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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B25J 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B25J |
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管理番号 | 1298964 |
審判番号 | 不服2014-12509 |
総通号数 | 185 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-06-30 |
確定日 | 2015-03-16 |
事件の表示 | 特願2010- 18986「ロボット制御装置およびロボット制御装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 8月18日出願公開、特開2011-156611〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成22年1月29日の出願であって、平成25年10月28日付けで拒絶の理由が通知され、平成25年12月20日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、平成26年3月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年6月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書、特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。 II.平成26年6月30日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成26年6月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項3は、次のように補正された。 「産業用ロボットを駆動するためのモータと、前記モータを制動するための制動手段と、前記モータを駆動するモータ駆動手段とを備えるロボット制御装置の制御方法であって、 前記制動手段が作動して前記モータが停止するとともに電力が供給された状態の前記モータ駆動手段が前記モータへの電流の供給を停止する前記産業用ロボットの待機モードへの移行ステップを備え、 前記モータ駆動手段は、前記待機モードにおいて、前記モータに流れる電流を監視しながら前記モータへ電流が供給されないように所定の制御を行うことを特徴とするロボット制御装置の制御方法。」 (なお、下線は補正箇所を示すものである。) 2.補正の目的及び新規事項の追加の有無 本件補正は、「モータ駆動手段」について、「前記待機モードにおいて、前記モータに流れる電流を監視しながら前記モータへ電流が供給されないように所定の制御を行う」との限定を付加するものであり、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。 3.独立特許要件 そこで、本件補正後の前記請求項3に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 3-1.引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-297366号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「【0015】【作用】停止期間検出手段と、電流制御手段とは、マニプレータがプレイバックなどにより動作中、経過時間待ち、及び入力待ちの状態になる毎に、その都度、モータとブレーキの電流を遮断、又は低減するように働く。産業用ロボットにおいては、或る作業エリア内において一定の作業をしようとする際、一般的には入力待ち及び経過時間待ちの状態の時間がかなり有る。従って、この間、電流を遮断することにより、消費電力を充分に低減することができる。 【0016】【実施例】以下、本発明による産業用ロボットについて、図示の実施例により詳細に説明する。まず、図2は、本発明の一実施例が適用されたロボット装置の全体構成を示したもので、ここでは一例として、上アーム9と、前アーム15を備えた多関節型のロボット本体(マニプレータ)1を用いたロボット装置が示してあり、さらに、このロボット本体1に接続された制御盤2と、この制御盤2に接続されたプレイバックコンソール3、それに、このプレイバックコンソール3に接続されたプログラミングユニット4がそれぞれ示されている。 【0017】図1は、ロボット本体1の駆動系について、上アーム9を例にして示した詳細構成図で、他のアーム、例えば前15なども同様の構成となっているのは、いうまでもない。この図1において、5はモータ(サーボモータ)、6はオフブレーキタイプのブレーキ装置、7は位置検出器、8は減速機、10はサーボアンプ、11はモータ軸、12はブレーキ回路、13はコントロール部、それに14は温度検出器である。 【0018】まずアーム9は減速機8を介してモータ軸11に結合されており、モータ5の回転により揺動駆動される。ブレーキ装置6はモータ5に内蔵されており、これによりモータ軸11の回動を固定し、姿勢保持を行なう。位置検出器7はモータ軸11の回動に応じて位置検出を行ない、この位置の検出結果に応じてサーボアンプ10がモータ電流を制御する。 【0019】ティーチング情報はプログラミングユニット4から入力され、プレイバックコンソール3を経てコントロール部13に入力される。そして、このコントロール部13は、プレイバックコンソール3からの情報を基にして予めティーチされた内容をサーボアンプ10に入力し、モータ5を駆動するようになっている。一方、ブレーキ装置8は、ブレーキ回路12により、コントロール部13の指令に基づいて制御され、電流が供給されたときブレーキ力を開放し、電流が絶たれたときブレーキ力を働かせる動作を行なう。 【0020】コントロール部13は制御盤2に内蔵されているもので、マイクロコンピュータを備え、そこに搭載してある各種のプログラムに従ってそれぞれ所定の処理を実行し、ロボット制御に必要な各種の処理を遂行するように構成されている。」 (イ)「【0025】次に、この間、コントロール部13は、それに付与されている停止期間検出手段により、この時刻T_(1)以降、時刻T_(4)までの期間T_(w)に入ったことが検出されたら、ここで同じくコントロール部13に付与されている電流制御手段によるモータ5とブレーキ装置6の電流の制御を開始させ、まず、時刻T_(1)でブレーキ装置6の電流を減少させ始め、以後の所定の時点T_(2)で0に遮断させる。そしてこれと並行して、この所定の時点T_(2)でモータ5の電流を遮断させるのである。 【0026】つまり、ブレーキ装置6の電流は、時刻T_(1)まではブレーキを開放状態を保つための一定値を保っているが、時刻T_(1)からブレーキを作動させるため減少し始め、時刻T_(2)で0になり、ここでブレーキ力が完全に作動する。この結果、この時刻T_(2)からは、ブレーキ装置6によるブレーキ力が完全にきき始めるため、この時点以降、モータ5の電流を0にするのである。」 (ウ)「【0029】従って、この実施例によれば、経過時間待ちの時刻T_(1)から時刻T_(4)までの期間T_(w)の内、時刻T_(2)からT_(3)までは、ロボット本体1の姿勢制御に変化を与えること無く、モータ電流及びブレーキ電流を0にすることができ、電力消費を減少させることができ、省エネルギー化を促進させることができる。」 (エ)第2図には、産業用ロボット装置の全体構成図(特にモータ5とサーボアンプ10が接続されている点)が図示されている。 これら記載事項(ア)、(イ)、(ウ)及び図示内容の認定事項(エ)を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「産業用ロボットを駆動するためのモータ5と、前記モータ5を制動するためのブレーキ装置6と、前記モータ5を駆動するサーボアンプ10とを備えるロボット制御装置の制御方法であって、前記ブレーキ装置6が作動して前記モータ5が停止するとともに前記サーボアンプ10が前記モータ5への電流を0にする入力待ちの状態に移行する行程を備え、たロボット制御装置の制御方法。」 3-2.対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明の「モータ5」は、本願補正発明の「モータ」に相当し、以下同様に、「ブレーキ装置6」は「制動手段」に、「サーボアンプ10」は「モータ駆動手段」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「前記モータ5への電流を0にする入力待ちの状態に移行する行程」と、本願補正発明の「前記モータへの電流の供給を停止する前記産業用ロボットの待機モードへの移行ステップ」とは、「前記モータへの電流の供給を停止した状態への移行ステップ」である点で共通している。 そうすると、両者は次の点で一致する。 (一致点) 「産業用ロボットを駆動するためのモータと、前記モータを制動するための制動手段と、前記モータを駆動するモータ駆動手段とを備えるロボット制御装置の制御方法であって、前記制動手段が作動して前記モータが停止するとともに前記モータ駆動手段が前記モータへの電流の供給を停止した状態への移行ステップを備え、たロボット制御装置の制御方法。」 そして、両者は、次の相違点1、2で相違する。 (相違点1) 制動手段が作動してモータが停止するとともにモータ駆動手段がモータへの電流の供給を停止するときに、本願補正発明では「モータ駆動手段に電力が供給された状態である産業用ロボットの待機モード」に移行するのに対し、引用発明ではそのようになっているか不明である点。 (相違点2) 本願補正発明では、「前記モータ駆動手段は、前記待機モードにおいて、前記モータに流れる電流を監視しながら前記モータへ電流が供給されないように所定の制御を行う」のに対し、引用発明ではそのようになっているか不明である点。 3-3.相違点の判断 上記相違点について検討する。 (相違点1について) モータの制御を行う際に、モータへの電流の供給を停止するにあたり、モータ駆動手段に電力が供給された状態でモータへの電流の供給を停止するようにすることは従来周知の技術に過ぎないものである(例えば、特開2003-26020号公報(【0037】)、特開2000-211105号公報(【0026】)、特開2000-79472号公報(【0027】)、特開平11-217112号公報(【0027】、【0031】)等参照。特に、特開2003-26020号公報の【0037】には、「いつでも駆動を再開できる状態で、例えばモータの電流をゼロに制御して待機しているものである。」との記載があり、本願発明と同様に(本願明細書の【0010】)、応答性を向上させているものである)。してみると、引用発明に、従来周知の技術事項を適用して、その状態を「産業用ロボットの待機モード」と言い表わすことで、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。 (相違点2について) モータ電流を所定の値に制御するにあたり、モータに流れる電流を監視しながらモータ電流を制御するようにすることは従来周知の技術である(例えば、特開2003-26020号公報(【0031】)、特開平11-259111号公報(【0017】、【0018】、【0026】、【0027】)、特開2001-239480号公報(【0032】、【0042】)等参照。)。そして、引用発明において、サーボアンプ10がモータ5への電流を0にする入力待ちの状態でも、電流が誤って流れることがないよう監視することは当然行うことであるから、引用発明に、従来周知の技術事項を適用して、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び従来周知の技術事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3-4.むすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり、決定する。 III.本願発明 平成26年6月30日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、 本件出願の請求項1ないし6に係る発明は、平成25年12月20日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項及び出願当初の特許請求の範囲の請求項2ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められ、その請求項4に係る発明は、以下のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。 「産業用ロボットを駆動するためのモータと、前記モータを制動するための制動手段と、前記モータを駆動するモータ駆動手段とを備えるロボット制御装置の制御方法であって、 前記制動手段が作動して前記モータが停止するとともに電力が供給された状態の前記モータ駆動手段が前記モータへの電流の供給を停止する前記産業用ロボットの待機モードへの移行ステップを備えることを特徴とするロボット制御装置の制御方法。」 IV.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1、及び、その記載事項は、前記II.3-1.に記載したとおりである。 V.対比・判断 本願発明は、前記II.1.の本願補正発明から、「モータ駆動手段」の限定事項である「前記待機モードにおいて、前記モータに流れる電流を監視しながら前記モータへ電流が供給されないように所定の制御を行う」との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.3-3.に記載したとおり、引用発明及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 VI.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 そして、本願発明が特許を受けることができないものである以上、本件出願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-01-13 |
結審通知日 | 2015-01-16 |
審決日 | 2015-02-02 |
出願番号 | 特願2010-18986(P2010-18986) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B25J)
P 1 8・ 575- Z (B25J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 崇文 |
特許庁審判長 |
石川 好文 |
特許庁審判官 |
栗田 雅弘 原 泰造 |
発明の名称 | ロボット制御装置およびロボット制御装置の制御方法 |
代理人 | 小平 晋 |