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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1296489
審判番号 不服2013-15711  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-13 
確定日 2015-01-14 
事件の表示 特願2008-533417「変化する厚さ、プロファイルおよび/または形状を有する誘電材料および/または空洞を備える静電チャックアセンブリ、その使用方法、ならびにそれを組み込む装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月12日国際公開、WO2007/040958、平成21年 3月12日国内公表、特表2009-510774〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成18(2006)年9月15日(パリ条約による優先権主張平成17(2005)年9月30日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、平成23年9月30日付けで拒絶の理由が通知され、同24年1月6日に意見書とともに手続補正書が提出され、同24年5月15日付けで特許法第17条の2第1項第3号に規定される最後の拒絶の理由が通知され、同24年8月7日に意見書とともに手続補正書が提出され、特許請求の範囲について補正がなされ、同24年10月1日付けでさらに拒絶の理由が通知され、同24年12月28日に意見書が提出されたが、同25年4月9日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。
これに対し、平成25年8月13日に該査定の取消を求めて本件審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、特許請求の範囲についてさらに補正がなされた。その後、当審からの平成25年10月11日付け審尋に対して、同25年12月25日に回答書が提出されたものである。

第2 平成25年8月13日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年8月13日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容の概要
平成25年8月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成24年8月7日付けで補正された特許請求の範囲をさらに補正するものであって、特許請求の範囲の請求項5に関する以下の補正を含んでいる。なお、下線部は補正箇所を示す。

(1)<補正前の請求項5>
「 【請求項5】
プラズマ処理装置用の静電チャックアセンブリにおいて、
第1表面と、第2表面とを有し、前記プラズマ処理装置のRF回路への接続のためのコネクタに対して動作可能なように接続される導電支持体と、
前記導電支持体の前記第2表面に接触して第1境界を形成する第1表面を有し、加工物を受け取るように第2表面を有する静電チャックセラミック層と、
前記静電チャックセラミック層の前記第2表面内の空洞と
を含むことを特徴とする静電チャックアセンブリ。」

(2)<補正後の請求項5>
「 【請求項5】
プラズマ処理装置用の静電チャックアセンブリにおいて、
第1表面と、第2表面とを有し、前記プラズマ処理装置のRF回路への接続のためのコネクタに対して動作可能なように接続される導電支持体と、
前記導電支持体の前記第2表面に接触して第1境界を形成する第1表面を有し、加工物を受け取るように第2表面を有する静電チャックセラミック層と、
前記静電チャックセラミック層の前記第2表面内の真空空洞と
を含むことを特徴とする静電チャックアセンブリ。」

2 補正の適否
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項5についてする補正は、補正前の請求項5の「空洞」について、「真空空洞」と限定的に減縮するものである。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項5に係る発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち独立特許要件について検討する。

(1)補正発明
補正発明は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、上記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項5に記載された事項により特定されるとおりの「静電チャックアセンブリ」であると認める。

(2)刊行物
これに対して、原審の平成24年10月1日付け拒絶の理由にも引用された、本件優先日前に頒布された刊行物である以下の文献には、以下の発明が記載されていると認められる。
刊行物1:特開2002-329775号公報

ア 刊行物1に記載された事項
刊行物1には、「静電チャック」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は理解の便のため、当審で付したものである。

(ア)特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】板状セラミック体の内部又は一方の主面に静電吸着用電極を備え、上記板状セラミック体の他方の主面には、その外周部を残して凹部を有し、該凹部底面の周縁部にはガス溝を備え、かつ上記凹部底面の中央部には窪みを具備してなり、上記ガス溝を除く凹部底面を第一吸着面とするとともに、上記外周部を第二吸着面としたことを特徴とする静電チャック。」

(イ)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、PVD装置、CVD装置、イオンプレーティング装置、蒸着装置等の成膜装置やエッチング装置において、例えば半導体ウエハ等の被加工物を保持するのに用いる静電チャックに関するものである。」

(ウ)
「【0017】図1,図2に示すように、本発明の静電チャック1は、シリコンウエハ等の被加工物Wと同程度の大きさを有する円盤状をした板状セラミック体2の一方の主面(一方の最も広い面)に静電吸着用電極3を備えるとともに、上記板状セラミック体2の他方の主面(他方の最も広い面)には、その外周部を残してその平面形状が円形をした凹部4を備え、この凹部底面5の周縁には円環状のガス溝7を備えるとともに、凹部底面5の中央には滑らかな窪み10を形成したもので、ガス溝7を除く凹部底面5を被加工物Wの第一吸着面11とするとともに、上記外周部(凹部4を除く板状セラミック体2の他方の主面)を被加工物Wの第二吸着面12としてある。
【0018】ここで、本発明の静電チャック1において、凹部底面5は、窪み10及びガス溝7を除く凹部底面5を、板状セラミック体2の一方の主面と平行な平坦面17としてあり、この平坦面17から第二吸着面12までの高さ(h)は、比較的浅く、具体的には0.5?5μmとしてある。」

(エ)
「【0020】また、板状セラミック体2には、ガス溝底面8に開口するガス導入孔9を間隔を開けて穿孔してあり、このガス導入孔9よりガス溝7を介してHe等の熱伝達性ガスを被加工物Wと凹部4とで形成される空間に供給するようになっている。」

(オ)
「【0021】なお、この静電チャック1は、板状セラミック体2の一方の主面側に、金属材料からなるベース板13をガラスや樹脂系接着剤等の接合剤層18にて接合してあり、ベース板13には、ガス導入孔9と連通するガス供給孔14を備えるとともに、静電吸着用電極3と連通する電極取出孔15を穿孔してあり、この電極取出孔15より静電吸着用電極3に接合された給電端子16を取り出すようになっている。」

(カ)
「【0024】そして、この静電チャック1により被加工物Wを固定するには、図2(a)に示すように、被加工物Wの周縁部が板状セラミック体2の第二吸着面12と当接するように、被加工物Wを板状セラミック体2の他方の主面側に載せた状態で、給電端子16間に通電すると、静電吸着用電極3と被加工物Wとの間に静電吸着力が発現し、被加工物Wを板状セラミック体2の他方の主面に吸着固定することができるようになっている。
【0025】この時、被吸着物Wは、図2(b)に示すように、被加工物Wの中央部は第一吸着面側に引っ張られて第一吸着面11の平坦部17と当接するのに対し、被加工物Wの周縁部は第一吸着面11より高い位置にある第二吸着面12と当接しているため、被加工物Wは結果的にその中央部が下凸となるように湾曲した状態で固定されることになる・・・(後略)」

(キ)
「【0028】次に、ガス導入孔9よりガス溝7と被加工物Wとで形成される空間にHe等の熱伝導性ガスを数1000パスカル(Pa)の圧力で供給することにより、被加工物Wと凹部底面5との間の熱伝達特性を高めるのであるが・・・(中略)・・・本発明の静電チャック1では、凹部底面5の中央部に滑らかな窪み10を設け、凹部底面5の周縁に設けたガス溝7から熱伝導性ガスが凹部4の中央部に流れ易くなるようにし、中央部における熱伝達特性を高めるようにしてあることから、被加工物全体の温度分布を極めて均一にすることができ、この後、成膜やエッチング等の各種処理を施した時に、被加工物Wに熱が発生したとしてもその温度均一性が阻害されることがない。」

(ク)図1及び図2
ベース板13は、第1表面(下側面)と、第2表面(上側面)とを有し、その第2表面が板状セラミック体2の一方の主面に接触していることが看取できる。

イ 刊行物1に記載の発明
上記摘記事項(イ)に「本発明は・・・イオンプレーティング装置・・・において、例えば半導体ウエハ等の被加工物を保持するのに用いる静電チャック」とあるところ、イオンプレーティング装置はプラズマ処理が必要なことが技術常識であることを踏まえ、刊行物1の「静電チャック1」は、プラズマ処理装置用の静電チャック1、ということができる。
また、上記認定事項(ク)の第2表面が板状セラミック体2の一方の主面に接触しているベース板13は、「板状セラミック体2の一方の主面側に・・・接合剤層18にて接合」(摘記事項(オ))されるものであるから、板状セラミック体2の一方の主面がベース板13の第2表面に接触して境界を形成する、と表現できる。
さらに、摘記事項(ウ)に「板状セラミック体2の他方の主面・・・平面形状が円形をした凹部4を備え、この・・・凹部底面5の中央には滑らかな窪み10を形成したもので」とあるところ、これらをまとめて、板状セラミック体2の他方の主面内に窪み10を備えるもの、ということができる。

そこで、上記摘記事項(ア)ないし(キ)及び認定事項(ク)を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて補正発明に照らして整理すると刊行物1には以下の発明が記載されていると認める。(以下、「刊行物1発明」という。)
「プラズマ処理装置用の静電チャック1において、
第1表面と、第2表面とを有し、金属材料からなるベース板13と、
前記金属材料からなるベース板13の前記第2表面に接触して境界を形成する一方の主面を有し、被加工物Wを吸着固定するように他方の主面を有する板状セラミック体2と、
前記板状セラミック体2の前記他方の主面内の窪み10と
を含み、熱伝達性ガスを窪み10に供給する静電チャック1。」

(3)対比
補正発明と刊行物1発明とを対比すると以下のとおりである。
刊行物1発明の「静電チャック1」は、補正発明の「静電チャックアセンブリ」に相当することは、その機能及び技術常識に照らして明らかであり、以下同様にそれぞれの機能を踏まえれば、「金属材料からなるベース板13」は「導電支持体」に、「境界」は「第1境界」に、「一方の主面」は「第1表面」に、「被加工物Wを吸着固定する」は「加工物を受け取る」に、「他方の主面」は「第2表面」に、「板状セラミック体2」は「静電チャックセラミック層」に相当することも明らかである。
また、刊行物1発明の「窪み10」は、補正発明の「真空空洞」と、「空洞」である限りにおいて共通する。

したがって、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「プラズマ処理装置用の静電チャックアセンブリにおいて、
第1表面と、第2表面とを有する導電支持体と、
前記導電支持体の前記第2表面に接触して第1境界を形成する第1表面を有し、加工物を受け取るように第2表面を有する静電チャックセラミック層と、
前記静電チャックセラミック層の前記第2表面内の空洞と
を含む静電チャックアセンブリ。」

そして、補正発明と刊行物1発明とは、以下の2点で相違している。
<相違点1>
補正発明の導電支持体は、プラズマ処理装置のRF回路への接続のためのコネクタに対して動作可能なように接続されるのに対し、刊行物1発明の金属材料からなるベース板13(導電支持体)は、そのようなものか不明である点。
<相違点2>
空洞に関し、補正発明の空洞は真空空洞であるのに対し、刊行物1発明の窪み10(空洞)は、熱伝達性ガスが供給されるものである点。

(4)相違点の検討
ア 相違点1について
相違点1について検討する。刊行物1発明は、プラズマ処理装置用の静電チャック1であるところ、プラズマ処理装置である以上、何らかの高圧電源が必要なことは技術常識であり、そのためにRF回路を金属板に接続することも例えば特表2002-526923号公報(【図2】、段落【0053】等参照)に示されるように従来周知の事項である。そして、刊行物1発明にかかる従来周知の事項を適用して、プラズマ処理装置のRF回路への接続のためのコネクタに対して動作可能なように金属材料からなるベース板13(導電支持体)を接続して、相違点1に係る補正発明の特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

イ 相違点2について
次に、相違点2について検討する。補正発明の「真空空洞」に関する明細書の記載としては、「【0037】 図8の静電チャックアセンブリ800において、導電支持体802は第1表面810と、第2表面812とを有し、静電チャックセラミック層804は、導電支持体802の第2表面812に接触する第1表面820を有し、第1境界822を形成し、また加工物826を受け取る第2表面824を有する。好ましい実施形態では、空洞は真空空洞である。」(下線は当審で付した)と記載されているのみで、他に空洞を真空とすることに関する記載、特に空洞を真空とすることの効果に関しては何ら記載されていない。したがって、相違点2に係る補正発明のように空洞を真空とすることの技術的意義は明らかではなく、強いて空洞を真空とすることの効果を推測するならば、加工物を吸着し易くなることが考えられる程度である。
しかも、補正発明のように空洞を真空とすれば、加工物を吸着し易くなる反面、処理後に加工物を取り外すためには(真空を破壊する等)何らかの仕組みが必要なはずであるが、それに関しても何ら記載されていない。
したがって、補正発明における空洞を真空とすることの技術的意義は、きわめて乏しいものと考えざるを得ない。

ここで、プラズマ処理装置等において、加工物の保持のため、静電チャックと真空吸着を併用することは、例えば、特開平5-326451号公報(図2等参照)、特開2004-22979号公報(段落【0057】等参照)に示されるように、従来周知の事項である。
そして、刊行物1発明の窪み10(空洞)は、熱伝達性ガスが供給されるものではあるが、当業者が熱伝達よりも吸着性の向上を重視して、上記従来周知の技術を適用して、窪み10(空洞)に熱伝達性ガスを供給することに代えて、窪み10(空洞)を真空空洞とすることに、格別阻害事由はなく、当業者が通常の創作能力の発揮によりなし得ることというべきである。

以上を総合すると、刊行物1発明に上記従来周知の事項を適用して相違点2に係る補正発明の特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものと解するのが相当である。

ウ 小括
したがって、補正発明は、刊行物1発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである
よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本件出願の発明について
1 本件出願の発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の特許請求の範囲の請求項に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、平成24年8月7日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項5に係る発明(以下、「本件出願の発明」という。)は、上記第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項5に記載された「静電チャックアセンブリ」である。

2 刊行物
これに対して、原審の拒絶の理由に引用された刊行物は、上記第2の2(2)に示した刊行物1等であり、その刊行物1の記載事項は上記第2の2(2)のとおりである。

3 対比・検討
本件出願の発明は、上記第2の2で検討した補正発明から、実質的に、「真空空洞」について、「真空」という限定を削除したものである。
そうすると、本件出願の発明と刊行物1発明とは、上記第2の2(3)で示した一致点を有し、上記第2の2(3)で示した相違点1においてのみ相違する。
そして、相違点1については、上記第2の2(4)で検討したとおりである。したがって、本件出願の発明は、刊行物1発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということになる。

4 むすび
以上により、本件出願の発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-13 
結審通知日 2014-08-19 
審決日 2014-09-01 
出願番号 特願2008-533417(P2008-533417)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植村 森平杉山 悟史  
特許庁審判長 石川 好文
特許庁審判官 長屋 陽二郎
久保 克彦
発明の名称 変化する厚さ、プロファイルおよび/または形状を有する誘電材料および/または空洞を備える静電チャックアセンブリ、その使用方法、ならびにそれを組み込む装置  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  

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