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審判番号(事件番号) データベース 権利
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判定2014600009 審決 特許
判定2014600006 審決 特許
判定2014600057 審決 特許
判定2014600021 審決 特許

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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) H01Q
管理番号 1298220
判定請求番号 判定2014-600047  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2015-04-24 
種別 判定 
判定請求日 2014-10-07 
確定日 2015-03-05 
事件の表示 上記当事者間の特許第4871410号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「伸縮可能なスイベルアンテナ」は、特許第4871410号発明の技術的範囲に属する。 
理由 第1 請求の趣旨及び手続の経緯
本件判定請求の趣旨は,イ号写真及びイ号説明書で示す型式番号「F02E」のアンテナが,特許第4871410号発明の技術的範囲に属する,との判定を求めるものである。
本件に係る手続の主な経緯は以下のとおりである。
出願日 平成20年07月10日(特願2010-515974号)
登録日 平成23年11月25日(特許第4871410号)
判定請求 平成26年10月07日
手続補正 平成26年11月17日
答弁書 平成26年12月25日

第2 本件特許発明
本件発明は,本件特許請求の範囲,明細書及び図面の記載から見て,その特許請求の範囲の独立請求項1に記載されたとおりのものであって(以下「本件特許発明」という。),分説すると次のとおりである。(以下,「構成要件A」などのようにいう。)

「【請求項1】
A 端末機200と電気的に連結される給電部110と,
B 外部から受信された電波を前記給電部110に伝達し,伸縮可能に多段に折り畳まれたアンテナ部120と,
C 前記給電部110と前記アンテナ部120とを連結し,前記アンテナ部120を回動させるヒンジ部130と
を含んだスイベルアンテナ100であって,
D 前記ヒンジ部130は,前記アンテナ部120に連結された挿入部131と,前記給電部110に連結され,一側と他側との直径が互いに異なる段差部132sを持つ溝部132と,前記挿入部131及び前記溝部132を固定するヒンジピン133とを含み,
E 前記アンテナ部120は,前記挿入部131に固定されたホイップアンテナ121と,前記ホイップアンテナ121を中心として折り畳まれる第1乃至第3ロードアンテナ(122乃至124)からなり,
F 前記溝部132の他側132dに比べて内径の小さい前記溝部132の一側132cは前記折り畳まれる1つ以上のロードアンテナ122,123,124のうち,最外郭のロードアンテナ124に収容されることを特徴とする
G 伸縮可能なスイベルアンテナ。」


第3 イ号物件
判定請求書に添付された「イ号説明書」によれば,イ号物件は型式番号「F02E」の端末機に使用されているアンテナであって,請求人はその構成は以下のとおりのものと主張している。
「a. 端末機200’と電気的に連結される給電部110’と,
b. 外部から受信された電波を前記給電部110’に伝達し,伸縮可能に多段に折り畳まれたアンテナ部120’と,
c. 前記給電部110’と前記アンテナ部120’とを連結し,前記アンテナ部120’を回動させるヒンジ部130’と
を含んだスイベルアンテナ100’であって,
d. 前記ヒンジ部130’は,前記アンテナ部120’に連結された挿入部131’と,前記給電部110’に連結され,一側と他側との直径が互いに異なる段差部132s’を持つ溝部132’と,前記挿入部131’及び前記溝部132’を固定するヒンジピン133’とを含み,
e. 前記アンテナ部120’は,前記挿入部131に固定されたホイップアンテナ121’と,前記ホイップアンテナ121’を中心として折り畳まれた第1,第2,第3及び第4のロードアンテナ(122’,123’,124’,125’)のみで構成され,
f. 前記溝部132’の他側132d’に比べて内径の小さい前記溝部132’の一側132c’は前記折り畳まれる1つ以上のロードアンテナ122’,123’,124’のうち,最外郭のロードアンテナ124’に収容されることを特徴とする
g. 伸縮可能なスイベルアンテナ。」

これに対して,被請求人はイ号物件のf.の構成を,
「溝部132’の一側132c’は,前記溝部132’の他側132d’に比べて内径が小さく,折り畳まれる最内側のロードアンテナ122’,その外側のロードアンテナ123’,その外側のロードアンテナ124’及びその外側のロードアンテナ125’のうち,第3のロードアンテナ124’に収容され,収容された状態において第3のロードアンテナ124’の端部は段差部132s’に位置する。
最外部の第4のロードアンテナ125’の先端は,第3のロードアンテナ124’の外側から折り畳まれた状態において,段差部132s’から約0.15mmの位置にある。」
と主張している。
ここで,請求人提出の「イ号説明書」におけるイ号写真1?14をみても,被請求人が主張するイ号物件のf.の構成と矛盾しないことから,これらを総合的に勘案して,イ号物件の構成要件f.は被請求人の主張するとおりものと考えられるから,イ号物件は以下のとおりのものと認める。

(イ号物件)
「a. 端末機200’と電気的に連結される給電部110’と,
b. 外部から受信された電波を前記給電部110’に伝達し,伸縮可能に多段に折り畳まれたアンテナ部120’と,
c. 前記給電部110’と前記アンテナ部120’とを連結し,前記アンテナ部120’を回動させるヒンジ部130’と
を含んだスイベルアンテナ100’であって,
d. 前記ヒンジ部130’は,前記アンテナ部120’に連結された挿入部131’と,前記給電部110’に連結され,一側と他側との直径が互いに異なる段差部132s’を持つ溝部132’と,前記挿入部131’及び前記溝部132’を固定するヒンジピン133’とを含み,
e. 前記アンテナ部120’は,前記挿入部131に固定されたホイップアンテナ121’と,前記ホイップアンテナ121’を中心として折り畳まれた第1,第2,第3及び第4のロードアンテナ(122’,123’,124’,125’)のみで構成され,
f. 溝部132’の一側132c’は,前記溝部132’の他側132d’に比べて内径が小さく,折り畳まれる最内側のロードアンテナ122’,その外側のロードアンテナ123’,その外側のロードアンテナ124’及びその外側のロードアンテナ125’のうち,第3のロードアンテナ124’に収容され,収容された状態において第3のロードアンテナ124’の端部は段差部132s’に位置する。
最外部の第4のロードアンテナ125’の先端は,第3のロードアンテナ124’の外側から折り畳まれた状態において,段差部132s’から約0.15mmの位置にあることを特徴とする
g. 伸縮可能なスイベルアンテナ。」


第4 本件特許発明及びイ号物件についての当事者の主張
1. 請求人の主な主張
(1)構成要件A?D,F?Gに関して
イ号物件の各構成要件は,本件特許発明の構成要件を充足する。(請求書11頁10行?12頁3行,15頁13行?16頁7行,なお,判定請求書には頁数が付されていないが,便宜上,1から順に頁番号を付した。)

(2)構成要件Eに関して
下記(i)?(v)の理由から,特許請求の範囲の解釈には明細書の記載を参酌すべきであり,そうすると,明細書には3個以上のロードアンテナからなることも示唆され,また,本件発明の目的・効果はロードアンテナが3個であることに基づくものではないから,本件特許発明の記載は,3個を超えるロードアンテナからなる物件を排除するものではなく,イ号物件のロードアンテナが4つの場合も含む上位概念である。(請求書12頁4行?15頁7行)
(i)「から」という語は文言解釈上,第三要素を排除する意味では用いられない。(当審注:「Aからなる」と記載された場合に「AとBとからなる」ものは排除されないの意。)
(ii)特許請求の範囲の技術的範囲は,特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならず,その際には,明細書と図面を考慮して,特許請求の範囲に記載された用語の意義が解釈される。(法70条1項,2項)
(iii)知財高裁平成17年12月28日判決(平成17年(ネ)第10103号)にあるように,リパーゼ判決(最高裁平成3年3月8日第二小法廷判決,昭和62年(行ツ)第3号)は特許発明の技術的範囲をより具体的に正確に判断するために明細書に記載された構成や作用効果を考慮することは差し支えないと判じている。
(iv)東京高裁平成17年1月27日判決(平成16年(ネ)第1589号)にも,「AとBからなる」という文言が第3成分を排除しないと解することが可能であることが判示されている。
(v)特許実務上,「からなる」の文言が使用されることもあるが,当該語の意味は,明細書又は審査経過情報を参酌しない限り,明確には理解されない。

(3)均等の主張に関して
仮に,本件特許発明の「第1乃至第3ロードアンテナからなり」の記載が,イ号物件のロードアンテナが4つの場合の上位概念ではないとしても,イ号物件は,本件特許発明との関係において,均等の要件である,(a)非本質的部分,(b)同一目的・作用効果,(c)置換容易性,(d)イ号物件に係る発明の容易推考性を満たし,さらに,本件は審査の過程において補正を一切行っておらず,ロードアンテナの個数を意識的に限定する旨の記載は存在しないから,(e)経緯の参酌の要件も満たし,本件特許発明と均等といえる。(請求書15頁8?12行,16頁下から3行?18頁18行)

2.被請求人の主な主張
(1)構成要件Eに関して
あ.特許請求の範囲に数値等が記載されている場合は,その内容は一義的に特定されて明確であるので,特許法70条2項によって明細書等を参酌して「用語の定義」を解釈する余地はない。明細書や図面を考慮しても3本のロードアンテナを有するものが記載されているから,それ以外の本数は許容されない。(答弁書3頁16行?4頁4行)
い.判例(東京高裁平成17年1月27日判決)は,むしろ「AとBからなる文言は,AとB以外の第3成分を排除する趣旨で使用するのが通常である」と判示している。(答弁書4頁5?22行)
う.発明の詳細な説明にはロードアンテナが3個に限定しない発明も開示されているが,特許請求の範囲は,そこから,出願人の選択によって3本のロードアンテナに特定したのであるから,その特定の範囲を超えて請求項の技術的範囲に取り込むことはできない。請求項の記載のとおりに解釈しないと,事業を行う第三者に不測の不利益を与えかねない。したがって,イ号物件は本件構成要件Eを充足しない。(答弁書4頁23行?5頁8行)

(2)構成要件Fに関して
イ号物件において,溝部の一側を収容するのは最外部ではないロードアンテナ124’であって,最外部のロードアンテナ125ではないから,イ号物件は構成要件Fを充足しない。(答弁書5頁12?23行)

(3)均等について
本件は,出願時に上位概念でクレームを記載することができたにもかかわらずそうしなかったことは,知財高裁平成24年9月26日判決(平成24年(ネ)第10035号)に判示されているように,均等の第5要件(意識的除外)を欠くことになり,均等論を主張することはできない。(答弁書5頁24行?6頁16行)


第5 当審の判断
1.構成要件A?D,Gに関して
構成要件A?D,Gについては,請求人と被請求人との間に充足性に関して争いがないところ,上記各構成要素について検討しても,イ号物件は本件特許発明の構成要件A?D,Gを充足している。

2.構成要件Eの充足性について
構成要件Eにおける本件特許発明とイ号物件との相違点は,本件特許発明では「前記アンテナ部120は,・・・・・第1乃至第3ロードアンテナ(122乃至124)からなり」とあり,3個のロードアンテナについて記載されているのに対して,イ号物件では「前記アンテナ部120’は,・・・・第1,第2,第3及び第4のロードアンテナ(122’,123’,124’,125’)のみで構成され」ており,4個のロードアンテナから構成される点である。

上記相違点に係る本件特許請求の範囲の解釈が争点になっているので,この点について検討する。
本件特許発明の「前記アンテナ部120は,・・・・・第1乃至第3ロードアンテナ(122乃至124)からなり」の記載によれば,アンテナ部が第1乃至第3ロードアンテナによって構成されていることが一義的に明らかであり,他のロードアンテナは排除されると解するのが通常の解釈である。そして,そのように解釈しても,発明の詳細な説明には,第1乃至第3ロードアンテナによってアンテナ部が構成される実施例が記載されているから,実施例の記載と矛盾を生じることはなく,また,特許請求の範囲内の他の記載部分と矛盾することもない。
したがって,特許請求の範囲の記載を解釈する上で,発明の詳細な説明の記載を格別参酌する必要はなく,特許請求の範囲に記載された文言にしたがって,アンテナ部は第1乃至第3ロードアンテナから構成されると解するべきである。
したがって,文言上,イ号物件は本件特許発明の構成要件Eを充足しない。

3.構成要件Fの充足性について
上記「第3」で認定したように,溝部132’の一側132c’は,前記溝部132’の他側132d’に比べて内径が小さく形成されている。そして,当該溝部132’の一側132c’は第3のロードアンテナ124’に収容され,さらに最外部の第4のロードアンテナ125’の先端が,折り畳まれた状態において,段差部132s’から約0.15mmの位置にあり,段差部132s’に近接する位置にまで至っているから,最外部の第4のロードアンテナ125’は第3のロードアンテナ124’の上から溝部132’の一側132c’を収容しているということができる。そして,第3のロードアンテナ124’の上からではあるものの,最外部の第4のロードアンテナ125’は,溝部132’の一側132c’を収容することによって,外力によりヒンジ部の結合部が変形されることを防止するという本件特許発明の効果を奏すると考えられるから,イ号物件は本件特許発明の構成要件Fを充足するということができる。

4.均等論について
請求人は,ロードアンテナの個数(構成要件E)に関して,本件は審査の過程において補正を一切行っておらず,ロードアンテナの個数を審査の過程において意識的に限定したことはないから均等の第5要件を満たすとして,均等論を主張しているから,この点について検討する。
(1)均等の第1要件(本質的部分)
本件特許明細書(特に【0001】,【0006】?【0010】段落)を参照すれば,本件特許発明は「伸縮可能なスイベルアンテナに関し」,アンテナの収納時に「ヒンジ部の変形または損傷」により「耐久性が低下するという」課題を解決するために,「多段に折り畳まれたアンテナ部のうち,最外郭に形成された第3ロードアンテナが溝部の一側を収容するようになされることによって,外力によりヒンジ部の結合部が変形されることを防止」したものである。そうしてみると,本件特許発明においてロードアンテナを3個とすることは,本件特許発明の課題及び効果やこれを解決するための手法とは直接関係しないことであって,これは【0018】段落に「ロードアンテナが3個と図示されているが,当業者の設計に従い,それより少ない1つまたは2つのロードアンテナを含むことができ,3個以上のロードアンテナからなることもできることは勿論である」と記載されていることからも明らかである。
したがって,本件特許発明においてロードアンテナを3個とすることは本件特許発明の本質的部分とはいえず,イ号物件の構成e.は均等の第1要件を満たしている。
(2)均等の第2要件(同一の目的・効果)
ロードアンテナの数が3個であっても4個であっても,外力によりヒンジ部の結合部が変形することを防止し,耐久性を高めるという本件特許発明の目的・効果に差異が生じるものではないから,イ号物件の構成e.は本件特許発明と同一の目的・効果を有するという均等の第2要件を満たしている。
(3)均等の第3要件(置換容易性)
ロードアンテナの数は,伸張時と収納時の長さの制約により様々に決定されることは技術常識にすぎず,また,上記(1)(2)で検討したように本件特許発明においてロードアンテナの数を3個に特定することに格別の意義は存しないから,ロードアンテナの数を3個から4個に置換することは当業者が適宜なし得る程度の事項にすぎず,イ号物件の構成e.は置換容易性という均等の第3要件を満たしている。
(4)均等の第4要件(公知技術との同一性・容易推考性)
国際調査報告書によって引用された
(a)米国特許第6847830号明細書(甲5の1)
(b)韓国特許公開第10-2007-0023987号公報(甲5の2)
(c)米国特許出願公開第2004/0090383号明細書
(d)米国特許出願公開第2007/0247376号明細書
を検討しても,ヒンジ部を構成する溝部の一側は,他側に比べて内径が小さく,この一側がロードアンテナに収容される構成については記載されていないから,イ号物件は公知技術との同一,又は,公知技術から容易に推考できたということはできず,また,被請求人から何らの反証もなされていないことを踏まえても,イ号物件の構成e.は均等の第4要件を満たしているといえる。
(5)均等の第5要件(意識的除外)
本件特許発明は,その審査過程において補正をされた経緯はなく,また請求人がロードアンテナの数が3以外のものは含まれない旨の主張を行った経緯もない。さらに,被請求人から本件特許発明の出願時点における技術常識に照らして,ロードアンテナの数が3以外のものが除かれると解される旨の立証もない。したがって,出願人が意識的にロードアンテナの数が3以外のものを除外したということはできず,イ号物件の構成e.は均等の第5要件を満たしているといえる。

したがって,以上の検討からイ号物件は本件特許発明との関係において均等であるということができる。

4.小括
以上検討したように,均等論を採用することができ,イ号物件は本件特許発明の各構成要件を充足するといえる。


第6 むすび
以上のとおり,イ号物件は,本件特許発明に係る発明の構成要件を充足するので,イ号物件は,本件特許発明の技術的範囲に属する。
よって結論のとおり判定する。
 
判定日 2015-02-24 
出願番号 特願2010-515974(P2010-515974)
審決分類 P 1 2・ 1- YA (H01Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 米倉 秀明  
特許庁審判長 田中 庸介
特許庁審判官 萩原 義則
山本 章裕
登録日 2011-11-25 
登録番号 特許第4871410号(P4871410)
発明の名称 伸縮可能なスイベルアンテナ  
代理人 上野 晋  
代理人 高橋 隆二  
代理人 坂本 智弘  
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