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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1297617
審判番号 不服2013-22575  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-19 
確定日 2015-02-12 
事件の表示 特願2008-255055「アルミラミネートチューブ容器」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月15日出願公開、特開2010- 83550〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、平成20年9月30日の出願であって、平成25年8月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年11月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において平成26年7月30日付けで拒絶の理由を通知したところ、請求人は、平成26年10月2日に意見書及び手続補正書を提出した。


第2.平成26年7月30日付け拒絶理由の概要
当審において平成26年7月30日付けで通知した拒絶理由の概要は以下のとおりである。

理由1.平成25年11月19日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

本願に対してなされた上記手続補正は、請求項1及び段落[0012]についての「前記バリアシート片の外周端面における内面樹脂層の層厚を、20?60ミクロンからなる前記アルミ箔層の層厚よりも厚い50?500ミクロンの範囲に設定し」(下線は当審にて付与。)なる補正事項を含んでいる。
これに関し、本願の出願当初の明細書では、前記バリアシート片の外周端面や内周端面における内面樹脂層の層厚を、前記アルミ箔層の層厚よりも厚く設定することは何ら記載されていない。
一方、上記補正事項に関し、[図2]等の図面には、アルミ箔層7の厚みよりも、バリアシート片の外周端面における内面樹脂層9の厚みの方が厚くなっている様子が記載されているが、バリアシート片の内周端面における内面樹脂層9の厚みがアルミ箔層7の厚みよりも厚くなっている様子は記載されていない。
また、何らかの作用効果が奏される等の技術的な意味を有することを狙って、バリアシート片の外周端面や内周端面における内面樹脂層9の層厚を、前記アルミ箔層の層厚よりも厚く設定するという技術的な思想は、[図2]等の図面のみから把握することはできないし、本願の明細書に記載された事項を併せ考慮したとしても、把握することができない。
したがって、上記補正事項は、本願の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面には記載されていなかった、新たな技術的事項(以下、「新規事項」という。)を導入しようとするものである。

理由2.本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1,2
・刊行物 1.特開平6-179462号公報
2.特開平5-200874号公報
・備考
本願の請求項1,2に係る発明は、理由1.で言及したように、新規事項を含むものであるが、以下、更に検討する。
本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)及び刊行物2に記載された技術ならびに周知技術に基づき、当業者が容易に発明し得たものである。
また、本願の請求項2に係る発明についても、引用発明において、内周端面における内面樹脂層(被覆樹脂膜13)の層厚を、アルミ箔層(アルミ薄板12)の層厚よりも厚くすることは、上述してきたことと同様の理由により、当業者が適宜なし得たことというべきである。
(審決注)
引用発明:
「笠状の肩部2の上端開口部から短円筒状の口筒部3を立設した部材に、アルミラミネートシート製の胴部20の上端を溶着固定したチューブ容器において、前記部材を、前記肩部2の内表面を形成するアルミラミネートシート製のリング状をしたアルミ芯材6と、該アルミ芯材6を溶着固定する頭部樹脂5とで構成し、前記アルミ芯材6を、厚みが120μm程度のアルミ薄板12の両面に接着層14を介して被覆樹脂膜13を積層したものとし、前記被覆樹脂膜13をポリエチレン樹脂製とすると共に、前記アルミ芯材6の外周端縁を前記肩部2に位置する胴部形成用アルミラミネートシート21に近接させた状態で前記被覆樹脂膜層13と前記頭部樹脂5との間を溶着したチューブ容器。」の発明
刊行物2に記載された技術:
「バリヤ層11の両表面に設けられる層6,9の材質を、環状カバー8の材質と同じくPE(ポリエチレン)とするとともに、前記層6,9の各々の厚みを0.38mmとし、ヘッド部の接続構造を改善する技術」
周知技術:
樹脂部材同士を溶着により固定する場合に、溶着される部分の強度は、溶着される面の面積(シート状部材の端面同を溶着する場合には、その厚み)が大きいほど強くなること


第3.平成26年10月2日になされた手続補正について
平成26年10月2日になされた手続補正(以下、「本件補正」という。)に関し、上記第2.理由1(新規事項の追加)について検討する。
本件補正は、請求項1及び段落[0012]についての「前記バリアシート片を、外面樹脂層とアルミ箔層と前記ヘッド樹脂と相溶性を有する内面樹脂層とを順に積層することにより構成し、前記バリアシート片の外周端面と前記ヘッド樹脂との接合部のうち最も内側に位置する前記内面樹脂層の外周端面の層厚を最も厚く形成し」(下線は当審にて付与。)なる補正事項を含んでいる。
これに関し、本願の出願当初の明細書には、以下の記載がある。
1.[0019]及び[0025]
「バリアシート片の外周端面における内面樹脂層の層厚を、50?500ミクロンに設定したものにあっては、バリアシート片の外周端面における内面樹脂層とヘッド樹脂との接合面積が、従来と比べて充分に大きくなるので、その分、大きな溶着強度を得ることができる」
2.[0031]
「笠状への成形が平坦状に戻り変形しないように、アルミ箔層7の厚みを、20?60ミクロンと大きく設定して、塑性加工が可能であるようにする」
3.[0032]
「バリアシート片6の内面樹脂層9は、その外周端面における層厚が、50?500ミクロンと大きな値に設定されており、このように内面樹脂層9の外周端面の層厚を大きくすることにより、バリアシート片6の外周端面における内面樹脂層9とヘッド樹脂4の溶着面積が大きくなるようにしている」

これらの記載は、例えば、アルミ箔層7の層厚を60ミクロンとし、内面樹脂層の層厚を50ミクロンとすることを排除しておらず、また、本願の出願当初の明細書には、外面樹脂層の層厚の設定に関する記述や、内面樹脂層の層厚と他の層の層厚との関係に関する記述が一切なされていない。
以上を踏まえると、本願の出願当初の明細書には、バリアシート片の外周端面における内面樹脂層の層厚を最も厚く形成することは何ら記載されていないといわざるを得ない。
ゆえに、バリアシート片の外周端面における内面樹脂層の層厚を最も厚く形成するという、他の層厚との関係についての技術的な思想は、上記[019],[0025],[0031],[0032]等を含む本願の明細書に記載された事項からは、把握することができない。
請求人は、[図2]には、バリアシート片の外周端面における内面樹脂層9の厚みが最も厚くなっている様子が記載されている旨主張するが、バリアシート片の外周端面における内面樹脂層の層厚を最も厚く形成するという、他の層厚との関係についての技術的な思想は、[図2]から把握することはできない。
してみると、上記補正事項は、本願の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項(以下、「新規事項」という。)を導入しようとするものであるというべきである。
そして、この点は、上記第2.理由1として、既に指摘している。
したがって、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないとする拒絶理由を依然として解消していない。


第4.本願発明の進歩性について
本願の請求項1に係る発明は、上記第3.で言及したように新規事項を含むものであるが、仮に、新規事項を含まないとした上で、上記第2.理由2(進歩性)について予備的に検討する。

1.本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成26年10月2日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「笠状の肩部の上端開口部から短円筒状の口筒部を立設したヘッド部に、アルミラミネートシート製の胴部の上端を溶着固定したアルミラミネートチューブ容器において、
前記ヘッド部を、前記肩部の内表面を形成するアルミラミネートシート製のリング状をしたバリアシート片と、該バリアシート片を溶着固定するヘッド樹脂とで構成し、
前記バリアシート片を、外面樹脂層とアルミ箔層と前記ヘッド樹脂と相溶性を有する内面樹脂層とを順に積層することにより構成し、
前記バリアシート片の外周端面と前記ヘッド樹脂との接合部のうち最も内側に位置する前記内面樹脂層の外周端面の層厚を最も厚く形成し、
前記アルミ箔層が前記肩部に位置する胴部形成用アルミラミネートシート内のアルミシート層に近接する状態で前記接合部において溶着固定されていることを特徴とするアルミラミネートチューブ容器。」

2.引用刊行物
当審の拒絶の理由に引用した特開平6-179462号公報(以下、「刊行物1」という)には、「チューブ容器と頭部アルミ芯材の成形方法」の発明に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)【請求項1】
「 アルミラミネートシート(21)を巻回して成形された円筒状の胴部(20)と、該胴部(20)の上端部に溶着固定された笠状の肩部(2) の上端開口部に、短円筒状の口筒部(3) を立設した頭部(1) とから構成され、該頭部(1) を、笠状の肩部片(7) の上端開口部に短円筒状の口筒部片(8) を起立連設した、アルミラミネート薄板(11)からのプレス打ち抜き成形品であるアルミ芯材(6) と、該アルミ芯材(6) の外表面全域および端面を覆い、
前記胴部(20)に溶着する頭部樹脂(5) とから構成したチューブ容器。」
(2)【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は、アルミラミネートシートを使用したチューブ容器の構造と、このチューブ容器の頭部を構成する頭部アルミ芯材の成形方法に関するものである。」
(3)【0023】
「・・・図1は、本発明によるチューブ容器の頭部1部分付近の基本的構成を示すもので、外表面に被覆樹脂層24を被覆し、アルミ箔22の両面に樹脂皮膜23を積層したアルミラミネートシート21を巻回して円筒状に成形された胴部20の上端に、笠状の肩部2の上端開口部に、外周面に螺条を刻設すると共に、上端開口部内周に内鍔状の口鍔部4を周設した短円筒状の口筒部3を立設した頭部1を、その肩部2外周端で溶着固定して構成されている。」
(4)【0026】
「頭部樹脂5による頭部1と胴部20との強固で密な組付きは、図3に示すように、溶融状態にある頭部樹脂5が、胴部20のアルミラミネートシート21の上端面を覆った状態で、被覆樹脂層24およびアルミラミネートシート21の両被覆皮膜23に溶着して達成されるが、胴部20上端部に溶着する頭部樹脂5は、同時にアルミ芯材6の下端面を覆って、アルミ芯材6の両被覆樹脂膜13にも溶着し、もってアルミラミネートシート21のアルミ箔22およびアルミ芯材6のアルミ薄板12の端面を密に覆うことになる。」
(5)【0030】
「図7は、アルミ芯材6の成形手順の一例を示すもので、アルミ芯材6は、アルミ薄板12の両面に接着層14を介して、ポリエチレン等の被覆樹脂膜13を積層した平板状のアルミラミネート薄板11からプレス打ち抜き成形される。」
(6)図3には「アルミ芯材6の外周端縁を肩部2に位置する胴部形成用アルミラミネートシート21のアルミ箔22に近接させた状態」が記載されている。
ここで、上記(4)に摘記した「胴部20上端部に溶着する頭部樹脂5は、同時にアルミ芯材6の下端面を覆って、アルミ芯材6の両被覆樹脂膜13にも溶着し」との記載を踏まえると、上記(4)及び図3から、「アルミ芯材6の外周端縁を前記肩部2に位置する胴部形成用アルミラミネートシート21のアルミ箔22に近接させた状態で前記被覆樹脂膜層13と前記頭部樹脂5との間を溶着した」ことが把握できる。

以上を踏まえ、上記事項を、本願発明に照らして整理すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「笠状の肩部2の上端開口部から短円筒状の口筒部3を立設した頭部1に、アルミラミネートシート製の胴部20の上端を溶着固定したチューブ容器において、前記頭部1を、前記肩部2の内表面を形成するアルミラミネートシート製であって、笠状の肩部片7の上端開口部に短円筒状の口筒部片9を起立連設したアルミ芯材6と、該アルミ芯材6を溶着固定する頭部樹脂5とで構成し、前記アルミ芯材6を、アルミ薄板12の両面に接着層14を介して被覆樹脂膜13を積層したものとし、前記アルミ芯材6の外周端縁を前記肩部2に位置する胴部形成用アルミラミネートシート21のアルミ箔22に近接させた状態で前記被覆樹脂膜層13と前記頭部樹脂5との間を溶着したチューブ容器。」

同じく当審の拒絶の理由に引用した特開平5-200874号公報(以下、「刊行物2」という)には、「バリヤ効果を有するライニングを備えたプラスチックチューブヘッドおよび該ライニングに使用できる部材」の発明に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

(7)【特許請求の範囲】
「【請求項1】 ほぼ円錐台形の肩部の上にネックを載せて含むプラスチックチューブヘッドであって、該ヘッドが、該ネックの内部高さの少なくとも80%および該肩部のほぼ円錐台形の内部表面積の少なくとも50%を連続して被覆してバリヤ効果を有するライニングを備え、該ライニングが、該ヘッドの外部を構成する第一のプラスチック材料の環状カバーに完全に囲まれており、さらに該ライニングが多層ポリマー要素から成って、該要素の外部表面層を介して該環状カバーに固定され、該要素はまた、バリヤ効果を有し且つ全体の厚さが0.008?0.05mmである一つ以上のポリマー層並びに厚さが0.25?1.2mmのポリオレフィンまたはポリエステルから成る内部表面層を含むことを特徴とするチューブヘッド。
【請求項2】 第一のプラスチック材料が該ライニングの外部表面層のプラスチック材料と同種類であり、従って該表面層が、ヘッドの環状カバーに完全に連続して溶接されることを特徴とする請求項1に記載のチューブヘッド。
【請求項3】 内部表面層のプラスチック材料が第一のプラスチック材料と同種類であり、従って内部表面層の材料が、該ライニングの端面で環状カバーに完全に溶接されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のチューブヘッド。」
(8)【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は、バリヤ効果を有するライニングを備えた、第一のプラスチック材料でできたチューブヘッドおよび別に製造されるライニング自体に関する。」
(9)【0003】
「【発明が解決しようとする課題】本発明は、より良好なバリヤ効果を有し、好ましくはチューブヘッドの外部に対する接続が改善された連続したライニングの開発を目的とする。」
(10)【0023】
「- 驚くべきことに、バリヤ効果を有する多層材料をチューブヘッドに不浸透的に固定することができる。」
(11)【0025】
「- 接続部が不浸透的に溶接されているため、チューブヘッドの内部表面の品質を改善できる。」
(12)【0026】
「【実施例】
具体例1(図1)図1は、末端オリフィス3を有する直径10mmのネック2、および内部高さ5mmおよび内部底径25mmの円錐台形肩部4を有するチューブヘッド1を示す。ネックの内部を形成するチムニー5の高さは10mmであるが、本発明に係るバリヤ効果を有するライニング7の内部表面層6では低く、9mmである。」
(13)【0027】
「この表面層6、チューブ1の外部を構成する環状カバー8およびライニング7の外部表面層9は全てPEから成る。層9は、ヘッド成形後はカバー8と区別できないが、成形直前のその表面の位置を破線9′で図式的に示す。」
(14)【0028】
「この層9とEVOHから成るバリヤ層11とを結合する接着層10・・・ライニング7の上端面12および下端面13におけるカバー8と内部表面層6との間の接続部はPEで均一に溶接されており、・・・。バリヤ層11の底部は、ライニング7上と同時にその上にヘッド1が形成されるスカート部のバリヤ層14と非常に接近している(ここでは約0.6mm)ことが分かる。これは、末端リム24によりライニング7の円錐台形部分が伸びていることによる。・・・」

以上を踏まえ、上記事項を、本願発明に照らして整理すると、刊行物2には、以下の技術(以下、「引用技術」という。)が記載されている。

「円錐台形肩部4を有するチューブヘッド1に備えられるライニング7を、EVOHから成るバリヤ層11と、その両表面に設けられる層6,9とからなる多層構造とし、当該層6,9の材質を、チューブ1の外部を構成する環状カバー8の材質と同じくPE(ポリエチレン)とすることで、ヘッド部の接続構造を改善する技術」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「頭部1」、「頭部樹脂5」、「アルミ薄板12」、「アルミ箔22」は、各々、本願発明における「ヘッド部」、「ヘッド樹脂」、「アルミ箔層」、「アルミシート層」に相当する。
一方、本願発明における「アルミラミネートチューブ容器」は、「笠状の肩部の上端開口部から短円筒状の口筒部を立設したヘッド部に、アルミラミネートシート製の胴部の上端を溶着固定した」ものであり、引用発明における「チューブ容器」は「笠状の肩部2の上端開口部から短円筒状の口筒部3を立設した頭部1に、アルミラミネートシート製の胴部20の上端を溶着固定した」ものである。
ゆえに、引用発明における「チューブ容器」は、本願発明における「アルミラミネートチューブ容器」に相当する。
また、本願発明の「リング状をしたバリアシート片」における「リング状」なる語句について、本願明細書の[0004]ないし[0007]の記載から、従来技術の特開2002-225057号公報に記載されたインサート材3の形状(図1、図3、図4等を参照)、すなわち、笠状の部材の上端側に短円筒状の部材を起立連設したものの形状を「リング状」と呼称していることが明らかである。
ゆえに、引用発明における「笠状の肩部片7の上端開口部に短円筒状の口筒部片9を起立連設したアルミ芯材6」は、本願発明における「リング状をしたバリアシート片」に相当する。
そして、引用発明における「前記アルミ芯材6を、アルミ薄板12の両面に接着層14を介して被覆樹脂膜13を積層したものとし」は、本願発明において「内面樹脂層」が「ヘッド樹脂と相溶性を有する」と特定されていることを除けば、本願発明における「前記バリアシート片を、外面樹脂層とアルミ箔層と前記ヘッド樹脂と相溶性を有する内面樹脂層とを順に積層することにより構成し」に相当する。
してみれば、両者の一致点および相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「笠状の肩部の上端開口部から短円筒状の口筒部を立設したヘッド部に、アルミラミネートシート製の胴部の上端を溶着固定したアルミラミネートチューブ容器において、
前記ヘッド部を、前記肩部の内表面を形成するアルミラミネートシート製のリング状をしたバリアシート片と、該バリアシート片を溶着固定するヘッド樹脂とで構成し、
前記バリアシート片を、外面樹脂層とアルミ箔層と内面樹脂層とを順に積層することにより構成し、
前記アルミ箔層が前記肩部に位置する胴部形成用アルミラミネートシート内のアルミシート層に近接する状態で前記接合部において溶着固定されているアルミラミネートチューブ容器。」

<相違点>
本願発明では、内面樹脂層が「ヘッド樹脂と相溶性を有する」と特定されているとともに、「バリアシート片の外周端面と前記ヘッド樹脂との接合部のうち最も内側に位置する前記内面樹脂層の外周端面の層厚を最も厚く形成し」と特定されているのに対し、引用発明では、そのような特定がされていない点。

4.判断
相違点について検討する。
刊行物2には引用技術、すなわち、「円錐台形肩部4を有するチューブヘッド1に備えられるライニング7を、EVOHから成るバリヤ層11と、その両表面に設けられる層6,9とからなる多層構造とし、当該層6,9の材質を、チューブ1の外部を構成する環状カバー8の材質と同じくPE(ポリエチレン)とすることで、ヘッド部の接続構造を改善する技術」が記載されている。
ここで、引用技術における「円錐台形肩部4」、「チューブヘッド1」、「ライニング7」、「層6」,「層9」、「環状カバー8」は、各々、本願発明における「笠状の肩部」、「ヘッド部」、「バリアシート片」、「内面樹脂層」、「外面樹脂層」に相当し、引用技術における「バリヤ層11」は、その材質が異なることを除けば、本願発明における「アルミ箔層」に相当する。
一方、樹脂部材同士を溶着により固定する場合に、溶着される部分の強度は、溶着される面の面積(シート状部材の端面同士を溶着する場合には、その厚み)が大きいほど強くなること自体は、本願の出願前に当業者にとって周知の技術である。
してみると、上記引用技術に接した当業者であれば、上記周知技術を考慮し、引用発明において、容器内面側の被覆樹脂膜13(内面樹脂層)の材質を頭部樹脂5(ヘッド樹脂)と相溶性を有するものとした上で、アルミ芯材6(バリアシート片)の外周端面と頭部樹脂5との接合部の強度を高めるために、その接合部の面積、すなわち、アルミ芯材6におけるアルミ薄板12の両面に接着層14を介して設けられる被覆樹脂膜13の厚さを厚くすることに、容易に想到し得たというべきである。
そして、被覆樹脂膜13を厚くする具体的なやり方としては、アルミ薄板12の両面に設けられる被覆樹脂膜13の双方(内面樹脂層と外面樹脂層の双方)とも同じように厚くするか、容器内面側の被膜樹脂層13または容器外面側の被膜樹脂層13のどちらか一方(内面樹脂層または外面樹脂層のどちらか一方)が厚くなるようにするかの二者択一的な選択的事項であり、その何れを選択するかは当業者が適宜決定し得た程度のことに過ぎない。
さらに、本願発明の奏する作用効果は、引用発明、引用技術、周知技術が奏する作用効果から十分予測し得た範囲内のものであり、何ら格別なものではない。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用技術ならびに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ところで、請求人は、平成26年10月2日に提出された意見書のV.2.において、「刊行物2には、内部表面層6の外周端面の層厚を外部表面層9やEVOHバリヤ層11の層厚よりも厚くすること、すなわち発明特定事項4(バリアシート片の外周端面とヘッド樹脂との接合部のうち最も内側に位置する内面樹脂層の外周端面の層厚を最も厚く形成した)については一切記載されておらず、本願発明1では、上記発明特定事項4を有することにより、バリアシート片のアルミ箔層と、肩部に位置した胴部形成用アルミラミネートシートのアルミシート層との間に位置する肩部樹脂部の間隔を狭くすることが可能となり、その結果、本願当初明細書の段落[0024]、[0035]に記載されているように、肩部樹脂部からのガスの透過を極力抑えることができ、よりガスバリア性が高めることができる、際立って優れた効果を奏することになる」旨を主張している。
しかしながら、上記したとおり、引用発明において、被覆樹脂膜13を厚くする具体的なやり方としては、アルミ薄板12の両面に設けられる被覆樹脂膜13の双方(内面樹脂層と外面樹脂層の双方)とも同じように厚くするか、容器内面側の被膜樹脂層13または容器外面側の被膜樹脂層13のどちらか一方(内面樹脂層または外面樹脂層のどちらか一方)が厚くなるようにするかの二者択一的な選択的事項であり、本願当初明細書の段落[0024]、[0035]に記載されている効果は、容器内面側の被膜樹脂層13(内面樹脂層)を厚くすることを選択した結果として、当然に奏される効果に過ぎない。
したがって、上記主張は、上記相違点の判断を何ら左右するものではない。

5.小括
上記のとおり、本願発明は、依然として、引用発明及び引用技術ならびに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第5.むすび
以上のとおり、本願について平成26年10月2日になされた手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定される要件を満たしていないから、本願は拒絶すべきものである。
仮に、上記手続補正が、特許法第17条の2第3項に規定される要件を満たすとしても、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-02 
結審通知日 2014-12-09 
審決日 2014-12-25 
出願番号 特願2008-255055(P2008-255055)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
P 1 8・ 55- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤田 和英佐々木 正章  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 渡邊 真
渡邊 豊英
発明の名称 アルミラミネートチューブ容器  
代理人 渡辺 一豊  

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