-UTRAランダムアクセスは,データ伝送に直交している。このように,干渉を制御するための特別な手順は必要はない。したがって,パワー・ランピングはより速い検出を無効化することがある。しかしながら,検出遅延とエネルギー消費との間のトレードオフを見つける必要がある。すべてのランダムアクセスを高い電力で送信すると,明らかに遅延が短くなるが,エネルギーの貴重な量を無駄にするリスクがある。また,狭い送信帯域幅(1.25MHz)の例では,パワー・ランピングは,深いフェージングディップで立ち往生されないようにする解決策になる可能性がある。また,パワー・ランピングは,高トラフィック負荷による飽和を克服する効率的な方法である。)

(コ)「5.6 Signature format
The signatures are pseudo noise codes. The goal is to obtain good cross correlation properties in order to achieve high detection rate and low false alarm rate. Ideally, the autocorrelation and cross correlation of the codes should be:
( (5.1)式,(5.2)式は省略。)
Also it must be easy to reproduce the signature at the receiver side. Hence a noise-like waveform is not under consideration. Several techniques exist to obtain pseudo random codes. A common method is to generate a maximum length sequence (m-sequence) by using a Linear Feedback Shift Register (LFSR). For instance, the WiMAX signatures are generated this way. The sequences are implemented based on the recursion formula given by:
( (5.3)式は省略。)
The output is periodic with a period equal to N = 2^(L)-1. Hence, if the LFSR is designed to give a long enough m-sequence, the signatures can be chosen to be pieces of this sequence. In this way, no apparent relation exists between them. The bits are then modulated using QPSK (16 QAM could also be possible).
This remains a very simple method and obviously other techniques can be used to generate the pseudo random signatures.

5.7 Subcarriers mapping
Once a complex pseudo random code is generated, the next step consists in mapping the values to the sub-carriers. Here again, several possibilities could be adopted. In the DFTs OFDMA case, an FFT may be applied prior to the mapping. Since the input is already pseudo random, this will not change the performances significantly. However, this would permit to use the same transmission chain as for data communication.
Regarding the mapping procedure, the 3 mentioned schemes (localized, randomized and equidistant) can be used. Let us compare the performances when the timing offset is estimated by performing a simple correlation in the time domain at the receiver side. The figure below represents the autocorrelation function of a given signature with each of the mapping schemes.
(Figure 5.9は省略。)
・ In the case of an equidistant mapping, the signal is somehow periodic and the autocorrelation presents several peaks, equally separated. A wrong estimation can hence be easily made, leading to a shifted timing estimation.
・ When a localized mapping is used, the signal in the time domain can be seen as a colored noise. The autocorrelation function presents a lobe and therefore could lead to wrong estimation. However, the lobe width is approximately equal to 2/B where B is the signal frequency bandwidth, which is not significant compared to a CP duration. For instance, for a signal bandwidth equal to 1.25 MHz, the autocorrelation lobe is in the order of 1.6 μs which is smaller than the typical CP duration (5 μs). Consequently, the lobe in the autocorrelation function is not damaging regarding the timing estimation.
・ The best mapping in case of time domain detection is incontestably the pseudo random mapping. In this way, the time domain signal is also pseudo random and its autocorrelation properties are very good. 」(41?42頁)
([当審仮訳]:
5.6 シグネチャのフォーマット
シグネチャは,擬似雑音符号である。目標は,高い検出率と低い誤警報率を達成するために,良好な相互相関特性を得ることである。理想的には,コードの自己相関と相互相関は次のようになる。
((5.1)式,(5.2)式は省略。)
また,受信側でシグネチャを再現することが容易でなければならない。そのため,雑音のような波形は考慮されない。擬似ランダムコードを取得するためのいくつかの技術が存在する。一般的な方法は,線形フィードバック・シフトレジスタ(LFSR)を用いて,最大長系列(m系列)を生成することである。例えば,WiMAXのシグネチャは,このように生成される。シーケンスは次式で与えられる漸化式に基づいて実装される:
((5.3)式は省略。)
出力はN=2^(L)-1に等しい周期性を持つ。LFSRが十分な長さのm系列を与えるように設計されている場合,シグネチャはこのシーケンスの一部分であるように選択することができる。このように,それらの間には明らかな関係は存在しない。ビットはQPSK(16QAMも可能である。)を使用して変調される。
これは非常に単純な方法であり,明らかに,擬似ランダムシグネチャを生成するために他の技術を使用することもできる。

5.7 サブキャリアのマッピング
複合擬似ランダムコードが生成されると,次のステップは,サブキャリアに値をマッピングすることである。ここでも,いくつかの可能性を採用することができる。DFTs-OFDMAの場合,FFTは,マッピングの前に適用される。入力が既に擬似ランダムであるので,大幅に性能が変化することはない。けれども,データ通信と同じ伝送チェーンを使用することを可能にする。
マッピング手順について,既に述べた3つのスキーム(局在化された,疑似ランダム化された,等距離)を用いることができる。受信機側で時間領域での単純な相関を実行することによってタイミングオフセットが推定される場合の性能を比較する。以下の図は,各マッピングスキームの所与のシグネチャの自己相関関数を表す。
(図5.9は省略。)
・等距離にマッピングする場合には,信号が何らかの形で周期的であり,自己相関は,均等に分離していくつかのピークを示す。したがって,間違った推定がされ易く,シフトされたタイミング推定をもたらす。
・局在化されたマッピングが使用される場合,時間領域の信号は,色雑音と見なすことができる。自己相関関数は,ローブを示し,そのため,間違った推定につながる可能性がある。しかし,ローブの幅は,ほぼ2/Bに等しく(ここで,Bは信号周波数帯域幅。),CP継続時間と比較して有意ではない。例えば,信号帯域幅が1.25MHzのときは,自己相関サイドローブは,典型的なCP継続時間(5マイクロ秒)よりも小さい1.6マイクロ秒のオーダーである。したがって,自己相関関数におけるローブは,タイミング推定を損なわない。
・時間領域検出の場合における最高のマッピングは,明らかに擬似ランダムマッピングである。時間領域信号は疑似ランダムであり,その自己相関特性は非常に優れている。)

(サ)「5.8 Random access procedure
5.8.1 UE procedure
This section proposes to develop the random access procedure at the UE side. The steps in italic are still under consideration.
・ The UE listens to a downlink broadcast signal to obtain the transmission timing. It is also informed of the available signatures, frequency bands and time slots for a random access.
・ Open-loop power control can be used to obtain a suitable transmission power. The path loss is estimated from a downlink signal and the UE estimates the transmission power to achieve a certain SNR target. The uncertainty comes from the shadowing variance which is different from uplink to downlink (different carrier frequency).
・ The UE selects randomly a signature, a time slot and a frequency band among the available set.
・ A burst containing the chosen signature is sent over the selected frequency band and time slot.
・ The burst may contain a payload part providing a signalling message (amount of needed resource, reason of request, etc.).
・ The UE monitors a specified downlink channel for response from the NodeB.
・ In case of positive answer:
The UE decodes the response and adapts its transmission timing.
If the response contains power control information, the UE adapts also its transmission power.
Scheduling request and random access can be linked. In this case, the UE obtain resources for transmission and is able to send data on a reservation channel. Otherwise, a subsequent resource request is performed.
・ If the UE does not receive any response from the NodeB: A new attempt is performed: the UE selects a new signature, a new frequency band and sends a new burst in a RACH sub-frame after a random back-off time.
The transmission power may be increased (power ramping method).
・ An alternative method could be used to ensure a better timing control:
The NodeB could send a first response with timing information. Then the UE would have to transmit a new burst with appropriate timing correction. If the NodeB considers the timing correct, a positive response is sent without any timing information. Otherwise another message is sent with timing information. This would ensure better timing control but would imply latency in the procedure.

5.8.2 NodeB procedure
The NodeB correlates the received signal in the RACH sub-frame with all possible signature sequences. The detection can be either performed in the time domain or in the frequency domain. This will be analyzed in the following section. A detection variable is computed for each signature. It corresponds to the ratio between the peak and the mean power value of the correlation function γ.
((5.4)は省略。)
Once the detection variable exceeds a certain threshold, the signal is considered detected. The timing offset is then computed from the peak position. From the value of the detection variable, the NodeB could also estimate a power adjustment. The NodeB response should include the identity of the signature sequence (signature, frequency band, time slot), thus indicating to which access the answer is linked. 」(42?43頁)
([当審仮訳]:
5.8 ランダムアクセス手順
5.8.1 UEの手順
この節では,UE側でランダムアクセス手順を開発することを提案する。イタリックの手順は,検討中である。
・UEは,送信タイミングを得るために,下りリンク・ブロードキャスト信号をリッスンする。ランダムアクセスのために利用可能なシグネチャ,周波数帯及びタイムスロットも通知される。
・適切な送信電力を得るために開ループ電力制御を使用することができる。経路損失が下りリンク信号から推定され,UEは特定のSNR目標を達成する送信電力を推定する。不確実性は,上りと下りとで異なる(キャリア周波数が異なる)隠れた差異から来る。
・UEは,ランダムに利用可能なセットの中から,シグネチャ,タイムスロット及び周波数帯域を選択する。
・選択されたシグネチャを含むバーストは,選択された周波数帯及びタイムスロット上で送信される。
・バーストは,シグナリングメッセージ(必要なリソース量,要求の理由等)を提供するペイロード部分を含んでもよい。
・UEは,ノードBからの応答のために指定された下りリンクチャネルを監視する。
・肯定的な答えの場合:
UEは,応答をデコードし,その送信タイミングを適応させる。
応答に電力制御情報が含まれている場合,UEは送信電力を適応させる。
スケジューリング要求とランダムアクセスがリンクされる。この場合,UEは,送信のためのリソースを取得し,予約されたチャネル上でデータを送信することができる。そうでなければ,後続のリソース要求が行われる。
・ノードBからの応答を受信しない場合は,UEは新たな試行を実行する。:
UEは,新たなシグネチャ,新たな周波数帯域を選択し,ランダムバックオフ時間の後にRACHサブフレーム内で新たなバーストを送信する。
送信電力を増加させることができる(パワー・ランピング法)。
・より良好なタイミング制御を確実にするために別の方法を使用することができる。:
ノードBはタイミング情報を持つ最初の応答を送信することができる。次いで,UEは,適切なタイミングに補正して新しいバーストを送信する。ノードBはタイミングが正しいと考える場合,肯定応答がタイミング情報なしで送信される。そうでない場合は,別のメッセージがタイミング情報と共に送信される。これは,より良いタイミング制御を保証するが,手順の遅延を含む。

5.8.2 ノードBの手順
ノードBは,RACHサブフレームの受信信号をすべての可能なシグネチャシーケンスと相関させる。検出は時間領域でも周波数領域でも行うことができる。これは,次節で分析する。各シグネチャについて検出変数が計算される。これは,相関関数γのピーク電力値と平均電力値との比に相当する
((5.4)式は省略。)
検出変数が特定の閾値を超えると,信号が検出された考えられる。その後,タイミングオフセットがピーク位置から計算される。ノードBは,検出変数の値から電力調整を推定することができる。応答がどのアクセスにリンクされているかを示すために,ノードBの応答はシグネチャ・シーケンスのID(シグネチャ,周波数帯域,タイムスロット)を含むべきである。)

(シ)「Further studies would concern several important points:
・ The signature should be investigated in details. Comparison between PN and CAZAC sequences should be performed in order to find the best signature. 」(62頁)
([当審仮訳]:
さらなる研究は,いくつかの重要なポイントに関係する:
・シグネチャを詳細に調査すべきである。最良シグネチャを見つけるためにPNとCAZACシーケンスとの間の比較が行われるべきである。)

引用例1の上記各記載及び各図面並びに当該技術分野の技術常識を考慮すると,
a 上記(ア),(サ)の「5.8.1」には,UE(ユーザ機器)において,RACHによりネットワークにアクセスすることが記載されている。
そして,上記(サ)の記載によれば,UEは,ランダムアクセスのために利用可能なシグネチャ,周波数帯及びタイムスロットが通知される下りリンク・ブロードキャスト信号を受信するといえる。

b 上記(サ)の「5.8.1」には,ネットワークにアクセスするために,UEは,利用可能なセットの中からシグネチャを選択し,選択されたシグネチャを含むバーストを送信することが記載されている。そして,上記(カ),(キ),(ク),(コ)の「5.7」の記載によれば,当該送信はサイクリックプレフィクス(CP)を含んでいることは明らかである。

c 上記(サ)の「5.8.1」には,UEは,ノードBからの応答を受信しない場合は,新たなシグネチャ,新たな周波数帯域を選択し,ランダムバックオフ時間の後に,RACHサブフレーム内で新たなバーストを,送信電力を増加させて送信する新たな試行を実行することが記載されている。

d 上記(サ)の「5.8.1」には,ノードBからの応答が肯定的な答えの場合は,UEは,応答をデコードし,その送信タイミングを適応させることが記載されている。そして,上記(イ)の記載によれば,UEは,ノードBからタイミング・アドバンス・コマンドを受信し,それに応じて上り送信タイミングを調整するものであり,上記(カ)の記載及び図5.1によれば,当該タイミング・アドバンス・コマンドはどのようにラウンドトリップ遅延を補償するかをUEに知らせるものであることは明らかである。
また,上記(キ)の記載及び図5.2によれば,UEは,タイミング・アドバンス・コマンドに応答して調整された送信タイミングで,リソース要求を含む信号を送信していることは明らかである。
また,上記(オ),(サ)の「5.8.2」の記載によれば,ノードBからの肯定応答には,選択されたシグネチャを含むバースト送信が受信されていたことの表示を有しているといえる。

以上を総合すると,引用例1には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「ユーザ装置(UE)において,
ランダムアクセスのために利用可能なシグネチャ,周波数帯及びタイムスロットが通知される下りリンク・ブロードキャスト信号を受信し,
利用可能なセットの中からシグネチャを選択し,前記選択されたシグネチャとサイクリックプレフィクス(CP)を含むバーストを送信することによって,ネットワークにアクセスし,
ノードBからの応答を受信しない場合は,新たなシグネチャ,新たな周波数帯域を選択し,ランダムバックオフ時間の後に,RACHサブフレーム内で新たなバーストを,送信電力を増加させて送信する新たな試行を実行し,
前記選択されたシグネチャを含むバースト送信が受信されていたことの表示およびタイミング・アドバンス・コマンドを受信し,前記受信されたタイミング・アドバンス・コマンドに応答して調整された送信タイミングで,リソース要求を含む信号を送信するように構成された,
ユーザ装置(UE)。」

[周知事項1]
イ 当審拒絶理由に引用されたMotorola,RACH Design for EUTRA([当審仮訳]:EUTRAのためのRACH設計),3GPP TSG RAN1#44 R1-060387,2006年2月17日(以下,「引用例2」という。)には,図面と共に以下の事項が記載されている。

(ア)「1. Introduction
The RACH channel is used for initial access to the network as well as to transmit small to medium amount of control information and data packets. In [1], preliminary results for RACH preamble design were presented. This contribution proposes two options of RACH channel design for E-UTRA.

2. RACH Design Principle
The RACH design requirements include fast acquisition of preamble, ability to transmit short to medium packets using the message part, estimation of timing advance, elimination of interference and minimum impact on other data/control channels. Usually, RACH signaling includes two parts of transmission between UE and Node-B. The first part is the transmission of RACH preamble used for fast acquisition and estimation of timing advance.,. The second part is the RACH message transmission, which includes transmission of RACH data packets and associated control information. It may be noted that the timing advance is not discussed in this contribution.
On the RACH preamble design, several options, namely TDM, FDM and CDM are available for multiplexing between the RACH preamble and scheduled-data channels. 」(1頁)
([当審仮訳]:
1.緒言
RACHチャネルは,少量から中程度の量の制御情報及びデータパケットを伝送するために使用されるの同様に,ネットワークへ最初にアクセスするために使用される。[1]には,RACHプリアンブル設計の準備段階の結果が提示されている。この寄稿は,E-UTRAのためのRACHチャネル設計の2つのオプションを提案している。

2.RACH設計方針
RACH設計要件は,プリアンブルの速い獲得,メッセージ部分を使用して少量から中程度のパケットを送信する能力,タイミングアドバンスの推定,干渉除去及び他のデータ/制御チャネルへの影響の最小化が含まれる。通常,RACHシグナリングは,UEとノードBとの間の伝送の2つの部分を含む。第一の部分は,速い獲得及びタイミングアドバンスの推定に使用されるRACHプリアンブルの送信である。第二の部分は,RACHデータパケット及び関連する制御情報を含むRACHメッセージの送信である。なお,タイミングアドバンスがこの寄稿では検討されていないことに留意されたい。
RACHプリアンブル設計では,RACHプリアンブルとスケジュールされたデータチャネルとの間の多重化のために,いくつかのオプション,すなわち,TDM,FDM及びCDMが利用可能である。)

(イ)「3. RACH Preamble Design using TDM/FDM
In this scheme a dedicated or special symbol is used for RACH. The RACH symbol can be reserved every x frames (e.g. x = 1 … 10.) as shown in Figure 3. The scheme can use either localized or distributed mode. In the localized mode the subcarriers are divided into N_(RB) resource blocks with each resource blocks using a fixed number of contiguous sub-carriers. Next, for each of the N_(RB) resource blocks, a number of signature sequence groups are pre-defined so that every group consists of N_(S) signature sequence and different groups can be assigned to different neighboring sectors. Each group also consists of several cyclically shifted version of the signature sequences (N_(SH) ). As such, the total number of RACH opportunities per DFT-SOFDM symbol is given by N_(RB) * N_(S) * N_(SH) . 」(2頁)
([当審仮訳]:
3.TDM/FDMを使用したRACHプリアンブルの設計
この方式では,専用又は特殊シンボルがRACHのために使用される。図3に示すように,RACHシンボルはXフレーム毎(例えば,X=1・・・10。)を予約することができる。この方式は,局在化又は分散のいずれかのモードを使用することができる。局在化モードでは,サブキャリアはN_(RB)個のリソースブロックに分割され,各リソースブロックは固定数の連続するサブキャリアの使用する。次に,各グループがN_(S)個のシグネチャシーケンスから構成されるように,そして,異なるグループが異なる近隣セクターに割り当てられるよう,N_(RB)個の各リソースブロックに対して,多数のシグネチャシーケンスのグループが予め定義される。各グループは,いくつかの周期的にシフトしたバージョンのシグネチャシーケンス(N_(SH))で構成されてる。このように,DFTs-OFDMシンボル当たりのRACH機会の総数は,N_(RB)*N_(S)*N_(SH) によって与えられる。)

(ウ)「3.3. RACH Message part for the TDM/FDM Structure
If the preamble is detected at the Node-B, the Node-B sends an ACK. Upon detection of the ACK at the UE, the UE sends the message part in the next slot using the same RB location which was used to send the preamble. 」(5頁)
([当審仮訳]:
3.3 TDM/FDMの構造のためのRACHメッセージ部分
ノードBにおいてプリアンブルが検出されると,ノードBはACKを送信する。UEにおいてACKが検出されると,UEは,次のスロットで,プリアンブルを送信するために使用されたRBと同じ位置のRBを用いて,メッセージ部分を送信する。)

(エ)「4.2. RACH Message Design
To maximize capacity utilization in the uplink, RACH message transmission will be scheduled by the Node B on a time-frequency regions reserved specifically for RACH message transmissions. These regions are fixed and known beforehand so as to minimize control message overhead. The frequency, size, and number of these RACH messages regions will depend on system design and deployment scenarios. Naturally, when there is no RACH message transmission, the Node B can schedule other users in these regions. At the Node B, once the RACH preamble is successfully received, a 4 bit acknowledgement corresponding to the sequence number is transmitted to the UE. This is done even when the UE may not be scheduled for some time to prevent the UE from transmitting the RACH preamble again. Subsequent to receiving an acknowledgement, the UE monitors the downlink control channel for a period of time for scheduling information in order to transmit the RACH message. 」(8頁)
([当審仮訳]:
4.2.RACHメッセージの設計
上りリンクにおける容量の使用率を最大化するために,RACHメッセージ送信は,RACHメッセージの送信のために特に予約される時間-周波数領域上で,ノードBによってスケジューリングされる。制御メッセージのオーバーヘッドを最小限に抑えるように,これらの領域は,固定され,予め知られている。RACHメッセージ領域の周波数,サイズ及び数は,システム設計及び展開シナリオに依存する。当然,RACHメッセージの送信がない場合は,ノードBはこれらの領域に他のユーザをスケジュールすることができる。ノードBでRACHプリアンブルが首尾よく受信されると,シーケンス番号に対応する4ビットの肯定応答がUEに送信される。これは,UEがある時間にスケジュールされないことがあっても,UEが再びRACHプリアンブルを送信するのを防止するために行われる。肯定応答を受信した後,UEは,RACHメッセージを送信するために,所定の期間,スケジューリング情報のために,下りリンク制御チャネルを監視する。)

ウ 当審拒絶理由に引用されたPanasonic,Random access design for E-UTRA uplink([当審仮訳]:E-UTRA上りリンクのためのランダムアクセス設計),3GPP TSG-RAN WG1 Meeting#45 R1-061114,2006年5月12日(以下,「引用例3」という。)には,図面と共に以下の事項が記載されている。

(ア)「2. Random access structure design
2.1. Preamble sequence
Random access is a contention based transmission. Therefore, multiple random access bursts from multiple UEs could be transmitted simultaneously. It is also good, if multiple random accesses are detected simultaneously at E-NodeB. To reduce the collisions among the random access, a common approach is UE randomly chooses one out of plural different preambles/signatures. To distinguish random accesses from different UEs at NodeB, a sequence with good auto-correlation and good cross-correlation property is required. For these reasons, we compare the miss detection probability vs. the average Ep/No among the different type of sequences (i.e. W-CDMA preamble sequences, different CAZAC sequences and cyclic-shifted CAZAC sequences). 」(1/5頁)
([当審仮訳]:
2. ランダムアクセス構造の設計
2.1. プリアンブルシーケンス
ランダムアクセスは,競合ベースの送信である。したがって,多数のUEからの多数のランダムアクセス・バーストが同時に送信され得る。多数のランダムアクセスがEノードBで同時に検出されてもよい。ランダムアクセスの間での衝突を減少させるための一般的なアプローチは,UEが複数の異なるプリアンブル/シグネチャのうちの1つをランダムに選択することである。EノードBにおいて異なるUEからのランダムアクセスを区別するために,良好な自己相関と良好な相互相関特性を持つシーケンスが必要となる。これらの理由から,異なるタイプのシーケンス(すなわちW-CDMAプリアンブルシーケンス,異なるCAZACシーケンス及び巡回シフトCAZACシーケンス)の間で,検出誤りvs平均Ep/Noを比較する。)

(イ)「From the evaluation, both CAZAC sequence and cyclic-shifted CAZAC sequence show better detection performance compared with the truncated WCDMA preamble sequence. (中略) Therefore, cyclic-shifted CAZAC sequence has superior performance among compared sequences. This aspect is also discussed in [14] . 」(2/5頁)
([当審仮訳]:
評価から,CAZACシーケンス及び巡回シフトCAZAC系列の両方が,切断されたWCDMAプリアンブルシーケンスと比較して,より良好な検出性能を示している。 (中略)
このため,巡回シフトCAZACシーケンスは,比較された配列の中で優れた性能を持っている。この様相は[14]にも記載されている。)

上記イ,ウの各記載によれば,「RACHのプリアンブルのシグネチャとして巡回シフトCAZACシーケンスを用いること。」は周知の技術事項(以下,「周知事項1」という。)であると認められる。

[周知事項2]
エ 当審拒絶理由に引用されたNortel Networks,On the performances of LTE RACH([当審仮訳]:LTE RACHの性能),3GPP RAN1 meeting#44-bis R1-060908,2006年3月31日(以下,「引用例4」という。)には,図面と共に以下の事項が記載されている。

(ア)「2 Considered RACH configurations
2.1 Case 1 : Sending only preambles
Figure1 shows the transmission structure for LTE RACH preamble. Zadoff-Chu CAZAC is used for the code signatures of RACH preamble. They are mapped to the sub-carriers in localized manner before N point FFT is accomplished. We should note that Zadoff-Chu CAZAC has the following features.
- Low PAPR than random-code signatures
- Zero autocorrelation for the delay over one-symbol duration
- Applicable to SC-FDMA transmission block 」(1頁)
([当審仮訳]:
2 検討されたRACH構成
2.1 ケース1:プリアンブルのみを送信する
図1は,LTE RACHプリアンブルのための送信構造を示す。 Zadoff-Chu CAZACは,RACHプリアンブルのコード・シグネチャのために使用される。それらは,N点FFTが達成される前に,局在的な方法でサブキャリアにマッピングされる。Zadoff-Chu CAZACは,以下の特徴を持っている。
- ランダムコード・シグネチャよりも低いPAPR
- 1シンボル期間を越える遅延には自己相関がゼロ
- SC-FDMA送信ブロックに適用可能 )

(イ)「2.2 Case 2 : Sending messages along with preambles
We had investigated RACH message transmitted along with the preamble. In that scheme, the RACH message signals are transmitted after RACH preambles and identically repeated similar to the preamble symbols. It is shown in the figure 4. Zadoff-Chu CAZAC is used for preamble signatures and for channel estimator. 」(2頁)
([当審仮訳]:
2.2 ケース2:プリアンブルと一緒にメッセージを送信する
プリアンブルと一緒に送信されたRACHメッセージを調査した。その方式では,RACHメッセージ信号は,RACHプリアンブルの後に送信され,プリアンブル・シンボルと同様に同じものが繰り返される。それは図4に示されている。Zadoff-Chu CAZACは,プリアンブルシグネチャ及びチャネル推定のために使用される。)

(ウ)「Table 1. The parameters and assumptions for RACH simulation」([当審仮訳]:表1 RACHシミュレーションのためのパラメータ及び前提)として,「RACH message information30 bits (RRC request) 5 bits (CQI)」([当審仮訳]:RACHメッセージ情報 30ビット(RRC要求) 5ビット(CQI) )との記載がある。

オ 新たに周知例として例示するNTT DoCoMo,Random Access Channel Structure for E-UTRA Uplink([当審仮訳]:E-UTRA上りリンクのためのランダムアクセスチャネル構造),3GPP RAN1 meeting#44-bis R1-060786,2006年3月31日(以下,「引用例5」という。)には,図面と共に以下の事項が記載されている。

(ア)「2.2. Control Information Conveyed by Proposed RACH
The information conveyed by the proposed RACH is as follows. Note that some of the following information may overlap each other as described later.
・ Signature sequence
-Transmitted from the preamble part
-Identify a random access attempt
-Good auto/cross-correlation and low power de-rating property is required.
-Note that if each UE selects a transmission frequency randomly within the allowed transmission bandwidth for RACH, a random access attempt is also identified by the transmission frequency in addition to the signature sequence.
・ Random temporary ID
-Random temporary ID is used to distinguish the UEs before the UE ID is assigned by the cell site
-Random temporary ID may be partially represented by the other control information (for example, combination of the signature sequence and downlink CQI indicates the random temporally ID). Details are FFS.
・ Downlink CQI
-Used for link adaptation (power control, etc.) in the downlink feed back channel, and used for initial channel-dependent scheduling
・ Scheduling request information
-Used for the initial resource assignment at the scheduler. 」(4/8頁)
([当審仮訳]:
2.2. 提案されたRACHによって搬送される制御情報
提案されたRACHによって搬送される制御情報は以下のとおりである。後述するように,いくつかの情報の一部が互いに重なり得ることに留意されたい。
・シグネチャシーケンス
-プリアンブル部から送信される
-ランダムアクセス試行を識別
-良好な自動/相互相関と低消費電力ディレーティング特性が要求される。
-もし各UEがRACHのための許可された伝送帯域幅内で送信周波数をランダムに選択した場合,ランダムアクセス試行は,シグネチャ・シーケンス系列に加えて送信周波数によっても識別されることに留意されたい。
・ランダムな一時的ID
-セルサイトからUEのIDが割り当てられる前に,UEを区別するためにランダムな一時的なIDが使用される。
-ランダムな一時的なIDは,部分的に他の制御情報によって表すことができる(例えば,シグネチャ・シーケンスと下りリンクCQIの組み合わせがランダムな一時的IDを示す。)。詳細はFFS。
・下りリンクのCQI
-下りリンクフィードバックにおけるリンク適応(電力制御等)に使用され,また,初期チャネル依存スケジューリングのために使用される。
・スケジューリング要求情報
-スケジューラにおける初期リソース割り当てに使用される。)

(イ)「・Approach 1: One-to-one correspondence between signature sequence and control information
We can represent some of the control information by the used signature sequence. For example, if the number of signature sequences is 16 (same as in W-CDMA) and the number of downlink CQI bits is two, i.e., 4-level classification of the downlink CQI, we can use a one-to-one correspondence between signature sequence and downlink CQI information as shown in Table 1. Therefore, downlink CQI bits can be transmitted using the preamble signature only in the example. 」(5/8?6/8頁)
([当審仮訳]:
・アプローチ1:シグネチャ・シーケンスと制御情報との間の一対一対応
使用されるシグネチャ・シーケンスにより制御情報の一部を表すことができる。例えば,シグネチャ・シーケンスの数が16(W-CDMAと同じ)であり,下りリンクのCQIビットの数が2(すなわち,下りリンクCQIの分類が4レベル。)である場合,表1に示されるように,シグネチャ・シーケンスと下りCQI情報との間に一対一対応を使用することができる。このため,下りリンクのCQIビットは,プリアンブル・シグネチャを使用して送信することができる。)

上記エ,オの各記載によれば,「RACHメッセージに制御情報やCQI情報を含めること。」は周知の技術事項(以下,「周知事項2」という。)であると認められる。

(3)対比・判断
本願発明と引用発明とを比較すると,
ア 引用発明のユーザ装置(UE)は,送信機能及び受信機能を有することは明らかであるから,「無線送受信装置(WTRU)」といえる。

イ 引用例1の記載(上記(2)ア(ウ),(ク),(コ)の「5.7」参照。)によれば,引用発明はUEがDFT拡散OFDM送信機によりランダムアクセス信号を送信することを含むものであるから,引用発明が受信する,「ランダムアクセスのために利用可能なシグネチャ,周波数帯及びタイムスロットが通知される下りリンク・ブロードキャスト信号」は,「ランダムアクセスチャネル(RACH)送信のために使用されることになるサブキャリアを示しているRACH割り当て情報」を含むことは明らかである。
そして,引用例1には明記されていないが,引用発明のユーザ装置(UE)は,下りリンク・ブロードキャスト信号を受信するように構成された処理装置および関連付けられた受信装置を備えていることは技術常識に照らして自明である。

ウ 本願明細書の【0012】,【0013】の記載によれば,本願発明の「定振幅ゼロ自己相関(CAZAC)シーケンス」は「シグネチャーシーケンス」に含まれるところ,同【0023】の記載によれば,異なる位相が選択されたCAZACシーケンスは,実質的に異なるシグネチャーシーケンスとして異なるRACHチャネルを構成していることは明らかである。
ここで,上記「第4 1(1)」で検討したとおり,本願発明の「前記選択されたCAZACシーケンスの位相をサイクリックプレフィクスと組み合わせ,前記選択された位相を持つ前記CAZACシーケンスおよび前記サイクリックプレフィクスを含んでいるRACH送信を送信すること」なる構成に係る記載は不明瞭である。しかしながら,上記「第4 4(1)本願発明」で述べたとおり,本願明細書及び図面の開示内容に照らして,当該構成は,図1及びその説明のとおり,選択された位相を持つCAZACシーケンスが,シンボル化され,DFT処理され,副搬送波にマッピングされ,IFFTされて得た時間ドメインのOFDM信号に,その末尾部分の一部がCPとして先頭部分に付加された信号が,ランダムアクセスチャネル(RACH)送信のために使用されることになるサブキャリアで送信されることと認める。
してみると,本願発明の「定振幅ゼロ自己相関(CAZAC)シーケンスの位相のセットの中から,前記CAZACシーケンスの位相を選択し,前記選択されたCAZACシーケンスの位相をサイクリックプレフィクスと組み合わせ,前記選択された位相を持つ前記CAZACシーケンスおよび前記サイクリックプレフィクスを含んでいるRACH送信を送信することによって,無線通信システムにアクセスするように構成された前記処理装置および関連付けられた送信装置を備え」と,引用発明の「利用可能なセットの中からシグネチャを選択し,前記選択されたシグネチャとサイクリックプレフィクス(CP)を含むバーストを送信することによって,ネットワークにアクセスし」とは,以下の相違点1は別として,「選択されたシグネチャーシーケンスをサイクリックプレフィクスと組み合わせ,前記選択されたシグネチャーシーケンスおよび前記サイクリックプレフィクスを含んでいるRACH送信を送信することによって,無線通信システムにアクセスするように構成された前記処理装置および関連付けられた送信装置を備え」の点で差異は無い。

エ 引用例1の記載(上記(2)ア(エ),(オ),(ケ)参照。)に照らせば,引用発明の「ノードBからの応答を受信しない場合」は,ACKを受信しない場合を含むことは明らかである。
そして,上記ウのとおりであるから,本願発明の「前記処理装置および前記関連付けられた送信装置は,前記WTRUが,前記選択された位相を持つ前記CAZACシーケンスを含む前記RACH送信が受信されていたことの表示を共有チャネル上で受信していない条件で,増加した送信電力レベルで,別の位相を持つ別のCAZACシーケンスおよび別のサイクリックプレフィクスを含む別のRACH送信を送信するようにさらに構成され」と引用発明の「ノードBからの応答を受信しない場合は,新たなシグネチャ,新たな周波数帯域を選択し,ランダムバックオフ時間の後に,RACHサブフレーム内で新たなバーストを,送信電力を増加させて送信する新たな試行を実行し,」とは,以下の相違点1,2は別として,「前記処理装置および前記関連付けられた送信装置は,前記WTRUが,前記選択されたシグネチャーシーケンスを含む前記RACH送信が受信されていたことの表示を受信していない条件で,増加した送信電力レベルで,別のシグネチャーシーケンスおよび別のサイクリックプレフィクスを含む別のRACH送信を送信するようにさらに構成され」の点で差異は無い。

オ 引用発明の「タイミング・アドバンス・コマンド」は明らかに本願発明の「時間アドバンス(TA)」に相当する。そして,引用例の記載(上記(2)ア(カ),(キ),(サ)参照。)に照らせば,UEは肯定応答及びタイミング・アドバンス・コマンドを受信すると,タイミング・アドバンス・コマンドに従った適切な送信タイミングでリソース要求を含む信号を送信するのであり,当該受信を「受信する条件で」と称することは任意である。
したがって,本願発明の「前記処理装置および前記関連付けられた送信装置は,前記WTRUが,前記選択された位相を持つ前記CAZACシーケンスを含む前記RACH送信が受信されていたことの表示および時間アドバンス(TA)を前記共有チャネル上で受信する条件で,前記受信された時間アドバンス(TA)に応答して調整された送信タイミングで,制御データと第3のCAZACシーケンスから導き出された参照シンボルとを含む信号を送信するようにさらに構成されたこと」と,引用発明の「前記選択されたシグネチャを含むバースト送信が受信されていたことの表示およびタイミング・アドバンス・コマンドを受信し,前記受信されたタイミング・アドバンス・コマンドに応答して調整された送信タイミングで,リソース要求を含む信号を送信するように構成された」とは,以下の相違点3は別として,「前記処理装置および前記関連付けられた送信装置は,前記WTRUが,前記シグネチャーシーケンスを含む前記RACH送信が受信されていたことの表示および時間アドバンス(TA)を受信する条件で,前記受信された時間アドバンス(TA)に応答して調整された送信タイミングで,信号を送信するようにさらに構成されたこと」の点で差異は無い。

したがって,両者は以下の点で一致し,また,相違している。
(一致点)
「無線送受信装置(WTRU)において,
ランダムアクセスチャネル(RACH)送信のために使用されることになるサブキャリアを示しているRACH割り当て情報を受信するように構成された処理装置および関連付けられた受信装置と,
選択されたシグネチャーシーケンスをサイクリックプレフィクスと組み合わせ,前記選択されたシグネチャーシーケンスおよび前記サイクリックプレフィクスを含んでいるRACH送信を送信することによって,無線通信システムにアクセスするように構成された前記処理装置および関連付けられた送信装置を備え,
前記処理装置および前記関連付けられた送信装置は,前記WTRUが,前記選択されたシグネチャーシーケンスを含む前記RACH送信が受信されていたことの表示を受信していない条件で,増加した送信電力レベルで,別のシグネチャーシーケンスおよび別のサイクリックプレフィクスを含む別のRACH送信を送信するようにさらに構成され,
前記処理装置および前記関連付けられた送信装置は,前記WTRUが,前記シグネチャーシーケンスを含む前記RACH送信が受信されていたことの表示および時間アドバンス(TA)を受信する条件で,前記受信された時間アドバンス(TA)に応答して調整された送信タイミングで,信号を送信するようにさらに構成された
WTRU。」

(相違点1)
「選択されたシグネチャーシーケンス」について,本願発明は「定振幅ゼロ自己相関(CAZAC)シーケンスの位相のセットの中から,前記CAZACシーケンスの位相を選択し」た「前記選択された位相を持つ前記CAZACシーケンス」であるのに対し,引用発明の「シグネチャ」はランダムに選択される擬似雑音符号やm系列の一部であり,選択された位相を持つCAZACシーケンスでない点。

(相違点2)
本願発明は,「前記選択された位相を持つ前記CAZACシーケンスを含む前記RACH送信が受信されていたことの表示および時間アドバンス(TA)」を「共有チャネル上で」で受信するのに対して,引用発明はこれらがどのチャネルで受信されるか明らかにしていない点。

(相違点3)
調整された送信タイミングで送信される信号について,本願発明は「制御データと第3のCAZACシーケンスから導き出された参照シンボルとを含む」のに対して,引用発明はリソース要求を含むことしか明らかにしていない点。

以下,上記各相違点について検討する。
(相違点1)について
引用例1にはシグネチャーシーケンスとしてCAZACシーケンスを用いることが示唆されており(上記(2)ア(シ)参照。),チャネル数を増やすためにCAZACシーケンスの位相をシフトすることは周知(周知事項1)であるから,引用発明のシグネチャを「定振幅ゼロ自己相関(CAZAC)シーケンスの位相のセットの中から,前記CAZACシーケンスの位相を選択し」た「前記選択された位相を持つ前記CAZACシーケンス」とすることは,当業者が容易になし得ることにすぎない。

(相違点2)について
下りリンクにおいて,ACKや制御信号の通信に共有チャネルを使用することは普通に行われていることであるから,相違点2は技術常識に照らして格別困難なことではない。

(相違点3)について
引用例1には,RACHを,リソースの要求,上りリンクの時間オフセットの調整の他に,制御情報を運ぶために使用することが示唆されている(上記(2)ア(ア)参照。)。
また,引用例1の記載(上記(2)ア(キ)参照。)によれば,ランダムアクセス信号はRACHシグネチャとRACHメッセージとから成るところ,シグネチャは参照シンボル(パイロット)として使用されることが示唆されている。
そして,引用例1には,ノードBからの応答を受信しない場合についてではあるが,新たなシグネチャを選択して新たな試行に係るバーストを送信することが記載されており(上記(2)ア(サ)参照。),UEからノードBへのRACHに係る送信はいずれもRACHシグネチャとRACHメッセージとから構成されるランダムアクセス信号として送信されることに鑑みれば,リソース要求におけるRACHシグネチャとして新たなシグネチャ(すなわち,第3のCAZACシーケンス。)を選択するようにすることは適宜なし得ることに過ぎない。
したがって,調整された送信タイミングで送信される信号が,「制御データと第3のCAZACシーケンスから導き出された参照シンボルとを含む」ようにすることは,当業者が容易になし得ることである。

なお,ここで,特許請求の範囲には「参照シンボル」の具体的内容については特定されていないが,本願発明の「参照シンボル」を,本願明細書の【0014】のとおり,「チャネル推定値およびチャネル品質情報(CQI:channel quality indication)値の両方を含む。」ものとしてみても,ランダムアクセスメッセージにCQIを含むことは周知(周知事項2)であり,また,上りリンクでチャネル推定値を送信することも普通に行われていることにすぎない。そして,引用例1にはメッセージを拡散することが示唆されている(上記(2)ア(オ)参照。)ことにも鑑みれば,「第3のCAZACシーケンスから導き出された(チャネル推定値およびチャネル品質情報値の両方を含む)参照シンボル」には,特段の技術的特徴は認められない。よって,相違点3は格別困難なものではない。

そして,補正後の発明の作用効果も,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。

(4)まとめ
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。


第5 むすび
以上のとおり,本件出願は,特許請求の範囲の記載に不備があり,特許法第36条第6項第1号,第2号に規定する要件を満たしていない。また,平成26年4月8日付けでした手続補正は,国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面の翻訳文(誤訳訂正後の明細書),国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものでないので,特許法第184条の12第2項で読み替える特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。同様に,国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものともいえないので,特許法第184条の18で読み替える同法第49条第6項に該当する。また,発明の詳細な説明の記載に不備があり,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。更に,請求項1に係る発明を上記「第4 4(1)」で本願発明として認定したとおりのものとしてみても,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-07-28 
結審通知日 2014-07-29 
審決日 2014-08-18 
出願番号 特願2009-509865(P2009-509865)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H04J)
P 1 8・ 562- WZ (H04J)
P 1 8・ 537- WZ (H04J)
P 1 8・ 561- WZ (H04J)
P 1 8・ 121- WZ (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡 裕之  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 藤井 浩
山本 章裕
発明の名称 OFDM-MIMOシステム向けランダムアクセスチャネル  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
復代理人 濱中 淳宏  
復代理人 中西 英一  

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