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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1298098
審判番号 不服2013-6237  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-05 
確定日 2015-03-05 
事件の表示 特願2011- 83639「インターベンショナルMRI用の磁気共鳴イメージング装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月 7日出願公開、特開2011-131097〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年6月4日を出願日とする特願2001-168809号の一部を新たな特許出願とした出願(優先権主張 平成12年6月5日、同年6月7日)であって、その出願日は、特許法第44条第2項の規定により平成13年6月4日とみなされるものである。
当該出願に対して、平成24年12月26日付けで拒絶の査定がなされ、同査定の謄本は平成25年1月8日に請求人に送達されたところ、これに対して、同年4月5日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、同請求と同時に手続補正書が提出された。
その後、平成26年6月2日付けで当審より拒絶の理由が通知され、同年8月1日に意見書及び手続補正書の提出がなされ、同月19日付けで当審よりさらに拒絶の理由(最後)が通知され、同年10月27日に意見書、補正書の提出がされたものである。

第2 平成26年10月27日提出の手続補正書による手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年10月27日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

1 本件補正の内容について
(1)上記第1の手続の経緯において摘示したように、当審からの平成26年8月19日付けの拒絶の理由の通知(以下、「本件拒絶理由通知」という。)は、同じく当審からの平成26年6月3日付けで通知した拒絶の理由に対応してなされた補正により通知しなければならなくなった拒絶の理由のみを通知するものであって、いわゆる最後の拒絶理由通知に該当するものである。
そして、本件補正は、その最後の拒絶理由通知において指定した意見書提出のための期間内にした補正であるから、本件補正は、特許法第17条の2第1項第3号に規定する期間内にする手続補正であるところ、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載はつぎのとおり補正された。(以下、本件補正後の請求項1に係る発明を「本件補正発明」という。)
「【請求項1】
被検体内に挿入するカテーテルの操作を伴うインターベンショナルMRIに用いられる磁気共鳴イメージング装置であって、
所定のパルスシーケンスに基づく磁場を前記被検体に印加することで得られるMR信号を用いてMRアンギオグラフィ像を撮像するイメージング手段と、
前記MRアンギオグラフィ像の撮像後、寝台に載置させた前記被検体の状態を保持したまま、前記MRアンギオグラフィ像における血管の走行方向に応じた曲線の経路となるように、前記カテーテルを挿入する場合の前記被検体内のターゲットの位置と、前記被検体の体表上の挿入開始位置とを結ぶ前記曲線の経路をガイドラインとして立案することで、前記カテーテルを挿入する操作の計画を操作前に立て、前記カテーテルの挿入開始位置を前記被検体上に出力する術前計画手段と
を備えていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。」(下線部は補正箇所を示す。)

(2)上記請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載の発明特定事項である「術前計画手段」について、「MRアンギオグラフィ増の撮像後、寝台に載置させた」「被検体の状態を保持したまま」で、「カテーテルを挿入する場合の前記被検体内のターゲットの位置と、前記被検体の体表上の挿入開始位置とを結ぶ前記曲線の経路をガイドラインとして立案することで、前記カテーテルを挿入する操作の計画を操作前に立て」るものに限定するとともに、「術前計画手段」が「カテーテルの挿入開始位置を前記被検体上に出力する」ものであるものに限定するものであるから、請求項1についての本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2 補正の適否についての検討
そこで、本件補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)において摘記したとおりのものである。

(2)引用例
ア 本願の最先の優先権主張日前に頒布され、本件拒絶理由通知において引用された刊行物である特開平11-120327号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えばX線CT装置や核磁気共鳴装置(MRI装置)等の撮影装置から得られた3次元ボリュームデータに基づいて管腔臓器等の内腔表示を行う画像診断システム等に設けて好適な画像処理装置に関し、特に複雑に絡み合った管腔臓器の所望の始点から目標とする臓器までの最短経路を探索して表示することにより、画像診断システムの操作性の向上等を図った画像処理装置に関する。」
(イ)「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の係る画像処理装置は、上述の課題を解決するために外部から供給される画像情報に基づいて、平行投影法を用いて対象物の3次元画像を作成する平行投影画像作成手段と、前記平行投影画像作成手段により作成された3次元画像上の任意の管状体を開始点として指定すると共に、その管状体が通づる目標物を終点として指定するための指定手段と、前記指定手段により指定された管状体から目標物に到達するまでの間に存在する各管状体の内管の中心点を検出すると共に、各管状体の各中心点同士を線で接続することにより、前記指定手段により指定された管状体から目標物に到達するまでの間の管状体の形に沿った複数の経路を検出する経路検出手段とを有する。また、これら各手段と共に、前記経路検出手段により検出された複数の経路のうち、最短の経路を検出する最短経路検出手段と、少なくとも、前記最短経路検出手段により検出された最短経路を、前記平行投影画像作成手段により作成された対象物の3次元画像に合成して表示する合成表示手段とを有する構成となっている。
【0009】このような画像処理装置は、経路検出手段が、前記指定手段により指定された管状体から目標物に到達するまでの間の管状体の形に沿った複数の経路を検出し、最短経路検出手段が、前記経路検出手段により検出された複数の経路のうち、最短の経路を検出する。そして、合成表示手段が、少なくとも前記最短経路検出手段により検出された最短経路を、平行投影画像作成手段により作成された対象物の3次元画像に合成して表示する。これにより、前記指定手段により指定された管状体から目標物に到達するまでの間の最短の経路を、前記対象物の3次元画像に合成して表示することができ、医師による手術計画の立案等に有効な情報を迅速に提供することができる。」
(ウ)「【0013】本発明に係る画像処理装置は、例えば画像診断システムに適用することができる。図1は、この実施の形態の画像診断システムの要部を示すブロック図であり、例えばX線CT装置やMRI装置等の撮影装置からの画像データ(ボリュームデータ)、或いはこれら撮影装置から光磁気ディスク等の記憶媒体に記録され再生された画像データに基づいて抽出された臓器表面の輪郭データが入力端子1を介して供給されるようになっている。
【0014】具体的には、この輪郭データは、図2に概念的に示すようにX線CT装置やMRI装置等の撮影装置から得られた複数の断層像に基づいて3次元画像を作成し、この3次元画像から対象臓器の画像を抽出し、この画像の輪郭を抽出することで作成され前記入力端子1に供給される。この入力端子1を介して供給された輪郭データは、中心線抽出部2、パースペクティブ画像作成部3、平行投影画像作成部7にそれぞれ供給される。
【0015】パースペクティブ画像作成部3は、この供給された輪郭データに基づいて、図3(b)に示すようないわゆる透視投影法による管腔臓器の内部の3次元画像である内腔画像を作成し、これを画像切り替え部9及び画像セーブ部11に供給する。また、平行投影画像作成部7は、前記輪郭データに基づいて、図3(a)に示すようないわゆる平行投影法による管腔臓器の外観を示す3次元画像である外形表示画像を作成し、これを探索経路合成部8及びこの探索経路合成部8を介して画像切り替え部9に供給する。画像切り替え部9は、この内腔画像及び外形表示画像のうち、操作者により指定された方の画像を選択し、これを画像表示モニタ10に表示供給する。これにより、図3(a)、(b)に示すような外形表示画像或いは内腔画像がモニタ表示されることとなる。
【0016】なお、この内腔画像或いは外形表示画像は、回転角度や視点位置を指定すると、これに対応して表示画像が変更表示されるようになっている。また、外形表示画像上で、例えばマウス装置を用いて任意の点をクリックすると、パースペクティブ画像作成部3が、このクリックした位置に対応する内腔画像を作成してモニタ表示するようになっている。」
(エ)「【0017】ここで、操作者は、目標臓器に通ずる複数の管腔臓器の任意の管腔臓器から該目標臓器までの最短経路を知りたい場合、図3(a)に示すように画像表示モニタ10上に外形表示画像を表示操作すると共に、始点終点指定部6を操作して所望の管腔臓器上の任意の点を開始点Sとして指定すると共に、目標臓器を終点として指定する。
【0018】この指定がなされると、中心線抽出部2は、まず、図4(a)に示すように前記開始点Sから、目標臓器の奥の方に向かって直線状に探索点を進める。次に、このように直線状に探索点を進めると内腔臓器の壁に衝突するため、図4(b)に示すようにこの衝突した内腔臓器の壁面からの放線ベクトルを算出し、この放線ベクトルに対して平行な面を作成(想定)する。これにより、臓器内腔の輪郭と前記平面とが交差する点が求まるため、内腔の輪郭からその平面の中心点を求める。次に、図4(c)に示すように、この中心点と前記開始点Sとを直線で結び、これを臓器内腔に沿った中心線とする。
【0019】なお、前記中心点は、放線ベクトルと平行な面の中心点を求めるのではなく、前記探索点が衝突した内腔臓器の壁面に当接する円を作成し、この円の中心を前記中心点として求めるようにしてもよい。
【0020】このような作業を順次繰り返して行い、各中心点同士を順次結ぶことにより、目標臓器に通ずる全ての管腔臓器に対応する探索ベクトルを求めることができるのであるが、図4(d)、(e)に示すように管腔臓器が分岐している場合がある。この場合、中心線抽出部2は、以下に説明する分岐処理を行う。
【0021】すなわち、この分岐部分において中心線を求めようとすると、探索ベクトル上に複数の内壁面が接点として現れる。このため、この場合は分岐処理として、全ての接点について放線ベクトルを算出して各中心点を求め、図4(f)に示すようにこの求めた全ての中心点が開始点Sと接続されるように探索ベクトルを形成する。これにより、図5(a)に示すように目標臓器に通ずる全ての管腔臓器に対応する探索ベクトルA?Cを求めることができる。中心線抽出部2は、このようにして各探索ベクトルA?Cを求めると、これらを示す探索ベクトルデータを図1に示す最短経路算出部4に供給する。
【0022】最短経路算出部4は、各探索ベクトルデータが供給されると、この各探索ベクトルデータに基づいて、抽出した内腔臓器の中心線に沿って、開始点Sから目標臓器までの長さ(距離)を検出するトラッキング処理を行う。そして、このトラッキング処理により開始点Sから目標臓器までの長さが検出された各探索ベクトルデータのうち、例えば図5(b)に示すように開始点Sから目標臓器までの長さが最短の探索ベクトルデータ(中心線の長さが一番小さくなる経路の探索ベクトルデータ)を検出し、この探索ベクトルデータを目標臓器までの最短経路を示す探索ベクトルデータ(最短経路データ)として探索経路合成部8に供給する。
【0023】探索経路合成部8には、この最短経路データの他に、平行投影画像作成部7からの外形表示画像が供給されている。探索経路合成部8は、この外形表示画像に、最短経路データをマッピング処理し、これを画像切り替え部9を介して画像表示モニタ10に供給する。これにより、図3(a)に示すように外形表示画像の対応する管腔臓器上に、操作者の指定した開始点Sから目標臓器に通ずる最短経路を示す矢印が表示されることとなる。 【0024】このように、当該実施の形態の画像診断システムは、操作者が、モニタ表示された外形表示画像上で所望の点を開始点として指定すると共に、所望の目標臓器を終点として指定することにより、中心線抽出部及び最短経路算出部が、開始点から目標臓器までの最短経路を探索し、この最短経路を示す矢印を外形表示画像に重ねて表示することができる。このため、医師等は、この最短経路を示す矢印を見ながら手術計画の立案等をすることができ、今後の医用に大きく貢献することができる。」
(オ)図3(a)には、開始点Sから目標臓器までの経路が曲線であって、その経路は、管腔臓器に沿って示されるものであることが見て取れる。
(カ)引用例1に記載された発明について
a 上記ア(イ)によれば、引用例1に記載の画像処理装置は、「指定手段により指定された管状体から目標物に到達するまでの間の最短の経路を、前記対象物の3次元画像に合成して表示することができ、医師による手術計画の立案等に有効な情報を迅速に提供することができる画像処理装置」であることが記載されている。
b 上記ア(ウ)によれば、引用例1に記載の画像処理装置は、「入力端子1」、「パースペクティブ画像作成部3」、「平行投影画像作成部7」、「画像切り替え部9」を備え、「入力端子1」には「X線CT装置やMRI装置等の撮影装置から得られた複数の断層像に基づいて作成された3次元画像から対象臓器の画像の輪郭を抽出することで作成された輪郭データが供給される」こと、「パースペクティブ画像作成部3」は、この供給された「輪郭データに基づいて管腔臓器の内部の3次元画像である内腔画像を作成する」こと、「平行投影画像作成部7」は、供給された「輪郭データに基づいて管腔臓器の外観を示す3次元画像である外形表示画像を作成すること、」、「画像切り替え部9」は、「内腔画像及び外形表示画像のうち、操作者により指定された方の画像を選択して画像表示モニタ10に表示供給する」ものであることが記載されている。
c 上記ア(エ)によれば、画像表示装置は、「中心線抽出部2」「最短経路算出部4」、「始点終点指定部6」、「探索経路合成部8」を備え、操作者が外形表示画像の表示をするよう操作するとともに、その外形表示画像において始点終点指定部6を操作して所望の管腔臓器上の任意の点を開始点S、目標臓器を終点として指定をすると、中心線抽出部2が、開始点Sから、目標臓器に通ずる全ての管腔臓器に対応する探索ベクトルを求め、最短経路算出部4は、開始点Sから目標臓器までの長さが検出された各探索ベクトルデータのうち、開始点Sから目標臓器までの長さが最短の探索ベクトルデータを検出し、探索経路合成部8は、外形表示画像に最短経路データをマッピング処理し、これを画像切り替え部9を介して画像表示モニタ10に供給することで、外形表示画像の対応する管腔臓器上に、操作者の指定した開始点Sから目標臓器に通ずる最短経路を示す矢印が表示される」ことが記載されている。
d してみると、引用例1には、
「入力端子1、パースペクティブ画像作成部3、平行投影画像作成部7、画像切り替え部9を備え、入力端子1にMRI装置の撮影装置から得られた複数の断層像に基づいて作成された3次元画像から対象臓器の画像の輪郭を抽出することで作成された輪郭データが供給され、パースペクティブ画像作成部3はこの供給された輪郭データに基づいて管腔臓器の内部の3次元画像である内腔画像を作成し、平行投影画像作成部7は、供給された輪郭データに基づいて管腔臓器の外観を示す3次元画像である外形表示画像を作成し、画像切り替え部9は、内腔画像及び外形表示画像のうち、操作者により指定された方の画像を選択して画像表示モニタ10に表示供給するように構成されており、画像表示装置は、さらに中心線抽出部2、最短経路算出部4、始点終点指定部6及び探索経路合成部8を備え、操作者が外形表示画像の表示をするよう操作するとともに、その外形表示画像において始点終点指定部6を操作して所望の管腔臓器上の任意の点を開始点S、目標臓器を終点として指定をすると、中心線抽出部2が、開始点Sから、目標臓器に通ずる全ての管腔臓器に対応する探索ベクトルを求め、最短経路算出部4は、開始点Sから目標臓器までの長さが検出された各探索ベクトルデータのうち、開始点Sから目標臓器までの長さが最短の探索ベクトルデータを検出し、探索経路合成部8は、外形表示画像に最短経路データをマッピング処理し、これを画像切り替え部9を介して画像表示モニタ10に供給することで、外形表示画像の対応する管腔臓器上に開始点Sから目標臓器に通ずる最短経路を示す矢印を管腔臓器に沿って表示するように構成された画像表示装置」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認めることができる。

イ 本願の最先の優先権主張日前に頒布され、本件拒絶理由通知において引用された刊行物であるStuart G. Silvermanほか,Interactive MR-guided Biopsy in an Open-Configuration MR Imaging System,Radiology,October 1995,p.175-181(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
「The open-configuration MR imaging system (GE Medical Systems, Milwaukee, Wis) consists of a 0.5-T superconducting magnet of an open configuration that allows access to the interventional field (16). The system was constructed with the major goal of guiding therapies. The most homogeneous part of the magnet is located in its center (12 ppm over 30 cm) within which images are generated. The image console and electronics of a conventional MR imager are integrated with a superconducting magnet with shielded gradient coils in separate but communicating cryostats that permit a 56-cm-wide zone of access to the patient at the midpoint of the magnet’s axis. As a result, imaging may be performed during the procedure without repositioning the patient. Because conventional radio-frequency body coils also limit patient access, specially designed flexible surface coils are used that operate as both radio-frequency transmitters and receivers. These coils are applied to the surface of the patient, over the anatomic region of interest (Fig 1). 」(175頁3欄4?29行)
(当審訳)「オープン配置のMR 画像処理システム(GEの医療システム、ミルウォーキー、 ウィスコンシン)は、インベンショナル空間へのアクセスを許容するオープン配置の0.5Tの超伝導磁石から構成されている。このシステムは、誘導治療を主要な目標として作られました。 磁石の最も均一な部分は、イメージが生成される磁石の中心(30センチ以上の12 ppm)に位置しています。 従来のMR画像形成装置の画像操作卓と電子回路は、磁石の軸の中間点において患者へのアクセスの幅56センチのゾーンを許す、別々にシールドされているが、クライオスタットと連結されている勾配コイルを備えた超伝導磁石と統合されている。結果として、画像形成が、患者を再配置することなく施療の間に行なわれるであろう。 従来の高周波体表コイルが、同じく患者のアクセスを制限することから、高周波送受信両方機能する特別に設計された柔軟な表面コイルが使われます。これらのコイルは、解剖学上の関心領域(図1)の上に、患者の表面に適用されます。」
ウ 本願の最先の優先権主張日前に頒布され、当審から平成26年6月3日付けで通知した拒絶理由通知において引用された刊行物である特開2000-70272号公報(以下、「引用例3」という。)にはつぎの事項が記載されている。
(ア)「【0001】【発明の属する技術分野】この発明は、被検体の体内から生検対象の組織を採取するために穿刺針を被検体へ差し込む際に用いられる生検用穿刺針の差し込み案内装置に係り、特に生検用穿刺針を安全で衛生的かつ容易に差し込めるようにするための技術に関する。」
(イ)「【0002】【従来の技術】癌検査などのために被検体の体内に生検用穿刺針(適宜「穿刺針」と略記)を差し込んで組織を採取するいわゆる生検が、医療機関で実施されている。従来の生検では、通常、超音波診断装置を用いて、表示モニタの画面に穿刺針の差し込み状況を映し出すことにより、穿刺針の差し込み状況をリアルタイムで観察しながら穿刺針を組織採取点へ正確に差し込むようにしている。ただ、超音波診断装置では描出し難い組織や骨の影になってしまう組織を採取する場合は、超音波診断装置で穿刺針の差し込み状況を観察することは無理となる。このような時には、X線CT撮影機構によって得られるCT断層画像が用いられる。
【0003】直接的には、X線CT撮影機構によって連続的にCT断層画像(CT透視撮影)を得て表示して穿刺針の差し込み状況をリアルタイムで観察しながら、穿刺針を組織採取点へ正確に差し込む方法が考えられる。しかし、CT透視撮影を利用する方式は、被検体および施術者がX線を浴び続けることになるから、なるべくなら避けたい。
【0004】そこで、図9や図10に示すように、X線管52が天板51の上の被検体Mのまわりを回りながらX線ビームを照射するのに伴って多チャンネル型X線検出器53から出力されるX線検出データに基づき、穿刺針の差し込み断面を示すCT断層画像を予め得ておき、このCT断層画像に従って、組織採取点の深さや穿刺針を差し込む方向を確認した後、アダプターを使って穿刺針を組織採取点へ正確に差し込む方式が好まれることになる。 【0005】図9の従来方式の場合、略半円リング状の機械式アダプター54が用いられる。機械式アダプター54には、半径方向に穿された針挿通孔54aがアダプター54の円周方向に沿って一定間隔で多数設けられているので、施術者は、予め確認しておいた穿刺針DTの差し込み方向と合致する針挿通孔54aを選び、穿刺針DTを選んだ針挿通孔54aを通して被検体Mの体内へ予め確認した深さに達するまで差し込む。
【0006】図10の従来方式の場合、略半円リング状の光学式アダプター55が用いられる。光学式アダプター55には、半径方向から半円リングの中心に向かってレーザ光線を出射する投光器55aがアダプター55の円周方向に沿って移動可能に設けられているので、施術者は、予め確認しておいた穿刺針DTの差し込み方向と合致するよう投光器55aを移動させた後、穿刺針DTを投光器55aから出射されるレーザ光線LGに沿わせるようにして被検体Mの体内へ予め確認した深さに達するまで差し込む。
【0007】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の図9および10に示す従来方式の場合、被検体および施術者がX線を浴び続けることが無い点では安全と言えるが、大掛かりなアダプター54,55を一々セットしてから、さらに針挿通孔54aの選定や投光器55aの移動など面倒な作業が必要であり、穿刺針DTの差し込みは容易ではないという問題がある。さらに、前者の図9の従来方式には、穿刺針DTが針挿通孔54aに接触するので、針挿通孔54aを常に清浄に保つ必要があり、衛生面で好ましくないという問題もある。
【0008】この発明は、上記の事情に鑑み、生検用穿刺針を安全で衛生的かつ容易に差し込むことのできる生検用穿刺針の差し込み案内装置を提供することを課題とする。」
(ウ)「【0019】そして、実施例の案内装置は、上述のCT撮影装置の構成により予め撮影されて表示モニタ17の画面に映し出された穿刺針の差し込み断面を示すCT断層画像上において、生検対象の組織採取点および生検用穿刺針の差し込み開始点とを画面入力で指定すれば、レーザ光線が自動的に穿刺針の差し込み方向を指し示してくれるという特徴的な構成を備えている。以下、この特徴的な構成を具体的に説明する。」
(エ)「すなわち、実施例装置には、出射光線であるレーザ光線の方向を生検用穿刺針の差し込み断面内において変化させる首振り移動が可能なようにして回転リング4に取り付けられてX線管2およびX線検出器3の回転と共に被検体Mのまわりを回転する投光器18を備えているとともに、画面入力手段としての操作卓10によって、生検用穿刺針の差し込み断面を示すCT断層画像上で被検体Mの体内の生検対象の組織採取点、および、体表の生検用穿刺針の差し込み開始点とを画面入力指定できる構成となっている。加えて、実施例装置は、操作卓10による画面入力で指定された組織採取点および差し込み開始点に基づき投光器18のレーザ光線の方向が穿刺針の差し込み方向と一致する投光器18の停止回転角度aおよび首振り角度bを算出する角度算出部19と、角度算出部19の算出角度に従って投光器18の停止回転角度aおよび首振り角度bを設定する角度設定部20とを備えている。
【0020】回転リング4に取り付けられた投光器18は、図2に示すように、回転リング4が回るのに伴ってX線管2やX線検出器3と同様に撮影中心Zを軸芯として被検体Mのまわりに回転する。従って、回転する投光器18の光源は撮影中心Zを中心とする円TOの上を常に移動することになる。投光部18の停止回転角度aの制御は、電動モータ5の回転量をフィードバック制御方式によって正確に行われる。電動モータ5の回転量の調整は撮像系回転駆動部8のコントロールにより行われる。投光器18が角度算出部19で算出された停止回転角度aで正確に止まるように角度設定部20から撮像系回転駆動部8へ指令信号が送られるのである。
【0021】また、投光器18は、図3に示すように、回転リング4の上で独立して行う首振り移動に応じてレーザ光線(出射光線)の方向が生検用穿刺針の差し込み断面内において変化する構成となっている。具体的には、図4に示すように、投光器18がステッピング式電動モータ21の回転に伴って回転軸Xを回転中心として回る台座22の上に固定されており、電動モータ21の回転量を変化させることにより台座22の角度、すなわち投光器18の首振り角度を調整することができる。投光器18の首振り角度の調整は角度設定部20のコントロールにより行われる。投光器18が角度算出部19で算出された首振り角度bに正確になるよう角度設定部20が電動モータ21の回転量を制御するのである。
【0022】角度算出部19は、被検体Mの体内の生検対象の組織採取点Aと体表の生検用穿刺針の差し込み開始点Bと、投光器18の停止回転角度aおよび首振り角度bの間の幾何学的関係に従って各角度a,bの算出を実行する。図5に示すように、表示モニタ17で表示された生検用穿刺針の差し込み断面を示すCT断層画像上では、被検体Mの体内の生検対象の組織採取点Aが最初に指定された後、骨や針を刺せない臓器などを回避するよう体表の生検用穿刺針の差し込み開始点Bが指定入力される。なお、撮影中心Zの位置は既知である。」
(オ)「【0023】投光器18の基準停止回転角度(=0°)を撮影中心Zを通って右側に延びる水平線ZEの位置にとる。そうすると、投光器18の光源が通る円TOと直線ABが交わる開始点側交点Fと撮影中心Zとを通る直線ZFと水平線ZEのなす角度が投光器18の停止回転角度aである。また、投光器18の基準首振り角度(=0°)を投光器18のレーザ光線LAが撮影中心Zを通る位置にとる。そうすると、直線ZFと直線ABのなす角度が投光器18の首振り角度bである。
【0024】つまり、角度算出部19は、生検対象の組織採取点Aと差し込み開始点Bが指定されると、各指定点の座標と上記の幾何学的関係に従って投光器18の停止回転角度aと首振り角度bを算出するよう構成されているのである。算出された各角度a,bは表示モニタ17の画面に表示される構成となっている。
【0025】また、角度設定部20は、角度算出部19が算出した停止回転角度aと首振り角度bに従って、電動モータ5を回転させて投光器18を停止回転角度aの位置へ設定するとともに、電動モータ21を回転させて投光器18を首振り角度bの姿勢に設定する構成になっているのである。もちろん、角度設定部20による投光器18の設定により、投光器18のレーザ光線LAの方向が組織採取点Aと差し込み開始点Bを結ぶ直線ABと一致して、投光器18のレーザ光線LAが穿刺針の差し込み方向を指し示すことになる。角度a,b設定後の投光器18のレーザ光線LAは、直接的には被検体Mにおける差し込み開始点Bに当たることになる。
【0026】さらに、実施例装置は、指定入力された組織採取点Aおよび穿刺針の差し込み開始点Bの座標から穿刺針の差し込み距離(針の差し込み深さ寸法)Lを算出する離算出部23も備えているとともに、算出された差し込み距離Lは表示モニタ17の画面に表示される構成となっている。なお、投光器18は、X線断層撮影の際の位置合わせ用の投光器の機能を兼ねさせることも可能であるが、X線断層撮影の際の位置合わせ用の投光器の機能は別途に設ける専用の投光器によって行われる構成であってもよい。いずれの構成にせよ、X線断層撮影が終わった後、被検体Mの生検用穿刺針の差し込み断面が投光器18のレーザ光線LAの位置に来るように天板1を移動させてから、組織採取点Aや差し込み開始点Bの指定を実行することになる。」
(カ)「【0035】〔ステップS8〕図8(a)に示すように、穿刺針DTの針先を投光器18のレーザ光線LAが照らし示す被検体Mの体表の差し込み開始点Bに当てる。
【0036】〔ステップS9〕図8(b)に示すように、穿刺針の針頭にレーザ光線LAがちょうど当たるようにしておいて(レーザ光線LAの方向と穿刺針DTの差し込み方向を合わせておいて)表示モニタ17に示された差し込み距離Lだけ穿刺針DTを被検体Mの体内に差し込んで組織を採取する。穿刺針DTには長手方向に沿って目盛り(図示省略)が設けられていて、目盛りを見ながら、差し込み距離Lだけ被検体Mの体内に差し込む。」

(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「画像表示装置」は、上記(2)ア(ア)によれば、「核磁気共鳴装置(MRI装置)等の撮影装置から得られた3次元ボリュームデータに基づいて管腔臓器等の内腔表示を行う画像診断システム等に設けて好適な画像処理装置」であること、そして、引用発明において、表示される開始点Sから目標臓器に通ずる最短経路は、管腔臓器に沿って示される曲線である(上記(2)ア(オ)参照)こと、引用発明の「中心線抽出部2、最短経路算出部4、始点終点指定部6及び探索経路合成部8」は、「画像表示モニタ10に外形表示画像の対応する管腔臓器上に開始点Sから目標臓器に通ずる最短経路を示す矢印を表示する」手段であるから、引用発明は、「画像表示モニタ10に外形表示画像の対応する管腔臓器上に開始点Sから目標臓器に通ずる最短経路を示す矢印を表示する」手段を備える「画像処理装置」であるといえる。
一方、本件補正発明は、「磁気共鳴イメージング装置」であって、「MRアンギオフラフィ像を利用するもの」であって、「カテーテルを挿入する場合の前記被検体内のターゲットの位置と前記被検体内の体表上の挿入開始位置とを結ぶ前記曲線の経路をガイドラインとして立案することでカテーテルを挿入する操作の計画を操作前に立てる術前計画手段」を備えるものである。
してみると、本願発明と引用発明とは、ともに「磁気共鳴イメージング装置で撮像したデータを利用して、開始点と目標点とを結ぶ曲線の経路を立案する手段を備えた装置」である点で共通する。

イ 本件補正発明の「術前計画手段」と引用発明の「中心線抽出部2、最短経路算出部4、始点終点指定部6及び探索経路合成部8」とを対比すると、
(ア)引用発明の「管腔臓器」と本件補正発明の「血管」とは、共に「管状器官」である点で共通し、引用発明の「開始点S」、「目標臓器」と本件補正発明の「被検体の体表上の挿入開始位置」と「被検体内のターゲットの位置」とは、それぞれ、共に、「経路の開始点」、「経路の目標点」である点で共通する。
(イ)引用発明の「中心線抽出部2、最短経路算出部4、始点終点指定部6及び探索経路合成部8」は「所望の管腔臓器上の任意の点を開始点Sから、目標臓器に通ずる全ての管腔臓器に対応する探索ベクトルを求め、開始点Sから目標臓器までの長さが検出された各探索ベクトルデータのうち、最短の探索ベクトルデータを検出し、外形表示画像に最短経路データをマッピング処理し、外形表示画像の対応する管腔臓器上に開始点Sから目標臓器に通ずる最短経路を示す矢印を管腔臓器に沿って表示する」ように構成されており、ここでの「外形表示画像」は、「平行投影画像作成部7」により「MRI装置等の撮影装置から得られた複数の断層像に基づいて作成された3次元画像から対象臓器の画像の輪郭を抽出することで作成された輪郭データ」「に基づいて」作成されるものであるのに対して、本件補正発明の「MRアンギオグラフィ像」は、本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0116】に「デバイスとしてカテーテルが用いられ、そのカテーテル操作の対象が血管である場合、予め撮像したMRA(MRアンギオグラフィ)像を用いて、その血管の走行に応じた曲線がガイドラインとして求められる。」と記載されているのみであるところ、ここでの「MRアンギオグラフィ」は、血管撮影像を造影剤なしに得るための撮影方法であり、特開平8-317915号公報に記載されているようなものであって、MRI装置により得られた複数の断層像に基づき作成されるものであることが技術常識であることからすれば、引用発明の「外形表示画像」と保険補正発明の「MRアンギオグラフィ像」は、「MRI装置から得られた複数の断層像に基づいて作成された3次元画像における管状器官像」である点で共通するものといえる。
(ウ)引用発明の「中心線抽出部2、最短経路算出部4、始点終点指定部6及び探索経路合成部8」は「最短経路」を「管腔臓器に沿って表示」するものであり、本件補正発明の「術前計画手段」は、「血管の走行方向に応じた曲線の経路となるように」「曲線の経路をガイドラインとして立案するものである」から、両者はともに「曲線の経路を管状器官に沿って提示する」ものである点で共通するものであるといえる。
(エ)以上を前提とすると、引用発明の「中心線抽出部2、最短経路算出部4、始点終点指定部6及び探索経路合成部8」が「所望の管腔臓器上の任意の点の開始点Sから、目標臓器に通ずる全ての管腔臓器に対応する探索ベクトルを求め、開始点Sから目標臓器までの長さが検出された各探索ベクトルデータのうち、最短の探索ベクトルデータを検出し、外形表示画像に最短経路データをマッピング処理し、外形表示画像の対応する管腔臓器上に開始点Sから目標臓器に通ずる最短経路を示す矢印を管腔臓器に沿って表示する」ことと、本件補正発明の「術前計画手段」が「MRアンギオグラフィ像における血管の走行方向に応じた曲線の経路となるように」「カテーテルを挿入する場合の前記被検体内のターゲットの位置と、被検体の体表上の挿入開始位置とを結ぶ前記曲線の経路をガイドラインとして立案することで」「カテーテルを挿入する操作の計画を操作前に立てる」ものとは、「MRI装置から得られた複数の断層像に基づいて作成された3次元画像における管状器官像における管状器官の走行方向に応じた曲線の経路となるように」「経路の開始点と目標点とを結ぶ曲線の経路を立案する手段」である点で共通するものといえる。

ウ 以上ア及びイをふまえると、本件補正発明と引用発明とは、つぎの一致点で一致し、各相違点で相違する。
<一致点>
MRI装置から得られた複数の断層像に基づいて作成された3次元画像の管状器官像における管状器官の走行方向に応じた曲線の経路となるように経路の開始点と目標点とを結ぶ曲線の経路を立案する手段を備えた装置

<相違点1>
本件補正発明は、「被検体内に挿入するカテーテルの操作を伴うインターベンショナルMRIに用いられる磁気共鳴イメージング装置」であって「MRアンギオグラフィ像の撮像後、寝台に載置させた前記被検体の状態を保持したまま」で、「術前計画手段」が「カテーテルを挿入する操作の計画を操作前に立てる」ものであるのに対して、引用発明は「核磁気共鳴装置(MRI装置)等の撮影装置から得られた3次元ボリュームデータに基づいて管腔臓器等の内腔表示を行う画像診断システム等に設けて好適な画像処理装置」である点

<相違点2>
本件補正発明は「所定のパルスシーケンスに基づく磁場を前記被検体に印加することで得られるMR信号を用いてMRアンギオグラフィ像を撮像するイメージング手段」を備え、「前記MRアンギオグラフィ像における血管の走行方向に応じた曲線の経路となるように、前記カテーテルを挿入する場合の前記被検体内のターゲットの位置と、前記被検体の体表上の挿入開始位置とを結ぶ前記曲線の経路をガイドラインとして立案することで、前記カテーテルを挿入する操作の計画を操作前に立てる術前計画手段」を備えるものであるのに対して、引用発明は「MRI装置等の撮影装置から得られた複数の断層像に基づいて作成された3次元画像から対象臓器の画像の輪郭を抽出することで作成された輪郭データ」に基づいて「平行投影画像作成部7が、管腔臓器の外観を示す3次元画像である外形表示画像を作成し」「中心線抽出部2が、開始点Sから、目標臓器に通ずる全ての管腔臓器に対応する探索ベクトルを求め、最短経路算出部4は、開始点Sから目標臓器までの長さが検出された各探索ベクトルデータのうち、開始点Sから目標臓器までの長さが最短の探索ベクトルデータを検出し、探索経路合成部8は、外形表示画像に最短経路データをマッピング処理し、これを画像切り替え部9を介して画像表示モニタ10に供給することで、外形表示画像の対応する管腔臓器上に開始点Sから目標臓器に通ずる最短経路を示す矢印を管腔臓器に沿って表示する」ものである点

<相違点3>
本件補正発明は、「カテーテルの挿入開始位置」を「被検体上に出力する」「術前計画手段」を備えるものであるのに対して、引用発明は、そのようなものではない点

(4)判断
ア 相違点1について
上記相違点1について検討するに、上記第2の2において摘記したよう、引用例2には、「オープン配置のMR 画像処理システム(GEの医療システム、ミルウォーキー、 ウィスコンシン)は、インベンショナル空間へのアクセスを許容するオープン配置の0.5Tの超伝導磁石から構成されている。このシステムは、誘導治療を主要な目標として作られました。」と記載されており、本願の最先の優先日前において、 「誘導治療を目的としたインターベンショナル用の磁気共鳴イメージング装置」は既に公知の技術であると認められる。
そして、引用発明は、管腔臓器の上での開始点から目標臓器までの最短経路データをマッピングすることで医師による手術計画の立案等に有効な情報を提供することを目的とするものであることからすれば、医師による治療計画を提供するために、引用発明を公知のインターベンショナル用の磁気共鳴イメージング装置と組み合わせて用いるようにすることは当業者が容易に想到し得ることというべきである。
また、インターベンショナル用の磁気共鳴イメージング装置を用いる場合には、被検体を寝台に載置させた状態で、MRアンギオグラフィ像取得後に引き続きその後の処置を行うことが可能であることは明らかである。

イ 相違点2について
上記相違点2について検討するに、
所定のパルスシーケンスに基づく磁場を前記被検体に印加することで得られるMR信号を用いていわゆるMRアンギオグラフィ像を撮像するイメージング手段により血管像を表示して、カテーテル治療の際に、カテーテルの実際の位置と血管との関係を表示するようにして、目標位置までのカテーテル挿入を支援することは、例えば特開平8-317915号公報や特開平10-201737号公報に記載されているように、本願の最先の優先権主張日前に既に周知の技術であるし、同特開平10-201737号公報の段落【0012】には「患者の血管系の3次元体積内での経路」を「カテーテルが患者へ導入される前に実行する」ことについても記載されている。
そして、引用発明に記載の「画像診断装置」が、管腔臓器の上での開始点から目標臓器までの最短経路データをマッピングすることで医師による手術計画の立案等に有効な情報を提供することを目的とするものである。
してみると、引用発明を上記周知のカテーテル治療の際の血管挿入経路の提示用途に用いるようにすることは、当業者であれば当然想起し得ることであるし、その際に、血管挿入経路を表示するために、MRアンギオグラフィ像を撮像するイメージング手段と組み合わせ、当該イメージング手段により取得したMRアンギオグラフィ像を用いて血管像を得るようにすることも当然のことといえる。
そして、当該MRアンギオグラフィ像が血管の外観を示す3次元画像であることも上記の周知例として例示した特開平8-317915号公報や特開平10-201737号公報からも明らかであることからすれば、引用発明において、「MRアンギオグラフィ像」から、「平行投影画像作成部7が、血管の外観を示す3次元画像である外形表示画像を作成し」「中心線抽出部2が、開始点Sから、目標点に通ずる全ての血管に対応する探索ベクトルを求め、最短経路算出部4は、開始点Sから目標点までの長さが検出された各探索ベクトルデータのうち、最短の探索ベクトルデータを検出する」ことにより、「MRアンギオグラフィ像における血管の走行方向に応じた曲線の経路」を立案できることは明らかである。
なお、カテーテル治療に適用した場合においては、挿入経路の開始点が体表となることは当然のことであり、そのような経路を術前計画として利用可能であることも当業者にとって周知の技術事項である。
したがって、上記相違点2も当業者が容易に想到し得ることといえる。

ウ 相違点3について
(ア)引用例3には、「CT撮影装置の構成により予め撮影されて表示モニタ17の画面に映し出された穿刺針の差し込み断面を示すCT断層画像上において、生検対象の組織採取点および生検用穿刺針の差し込み開始点とを画面入力で指定すれば、レーザ光線が自動的に穿刺針の差し込み方向を指し示」すもの(上記ウ(ウ))であって、「出射光線であるレーザ光線の方向を生検用穿刺針の差し込み断面内において変化させる首振り移動が可能なようにして回転リング4に取り付けられてX線管2およびX線検出器3の回転と共に被検体Mのまわりを回転する投光器18を備えているとともに、画面入力手段としての操作卓10によって、生検用穿刺針の差し込み断面を示すCT断層画像上で被検体Mの体内の生検対象の組織採取点、および、体表の生検用穿刺針の差し込み開始点とを画面入力指定できる構成となって」おり、「操作卓10による画面入力で指定された組織採取点および差し込み開始点に基づき投光器18のレーザ光線の方向が穿刺針の差し込み方向と一致する投光器18の停止回転角度aおよび首振り角度bを算出する角度算出部19と、角度算出部19の算出角度に従って投光器18の停止回転角度aおよび首振り角度bを設定する角度設定部20とを備え」(上記ウ(エ))るものにおいて、「表示モニタ17で表示された生検用穿刺針の差し込み断面を示すCT断層画像上では、被検体Mの体内の生検対象の組織採取点Aが最初に指定された後、骨や針を刺せない臓器などを回避するよう体表の生検用穿刺針の差し込み開始点Bが指定入力され」(上記ウ(エ))、「角度設定部20による投光器18の設定により、投光器18のレーザ光線LAの方向が組織採取点Aと差し込み開始点Bを結ぶ直線ABと一致して、投光器18のレーザ光線LAが穿刺針の差し込み方向を指し示す」(上記ウ(カ))ように構成された発明が記載されている。
(イ)そして、上記相違点2において検討したように、引用発明を前記カテーテルを挿入する場合の前記被検体内のターゲットの位置と、前記被検体の体表上の挿入開始位置とを結ぶ前記曲線の経路をガイドラインとして立案することで、前記カテーテルを挿入する操作の計画を操作前に立てる用途に適用する場合において、引用例3に記載された術前計画に基づく穿刺針の挿入箇所を被検体上に表示する技術を適用すれば、術前計画に基づく被検体上のカテーテルの挿入開始位置を容易に把握することができることは、当業者であれば容易に理解し得ることである。
(ウ)してみると、引用発明に、引用例3に記載の技術を適用して、カテーテルの挿入開始位置を被検体上に出力するように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。

エ 小活
以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用例1ないし3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

(5) 補正の却下の決定についてのむすび
上記のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反してされたものであるから、同法159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正却下の決定のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成26年10月27日提出の手続補正書による手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成26年8月1日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのつぎのものである。
「【請求項1】
被検体内に挿入するカテーテルの操作を伴うインターベンショナルMRIに用いられる磁気共鳴イメージング装置であって、
所定のパルスシーケンスに基づく磁場を前記被検体に印加することで得られるMR信号を用いてMRアンギオグラフィ像を撮像するイメージング手段と、
前記MRアンギオグラフィ像における血管の走行方向に応じた曲線の経路となるように、前記カテーテルを挿入する場合の前記被検体内のターゲットの位置と、前記被検体の体表上の挿入開始位置とを結ぶ前記曲線の経路をガイドラインとして立案することで、前記カテーテルを挿入する操作の計画を操作前に立てる術前計画手段と
を備えていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。」(以下、「本願発明」という。)

2 引用例
本件拒絶理由通知において引用した上記第2の2(2)の引用例1及び2の記載事項は、上記第2の2(2)ア及びイに記載したとおりである。

3 対比
(1)本願発明は、上記第2で検討した本件補正発明の発明特定事項である、「カテーテルを挿入する操作の計画を操作前に立てる」「術前計画手段」が「MRアンギオグラフィイ像の撮像後、寝台に載置させた前記被検体の状態を保持したまま」、計画を立てるものから、「MRアンギオグラフィイ像の撮像後、寝台に載置させた前記被検体の状態を保持したまま」という限定事項を削除し、また、本件補正発明の発明特定事項である「術前計画手段」が「カテーテルの挿入開始位置」を「被検体上に出力」するものから、「カテーテルの挿入開始位置を被検体上に出力する」という限定事項を削除したものに相当する。
(2)本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明と引用発明とは、上記第2の2(3)ウの一致点において一致し、つぎの相違点1’及び上記第2の2(3)ウの相違点2においてそれぞれ相違する。

<相違点1’>
本件補正発明は、「被検体内に挿入するカテーテルの操作を伴うインターベンショナルMRIに用いられる磁気共鳴イメージング装置」であって、「術前計画手段」が「カテーテルを挿入する操作の計画を操作前に立てる」ものであるのに対して、引用発明は「核磁気共鳴装置(MRI装置)等の撮影装置から得られた3次元ボリュームデータに基づいて管腔臓器等の内腔表示を行う画像診断システム等に設けて好適な画像処理装置」である点

4 判断
(1)相違点1’について検討するに、上記第2の2(4)アの相違点1についてで検討したように、引用発明は、管腔臓器の上での開始点から目標臓器までの最短経路データをマッピングすることで医師による手術計画の立案等に有効な情報を提供することを目的とするものであることからすれば、医師による治療計画を提供するために、引用発明を公知のインターベンショナル用の磁気共鳴イメージング装置と組み合わせて用いるようにすることは当業者が容易に想到し得ることというべきである。
(2)相違点2については、上記第2の2(4)イの相違点2についてで検討したとおりである。
してみると、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-25 
結審通知日 2015-01-06 
審決日 2015-01-21 
出願番号 特願2011-83639(P2011-83639)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (A61B)
P 1 8・ 572- WZ (A61B)
P 1 8・ 121- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 右▲高▼ 孝幸  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 尾崎 淳史
藤田 年彦
発明の名称 インターベンショナルMRI用の磁気共鳴イメージング装置  
代理人 特許業務法人東京国際特許事務所  

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