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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1297610 |
審判番号 | 不服2013-21201 |
総通号数 | 184 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-10-30 |
確定日 | 2015-02-12 |
事件の表示 | 特願2005- 99446「コンピュータ断層撮影装置における画像データの生成方法,X線CT装置及びX線コンピュータ断層撮影装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月13日出願公開,特開2005-279282〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成17年3月30日(パリ条約による優先権主張日 平成16年3月30日,米国)を出願日とする出願であって,平成22年10月7日付けで拒絶理由が通知され,同年12月20日付けで意見書及び手続補正書が提出され,平成23年9月20日付けで拒絶理由が通知され,同年11月28日付けで意見書及び手続補正書が提出され,平成24年9月25日付けで最後の拒絶理由が通知され,同年12月3日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが,平成25年7月25日付けで平成24年12月3日付けの手続補正書による補正について補正却下の決定がなされ,それと同日付で拒絶査定されたのに対し,同年10月30日に拒絶査定不服の審判請求がなされ,それと同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである 第2 本件補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 補正後の請求項1に係る発明 本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は, 「【請求項1】 CTシステムにおける少なくとも2つの検出器列から投影データを取得し、 前記投影データのうち同一ビュー内の投影データを対象として前記検出器列の列方向に関してチャンネルに依存して変化する重みであって、前記検出器列の列方向に対称になる重みを用いて重み付け加算によるフィルタリングをし、 前記フィルタリング済みデータから画像データを再構成するコンピュータによるコンピュータ断層撮影装置における画像データの生成方法。」(下線は補正箇所を示す。)と補正された。 2 補正事項について 補正前の「検出器列の列方向に関してチャンネルに依存して変化する重み」を「前記検出器列の列方向に関してチャンネルに依存して変化する重みであって、前記検出器列の列方向に対称になる重み」とする補正は,前者の「重み」をさらに「検出器列の列方向に対称になる重み」に限定するもので,いわゆる限定的減縮に相当するものであるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。 そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 3 引用刊行物及びその記載事項 (1)本願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2001-54518号公報(以下「引用例」という。)には,次の事項が記載されている。なお,引用発明の認定に関連する箇所に下線を付与した。 (1-ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】X線源と、相異なる位置を有し且つ複数の行を成すように配置された複数の検出器素子を含み、各検出器素子が対応する検出器チャネルを有しているX線検出器モジュールと、スキャン軸zと、前記検出器モジュールに結合された、検出ゲインを与えるデータ収集システム(DAS)と備えているイメージング・システムにおいて、画像を再構成するための方法であって、 データを取得するためにスキャンを実行するステップと、 前記データにz平滑化フィルタを適用し、前記データに適用される平滑化の量を、チャネル位置、X線投影角度、DASゲインおよび検出器行番号の内の少なくとも1つの関数として変化させるステップと、を含む画像再構成方法。 ・・・ 【請求項3】前記データにz平滑化フィルタを適用する前記ステップが、次式に従って実行される請求項1に記載の方法。 【数1】 上式において、Pは初期投影であり、P’は処理後の投影であり、sは平滑化フィルタであり、γはチャネルであり、gはDASゲインであり、βはX線投影角度であり、kは検出器の行番号である。」 (1-イ)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、全般的にはイメージング(画像作成)法に関し、さらに具体的にはマルチスライス型イメージング・システムで収集した投影データからの画像作成に関する。 【0002】 【従来の技術】一般にコンピュータ断層撮影(CT)システムと呼ばれる少なくとも1つのイメージング・システムでは、X線源が、デカルト座標系のx-y平面(一般に「画像作成面」と呼ばれる)内に位置するようにコリメートされた扇形状のビームを放出する。」 (1-ウ)「【0004】マルチスライス型CTシステムは、1回のスキャンの間に多数のスライスについてデータを収集するために使用される。周知の1つのマルチスライス型システムは、3D検出器として一般に知られている検出器を含んでいる。こうした3D検出器では、複数の検出器素子により行と列の形に配置された別々のチャネルが形成されている。検出器の各行により、個別の1つのスライスが形成される。例えば、2スライス型検出器は2行分の検出器素子を有し、4スライス型検出器は4行分の検出器素子を有している。マルチスライス・スキャンの間に、複数行の検出器セルに同時にX線ビームが入射し、これにより幾つかのスライスに対するデータが取得される。」 (1-エ)「【0011】さらにコンピュータ36は、ユーザ・インタフェース、たとえばグラフィック・ユーザ・インタフェース(GUI)を介して、信号の受け取りおよび提供を行う。・・・オペレータはコンピュータからの再構成画像その他のデータを観察することができる。」 (1-オ)「【0020】さらに、マルチスライス型スキャナは典型的にはより短い幾何学構成を有しており、このためより長い幾何学構成のその他の周知のスキャナと比較して画像の中心から離れるに従って画像ノイズが増加する。・・・ 【0021】ノイズの挙動は位置に依存し、したがって、チャネルに依存し且つDASゲインに依存する。ファンビーム再構成に対する重み係数は1/R^(2)であるため、アイソセンタの位置でのノイズは概ね等しいが、ノイズはアイソセンタまでの距離の関数として増加する。再構成画像内のノイズは、概ねそのチャネルのRMS(root mean square)加重平均となる。したがって、アイソチャネル(isochannel)から離れるに従ってノイズ抑制が増加するような平滑化関数により、ノイズ抑制を増加させる。」 (1-カ)「【0025】上記のフィルタは、チャネルおよびDASゲインに依存する。さらに、こうしたフィルタは、システム・ノイズに影響を及ぼす再構成アルゴリズムなどのその他多くのファクタにも依存する(例えば、フィルタはアキシャル・スキャンとヘリカル・スキャンで異なり、またフィルタは高分解能モードと低分解能モードで異なる)。 【0026】本発明の別の実施形態では、チャネル依存のz平滑化フィルタにより、スキャナのアイソセンタを通過するX線を検出する検出器チャネルであるアイソチャネルからある距離での増加したノイズが補償される。ここでも、この補正による空間分解能に対する影響は最小となる。」 (1-キ)「【0030】分解能の劣化が重要であるような実施形態では、撮影領域の全体でノイズ量を部分的にのみ等化させるようなz平滑化フィルタを選択し、z分解能の劣化を減少させる。さらにノイズ低減をさせるために、z軸(すなわちスキャン軸)に垂直なx-y平面で、例えば上記の式(1)に従った追加の平滑化を適用する。平滑化技法の組み合わせにより、z分解能の劣化を減少させながら、大幅なノイズ低減が得られる。」 (1-ク)「【0031】別の実施の形態では、ビュー(β)にも依存するz平滑化フィルタが利用される。」 してみれば,上記引用例の記載事項を総合すると,引用例には,以下の発明が記載されていると認められる。 「X線源と,相異なる位置を有し且つ複数の行を成すように配置された複数の検出器素子を含み,各検出器素子が対応する検出器チャネルを有しているX線検出器モジュールと,スキャン軸zと,前記検出器モジュールに結合された,検出ゲインを与える投影データ収集システム(DAS)と備えているコンピュータ断層撮影(CT)システムにおいて,画像をコンピュータにより再構成するための方法であって, 投影データを取得するためにスキャンを実行するステップと, 前記投影データにz平滑化フィルタを適用し,前記投影データに適用される平滑化の量を,チャネル,X線投影角度,DASゲインおよび検出器行番号の内の少なくとも1つの関数として変化させるステップと,を含む画像再構成方法において, 前記投影データにz平滑化フィルタを適用する前記ステップが,次式に従って実行される方法。 【数1】 上式において、Pは初期投影であり、P’は処理後の投影であり、sは平滑化フィルタであり、γはチャネルであり、gはDASゲインであり、β(ビュー)はX線投影角度であり、kは検出器の行番号である。」(以下「引用発明」という。) なお,摘記(1-ア)の請求項1では「チャネル位置」,請求項3では「チャネル」と記載されているが,これらは同じものを特定しているものであるから「チャネル」と表記を統一している。 4 対比・判断 (1)対比 補正発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「コンピュータ断層撮影(CT)システム」は,補正発明の「CTシステム」及び「コンピュータ断層撮影装置」に相当するものである。 イ 引用発明の「相異なる位置を有し且つ複数の行を成すように配置された複数の検出器素子」は,「行」が摘記(1-ウ)から補正発明の「列」に相当するものであるから,補正発明の「少なくとも2つの検出器列」に相当する。 ウ 引用発明の「スキャンを実行」して「投影データを取得する」ことは,補正発明の「投影データを取得」することに相当する。 エ 画像処理分野において一般的に平滑化フィルタ処理とは重み付け加算によるフィルタ処理のことであり,本願明細書において「平滑化フィルタリング」(【0028】)と記載され,引用例の摘記(1-オ)で「重み係数」と記載されていることから,引用発明における「平滑化フィルタ」と補正発明における「重み付け加算によるフィルタリング」とは技術的に同等なものであるといえる。 また,引用発明においては「z」平滑化フィルタと記載されているが,これは「スキャン軸」が「z」である「平滑化フィルタ」のことであり,一方,本願明細書に「本発明の目的は、アーチファクトの抑制及び画質改善を、z軸解像度の低下防止とともに実現することにある。」(【0010】),「回転リング102の回転軸と略平行な方向に沿って複数器並列されてなり、また半導体X線検出器であれば、コーンビームの頂点を中心として円弧状に複数のX線検出素子が配列され、さらにこのX線検出素子列が回転リング102の回転軸と略平行な方向に沿って複数並列されている。」(【0011】),「zフィルタの係数」(【0024】)及び図1の記載から,補正発明の「重み付け加算によるフィルタリング」もスキャン軸をzとするものである。 してみれば,引用発明の「前記データにz平滑化フィルタを適用」することは,補正発明の「投影データ」に「重み付け加算によるフィルタリングを」することに相当する。 オ 補正発明の「同一ビュー内の投影データを対象として前記検出器列の列方向に関してチャンネルに依存して変化する重み」について検討するに,本願明細書で「ビュー」との記載があるのは,「つまり、重みは、ビュー及び列とともに、チャンネル方向に関しても依存して変化する。」(【0017】)及び「従って重みはビュー、列、及びチャンネルに依存する。」(【0020】)(下線は当審において付与した)のみである。そして,それらを用いた関数として本願明細書の【0023】?【0024】に, 「 式(1)において、p_(in)は投影データであり、vは投影角度βに対応する投影数指数を表わし、chは光線角度γに対応する検出器チャネル指数であり、rowは円錐角度αに対応する検出器列指数であり、W_(Gn)はzフィルタの係数であり、2K-1はカーネルのサイズを表わす。」との記載があることから,上記(1)式における変数v,row,chがビュー(view)、列(row)、チャンネル(channel)に相当するものであると想定される。 一方,引用発明の上記【数1】において「γはチャネルであり、gはDASゲインであり、β(ビュー)はX線投影角度であり、kは検出器の行番号」であり,ここで「検出器の行」は上記イのとおり「検出器の列」に相当するから,引用発明の【数1】における「γ」,「β(ビュー)」,「k」は,それぞれ順に本願明細書の上記式(1)の「ch」、「v」,「row」に対応するものである。そして,引用発明では「前記データにz平滑化フィルタを適用し、前記データに適用される平滑化の量を、チャネル、X線投影角度、DASゲインおよび検出器行番号の内の少なくとも1つの関数として変化させる」ものであるから,「チャネル、X線投影角度、DASゲインおよび検出器行番号」のうち,チャネル(ch),DASゲイン,検出器行番号(row)を関数として変化させ,X線投影角度(v)を一定にする態様を含むものである。本願明細書の上記式(1)においてvを一定にするということは,補正発明の「同一ビュー内の投影データを対象」することに他ならない。 さらに,上記引用発明の【数1】において「sは平滑化フィルタ」であることは,上記エで指摘したとおり,補正発明の「重み付け加算によるフィルタリング」の「重み」に相当し,引用発明の【数1】においてのチャネル(γ)及び検出器行番号(k)を関数として変化させるs(γ,β,k,g)は,補正発明の「検出器列の列方向に関してチャンネルに依存して変化する重み」を含むものである。これは,摘記(1-カ)に「上記のフィルタは、チャネルおよびDASゲインに依存する。」「チャネル依存のz平滑化フィルタ」と記載されていることらも明らかである。 してみれば,引用発明の「前記投影データにz平滑化フィルタを適用し、前記投影データに適用される平滑化の量を、チャネル位置、X線投影角度、DASゲインおよび検出器行番号の内の少なくとも1つの関数として変化させるステップ」で「前記データにz平滑化フィルタを適用する前記ステップが、次式に従って実行される方法。 【数1】 上式において、Pは初期投影であり、P’は処理後の投影であり、sは平滑化フィルタであり、γはチャネルであり、gはDASゲインであり、β(ビュー)はX線投影角度であり、kは検出器の行番号である」ことと,補正発明の「前記投影データのうち同一ビュー内の投影データを対象として前記検出器列の列方向に関してチャンネルに依存して変化する重みであって、前記検出器列の列方向に対称になる重みを用いて重み付け加算によるフィルタリングを」することとは,「前記投影データのうち同一ビュー内の投影データを対象として前記検出器列の列方向に関してチャンネルに依存して変化する重みを用いて重み付け加算によるフィルタリングを」することにおいて共通するものである。 カ 引用発明で「画像をコンピュータにより再構成する」ことは,「前記投影データにz平滑化フィルタを適用し」たデータから画像をコンピュータにより再構成するものであり,そのコンピュータは引用発明の「コンピュータ断層撮影(CT)システム」あるものである。 してみれば,引用発明の「前記データにz平滑化フィルタを適用し」「画像を再構成するための方法」は,補正発明の「前記フィルタリング済みデータから画像データを再構成するコンピュータによるコンピュータ断層撮影装置における画像データの生成方法」に相当する。 してみれば,補正発明と引用発明とは, (一致点) 「CTシステムにおける少なくとも2つの検出器列から投影データを取得し, 前記投影データのうち同一ビュー内の投影データを対象として前記検出器列の列方向に関してチャンネルに依存して変化する重みを用いて重み付け加算によるフィルタリングをし, 前記フィルタリング済みデータから画像データを再構成するコンピュータによるコンピュータ断層撮影装置における画像データの生成方法。」 の点で一致し,以下の点で相違する。 (相違点) 重み付け加算によるフィルタリングをする際の重みについて,補正発明では「検出器列の列方向に対称になる重み」であると特定されているのに対し,引用発明では,そのような重みであるかどうか不明である点。 (2)当審の判断 上記相違点について検討するに,Z軸方向(スライス方向とも称し,補正発明の「検出器列の列方向」に相当)に複数の検出器を有するX線CT装置において,投影データを重み付け加算によるフィルタリング処理して画像データに再構成する際に,Z軸方向すなわち検出器列の列方向に対称になる重みを用いて行うことは,例えば,平成23年9月20日付けの拒絶理由及び平成25年7月25日付けの補正却下の決定で提示した特開平10-21372号公報の図8?18及び28,その他にも,特開2000-262510号公報の図25,特開平10-248837号公報の図5にも記載されているように,本出願優先日前に周知のことである。 一方,引用例の摘記(1-オ)には「ノイズの挙動は位置に依存し、したがって、チャネルに依存し且つDASゲインに依存する。ファンビーム再構成に対する重み係数は1/R^(2)であるため、アイソセンタの位置でのノイズは概ね等しいが、ノイズはアイソセンタまでの距離の関数として増加する。再構成画像内のノイズは、概ねそのチャネルのRMS(root mean square)加重平均となる。したがって、アイソチャネル(isochannel)から離れるに従ってノイズ抑制が増加するような平滑化関数により、ノイズ抑制を増加させる。」と記載されている。ここで,アイソチャネルとは摘記(1-カ)のとおり「スキャナのアイソセンタを通過するX線を検出する検出器チャネルであるアイソチャネル」であり,アイソチャネルは引用発明における「各検出器素子が対応する検出器チャネルを有している」「相異なる位置を有し且つ複数の行を成すように配置された複数の検出器素子」の中央にあるものであるから,各検出素子の重み(係数)は,引用発明において「相異なる位置を有し且つ複数の行を成すように配置された複数の検出器素子」の中央にあるものからの距離が同じであれば同等なものとなることが示されているといえる。 してれみれば,引用例には,「相異なる位置を有し且つ複数の行を成すように配置された複数の検出器素子」の中央にあるものからの距離が同じ検出器素子は同じ重みを用いることが示されているのであるから,上記周知技術に鑑みて「検出器列の列方向に対称になる重み」を用いて重み付け加算によるフィルタリング処理を行うことに十分動機付けがあり,当業者が容易になし得たことであるといわざるを得ない。 そして,本願明細書に効果として記載されている, 「【発明の効果】 【0012】 本発明によれば、アーチファクトの抑制及び画質改善を、z軸解像度の低下防止とともに実現することができる。」との効果は,引用例の摘記(1-キ)の記載及び周知技術から格別顕著なものは認められない。 なお,請求人は,審判請求書の請求の理由において「本願発明では重みを列方向に関して対称とすることによりレイがスライス面と交差しない状況の影響を抑えるために焦点-交差画素との距離Lをクリッピングしているためであり、検出器の上下どちらか片側のデータは注目画像の再構成には使われないので問題はなく、このクリッピングは使う列が検出器中心列に近づいてきたときスムージング効果もあるとの効果を奏しますが、引用文献1にはそのような効果を奏すること、またそのような記載もなく、従いまして当該効果は引用文献1では達成できないいわゆる有利な効果として進歩性を肯定するものとして参酌されるべきと考えます。」と主張しているが,このようなスムージング効果,すなわち,平滑化の効果は,重みを列方向に関して対称とすることにより付随的に生じるものといえ,重みを列方向に関して対称とすること自体は上記のとおり周知であるのだから,引用発明に上記周知技術を適用した際にも付随して達成されるもので,格別顕著なものとは判断できない。 したがって,補正発明は,引用発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5 まとめ 以上のとおり,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?17に係る発明は,平成23年11月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。 「【請求項1】 CTシステムにおける少なくとも2つの検出器列から投影データを取得し、 前記投影データのうち同一ビュー内の投影データを対象として前記検出器列の列方向に関してチャンネルに依存して変化する重みを用いて重み付け加算によるフィルタリングをし、 前記フィルタリング済みデータから画像データを再構成するコンピュータによるコンピュータ断層撮影装置における画像データの生成方法。」 2 引用刊行物及びその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である上記引用例の記載事項は,上記第2の3の「引用刊行物及びその記載事項」に記載したとおりである。 3 対比・判断 上記第2の2の「補正事項について」に記載したとおり,補正発明は,本願発明にさらに限定事項を追加したものであるから,本願発明は,補正発明から限定事項を省いた発明といえる。その補正発明が,前記第2の4「対比・判断」に記載したとおり,引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである以上,本願発明も同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものである 第4 むすび 以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり,審決する。 |
審理終結日 | 2014-12-05 |
結審通知日 | 2014-12-09 |
審決日 | 2014-12-24 |
出願番号 | 特願2005-99446(P2005-99446) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 原 俊文 |
特許庁審判長 |
神 悦彦 |
特許庁審判官 |
三崎 仁 信田 昌男 |
発明の名称 | コンピュータ断層撮影装置における画像データの生成方法、X線CT装置及びX線コンピュータ断層撮影装置 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 峰 隆司 |