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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A45D
管理番号 1298691
審判番号 不服2014-494  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-10 
確定日 2015-03-10 
事件の表示 特願2009-138381号「まつ毛のメイクアップおよび/または手入れアセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年1月14日出願公開、特開2010-5383号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成21年6月9日(パリ条約による優先権主張 2008年6月10日 フランス)の出願であって、平成25年9月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成26年1月10日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成25年8月14日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
ケラチン物質、特に、まつ毛または眉毛をメイクアップおよび/または手入れするためのアセンブリであって、
前記物質をメイクアップおよび/または手入れするための、振動感受性レオロジーを有する少なくとも1種の組成物を含有する少なくとも1つのコンパートメントを区切る容器と、
前記組成物を前記ケラチン物質に塗布するための塗布部材を含む少なくとも1個のアプリケーターと、
前記ケラチン物質へのその塗布の前、同時または後に、前記メイクアップ組成物を振動させるための振動源と
を含み、
前記組成物が、小板状の粒子を含むことを特徴とする、アセンブリ。」

3.刊行物とその記載内容
刊行物1:特表2008-504945号公報
刊行物2:特開2007-296331号公報
刊行物3:特開2006-312623号公報

(1)刊行物1
原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物1には、「振動式マスカラアプリケータ、好適な組成物および使用方法」に関して以下の事項が記載されている。
1a)「【請求項1】
振動式マスカラアプリケータにおいて、
ハンドル;
前記ハンドルに取り付けられた柄;
前記柄に対して近位端で取り付けられ、前記ハンドルを超えて延在するロッド;
前記ロッドの遠位端に取り付けられた睫毛アプリケータヘッド;および
前記アプリケータヘッドを振動させる手段
を有することを特徴とする振動式マスカラアプリケータ。」

1b)「【請求項31】
マスカラ組成物の入った貯留部;
前記組成物中に浸漬することができ、前記貯留部中でまたは前記マスカラがユーザーの睫毛に塗布されている間に、前記マスカラの粘度を変えることができる睫毛アプリケータヘッドを振動させることができ、該ヘッドを有するマスカラアプリケータ
を有することを特徴とするマスカラアプリケータシステム。」

1c)「【請求項39】
振動式アプリケータとともに用いるマスカラ組成物を開発する方法であって、
振動式アプリケータを選択する段階;
最終前マスカラ組成物を製剤する段階;
前記最終前組成物の対照サンプルから対照流動曲線を得る段階;
前記最終前組成物のサンプルを前記振動式アプリケータで前剪断する段階;
前記前剪断サンプルから前剪断流動曲線を得る段階;
対照および前剪断の流動曲線を比較して、前記アプリケータによって生じた持続的レオロジー効果を確認する段階;
前記組成物中の溶媒を調節することで、前記組成物を前記アプリケータによって剪断した後に起こすことができる分子再構築の量を支持もしくは妨害することにより、前記最終前マスカラ組成物を再製剤する段階
を有することを特徴とする前記方法。」

1d)「【0001】
本発明は、マスカラアプリケータおよびそれとともに使用される組成物に関する。具体的には、本発明は、制御下に振動するマスカラアプリケータならびにそのようなアプリケータのチキソトロピックおよび抗チキソトロピック組成物との使用に関するものである。その振動の周波数および振幅は、制御下にマスカラの粘度を大きく変える上で十分なものであることから、使用時にマスカラを操作して良好な結果を得ることが可能になる。振動式アプリケータおよびチキソトロピックもしくは抗チキソトロピック組成物を用いたそれの使用方法の組み合わせは、マスカラの塗布、製剤および製造の分野において有利なものとなる。」

1e)「【0038】
本発明の別の目的は、塗布直前および/または塗布中に製品の粘度を低下させるマスカラアプリケータを提供することにある。
【0039】
本発明の別の目的は、非常に粘度の高いマスカラを塗布する上で有効な改良されたマスカラアプリケータを提供することにある。
【0040】
別の目的は、例え組成物のレオロジー特性のために非振動式ブラシで用いるには組成物が適さない場合であっても、振動式ブラシとともに用いるのには好適なマスカラ組成物を提供することにある。」

1f)「【0044】
本発明は、振動式アプリケータヘッドを有する化粧品アプリケータである。本発明で使用される組成物は、振動式アプリケータによる振動に応答して予測可能に挙動するものである。具体的には、本発明の組成物には、標準的なレオメトリー流動試験でチキソトロピック的もしくは抗チキソトロピック的な挙動を示すものなどがある。塗布時に組成物の粘度を管理する能力により、消費者に提供可能な製剤の種類が大幅に多くなり、製造および生産コストにおいて有利となる。」

1g)「【0047】
アプリケータ
以上の点を念頭において、本発明による基本的なマスカラアプリケータ(図1および2)は、ハンドル1;ハンドルに取り付けられた柄2a;柄に対して近位端で取り付けられ、ハンドルを超えて延在するロッド2b;ロッドの遠位端に取り付けられた睫毛アプリケータヘッド3;ならびにアプリケータヘッドを振動させる手段を有する。ここで、「睫毛アプリケータヘッド」とは、化粧品の分野で睫毛のメーキャップおよびつくろいに好適であると認識されている構成を意味し、それの最も一般的なものは荒毛ブラシヘッドであり、他のものについては上記で説明した。・・・」

1h)「【0059】・・・
揺動式シェーバーのモーター周波数は、本発明の場合の好ましい範囲600?18000と比較して、5000?6500rpmであると開示されている。当然のことながら、本発明においては、揺動式ブラシの振動値を調節して、マスカラの粘度を変える。対照的に、揺動式シェーバーの振動値は恐らく、顔面の髭の持ち上げを至適とするように選択される。」

1i)「【0066】
図7bに相当する表1は、対照と比較して、前剪断されたマスカラを変形(剪断)させるのに、必要な応力は相対的に低いことを示している。すなわち、振動式ブラシがマスカラの粘度を低下させ、その低下した粘度はブラシを取り除いてから少なくとも2?5分間は持続していた。図8bに相当する表2は、平均で、対照と比較して、前剪断されたマスカラを変形(剪断)させるのに、より大きい応力が必要であったことを示している。すなわち、振動式ブラシによってマスカラの粘度が上昇し、この上昇した粘度が、ブラシを取り除いた後少なくとも2?5分間持続していた。
【0067】
表3および4は、これを強調するものである。これらの表におけるデータはやはり、それぞれ図7および8に示された試験から取ったものである。これらの表は、剪断を徐々に上昇させたとき、そして剪断を徐々に下降させたときの、試験中における特定の剪断速度でのマスカラの粘度を挙げてある。表3では、対照が、剪断速度100/秒での約64ポアズの粘度から、剪断速度900/秒での約8ポアズに下がり、100/秒で上昇して約29ポアズまで戻ることがわかる。このマスカラは、試験によってかなり低粘度になっている。同じパターンが、3分サンプルおよび10分サンプルの場合にも認められる。しかしながら、非常に重要な点として、振動式ブラシによる前剪断の結果として、粘度範囲全体は下方に移動している。想起すべき点として、前剪断サンプルは2?5分間静置してから、レオロジー試験を行っており、その間に粘度が明瞭に再構築されているが、試験開始までは粘度は対照値よりかなり低いままである。すなわち、振動式ブラシの低粘度化効果が、2?5分より長く持続する。本願出願人が知る限りにおいて、そのようなもしくは同様の持続効果はこれまでに報告されていない。」

1j)「【0068】
表4から、対照が、剪断速度100/秒での約64ポアズの粘度から、剪断速度900/秒での約14ポアズに下がり、100/秒で上昇して約71ポアズまで戻ることがわかり、それは上昇時の剪断速度100/秒でのそれの粘度より大きい。従って、このマスカラは、レオロジー試験によってかなり高粘度化している。同じパターンが、3分サンプルおよび10分サンプルの場合にも認められる。ただし、ほとんどの部分で、粘度範囲全体が上側に移動しており、それは振動式ブラシによる前剪断によってもマスカラが高粘度化していることを意味している。想起すべき点として、前剪断サンプルは2?5分間静置してから、レオロジー試験を行っており、振動式ブラシの高粘度化効果が2?5分間を超えて持続するものであることを示している。」

1k)「【0069】
これらの表は、本発明による振動式ブラシが、広い範囲の印加剪断にわたって測定可能なマスカラに対する持続的効果を有しており、その効果が顕著であり、従って有用であることを示していることから、重要である。振動式アプリケータの全体的な効果が粘度を低下させるものであるか上昇させるものであるかは、部分的には、マスカラの組成によって決まる。」

1l)「【0071】
本願全体を通じて、「チキソトロピックマスカラ」とは、振動式アプリケータに対する全体的な応答が、粘度を失うことであり、その粘度低下が振動を停止した後に実質的に長い期間持続するマスカラを意味する。その実質的期間とは、ユーザーがマスカラを処方の方法で十分に塗布するには十分長いものであり、例えば少なくとも約2?5分間である。さらに、粘度の低下は、その実質的期間後に自己可逆的である。本願全体を通じて、「抗チキソトロピックマスカラ」とは、振動式アプリケータに対する全体的な応答が粘度の獲得であり、その粘度獲得は振動を停止してから実質的期間にわたって持続するマスカラを意味する。その実質的期間とは、ユーザーがマスカラを処方の方法で十分に塗布するには十分長いものであり、例えば少なくとも約2?5分間である。さらに、粘度の獲得は、その実質的期間後に自己可逆的である。」

1m)「【0075】
このシステムの主要な利点は、いわゆる両立させることができる点である。例えば、ユーザーは、剪断時の粘度低下のために、睫毛上により容易に流れて、より多量の製品をより滑らかでより容易に塗布できるようにし、良好な分離と塊状化低減を行い、他方において、粘度が有用なレベルまで再構築されるのに十分な時間が充てられることから、充填度および全体的な外観に悪影響がないマスカラシステムをユーザーに提供することができる。別の例においては、初期粘度が通常より低いが、振動式ブラシによって塗布時に粘度が上昇するマスカラが、ユーザーに供給される。塗布後、溶媒の急速な損失のために、粘度はほとんど低下しない。より薄いマスカラを製剤する効果が、製造において生じる。前記のように、マスカラは非常に濃厚で取り扱いが困難であることから、製造時に粘度が低下すれば、エネルギーおよびコストの削減となる。他の例は、当業者には容易に明らかになろう。組み合わせのマスカラおよび振動式ブラシシステムを開発する上で、非常に重要な点は、マスカラの振動式ブラシに対する応答についての何らかのアイデアである。当然のことながら、開発者は常に、振動をいつ使用し、それをいつ使用しないかについてユーザーに指示を与える選択肢を有している。通常、アプリケータが貯留部中および睫毛上にある間、塗布全体を通じて振動を使用することができるか、あるいは貯留部でのみまたは睫毛上でのみ振動を用いることができる。開発者は、マスカラの振動式ブラシに対する応答に基づいてこれを自由に選択することができる。従って、本発明は、振動式マスカラブラシの使用に関する説明書を含むキットも包含するものである。」

1n)「【0076】
これらの原理の一つの一般的利用分野について、以下のように説明することができると考えられる。例えば開発者が、何らかの最終前のバージョンのマスカラと比較して、睫毛塊状化の少ないマスカラ組成物を作りたいと思う。従来では、開発者は、比較的遅く蒸発する液体のレベルを上げることで、マスカラをより湿って、より流動性の高いものに維持するようにするであろう。それを行うことの欠点は、恐らくは塗布が終わってからかなり経って、比較的長い期間にわたり、製品粘度が比較的低いままであるために、それによって組成物の汚しが増加し、別の表面に移動する傾向があるという点である。あるいは、本発明によれば、開発者は、製剤を十分にチキソトロピックとすることで、比較的遅く蒸発する液体のレベルを比較的低く維持しつつ、適切に選択された振動式アプリケータで一時的に粘度を低下させ、それによって塗布時の塊状化を低減することができる。・・・」

1o)「【0085】
本明細書に記載の組成物とともに用いられる振動式アプリケータは、開発者による指示に従って、多くの形で使用することができる。ブラシが貯留部中にある間に振動をオンにすることが適切であると考えられる。開発者は、使用前に長い時間、例えば3分間もしくは10分間、振動式ブラシを貯留部に入れたままにしておくことを提案しても良く、提案しなくてもよい。あるいは、振動式ブラシが所望の効果を有するのに必要な時間は、ブラシを貯留部から取り出すのに要する時間より短くすることができる。あるいは、その剪断量が特定の組成物および所望の効果には十分である場合には、顧客は、貯留部にある時にはブラシをオンにせず、睫毛上に塗布する時のみオンにすればよい。恐らく、ユーザーは、振動を加えるか加えずに1以上のマスカラコートを塗布し、次にそれぞれ振動を加えずにまたは加えて1以上のオーバーコートを塗布することができると考えられる。例えば、ベースコートが厚さおよび伸長を提供し、オーバーコートが分離および細分化を行うことになるであろう。あるいは、振動を加えてまたは加えずに睫毛をコーティングすることができ、次に実質的に何も付着していないブラシを用いて、それぞれ振動を加えてまたは加えずに睫毛を梳くことができると考えられる。アプリケータに対して複数の周波数設定を設けた場合、開発者は、製品の堆積に一つの速度および睫毛の梳きに第2の速度を推奨することができる。これらは、振動およびマスカラ特性を組み合わせて、有用な効果を得ることができるほんの数例である。」

1p)上記1b)の記載より、マスカラアプリケータシステムは、マスカラ組成物、マスカラ組成物の入った貯留部、睫毛アプリケータヘッド、該ヘッドを有するマスカラアプリケータを備えたものであるといえる。

1q)上記1d)、1h)、1j)、1k)、1m)の記載より、マスカラアプリケータの振動は、マスカラ組成物の粘度を変えるものであるといえる。

1r)上記1m)の記載より、マスカラアプリケータシステムは、マスカラ組成物の睫毛への塗布にあたって、アプリケータが睫毛上にある間にアプリケータヘッドを振動させる手段を備えるといえる。

上記刊行物1における1a)ないし1r)の記載及び図面の記載から、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。
「睫毛にマスカラ組成物を塗布するためのマスカラアプリケータシステムであって、
睫毛に塗布するための、マスカラアプリケータの振動によって粘度を変えるマスカラ組成物が入った貯留部と、
マスカラ組成物を、睫毛に塗布するためのアプリケータヘッドを有するマスカラアプリケータと、
マスカラ組成物の睫毛への塗布にあたって、アプリケータが睫毛上にある間にアプリケータヘッドを振動させる手段とを備えた、
マスカラアプリケータシステム。」

(2)刊行物2
原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物2には、「メイクアップおよび/またはケアキット」に関して以下の事項が記載されている。

2a)「【0007】
すなわち本発明の一つの側面に従うと、本発明の一つの課題は睫をメイクアップする及び/又はケアするためのキットにおいて、
組成物の合計重量に対して26重量%以下のワックス及び親水性ポリマーの合計含有量を有する少なくとも1の組成物(i)、
組成物の合計重量に対して26重量%超のワックス及び親水性フィルム形成性ポリマーの合計含有量を有する少なくとも1の組成物(ii)
を含むキットであって、
該組成物(i)及び(ii)の少なくとも1つが連続的水性相を含むこと、及び、該キットが、睫の房に施与するための手段であって、少なくとも1の列の形態で支持部(5)の上に配置された複数の施与部材(6;60)を含み、該列の長さは、施与部材(6;60)が睫の房のせいぜい4分の1以下と同時に接触できるようなものであるところの手段を含むことを特徴とするキットである。
【0008】
発明者らは、組成物(i)及び(ii)(その少なくとも1つがこの特定の施与手段を使用して施与される)、より好ましくは組成物(ii)の睫への施与が、より体積を増加させる又はチャージングする堆積物を睫の房の一部にのみ、例えば睫の房の外側せいぜい3分の1以下に作ることを容易に可能にすることを観察した。
【0009】
特に、組成物(i)は、滑らかで均一な堆積物であって、施与しやすく、睫を被覆し、分離し、及び/又は長くする堆積物を得ることを可能にする堆積物を得ることを可能にする。組成物(i)は、控えめにチャージングするメイクアップを得ることを可能にする、すなわちそれは睫を濃くしない。すなわち自然なメイクアップが得られる。すなわち、ワックス及び親水性ポリマーの合計含有量のために、物質のより多い堆積物を作ることを可能にする組成物(ii)を施与することにより、メイクアップのこの第一フィルム上で、睫の房の一部のみに、例えば睫の房の外側せいぜい3分の1以下に、よりボリュームを与える又はチャージングする堆積物を容易に作ることを可能にする。
【0010】
すなわち、このキットは、組成物(i)の堆積物により付与されるメイクアップと組成物(ii)の堆積物により付与されるものとの対比を強調し、同時に審美的ではないと考えられる「だま」の形成を回避することを可能にする。」

2b)「【0152】
フィラー
本発明の組成物(i)又は(ii)のそれぞれは少なくとも1のフィラーをもまた含み得る。
【0153】
フィラーは、当業者に周知であり、化粧料組成物において一般的に使用されるものから選択されることができる。フィラーは鉱物性又は有機性、ラメラ状又は球状であることができる。タルク、マイカ、シリカ、カオリン、ポリアミド粉末、例えばOrgasol(商標)の名前でアトケム社により販売されているナイロン(商標)、ポリ-β-アラニン粉末及びポリエチレン粉末、テトラフルオロエチレンポリマーの粉末、例えばTeflon(商標)、ラウロイルリジン、澱粉、窒化ホウ素、膨張されたポリマー状の中空微小球、例えば塩化ポリビニリデン/アクリロニトリルの微小球、例えばノーベルインダストリーズ社によりExpancel(商標)の名前で販売されている製品、アクリル粉末、例えばダウコーニング社によりPolytrap(商標)の名前で販売されているもの、ポリメチルメタクリレート粒子及びシリコーン樹脂ミクロビーズ(例えば東芝製のTospearls(商標))、沈殿した炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸水素マグネシウム、ハイドロキシアパタイト、中空シリカ微小球(Maprecos製シリカビーズ(商標))、ガラス又はセラミックのマイクロカプセル、8?22の炭素原子、特に12?18の炭素原子を含む有機カルボン酸から誘導される金属石鹸、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、又はステアリン酸リチウム、ラウリン酸亜鉛及びミリスチン酸マグネシウムが挙げられ得る。」

上記2a),2b)の記載から、刊行物2には、「睫をメイクアップする及び/又はケアするためのキットに用いられる化粧料組成物が、フィラーとして鉱物性又は有機性、ラメラ状又は球状のタルク、マイカ、シリカ、カオリンなどを含む」ことが記載されている。

(3)刊行物3
原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物3には、「まつ毛用化粧料」に関して以下の事項が記載されている。

3a)「【0012】
[まつ毛用化粧料]
本発明のまつ毛用化粧料は、ポリマー(A)、25℃で固体の油性成分及び平均粒径1?20μmの粉体を含有する。
本発明のまつ毛用化粧料において、ポリマー(A)の含有量は、全化粧料中に1?30質量%含有することにより良好なカールアップ効果とその保持効果を発現することができる。カールアップ効果と、重ね塗りをしてもダマが発生しない、美しい仕上がりの点より、特に1?10質量%、さらに2?6質量%の範囲で含有することが好ましい。」

3b)「【0015】
本発明で用いる粉体としては、平均粒径1?20μmの粉体であれば特に制限はないが、カールアップ効果の観点から、特に2?10μmがより好ましい。なお、粉体の平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば(株)堀場製作所社製、LA-920)を用いてレーザ回折法で測定した値(メジアン径)である。
また、粉体の形状は、球状、平板状、粒状、針状、棒状、無定形等のいずれであってもよく、特に球状が好ましい。
【0016】
本発明で用いる粉体には、無機粉体、有機粉体などが含まれる。無機粉体としては、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン等の板状無機粉体、シリカ、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸マグネシウム等の球状もしくは不定形無機粉体;有機粉体として、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンとアクリル酸の共重合体、シリコーン樹脂等の有機粉体などが挙げられる。
このうち、無機粉体が好ましく、更に球状無機粉体が好ましい。より具体的にはシリカを用いることが好ましい。なお、有機粉体においては、親水処理することにより好ましい形態となる。」

上記3a)、3b)の記載から、刊行物3には、「まつ毛用化粧料がタルク、マイカ、セリサイト、カオリン等の板状無機粉体を含む」ことが記載されている。

4.発明の対比
本件発明と、引用発明とを対比すると、引用発明の「睫毛」は、本件発明の「まつ毛」であって、さらに「ケラチン物質」に相当し、引用発明の「塗布」は、睫毛にマスカラ組成物を塗布するものであるから、本件発明の「メイクアップ」に相当する。
引用発明の「マスカラアプリケータシステム」は、マスカラ組成物、貯留部、睫毛アプリケータヘッドと、該ヘッドを有するマスカラアプリケータを備えたものであることから、本件発明の「アセンブリ」に相当し、引用発明の「マスカラアプリケータの振動によって粘度を変えるマスカラ組成物」は、マスカラ組成物が、マスカラアプリケータから与えられる振動によってその粘度すなわちレオロジーを変化させるものであるから、本件発明の「振動感受性レオロジーを有する少なくとも1種の組成物」に相当する。
引用発明の「貯留部」は、刊行物1の図1、2に図示された貯留部20の構造からみて、マスカラ組成物を内部に入れるための空間を画定する容器に他ならないから、本件発明の「少なくとも1つのコンパートメントを区切る容器」に相当し、引用発明の「アプリケータヘッド」は、マスカラ組成物を、睫毛に塗布するためのものであるから、本件発明の「塗布部材」に相当し、引用発明の「マスカラアプリケータ」は、本件発明の「アプリケータ」に相当する。
引用発明の「アプリケータヘッドを振動させる手段」は、マスカラアプリケータの機能からみて、アプリケータヘッドを振動させることによって、マスカラ組成物を振動させるものであることは明らかであるから、本件発明の「メイクアップ組成物を振動させるための振動源」に相当し、引用発明の「備えた」は本件発明の「含む」に相当する。
そして、引用発明の「マスカラ組成物の睫毛への塗布にあたって、アプリケータが睫毛上にある間」は、本件発明の「ケラチン物質へのその塗布の前、同時または後」に含まれるものであって、本件発明の「ケラチン物質へのその塗布の前、同時または後」とは、「ケラチン物質へのその塗布と同時」であることにおいて共通する。

よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「ケラチン物質、特に、まつ毛をメイクアップするためのアセンブリであって、
前記物質をメイクアップするための、振動感受性レオロジーを有する少なくとも1種の組成物を含有する少なくとも1つのコンパートメントを区切る容器と、
前記組成物を前記ケラチン物質に塗布するための塗布部材を含む少なくとも1個のアプリケーターと、
前記ケラチン物質へのその塗布と同時に、前記メイクアップ組成物を振動させるための振動源と
を含むことを特徴とする、アセンブリ。」

[相違点]
振動感受性レオロジーを有する少なくとも1種の組成物に関して、本件発明においては、小板状の粒子を含むものであるのに対して、引用発明においては、小板状の粒子を含むものであるか不明である点。

5.相違点の判断
以下、上記相違点について判断すると、睫毛をメイクアップするための化粧料における充填剤(フィラー)として、タルク、マイカ、シリカ、カオリン等の小板状の粒子を用いることは、刊行物2,3に記載された事項からみて周知の技術的事項であるから、引用発明のマスカラ組成物においても、小板状の粒子を含む充填剤を採用して、上記相違点に係る本件発明とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
そして、本件発明による効果も、引用発明及び周知の技術的事項から、当業者が予測し得る程度のものであって、格別なものとはいえない。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が、特許を受けることができない以上、請求項2ないし10に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-06 
結審通知日 2014-10-14 
審決日 2014-10-27 
出願番号 特願2009-138381(P2009-138381)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A45D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 裕之  
特許庁審判長 山口 直
特許庁審判官 蓮井 雅之
松下 聡
発明の名称 まつ毛のメイクアップおよび/または手入れアセンブリ  
代理人 村山 靖彦  
代理人 志賀 正武  
代理人 実広 信哉  
代理人 渡邊 隆  

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