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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1299176
審判番号 不服2014-9511  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-22 
確定日 2015-03-26 
事件の表示 特願2008-261972「半導体封止用フィルム状接着剤、半導体装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月 5日出願公開、特開2009-260232〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成20年10月8日(国内優先権主張 平成20年3月26日)の出願であって、平成24年6月5日付けで拒絶理由が通知され、同年8月10日付けで手続補正がなされ、平成25年3月27日付けで拒絶理由が通知され、同年6月3日付けで手続補正がなされ、同年11月8日に拒絶理由が通知されたが、平成26年1月17日付けで意見書のみが提出され、同年2月14日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、平成26年5月22日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、手続補正がなされた。

第2 本願発明について

1.特許請求の範囲の補正について

平成26年5月22日付けの特許請求の範囲の補正は、請求項1を削除し、請求項1の従属項であった請求項2を新たな請求項1とし、続く従属項3乃至7を新たな請求項2乃至6としたものである。よって、この補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的としたものに該当する。

2.本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年5月23日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。

「【請求項1】
(a)1気圧、25℃で固形であるエポキシ樹脂と、(b)硬化促進剤と、(d)ポリイミド樹脂とを含有しており、
前記(b)硬化促進剤は、120℃以上の融点を有し、活性領域が120℃以上であるホスフィン類を含み、かつ、前記ホスフィン類が、下記一般式(1)で表される化合物であり、
前記(d)ポリイミド樹脂は、30000以上の重量平均分子量を有し、且つ100℃以下のガラス転移温度を有する、
フリップチップ接続方式に用いられる半導体封止用フィルム状接着剤。
【化1】

[式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を示し、前記フェニル基は、置換基を有していてもよい。] 」


3.引用発明

原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-241617号公報(以下、「引用例1」という。)には、「熱硬化性樹脂組成物および半導体装置」について、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

ア.「【0005】
【発明の実施の形態】本発明のフラックス活性を有するシート状の熱硬化性樹脂組成物は、フェイスダウン構造の半導体素子の封止に好適に使用されるものである。詳細には、配線回路基板上に、複数の接続用電極部を介してフェイスダウン構造の半導体素子が搭載される半導体装置において、配線回路基板と半導体素子との間の空隙を封止するのに使用される。本発明のフラックス活性を有するシート状の熱硬化性樹脂組成物を配線回路基板と半導体素子との間に介在させ、熱圧着により半導体素子を配線回路基板上に仮固着させ、その後半田溶融を行うことにより半導体素子と配線回路基板との空隙の封止および金属接合を形成させる。
【0006】これにより、従来技術によるフラックスを用いて半導体素子バンプと配線回路基板電極とを金属接続した後に空隙に封止樹脂を注入するという煩雑な工程と比べて、配線回路基板と半導体素子との樹脂封止および金属接続の工程が簡易となり、製造工程時間の大幅な短縮化が図れる。また、封止樹脂として液状樹脂を用いずに保存性に優れた固形樹脂を用いるため、空隙内に注入する際に生じる種々の問題を回避することができる。さらに、半導体素子と配線回路基板との電気的接続の安定性に優れ、種々の信頼性試験、例えば冷熱サイクル下等で優れた封止信頼性を発揮する。」

イ.「【0017】本発明の熱硬化性樹脂組成物の主材となる樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂等を挙げることができる。また、耐熱性、加工性、接着性という観点から、エポキシ樹脂が好ましい。
【0018】かかるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、テルペン型エポキシ樹脂など1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば何ら限定することなく用いることができる。フラックス活性の向上、接着性、ボイドの低減という観点から、なかでも150℃で0.5Pa・s以下の溶融粘度であるものはより好適に用いられる。」

ウ.「【0025】本発明のシート状の熱硬化性樹脂組成物には、上記エポキシ樹脂の硬化剤の他に、エポキシ樹脂の硬化促進剤を配合することもできる。このような硬化促進剤としては、従来からエポキシ樹脂の硬化促進剤と知られている種々の硬化促進剤が使用可能であり、例えば、トリフェニルホスフィン、2-メチルイミダゾール、DBU(1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7)、DBN(1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン-5)、4P4B(テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート)等のアミン系、リン系、ホウ素系、リン-ホウ素系等の硬化促進剤が挙げられる。また、保存性、溶解粘度の低下という観点から、これらをマイクロカプセルに封入したものからなる潜在性硬化触媒はより好適に用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。」

エ.「【0036】まず、図2に示すように、配線回路基板1上に、本発明のシート状の熱硬化性樹脂組成物5を載置する。ついで、図3に示すようにシート状の熱硬化性樹脂組成物5の上の所定位置に、複数の球状の接続用電極部(ジョイントボール)2が設けられた半導体素子3を載置し、シート状の熱硬化性樹脂組成物5を加熱溶融して溶融状態とし、加圧して半導体素子3の接続用電極部2が溶融状態のシート状の熱硬化性樹脂組成物5を押しのけ、配線回路基板1と接続用電極部2が接触し、かつ半導体素子3と配線回路基板1との間の空隙内に溶融状態の樹脂が充填し、半田リフローによる金属接合を行った後、樹脂を硬化させることにより空隙を封止して封止樹脂層4を形成する。この時半田リフロー方式はリフロー炉を用いた接合方式であっても、チップ搭載と同時に半田融点以上にヒーター部分を加熱し半田溶融を行う接合方式であってもよい。このようにして、図1に示す半導体装置を製造する。」

・引用例1は、上記ア、エによれば、シート状の熱硬化性樹脂組成物を配線回路基板と半導体素子との間に介在させ、熱圧着により半導体素子を配線回路基板上に仮固着させ、その後半田溶融を行うことにより半導体素子と配線回路基板との空隙の封止および電気的接続をするものである。よって、シート状の熱硬化性樹脂組成物は、半導体素子と配線回路基板とを直接接続する、即ちフリップチップ接続方式に用いられるものである。

・上記イによれば、熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂を用いることができるものである。

・上記ウによれば、シート状の熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂の他にエポキシ樹脂の硬化促進剤を配合させたものである。

したがって、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「エポキシ樹脂と、硬化促進剤とを含有しており、
フリップチップ接続方式に用いられるシート状の熱硬化性樹脂組成物。」


4.対比・判断

本願発明と引用発明とを対比する。

a.上記イの段落【0018】によると、融点が100℃超のエポキシ樹脂が列記されているから、引用発明の「エポキシ樹脂」は、本願発明の「1気圧、25℃で固形であるエポキシ樹脂」に相当する。

b.上記ウによると、硬化促進剤として「4P4B(テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート)」を使用し得ることが記載されており、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートの融点は300℃を超えるから、引用発明の「硬化促進剤」は、本願発明の「120℃以上の融点を有し、ホスフィン類を含み、前記ホスフィン類が一般式(1)で表される化合物」に相当する。但し、本願発明は「活性領域が120℃以上である」としているのに対して、引用発明には活性領域の特定がない。

c.引用発明の「シート状熱硬化性樹脂組成物」は、加熱溶融して溶融状態となり、半導体素子と配線回路基板との間の空隙内に溶融状態の樹脂が充填し、半田リフローによる金属接合を行った後、樹脂を硬化させることにより空隙を封止して封止樹脂層を形成するものであるから、本願発明の「半導体封止用フィルム状接着剤」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「(a)1気圧、25℃で固形であるエポキシ樹脂と、(b)硬化促進剤とを含有しており、
前記(b)硬化促進剤は、120℃以上の融点を有するホスフィン類を含み、かつ、前記ホスフィン類が、下記一般式(1)で表される化合物である
フリップチップ接続方式に用いられる半導体封止用フィルム状接着剤。
【化1】


[式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を示し、前記フェニル基は、置換基を有していてもよい。] 」

(相違点1)
硬化促進剤として、本願発明は「活性領域が120℃以上」のものを含んでいるが、引用発明には活性領域の特定がない。

(相違点2)
本願発明は、半導体封止用フィルム状の接着剤に「30000以上の重量平均分子量を有し、且つ100℃以下のガラス転移温度を有するポリイミド」を含有させているが、引用発明はポリイミドを含有するものではない点。

そこで、上記相違点について検討する。

<相違点1について>
上記bに記載したとおり、引用発明は「テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート」を選択し得るものであり(なお、エポキシ樹脂の硬化促進剤としてテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを含有したフィルム状接着剤は、例えば特開2004-211053号公報(段落【0080】のTPPKを参照。)、国際公開第2004/111148号(32頁の表1、34頁のTPPKを参照。)に記載されているように周知のものである。)、本願発明の実施例(段落【0092】)の硬化促進剤(テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート;TPPK)と引用発明の硬化促進剤は同じ化合物であるから、引用発明の硬化促進剤も同様に「活性領域が120℃以上」といえる。したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。

<相違点2について>
原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-305946号公報(以下、「引用例2」という。)の段落【0023】には、接着フィルムのフィルム形成能を向上するために熱可塑性樹脂を含むのが好ましいこと、その熱可塑性樹脂としてポリイミド樹脂が記載されている。そして、引用例2の段落【0026】には、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、-25?120℃であることが好ましく、特に-20?60℃が好ましく、最も-10?50℃が好ましいことが記載されているから、100℃以下のガラス転移温度を有する樹脂を用いることが記載されているといえる。
また、原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-307037号公報(以下、「引用例3」という。)の段落【0023】には、フィルム状接着剤において、重量平均分子量10,000?1,000,000のシート化剤を用いること、具体例としてポリイミド樹脂が記載されている。
そして、フィルム状接着剤の主材として、30000以上の重量平均分子量を有し、且つ100℃以下のガラス転移温度を有する「ポリイミド樹脂」を用いることは周知である。(例えば、上記<相違点1について>でも提示した特開2004-211053号公報の段落【0024】、【0025】、【0079】を参照。国際公開第2004/111148号の13頁7行?21行、27頁44行?31頁5行を参照。)
したがって、引用発明の半導体封止用フィルム状接着剤において、引用例2、引用例3、周知技術を組み合わせて、「30000以上の重量平均分子量を有し、且つ100℃以下のガラス転移温度を有するポリイミド」を含有させて相違点2とすることは、当業者であれば容易になし得る事項である。

そして、本願発明の作用効果も、引用例1乃至3及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。


5.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-22 
結審通知日 2015-01-27 
審決日 2015-02-09 
出願番号 特願2008-261972(P2008-261972)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 粟野 正明中野 浩昌日比野 隆治  
特許庁審判長 丹治 彰
特許庁審判官 酒井 朋広
関谷 隆一
発明の名称 半導体封止用フィルム状接着剤、半導体装置及びその製造方法  
代理人 古下 智也  
代理人 城戸 博兒  
代理人 池田 正人  
代理人 清水 義憲  
代理人 長谷川 芳樹  
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