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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1298038
審判番号 不服2013-18275  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-24 
確定日 2015-03-02 
事件の表示 特願2007-556409「CMP用のカスタマイズされた研磨パッド、ならびにその製造方法および使用」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月24日国際公開、WO2006/089293、平成20年12月18日国内公表、特表2008-546167〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成18年2月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2005年2月18日、米国、2005年2月18日、米国、2005年2月18日、米国、2005年5月2日、米国、2005年7月15日、米国、2005年10月14日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年10月12日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成24年2月17日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月30日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年11月29日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年5月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成26年1月15日付けで審判請求人に対し前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、これに対し、同年4月15日付けで回答書が提出された。

【2】平成25年9月24日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成25年9月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]
[1]補正後の本願発明
平成25年9月24日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、以下のように補正された。
「基板を研磨するための単一の鋳造または成形された研磨パッドを備える物品であって、前記パッドは、第一の硬さを有する第一のポリマーから構成される第一の領域と、前記第一のポリマーの前記第一の硬さとは異なる硬さを有する第二のポリマーから構成される第二の領域とを含み、前記第一の領域および前記第二の領域は、異なるポアサイズまたは異なるポア密度のうちの一方または両方の点でさらに異なり、前記第一の領域と前記第二の領域とは、前記第一の領域と前記第二の領域とを接続する共有結合を含む統一接触面において相互に接触する、物品。」

上記補正は、補正前の「第一のポリマーから構成されて第一の硬さを有する第一の領域」を「第一の硬さを有する第一のポリマーから構成される第一の領域」とし、また補正前の「第二のポリマーから構成されて異なる硬さを有する第二の領域」を「前記第一のポリマーの前記第一の硬さとは異なる硬さを有する第二のポリマーから構成される第二の領域」とするものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、また、補正前の本願の請求項1に係る発明の構成に「前記第一の領域と前記第二の領域とは、前記第一の領域と前記第二の領域とを接続する共有結合を含む統一接触面において相互に接触する」点を加えるものであり、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて、以下検討する。

[2]引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された、国際公開第2005/000529号明細書(以下「刊行物」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(括弧内には、当審訳として、刊行物のパテントファミリー文献(特表2006-526902号公報)を参照したものを付記する。)。

(ア)
「1. A functionally graded polishing pad for a CMP process comprising a polishing pad having a polishing surface for polishing a silicon-containing wafer and configured for use in a CMP procedure, wherein the polishing surface is one piece, substantially flat, and comprises at least two areas having differing physical characteristics.」(請求項1)
(CMPプロセスのための機能的に漸次的変化された研磨パッドであって、該研磨パッドは、研磨された表面を有する研磨パッドを備え、該研磨された表面は、シリコン含有ウエハを研磨するためのものであり、そしてCMPプロセスにおいて使用するために構成されており、該研磨表面は、1片であり、実質的に平坦であり、そして異なる物理的特性を有する少なくとも2つのエリアを備える、機能的に漸次的変化された研磨パッド。(【請求項1】参照))

(イ)
「3. The functionally graded polishing pad of claim 1 wherein the at least two areas each comprise a compositionally different polymeric material.」(請求項3)
(前記少なくとも2つのエリアが、各々、組成が異なるポリマー材料を含む、請求項1に記載の機能的に漸次的変化された研磨パッド。(【請求項3】参照))

(ウ)
「4. The functionally graded polishing pad of claim 3 wherein the at least two areas each comprise a different polymeric material having different physical parameters and wherein a region between the areas comprises mixtures of the compositionally different polymeric materials.」(請求項4)
(前記少なくとも2つのエリアが、各々、異なる物理的パラメータを有する異なるポリマー材料を含み、そして該エリアの間の領域が、前記組成が異なるポリマー材料の混合物を含む、請求項3に記載の機能的に漸次的変化された研磨パッド。(【請求項4】参照))

(エ)
「The shape of at least one of the at least two areas may be annular, an island., or of random shape. The at least two areas each comprise a different polymeric material having different physical parameters and the change in composition between the at least two areas may be a step change, a continuous change., or a combination. The pad may have an edge and a center and the edge comprises one area and the center comprises another area and the change in composition between the edge and the center may be continuous or step or another form.」([0018])
(この少なくとも2つのエリアの少なくとも一方の形状は、環状であってもよいし、島状の形状であってもよいし、任意の形状であってもよい。この少なくとも2つのエリアは、各々、異なる物理的パラメーターを有する異なるポリマー材料を含み、少なくとも2つのエリアの間での組成の変化は、段階的変化であってもよいし、連続的な変化であってもよいし、またはその組み合わせであってもよい。このパッドは、縁部および中心部を有し得、この縁部は、1つのエリアを備え、この中心部は、もう1つのエリアを備え、この縁部と中心部との間の組成の変化は、連続的であってもよいし、段階的であってもよいし、別の形態であってもよい。(【0018】参照))

(オ)
「Described below are polishing pads suitable for use in the CMP procedure for polishing silicon-containing wafers mentioned above. These pads having at least two areas on the polishing surface adjacent the polished silicon wafer, having differing material characteristics. The areas may be discrete and well-defined with clear borders. The areas may be of a type wherein the material characteristics vary over a distance. Our polishing pads comprise one or more polymeric materials that each may comprise one or more of the following: neat polymers having a specific molecular weight or molecular weight distribution, mixtures or alleys of one or more polymers, co-polymers of two or more species, and block co-polymers of two or more species. The polymeric composition may be filled with other polymeric or non- polymeric materials, e.g., polymeric fibers, natural fibers, particulate materials such as discrete "crumbs" of polymeric materials, etc.」([0030])
(以下に記載されるのは、上記のケイ素含有ウエハを研磨するためのCMP手順において使用するために適した研磨パッドである。研磨されるケイ素ウエハに隣接する研磨表面上に少なくとも2つのエリアを有するこれらのパッドは、異なる材料特性を有する。それらのエリアは、別々であってもよく、これらのよく規定された明確な境界を有していてもよい。これらのエリアは、その材料特性が距離を経るにつれて変動する型であり得る。本発明者らの研磨パッドは、1種以上のポリマー材料を含み得、その各々は、以下のうちの1種以上のポリマー材料を含み得る:特定の分子量または分子量分布を有するニートポリマー、1種以上のポリマーの混合物またはアロイ、2種以上のコポリマー、および2種以上のブロックコポリマー。ポリマー組成物は、他のポリマー材料または非ポリマー材料(例えば、ポリマー繊維、天然繊維、粒状材料(例えば、ポリマー材料の不連続「小片」(discrete crumb))で充填され得る。(【0021】参照))

(カ)
「Materials suitable for the described CMD polishing pads include a wide variety of polymers, including such diverse polymers as: polyurethane, polyurea, polycarbonate, the Nylons, various other polyesters, polysulfone, various polyacetals, and the like. These polymeric material and their chemically related brethren and may be used for the fabrication of the CMP pad. Other polymer chemistries may, of course, be used. Formulations of using these materials necessarily involve some understanding of the relationships between the structure of the polymeric material and the resulting physical properties. The processing characteristics of the various constituent and composite materials, e.g., inter polymer compatibility between various areas, reactivity, and viscosity.」([0032])
(上記のCMD研磨パッドに適した材料としては、広範な種々のポリマー(例えば、以下のような多様なポリマーが挙げられる:ポリウレタン、ポリウレア、ポリカーボネート、ナイロン、種々の他のポリマー、ポリスルホン、種々のポリアセタールなど)が挙げられる。これらのポリマー材料およびそれらの化学的に関連した同類は、CMPパッドの製造のために使用され得る。他のポリマー化学が、当然のことながら使用され得る。これらの材料を使用する処方物は、ポリマー材料の構造と、得られる物理的特性との間の関係のいくらかの理解を必ず伴う。この種々の構成要素および複合材料(例えば、種々のエリアの間のポリマー間適合性、反応性、および粘度)の加工特性。(【0023】参照))

(キ)
「An example of a procedure for synthesizing a two-area graded pad where two different polymeric compositions are used, one for each area, is this. As shown in Figure 4, a first outer annular ring of the pad is molded using an injection molding process. The completed outer ring is then placed in a second mold and the center of the pad ring is then filled with a second polymeric material. Said again: in the first and second molding steps, two different materials are used so that in the resulting pad which has two distinct regions or areas of different (mechanical and physical) properties. Proper bonding at the interface between the two materials may require selection of materials that are compatible with each other. Such information is readily available in the open literature. Interfacial compatibility between two polymers is usually good.」([0040])
(2つの異なるポリマー組成物(各エリアに対して1つ)が使用される、2エリアの漸次的変化されたパッドを合成するための手順の1つの例が、これである。図4に示されるように、このパッドの第一の外側環状リングが、射出成型プロセスを使用して成型される。次いで、この完成した外側リングは、第二の鋳型に入れられ、次いで、このパッドリングの中心部が、第二のポリマー材料で満たされる。繰り返せば、第一の成型工程および第二の成型工程において、2つの異なる材料が、得られるパッドにおいて、異なる(機械的および物理的)特性の有する2つの異なる領域またはエリアを有するように、使用される。これらの2つの材料の間の界面における適切な結合は、互いに適合性である材料の選択を必要とし得る。このような情報は、公開された文献において、容易に利用可能である。2つのポリマーの間の境界面適合性は、通常、良好である。(【0031】参照))

(ク)
「A block copolymer system may be used to produce a graded pad. Figure 8 shows a phase diagram portraying, in a functional way, the relationship between the block copolymer composition (as the relative % constituents) and the crystal structure (BCC, HCP, etc.) of the final product. To attain a gradation in properties, the composition of the block copolymer is gradually. Hence, in a controlled fashion, the difference in geometry is achieved in the block copolymer by spatial variance. Because the geometry and the % of (A or B) is changing spatially, as well as the fact that A and B are different units - the variance provides a gradation in physical properties such as hardness, modulus, porosity (by solution removal of A or B), roughness, and asperity」([0046])
(ブロックコポリマー系が、漸次的変化されたパッドを製造するために使用され得る。図8は、最終生成物のブロックコポリマー組成(相対%の成分として)と結晶構造(BCC、HCPなど)との間の関係を、機能的な様式で表現する、相図を示す。特性の段階的変化を達成するために、このブロックコポリマーの組成は、段階的である。従って、制御された様式で、幾何学的形状の差は、空間的分散によって、このブロックコポリマーにおいて達成される。幾何学的形状および(AまたはB)の%は、空間的に変化するので、そしてAとBとが異なる単位であるという事実に起因して、この分散は、物理的特性(例えば、硬度、モジュラス、多孔性(AまたはBの溶媒除去による)、粗さ、およびざらつき)の段階的変化を提供する。(【0037】参照))

(ケ)
「Specifically, hardness gradations may be achieved by varying the concentration of the molecular units of the block copolymer over distance since the two molecular units A and B used to make the pad will be of different hardness values. Furthermore, the variation in crystal structure produced as a result of the compositional relationship shown in Figure 9 creates additional and controllable variations in physical parameters.」([0047])
(具体的には、硬度の段階的変化は、このブロックコポリマーの分子単位の濃度を、距離にわたって変化させることによって、達成され得る。なぜなら、このパッドを作製するために使用される2つの分子単位AおよびBは、異なる硬度値のものであるからである。さらに、図9に示される組成の関係の結果として生じる結晶構造の変化は、物理的パラメータにおけるさらなる制御可能なバリエーションを生じさせる。(【0038】参照))

(コ)
「A method to produce a graded pad having included microporosity would be to include a gas during the injection molding step to achieve functional grading of porosity in the polymer polishing pad. Gas may be dispersed into and injected into the mold from different ports with different flow rates in order to attain grading. The resulting pad will contain differing amounts of included gas at differing points and achieve a difference in hardness or density.」([0049])
(微小細孔性を有する漸次的変化されたパッドを製造するための方法は、射出成型工程の間に気体を含み、ポリマー研磨パッドにおける多孔性の機能的漸次的変化を達成する。気体は、漸次的変化を達成する目的で、異なるポートから、異なる流量で、鋳型内に分散され得、そして鋳型内に注入され得る。得られるパッドは、異なる点において異なる量の混在気体を含み、そして硬度または密度の差を達成する。(【0040】参照))

(サ)
「Particular polymeric systems (e.g., polyurethanes) are amenable to molding steps using the RIM techniques. In this molding process, instead of injecting previously synthesized polymers, the constituent monomeric materials and appropriate crosslinking agents (e.g., glycerol) as well as the initiating agents and chain extenders are added and the resulting mixture is polymerized while molding. To make a graded pad, multiple ports are used to inject two or more types of monomeric units (and corresponding chain extenders) to achieve gradation in chemical structure. Gradation in chemical structure will result in gradation of the mechanical and physical properties.」([0050])
(特定のポリマー系(例えば、ポリウレタン)は、RIM技術を使用する成型工程に適合する。この成型プロセスにおいて、予め合成されたポリマーを射出する代わりに、成分のモノマー材料および適切な架橋剤(例えば、グリセロール)、ならびに開始剤および鎖長延長剤が添加され、そして得られる混合物が、成型の間に、重合する。漸次的変化されたパッドを作製するために、複数のポートを使用して、2つ以上の型のモノマー単位(および対応する鎖長延長剤)を射出し、化学構造の段階的変化を達成する。化学構造の段階的変化は、機械的特性および物理的特性の段階的変化を生じる。(【0041】参照))

(シ)
「The goal of using a graded pad for a CMP process is to allow different regions of the wafer being polished to be exposed to different chosen regions of the polymer pad in a selected manner. For example: it may be beneficial for the outer perimeter of the wafer to be exposed to the softer regions of the pad where the frictional shear force is higher than the harder regions of the pad; in comparison it may be beneficial for the inner regions of the wafer to be exposed to the harder regions of the pad to achieve a higher planarization length. Since both the wafer and the pad are in motion (rotation, oscillation) during any CMP process using these graded polymer pads in conjunction with residence time distribution models would achieve simultaneous local and global planarization. The material removal rate, defectivity, erosion, and dishing of the wafer and the effective planarization length of a CMP process depends upon the local tribology [hardness, compliances] and physical properties [pore size & density, asperities] of the pad material. Our functionally graded polishing pads permit choice of the local and global physical pad parameters allowing improvement of these CMP shortcomings.」([0055])
(CMPプロセスのための漸次的変化されたパッドを使用することの目的は、研磨されるウエハの異なる領域が、選択された様式で、ポリマーパッドの選択された異なる領域に曝露されることを可能にすることである。例えば、このウエハの外側周囲が、このパッドのよりやわらかい領域(ここでは、摩擦せん断力が、このパッドのより硬い領域より高い)に曝露されることが、有利であり得る。対照的に、このウエハの内側領域が、このパッドのより硬い領域に曝露されて、より高い平坦化長さを達成することが有利であり得る。これらの漸次的変化されたポリマーパッドを使用する任意のCMPプロセスの間、ウエハとパッドとの両方が動いている(回転、振動)ので、滞留時間分布モデルと組み合わせると、局所的平坦化と全体的平坦化とを同時に達成する。このウエハの材料除去速度、欠損性、侵食、および碗状変形、ならびにCMPプロセスの有効平坦化長さは、パッド材料の局所トライボロジー[硬度、コンプライアンス]および物理的特性[細孔サイズおよび密度、ざらつき]に依存する。本発明者らの、機能的に漸次的変化された研磨パッドは、これらのCMPの欠点の改良を可能にする、局所的な物理的パッドパラメータおよび全体的な物理的パッドパラメータの選択を可能にする。(【0046】参照))

(ス)
上記記載事項(キ)を参照すると、2つの異なるポリマー組成物からなるパッドであって、パッドの第一の外側環状リングが、射出成型プロセスを使用して成型され、次いで、完成した外側リングを第二の鋳型に入れ、パッドリングの中心部に第二のポリマー材料を満たすことにより、パッド全体が成型され、2つのエリアは界面において適切に結合してパッドが一体化したものが記載されている。そして、これらの工程から得られた一体化した研磨パッドは、単一のものであるということができる。してみると、刊行物に記載の研磨パッドは、第1のエリアと第2のエリアからなる単一の鋳造、成型されたパッドであり、第1のエリアと第2のエリアとは界面において相互に適切に結合されたものであるということができる。

(セ)
上記記載事項(キ)?(シ)を参照すると、パッドの2つのエリアは異なるポリマー材料からなり、それぞれ異なる物理的特性(硬度、細孔のサイズ、密度など)を有しているものが記載されている。してみると、刊行物に記載の研磨パッドは、第1のポリマーから構成される第1のエリアと、第2のポリマーから構成される第2のエリアとを含み、前記第1のエリアおよび前記第2のエリアは、異なる硬度、異なるポアサイズまたは異なるポア密度を有しているものであるということができる。

上記記載事項(ア)?(シ)、上記認定事項(ス)?(セ)及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、上記刊行物には、以下の発明が記載されていると認められる。

「シリコン含有ウエハを研磨するための単一の鋳造、成型された研磨パッドを備える物品であって、前記パッドは、第1のポリマーから構成される第1のエリアと、第2のポリマーから構成される第2のエリアとを含み、前記第1のエリアおよび前記第2のエリアは、異なる硬度、異なる細孔サイズまたは異なる細孔密度を有しており、前記第1のエリアと前記第2のエリアとは界面において相互に適切に結合されたものである、物品。」(以下「引用発明」という。)

[3]対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、その機能及び作用からみて、引用発明の「シリコン含有ウエハ」、「鋳造、成型された」、「第1のポリマー」、「第2のポリマー」、「第1のエリア」、「第2のエリア」、「細孔サイズ」、「細孔密度」、「界面」は、それぞれ、本願補正発明の「基板」、「鋳造または成形された」、「第一のポリマー」、「第二のポリマー」、「第一の領域」、「第二の領域」、「ポアサイズ」、「ポア密度」、「統一接触面」に相当する。
また、引用発明の「第1のポリマーから構成される第1のエリアと、第2のポリマーから構成される第2のエリアとを含み、前記第1のエリアおよび前記第2のエリアは、異なる硬度、異なる細孔サイズまたは異なる細孔密度を有して」いる点と、本願補正発明の「第一の硬さを有する第一のポリマーから構成される第一の領域と、前記第一のポリマーの前記第一の硬さとは異なる硬さを有する第二のポリマーから構成される第二の領域とを含み、前記第一の領域および前記第二の領域は、異なるポアサイズまたは異なるポア密度のうちの一方または両方の点でさらに異な」る点とは、「第一のポリマーから構成される第一の領域と、第二のポリマーから構成される第二の領域とを含み、前記第一の領域および前記第二の領域は、異なる硬度、異なるポアサイズまたは異なるポア密度を有して」いる点で共通している。
さらに、引用発明の「前記第1のエリアと前記第2のエリアとは界面において相互に適切に結合されたものである」点と、本願補正発明の「前記第一の領域と前記第二の領域とは、前記第一の領域と前記第二の領域とを接続する共有結合を含む統一接触面において相互に接触する」点とは、「前記第一の領域と前記第二の領域とは統一接触面において相互に適切に結合されたものである」点で共通している。

そうすると、両者は、
「基板を研磨するための単一の鋳造または成形された研磨パッドを備える物品であって、前記パッドは、第一のポリマーから構成される第一の領域と、第二のポリマーから構成される第二の領域とを含み、前記第一の領域および前記第二の領域は、異なる硬度、異なるポアサイズまたは異なるポア密度を有しており、前記第一の領域と前記第二の領域とは統一接触面において相互に適切に結合されたものである、物品。」
の点で一致し、次の点で相違している。

〈相違点1〉
第一の領域と第二の領域の物理的特性について、本願補正発明が第一の領域と第二の領域とで異なる硬さを有し、かつ異なるポアサイズまたは異なるポア密度のうちの一方または両方の点でさらに異なるものであるのに対し、引用発明ではその点が不明である点。

〈相違点2〉
第一の領域と第二の領域との統一接触面の結合の形態について、本願補正発明が共有結合を含むものであるのに対し、引用発明ではその点が不明である点。

[4]判断
(1)相違点1について
刊行物には、機能的に漸次的変化された研磨パッドが記載されており(上記記載事項(ア)参照)、少なくとも隣り合う2つの領域の間では、物理的特性の異なるものが存在している。また、刊行物には、パッドに「よりやわらかい領域」と「より硬い領域」を有しているものが記載されている(上記記載事項(サ)参照)。そして、隣り合う2つの領域の異なる物理的特性について、どのようなものを選択するかは、当業者が必要に応じて適宜選択し得るものであり、上記相違点1に係る構成のように、「第一の領域と第二の領域とで異なる硬さを有し、かつ異なるポアサイズまたは異なるポア密度のうちの一方または両方の点でさらに異なるもの」を選択することに格別の顕著性はない。
してみると、引用発明において、上記相違点1に係る構成を採用することは、当業者ならば必要に応じて適宜なし得るものであり、容易に想到し得るものである。

(2)相違点2について
一般に、異なるポリマーからなる材料の面を相互に接合するのに、共有結合を用いるのは従来周知である(必要であれば、特開2001-217554号公報、特開平7-283244号公報等参照)。
刊行物には、第1のエリア(第一の領域)と第2のエリア(第二の領域)とは界面(統一接触面)において相互に適切に結合されたものである点が記載されている(上記記載事項(キ)参照)。そして、相互に適切に結合するためには、必要に応じてより強固なものが望まれ、結合の形態として、共有結合を含むものを採用することは、従来周知の技術事項に基づいて、適宜なし得るものであり、格別の顕著性はない。
してみると、引用発明において、上記相違点2に係る構成を採用することは、従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。

(3)まとめ
そうすると、引用発明において、従来周知の技術事項に基づいて、本願補正発明の上記相違点1?2に係る構成とすることは当業者にとって容易に想到し得るものである。

そして、本願補正発明により得られる作用効果も、引用発明及び従来周知の技術事項から当業者であれば予測し得る範囲のものであって格別のものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

[5]むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

【3】本願発明について
[1]本願発明
平成25年9月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年11月29日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

(本願発明)
「基板を研磨するための単一の鋳造または成形された研磨パッドを備える物品であって、前記パッドは、第一のポリマーから構成されて第一の硬さを有する第一の領域と、第二のポリマーから構成されて異なる硬さを有する第二の領域とを含み、前記第一の領域および前記第二の領域は、異なるポアサイズまたは異なるポア密度のうちの一方または両方の点でさらに異なる、物品。」

[2]引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された上記刊行物の記載事項は、前記【2】[2]に記載したとおりである。

[3]対比・判断
本願発明は、本願補正発明の「第一の硬さを有する第一のポリマーから構成される第一の領域」を「第一のポリマーから構成されて第一の硬さを有する第一の領域」とし、「前記第一のポリマーの前記第一の硬さとは異なる硬さを有する第二のポリマーから構成される第二の領域」を「第二のポリマーから構成されて異なる硬さを有する第二の領域」とし、また、統合接触面に係る「前記第一の領域と前記第二の領域とは、前記第一の領域と前記第二の領域とを接続する共有結合を含む統一接触面において相互に接触する」との記載を削除するものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに構成要件を限定したものに相当する本願補正発明が、前記【2】[4]に記載したとおり、引用発明及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、また、相違点2に係る技術事項の検討が必要ないことから、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[4]むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-08 
結審通知日 2014-10-09 
審決日 2014-10-21 
出願番号 特願2007-556409(P2007-556409)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 八木 敬太  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 石川 好文
刈間 宏信
発明の名称 CMP用のカスタマイズされた研磨パッド、ならびにその製造方法および使用  
代理人 山本 健策  
代理人 山本 秀策  
代理人 森下 夏樹  
代理人 飯田 貴敏  
代理人 石川 大輔  

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