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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1298170
審判番号 不服2013-19923  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-11 
確定日 2015-03-04 
事件の表示 特願2011-516537「ワイヤレス・ネットワーク接続へのアクセス・ポイントを多重化するためのコンセントレータ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月21日国際公開、WO2010/008853、平成23年 9月29日国内公表、特表2011-526137〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成21年6月23日(パリ条約に基づく優先権主張 2008年6月23日 米国、2008年7月9日 米国、2008年8月7日 米国、2009年6月18日 米国)の出願であって、平成24年9月25日付けで拒絶理由が通知され、平成25年6月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成25年10月11日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。


第2.特許法第36条の拒絶理由の概要
2.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
A.(省略)
B.請求項32-38,59,60に記載の「コンピュータ・プログラム製品」の技術的範囲が明確でない。
(審査基準第VII部第1章1.1.2 (1)(b)を参照)


第3.特許法第36条の拒絶理由に対する審判請求書の説明
(3-1)理由2について
(A)指摘事項Aについて (省略)
(B)指摘事項Bについて
コンピュータ可読媒体は「物」であることは明らかであるので、請求項29(当審注:「32」の誤記と認められる。)および59の「コンピュータ可読媒体を備えるコンピュータ・プログラム製品」も物であることは明らかであり、請求項30-36(当審注:「33-38」の誤記と認められる。)、および60に係る発明も「物」の発明として明確であると思料致します。


第4.特許法第36条の拒絶理由についての当審の判断
請求項32-38,59,60に係る発明の末尾は、「・・・・・コードと、を備えるコンピュータ可読媒体を備えるコンピュータ・プログラム製品。」となっている。
通知された拒絶理由は、「物」の発明であるのか、それとも「方法」の発明であるのか明確でないという拒絶理由ではない。
通知された拒絶理由は、請求項32-38,59,60に記載の「コンピュータ・プログラム製品」の技術的範囲が明確でないという拒絶理由である。
検討するに、請求項32-38,59,60に係る発明の「・・・・・コードと、を備えるコンピュータ可読媒体を備えるコンピュータ・プログラム製品。」という記載では、「・・・・・コードと、を備えるコンピュータ可読媒体。」を指すのか、それとも「・・・・・コードと、を備えるコンピュータ可読媒体を備えるコンピュータシステム。」を指すのか、それとも「・・・・・コードと、を備えるコンピュータ可読媒体を備えるインターネットシステム。」を指すのか、明確でない。
したがって、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


第5.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願時の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次の事項により特定されるものである。

「【請求項1】
モビリティ管理エンティティ(MME)からダウンリンク・パケットを受信することと、
前記ダウンリンク・パケット内に含まれる局所的に一意の識別子に少なくとも部分的に基づいて、前記ダウンリンク・パケットに関係するアクセス・ポイントを判断することと、
前記ダウンリンク・パケットを前記アクセス・ポイントに送信することと、
を備える方法。」


第6.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(Mitsubishi Electric, EUTRAN Proxy in support of massive deployment of HNBs, 3GPP TSG RAN WG3 Meeting #59, 5 February 2008, R3-080062, pp.1-6(JP-N5-11-006640))には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(a)第3頁
「Once the context is established, the HNB proxy handles the S1-m signalling message as follows:
- it extracts the pair MME_UE_Id and VENB_UE_Id of the incoming S1-m, and
- it looks in the table the associated context to read the identifier of HNB dealing with the context.
- It identifies the destination HNB from the UE context indexed by the VENB_UE_Id
- it replaces in the received message the value MME_UE_Id with VMME_UE_Id, and the value VENB_UE_Id with HNB_UE_Id as stored in the association table.
- it sends the modified message to the destination HNB via the corresponding S1-h interface.」
(当審訳:一度、コンテキストが確立されると、HNBプロキシはS1-m信号メッセージを以下のように、取り扱う。
HNBプロキシは、入来してきたS1-mメッセージから、MME_UE_Id とVENB_UE_Idのペアを抽出する。
HNBプロキシは、表の中の関連付けられたコンテキストを見て、コンテキストを取り扱うHNBの識別子を読み取る。
HNBプロキシは、VENB_UE_Id によってインデックスを付けられたUEコンテキストから行き先HNBを識別する。
HNBプロキシは、受信したメッセージ中の値MME_UE_Id をVMME_UE_Idで置換し、値VENB_UE_Id を、関連付けられた表に格納されているHNB_UE_Idで置換する。
HNBプロキシは、対応するS1-hインターフェイスを介して、修正されたメッセージを行き先HNBへ送信する。)

したがって、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「一度、コンテキストが確立されると、HNBプロキシがS1-m信号メッセージを以下のように、取り扱う方法であって、
入来してきたS1-mメッセージから、MME_UE_Id とVENB_UE_Idのペアを抽出し、
表の中の関連付けられたコンテキストを見て、コンテキストを取り扱うHNBの識別子を読み取り、
VENB_UE_Id によってインデックスを付けられたUEコンテキストから行き先HNBを識別し、
受信したメッセージ中の値MME_UE_Id をVMME_UE_Idで置換し、値VENB_UE_Id を、関連付けられた表に格納されているHNB_UE_Idで置換し、
対応するS1-hインターフェイスを介して、修正されたメッセージを行き先HNBへ送信する方法。」


第7.本願発明と引用発明の一致点・相違点
引用発明のS1-mは、MMEとHNBプロキシとの間のインターフェイスである。したがって、引用発明の入来してきたS1-mメッセージは、MMEからHNBプロキシへのメッセージである。引用発明のMMEと本願発明のモビリティ管理エンティティ(MME)とは、「モビリティ管理エンティティ(MME)」である点で一致している。
引用発明のMME、HNBプロキシ及びHNBの間のメッセージがパケットで送信されることは、技術常識であるから、引用発明の入来してきたS1-mメッセージは、ダウンリンク・パケットである。したがって、本願発明と引用発明とは、「モビリティ管理エンティティ(MME)からダウンリンク・パケットを受信する」点で一致している。

引用発明のVENB_UE_Idは、Idであるから、「局所的に」か「グローバルに」かは不明であるが、「一意の識別子」である。引用発明では、VENB_UE_Id によってインデックスを付けられたUEコンテキストから行き先HNBを識別しており、行き先HNBは本願発明の「前記ダウンリンク・パケットに関係するアクセス・ポイント」に相当するから、本願発明と引用発明とは、「前記ダウンリンク・パケット内に含まれる一意の識別子に少なくとも部分的に基づいて、前記ダウンリンク・パケットに関係するアクセス・ポイントを判断する」点で一致している。

引用発明では、応するS1-hインターフェイスを介して、修正されたメッセージを行き先HNBへ送信しているから、本願発明と引用発明とは、「前記ダウンリンク・パケットを前記アクセス・ポイントに送信する」点で一致している。

したがって、本願発明と引用発明の一致点・相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「モビリティ管理エンティティ(MME)からダウンリンク・パケットを受信することと、
前記ダウンリンク・パケット内に含まれる一意の識別子に少なくとも部分的に基づいて、前記ダウンリンク・パケットに関係するアクセス・ポイントを判断することと、
前記ダウンリンク・パケットを前記アクセス・ポイントに送信することと、
を備える方法。」である点。

[相違点]
一意の識別子が、本願発明では、局所的に一意であるのに対して、引用発明では、局所的に一意なのか、それともグローバルに一意なのか不明な点。


第8.相違点の検討
引用発明のVENB_UE_Idの先頭の文字「V」は、「Virtual」つまり「仮想」の意味であり、仮想的な識別子についてはグローバルに一意である必要性はなく、局所的に一意で十分であるから、VENB_UE_Id を局所的に一意とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第9.むすび
本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
また、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-01 
結審通知日 2014-10-07 
審決日 2014-10-21 
出願番号 特願2011-516537(P2011-516537)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 537- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北元 健太  
特許庁審判長 佐藤 聡史
特許庁審判官 江口 能弘
寺谷 大亮
発明の名称 ワイヤレス・ネットワーク接続へのアクセス・ポイントを多重化するためのコンセントレータ  
代理人 峰 隆司  
代理人 井上 正  
代理人 井関 守三  
代理人 赤穂 隆雄  
代理人 野河 信久  
代理人 河野 直樹  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 福原 淑弘  
代理人 岡田 貴志  
代理人 堀内 美保子  
代理人 砂川 克  
代理人 佐藤 立志  

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