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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1298214
審判番号 不服2014-8205  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-02 
確定日 2015-03-24 
事件の表示 特願2013- 89857「サーバ装置、その制御方法、プログラム、及びゲームシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月17日出願公開、特開2014-212817、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 結 論

原査定を取り消す。

本願の発明は、特許すべきものとする。

理 由

第1.手続の経緯

本件出願は、平成25年4月22日の出願であって、平成25年11月1日付で拒絶理由通知がなされ、平成26年1月10日に手続補正書が提出され、同年2月3日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、同年5月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正書が提出され、平成27年1月9日付けで拒絶理由通知がなされ、同年2月10日に手続補正書が提出され、特許請求の範囲、及び明細書を補正する手続補正がされたものである。

第2.本願発明

本願の請求項1?8に係る発明は、上記の平成27年2月10日の手続補正によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める(以下本願の請求項1に係る発明を「本願発明1」といい、同様に本願の請求項2?8に係る発明をそれぞれ本願発明2?8という。)。

「【請求項1】
複数のプレイヤが参加可能なゲームを提供し、且つ、前記プレイヤが操作する端末装置に通信回線を介して接続されるサーバ装置であって、
前記ゲームに関連する情報を記憶する情報記憶部と、
前記情報にアクセスし、前記ゲームに関する演算を実行し、且つ、前記ゲームの画像を前記端末装置に表示させる制御部と、
を備えており、
前記情報記憶部は、前記ゲームに関連する情報の一部として、前記プレイヤが所属するグループ、及び、複数の前記グループ間の勝敗が決せられるグループ間イベントの情報を有しており、
前記グループ間イベントは、前記複数のグループと第1のゲームキャラクタとの対戦が行われる第1の対戦イベントを含み、
前記制御部は、前記第1の対戦イベントにおける前記複数のグループのそれぞれと前記第1のゲームキャラクタとの対戦状況又は対戦結果に基づいて、前記複数のグループ間の勝敗を間接的に判定又は決定し、且つ、前記端末装置に、前記第1の対戦イベントにおける前記複数のグループのそれぞれの寄与割合を、前記第1の対戦イベントの進行とともにリアルタイムで経時的に表示し、
前記情報記憶部は、前記ゲームに関連する情報の一部として、前記複数のグループのそれぞれと第2のゲームキャラクタとの対戦が行われるグループ別イベントの情報を更に有しており、
前記制御部は、前記グループ別イベントにおける前記グループと前記第2のゲームキャラクタとの対戦状況又は対戦結果に基づいて、前記グループ間イベントで使用することが可能な報酬を該グループに付与し、前記グループ間イベントにおいては、前記グループによる該報酬の使用の有無を加味して、前記複数のグループ間の勝敗を判定又は決定する、
サーバ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の対戦イベントの実行に際して、前記複数のグループのそれぞれが前記第1のゲームキャラクタへ与えるダメージに関連付けられたゲームパラメータを設定し、前記第1の対戦イベントにおいては、前記ゲームパラメータの数値に基づいて、
前記グループ間の勝敗を間接的に判定又は決定する、
請求項1記載のサーバ装置。
【請求項3】
前記グループ間イベントは、前記複数のグループ間の対戦が行われる第2の対戦イベントを含み、
前記制御部は、前記第2の対戦イベントにおける前記複数のグループ間の対戦状況又は対戦結果に基づいて、前記複数のグループ間の勝敗を直接的に判定又は決定する、
請求項1又は2記載のサーバ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2の対戦イベントの実行中に、前記第1の対戦イベントを実行し、該第1の対戦イベントを実行している間、前記第2の対戦イベントを中止又は中断する、
請求項3記載のサーバ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1のゲームキャラクタが前記端末装置の画面に突然現れる画像を表示し、前記第1の対戦イベントを突如開始する、
請求項1?4のいずれか1項記載のサーバ装置。
【請求項6】
複数のプレイヤが参加することが可能なゲームを提供し、且つ、前記プレイヤが操作する端末装置に通信回線を介して接続され、前記ゲームに関連する情報を記憶する情報記憶部、及び、前記情報にアクセスし、前記ゲームに関する演算を実行し、且つ、前記ゲームの画像を前記端末装置に表示させる制御部を備えるサーバ装置の制御方法であって、
前記情報記憶部に、前記ゲームに関連する情報の一部として、前記プレイヤが所属するグループ、及び、複数の前記グループ間の勝敗が決せられるグループ間イベントの情報、
並びに、前記複数のグループのそれぞれと第2のゲームキャラクタとの対戦が行われるグループ別イベントの情報を記憶させ、
前記グループ間イベントは、前記複数のグループと第1のゲームキャラクタとの対戦が行われる第1の対戦イベントを含み、
前記制御部により、
前記第1の対戦イベントにおける前記複数のグループのそれぞれと前記第1のゲームキャラクタとの対戦状況又は対戦結果に基づいて、前記複数のグループ間の勝敗を間接的に判定又は決定し、且つ、前記端末装置に、前記第1の対戦イベントにおける前記複数のグループのそれぞれの寄与割合を、前記第1の対戦イベントの進行とともにリアルタイムで経時的に表示し、
前記グループ別イベントにおける前記グループと前記第2のゲームキャラクタとの対戦状況又は対戦結果に基づいて、前記グループ間イベントで使用することが可能な報酬を該グループに付与し、前記グループ間イベントにおいては、前記グループによる該報酬の使用の有無を加味して、前記複数のグループ間の勝敗を判定又は決定する、
サーバ装置の制御方法。
【請求項7】
複数のプレイヤが参加することが可能なゲームを提供し、且つ、前記プレイヤが操作する端末装置に通信回線を介して接続され、前記ゲームに関連する情報の一部として、前記プレイヤが所属するグループ、及び、複数の前記グループと第1のゲームキャラクタとの対戦が行われる第1の対戦イベントを含み且つ該複数のグループ間の勝敗が決せられるグループ間イベントの情報、並びに、前記複数のグループのそれぞれと第2のゲームキャラクタとの対戦が行われるグループ別イベントの情報を記憶する情報記憶部にアクセス可能なコンピュータに、
前記情報にアクセスし、前記ゲームに関する演算を実行し、且つ、前記ゲームの画像を前記端末装置に表示させるステップと、
前記第1の対戦イベントにおける前記複数のグループのそれぞれと前記第1のゲームキャラクタとの対戦状況又は対戦結果に基づいて、前記複数のグループ間の勝敗を間接的に判定又は決定するステップと、
前記端末装置に、前記第1の対戦イベントにおける前記複数のグループのそれぞれの寄与割合を、前記第1の対戦イベントの進行とともにリアルタイムで経時的に表示するステップと、
前記グループ別イベントにおける前記グループと前記第2のゲームキャラクタとの対戦状況又は対戦結果に基づいて、前記グループ間イベントで使用することが可能な報酬を該グループに付与し、前記グループ間イベントにおいては、前記グループによる該報酬の使用の有無を加味して、前記複数のグループ間の勝敗を判定又は決定するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項8】
複数のプレイヤが参加することが可能なゲームを提供し、且つ、前記プレイヤが操作する端末装置に通信回線を介して接続されるサーバ装置、及び、該端末装置を含むゲームシステムであって、
前記ゲームに関連する情報を記憶する情報記憶部と、
前記情報にアクセスし、前記ゲームに関する演算を実行し、且つ、前記ゲームの画像を前記端末装置に表示させる制御部と、
を備えており、
前記情報記憶部は、前記ゲームに関連する情報の一部として、前記プレイヤが所属するグループ、及び、複数の前記グループ間の勝敗が決せられるグループ間イベントの情報を有しており、
前記グループ間イベントは、前記複数のグループと第1のゲームキャラクタとの対戦が行われる第1の対戦イベントを含み、
前記制御部は、前記第1の対戦イベントにおける前記複数のグループのそれぞれと前記第1のゲームキャラクタとの対戦状況又は対戦結果に基づいて、前記複数のグループ間の勝敗を間接的に判定又は決定し、且つ、前記端末装置に、前記第1の対戦イベントにおける前記複数のグループのそれぞれの寄与割合を、前記第1の対戦イベントの進行とともにリアルタイムで経時的に表示し、
前記情報記憶部は、前記ゲームに関連する情報の一部として、前記複数のグループのそれぞれと第2のゲームキャラクタとの対戦が行われるグループ別イベントの情報を更に有しており、
前記制御部は、前記グループ別イベントにおける前記グループと前記第2のゲームキャラクタとの対戦状況又は対戦結果に基づいて、前記グループ間イベントで使用することが可能な報酬を該グループに付与し、前記グループ間イベントにおいては、前記グループによる該報酬の使用の有無を加味して、前記複数のグループ間の勝敗を判定又は決定する、
ゲームシステム。」

第3.原査定の理由の概要

原査定の理由の概要は次のとおりである。
本願の各請求項に係る発明は、本願の出願前に日本国又は外国において頒布された引用例1に記載された発明、ソーシャルゲームの技術分野において、複数のグループと第1のゲームキャラクタとの対戦が行われる対戦イベントを実施し、当該対戦イベントにおいて、前記複数のグループのそれぞれと前記第1のゲームキャラクタとの対戦状況又は対戦結果に基づいて、前記複数のグループ間の勝敗を間接的に判定又は決定するとの公然知られた発明(例えば、引用例2、3参照。)及び、一門戦と同様のGvGvRのギルド戦を実行するゲームにおいて、複数のグループ(騎士団、一門、ギルド等)のそれぞれの寄与割合をGvGvR形式のギルド戦の進行とともにリアルタイムで経時的に表示するとの周知の技術的手段(例えば、『拡散性ミリオンアーサー』や『エレメンタルアームズ』下記引用例4、5参照。)であることに基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例等一覧
引用例1:ドラゴンリーグX 完全保存版徹底攻略激アツ!ガイド,ファミ通App iPhone(登録商標)&Android(登録商標) NO.006 付録,株式会社エンターブレイン,2013年4月4日,第2-17,24-31頁
引用例2:「100万人の信長の野望 一門戦「百花繚乱」,モバゲーゲームおまとめサイト,2013年10月24日(検索日),URL,http://sportlinefood.com/event/hyakka.html」、
引用例3:「一門戦,100万人の信長の野望 攻略データ,2013年1月20日,URL,http://100nobu.blog.fc2.com/blog-entry-21.html」、
引用例4:『拡散性ミリオンアーサー』”騎士団バトル”が開幕! 豪華7大特典キャンペーンも同時開催中,ファミ通.com/ゲーム・エンタメ最新情報,2013年2月1日,URL,http://app.famitsu.com/20130201_126083/」、
引用例5:【新作情報】始めて5分でドップリはまったRPG『エレメンタルアームズ』,ファミ通.com/ゲーム・エンタメ最新情報,2013年2月22日,URL,http://app.famitsu.com/20130222_132752/

第4 当審の判断

1.引用例1

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用例1には、次の(1)?(7)の事項が記載されている。

(1)「アソビズムのiPhone(登録商標)用アプリ『ドラゴンリーグX』がとにかく”キテ”いる!」(2頁左上欄)

(2)「・所持する宝箱を空けて武具を入手
・1日3回、無料宝箱ガチャを引ける
・ルビー消費でレア度の高い武具が出やすいガチャも
・ベース武具に素材武具を消費し、能力を強化
・武具の成長限界値をアップする”限界突破”
・強化および限界突破にはキーンが必要」(4頁左下欄)、

(3)「まず、このゲームを始めたら活発な騎士団を探して入団しよう。・・・」(5頁左上欄)
「リストアップされた騎士団の”チーム情報”を確認して吟味」(5頁右上欄)。

(4)「試合は、1日に4回開催される。・・・試合の制限時間は1試合60分で、その時間内で稼いだBPを、相手チームと競い合うルールだ。」(6頁左上欄)。

(5)「技Pの回復方法
・1日1回使用可能な100P回復
・ダンジョン探索で50P回復(2回で100P)・・・」(8頁左上欄)

(6)「あるドラリーガーの一日
・・・{AM8時}第1試合開始。相手があまり強くなく、50Pほど消費。
{AM9時}ダンジョン探索を終えて技50Pを回復。再度出発。合間にフィールドと武具強化をこなす。
{AM12時}第2試合開始。ここでも技Pを100消費する。
{PM1?5時}つぎの試合まで時間があるので、フィールドを回りながら技P探し。それから剣で語るでも技Pを回復しておく。・・・」(8頁下欄)。

(7)「フィールドには5カ所の・・・が出現。うち2カ所にモンスターが隠れていて、すべてのモンスターを倒すと次のフィールドへ、モンスターを倒すと、キーンと経験値(たまに宝箱)が手に入る。・・・」(9頁左上欄)。

(8)上記(6)の「ドラリーガー」とはゲームユーザーのことであり、上記(6)によれば、ドラリーガーは、「試合」と、「ダンジョン探索」や「フィールド」を回ることを、行うものであり、上記(4)によれば「試合」とは「相手チーム」と競う行為である。
また、上記(7)によればドラリーガーは「フィールド」で「モンスター」を倒せば、「キーン」と「経験値」を手に入れることができると記載されている。そして「キーン」とは上記(2)によれば「武具」の「強化」や「武具の成長限界値をアップする”限界突破」のために必要なものである。
よってドラリーガーが、「フィールド」を回って「モンスター」を倒せば、「武具」の強化に必要な「キーン」や「経験値」が手に入ることが示されているといえる。

(9)上記(3)によれば、ドラリーガーは「騎士団」に入団するものであり、「騎士団」と「チーム」は同じ意味であり、複数人により構成される「騎士団」(チーム)に入団するのであるからドラリーガーは複数存在していると理解できる。

(10)よって、引用例1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「複数のドラリーガーは騎士団(チーム)に入団し、相手チームと競う試合と、ダンジョン探索やフィールドを回ることを行い、前記フィールドでモンスターを倒せば、武具の強化に必要なキーンや経験値が手に入るiPhone(登録商標)用アプリ。」

2.引用例2:
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用例2には、次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。以下同じ。)
「100万人の信長 一門戦「百花繚乱」開催・・・
一門戦「百花繚乱」詳細
今回のイベントは一門戦です。
一門戦とは、一門同士が1VS1の対戦を繰り返して一門戦ボスと戦い、スコアを競い合う戦いです。
イベントは、前半戦と後半戦があり、まず前半戦で一門スコアを貯めて、高い「位」を目指し、後半戦では低確率で登場するスーパーボスを撃破して、スーパーボスのレアな紹介状をゲットするという流れになります。
前半戦で決まった「位」が後半戦でのスーパーボス登場確率に関係してくるので、前半戦では是非とも高い「位」を目指したいところです!
一門戦のボスは通常合戦を繰り返していると登場します。・・・
スコアは一門戦ボスと戦うと獲得でき、所属メンバーの獲得スコアの合計で勝敗が決まります。
連鎖を繋げることが、勝利の鍵となります。
勝利した一門には勝利特典が配られ、負けても敗北特典が貰えます。」

上記の「一門同士が1VS1の対戦を繰り返」すことは、上記「通常合戦を繰り返」すことと同じことである。

これらの記載事項を総合すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「100万人の信長の野望というゲームの一門戦「百花繚乱」というイベントであり、一門戦には前半戦と後半戦があり、前半戦では一門同士の通常合戦を繰り返していると一門戦ボスが登場し、一門戦ボスと戦うとスコアが獲得でき、スコアを貯めて、高い「位」を目指し、前記「位」が後半戦でのスーパーボス登場確率に関係し、後半戦では低確率で登場するスーパーボスを撃破して、スーパーボスのレアな紹介状をゲットするというゲーム。」

3.引用例3:
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用例3には、次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。以下同じ。)
「100万人の信長の野望 攻略データ
一門戦
一門戦は、2つの一門でBOSSを倒してポイントを競うイベントです。一門に入っていないと参加できません。
以下のスケジュールで1日2試合がおこなわれます。

06:00?07:00 マッチング(対戦一門が決まります)
07:00?13:00 対戦(勝利した一門は段が上がっていきます)
16:00?17:00 マッチング
17:00?23:00 対戦

家来10人でデッキを組みます。対戦時間に合戦を繰り返すとBOSSが出現します。2つの一門が同じBOSSと戦闘します。・・・BOSSが撃破されると、BOSSにトドメをさしたプレイヤーの一門メンバーには撃破特典が入り、BOSSに半分以上のダメージを与えた一門メンバーには活躍特典が入ります。」

これらの記載事項を総合すると、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。
「100万人の信長の野望というゲームの一門戦というイベントであって、家来10人でデッキを組み、対戦時間に合戦を繰り返すとBOSSが出現し、2つの一門が同じBOSSと戦闘し、BOSSが撃破されると、BOSSにトドメをさしたプレイヤーの一門メンバーには撃破特典が入り、BOSSに半分以上のダメージを与えた一門メンバーには活躍特典が入るというゲーム。」

4.引用例4:
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用例4には、次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。以下同じ。)
「【まとめ】『拡散性ミリオンアーサー』総合頁
”騎士団バトル”とは、自動で選ばれた30人前後のプレイヤーで結成される”騎士団”どうしで強敵を攻撃したときの貢献度を競うというもの。騎士団の仲間プレイヤーと協力して強敵を倒し、勝利をめざしていく。本日より、騎士団バトル開催イベントとしてミッションがひとつずつ公開されていき、クリアーするごとに豪華報酬が受け取れるゲーム。」

これらの記載事項を総合すると、引用例4には、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されているものと認められる。
「拡散性ミリオンアーサーというゲームであって、騎士団バトルとは、自動で選ばれた30人前後のプレイヤーで結成される”騎士団”どうしで強敵を攻撃したときの貢献度を競うというものであり、騎士団バトル開催イベントとしてミッションがひとつずつ公開され、クリアーするごとに豪華報酬が受け取れるゲーム。」

5.引用例5:
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用例5には、次の事項が記載されている。
「ウインライトは、iPhoneむけRPG『エレメンタルアームズ』の配信を開始した。・・・
本作の目的は、”カオスゲート”から出没する魔王軍を探し出し、仲間とともに討伐すること。プレイヤーは・・・王国の騎士団に所属するひとりとして、魔王軍と戦うことになる。・・・
カオスゲートを発見したら、いよいよ本作の目玉となる魔王軍戦。魔王軍には、邪兵と魔王が存在し、邪兵を一定数撃破することで魔王が出現。撃破するたびに敵のレベルが上昇し、より強くなっていく。魔王軍戦は探索と違い、ほかのプレイヤーと結成した騎士団で行うことになる。ひとつの騎士団は、30人?50人の仲間で構成され、毎週月曜日に自動的に結成・解散が行われる。・・・見事、魔王軍を撃破すれば報酬を入手可能・・・また、各騎士団はライバル関係でもあり、魔王軍討伐で獲得できるDPの総量が多い騎士団に勝利報酬が与えられる。・・・魔王軍の邪兵や魔王を撃破すると、報酬として討伐ガチャや魔王ガチャを入手できる。ガチャからは、武器をゲットすることが可能だ・・・」

これらの記載事項を総合すると、引用例5には、次の発明(以下「引用発明5」という。)が記載されているものと認められる。
「エレメンタルアームズというゲームであって、プレイヤーは王国の騎士団に所属するひとりとして、魔王軍と戦い、各騎士団はライバル関係でもあり、魔王軍討伐で獲得できるDPの総量が多い騎士団に勝利報酬が与えられ、魔王軍の邪兵や魔王を撃破すると、報酬として討伐ガチャや魔王ガチャを入手でき、ガチャからは、武器をゲットすることが可能というゲーム。」

6.本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明1とを対比すると、

ア.後者における「ドラリーガー」は前者における「プレイヤ」に相当し、以下同様に「騎士団(チーム)」は「グループ」に、「入団」は「所属」に、「相手チームと競う試合」は「複数の前記グループ間の勝敗が決せられるグループ間イベント」に、「モンスター」は「第2のゲームキャラクタ」に、「iPhone(登録商標)」は「端末装置」に、「アプリ」は「ゲーム」に、それぞれ相当する。

イ.後者の「複数のドラリーガー」はそれぞれが有する「iPhone(登録商標)」を操作して「アプリ」を動作させるのであるから、各「iPhone(登録商標)」は何らかの通信回線により接続されているといえる。

ウ.後者は、複数のドラリーガーは騎士団に入団し、相手チームと試合で競うから、試合の結果、勝敗が決せられることは明らかである。

「複数のプレイヤが参加可能なゲームを提供し、且つ、前記プレイヤが操作する端末装置に通信回線を介して接続され、
前記プレイヤが所属するグループ、及び、複数の前記グループ間の勝敗が決せられるグループ間イベント」をおこなう「ゲーム」である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明1は「サーバ装置であって、
前記ゲームに関連する情報を記憶する情報記憶部と、
前記情報にアクセスし、前記ゲームに関する演算を実行し、且つ、前記ゲームの画像を前記端末装置に表示させる制御部と、
を備え」るのに対して、サーバ装置、情報記憶部、制御部が、引用発明1に含まれているのか否か不明である点。

[相違点2]
本願発明1は「前記情報記憶部は、前記ゲームに関連する情報の一部として、前記プレイヤが所属するグループ、及び、複数の前記グループ間の勝敗が決せられるグループ間イベントの情報を有しており、
前記グループ間イベントは、前記複数のグループと第1のゲームキャラクタとの対戦が行われる第1の対戦イベントを含み、
前記制御部は、前記第1の対戦イベントにおける前記複数のグループのそれぞれと前記第1のゲームキャラクタとの対戦状況又は対戦結果に基づいて、前記複数のグループ間の勝敗を間接的に判定又は決定し、且つ、前記端末装置に、前記第1の対戦イベントにおける前記複数のグループのそれぞれの寄与割合を、前記第1の対戦イベントの進行とともにリアルタイムで経時的に表示」するのに対して、引用発明1は、グループ間イベントを含み、複数のグループ間の勝敗を判定又は決定しているものの、その他の点につき明らかでない点。

[相違点3]
本願発明1の「前記情報記憶部は、前記ゲームに関連する情報の一部として、前記複数のグループのそれぞれと第2のゲームキャラクタとの対戦が行われるグループ別イベントの情報を更に有しており、
前記制御部は、前記グループ別イベントにおける前記グループと前記第2のゲームキャラクタとの対戦状況又は対戦結果に基づいて、前記グループ間イベントで使用することが可能な報酬を該グループに付与し、前記グループ間イベントにおいては、前記グループによる該報酬の使用の有無を加味して、前記複数のグループ間の勝敗を判定又は決定する」するのに対して、引用発明1は、グループ間イベントを含み、複数のグループ間の勝敗を判定又は決定しているものの、その他の点につき明らかでない点。

(2)判断

上記相違点について以下検討する。

ア.相違点1について

本願発明1の「前記プレイヤが操作する端末装置に通信回線を介して接続されるサーバ装置であって、前記ゲームに関連する情報を記憶する情報記憶部と、前記情報にアクセスし、前記ゲームに関する演算を実行し、且つ、前記ゲームの画像を前記端末装置に表示させる制御部」のハードウェア構成は引用発明1には記載されていないが、引用発明1において複数の「ドラリーガー」がそれぞれ操作するiPhone(登録商標)を通じてアプリを動作させるのであるから、上記の個々のiPhone(登録商標)と通信回線を介して接続され、アプリの動作に必要な演算と情報の記憶をするサーバが必要であることは自明であり、上記引用発明1においてアプリの動作をおこなうためには上記ハードウェア構成を有するサーバが稼働していることが前提であることは明らかである。
したがって、引用発明1の「アプリ」を動作させる際には、上記相違点1に係る各ハードウェアが、前記「アプリ」の動作に必須のものであるので、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項は引用発明1に実質的に備えられているといえる。

イ.相違点2について

引用発明2における「一門同士の通常合戦」は、本願発明1における「グループ間イベント」に相当し、以下同様に、「一門戦ボス」は「第1のゲームキャラクタ」に、「一門」は「グループ」に、相当する。
引用発明2の「一門同士の通常合戦」(本願発明1の「グループ間イベント」)は、本願発明1のグループ間イベントは、複数のグループと第1のゲームキャラクタとの対戦が行われる第1の対戦イベントを含み、前記第1の対戦イベントにおける前記複数のグループのそれぞれと前記第1のゲームキャラクタとの対戦状況又は対戦結果としての「スコア」を獲得するものであるというものの、引用発明2において、一門戦ボスと戦うと獲得できるスコアは、貯めて高い「位」を目指し、前記「位」が後半戦でのスーパーボス登場確率に関係するというものであるから、本願発明1における「複数のグループのそれぞれと前記第1のゲームキャラクタとの対戦状況又は対戦結果に基づいて、前記複数のグループ間の勝敗を間接的に判定又は決定」する事項は示されていない。

引用発明3における「合戦」は、本願発明1における「グループ間イベント」に相当し、以下同様に、「BOSS」は「第1のゲームキャラクタ」に、「一門」は「グループ」に、相当する。
しかし、引用発明の「合戦」(本願発明1の「グループ間イベント」)は、複数のグループと第1のゲームキャラクタとの対戦が行われる第1の対戦イベントを含み、前記第1の対戦イベントにおける前記複数のグループのそれぞれと前記第1のゲームキャラクタとの対戦状況又は対戦結果としての「撃破特典」、「活躍特典」を獲得するものであり、「BOSSが撃破されると、BOSSにトドメをさしたプレイヤーの一門メンバーには撃破特典が入り、BOSSに半分以上のダメージを与えた一門メンバーには活躍特典が入る」のであって、本願発明1における「複数のグループのそれぞれと前記第1のゲームキャラクタとの対戦状況又は対戦結果に基づいて、前記複数のグループ間の勝敗を間接的に判定又は決定」する事項は示されていない。

また、引用発明4、及び5は、上記4及び5に示したとおり、一門戦と同様のGvGvRのギルド戦を実行するゲームにおいて、複数のグループ(騎士団、一門、ギルド等)のそれぞれの寄与割合をGvGvR形式のギルド戦の進行とともにリアルタイムで経時的に表示するものではないし、また、本願発明1における「グループ間イベント」、「前記グループ間イベントは、前記複数のグループと第1のゲームキャラクタとの対戦が行われる第1の対戦イベントを含み」、及び「グループ別イベント」の事項を示すものではない 。

したがって、本願補正発明1は、引用発明1ないし5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

ウ.相違点3について
引用発明2?5には、上記4、5及び上記イに示したとおり、相違点3における複数のグループのそれぞれと第2のゲームキャラとの対戦が行われる「グループ別イベント」に相当する事項は示されていない。

したがって、本願補正発明1は、引用発明1ないし5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

7.本願発明2?8について
本願発明2ないし5は、本願発明1を引用するものである。
本願発明1が「サーバ装置」に係る発明であるのに対して、本願発明6ないし8はそれぞれ「サーバ装置の制御方法」、「プログラム」、「ゲームシステム」に係る各発明である他は、本願発明1、6ないし8それぞれの発明特定事項に実質的な差異はない。
よって本願発明2?8は、上記2.と同様の理由により、引用発明1ないし5に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

第5.当審拒絶理由について

1.当審拒絶理由の概要
平成26年5月2日付け手続補正書で補正された請求項1、5、8、9の記載が、不明瞭であるから、上記請求項各項は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2.当審拒絶理由の判断
平成27年2月10日付けの手続補正書において、上記第2のとおり、請求項1、5、8、9の記載は補正されたことにより、請求項1、5、8、9に係る各発明は明確となった。
したがって、当審拒絶理由は解消した。

第6.むすび

以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2015-03-10 
出願番号 特願2013-89857(P2013-89857)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A63F)
P 1 8・ 537- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 植野 孝郎  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 江成 克己
畑井 順一
発明の名称 サーバ装置、その制御方法、プログラム、及びゲームシステム  
代理人 南山 知広  
代理人 萩原 良一  
代理人 青木 篤  
代理人 三浦 剛  
代理人 鶴田 準一  

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