• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04F
管理番号 1297110
審判番号 不服2013-21578  
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-05 
確定日 2015-02-05 
事件の表示 特願2007-28602号「床材」拒絶査定不服審判事件〔平成19年9月20日出願公開、特開2007-239445号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年2月7日(優先権主張平成18年2月7日)の出願であって、平成24年6月18日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年8月7日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年8月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲及び明細書についての手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成25年11月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。なお、上記補正後の請求項1に係る発明は、拒絶査定時の(平成24年8月7日付け手続補正書に記載の)請求項1を引用した請求項2をさらに引用した請求項3に係る発明である。

「合板の一方の面に、化学処理した木粉及び樹脂成分を含む組成物で形成された硬度付与層を設け、該硬度付与層上に接着剤層を介して装飾材を積層した床材であって、
前記樹脂成分が熱硬化型樹脂であり、
前記硬度付与層は樹脂と化学処理した木粉との配合割合が樹脂として65?90重量部、化学処理した木粉として35?10重量部であって、総量として100重量部となるように配合された組成物から形成されている
ことを特徴とする床材。」

第3 引用刊行物に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物は、次のとおりである。

特開平9-48090号公報(以下、「引用例1」という。)
特開2004-316372号公報(以下、「引用例2」という。)
特開2003-11277号公報(以下、「引用例3」という。)

1 引用例1
(1)引用例1に記載の事項
引用例1には、次の事項が記載されている。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、優れた美観を有し、かつ表面硬度や耐摩耗性および耐水性などに優れた化粧板を工業的に有利に製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、木材の美観、表面硬度、耐摩耗性および耐水性などを向上させるために、木材に熱硬化性樹脂を減圧または加圧下で含浸させ、加熱硬化せしめる、いわゆるWPC(Wood Plastic Combination)処理する方法が知られている。しかしながら、このWPC処理は工程が繁雑で、設備が大がかりとなり製造費が高くつくという欠点があった。また、得られた処理木材の表面には十分な表面硬度、耐摩耗性をもたらすほどの樹脂膜層が形成されないという問題があった。・・・・。
【0003】
また、特公平7-35109号 にはプリントコート紙の裏面と木質基材との間にシート状に形成された熱硬化性樹脂材を介在させ、熱圧して前記熱硬化性樹脂材を介してプリントコート紙と木質基材とを固着させる複合板の製造方法が開示されている。この方法は、熱圧時、粘度低下を起こす熱硬化性樹脂がプリントコート紙の表面にしみ出し、装置周辺を汚染するのを避けるために、プリントコート紙を用いることを特徴としている。しかしながら、この方法によってもやはり粘度低下を起こした硬化性樹脂が木質基材の側面から外部に流出することは避けられなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記したような状況に鑑み、木質板材、とりわけ、美観的に十分でない、あるいは、表面硬度の低い木質板材と化粧紙、化粧単板等(以下化粧材と称する)との間に、硬化性組成物を載置し、熱圧することにより、優れた美観を有し、かつ表面硬度、耐摩耗性および耐水性などに優れた化粧板を工業的に有利に製造する方法を提供することをその目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決する方法につき鋭意研究を行った。この結果、化学修飾木質材、熱硬化性樹脂および重合開始剤を添加混合した硬化性組成物を、木質基材と化粧材の間に位置させ、硬化性組成物中の化学修飾木質材が可塑化するのに必要な圧力を以て熱圧することにより、該硬化性組成物中の化学修飾木質材の可塑化と、熱硬化性樹脂の架橋を行わせしめ、これらによって木質基材と化粧材を一体化させると同時に、主として該硬化性組成物中の熱硬化性樹脂を化粧材に浸透、透過、さらに反対の面にまでしみ出させ、そして硬化せしめることにより、優れた美観を有し、しかも、表面硬度、耐摩耗性および耐水性に優れた化粧板が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。」
「【0007】
本発明で用いられる化学修飾木質材とは、木質材中の水酸基に化学物質を反応させたものであって、この化学物質の種類と量によっては、木質材そのものには本来備わっていなかった熱可塑性を付与することができる。本発明においては化学修飾木質材のうち熱可塑性が高いものを使用するのが好ましい。これらの例としては、特開昭57-103804号、特開昭60-206602号、特開昭58-32807号、特開昭60-188401号、白石信夫:木材学会誌vol.32,No.10,P755-762(1986)、大越誠 :木材学会誌vol.36,No.1,P57-63(1990)、等において開示されたエステル化木材、エーテル化木材、アセチル化木材、アリル化木材、ベンジル化木材、ラウロイル化木材、エチル化木材、シアノエチル化木材、さらに、特開平2-145339号において開示されている木質成分中の水酸基に二塩基酸無水物および重合性二重結合を有するモノエポキシ化合物を反応させたオリゴエステル化木材、またさらに、アセチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体等を用いることができる。これらの化学修飾木質材のうちでも、製造工程が簡単で、反応後、系から除去する必要がある副生物がないという理由から、オリゴエステル化木質材が特に好適に用いられる。」
「【0012】
・・・・また、木質基材としては、その樹種を問わず、さらに、木材から直接切り出された板、合板、パーティクルボード、ファイバーボード、OSB、集成材、LVL、およびバガス、モミガラなどから成形された植物繊維系木質基材であるかを問わず、あらゆる木質板が使用可能である・・・・」
「【0022】
また、本発明においては、熱硬化性樹脂の配合量が、化学修飾木質材100重量部に対して1?60重量部であることが望ましい。熱硬化性樹脂の配合量をこの範囲に設定することにより得られる化粧板の表面硬度、耐摩耗性が良好なものとなり、さらに、熱圧成形時、粘度低下を起こした熱硬化性樹脂が木質基材の側面から外部に流出することがなく好ましい。また、化学修飾木質材との親和性が良好であるという理由により、熱硬化性樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂を上記配合量用いることがさらに好ましい。」
「【0023】
【作用】本発明の特徴は、化学修飾木質材、熱硬化性樹脂および重合開始剤から成る硬化性組成物を木質基材上に載置し、さらにその上に未硬化状態の熱硬化性樹脂が浸透、透過しうる化粧材を載置して、熱圧することにある。このようにすることにより、主として該硬化性組成物中の熱硬化性樹脂が化粧材に浸透し、さらに、その反対面にまでしみ出して硬化する。このため木質基材と化粧材が、熱硬化性樹脂、および化学修飾木質材によって強固に一体化される。この結果、従来問題となっていた、接着不良によって浮き現象を生じるという問題が解消される。またこのようにして得られる化粧板は優れた美観を有し、しかも表面平滑性、表面硬度、耐摩耗性および耐浸せき剥離性に優れた表面を与える。」
「【0029】
[実施例3]乾燥木粉(含水率:0.7%、商品名:LIGNOCEL S-150TR ;J.Rettenmaier & Sohne 社製;繊維長:30?60μ)750g、無水マレイン酸100g、およびエチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体100gを加圧型ニーダーに充填して、115℃で1時間撹拌下に反応せしめた。その後、アリルグリシジルエーテル(ダイソー(株)製、「ネオアリルG」)150gを添加し、さらに、115℃で1時間撹拌下に反応せしめた。次に、得られたオリゴエステル化木質材とエチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体の反応物300g、不飽和ポリエステル樹脂100g、およびジクミルパーオキサイド7.5gをミキシングロールにより均一になるまで混合し、次いで該混合物を厚さ0.4mm、幅30cmのシート状で取り出すことによって、シート状の硬化性組成物を得た。なお、ミキシングロールによる混合にあたっては意図的な加温は行わなかった。次に、普通化粧紙(30g/m2 )を鏡面板上に置き、その上に該シート状の硬化性組成物を載置し、さらにその上に大きさ30cm×30cm×1.5cmのパーティクルボードを載置し、プレス機の熱板間に挿入して、温度150℃、圧力20kgf/cm2 の熱圧条件で5分間熱圧成形を行った。このようにして得られた化粧板は表面が強靭で硬く、緻密性を有し、光沢のあるプラスチック様の優れた美観を有するものであった。さらに、この得られた化粧板の硬度、耐浸せきはくり性、耐摩耗性、耐衝撃性を評価した。その結果を表1に示す。」

(2)引用例1に記載の発明の認定
上記(1)の「木質基材としては、その樹種を問わず、さらに、木材から直接切り出された板、合板、パーティクルボード、ファイバーボード、OSB、集成材、LVL、およびバガス、モミガラなどから成形された植物繊維系木質基材であるかを問わず、あらゆる木質板が使用可能である」(段落【0012】)との記載からは、木質基材は合板も含んでいるといえる。
また、上記(1)の「化学修飾木質材、熱硬化性樹脂および重合開始剤を添加混合した硬化性組成物」(同【0005】)、「本発明で用いられる化学修飾木質材とは、木質材中の水酸基に化学物質を反応させたものであって、この化学物質の種類と量によっては、木質材そのものには本来備わっていなかった熱可塑性を付与することができる。」(同【0007】)、及び「乾燥木粉(含水率:0.7%、商品名:LIGNOCEL S-150TR ;J.Rettenmaier & Sohne 社製;繊維長:30?60μ)750g、無水マレイン酸100g、およびエチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体100gを加圧型ニーダーに充填して、115℃で1時間撹拌下に反応せしめた。その後、アリルグリシジルエーテル(ダイソー(株)製、「ネオアリルG」)150gを添加し、さらに、115℃で1時間撹拌下に反応せしめた。次に、得られたオリゴエステル化木質材とエチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体の反応物300g、不飽和ポリエステル樹脂100g、およびジクミルパーオキサイド7.5gをミキシングロールにより均一になるまで混合し、次いで該混合物を厚さ0.4mm、幅30cmのシート状で取り出すことによって、シート状の硬化性組成物を得た。」(同【0029】)との記載から、木粉は化学処理されたものであり、また、シート状の硬化性組成物は、そのような木粉及び熱硬化性樹脂を含む組成物で形成されたものといえる。
さらに、引用例1には、化粧板の製造方法に関して記載されているが、当業者であれば、物である化粧板として把握し、認定することは可能であるといえる。
そうすると、上記(1)に記載された事項からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「合板の一方の面に、化学処理した木粉及び熱硬化性樹脂を含む組成物で形成された硬化性組成物層を設け、該硬化性組成物層上に化粧材を積層した化粧板。」

2 引用例2
引用例2には、次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、戸建て住宅やマンション、アパート、保養所、オフィスビル、店舗等の建築物における室内床面に使用するための床材に関するものである。」
「【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の床材の基本構成は、図1に示す様に、熱可塑性樹脂11と、木質系充填剤12との混合物を、発泡(内部に気泡13が存在)させつつ成形してなる、木質樹脂発泡成形体1の表面に、前記熱可塑性樹脂11と同系の熱可塑性樹脂からなる化粧シート2が積層されてなるものである。」
「【0055】
化粧シート2の厚さは特に問わないが、0.05?0.3mm程度の範囲内とされるのが通例である。化粧シート2と木質樹脂発泡成形体1との積層方法は特に問わず、例えば接着剤を介したドライラミネート法又はウェットラミネート法や、接着剤を介した又は介さない熱ラミネート法、超音波融着法や高周波融着法、木質樹脂発泡成形体1の発泡押出成形と同時に冷却サイジング金型内に化粧シート2を導入して貼り合わせる成形同時ラミネート法等、従来公知の方法を任意に用いることができる。」

3 引用例3
引用例3には、次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、戸建て住宅、アパート、マンション、保養所、店舗等の建築物における床材、壁材、天井材、階段踏板、建具等の建築資材や家具材等として使用するための化粧材に関するものであり、就中、特に床材として好適に使用される化粧材に関するものである。」
「【0015】
本発明の化粧材は、例えば図1に示す様に、積層合板などの木質基材1の表面上に、該木質基材1及び後述する化粧シート3のいずれよりも硬度の高い材質からなる硬質シート層2と、表面意匠の付与のための化粧シート3とが順次積層された積層体によって構成されており、その表面硬度が、デュロメーター硬さ試験タイプD(JIS K 6253)にて60以上であることを特徴としている。」
「【0022】
化粧シート3は、化粧板の表面に所望の意匠を付与するために設けられるものであって、その材質や構成には特に限定はなく、紙又は合成樹脂シート等に印刷等により所望の意匠が付与されてなる、従来公知の各種の化粧シートから適宜選択して使用することができる。中でも、本発明の目的とする床材などの化粧材に要求される耐摩耗性や耐擦傷性、耐溶剤性、耐候性、耐水性、耐油性等の面からは、熱可塑性樹脂層を主体として構成される熱可塑性樹脂系の化粧シートを使用することが最も望ましい。
【0023】
上記熱可塑性樹脂系の化粧シートとは更に具体的には、熱可塑性樹脂からなる不透明な基材シートの表面に絵柄層を設けたものや、熱可塑性樹脂からなる透明な基材シートの裏面及び/又は絵柄層を設けたもの、それらの表面に表面保護層を設けたものなどの単層構成の化粧シートであっても良いが、図1に示した様に、透明又は不透明の熱可塑性樹脂からなる基材シート31上に、絵柄層32を介して、透明な熱可塑性樹脂からなる透明樹脂層34を設けてなる、複層構成の化粧シートが、その意匠性、接着適性、耐候性、耐溶剤性、耐摩耗性等の各種の面で最も好適である。なお、絵柄層32は、基材シート31と透明樹脂層34との層間に設けるほか、基材シート31の裏面や、透明樹脂層34の表面に設けることも勿論差し支えない。」
「【0033】
表面保護層36の厚みや形成方法には特に制限はなく、目的とする機能性を発現すべき機能性材料の特性に合わせて適宜設計すればよい。一般的には、表面保護層36の厚みは1?100μm程度、更に好ましくは5?50μm程度の範囲内とするのが良い。表面保護層36の形成方法としては、例えばロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法、グラビアコート法、グラビアリバースコート法、マイクログラビアコート法等の各種のコーティング法から任意に選択すればよい。」
「【0051】
本発明の化粧材の製造にあたり、木質基材1、硬質シート層2、化粧シート3及び必要に応じて設けられる防湿シート4の相互間の積層方法は、本発明において特に限定されるものではなく、接着剤層51、52、53を用いた通常の接着法(ウェットラミネート法)やドライラミネート法、接着剤を用いるか又は用いない熱ラミネート法、高周波ラミネート法等、従来公知の積層方法を任意に採用すれば良い。木質基材1とその隣接層である硬質シート層2や防湿シート4との接着には、例えば水性塩化酢酸ビニル樹脂系接着剤や2液型水性ウレタン樹脂系接着剤などを用いた接着方法が好適である。」

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「化粧材」は、その構造及び機能からみて、本願発明の「装飾材」に相当し、同様に、「硬化性組成物層」は「硬度付与層」に相当する。また、本願発明の「装飾材を積層した床材」は、用途を限定しないものとして捉えると、化粧板といえる。

したがって、両者は、次の一致点で一致し、相違点1?3で相違する。
(一致点)
「合板の一方の面に、化学処理した木粉及び熱硬化型樹脂を含む組成物で形成された硬度付与層を設け、該硬度付与層上に装飾材を積層した化粧板。」
(相違点1)
本願発明は、「硬度付与層上に接着剤層を介して装飾材を積層」しているのに対し、引用発明においては、硬度付与層上に接着剤層を介さずに装飾材を積層している点。
(相違点2)
本願発明は、「硬度付与層は樹脂と化学処理した木粉との配合割合が樹脂として65?90重量部、化学処理した木粉として35?10重量部であって、総量として100重量部となるように配合された組成物から形成されている」のに対し、引用発明は、そのような配合割合にすることが明らかでない点。
(相違点3)
本願発明は、「床材」であるのに対し、引用発明は、化粧板であって床材に限定されていない点。

第5 判断
1 相違点1について
一般的に、関連する技術分野の技術手段の適用を試みることは、当業者の通常の創作能力の発揮であって、関連する技術分野に置換可能な技術手段があるときは、当業者がその転用を容易に着想し得るといえるところ、化粧板に関する技術分野において、化粧材を樹脂からなる基材に積層する際に、接着剤を用いて積層することも、接着剤を用いないで積層することも、さらには従来公知の積層方法(貼り合わせ方法)を任意に採用できることも、本願優先日前から周知であるから(例えば、上記第3の2に記載の引用例2、及び上記第3の3に記載の引用例3を参照。)、引用発明において、硬度付与層上に装飾材を積層する際に、接着剤を介して積層することは、当業者が容易に着想し得ることであって、そのような構造とすることに格別の困難性もないといえる。
また、引用発明は、硬化性組成物層(硬度付与層)を接着剤として機能させることによって、合板と化粧材(装飾材)を一体化して積層するものであるが、化粧板に係る技術において、積層される基材及び化粧材などの材質(構造)や、それらの積層方法(貼り合わせ方法)は、本願優先日前から種々のものが考えられ実施されていることを考慮すると、そのような知見を有する当業者であれば、引用発明の硬化性組成物層(硬度付与層)と合板との積層構造に着目し、化粧材の材質やその貼り合わせ方法は、本願優先日前から周知の他の材質や方法とすることを容易に着想できるものといえる。
さらにいうと、本願発明において、装飾材(化粧材)や接着剤は、その材質や厚さ、成分などが特定されておらず、すなわち本願優先日前から周知ないしは公知のものを任意に選択できるものであるから、そのような装飾材(化粧材)や接着剤と、引用例1によって公知である硬化性組成物層(硬度付与層)と合板とからなる基材との関係で、技術的意義(言い換えると新たな知見)を見いだすことができず、単に床材(化粧板)の基材として公知のものを採用したに過ぎないものと解することもでき、そこに進歩性があるとはいえない。
したがって、引用発明において、周知技術を考慮ないしは適用して、本願発明の相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

2 相違点2について
本願発明において、化学処理した木粉を樹脂に含有されるのは、本願明細書に「化学処理した木粉は、上記した樹脂との相乗効果により上記した樹脂単体で形成された層よりも、より高い硬度を持つ層とするために含有される。」(段落【0024】)、及び「化学処理した木粉の配合割合が高くなるほど前記硬度付与層12の硬度を高めることができる。」(同【0025】)と記載されているように、硬度付与層の硬度を高めるためであるから、引用発明の硬化性組成物層(硬度付与層)においても、化学処理した木粉が樹脂に含有されることにより、本願発明と同様に硬化性組成物層(硬度付与層)の硬度が高められると解される。
また、一般的に、実験的に数値範囲を最適化又は好適化することは、当業者が通常行う程度のことであるから、化学処理した木粉を樹脂に含有させる割合をどの程度とするかは、当業者が当然に考えることであるといえる。
さらに、化粧板の硬度や表面平滑性は、基材の硬度や厚さ、化粧材の材質及び厚さが影響することは明らかである。
そうすると、引用発明において、樹脂と化学処理した木粉との配合割合は、硬化性組成物層(硬度付与層)の硬度や厚さ、化粧材の材質及び厚さ、製造の容易性などを考慮して、当業者が適宜に変更し得る程度の事項であるといえる。なお、引用例1の段落【0022】には、「また、本発明においては、熱硬化性樹脂の配合量が、化学修飾木質材100重量部に対して1?60重量部であることが望ましい。」と記載されているが、好ましい配合割合を示しているだけで、そのような配合割合に限定されるものではなく、本願発明のような配合割合にすることが技術的に困難でもない。
ところで、本願明細書には、実施例1?6に係る試験結果が記載されているが、比較例がなく、また、木粉が多いほどキャスター性試験結果が良好であることを踏まえると、本願発明における樹脂と化学処理した木粉との配合割合(数値範囲)に、臨界的意義があるとはいえない。
以上のことから、引用発明において、本願発明の相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

3 相違点3について
化粧板は、住宅、店舗などの建築物における床材や壁材、天井材などに用いられるところ、引用例1には、「本発明は、優れた美観を有し、かつ表面硬度や耐摩耗性および耐水性などに優れた化粧板を工業的に有利に製造する方法に関するものである。」(段落【0001】)、及び「このようにして得られる化粧板は優れた美観を有し、しかも表面平滑性、表面硬度、耐摩耗性および耐浸せき剥離性に優れた表面を与える。」(同【0023】)と記載されているように、引用発明の化粧板は、表面平滑性、表面硬度、耐摩耗性及び耐水性などに優れているから、床材に適したものと解される。したがって、引用発明の化粧板を床材として用いること、すなわち本願発明の相違点3に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

4 効果について
本願発明の作用効果は、引用発明及び周知技術の作用効果からみて、当業者が予測し得る程度のものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規
定により、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-01 
結審通知日 2014-12-02 
審決日 2014-12-16 
出願番号 特願2007-28602(P2007-28602)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 南澤 弘明西村 直史  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 門 良成
小野 忠悦
発明の名称 床材  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ