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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1299022
審判番号 不服2013-14079  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-22 
確定日 2015-03-25 
事件の表示 特願2010-531328「マイコプラズマ・ボビス ワクチン」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 5月 7日国際公開、WO2009/058833、平成23年 1月 6日国内公表、特表2011-500093〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成20年(2008年)10月29日(パリ条約による優先権主張 2007年10月29日、2008年6月25日、いずれも米国)を国際出願日とする出願であって、本願の請求項に係る発明は、平成25年1月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?38に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項7に係る発明は、以下のとおりのものである。

「【請求項7】
牛におけるマイコプラズマ・ボビスによって生ずる感染の治療又は予防のための方法に用いるため、あるいは、牛におけるマイコプラズマ・ボビスによって生ずる臨床兆候の発症又は重症度を減少させるための、弱毒化された非病原性のマイコプラズマ・ボビス細菌株の生細菌を有する免疫原性組成物であって、
前記細菌が10回より多く継代されている、前記免疫原性組成物。」(以下、「本願発明」という。)

第2 引用例
(1)原査定の拒絶の理由において引用文献3として引用された、本願優先日前の2007年4月5日に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2007/0077260号明細書(以下、「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている(英語で記載されているため、日本語訳で摘記する。下線は当審で付与した。)。

ア.「1.少なくとも1種の不活化または弱毒化マイコプラズマ・ボビス バイオタイプと、アジュバント、医薬上許容される賦形剤とを含むマイコプラズマ・ボビス臨床疾患からウシ種を防御するワクチンであって、
該アジュバントは、サポニンを含まず、該臨床疾患は、呼吸性肺炎を含み、そして、該ワクチンは望ましくない反応を引き起こさない。」(特許請求の範囲の請求項1)

イ.「また、ワクチンに用いるマイコプラズマ・ボビス バイオタイプは弱毒化され得る。「弱毒化」なる用語は、「改変された生の」とも称され、マイコプラズマ・ボビスの生きているバイオタイプを称することを意図し、それは、限定されるものではないが、多重連続継代培養、温度感受性弱毒化、突然変異等を包含する多くの公知の方法のいずれかにより弱毒化(改変)される。そのようにして得られた株は、ウシ種に対して比較的非病原性である。改変された生の株は、ワクチンを接種した動物において限定的に複製され、病原性または野生型株マイコプラズマ・ボビスに起因する疾患に対して防御を与える防御免疫応答を誘発できるべきである。」([0012])

ウ.「「バイオタイプ」なる用語は、種、すなわち、株の変異を意味し、リボソームRNA配列変異、DNA多形、血清型またはトキシン産生のような1つ以上の特徴によって区別できる。」([0014]3行?7行)

エ.「肉牛および乳牛におけるマイコプラズマ・ボビスに起因する感染症が関連する臨床疾患と死は、伝染性乳房炎、呼吸性肺炎、関節感染症(関節症状)、角結膜炎および中耳感染症を包含する。」([0004]8行?12行)

上記ア.?エ.から、引用例3には、 以下の発明が記載されていると認められる。
「マイコプラズマ・ボビスに起因する感染症が関連する臨床疾患からウシ種を防御するための、弱毒化された、比較的非病原性のマイコプラズマ・ボビスの改変された生の株を含むワクチンであって、前記株が多重連続継代培養されている、前記ワクチン。」(以下、「引用発明」という。)

(2)原査定の拒絶の理由において引用文献2として引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物であるRes.Vet.Sci.,1980,29(3),p.328-32(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている(英語で記載されているため、日本語訳で摘記する。下線は当審で付与した。)。

オ.「マウス乳腺炎モデルが、マイコプラズマ・ボビス株の研究のために使用された。液体培地で60回以上継代された株は、より少なく継代された同じ、又は違う株と比べて顕著に弱毒であった。」(328頁左欄1行?5行)

カ.「病原性株の死又は改変の仕組みがどのようなものであっても、該仕組みは、マイコプラズマ・ボビス乳腺炎の発症機序に対する更なる知見を提供するはずであり、該知見はたぶん、この病気のための安定なワクチンを導き得るだろう。」(332頁右欄28行?32行)

キ.「マウスモデルは、M.ボビスによる乳腺感染の十分な研究と種々の株による感染比較を可能にする。」(328頁左欄21行?23行)

第3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
本願明細書には、「「免疫原性又は免疫学的組成物」とは、目的とする組成物又はワクチンに対する細胞性及び/又は抗体介在性の免疫応答という宿主中の免疫応答を引き起こす、少なくとも1つの抗原を有する物の組成物を意味する。」(【0019】)と記載されており、引用発明の「ワクチン」は、本願発明の「免疫原性組成物」に相当する。また、引用発明の「マイコプラズマ・ボビスに起因する感染症が関連する臨床疾患からウシ種を防御するため」とは、本願発明の「牛におけるマイコプラズマ・ボビスによって生ずる感染の予防のための方法に用いるため」に相当する。

そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

一致点:
「牛におけるマイコプラズマ・ボビスによって生ずる感染の予防のための方法に用いるための、弱毒化されたマイコプラズマ・ボビス細菌株の生細菌を有する免疫原性組成物であって、
前記細菌が継代されている、前記免疫原性組成物」である点。

相違点:
(1)細菌の継代が、本願発明では、10回より多く継代されているのに対して、引用発明では、多重連続継代であり、回数は特定されていない点。
(2)弱毒化されたマイコプラズマ・ボビス株が、本願発明では、非病原性であるのに対して、引用発明では、比較的非病原性である点。

第4 当審の判断
1.相違点(1)について
上記引用例2には、M.ボビスによる乳腺感染の十分な研究を可能にするマウス乳腺炎モデルを用いた研究において、60回以上継代されたマイコプラズマ・ボビス株は、より少なく継代された株と比べて顕著に弱毒であったことが記載され(上記第2 オ.、キ.)、当該研究から得られる知見がワクチン開発に有用であること(上記第2 カ.)も示唆されている。
一方、引用例3にも記載のように、本願優先日前、生ワクチン製造における病原体の弱毒化は自明の技術的課題であったから、上記引用例2の記載に接した当業者であれば、引用発明の弱毒化された、比較的非病原性のマイコプラズマ・ボビス株を確実に弱毒化するために、60回以上継代することは、容易に想到し得たことである。そして、60回以上の継代は、10回より多い継代に他ならない。

2.相違点(2)について
本願発明のマイコプラズマ・ボビス株が有する「非病原性」に関して、本願明細書の段落【0022】には、「本発明において、「弱毒化」は「非病原性」と同義である。」と記載され、さらに、本願発明のマイコプラズマ・ボビスの病原性(毒性)の減少が、非弱毒化M.ボビスに感染し該弱毒化ウイルスを接種されていない「コントロール群」の動物と比較して、弱毒化M.ボビスに感染した動物における臨床兆候の発症及び重症度が10%減少するものを含むことが記載されているから、本願発明の弱毒化、非病原性は十分でないものを含むものである。
そうすると、本願発明の弱毒化された、非病原性のマイコプラズマ・ボビス株は、引用発明の弱毒化された、比較的非病原性マイコプラズマ・ボビスと実質的に同一のものであり、上記相違点(2)は実質的な相違とはいえない。

3.本願発明の効果について
本願明細書において、本願発明の効果(マイコプラズマ・ボビス株の病原性が低く、かつ、免疫原性を有すること)が確認されているのは、出所が明らかでない株を100回以上継代して得た3つの特定の株のみであり、10回程度継代したものは記載されていない。
一方、上記引用例2には、継代数が33である特定のマイコプラズマ・ボビス株が依然として高い病原性を有することが記載されている(表1)から、本願発明のマイコプラズマ・ボビス株の中には、上記3つの特定の株と同程度の効果を奏しないものが包含されることは明らかである。
このように、本願発明には、引用例2、3から予測し得ない効果を奏するものだけではなく、免疫原性は有するが、病原性が十分に低くないものも含まれており、本願発明において奏される効果が、引用例2、3から予測できない程の格別なものとはいえない。
また、本願発明は、細菌の継代数を「10回より多く」と数値限定するものであるが、本願明細書をみても、具体的な効果に裏付けられた当該数値に限定するための根拠が不明であるから、継代数の下限を「10回より多く」することに、臨界的意義は見出せない。

第5 審判請求人の主張
審判請求人は、平成25年8月30日付けの審判請求書の手続補正書中で、
「引用文献3は、段落0006において、代替的にM.ボビスが弱毒化されていてもよいことを一般的に言及しているに過ぎません。引用文献3は、弱毒化されたM.ボビス株も、弱毒化されたM.ボビス株が安全且つ有効であることを示すいかなるデータも開示されておりません。結論として、引用文献3は、ワクチンとして不活化したM.ボビスを用いることを教示、示唆しております。
・・・(中略)・・・
加えて、万が一、当業者が生ワクチンとして使用するのに弱毒化された、非病原性のM.ボビス細菌株を使用することを考慮したとしても(出願人はこれを否定いたしますが)、当業者は、障害を予期していたものと思料いたします。従って、本願発明に成功裏に到達することについて、合理的な期待はなかったものと思料いたします。
結論として、本願請求項1記載の発明は、引用文献3のみ、又は引用文献3と引用文献2との組み合わせに対して進歩性を有しております。」(3頁27行?5頁10行)、「請求項7記載の発明は、請求項1に対して述べたのと同様の理由により、引用文献2単独又は引用文献2と引用文献3との組み合わせに対して進歩性を有しております。請求項7に直接的又は間接的に従属する請求項8?19についても同様です。」(6頁11行?13行)と主張している。

しかしながら、上記主張は、実質的に請求項1に係る発明についてのものであり、その発明とは異なる請求項7に係る発明の進歩性については、参酌できないものであるから、上記主張は採用できない。

第6 まとめ
以上のとおり、本願請求項7に係る発明は、引用例2、3の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-22 
結審通知日 2014-10-27 
審決日 2014-11-11 
出願番号 特願2010-531328(P2010-531328)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 名和 大輔  
特許庁審判長 鈴木 恵理子
特許庁審判官 高堀 栄二
植原 克典
発明の名称 マイコプラズマ・ボビス ワクチン  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 辻居 幸一  
代理人 市川 さつき  
代理人 浅井 賢治  
代理人 山崎 一夫  
代理人 服部 博信  
代理人 箱田 篤  
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