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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) G01C
管理番号 1296078
判定請求番号 判定2014-600034  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2015-02-27 
種別 判定 
判定請求日 2014-08-05 
確定日 2015-01-13 
事件の表示 上記当事者間の特許第3280812号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 イ号方法は,特許第3280812号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 1 請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は,「GPSを利用した超高層タワー鉛直精度管理技術の開発」(平成24年度建設施工と建設機械シンポジウム論文集・梗概集」第45頁?第50頁)(以下,甲第1号証という。),及び「複雑な形状の鉄骨を精度よく建てる」(東京スカイツリーの作り方;株式会社大林組ホームページ)(以下,甲第2号証という。)に記載された構造物の鉛直精度計測方法(以下,イ号方法という。)は,特許第3280812号特許発明(以下,本件特許発明という)の技術範囲に属する,との判定を求める」ものである。

2 本件特許発明
本件特許発明は,特許明細書及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり,その構成要件を符号を付けて分説して記載すると次のとおりである。(以下,各構成要件を「構成要件(1)」などという。)

「(1)超高層建築物を施工する際に所定階層毎に鉛直方向の施工精度を計測する方法であって,
(2)前記超高層建築物のグランドレベル平面に所定点を定め,
(3)前記超高層建築物が設計図に基づいて鉛直に所定階層構築された場合に前記所定点の鉛直上に位置するはずである点を,その施工時点における最上層に基準位置として定めて
(4)ここでGPS電波を受信し,
(5)これらGPS電波を演算手段に送信し,
(6)この演算手段で前記GPS電波を解析して前記基準位置の位置座標の実測値を求め,
(7)該実測値と前記グランドレベル平面の所定点との平面位置の比較により施工途中または施工完了後の各時点における超高層建築物の鉛直精度を求める
(8)構造物の鉛直精度計測方法。」

3 イ号方法
(1) 請求人の主張
判定請求書の「6-5 イ号方法の説明」によれば,イ号方法は,以下のとおりのものである。
「(a)超高層建築物を施工する際に所定節毎に鉛直方向の施工精度を計測する方法であって,
(b)前記超高層建築物のグランドレベル平面に基準点(原点)を定め,
(甲第2号証の第4頁中段の「各節の基準点は,着工時に地上に設定
した基準点を右の図のように建て方の進捗に合わせて常に最上階へ
と移動させます。」の説明)
(c)前記超高層建築物の所定節が構築された場合に前記基準点(原点)の鉛直上に位置する点(基準墨)を,在来手法(鉛直視準器により盛替え)により上げてその施工時点における最上部に基準点(現場内基準点)として定めて,
(甲第1号証の第47頁右欄24行目?27行目,同第48頁左欄
19行目の「在来手法で上げた基準墨」,及び甲第2号証の
第4頁中段の説明)
(d)この最上部の2箇所にGPS観測局を設置してGPS電波を受信し,
(甲第1号証の第47頁右欄48行目)
(e)これらGPS電波を演算手段に送信し,
(甲第1号証の第47頁右欄48?50行目)
(f)この演算手段で前記GPS電波を解析して前記基準位置の位置座標の実測値(GPS計測座標)を求め,
(甲第1号証の第48頁左欄12?16行目)
(g)該GPS計測座標と前記最上部の基準点の座標との比較により誤差を算出し,施工途中または施工完了後の各時点における超高層建築物の鉛直精度を求める
(甲第1号証の第47頁右欄23?27行目)
(h)構造物の鉛直精度計測方法。」
(以下,各構成を「イ号構成(a)」などという。)

(2) 被請求人の主張
被請求人は,判定請求答弁書において,イ号方法は,本件特許発明の構成要件(4)及び構成要件(7)を具備しないものであると主張している。


4 イ号方法が本件特許発明の各構成要件を充足するか否かについて
(1) 本件特許発明とイ号方法との対比
本件特許発明の構成要件とイ号方法とを対比すると,イ号方法は,イ号構成(a),(b),(c),(e),(f),及び(h)を有し,本件特許発明の構成要件(1),(2),(3),(5),(6),及び(8)を充足している。しかしながら,イ号方法が,構成要件(4)及び構成要件(7)を充足するか否かについて,請求人と被請求人との間で争いがある。

(2) 構成要件(4),(7)について
ア 構成要件(4)についての検討
構成要件(4)は,「ここでGPS電波を受信し」であるが,「ここで」は,「超高層建築物のグランドレベル平面に所定点を定め,前記超高層建築物が設計図に基づいて鉛直に所定階層構築された場合に前記所定点の鉛直上に位置するはずである点を,その施工時点における最上層に基準位置として定め」(構成要件(2),(3))の「基準位置」を意味している。
よって,構成要件(4)は,「ここで(前記基準位置で)GPS電波を受信する」ことである。
イ 構成要件(7)についての検討
構成要件(7)は,「該実測値と前記グランドレベル平面の所定点との平面位置の比較により施工途中または施工完了後の各時点における超高層建築物の鉛直精度を求める」であるが,「該実測値」は,「この演算手段で前記GPS電波を解析して前記基準位置の位置座標の実測値を求め」(構成要件(6))の「実測値」を意味している。
よって,構成要件(7)は,「演算手段で前記GPS電波を解析して求めた前記基準位置の位置座標の実測値と前記グランドレベル平面の所定点との平面位置の比較により施工途中または施工完了後の各時点における超高層建築物の鉛直精度を求める」ことである。

(3) 甲第1,2号証の記載について
ア 甲第1号証の記載
(a)
「GPSを利用した超高層タワー鉛直精度管理技術の開発」(第45頁第1行目)
(b)
「3次元光波測量器(以下,トータルステーション:TS)」(第46頁左欄下から5,6行目)
(c)
「3.3 GPS鉛直精度管理システムの開発
GPS座標からローカル座標へ変換された座標値(GPS計測座標)は,現場内基準点(鉛直視準器により盛替え)を利用してTSにより計測された座標値(TS計測座標)と比較して誤差(以下,絶対変位)を算出できる(図-4)。」(第47頁右欄第22行目?27行目)
(d)
「4.超高層タワー建設工事への適用
4.1 塔体鉄骨工事における基準墨の鉛直精度管理
(1)システム適用計画
・・・(略)・・・
塔体頂部のGPS観測局は,塔体芯の変位と塔体回転角を得るために2箇所に設置した。得られた長期間の計測データから,日射の影響がない深夜から早朝にかけての風速値の低い時間帯のみのデータを抽出し,それを統計処理することでGPS計測座標を取得した。鉄骨工事1節ごとに,これら2箇所で得られたGPS計測座標から塔体芯(ローカル座標原点)での誤差値と回転角を算出することによって,従来手法のような超高層タワー内のある一点ではなく,節全体としての誤差を把握できるようにした。具体的に誤差の把握は,在来手法で上げた基準墨をGPSで数日間モニタリングし,得られたGPS計測座標との誤差値をチェックすることで行われた。・・・(略)・・・
(2)適用結果
実施では,GPSから得られた基準墨の誤差値が,想定された累積誤差の最大値を超えたことは一度もなく,在来手法で上げた基準墨の正確さが確認できた。さらに,H150,H240,H375,H495において,GPS計測精度の確認測量を実施した。塔体最上部にプリズムを設置し,その直上にGPSアンテナを設置した。塔体外部から現場のローカル座標系でTSを利用して測量を行い,GPS計測座標と比較したところ,両者の誤差はx,y座標でほぼ5mm以内であり,本システムのGPSで得られた水平座標の正確さが確認できた。」(第47頁右欄第40行目?第48頁左欄第40行目)

(e)
「図-4 基準点の絶対変位の算出
(図中の記載)
誤差(絶対変位)=GPS計測座標-TS計測座標」(第47頁左欄)

イ 甲第2号証の記載
(f)
「4 基準点の精度管理
3次元計測・管理システムの計測精度の確保には,計測の基となる基準点の精度管理が重要です。ところが,塔体鉄骨は日射や風,クレーン稼働による影響で常に動いています。
基準点の移動
そこで,基準点は常に鉄骨を配置する最上部に移動して使用します。基準点より下の塔体の動きには関係なく,基準点に対して正しい位置を確保し,動いている塔体の上に鉄骨を積んでいきます。
各節の基準点は,着工時に地上に設定した基準点を右の図のように建て方の進捗に合わせて常に最上部への移動させます。
移動作業は,塔体の動きの影響が出ないように動きの少ない早朝などの時間帯に行います。
基準点の移動により,塔体の動きの影響を受けずに鉄骨を精度よく建てることができます。
GPSを利用した基準点の精度確認
さらに基準点の精度を確保するために,累積誤差の確認を補完する仕組みを考えました。
正確な「基準点」を求めるためには,地上の不動点に設置した基準となる「原点」からの絶対位置を測ることが必要になります。しかし,地上から300mを超える上空を光波で計測するには誤差が多くなり,そもそも動いているものの位置を測ることは困難になります。
そこで高精度なGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)を利用し,風や日射による塔体の動きの影響を排除した基準点の絶対位置を計測するシステムの開発を行いました。
(図中の記載)
観測局は常に塔体の最上部に設置
基準局は建物外の不動点に設置
地上の不動点に設置した基準の原点
基準局と観測局を同時に計測し,補正を行うことなどで精度を向上させます。また,連続計測で動きのある観測局を計測し,その中で風や日射により影響のある値を排除し,信頼性の高いデータ群の中から塔体が静止している時の観測局の位置を導き出す仕組みになっています。」(第3頁下から3行目?第5頁図面下本文3行目)

(4) イ号方法は,構成要件(4)及び構成要件(7)を充足するか否かについて
上記記載(f)の「各節の基準点は,着工時に地上に設定した基準点を右の図のように建て方の進捗に合わせて常に最上部への移動させます。」,及び上記記載(c)の「現場内基準点(鉛直視準器により盛替え)」より,イ号方法は,「着工時に地上に設定した基準点を建て方の進捗に合わせて最上部に鉛直視準器により盛替え(移動)させ,現場内基準点とし」ていることが判る。
ここで,「着工時に地上に設定した基準点」は, 本件特許発明の構成要件(2)「前記超高層建築物のグランドレベル平面に所定点を定め」るの「所定点」に相当する。
また,「現場内基準点」は,着工時に地上に設定した基準点を建て方の進捗に合わせて最上部に鉛直視準器により盛替え(移動)させたものであるから,超高層タワーが設計図に基づいて鉛直に所定階層構築された場合には,地上に設定した基準点の鉛直上に位置するはずである点であり,建て方の進捗に合わせて最上部に位置するから,施工時点における最上層に位置するものである。
よって,「現場内基準点」は,本件特許発明の構成要件(3)「前記超高層建築物が設計図に基づいて鉛直に所定階層構築された場合に前記所定点の鉛直上に位置するはずである点を,その施工時点における最上層に基準位置として定めて」の「基準位置」に相当する。

上記記載(f)の「観測局は常に塔体の最上部に設置・・・観測局を計測し,・・・観測局の位置を導き出す」より,イ号方法は,「GPS観測局を,塔体の最上部に設置し,GPS観測局の位置を計測し」ていることが判る。

上記記載(b)の「3次元光波測量器(以下,トータルステーション:TS)」,及び上記記載(c)より,「GPS鉛直精度管理システムとしては,GPS座標からローカル座標へ変換された座標値(GPS計測座標)は,現場内基準点(鉛直視準器により盛替え)を利用して3次元光波測量器(以下,トータルステーション:TS)により計測された座標値(TS計測座標)と比較して誤差(以下,絶対変位)を算出できるものであ」ることが判る。

以上のことから,イ号方法において,現場内基準点とGPS観測局はどちらも最上部に位置するものである。
そして,上記記載(b)の「3次元光波測量器(以下,トータルステーション:TS)」,上記記載(c)の「3.3 GPS鉛直精度管理システムの開発」「GPS座標からローカル座標へ変換された座標値(GPS計測座標)は,現場内基準点(鉛直視準器により盛替え)を利用してTSにより計測された座標値(TS計測座標)と比較して誤差(以下,絶対変位)を算出できる(図-4)。」,及び上記記載(e)の 「図-4 基準点の絶対変位の算出」「誤差(絶対変位)=GPS計測座標-TS計測座標」から,GPS鉛直精度管理は,基準点の絶対変位の算出,つまり誤差(絶対変位)=GPS計測座標-TS計測座標を算出することにより行っている。
ここで,仮に基準位置である現場内基準点にGPS観測局が位置していたとすると,GPS鉛直精度管理の基準点の絶対変位の算出に,TS計測座標を用いる必要はなく,GPS計測座標だけを用いるとするのが合理的である。しかしながら,イ号方法において,絶対変位の算出に「GPS計測座標-TS計測座標」の式を用い,GPS計測座標だけでなく,現場内基準点(鉛直視準器により盛替え)を利用してTSにより計測された座標値であるTS計測座標が必要となっているのは,現場内基準点とGPS観測局の位置が異なることを前提にしているからである。
したがって,イ号方法は,現場内基準点とGPS観測局の位置が異なることを前提にしているから,本件特許の構成要件(4)である「ここで(前記基準位置で)GPS電波を受信する」を充足しない。
また,イ号方法は,GPS鉛直精度管理を,基準点の絶対変位の算出,つまり誤差(絶対変位)=GPS計測座標-TS計測座標を算出することにより行っているから,本件特許の構成要件(7)である「演算手段で前記GPS電波を解析して求めた前記基準位置の位置座標の実測値と前記グランドレベル平面の所定点との平面位置の比較により施工途中または施工完了後の各時点における超高層建築物の鉛直精度を求める」を充足しない。

したがって,イ号方法は,構成要件(4)及び(7)を充足しない。

(5)請求人の主張について
なお,請求人は,判定請求書において,以下のとおり主張している。
「イ号方法はその構成(d)にあるように,現実には塔体の最上部の2箇所にGPS観測局を設置してGPS電波を受信しているが,変位計測に関しては,実質的には塔体の最上部の「1箇所」にGPS観測局(例えばGPS観測局1)を設置してGPS電波を受信していることになる。
以上の点から考察すると,イ号方法は,構造体の変位を計測するために,「その施工時点における最上層に基準位置として定めてここでGPS電波を受信し,」の構成を有するといえる。」
しかしながら,甲第1,2号証には,「塔体頂部のGPS観測局は,塔体芯の変位と塔体回転角を得るために2箇所に設置した。」(上記(3)(d)参照。)と記載され,基準位置でGPS電波を受信することについては記載がない。また,上記(4)で記載したとおり,イ号方法においては,現場内基準点とGPS観測局の位置は異なることを前提としているから,本件特許発明のように「その施工時点における最上層に基準位置として定めてここでGPS電波を受信し」てはいない。
そして,イ号方法は,本件特許発明の構成要件(4)を充足しないことは,上記(4)で記載したとおりである。

5 むすび
以上のとおり,イ号方法は,本件特許発明の構成要件(4)及び(7)を充足しないので,イ号方法は,本件特許発明の技術的範囲に属しないものである。

よって,結論のとおり判定する。
 
判定日 2014-12-26 
出願番号 特願平6-289328
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋田 将行  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 清水 稔
森 竜介
登録日 2002-02-22 
登録番号 特許第3280812号(P3280812)
発明の名称 構造物の鉛直精度計測方法  
代理人 蔵合 正博  
代理人 酒井 一  
代理人 一色国際特許業務法人  
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