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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1299130
審判番号 不服2012-13531  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-13 
確定日 2015-03-30 
事件の表示 特願2007-518234「デジタルカメラモジュールとその製造方法、該モジュールを実装しているカメラ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月 2日国際公開、WO2006/012139、平成20年 2月14日国内公表、特表2008-504739〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2005年(平成17年)6月22日(パリ条約による優先権主張、2004年(平成16年)6月25日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成22年7月9日付けで拒絶理由が通知され、平成23年1月12日付けで手続補正がなされ、さらに、平成23年6月15日付けで拒絶理由が通知され、平成23年10月19日付けで手続補正がなされたが、平成24年3月13日に、平成23年10月19日付けの手続補正は決定を持って却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされたものである。これを不服として、平成24年7月13日に本件審判請求がなされると同時に同日付けで手続補正がなされた。

第2.平成24年7月13日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年7月13日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容
この手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「第1接触パッド」を、「前記第1接触パッドの各々が、前記第1の導電性のトレース層上に接着されるニッケルからなる層と、前記ニッケルからなる層上に接着される金からなる層とからなる」と限定したものである。

2.補正の適否
(1)限定的減縮
この補正の請求項1に係る補正は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定したものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という)第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。

(2)独立特許要件
ア.本願補正発明
上記補正後の請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「可撓性を有する回路基板と、該回路基板表面に実装されるイメージ撮像デバイスと、前記イメージ撮像デバイス上に実装されるレンズハウジングと、前記イメージ撮像デバイスの下方の裏面に取り付けられる補強材と、を備えており、
前記可撓性を有する回路基板が、可撓性の基層と、該可撓性の基層上に形成される第1、第2の導電性のトレース層と、イメージ撮像デバイス用の複数の第1接触パッドと、コネクタと、を備え、
前記第1の導電性のトレース層が、イメージ撮像デバイスの実装される側の第1面上に設けられており、
前記第2の導電性のトレース層が、前記第1面の反対の第2面に設けられており、前記可撓性を有する回路基板を通って前記第1の導電性のトレース層に接続されており、
前記複数の第1接触パッドが、前記第1の導電性のトレース層に電気的に接続されており、
前記コネクタが、複数の第2接触パッドを備え、該第2接触パッドが前記第2の導電性のトレース層に電気的に接続されており、
前記可撓性を有する回路基板が、第2面側へと曲げて用いられ、前記第1接触パッドの各々が、前記第1の導電性のトレース層上に接着されるニッケルからなる層と、前記ニッケルからなる層上に接着される金からなる層とからなる、ことを特徴とするデジタルカメラモジュール。」

イ.刊行物
(ア)刊行物1
a.刊行物1の記載事項
本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2002-330358号公報(以下、「刊行物1」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学素子とレンズアセンブリとの位置合わせ方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】撮像素子が固体化されて久しいが、近年、CCD等光学素子は、その高性能化と多用途化が相俟って需要が急速に高まっている。その用途は例えば、高画素数により画質の面で塩銀フィルムカメラに近づいたディジタルカメラ用、携帯電話の爆発的普及による多機能携帯端末搭載用、都市型犯罪防止あるいは無人化のための監視カメラ用、などである。これら用途は、何れも量産されうる製品用であり、組み立てにあたっては生産性を良くする必要がある。」

「【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の実装構造を説明する模式図であり、図2はその部分拡大図である。図1および図2において、1は光学素子ベアチップ、2は21のレンズ、22のレンズホルダーを含むレンズアセンブリ、22a、22bはレンズホルダー22底部二箇所に設置した円錐台状突起、3はフレキシブルプリント配線板、3a、3bはフレキシブルプリント配線板3に穿設した二箇所の基準穴、4は補強板、4a、4bは前記二箇所の基準穴に相当する位置に基準穴の2?5倍の直径で補強板4に穿設したの穴、5は複数の周辺部品である。
【0013】まず、フレキシブルプリント配線板3に、補強板4を接着する。接着にあたっては、基準穴3aと穴4a、基準穴3bと穴4bそれぞれの穴中心位置を精度よく合わせるために段付きピンで固定する方法が簡便である。
【0014】前記で完成した基板に周辺部品5を実装する。その後、前記実装済みの基板に光学素子ベアチップ1を位置決め載置し、接着する。フレキシブルプリント配線板3と光学素子ベアチップ1の位置決めにあたっては、図3に示す別途作製した位置決め治具6を使用してフレキシブルプリント配線板3に穿設した二箇所の穴3a、3bと位置決め治具6に穿設した穴7,7をピンで固定して位置決めを行なう。位置決め治具6の形状は、光学素子ベアチップ1の寸法をくり抜いた窓枠状板に穴3a、3bと同じ位置、同じ径の穴を穿設したものでよい。光学素子ベアチップ1接着、硬化完了後には位置決め治具6を取り外す。ここで、穴3a、3bの二箇所の位置関係は、光学素子ベアチップ1の位置を中心にして非対称にすることが重要である。これは、後工程においてレンズアセンブリ2を搭載する際にいつも同一方向にしか載置できないようにするためである。ただし、光学素子ベアチップ1の配線を行なうのに使用するワイヤボンダに位置出し搭載機能があれば上記の位置合わせ治具6は不要である。
【0015】光学素子ベアチップ1の接着、硬化完了後、ワイヤボンダにより光学素子ベアチップ1からフレキシブルプリント配線板3上のパッドへの配線を行なう。配線完了後、フレキシブルプリント配線板3上にレンズアセンブリ2を搭載する。レンズアセンブリ2のレンズホルダー22底部二箇所に設置した円錐台状突起22a,22bは、前記フレキシブルプリント配線板3に穿設した二箇所の穴3a、3bに位置を合わせてある。」

b.刊行物1発明
(a)「デジタルカメラ用の実装構造」
刊行物1には、フレキシブルプリント配線板や光学素子ベアチップ、レンズアセンブリなどから構成される実装構造が記載されており(【図1】、【0012】)、この実装構造は、例えば、デジタルカメラ用のものが想定されている(【0002】)。

(b)「フレキシブルプリント配線板と、該フレキシブルプリント配線板表面に実装される光学素子ベアチップと、前記光学素子ベアチップ上に実装されるレンズアセンブリと、前記光学素子ベアチップの下方の裏面に取り付けられる補強板と、を備えており、」
刊行物1に記載された実装構造は、フレキシブルプリント配線板、光学素子ベアチップ、レンズアセンブリ、及び、補強板を備えている(【0012】)。【図1】、【0013】、【0014】をみると、光学素子ベアチップは、フレキシブルプリント配線板表面に実装され、レンズアセンブリは、光学素子ベアチップ上に実装され、補強板は、光学素子ベアチップの下方の裏面に取り付けられている。

(c)「前記フレキシブルプリント配線板が、光学素子ベアチップ用の複数のパッドを備える」
刊行物1の【0015】には、「光学素子ベアチップ1の接着、硬化完了後、ワイヤボンダにより光学素子ベアチップ1からフレキシブルプリント配線板3上のパッドへの配線を行なう。」とあるから、フレキシブルプリント配線板は、光学素子ベアチップ用のパッドを備えるといえ、【図1】から、このパッドは複数あるといえる。

以上の(a)?(c)をまとめると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されていると認められる。

[刊行物1発明]
フレキシブルプリント配線板と、該フレキシブルプリント配線板表面に実装される光学素子ベアチップと、前記光学素子ベアチップ上に実装されるレンズアセンブリと、前記光学素子ベアチップの下方の裏面に取り付けられる補強板と、を備えており、
前記フレキシブルプリント配線板が、光学素子ベアチップ用の複数のパッドを備えるデジタルカメラ用の実装構造。

(イ)刊行物2
a.刊行物2の記載事項
本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特表2002-523891号公報(以下、「刊行物2」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
発明の背景
本願明細書の開示物は、広範にはフレキシブル回路に関し、特に、回路基板の両側の回路トレースを相互接続するために設けられたバイアに関する。」

「【0011】
発明の開示
したがって、一実施態様は、回路の両側導電層を分離する誘電基板に導電バイアを形成する装置及び方法を提供する。導電バイアは、両側の導電層を連結し、一方の導電層から他方に電気信号を伝達するフィードスルーとなる。この目的のために、フレキシブル回路は、第1の表面と第2の表面とを有する折り曲げ可能な非導電性の基板を含む。第1の導電トレースが第1の表面に設けられ、第2の導電トレースが第2の表面に設けられている。基板を貫通して第1のトレースから第2のトレースに通路が延びている。通路は、第1及び第2の表面間で実質的に収束する砂時計形の側壁を有するとともに、第1のトレースと第2のトレースとを電気的に相互接続する導電表面を含む。」

b.刊行物2記載の技術事項
以上の記載から、刊行物2には、次の技術事項が記載されていると認められる。

[刊行物2記載の技術事項]

第1の表面と第2の表面とを有する折り曲げ可能な非導電性の基板を含み、第1の導電トレースが第1の表面に設けられ、第2の導電トレースが第2の表面に設けられており、基板を貫通して第1のトレースから第2のトレースに通路が延びていて、通路は第1のトレースと第2のトレースとを電気的に相互接続する導電表面を含む、フレキシブル回路基板。

ウ.本願補正発明と刊行物1発明との対比
(ア)本願補正発明の「デジタルカメラモジュール」について

刊行物1発明は、デジタルカメラ用の実装構造であり、この構造は一体となったモジュールといえる。
したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、「デジタルカメラモジュール」である点で一致する。

(イ)本願補正発明の「可撓性を有する回路基板と、該回路基板表面に実装されるイメージ撮像デバイスと、前記イメージ撮像デバイス上に実装されるレンズハウジングと、前記イメージ撮像デバイスの下方の裏面に取り付けられる補強材と、を備えており、」について

刊行物1発明の「フレキシブルプリント配線板」、「光学素子ベアチップ」、「レンズアセンブリ」、「補強板」は、それぞれ、本願補正発明の「可撓性を有する回路基板」、「イメージ撮像デバイス」、「レンズハウジング」、「補強材」に相当するものであるから、本願補正発明と刊行物1発明とは、「可撓性を有する回路基板と、該回路基板表面に実装されるイメージ撮像デバイスと、前記イメージ撮像デバイス上に実装されるレンズハウジングと、前記イメージ撮像デバイスの下方の裏面に取り付けられる補強材と、を備えて」いる点で一致する。

(ウ)本願補正発明の「前記可撓性を有する回路基板が、可撓性の基層と、該可撓性の基層上に形成される第1、第2の導電性のトレース層と、イメージ撮像デバイス用の複数の第1接触パッドと、コネクタと、を備え、前記第1の導電性のトレース層が、イメージ撮像デバイスの実装される側の第1面上に設けられており、前記第2の導電性のトレース層が、前記第1面の反対の第2面に設けられており、前記可撓性を有する回路基板を通って前記第1の導電性のトレース層に接続されており、前記複数の第1接触パッドが、前記第1の導電性のトレース層に電気的に接続されており、前記コネクタが、複数の第2接触パッドを備え、該第2接触パッドが前記第2の導電性のトレース層に電気的に接続されており、」について

刊行物1発明のフレキシブルプリント配線板(本願補正発明でいう「可撓性を有する回路基板」)は、光学素子ベアチップ(本願補正発明でいう「イメージ撮像デバイス」)用の複数のパッド(本願補正発明でいう「複数の第1接触パッド」)を備えるものであるから、本願補正発明と刊行物1発明とは、「前記可撓性を有する回路基板」が、「イメージ撮像デバイス用の複数の第1接触パッド」を備える点で一致する。
しかしながら、本願補正発明では、「前記可撓性を有する回路基板が、可撓性の基層と、該可撓性の基層上に形成される第1、第2の導電性のトレース層と、イメージ撮像デバイス用の複数の第1接触パッドと、コネクタと、を備え、前記第1の導電性のトレース層が、イメージ撮像デバイスの実装される側の第1面上に設けられており、前記第2の導電性のトレース層が、前記第1面の反対の第2面に設けられており、前記可撓性を有する回路基板を通って前記第1の導電性のトレース層に接続されており、前記複数の第1接触パッドが、前記第1の導電性のトレース層に電気的に接続されており、前記コネクタが、複数の第2接触パッドを備え、該第2接触パッドが前記第2の導電性のトレース層に電気的に接続されて」いるのに対し、刊行物1発明では、フレキシブルプリント配線板は、光学素子ベアチップ(本願補正発明でいう「イメージ撮像デバイス」)用の複数のパッド(本願補正発明でいう「複数の第1接触パッド」)を備えること以外は、そのように特定されていない点で両者は相違する(相違点1)。

(エ)本願補正発明の「前記可撓性を有する回路基板が、第2面側へと曲げて用いられ」について

本願補正発明では、「前記可撓性を有する回路基板が、第2面側へと曲げて用いられ」るのに対し、刊行物1発明では、どのように用いられるのか特定されていない点で両者は相違する(相違点2)。

(オ)本願補正発明の「前記第1接触パッドの各々が、前記第1の導電性のトレース層上に接着されるニッケルからなる層と、前記ニッケルからなる層上に接着される金からなる層とからなる」について

本願補正発明では、前記第1接触パッドの各々が、「前記第1の導電性のトレース層上に接着されるニッケルからなる層と、前記ニッケルからなる層上に接着される金からなる層とからなる」のに対し、刊行物1発明では、複数のパッドは、そのように特定されていない点で両者は相違する(相違点3)。

(カ)一致点、相違点

以上をまとめると、本件補正発明と刊行物1発明の一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
可撓性を有する回路基板と、該回路基板表面に実装されるイメージ撮像デバイスと、前記イメージ撮像デバイス上に実装されるレンズハウジングと、前記イメージ撮像デバイスの下方の裏面に取り付けられる補強材と、を備えており、
前記可撓性を有する回路基板が、イメージ撮像デバイス用の複数の第1接触パッドを備えるデジタルカメラモジュール。

[相違点]
相違点1
本願補正発明では、「前記可撓性を有する回路基板が、可撓性の基層と、該可撓性の基層上に形成される第1、第2の導電性のトレース層と、イメージ撮像デバイス用の複数の第1接触パッドと、コネクタと、を備え、前記第1の導電性のトレース層が、イメージ撮像デバイスの実装される側の第1面上に設けられており、前記第2の導電性のトレース層が、前記第1面の反対の第2面に設けられており、前記可撓性を有する回路基板を通って前記第1の導電性のトレース層に接続されており、前記複数の第1接触パッドが、前記第1の導電性のトレース層に電気的に接続されており、前記コネクタが、複数の第2接触パッドを備え、該第2接触パッドが前記第2の導電性のトレース層に電気的に接続されて」いるのに対し、刊行物1発明では、フレキシブルプリント配線板は、光学素子ベアチップ(本願補正発明でいう「イメージ撮像デバイス」)用の複数のパッド(本願補正発明でいう「複数の第1接触パッド」)を備えること以外は、そのように特定されていない点。

相違点2
本願補正発明では、「前記可撓性を有する回路基板が、第2面側へと曲げて用いられ」るのに対し、刊行物1発明では、どのように用いられるのか特定されていない点。

相違点3
本願補正発明では、前記第1接触パッドの各々が、「前記第1の導電性のトレース層上に接着されるニッケルからなる層と、前記ニッケルからなる層上に接着される金からなる層とからなる」のに対し、刊行物1発明では、複数のパッドは、そのように特定されていない点。

エ.当審の判断
相違点1について
刊行物1発明は、フレキシブルプリント配線板のより具体的な構造は特定されていないが、公知のフレキシブルプリント配線板が使用可能なものである。
両面に配線を有するフレキシブルプリント配線板は、複雑な配線を可能とするため等によく用いられるものであって、カメラモジュールにおいても用いられているものであり(例えば、特開2004-104078号公報、特開2002-152781号公報、特開2003-244508号公報を参照)、そのようなフレキシブルプリント配線板として、「第1の表面と第2の表面とを有する折り曲げ可能な非導電性の基板を含み、第1の導電トレースが第1の表面に設けられ、第2の導電トレースが第2の表面に設けられており、基板を貫通して第1のトレースから第2のトレースに通路が延びていて、通路は第1のトレースと第2のトレースとを電気的に相互接続する導電表面を含む、フレキシブル回路基板」は、刊行物2に記載されているように知られている。
また、刊行物1発明のデジタルカメラ用の実装構造は、フレキシブルプリント配線板にレンズアセンブリや光学素子ベアチップが実装され、光を検知してその信号を出力するものであるから、明示はされていないが、信号出力するための端子を備えることは想定されるものであり、フレキシブルプリント基板(FPC)から信号を出力するための端子の構成としては、該FPCにFPCの配線と接続されたパッドを備えるコネクタを備えたものは周知(例えば、下記(*)に示す文献を参照)である。
したがって、刊行物1発明において、フレキシブルプリント配線板に、刊行物2に記載されたフレキシブル回路基板を用い、また、上記周知のコネクタを備えることは、当業者が容易に想到し得ることであり、その場合、光学素子ベアチップが実装される側を第1の表面とすると、刊行物1発明の複数のパッドは、前記第1の導電トレースに電気的に接続されているものとなるのは明らかであり、また、コネクタのパッドをFPCの表面に備えるか裏面に備えるかは、コネクタを差し込む対象の回路と合わせて設計を行う上で決定される事項であって、裏面に備える(第2の表面の第2の導電トレースに電気的に接続する)ことも容易に想到し得ることである。
すなわち、刊行物1発明において、「前記可撓性を有する回路基板が、可撓性の基層と、該可撓性の基層上に形成される第1、第2の導電性のトレース層と、イメージ撮像デバイス用の複数の第1接触パッドと、コネクタと、を備え、前記第1の導電性のトレース層が、イメージ撮像デバイスの実装される側の第1面上に設けられており、前記第2の導電性のトレース層が、前記第1面の反対の第2面に設けられており、前記可撓性を有する回路基板を通って前記第1の導電性のトレース層に接続されており、前記複数の第1接触パッドが、前記第1の導電性のトレース層に電気的に接続されており、前記コネクタが、複数の第2接触パッドを備え、該第2接触パッドが前記第2の導電性のトレース層に電気的に接続されて」いる構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(*)特開2005-11533号公報(図1、図3)、特開2004-88076号公報、特開2004-55574号公報(図2)

相違点2について
刊行物1発明のフレキシブルプリント配線板は、フレキシブルなもの、すなわち、曲げて用いることを想定したプリント配線板であるから、刊行物1発明の構造をカメラなどに実装するときには、フレキシブルプリント配線板を曲げて用いることは予定されたことである。また、カメラの筐体に刊行物1発明のレンズアセンブリを取り付けると(この場合、レンズは筐体の外部側へ向いている)、フレキシブルプリント配線板を曲げる方向は筐体の内部側(本願補正発明でいう「第2面側」)となると考えるのが自然である。
したがって、刊行物1発明のプリント配線板が、第2面側へと曲げて用いられる構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

相違点3について
刊行物1発明の複数のパッドは、ワイヤボンディングにより配線を行うための、プリント配線上のパッドである(【0015】)。プリント配線上のパッドの構成として、ニッケルメッキ層と金メッキ層とを順次形成したものは、特開2003-204012号公報(以下、刊行物3という)に記載されているように知られている(記載事項については下記(**)を参照)から、刊行物1発明におけるプリント配線上の複数のパッドにこの刊行物3の構成を採用し、複数のパッドを、ニッケルメッキ層と金メッキ層とを順次形成したものとすることは当業者が容易に想到し得ることである。

本願補正発明の「前記第1接触パッドの各々が、前記第1の導電性のトレース層上に接着されるニッケルからなる層と、前記ニッケルからなる層上に接着される金からなる層とからなる」について、本件明細書の【0035】には、次のように説明されている。

「接触パッド(224)(243)そして(250)はニッケル層(246)を有する。このニッケル層は、導電トレース(240)上に形成されている。金からなる層(244)はニッケル層(246)上に形成されている。金からなる層(244)はパッド(216)と(224)とのワイヤボンディング接続に適した表面を提供する。例えば、ダイ接合パッド(216)とワイヤ接合パッド(224)は金からなる回路線による接合(252)を通じて、電気的に結合されている。さらに、金からなる層(244)は接触パッド(216)、(224)、(243)及びコネクタパッド(250)の腐食を防ぐ。ニッケル層(246)は、金からなる層(244)とトレース(240)の間に配置されているのだが、金からなる層(244)が銅トレース(240)と直接接触するのを回避する。そして、ニッケル層(246)は金からなる層(244)とトレース(240)の両方に対して適切に接着する。」

この説明から、導電トレース上にニッケル層が形成され、該ニッケル層上に金からなる層が形成されており、該ニッケル層は、金からなる層と導電トレースの間に配置され、その両方に対して適切に接着するものであることが理解できる。この接着について具体的な態様は何ら記載されていないから、本願補正発明における「接着」とは、文字通り、単に、接して着いた状態を意味しているのみであると認められる。
上記刊行物3に記載されたものでは、ニッケルメッキ層はプリント配線上に接して着いた状態、金メッキ層は、ニッケルメッキ層上に接して着いた状態となっているから、刊行物3におけるプリント配線とニッケルメッキ層、ニッケルメッキ層と金メッキ層の間の関係は、本願補正発明でいう「接着」といえる。
したがって、上記したように、刊行物1発明において、刊行物3に記載されている技術を適用することにより容易に想到し得るとした、複数のパッドを、ニッケルメッキ層と金メッキ層とを順次形成したものとすることは、すなわち、「前記第1接触パッドの各々が、前記第1の導電性のトレース層上に接着されるニッケルからなる層と、前記ニッケルからなる層上に接着される金からなる層とからなる」ことといえ、結局、刊行物1発明において、「前記第1接触パッドの各々が、前記第1の導電性のトレース層上に接着されるニッケルからなる層と、前記ニッケルからなる層上に接着される金からなる層とからなる」構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。

(**)刊行物3の【0005】には、「図5は、図4のボンディングパッドのA-A'線の断面図である。図示されたように、ボンディングパッド3は、印刷回路基板1の上面に適用された絶縁層7と、この絶縁層7の上面に形成された銅パターン8と、この銅パターン8上に順次形成されたニッケルメッキ層9及び金メッキ層10から構成される。」と記載されている。

オ.独立特許要件のまとめ
以上のとおり、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された技術、刊行物3に記載された技術、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.補正の適否のまとめ
よって、この手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成24年7月13日付けの手続補正は、上述のとおり却下されたので、本願の請求項1-33に係る発明は、平成23年1月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-33に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は以下のとおりのものである。

「可撓性を有する回路基板と、該回路基板表面に実装されるイメージ撮像デバイスと、前記イメージ撮像デバイス上に実装されるレンズハウジングと、前記イメージ撮像デバイスの下方の裏面に取り付けられる補強材と、を備えており、
前記可撓性を有する回路基板が、可撓性の基層と、該可撓性の基層上に形成される第1、第2の導電性のトレース層と、イメージ撮像デバイス用の複数の第1接触パッドと、コネクタと、を備え、
前記第1の導電性のトレース層が、イメージ撮像デバイスの実装される側の第1面上に設けられており、
前記第2の導電性のトレース層が、前記第1面の反対の第2面に設けられており、前記可撓性を有する回路基板を通って前記第1の導電性のトレース層に接続されており、
前記複数の第1接触パッドが、前記第1の導電性のトレース層に電気的に接続されており、
前記コネクタが、複数の第2接触パッドを備え、該第2接触パッドが前記第2の導電性のトレース層に電気的に接続されており、
前記可撓性を有する回路基板が、第2面側へと曲げて用いられる、
ことを特徴とするデジタルカメラモジュール。」

2.刊行物
刊行物1、及び、刊行物2に記載された発明、技術事項は、上記「第2.2.(2)イ.刊行物」に記載したとおりである。

3.対比
本願発明は、上記第2で検討した本願補正発明から、その発明特定事項である「前記第1接触パッドの各々が、前記第1の導電性のトレース層上に接着されるニッケルからなる層と、前記ニッケルからなる層上に接着される金からなる層とからなる」ことを省いたものである。これは、本願補正発明と刊行物1発明との対比における相違点3に係る事項であるから、本願発明と刊行物1発明を対比すると、両者の一致点、相違点は、本願補正発明と刊行物1発明の一致点、相違点のうち、相違点3を省いたものと同じものである。

4.判断
本願発明と刊行物1発明との相違点は上記相違点1、2のとおりであるから、本願補正発明と刊行物1発明の相違点に対する上記判断と同様に、本願発明は、刊行物1発明、刊行物2に記載された技術、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-24 
結審通知日 2013-12-25 
審決日 2014-01-08 
出願番号 特願2007-518234(P2007-518234)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 572- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 誠治木方 庸輔  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 小池 正彦
千葉 輝久
発明の名称 デジタルカメラモジュールとその製造方法、該モジュールを実装しているカメラ  
代理人 清原 義博  

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