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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1297075
審判番号 不服2013-25183  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-20 
確定日 2015-02-04 
事件の表示 特願2012- 91840「無線デバイス上に常駐するデータセットのバージョンを更新するシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月20日出願公開、特開2012-181850〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
特願2003-564696号が,2003年1月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理,2002年1月31日(以下,「優先日」という。),アメリカ合衆国)に国際出願され,該出願を原出願とする特許法第44条第1号の規定による新たな特許出願として,特願2009-134589号が,平成21年6月4日に出願され,該出願を原出願とする特許法第44条第1号の規定による新たな特許出願として,本件審判に係る出願(以下,「本願」という。)が,平成24年4月13日に出願され,平成24年5月14日付けで特許法第184条の4第1項の規定による翻訳文が提出され,平成24年5月14日付けで審査請求がなされると共に同日付けで手続補正がなされた。
そして,平成24年11月30日付けで拒絶理由通知(平成24年12月4日発送)がなされ,これに対して平成25年2月7日付けで意見書が提出されると共に同日付けで手続補正がなされたが,平成25年8月7日付けで拒絶査定(平成25年8月20日謄本送達)がなされた。
これに対して,「原査定を取り消す。本願は特許をすべきものである,との審決を求める。」ことを請求の趣旨として平成25年12月20日付けで審判請求がなされると共に同日付けで手続補正がなされ,平成26年2月14日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告がなされた。


第2 平成25年12月20日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成25年12月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1 補正の内容

平成25年12月20日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)の内容は,平成25年2月7日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項35の記載

「 【請求項1】
無線ネットワークを介して通信する無線デバイスであって,
各々がそれぞれバージョンを有する複数のソフトウェア・オブジェクトをサポートするためのコンピュータ・プラットフォームを備え,
前記コンピュータ・プラットフォームは,
前記複数のソフトウェア・オブジェクトを格納するメモリと,
前記複数のソフトウェア・オブジェクトをサポートするための,前記メモリに結合されたプロセッサとを備え,
前記プロセッサは,
(a)前記メモリに格納された前記複数のソフトウェア・オブジェクトの各々に関連付けられた前記バージョンをそれぞれ格納するデバイス・バージョン・サマリ・ファイルを前記メモリ内に生成し,
(b)(a)の後,前記無線デバイスが,前記無線ネットワークを介したサーバとの通信セッションを開くことと,バージョン更新トランザクションを実行することと,前記バージョン更新トランザクションの後,前記通信セッションを閉じる,ように構成され,
前記バージョン更新トランザクションは,
(b)(1)前記無線デバイスへのダウンロードのために利用可能な前記サーバに格納された各ソフトウェア・オブジェクトに関連付けられたバージョンをそれぞれ格納するサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバが有するかどうかを判定することと,
(b)(2)前記サーバがサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを有していると判定された場合,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを検索することと,
前記デバイス・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルと自動的に比較して,前記メモリに格納された複数のソフトウェア・オブジェクトのうちのどれが,前記サーバに格納された,更新されたバージョンを有するソフトウェア・オブジェクトに関連付けられているかを判定することと,
前記サーバ上に更新されたバージョンを有する少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトが前記無線デバイス上に存在する場合,前記ソフトウェア・オブジェクトの更新された各バージョンを,前記サーバから前記無線デバイスに自動的にダウンロードし,ダウンロードされ更新された各ソフトウェア・オブジェクトをインストールすることとを備える,
無線デバイス。
【請求項2】
前記複数のソフトウェア・オブジェクトは,前記コンピュータ・プラットフォームで実行するための少なくとも1つのアプリケーションを備える請求項1に記載の無線デバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つアプリケーションはゲームを備える請求項2に記載の無線デバイス。
【請求項4】
前記少なくとも1つのアプリケーションは,前記サーバとともに確立された前の通信セッションの間に前記サーバからダウンロードされたアプリケーションを備える請求項2に記載の無線デバイス。
【請求項5】
前記少なくとも1つのアプリケーションは,前記無線デバイスの製造の間に前記無線デバイスに提供されたアプリケーションを備える請求項2に記載の無線デバイス。
【請求項6】
前記複数のソフトウェア・オブジェクトは,前記コンピュータ・プラットフォームの少なくとも1つのソフトウェア構成要素を備える請求項1に記載の無線デバイス。
【請求項7】
前記複数のソフトウェア・オブジェクトは,前記コンピュータ・プラットフォームの少なくとも1つのデバイス・ドライバを備える請求項1に記載の無線デバイス。
【請求項8】
前記少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトは,前記コンピュータ・プラットフォームによってレンダリングされるコンテンツを備える請求項1に記載の無線デバイス。
【請求項9】
前記メモリはファイル・システムを格納し,前記ソフトウェア・オブジェクトは前記ファイル・システムに格納される請求項1に記載の無線デバイス。
【請求項10】
前記メモリは,データベースを格納し,前記ソフトウェア・オブジェクトは,前記データベースに格納される請求項1に記載の無線デバイス。
【請求項11】
前記メモリは,不揮発性のメモリを備える請求項1に記載の無線デバイス。
【請求項12】
無線ネットワークを介してサーバと通信する無線デバイスであって,
各々がそれぞれバージョンを有する複数のソフトウェア・オブジェクトをサポートするための,コンピュータ・プラットフォーム手段を備え,
前記コンピュータ・プラットフォーム手段は,
前記複数のソフトウェア・オブジェクトを格納するメモリ手段と,
前記複数のソフトウェア・オブジェクトをサポートするための,前記メモリ手段に結合されたプロセッサ手段とを備え,
前記プロセッサ手段は,
(a)前記メモリ手段に格納された前記複数のソフトウェア・オブジェクトの各々に関連付けられた前記バージョンをそれぞれ格納するデバイス・バージョン・サマリ・ファイルを前記メモリ手段内に生成し,
(b)(a)の後,前記無線デバイスが,前記無線ネットワークによるサーバとの通信セッションを開くことと,バージョン更新トランザクションを実行し,前記バージョン更新トランザクションの後,前記通信セッションを閉じるように構成され,
前記バージョン更新トランザクションは,
(b)(1)前記無線デバイスへのダウンロードのために利用可能な前記サーバに格納された各ソフトウェア・オブジェクトに関連付けられたバージョンをそれぞれ格納するサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバが有するかどうかを判定することと,
(b)(2)前記サーバがサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを有していると判定された場合,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを検索することと,
前記デバイス・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルと自動的に比較して,前記メモリに格納された複数のソフトウェア・オブジェクトのうちのどれが,前記サーバに格納された,更新されたバージョンを有するソフトウェア・オブジェクトに関連付けられているかを判定することと,
前記サーバ上に更新されたバージョンを有する少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトが前記無線デバイス上に存在する場合,前記ソフトウェア・オブジェクトの更新された各バージョンを,前記サーバから前記無線デバイスに自動的にダウンロードし,ダウンロードされ更新された各ソフトウェア・オブジェクトをインストールすることとを備える,
無線デバイス。
【請求項13】
無線デバイスのコンピュータ・プラットフォームのメモリ内に格納された複数のソフトウェア・オブジェクトを更新する方法であって,
前記メモリに格納された各ソフトウェア・オブジェクトに関連付けられたバージョンをそれぞれ格納するデバイス・バージョン・サマリ・ファイルを,前記無線デバイス上に生成することと,
前記生成することの後に,前記無線デバイスが,
(a)無線ネットワークを介した前記サーバとの通信セッションを開くことと,
(b)(a)の後,バージョン更新トランザクションを実行することと,
(c)(b)の後,前記通信セッションを閉じることとを備え,
前記バージョン更新トランザクションは,
(b)(1)前記無線デバイスへのダウンロードのために利用可能な前記サーバに格納された各ソフトウェア・オブジェクトに関連付けられたバージョンをそれぞれ格納するサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバが有するかどうかを判定することと,
(b)(2)前記サーバがサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを有していると判定された場合,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを検索することと,
前記デバイス・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルと自動的に比較して,前記メモリに格納された複数のソフトウェア・オブジェクトのうちのどれが,前記サーバに格納された,更新されたバージョンを有するソフトウェア・オブジェクトに関連付けられているかを判定することと,
前記サーバ上に更新されたバージョンを有する少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトが前記無線デバイス上に存在する場合,前記ソフトウェア・オブジェクトの更新された各バージョンを,前記サーバから前記無線デバイスに自動的にダウンロードし,ダウンロードされ更新された各ソフトウェア・オブジェクトをインストールすることとを備える,
方法。
【請求項14】
前記複数のソフトウェア・オブジェクトは,前記コンピュータ・プラットフォーム上での実行ための少なくとも1つのアプリケーションを備える請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つアプリケーションはゲームを備える請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つのアプリケーションは,前記サーバとともに確立された前の通信セッションの間に前記サーバからダウンロードされたアプリケーションを備える請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのアプリケーションは,前記無線デバイスの製造の間に前記無線デバイスに提供されたアプリケーションを備える請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記複数のソフトウェア・オブジェクトは,前記コンピュータ・プラットフォームの少なくとも1つのソフトウェア構成要素を備える請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記複数のソフトウェア・オブジェクトは,前記コンピュータ・プラットフォームの少なくとも1つのデバイス・ドライバを備える請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトは,前記コンピュータ・プラットフォームによってレンダリングされるコンテンツを備える請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記メモリはファイル・システムを格納し,前記ソフトウェア・オブジェクトは前記ファイル・システムに格納される請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記メモリは,データベースを格納し,前記ソフトウェア・オブジェクトは,前記データベースに格納される請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記メモリは,不揮発性のメモリを備える請求項13に記載の方法。
【請求項24】
無線ネットワークを介してサーバと通信する無線デバイス上の複数のソフトウェア・オブジェクトを更新する方法であって,
各々がそれぞれバージョンを有する前記複数のソフトウェア・オブジェクトをコンピュータ・プラットフォーム上に格納することを備え,
前記コンピュータ・プラットフォームは前記無線デバイスに備えられ,
前記方法は更に,
前記複数のソフトウェア・オブジェクトの各々に関連付けられた前記バージョンをそれぞれ格納するデバイス・バージョン・サマリ・ファイルを生成することと,
前記デバイス・バージョン・サマリ・ファイルを生成することの後に,前記無線デバイスが,
(a)前記無線ネットワークを介した前記サーバとの通信セッションを開くことと,
(b)(a)の後,バージョン更新トランザクションを実行することと,
(c)(b)の後,前記通信セッションを閉じることと
を備え,
前記バージョン更新トランザクションは,
(b)(1)前記無線デバイスへのダウンロードのために利用可能な前記サーバに格納された各ソフトウェア・オブジェクトに関連付けられたバージョンをそれぞれ格納するサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバが有するかどうかを判定することと,
(b)(2)前記サーバがサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを有していると判定された場合,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを検索することと,
前記デバイス・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルと自動的に比較して,前記無線デバイス上のどのソフトウェア・オブジェクトが,前記サーバに格納された,更新されたバージョンを有するソフトウェア・オブジェクトに関連付けられているかを判定することと,
前記サーバ上に更新されたバージョンを有する少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトが前記無線デバイス上に存在する場合,前記ソフトウェア・オブジェクトの更新された各バージョンを,前記サーバから前記無線デバイスに自動的にダウンロードし,ダウンロードされ更新された各ソフトウェア・オブジェクトをインストールすることとを備える,
方法。
【請求項25】
無線ネットワークを介して無線デバイスと通信するサーバであって,
各々がそれぞれバージョンを有する複数のソフトウェア・オブジェクトをサポートするための,コンピュータ・プラットフォームを備え,
前記コンピュータ・プラットフォームは,
前記複数のソフトウェア・オブジェクトを格納するメモリと,
前記複数のソフトウェア・オブジェクトをサポートするための,前記メモリに結合されたプロセッサとを備え,
前記プロセッサは,
(a)前記無線デバイスへのダウンロードのために利用可能な前記メモリに格納された前記複数のソフトウェア・オブジェクトの各々に関連付けられた前記バージョンをそれぞれ格納するサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記メモリ内に生成するように構成され,
(b)(a)の後,前記無線デバイスが,前記無線ネットワークによる前記サーバとの通信セッションを開き,バージョン更新トランザクションを実行し,前記バージョン更新トランザクションの後,前記通信セッションを閉じ,
前記バージョン更新トランザクションは,
(b)(1)前記無線デバイスが,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバが有するかどうかを判定することと,
(b)(2)前記サーバが,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを有していると判定された場合,前記無線デバイスが,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを検索することとを備え,
前記無線デバイスは,前記デバイス・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルと自動的に比較して,前記無線デバイスに格納されたどのソフトウェア・オブジェクトが,前記メモリに格納された,更新されたバージョンを有するソフトウェア・オブジェクトに関連付けられているかを判定するように構成され,
前記バージョン更新トランザクションはさらに,前記サーバ上に更新されたバージョンを有する少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトが前記無線デバイス上に存在する場合,前記ソフトウェア・オブジェクトの更新された各バージョンを,前記サーバから前記無線デバイスに自動的にダウンロードすることと,ダウンロードされ更新された各ソフトウェア・オブジェクトを前記無線デバイスにインストールすることとを備える,
サーバ。
【請求項26】
無線ネットワークを介して無線デバイスと通信するサーバであって,
各々がそれぞれバージョンを有する複数のソフトウェア・オブジェクトをサポートするための,コンピュータ・プラットフォーム手段を備え,
前記コンピュータ・プラットフォーム手段は,
前記複数のソフトウェア・オブジェクトを格納するメモリ手段と,
前記複数のソフトウェア・オブジェクトをサポートするための,前記メモリ手段に結合されたプロセッサ手段とを備え,
前記プロセッサ手段は,
(a)前記無線デバイスへのダウンロードのために利用可能な,前記メモリ手段に格納された前記複数のソフトウェア・オブジェクトの各々に関連付けられた前記バージョンをそれぞれ格納するサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記メモリ手段内に生成するように構成され,
(b)(a)の後,前記無線デバイスが,前記無線ネットワークによる前記サーバとの通信セッションを開き,バージョン更新トランザクションを実行し,前記バージョン更新トランザクションの後,前記通信セッションを閉じ,
前記バージョン更新トランザクションは,
(b)(1)前記無線デバイスが,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバが有するかどうかを判定することと,
(b)(2)前記サーバが,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを有していると判定された場合,前記無線デバイスが,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを検索することとを備え,
前記無線デバイスは,前記デバイス・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルと自動的に比較して,前記無線デバイスに格納されたどのソフトウェア・オブジェクトが,前記メモリ手段に格納された,更新されたバージョンを有するソフトウェア・オブジェクトに関連付けられているかを判定するように構成され,
前記バージョン更新トランザクションはさらに,前記サーバ上に更新されたバージョンを有する少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトが前記無線デバイス上に存在する場合,前記ソフトウェア・オブジェクトの更新された各バージョンを,前記サーバから前記無線デバイスに自動的にダウンロードすることと,ダウンロードされ更新された各ソフトウェア・オブジェクトをインストールすることとを備える,
サーバ。
【請求項27】
複数のソフトウェア・オブジェクトの更新されたバージョンをサーバから無線デバイスへ送信するためのサーバのための方法であって,
各々がそれぞれバージョンを有する前記複数のソフトウェア・オブジェクトをコンピュータ・プラットフォーム上に格納することを備え,
前記方法は更に,
前記サーバが,前記無線デバイスへのダウンロードのために利用可能な前記複数のソフトウェア・オブジェクトの各々に関連付けられた前記バージョンをそれぞれ格納するサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを生成することと,
前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルが生成された後に,前記無線デバイスが,
(a)前記サーバとの通信セッションを開くことと,
(b)(a)の後,バージョン更新トランザクションを実行することと,
(c)(b)の後,前記通信セッションを閉じることと
を備え,
前記バージョン更新トランザクションは,
(b)(1)前記無線デバイスが,少なくとも1つの前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバが有するかどうかを判定することと,
(b)(2)前記サーバが,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを有していると判定された場合,前記無線デバイスが,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを検索することとを備え,
前記無線デバイスは,前記デバイス・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルと自動的に比較して,前記無線デバイス上に格納されたどのソフトウェア・オブジェクトが,前記サーバに格納された,更新されたバージョンを有するソフトウェア・オブジェクトに関連付けられているかを判定するように構成され,
前記バージョン更新トランザクションはさらに,前記サーバ上に前記更新されたバージョンを有する少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトが前記無線デバイス上に存在する場合,前記無線デバイスが,前記ソフトウェア・オブジェクトの更新された各バージョンを,前記サーバから自動的にダウンロードすることと,ダウンロードされ更新された各ソフトウェア・オブジェクトをインストールすることとを備える,
方法。
【請求項28】
コンピュータによって実行されると,前記コンピュータに動作を実行させるための命令群を記録しているコンピュータ読取可能な記録媒体であって,
前記命令群は,
各々がそれぞれコンピュータ・プラットフォーム上にバージョンを有する複数のソフトウェア・オブジェクトを格納するための少なくとも1つの命令と,
前記サーバが,前記複数のソフトウェア・オブジェクトの各々に関連付けられた前記バージョンをそれぞれ格納するサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを生成するための少なくとも1つの命令と,
前記生成の後に,前記無線デバイスが,
(a)前記サーバとの通信セッションを開くための少なくとも1つの命令と,
(b)(a)の後,バージョン更新トランザクションを実行するための少なくとも1つの命令と,
(c)(b)の後,前記通信セッションを閉じるための少なくとも1つの命令とを備え,
前記バージョン更新トランザクションは,
(b)(1)前記無線デバイスが,少なくとも1つの前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバが有するかどうかを判定するための少なくとも1つの命令と,
(b)(2)前記サーバが,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを有していると判定された場合,前記無線デバイスが,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを検索するための少なくとも1つの命令とを備え,
前記無線デバイスは,前記デバイス・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルと自動的に比較して,前記無線デバイスに格納されたどのソフトウェア・オブジェクトが,前記サーバに格納された,更新されたバージョンを有するソフトウェア・オブジェクトに関連付けられているかを判定するように構成され,
前記バージョン更新トランザクションは更に,前記サーバ上に前記更新されたバージョンを有する少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトが前記無線デバイス上に存在する場合,前記無線デバイスが,前記ソフトウェア・オブジェクトの更新された各バージョンを,前記サーバから自動的にダウンロードするための少なくとも1つの命令と,ダウンロードされ更新された各ソフトウェア・オブジェクトをインストールするための少なくとも1つの命令とを備える,
コンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項29】
前記無線デバイスでの実行のために,前記複数のソフトウェア・オブジェクトにおいて,少なくとも1つのアプリケーションを定義するための少なくとも1つの命令を更に備える請求項28に記載のコンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項30】
前記サーバを用いて確立された前の通信セッションの間に前記サーバからダウンロードされるように前記少なくとも1つのアプリケーションを定義するための少なくとも1つの命令を更に備える請求項29に記載のコンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項31】
前記無線デバイスの製造の間に前記無線デバイスに前記少なくとも1つのアプリケーションを提供するための少なくとも1つの命令を更に備える請求項29に記載のコンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項32】
前記無線デバイス上のソフトウェア・プラットフォームの少なくとも1つのソフトウェア構成要素を備えるように前記複数のソフトウェア・オブジェクトを定義するための少なくとも1つの命令を更に備える請求項29に記載のコンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項33】
前記無線デバイスの少なくとも1つのデバイス・ドライバを備えるように前記複数のソフトウェア・オブジェクトを定義するための少なくとも1つの命令を更に備える請求項29に記載のコンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項34】
前記無線デバイスによってレンダリングされるコンテンツとなるように少なくとも1つのソフトウェア構成要素を定義するための少なくとも1つの命令を更に備える請求項29に記載のコンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項35】
無線デバイスのコンピュータ・プラットフォームのメモリ内に格納された複数のソフトウェア・オブジェクトを更新するための命令群が記録されたコンピュータ読取可能な記録媒体であって,
前記命令群は,
前記メモリに格納された各ソフトウェア・オブジェクトに関連付けられたバージョンをそれぞれ格納するデバイス・バージョン・サマリ・ファイルを,前記無線デバイス上に生成するための少なくとも1つの命令と,
前記生成の後に,前記無線デバイスが,
(a)無線ネットワークを介したサーバとの通信セッションを開くことと,
(b)(a)の後,バージョン更新トランザクションを実行することと,
(c)(b)の後,前記通信セッションを閉じることと
を実行するための少なくとも1つの命令を備え,
前記バージョン更新トランザクションは,
(b)(1)前記無線デバイスが,前記無線デバイスへのダウンロードのために利用可能な前記サーバに格納された各ソフトウェア・オブジェクトに関連付けられたバージョンをそれぞれ格納するサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバが有するかどうかを判定するための少なくとも1つの命令と,
(b)(2)前記サーバがサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを有していると判定された場合,前記無線デバイスが,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを検索することと,
前記無線デバイスが,前記デバイス・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルと自動的に比較して,前記メモリに格納された複数のソフトウェア・オブジェクトのうちのどれが,前記サーバに格納された,更新されたバージョンを有するソフトウェア・オブジェクトに関連付けられているかを判定することと,
前記サーバ上に更新されたバージョンを有する少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトが前記無線デバイス上に存在する場合,前記無線デバイスが,前記ソフトウェア・オブジェクトの更新された各バージョンを,前記サーバから前記無線デバイスに自動的にダウンロードし,ダウンロードされ更新された各ソフトウェア・オブジェクトをインストールすることと
を実行するための少なくとも1つの命令を備える,
コンピュータ読取可能な記録媒体。」
(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)
を,

「 【請求項1】
無線ネットワークを介してサーバと通信する無線デバイスであって,
各々がそれぞれバージョンを有する複数のソフトウェア・オブジェクトをサポートするためのコンピュータ・プラットフォームを備え,
前記コンピュータ・プラットフォームは,
前記複数のソフトウェア・オブジェクトを格納するメモリと,
前記複数のソフトウェア・オブジェクトをサポートするための,前記メモリに結合されたプロセッサとを備え,
前記プロセッサは,
(a)前記メモリに格納された前記複数のソフトウェア・オブジェクトの各々に関連付けられた前記バージョンをそれぞれ格納するデバイス・バージョン・サマリ・ファイルを前記メモリ内に生成し,
(b)(a)の後,前記無線デバイスが,前記無線ネットワークを介した前記サーバとの通信セッションを開くことと,バージョン更新処理を実行することと,前記バージョン更新処理の後,前記通信セッションを閉じる,ように構成され,
前記バージョン更新処理は,
(b)(1)前記無線デバイスへのダウンロードのために利用可能な前記サーバに格納された各ソフトウェア・オブジェクトに関連付けられたバージョンをそれぞれ格納するサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバが有するかどうかを判定することと,
(b)(2)前記サーバがサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを有していると判定された場合,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを検索することと,
前記デバイス・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルと自動的に比較して,前記メモリに格納された前記複数のソフトウェア・オブジェクトのうちのどれが,前記サーバに格納された,更新されたバージョンを有するソフトウェア・オブジェクトに関連付けられているかを判定することと,
前記サーバ上に更新されたバージョンを有する少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトが前記無線デバイス上に存在する場合,前記少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトの更新された各バージョンを,前記サーバから前記無線デバイスに自動的にダウンロードし,ダウンロードされ更新された各ソフトウェア・オブジェクトをインストールすることとを備える,
無線デバイス。
【請求項2】
前記複数のソフトウェア・オブジェクトは,前記コンピュータ・プラットフォームで実行するための少なくとも1つのアプリケーションを備える請求項1に記載の無線デバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つアプリケーションはゲームを備える請求項2に記載の無線デバイス。
【請求項4】
前記少なくとも1つのアプリケーションは,前記サーバとともに確立された前の通信セッションの間に前記サーバからダウンロードされたアプリケーションを備える請求項2に記載の無線デバイス。
【請求項5】
前記少なくとも1つのアプリケーションは,前記無線デバイスの製造の間に前記無線デバイスに提供されたアプリケーションを備える請求項2に記載の無線デバイス。
【請求項6】
前記複数のソフトウェア・オブジェクトは,前記コンピュータ・プラットフォームの少なくとも1つのソフトウェア構成要素を備える請求項1に記載の無線デバイス。
【請求項7】
前記複数のソフトウェア・オブジェクトは,前記コンピュータ・プラットフォームの少なくとも1つのデバイス・ドライバを備える請求項1に記載の無線デバイス。
【請求項8】
前記少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトは,前記コンピュータ・プラットフォームによってレンダリングされるコンテンツを備える請求項1に記載の無線デバイス。
【請求項9】
前記メモリはファイル・システムを格納し,前記複数のソフトウェア・オブジェクトは前記ファイル・システムに格納される請求項1に記載の無線デバイス。
【請求項10】
前記メモリは,データベースを格納し,前記複数のソフトウェア・オブジェクトは,前記データベースに格納される請求項1に記載の無線デバイス。
【請求項11】
前記メモリは,不揮発性のメモリを備える請求項1に記載の無線デバイス。
【請求項12】
無線ネットワークを介してサーバと通信する無線デバイスであって,
各々がそれぞれバージョンを有する複数のソフトウェア・オブジェクトをサポートするための,コンピュータ・プラットフォーム手段を備え,
前記コンピュータ・プラットフォーム手段は,
前記複数のソフトウェア・オブジェクトを格納するメモリ手段と,
前記複数のソフトウェア・オブジェクトをサポートするための,前記メモリ手段に結合されたプロセッサ手段とを備え,
前記プロセッサ手段は,
(a)前記メモリ手段に格納された前記複数のソフトウェア・オブジェクトの各々に関連付けられた前記バージョンをそれぞれ格納するデバイス・バージョン・サマリ・ファイルを前記メモリ手段内に生成し,
(b)(a)の後,前記無線デバイスが,前記サーバとの通信セッションを開くことと,バージョン更新処理を実行し,前記バージョン更新処理の後,前記通信セッションを閉じるように構成され,
前記バージョン更新処理は,
(b)(1)前記無線デバイスへのダウンロードのために利用可能な前記サーバに格納された各ソフトウェア・オブジェクトに関連付けられたバージョンをそれぞれ格納するサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバが有するかどうかを判定することと,
(b)(2)前記サーバがサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを有していると判定された場合,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを検索することと,
前記デバイス・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルと自動的に比較して,前記メモリ手段に格納された前記複数のソフトウェア・オブジェクトのうちのどれが,前記サーバに格納された,更新されたバージョンを有するソフトウェア・オブジェクトに関連付けられているかを判定することと,
前記サーバ上に更新されたバージョンを有する少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトが前記無線デバイス上に存在する場合,前記少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトの更新された各バージョンを,前記サーバから前記無線デバイスに自動的にダウンロードし,ダウンロードされ更新された各ソフトウェア・オブジェクトをインストールすることとを備える,
無線デバイス。
【請求項13】
無線デバイスのコンピュータ・プラットフォームのメモリ内に格納された複数のソフトウェア・オブジェクトを更新する方法であって,
前記メモリに格納された各ソフトウェア・オブジェクトに関連付けられたバージョンをそれぞれ格納するデバイス・バージョン・サマリ・ファイルを,前記無線デバイス上に生成することと,
前記生成することの後に,前記無線デバイスが,
(a)無線ネットワークを介したサーバとの通信セッションを開くことと,
(b)(a)の後,バージョン更新処理を実行することと,
(c)(b)の後,前記通信セッションを閉じることとを備え,
前記バージョン更新処理は,
(b)(1)前記無線デバイスへのダウンロードのために利用可能な前記サーバに格納された各ソフトウェア・オブジェクトに関連付けられた第2のバージョンをそれぞれ格納するサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバが有するかどうかを判定することと,
(b)(2)前記サーバがサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを有していると判定された場合,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを検索することと,
前記デバイス・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルと自動的に比較して,前記メモリに格納された前記複数のソフトウェア・オブジェクトのうちのどれが,前記サーバに格納された,更新されたバージョンを有するソフトウェア・オブジェクトに関連付けられているかを判定することと,
前記サーバ上に更新されたバージョンを有する少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトが前記無線デバイス上に存在する場合,前記少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトの更新された各バージョンを,前記サーバから前記無線デバイスに自動的にダウンロードし,ダウンロードされ更新された各ソフトウェア・オブジェクトをインストールすることとを備える,
方法。
【請求項14】
前記複数のソフトウェア・オブジェクトは,前記コンピュータ・プラットフォーム上での実行ための少なくとも1つのアプリケーションを備える請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つアプリケーションはゲームを備える請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つのアプリケーションは,前記サーバとともに確立された前の通信セッションの間に前記サーバからダウンロードされたアプリケーションを備える請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのアプリケーションは,前記無線デバイスの製造の間に前記無線デバイスに提供されたアプリケーションを備える請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記複数のソフトウェア・オブジェクトは,前記コンピュータ・プラットフォームの少なくとも1つのソフトウェア構成要素を備える請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記複数のソフトウェア・オブジェクトは,前記コンピュータ・プラットフォームの少なくとも1つのデバイス・ドライバを備える請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトは,前記コンピュータ・プラットフォームによってレンダリングされるコンテンツを備える請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記メモリはファイル・システムを格納し,前記複数のソフトウェア・オブジェクトは前記ファイル・システムに格納される請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記メモリは,データベースを格納し,前記複数のソフトウェア・オブジェクトは,前記データベースに格納される請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記メモリは,不揮発性のメモリを備える請求項13に記載の方法。
【請求項24】
無線ネットワークを介してサーバと通信する無線デバイス上の複数のソフトウェア・オブジェクトを更新する方法であって,
各々がそれぞれバージョンを有する前記複数のソフトウェア・オブジェクトをコンピュータ・プラットフォーム上に格納することを備え,
前記コンピュータ・プラットフォームは前記無線デバイスに提供され,
前記方法は更に,
前記複数のソフトウェア・オブジェクトの各々に関連付けられた前記バージョンをそれぞれ格納するデバイス・バージョン・サマリ・ファイルを生成することと,
前記デバイス・バージョン・サマリ・ファイルを生成することの後に,前記無線デバイスが,
(a)前記無線ネットワークを介した前記サーバとの通信セッションを開くことと,
(b)(a)の後,バージョン更新処理を実行することと,
(c)(b)の後,前記通信セッションを閉じることと
を備え,
前記バージョン更新処理は,
(b)(1)前記無線デバイスへのダウンロードのために利用可能な前記サーバに格納された各ソフトウェア・オブジェクトに関連付けられたバージョンをそれぞれ格納するサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバが有するかどうかを判定することと,
(b)(2)前記サーバがサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを有していると判定された場合,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを検索することと,
前記デバイス・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルと自動的に比較して,前記無線デバイス上のどのソフトウェア・オブジェクトが,前記サーバに格納された,更新されたバージョンを有するソフトウェア・オブジェクトに関連付けられているかを判定することと,
前記サーバ上に更新されたバージョンを有する少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトが前記無線デバイス上に存在する場合,前記少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトの更新された各バージョンを,前記サーバから前記無線デバイスに自動的にダウンロードし,ダウンロードされ更新された各ソフトウェア・オブジェクトをインストールすることとを備える,
方法。
【請求項25】
無線ネットワークを介して無線デバイスと通信するサーバであって,
各々がそれぞれバージョンを有する複数のソフトウェア・オブジェクトをサポートするための,コンピュータ・プラットフォームを備え,
前記コンピュータ・プラットフォームは,
前記複数のソフトウェア・オブジェクトを格納するメモリと,
前記複数のソフトウェア・オブジェクトをサポートするための,前記メモリに結合されたプロセッサとを備え,
前記プロセッサは,
(a)前記無線デバイスへのダウンロードのために利用可能な前記メモリに格納された前記複数のソフトウェア・オブジェクトの各々に関連付けられた前記バージョンをそれぞれ格納するサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記メモリ内に生成するように構成され,
(b)(a)の後,前記無線デバイスが,前記サーバとの接続を開き,バージョン更新処理を実行し,前記バージョン更新処理の後,前記通信セッションを閉じ,
前記バージョン更新処理は,
(b)(1)前記無線デバイスが,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバが有するかどうかを判定することと,
(b)(2)前記サーバが,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを有していると判定された場合,前記無線デバイスが,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを検索することとを備え,
前記無線デバイスは,前記デバイス・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルと自動的に比較して,前記無線デバイスに格納されたどのソフトウェア・オブジェクトが,前記メモリに格納された,更新されたバージョンを有するソフトウェア・オブジェクトに関連付けられているかを判定するように構成され,
前記バージョン更新処理はさらに,前記サーバ上に更新されたバージョンを有する少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトが前記無線デバイス上に存在する場合,前記少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトの更新された各バージョンを,前記サーバから前記無線デバイスに自動的にダウンロードすることと,ダウンロードされ更新された各ソフトウェア・オブジェクトを前記無線デバイスにインストールすることとを備える,
サーバ。
【請求項26】
無線ネットワークを介して無線デバイスと通信するサーバであって,
各々がそれぞれバージョンを有する複数のソフトウェア・オブジェクトをサポートするための,コンピュータ・プラットフォーム手段を備え,
前記コンピュータ・プラットフォーム手段は,
前記複数のソフトウェア・オブジェクトを格納するメモリ手段と,
前記複数のソフトウェア・オブジェクトをサポートするための,前記メモリ手段に結合されたプロセッサ手段とを備え,
前記プロセッサ手段は,
(a)前記無線デバイスへのダウンロードのために利用可能な,前記メモリ手段に格納された前記複数のソフトウェア・オブジェクトの各々に関連付けられた前記バージョンをそれぞれ格納するサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記メモリ手段内に生成し,
(b)(a)の後,前記無線デバイスが,前記無線ネットワークによる前記サーバとの接続を開き,バージョン更新処理を実行し,前記バージョン更新処理の後,前記通信セッションを閉じるように構成され,
前記バージョン更新処理は,
(b)(1)前記無線デバイスが,サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバが有するかどうかを判定することと,
(b)(2)前記サーバが,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを有していると判定された場合,前記無線デバイスが,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを検索することとを備え,
前記無線デバイスは,前記デバイス・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルと自動的に比較して,前記無線デバイスに格納されたどのソフトウェア・オブジェクトが,前記メモリ手段に格納された,更新されたバージョンを有するソフトウェア・オブジェクトに関連付けられているかを判定するように構成され,
前記バージョン更新処理はさらに,前記サーバ上に更新されたバージョンを有する少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトが前記無線デバイス上に存在する場合,前記少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトの更新された各バージョンを,前記サーバから前記無線デバイスに自動的にダウンロードすることと,ダウンロードされ更新された各ソフトウェア・オブジェクトをインストールすることとを備える,
サーバ。
【請求項27】
複数のソフトウェア・オブジェクトの更新されたバージョンをサーバから無線デバイスへ送信するための前記サーバのための方法であって,
各々がそれぞれバージョンを有する前記複数のソフトウェア・オブジェクトをコンピュータ・プラットフォーム上に格納することを備え,
前記方法は更に,
前記サーバが,前記無線デバイスへのダウンロードのために利用可能な前記複数のソフトウェア・オブジェクトの各々に関連付けられた前記バージョンをそれぞれ格納するサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを生成することと,
前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルが生成された後に,前記無線デバイスが,
(a)前記サーバとの通信セッションを開くことと,
(b)(a)の後,バージョン更新処理を実行することと,
(c)(b)の後,前記通信セッションを閉じることと
を備え,
前記バージョン更新処理は,
(b)(1)前記無線デバイスが,サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバが有するかどうかを判定することと,
(b)(2)前記サーバが,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを有していると判定された場合,前記無線デバイスが,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを検索することとを備え,
前記無線デバイスは,前記デバイス・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルと自動的に比較して,前記無線デバイス上に格納されたどのソフトウェア・オブジェクトが,前記サーバに格納された,更新されたバージョンを有するソフトウェア・オブジェクトに関連付けられているかを判定するように構成され,
前記バージョン更新処理はさらに,前記サーバ上に更新されたバージョンを有する少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトが前記無線デバイス上に存在する場合,前記無線デバイスが,前記少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトの更新された各バージョンを,前記サーバから自動的にダウンロードすることと,ダウンロードされ更新された各ソフトウェア・オブジェクトをインストールすることとを備える,
方法。
【請求項28】
コンピュータによって実行されると,前記コンピュータに動作を実行させるための命令群を記録しているコンピュータ読取可能な記録媒体であって,
前記動作は,
各々がそれぞれコンピュータ・プラットフォーム上にバージョンを有する複数のソフトウェア・オブジェクトを格納することと,
サーバが,前記複数のソフトウェア・オブジェクトの各々に関連付けられた前記バージョンをそれぞれ格納するサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを生成することと,
前記生成の後に,前記無線デバイスが,
(a)前記サーバとの通信セッションを開くことと,
(b)(a)の後,バージョン更新処理を実行すること,
(c)(b)の後,前記通信セッションを閉じることとを備え,
前記バージョン更新処理は,
(b)(1)前記無線デバイスが,サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバが有するかどうかを判定することと,
(b)(2)前記サーバが,サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを有していると判定された場合,前記無線デバイスが,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを検索することとを備え,
前記無線デバイスは,前記デバイス・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルと自動的に比較して,前記無線デバイスに格納されたどのソフトウェア・オブジェクトが,前記サーバに格納された,更新されたバージョンを有するソフトウェア・オブジェクトに関連付けられているかを判定するように構成され,
前記バージョン更新処理は更に,前記サーバ上に前記更新されたバージョンを有する少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトが前記無線デバイス上に存在する場合,前記無線デバイスが,前記少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトの更新された各バージョンを,前記サーバから前記無線デバイスに自動的にダウンロードすることと,ダウンロードされ更新された各ソフトウェア・オブジェクトをインストールすることとを備える,
コンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項29】
前記動作は,前記無線デバイスでの実行のために,前記複数のソフトウェア・オブジェクトにおいて,少なくとも1つのアプリケーションを定義することを更に備える請求項28に記載のコンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項30】
前記動作は,前記サーバを用いて確立された前の通信セッションの間に前記サーバからダウンロードされるように前記少なくとも1つのアプリケーションを定義することを更に備える請求項29に記載のコンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項31】
前記動作は,前記無線デバイスの製造の間に前記無線デバイスに前記少なくとも1つのアプリケーションを提供することを更に備える請求項29に記載のコンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項32】
前記動作は,前記無線デバイス上のソフトウェア・プラットフォームの少なくとも1つのソフトウェア構成要素を備えるように前記複数のソフトウェア・オブジェクトを定義することを更に備える請求項29に記載のコンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項33】
前記動作は,前記無線デバイスの少なくとも1つのデバイス・ドライバを備えるように前記複数のソフトウェア・オブジェクトを定義することを更に備える請求項28に記載のコンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項34】
前記動作は,前記無線デバイスによってレンダリングされるコンテンツとなるように少なくとも1つのソフトウェア構成要素を定義することを更に備える請求項28に記載のコンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項35】
無線デバイスのコンピュータ・プラットフォームのメモリ内に格納された複数のソフトウェア・オブジェクトを更新するための命令群が記録されたコンピュータ読取可能な記録媒体であって,前記命令群はコンピュータに動作を実行させ,
前記動作は,
前記メモリに格納された各ソフトウェア・オブジェクトに関連付けられたバージョンをそれぞれ格納するデバイス・バージョン・サマリ・ファイルを,前記無線デバイス上に生成することと,
前記生成の後に,前記無線デバイスが,
(a)無線ネットワークを介したサーバとの通信セッションを開くことと,
(b)(a)の後,バージョン更新処理を実行することと,
(c)(b)の後,前記通信セッションを閉じることと
を備え,
前記バージョン更新処理は,
(b)(1)前記無線デバイスが,前記無線デバイスへのダウンロードのために利用可能な前記サーバに格納された各ソフトウェア・オブジェクトに関連付けられたバージョンをそれぞれ格納するサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバが有するかどうかを判定することと,
(b)(2)前記サーバがサーバ・バージョン・サマリ・ファイルを有していると判定された場合,前記無線デバイスが,前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを検索することと,
前記無線デバイスが,前記デバイス・バージョン・サマリ・ファイルを前記サーバ・バージョン・サマリ・ファイルと自動的に比較して,前記メモリに格納された前記複数のソフトウェア・オブジェクトのうちのどれが,前記サーバに格納された,更新されたバージョンを有するソフトウェア・オブジェクトに関連付けられているかを判定することと,
前記サーバ上に更新されたバージョンを有する少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトが前記無線デバイス上に存在する場合,前記無線デバイスが,前記少なくとも1つのソフトウェア・オブジェクトの更新された各バージョンを,前記サーバから前記無線デバイスに自動的にダウンロードし,ダウンロードされ更新された各ソフトウェア・オブジェクトをインストールすることと
を備える,
コンピュータ読取可能な記録媒体。」
(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)
に補正するものである。

また,さらに,平成24年5月14日付けの特許法第184条の4第1項の規定による翻訳文における明細書の段落【0035】の記載
「 【0035】
本発明は,例えば,無線プラットフォーム50,アプリケーションダウンロードサーバ16,及びその他の任意のネットワークサーバ30,32のような無線ネットワーク14の動作部を実行させることによって,機械読み取り可能な命令のシーケンスを実行する。この命令は,様々な種類の信号ベアリングまたはデータを記憶する第1,第2,又は第3の媒体に存在させることができる。例えば,この媒体は,無線ネットワーク14の構成要素によってアクセス可能であるか,またはこの構成要素内に存在しているRAM(図示せず)を備えている。RAM,ディスケット,あるいは他の2次記憶装置に含まれていようとも,この命令は,DASD記憶装置(例えば,従来式の「ハードドライブ」又はRAIDアレイ),磁気テープ,電子的リードオンリーメモリ(例えば,ROM,EPROM,又はEEPROM),フラッシュメモリカード,光学記憶装置(例えば,CD-ROM,WORM,DVD,デジタル光学テープ),紙「パンチ」カード,又はデジタル及びアナログ送信媒体を含むその他の適切なデータ記憶媒体のような様々な機械読み取り可能なデータ記憶媒体に格納されうる。」

を,

「 【0035】
本発明は,例えば,無線プラットフォーム50,アプリケーションダウンロードサーバ16,及びその他の任意のネットワークサーバ30,32のような無線ネットワーク14の動作部を実行させることによって,機械読み取り可能な命令のシーケンスを実行する。この命令は,様々な種類の信号ベアリングまたはデータを記憶する第1,第2,又は第3の媒体に存在させることができる。例えば,この媒体は,無線ネットワーク14の構成要素によってアクセス可能であるか,またはこの構成要素内に存在しているRAM(図示せず)を備えている。RAM,ディスケット,あるいは他の2次記憶装置に含まれていようとも,この命令は,DASD記憶装置(例えば,従来式の「ハードドライブ」又はRAIDアレイ),磁気テープ,電子的リードオンリーメモリ(例えば,ROM,EPROM,又はEEPROM),フラッシュメモリカード,光学記憶装置(例えば,CD-ROM,WORM,DVD,デジタル光学テープ),紙「パンチ」カード,又はその他の適切なデータ記憶媒体のような様々な機械読み取り可能なデータ記憶媒体に格納されうる。」
に補正するものである。


2 新規事項追加禁止要件
(1) 補正後の請求項24に記載された「前記コンピュータ・プラットフォームは前記無線デバイスに提供され」との技術事項が,特許法第184条の12第2項において,同法第17条の2第3項中の「願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面」とあるのを,これに読み替える旨規定されるものであるところの,上記平成24年5月14日付けの特許法第184条の4第1項の規定による翻訳文(以下「当初明細書等」と記す。)に記載されているか,又は当初明細書等の記載から自明な事項であるかについて,すなわち,当初明細書等に記載した事項の範囲内であるかについて検討する。

(2) 補正後の請求項24の上記記載に対応する記載として,補正前の請求項24には,「前記コンピュータ・プラットフォームは前記無線デバイスに備えられ」と記載されている。
ここで,「備える」とは,「前もって整えておく」又は「具備する」との意味であるから,「備えられる」とは,前もって整えられている,又は具備されているとの状態を表す表現であって,「提供」とは,「相手に役立ててもらうために差し出すこと」の意味であるから,「提供される」とは,相手に役立ててもらうために差し出されるとの動作を表す表現であるといえる(いずれも,株式会社小学館 大辞泉第一版<増補・新装版>(平成10年11月20日発行)に記載された用語の意味による。)。そして,「前記コンピュータ・プラットフォームは前記無線デバイス」に前もって整えられている,又は具備されているとの状態に関する記載から,「前記コンピュータ・プラットフォームは前記無線デバイス」に役立ててもらうために差し出されるとの動作が自明であるとはいえないから,補正前の請求項24の上記記載から補正後の請求項24の上記記載が自明であるということはできない。

(3) 本願の当初明細書等の段落【0019】には「セルラ電話12のような無線デバイスは、ソフトウェアアプリケーションを受信して実行し、アプリケーションダウンロードサーバ16又は他のネットワークサーバ30,32から送信されたデータを表示するコンピュータプラットフォーム50を持っている。」と記載され(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。),「コンピュータプラットフォーム」が「無線デバイス」に具備されていることが記載されているといえるが,上記記載箇所に,「コンピュータ・プラットフォーム」が「無線デバイス」に役立ててもらうために差し出されるとの動作が記載されているとはいえない。
また,「提供」との用語自体は,本願の当初明細書等の段落【0010】には「異なる無線デバイス、アプリケーションダウンロードサーバ、第2のネットワークサーバ、及び格納されたアプリケーションデータベースとの間の通信を提供する無線ネットワークのハードウェア構成」と,段落【0011】には「システムと方法は、ソフトウェアアプリケーションを無線デバイスにダウンロードすることを提供するよう期待されている」と,段落【0012】には「ダウンロード可能なアプリケーションに対してアクセスが提供された後」と,段落【0014】には「無線デバイス常駐アプリケーション及びデータを確認し、更新するシステム及び方法を提供する」と,段落【0015】には「無線デバイスが接続しているダウンロードサーバ上に常駐しているデータセットのより最新のバージョンで更新することができるシステム及び方法を提供する」及び「ダウンロードサーバとのデータセットバージョンの完全な比較を迅速に行い、無線デバイス常駐データセットのあらゆる新たなバージョンをダウンロードできる能力を、無線デバイスに対して与えるという利点を提供する」と,段落【0016】には「申し込んだソフトウェアアプリケーションを、例えばアプリケーションダウンロードサーバ16のような少なくとも1つのネットワークサーバと、無線ネットワーク14を介して接続しているセルラ電話12のような1つまたはそれ以上の無線デバイスに対して提供する」と,段落【0017】には「コンピュータサーバ側コンピュータプラットフォームは、無線ネットワーク14を介して無線デバイス12,18,20,22へ、個別のサービス及び処理を提供する」と,段落【0018】には「セルラ電気通信サービスを提供するために必要な他のあらゆる構成要素を備えたセルラ電話ネットワーク」と,段落【0030】には「システム10は、無線デバイス12,18,20,22上における格納されたデータセットのバージョンを選択的に更新する方法を提供する」と、それぞれ記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)しかしながら,上記いずれの記載箇所にも,「コンピュータ・プラットフォーム」が「前記無線デバイス」に役立ててもらうために差し出されるとの動作は記載されているとはいえない。さらに,当初明細書等の上記記載箇所以外のいずれにおいても,「コンピュータ・プラットフォーム」が「無線デバイス」に役立ててもらうために差し出されるとの動作は記載されているとはいえない。

(4) してみると,当初明細書等のすべての記載を総合しても,上記「前記コンピュータ・プラットフォームは前記無線デバイスに提供され」との技術事項を導き出し得るものではなく,本件補正は,当初明細書等の記載の範囲内においてするものではない。


3 目的要件
(1) 本件補正は,上記「2 新規事項追加禁止要件」において検討したとおり当初明細書等の記載の範囲内においてするものではないので,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるが,仮に,本件補正が,当初明細書等の記載の範囲内においてするものであるとすると,本件補正は,本件審判の請求と同時にする補正であり,上記第2のとおり特許請求の範囲についてする補正であるので,本件補正の目的を検討する。

(2) 本件補正によって,補正前の請求項25及び26における,「(b)(a)の後,前記無線デバイスが,前記無線ネットワークによる前記サーバとの通信セッションを開き」との記載が,補正後の請求項25においては,「(b)(a)の後,前記無線デバイスが,前記サーバとの接続を開き」との記載に補正され,補正後の請求項26においては,「(b)(a)の後,前記無線デバイスが,前記無線ネットワークによる前記サーバとの接続を開き」との記載に補正された。
平成25年8月7日付け拒絶査定において,補正前の請求項25及び26の上記記載箇所については,記載の不備等について何ら指摘されていないことから,平成24年11月30日付け拒絶理由通知書において指摘された上記記載箇所についての拒絶理由(上記拒絶理由通知書における理由A(2)及びB(2)の「ユーザ通信セッション」に関する指摘)は,補正前の請求項25及び26においては既に解消していたといえる。してみれば,補正前の請求項25及び26の上記記載箇所に対する拒絶の理由が示されていないのであるから,補正後の請求項25及び26の上記記載箇所に係る補正は,特許法第17条の2第4項第4号の明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)を目的とするものとはいえない。
また,コンピュータ技術の分野において,「接続」との用語は,「通信セッション」が開始されるよりも前に行わなければならない処理を指す意味,又は,「通信セッション」が開始されるよりも前に行わなければならない処理と「通信セッション」を少なくとも含む意味であると通常は解される。してみれば,「通信セッション」との記載を「接続」との記載に変更する補正は,補正前の請求項25及び26の発明が備える発明特定事項を,異なる概念,又は上位概念となる発明特定事項に変更する補正であるといえるから,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)を目的とするものとはいえない。
さらに,補正前の請求項25及び26の「通信セッション」との記載が,請求項の記載それ自体で,又は明細書の記載との関係で誤りであることが明らかであるともいえないし,「通信セッション」との記載に対して,「接続」との記載が正しい記載であることが自明な事項として定まるともいえない。してみれば,補正前の請求項25及び26の上記記載箇所には,そもそも誤記が存在するとはいえないのであるから,補正後の請求項25及び26の上記記載箇所に係る補正が,特許法第17条の2第4項第3号の誤記の訂正を目的とするものとはいえない。
加えて,補正前の請求項25及び26の上記記載箇所に係る補正が,特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除に該当しないことは自明である。

(3) 本件補正によって,補正前の請求項26における,
「 前記プロセッサ手段は,
(a)・・・(中略)・・・サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記メモリ手段内に生成するように構成され,
(b)(a)の後,前記無線デバイスが,前記無線ネットワークによる前記サーバとの通信セッションを開き,・・・(中略)・・・前記通信セッションを閉じ,」
との記載が,補正後の請求項26においては,
「 前記プロセッサ手段は,
(a)・・・(中略)・・・サーバ・バージョン・サマリ・ファイルを前記メモリ手段内に生成し,
(b)(a)の後,前記無線デバイスが,前記無線ネットワークによる前記サーバとの接続を開き,・・・(中略)・・・前記通信セッションを閉じるように構成され,」
との記載に補正された。
してみれば,補正前の請求項26に係る発明においては,「無線デバイス」が上記「(b)」に係る処理を行うとされていたのに対し,補正後の請求項26に係る発明においては,(「サーバ」が備える「コンピュータ・プラットフォーム手段」が備える)「プロセッサ手段」が上記「(b)」に係る処理を「無線デバイス」が行うよう「構成」される,すなわち,サーバ側の「プロセッサ手段」の構成に基づいて上記「(b)」に係る処理が行われるとされている。
平成25年8月7日付け拒絶査定において,補正前の請求項26に係る発明において上記「(b)」に係る処理に対するサーバ側の関与については,記載の不備等について何ら指摘されていないことから,平成24年11月30日付け拒絶理由通知書において指摘された,上記「(b)」に係る処理に対するサーバ側の関与についての拒絶理由(上記拒絶理由通知書における理由C(2))は,補正前の請求項26においては既に解消していたといえる。してみれば,補正前の請求項26に係る発明において上記「(b)」に係る処理に対するサーバ側の関与に関する拒絶の理由が示されていないのであるから,補正後の請求項26におけるサーバ側の「プロセッサ手段」の構成に基づいて上記「(b)」に係る処理が行われる旨の補正は,特許法第17条の2第4項第4号の明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)を目的とするものとはいえない。
また,本件補正によって,請求項に係る発明の態様が,「無線デバイス」が上記「(b)」に係る処理を行う態様から,サーバ側の「プロセッサ手段」の構成に基づいて上記「(b)」に係る処理が行われる態様に,明らかに変更されている。そして,発明の態様を異なる態様に変更する補正が,発明特定事項を限定するものであるとはいえないから,補正後の請求項26の上記記載箇所に関する補正は,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)を目的とするものとはいえない。
さらに,補正前の請求項26の「無線デバイス」が上記「(b)」に係る処理を行う旨の記載が,請求項の記載それ自体で,又は明細書の記載との関係で誤りであることが明らかであるともいえないし,「プロセッサ手段」が上記「(b)」に係る処理を「無線デバイス」が行うよう「構成」される旨の記載が正しい記載であることが自明な事項として定まるともいえない。してみれば,補正前の請求項26の上記記載箇所には,そもそも誤記が存在するとはいえないのであるから,補正後の請求項26の上記記載箇所に係る補正が,特許法第17条の2第4項第3号の誤記の訂正を目的とするものとはいえない。
加えて,補正前の請求項26の上記記載箇所に係る補正が,特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除に該当しないことは自明である。

(4) 以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除,同条同項第2号の特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。),同条同項第3号の誤記の訂正,同条同項第4号の明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)を目的とするものに限られるものではなく,特許法第17条の2第5項の規定に違反する。


4 独立特許要件
(1) 本件補正は,上記「2 新規事項追加禁止要件」において検討したとおり当初明細書等の記載の範囲内においてするものではないので,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるが,仮に,本件補正が,当初明細書等の記載の範囲内においてするものであるとすると,補正前の請求項1の「無線ネットワークを介して通信する無線デバイスであって」との記載を,補正後の請求項1の「無線ネットワークを介してサーバと通信する無線デバイスであって」との記載に補正することは,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)を目的とするものといえる。
そこで,本件補正後の各請求項に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。

(2) 特許法第36条第6項第1号及び第2号について
ア 補正後の請求項25には,「(b)(a)の後,前記無線デバイスが,前記サーバとの接続を開き,バージョン更新処理を実行し,前記バージョン更新処理の後,前記通信セッションを閉じ」と記載され,補正後の請求項26には,「(b)(a)の後,前記無線デバイスが,前記無線ネットワークによる前記サーバとの接続を開き,バージョン更新処理を実行し,前記バージョン更新処理の後,前記通信セッションを閉じる」と記載されている。
そして,補正後の請求項25及び26の上記記載を,その字句のとおりに解釈すると,「サーバとの接続を開き」,バージョン更新処理を実行した後に,「通信セッションを閉じ」る構成,すなわち,「サーバとの接続」を開いた後に,「サーバとの接続」とは異なる構成であって,どのタイミングで開かれたのかも特定されていない「通信セッション」を閉じる態様が記載されているといえる。してみれば,そのような態様においては,先に開かれる「サーバとの接続」と,後で閉じられる「通信セッション」との関係も不明であるし,先に開かれた「サーバとの接続」がその後どのように処理されるのかも,後で閉じられる「通信セッション」がいつ開かれるのかも不明であるといえる。したがって,そのような態様自体が不明確であるといえる。
さらに,補正後の請求項25及び26の上記記載を,その字句のとおりの解釈とは異なる解釈をするべきであるとの格別の理由もないから,補正後の請求項25及び26に係る発明は不明確であるといえる。
また,上記したように不明確な構成である,「サーバとの接続を開き」,バージョン更新処理を実行した後に,「通信セッションを閉じ」る構成は,本願の明細書のいずれにも記載されているとはいえない。よって,補正後の請求項25及び26の上記記載は,本願の発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないから,補正後の請求項25及び26に係る発明は,本願の発明の詳細な説明に記載されたものではない。

イ 補正後の請求項26には,「前記プロセッサ手段は,・・・(中略)・・・(b)(a)の後,前記無線デバイスが,前記無線ネットワークによる前記サーバとの接続を開き,・・・(中略)・・・前記通信セッションを閉じるように構成され,」と記載されている。
そして,補正後の請求項26の上記記載を,その字句のとおりに解釈すると,「無線デバイス」が「サーバとの接続を開き」,「通信セッションを閉じる」ように「プロセッサ手段」が構成される態様が記載されているといえる。
しかし,「無線デバイス」が「サーバとの接続を開き」,「通信セッションを閉じる」ように「プロセッサ手段」が構成されるとは,「プロセッサ手段」をどのように構成する態様を意味しているのかが,全く不明である。
さらに,補正後の請求項26の上記記載を,その字句のとおりの解釈とは異なる解釈をするべきであるとの格別の理由もないから,補正後の請求項26に係る発明は不明確であるといえる。
また,上記したように不明確な構成である,「無線デバイス」が「サーバとの接続を開き」,「通信セッションを閉じる」ように「プロセッサ手段」が構成される構成は,本願の明細書のいずれにも記載されているとはいえない。よって,補正後の請求項26の上記記載は,本願の発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないから,補正後の請求項26に係る発明は,本願の発明の詳細な説明に記載されたものではない。

(3) 小括
以上のとおり,補正後の請求項25及び26に係る発明は,明確でない。また,補正後の請求項25及び26に係る発明は,本願の発明の詳細な説明に記載されたものでもない。


5 補正却下の決定のむすび
したがって,本件補正は,平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
さらに,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成25年12月20日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,上記「第2 平成25年12月20日付けの手続補正についての補正却下の決定」の[理由]の「1 補正の内容」に記載された補正前の請求項1?請求項35に記載された事項により特定されるものである。


2 特許法第17条の2第3項について
(1) 平成24年11月30日付け拒絶理由通知書(以下,「原審拒絶理由通知書」という。)によって通知された拒絶理由のうち特許法第17条の2第3項についての拒絶理由の概要は下記のとおりのものである。

「(1)補正後の請求項1に記載された「(b)(a)の後,前記無線デバイスが,前記無線ネットワークによるサーバとのユーザ通信セッションを要求することに応答して,前記サーバとの通信セッションを開くことと,バージョン更新トランザクションを実行することと,前記バージョン更新トランザクションの後,前記ユーザ通信セッションを開始し,その後,前記通信セッションを閉じる,ように構成され,前記バージョン更新トランザクションは,」は,外国語書面の翻訳文(又は誤訳訂正書による補正後の明細書,特許請求の範囲若しくは図面)(以下,「翻訳文等」という。)に記載した事項の範囲内にあるものではない。
すなわち,翻訳文等には「ユーザ通信セッション」及び「バージョン更新トランザクション」についての記載は存在しておらず,また,上述したような具体的な構成が翻訳文等に記載した事項から自明であるということもできない。」

(2) 平成25年2月7日付けで意見書が提出されると共に同日付けで手続補正がなされ,本願の請求項に係る発明は,補正前の請求項1?請求項35に補正された。
平成25年2月7日付け意見書による,上記特許法第17条の2第3項についての拒絶理由に対する意見の概要は下記のとおりである。

「 審査官殿は,補正前の請求項1等に記載された「ユーザ通信セッション」及び「バージョン更新トランザクション」が明細書に記載されていないと指摘されています。
しかしながら,「バージョン更新トランザクション」は,例えば図5のステップ82?100に相当するトランザクションであります。したがって,「バージョン更新トランザクション」は,例えば図5のステップ82?100および明細書の対応記載に開示されていると確信します。」

(3) 平成25年8月7日付け拒絶査定において示された,原審拒絶理由通知書によって通知された拒絶理由のうち特許法第17条の2第3項についての拒絶理由が解消していない理由の概要は下記のとおりである。

「[理由A(1)及びA(2)並びにB(2)について]
出願人は,意見書において,『しかしながら,「バージョン更新トランザクション」は,例えば図5のステップ82?100に相当するトランザクションであります。したがって,「バージョン更新トランザクション」は,例えば図5のステップ82?100および明細書の対応記載に開示されていると確信します。』と主張している。
しかしながら,「トランザクション」とは,関連する複数の処理を一つの処理単位としてまとめたものであって,一連の作業を全体として一つの処理として管理するために用いられ,また,トランザクションとして管理された前記処理は「すべて成功」か「すべて失敗」のいずれかであることが保証されるようなものとして理解される。(参考:http://e-words.jp/w/E38388E383A9E383B3E382B6E382AFE382B7E383A7E383B3.html)
そうすると,単に,複数の処理から構成された処理の流れから任意に取り出した所望の処理部分を「トランザクション」と呼べるものではないのであって,その一方,本願の翻訳文等には「トランザクション」という明示的な記載は存在しておらず,また,前記ステップ82?100の処理について,成功(コミット)や失敗(アボート)に係る管理・制御を行うことが翻訳文等に記載も示唆もされていないのだから,出願人の主張は採用できるものではない。
よって,補正後の請求項1,12,13,24?26に記載された「バージョン更新トランザクション」に係る発明特定事項は,翻訳文等に記載された範囲内にあるものではなく,また,発明の詳細な説明に記載されているものでもない。
よって,当該理由は,依然として解消していないといえる。」

(4) そこで,上記原審拒絶理由通知書の特許法第17条の2第3項についての拒絶理由が解消されたか否かについて検討する。

a コンピュータ技術の分野において,「トランザクション」との用語は,互いに関連又は依存する複数の処理を連結して,一体不可分の処理単位としてまとめたものであって,当該処理単位に含まれる処理は「すべて成功」か「すべて失敗」のいずれかであることが常に保証されるものを意味する技術用語として理解されるのが通常である。してみると,単に,複数の処理から構成される一連の処理の流れから任意に取り出した所望の処理部分は,「トランザクション」と呼ぶことができるものとはいえないことが,コンピュータ技術の分野における技術常識である。
そして,補正前の請求項1には「前記プロセッサは,・・・(中略)・・・(b)(a)の後,前記無線デバイスが,前記無線ネットワークを介したサーバとの通信セッションを開くことと,バージョン更新トランザクションを実行することと,前記バージョン更新トランザクションの後,前記通信セッションを閉じる,ように構成され」と記載されており,補正前の請求項1に係る発明がコンピュータ技術の分野における発明であることは自明であるから,補正前の請求項1に記載された「トランザクション」との用語は,上記した技術用語としての「トランザクション」であると解されるといえる。

b 当初明細書等の全体を参酌しても,「トランザクション」との用語自体は,全く記載されていない。
そこで,「通信セッション」を開いた後であって,当該「通信セッション」を閉じる前に行われる処理を,コンピュータ技術の分野における技術用語としての「トランザクション」と呼ぶことができるような一体不可分である処理として取り扱うとの技術思想が,当初明細書等に記載されているかについて検討する。

c 平成25年2月7日付け意見書においては,上記(2)に示したように,「「バージョン更新トランザクション」は,例えば図5のステップ82?100に相当するトランザクションであります。したがって,「バージョン更新トランザクション」は,例えば図5のステップ82?100および明細書の対応記載に開示されていると確信します。」と主張されている。
そして,本願の明細書には,図5に関して,
「 【0026】
例えばセルラ電話12のような無線デバイスにおいて実行している具体的な処理は,図5のフローチャートに示されている。無線デバイス12,18,20,22は,ステップ80に示すように,アプリケーションダウンロードサーバ16(または他のネットワークサーバ)への接続をブリッジする。そして,判定部82に示すように,ダウンロードサーババージョンデータセット更新サマリファイル70が存在するかを判定する。もしもダウンロードサーバが,常駐データセットバージョンに対する変化の追跡を,更新サマリファイル70とは別の方法で維持する場合には,判定部82は,他の方法に従ってなされよう。もしも判定部82において,ダウンロードサーバデータセット更新サマリファイル70が存在しない場合(または他のバージョン比較方法が存在する場合)には,アプリケーションダウンロードサーバ16に対する接続が,別の方法で完了し,バージョン更新処理が終了する。もしも判定部82において,ダウンロードサーバデータセット更新サマリファイル70が存在する場合には,ステップ86に示すように,ダウンロードサーバデータセット更新サマリファイル70が,無線デバイス12,18,20,22によって検索される。そして,ステップ88に示すように,無線デバイスが常駐コピーを持つための第1のパラレルデータセットバージョンが取得される。
【0027】
その後,判定部90に示すように,ダウンロードサーバ常駐データセットが,無線デバイス常駐データセットよりもより最新のバージョンであるかが判定される。もしも判定部90において,ダウンロードサーバデータセットが,より最新のものではないと判定された場合には,処理は,ステップ88に戻り,次のダウンロードサーバ常駐データセットバージョンが取得される。もしも判定部90において,ダウンロードサーバ常駐データセットが,より最新のものと判定された場合には,ステップ92に示すように,無線デバイスは,ダウンロードサーバから,より最新のバージョンのデータセットをコンピュータプラットフォーム50にダウンロードする。判定部94では,より最新のバージョンのデータセットであるかが判定される。判定部94において,より最新のバージョンのデータセットがダウンロードされなかった場合には,ステップ96に示すように,この無線デバイスのユーザには,より最新のデータセットバージョンのダウンロードが失敗したことが通知され,処理は,判定部98に進む。あるいは,判定部94において,より最新のデータセットバージョンがダウンロードされたと判定された場合には,判定部98に示すように,無線デバイス12,18,20,22上に常駐するデータセットに対してパラレルであるデータセットが更にダウンロードサーバに常駐しているかが判定される。
【0028】
判定部98において,ダウンロードサーバ上に更にパラレルデータセットが存在すると判定された場合には,この処理はステップ88に進み,別のパラレルダウンロードサーバ常駐データセットが取得される。判定部98において,もはやパラレルダウンロードサーバ常駐データベースが存在しないと判定された場合には,ステップ100に示すように,ダウンロードされたデータベースが無線デバイス12,18,20,22のコンピュータプラットフォーム50にインストールされ,統合される。そして,ステップ102に示すように,無線デバイスとアプリケーションダウンロードサーバ106との間の相互接続が開始される。無線デバイスとダウンロードサーバとの間の相互接続によって,一般に,メニュー又はそれらの間の他のデータ接続性が与えられる。ステップ102において相互接続が開始された後,バージョン更新処理が終了する。」
と記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)
してみれば,「例えば図5のステップ82?100」に,バージョン更新に関係する一連の処理が記載されていることは確かであるといえる。

d しかしながら,単なる任意の一連の処理を技術用語としての「トランザクション」ということができないことは,上記aに示したとおりである。
そして,図5に記載されたステップ80?ステップ102の一連の処理には,ステップ80における「アプリケーションダウンロードサーバ16(または他のネットワークサーバ)への接続をブリッジ」する処理,すなわち「サーバとの通信セッションを開く」処理が少なくとも含まれることから,図5に記載されたステップ80?ステップ102の一連の処理の全体を,一体不可分な処理単位としての「バージョン更新トランザクション」とみなすことができないことは,自明である。
さらに,図5に記載されたステップ80?ステップ102のうち,ステップ82?ステップ100の一連の処理(又は,それ以外の任意の部分からなる一連の処理)を取り出して,一体不可分な処理単位としての「トランザクション」として取り扱うことについては,当初明細書等の全体を参酌しても,記載も示唆もされていない。
よって,図5に記載されたステップ80?ステップ102の処理の全部又は一部を一体不可分な処理単位としての「トランザクション」として取り扱うことについては,当初明細書等に記載も示唆もされていない。さらに,図5に記載されたステップ80?ステップ102の処理以外の構成を「バージョン更新トランザクション」として取り扱うことも,当初明細書等に記載も示唆もされていない。

e してみると,当初明細書等のすべての記載を総合しても,補正前の請求項1の上記「バージョン更新トランザクション」との技術事項を導き出し得るものではなく,平成25年2月7日付け手続補正書による補正は,当初明細書等の記載の範囲内においてするものではない。
したがって,原審拒絶理由通知書の理由A(特許法第17条の2第3項)において指摘した拒絶理由は解消されていない。


3 特許法第36条第6項第1項について

上記「2 特許法第17条の2第3項について」に記載したとおり,補正前の請求項1の「バージョン更新トランザクション」との技術事項は,当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない。そして,平成25年12月20日付けの手続補正は,上記「第2 平成25年12月20日付けの手続補正についての補正却下の決定」のとおり却下されたので,本願の明細書は,当初明細書等のとおりである。
してみれば,当初明細書等のすべての記載を総合しても導き出し得るものではない,補正前の請求項1の「バージョン更新トランザクション」との技術事項が,当初明細書等のとおりである本願の明細書に記載されたものではないことは明らかであるといえる。
したがって,原審拒絶理由通知書の理由B(第36条第6項第1号)において指摘した拒絶理由は解消されていない。


4 特許法第36条第6項第2号について
(1) 原審拒絶理由通知書によって通知された拒絶理由のうち特許法第36条第6項第2号についての拒絶理由の概要は下記のとおりのものである。

「(4)請求項30?37に記載された「非一時的なコンピュータ読取可能な媒体」について,発明の詳細な説明には「非一時的な」という記載は存在していないが,そのような媒体について,明細書第34?35段落を参酌すると,「コンピュータ読み取り可能な媒体」は「記憶媒体」とすることができ,また,前記「記憶媒体」には「デジタル及びアナログ送信媒体」を含むとも説明されている結果,発明が明確でない。」

(2) 平成25年2月7日付けで意見書が提出されると共に同日付けで手続補正がなされ,本願の請求項に係る発明は,補正前の請求項1?請求項35に補正された。
平成25年2月7日付け意見書による,上記特許法第36条第6項第2号についての拒絶理由に対する意見の概要は下記のとおりである。

「(4)補正後の請求項28?35のカテゴリは,「コンピュータ読取可能な記録媒体」と補正されておりますので,当該指摘は解消されると確信します。」

(3) 平成25年8月7日付け拒絶査定において示された,原審拒絶理由通知書によって通知された拒絶理由のうち特許法第36条第6項第2号についての拒絶理由が解消していない理由の概要は下記のとおりである。

「[理由C(4)について]
出願人は,意見書において,『補正後の請求項28?35のカテゴリは,「コンピュータ読取可能な記録媒体」と補正されておりますので,当該指摘は解消されると確信します。』と主張している。
しかしながら,補正前の翻訳文等には「記録媒体」や「記録」するという明示的な記載は存在していなかったため,補正後の「記録媒体」に属する事物の範囲が「記憶媒体」を含まないことが明確になったとはいえない。
一方,本願の明細書第35段落には,「デジタル及びアナログ送信媒体を含む…記憶媒体」という記載が依然として存在しているから,本願の「記憶媒体」は,このように定義された媒体を意味していると理解されうるものである。
以上のことからみて,補正後の「記録媒体」が「送信媒体」を含まないことが補正により明確になったとはいえないから,当該理由も,依然として解消していないといわざるを得ない。
[参考:審査基準第I部第1章2.2.2.1(4)及び第VII部第1章3.1事例1-5]」

(4) そこで,上記原審拒絶理由通知書の特許法第36条第6項第2号についての拒絶理由が解消されたか否かについて検討する。

a 補正前の請求項28には,
「 コンピュータによって実行されると,前記コンピュータに動作を実行させるための命令群を記録しているコンピュータ読取可能な記録媒体であって,
・・・(中略)・・・
コンピュータ読取可能な記録媒体。」
と記載されている。
そして,「コンピュータ読取可能な記録媒体」との用語は,一般的な技術用語として,一応明確であるといえる。一方,明細書には,「記録媒体」との記載自体がみられないことから,「コンピュータ読取可能な記録媒体」との用語の明示的な定義は記載されていないといえる。

b 平成25年12月20日付けの手続補正は,上記「第2 平成25年12月20日付けの手続補正についての補正却下の決定」のとおり却下されたので,明細書の段落【0035】には,
「本発明は,例えば,無線プラットフォーム50,アプリケーションダウンロードサーバ16,及びその他の任意のネットワークサーバ30,32のような無線ネットワーク14の動作部を実行させることによって,機械読み取り可能な命令のシーケンスを実行する。・・・(中略)・・・この命令は,DASD記憶装置(例えば,従来式の「ハードドライブ」又はRAIDアレイ),磁気テープ,電子的リードオンリーメモリ(例えば,ROM,EPROM,又はEEPROM),フラッシュメモリカード,光学記憶装置(例えば,CD-ROM,WORM,DVD,デジタル光学テープ),紙「パンチ」カード,又はデジタル及びアナログ送信媒体を含むその他の適切なデータ記憶媒体のような様々な機械読み取り可能なデータ記憶媒体に格納されうる。」
と記載されている。
そして,明細書の段落【0035】の記載における「無線ネットワーク14の動作部」が「コンピュータ」であることは,当業者にとって自明であるから,明細書の段落【0035】には,コンピュータを実行させるための「機械読み取り可能な命令」を「DASD記憶装置(例えば,従来式の「ハードドライブ」又はRAIDアレイ)・・・(中略)・・・又はデジタル及びアナログ送信媒体を含むその他の適切なデータ記憶媒体のような様々な機械読み取り可能なデータ記憶媒体に格納」することが記載されているといえる。
そこで,明細書の段落【0035】の上記記載を補正前の請求項28の記載と比較すると,明細書の段落【0035】に記載された「機械読み取り可能なデータ記憶媒体」は,コンピュータに動作を実行させるための命令を記録するものであるといえるから,補正前の請求項28に記載された「コンピュータ読取可能な記録媒体」の実施の形態として記載されたものであると解することができる。してみると,明細書の段落【0035】の上記記載は,補正前の請求項28に記載された「コンピュータ読取可能な記録媒体」の説明であるともいえる。

c よって,補正前の請求項28の「コンピュータ読取可能な記録媒体」には,その説明として明細書の段落【0035】に記載された「DASD記憶装置(例えば,従来式の「ハードドライブ」又はRAIDアレイ)」又は「デジタル及びアナログ送信媒体」が含まれると解することができる。
しかしながら,「DASD記憶装置(例えば,従来式の「ハードドライブ」又はRAIDアレイ)」は,命令を記録する機能を備えるものである一方,「デジタル及びアナログ送信媒体」は命令を伝送する機能を備えるものといえる。してみれば,「DASD記憶装置(例えば,従来式の「ハードドライブ」又はRAIDアレイ)」又は「デジタル及びアナログ送信媒体」が含まれる補正前の請求項28の「コンピュータ読取可能な記録媒体」は,命令を記録する機能を備えるものと,命令を伝送する機能を備えるものを,択一的に含むものといえる。

d してみると,補正前の請求項28に係る発明は,互いに類似の性質又は機能を有していない事項が択一的に表現されているために,一の技術思想としての発明を明確に把握することができない。
したがって,原審拒絶理由通知書の理由C(第36条第6項第2号)において指摘した拒絶理由は解消されていない。


5 むすび
上記「2 特許法第17条の2第3項について」のとおり,平成25年2月7日付けの手続補正による本願の請求項1に係る補正は,特許法第17条の2第3項の要件を満たしていないものであり,上記「3 特許法第36条第6項第1項について」のとおり,本願の請求項1の記載は,特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていないものであり,上記「4 特許法第36条第6項第2号について」のとおり,本願の請求項28の記載は,特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていないものである。したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-09-11 
結審通知日 2014-09-16 
審決日 2014-09-25 
出願番号 特願2012-91840(P2012-91840)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G06F)
P 1 8・ 571- Z (G06F)
P 1 8・ 574- Z (G06F)
P 1 8・ 55- Z (G06F)
P 1 8・ 537- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 573- Z (G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂庭 剛史  
特許庁審判長 仲間 晃
特許庁審判官 小林 大介
石井 茂和
発明の名称 無線デバイス上に常駐するデータセットのバージョンを更新するシステム及び方法  
代理人 砂川 克  
代理人 赤穂 隆雄  
代理人 峰 隆司  
代理人 福原 淑弘  
代理人 井関 守三  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 堀内 美保子  
代理人 岡田 貴志  
代理人 佐藤 立志  
代理人 野河 信久  
代理人 河野 直樹  
代理人 井上 正  

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