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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1299804
審判番号 不服2013-18486  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-25 
確定日 2015-04-09 
事件の表示 特願2006-323268「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 6月19日出願公開、特開2008-136544〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成18年11月30日の出願であって,平成23年6月16日付けで拒絶の理由が通知され,同年8月4日に意見書及び手続補正書が提出され,平成24年5月9日付けで拒絶の理由が通知され,同年7月11日に意見書及び手続補正書が提出され,平成25年4月2日付けで拒絶の理由が通知され,同年6月10日に意見書及び手続補正書が提出されたところ,同年6月28日付けで補正却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされ,これに対して,同年9月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成25年9月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年9月25日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり,本件補正により,特許請求の範囲は,
「【請求項1】
遊技盤に形成された始動入賞口を遊技球が通過したことを検出する検出手段と,
前記検出手段により前記遊技球を検出したことを契機として抽選を行う抽選手段と,
前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出された場合に,図柄の変動表示を開始し,その後,前記変動表示を開始した図柄を停止表示させる図柄表示手段と,
前記遊技盤に発射された遊技球を,前記遊技盤に形成された前記始動入賞口へ案内するために開閉動作する可動役物と,
前記可動役物の開閉動作を制御する可動役物制御手段と,
前記遊技盤に配置され,遊技球が通過可能な普通図柄作動ゲートと,
前記普通図柄作動ゲートを遊技球が通過したことを契機として抽選を行う普通図柄抽選部と,
前記可動役物制御手段による制御によらずに前記可動役物が開動作したときに,前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出されると,前記始動入賞口を遊技球が通過したことを示す遊技球通過情報を出力する遊技球通過情報出力手段と,を有し,
前記可動役物制御手段が前記普通図柄抽選部による抽選結果が当たりの場合に前記可動役物を開放させると共に,前記可動役物が開動作しないと,前記遊技盤に発射された遊技球が,その可動役物によって案内される前記始動入賞口を通過しないようにされた遊技機であって,
前記可動役物は,前記遊技盤に発射された遊技球を,前記始動入賞口へ案内するために開閉動作すると共に,その閉鎖状態において前記始動入賞口への遊技球の入賞を不可能とする始動入賞口可動役物を含み,
前記図柄表示手段は,前記可動役物制御手段による制御によらずに前記始動入賞口可動役物が開動作したときに,前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出された場合には,その遊技球の通過による前記図柄の変動表示を行わないよう制御することを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記遊技球通過情報出力手段により出力された遊技球通過情報が入力されると,前記始動入賞口を遊技球が通過したことを報知する報知手段を,更に有する請求項1に記載の遊技機。」
から
「【請求項1】
遊技盤に形成された始動入賞口を遊技球が通過したことを検出する検出手段と,
前記検出手段により前記遊技球を検出したことを契機として抽選を行う抽選手段と,
前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出された場合に前記抽選手段による抽選結果が保留可能であり,その保留された抽選結果が変動開始条件を充足した場合に図柄の変動表示を開始し,その後,前記変動表示を開始した図柄を停止表示させる図柄表示手段と,
前記遊技盤に発射された遊技球を,前記遊技盤に形成された前記始動入賞口へ案内するために開閉動作する可動役物と,
前記可動役物の開閉動作を制御する可動役物制御手段と,
前記遊技盤に配置され,遊技球が通過可能な普通図柄作動ゲートと,
前記普通図柄作動ゲートを遊技球が通過したことを契機として抽選を行う普通図柄抽選部と,
前記可動役物制御手段による制御によらずに前記可動役物が開動作したときに,前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出されると,前記始動入賞口を遊技球が通過したことを示す遊技球通過情報を出力する遊技球通過情報出力手段と,
前記可動役物制御手段による制御によって前記可動役物が開動作したことに基づいて,前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出されると,遊技球を払い出す払い出し手段と,を有し,
前記普通図柄抽選部による抽選結果が当たりの場合に前記可動役物制御手段が前記可動役物を開放させると共に,前記可動役物が開動作しないと,前記遊技盤に発射された遊技球が,その可動役物によって案内される前記始動入賞口を通過しないようにされた遊技機であって,
前記可動役物は,前記遊技盤に発射された遊技球を,前記始動入賞口へ案内するために開閉動作すると共に,その閉鎖状態において前記始動入賞口への遊技球の入賞を困難とする始動入賞口可動役物を含み,
前記図柄表示手段は,前記可動役物制御手段による制御によらずに前記始動入賞口可動役物が開動作したときに,前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出された場合には,その遊技球の通過を契機とした前記図柄の変動表示を行わないよう制御し,
前記払い出し手段は,前記可動役物制御手段による制御によらずに前記始動入賞口可動役物が開動作した際に前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出された場合には,その遊技球の通過を契機とした遊技球の払い出しを行わず,
前記払い出し手段は,前記可動役物制御手段による制御に基づき前記始動入賞口可動役物が開動作した後に閉動作した際にその閉動作後の閉状態にて前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出された場合には,当該閉動作後の所定時間においては遊技球の払い出しを許可し,
所定期間内において,前記可動役物制御手段による制御による前記始動入賞口可動役物の開動作が行われていないにもかかわらず,前記始動入賞口を遊技球が所定個数通過したことが前記検出手段によって検出された場合,入球異常に係る報知を行うことを特徴とする遊技機。」
に補正された(下線は,補正箇所を明示するために審決にて付した。)。

2 補正の適否
(1)本件補正
本件補正は,特許請求の範囲について,以下に挙げる補正事項を含むものである。

ア 補正前の請求項1における「前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出された場合に,図柄の変動表示を開始し,その後,前記変動表示を開始した図柄を停止表示させる図柄表示手段と,」という記載を,
「前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出された場合に前記抽選手段による抽選結果が保留可能であり,その保留された抽選結果が変動開始条件を充足した場合に図柄の変動表示を開始し,その後,前記変動表示を開始した図柄を停止表示させる図柄表示手段と,」とする補正。

イ 補正前の請求項1における「前記可動役物制御手段による制御によらずに前記可動役物が開動作したときに,前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出されると,前記始動入賞口を遊技球が通過したことを示す遊技球通過情報を出力する遊技球通過情報出力手段と,を有し,」という記載を,
「前記可動役物制御手段による制御によらずに前記可動役物が開動作したときに,前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出されると,前記始動入賞口を遊技球が通過したことを示す遊技球通過情報を出力する遊技球通過情報出力手段と,
前記可動役物制御手段による制御によって前記可動役物が開動作したことに基づいて,前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出されると,遊技球を払い出す払い出し手段と,を有し,」とする補正。

ウ 補正前の請求項1における「前記可動役物制御手段が前記普通図柄抽選部による抽選結果が当たりの場合に前記可動役物を開放させると共に,前記可動役物が開動作しないと,前記遊技盤に発射された遊技球が,その可動役物によって案内される前記始動入賞口を通過しないようにされた遊技機であって,」という記載を,
「前記普通図柄抽選部による抽選結果が当たりの場合に前記可動役物制御手段が前記可動役物を開放させると共に,前記可動役物が開動作しないと,前記遊技盤に発射された遊技球が,その可動役物によって案内される前記始動入賞口を通過しないようにされた遊技機であって,」とする補正。

エ 補正前の請求項1における「前記可動役物は,前記遊技盤に発射された遊技球を,前記始動入賞口へ案内するために開閉動作すると共に,その閉鎖状態において前記始動入賞口への遊技球の入賞を不可能とする始動入賞口可動役物を含み,」という記載を,
「前記可動役物は,前記遊技盤に発射された遊技球を,前記始動入賞口へ案内するために開閉動作すると共に,その閉鎖状態において前記始動入賞口への遊技球の入賞を困難とする始動入賞口可動役物を含み,」とする補正。

オ 補正前の請求項1における「前記図柄表示手段は,前記可動役物制御手段による制御によらずに前記始動入賞口可動役物が開動作したときに,前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出された場合には,その遊技球の通過による前記図柄の変動表示を行わないよう制御する」という記載を,
「前記図柄表示手段は,前記可動役物制御手段による制御によらずに前記始動入賞口可動役物が開動作したときに,前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出された場合には,その遊技球の通過を契機とした前記図柄の変動表示を行わないよう制御し,
前記払い出し手段は,前記可動役物制御手段による制御によらずに前記始動入賞口可動役物が開動作した際に前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出された場合には,その遊技球の通過を契機とした遊技球の払い出しを行わず,
前記払い出し手段は,前記可動役物制御手段による制御に基づき前記始動入賞口可動役物が開動作した後に閉動作した際にその閉動作後の閉状態にて前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出された場合には,当該閉動作後の所定時間においては遊技球の払い出しを許可し,」とする補正。

カ 補正前の請求項2における「前記遊技球通過情報出力手段により出力された遊技球通過情報が入力されると,前記始動入賞口を遊技球が通過したことを報知する報知手段を,更に有する請求項1に記載の遊技機。」という記載を,
補正後の請求項1の「所定期間内において,前記可動役物制御手段による制御による前記始動入賞口可動役物の開動作が行われていないにもかかわらず,前記始動入賞口を遊技球が所定個数通過したことが前記検出手段によって検出された場合,入球異常に係る報知を行うことを特徴とする遊技機。」とする補正。

(2)新規事項の有無についての検討
上記補正事項エは,「前記可動役物は,前記遊技盤に発射された遊技球を,前記始動入賞口へ案内するために開閉動作すると共に,その閉鎖状態において前記始動入賞口への遊技球の入賞を不可能とする始動入賞口可動役物を含み」という記載を,「前記可動役物は,前記遊技盤に発射された遊技球を,前記始動入賞口へ案内するために開閉動作すると共に,その閉鎖状態において前記始動入賞口への遊技球の入賞を困難とする始動入賞口可動役物を含み」という記載に補正することを含むものである。
また,広辞苑第六版には,「困難」の意味として「ものごとをなしとげたり実行したりすることがむずかしいこと。難儀。『?にうちかつ』『?な事態』」と記載されているから,「遊技球の入賞を困難とする」の記載は,遊技球が入賞することは難しいが,入賞は不可能ではないこと,すなわち,入賞可能であることを意味するといえる。
以上のことから,上記補正は,「可動役物は,・・・その閉鎖状態において,前記始動入賞口への遊技球の入賞を不可能とする始動入賞口可動役物を含み」という記載を,実質的に「可動役物は,・・・その閉鎖状態において,前記始動入賞口への遊技球の入賞を困難(可能)とする始動入賞口可動役物を含み」という記載に変更するものである。

一方,本件出願の願書に最初に添付された明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)がどのようなものであったか検討すると,当初明細書等には,以下の記載がある(下線は当審で付した。)。
サ「【請求項1】
遊技盤に発射された遊技球を,前記遊技盤に形成された遊技球通過領域へ案内するために開閉動作する可動役物と,
前記可動役物の開閉動作を制御する可動役物制御手段と,
前記遊技球通過領域を遊技球が通過したことを検出する検出手段と,
前記可動役物制御手段による制御によらずに前記可動役物が開動作したときに,前記遊技球通過領域を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出されると,前記遊技球通過領域を遊技球が通過したことを示す遊技球通過情報を出力する遊技球通過情報出力手段と,
前記遊技球通過情報出力手段により出力された遊技球通過情報が入力されると,前記遊技球通過領域を遊技球が通過したことを報知する報知手段とを有し,
前記可動役物が開動作しないと,前記遊技盤に発射された遊技球が,その可動役物によって案内される遊技球通過領域を通過しないようにしたことを特徴とする遊技機。」
シ「【請求項5】
遊技盤に形成された始動入賞口への遊技球の入賞に基づいて抽選を行う抽選手段を有し,
前記遊技球通過領域は,前記始動入賞口を含み,
前記可動役物は,前記遊技盤に発射された遊技球を,前記始動入賞口へ案内するために開閉動作する始動入賞口可動役物を含み,
前記図柄表示手段は,前記可動役物制御手段による制御によらずに前記始動入賞口可動役物が開動作したときに,前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出された場合には,その遊技球の通過による前記図柄の変動表示を行わないことを特徴とする請求項4に記載の遊技機。」
ス「【0025】
装飾図柄表示装置107の下方には,普通電動役物104が設けられている。この普通電動役物104は,第2の始動入賞口112bへ遊技球を案内するために開閉動作する。普通電動役物104の直上には,コップ型案内部品119が設けられている。コップ型案内部品119内に入ると,遊技球は第1の始動入賞口112aを通過する。
尚,普通電動役物104が閉鎖しているときは,その入口がコップ型案内部品119によって遮蔽されている。従って,普通電動役物104が閉鎖しているときには遊技球が普通電動役物104内に入らない。普通電動役物104が開放状態となったときにはじめて遊技球が普通電動役物104内に入る(すなわち,遊技球が第2の始動入賞口112bを通過する)。」
セ「【0043】
また,遊技球が,普通図柄作動ゲート103を通過すると,普通図柄表示装置108(7セグメントLED122)が普通図柄の変動表示を開始する。その後,普通図柄表示装置108(7セグメントLED122)に所定の普通図柄(本実施形態では「7」)が停止表示すると,普通電動役物104が開閉動作を行う。普通電動役物104が開放すると,遊技球が第2の始動入賞口112bを通過(入賞)することが可能になる。」
ソ「【0228】
また,本実施形態では,第2の始動入賞口112b又は大入賞口113を遊技球が払い出し不能な状態で通過したことを検出して報知するようにしたが,報知対象となる領域は,可動役物が動くことによってのみ遊技球が通過可能な遊技球通過領域であれば,必ずしも入賞口でなくてもよい。例えば,可動役物が開かないと普通図柄作動ゲートを遊技球が通過しない構成となっている場合には,その普通図柄作動ゲートを,報知対象の領域としてもよい。
【0229】
なお,可動役物が動くことによってのみ遊技球が通過可能な遊技球通過領域を有していれば,本実施形態で説明したパチンコ機以外のパチンコ機にも本実施形態の動作を適用することができる。」
タ 上記スの記載を参酌すると,図1には,普通電動役物104が閉鎖しているときは,その入口がコップ型案内部品119によって遮蔽されることによって,遊技球が普通電動役物104内の第2の始動入賞口112bを通過しない点が図示されている。

上記サ?タの記載のとおり,当初明細書等には,可動役物(普通電動役物104)が開動作しないと,遊技球が始動入賞口(第2の始動入賞口112b)を通過しない点しか記載されておらず,「可動役物は,その閉鎖状態において,始動入賞口への遊技球の入賞を困難(可能)とする始動入賞口可動役物を含み」の点の記載はない。
また,「可動役物は,・・・その閉鎖状態において,前記始動入賞口への遊技球の入賞を困難(可能)とする始動入賞口可動役物を含む」点は,当初明細書等の記載から自明であるともいえない。
そして,この補正により「可動役物は,・・・その閉鎖状態において,前記始動入賞口への遊技球の入賞を困難(可能)とする始動入賞口可動役物を含む」という新たな技術的事項が導入されるものであるといえる。
以上のことから,上記補正事項エは,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものではない。

したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(3)補正の目的要件違反についての検討
仮に,本件補正が,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであると仮定して,本件補正が平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしているか検討する。

ア 補正事項アについて
補正事項アは,図柄表示手段において,「検出手段によって検出された場合に」どのようなことを行うか,「図柄の変動表示を開始」するのはどのような場合か,具体的に特定するものであるから,特許法第17条の2第4項第2号に規定する限定的減縮を目的とするものに該当する。

イ 補正事項イ及び補正事項オの一部について
補正事項イ及び補正事項オの「前記払い出し手段は,前記可動役物制御手段による制御によらずに前記始動入賞口可動役物が開動作した際に前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出された場合には,その遊技球の通過を契機とした遊技球の払い出しを行わず,前記払い出し手段は,前記可動役物制御手段による制御に基づき前記始動入賞口可動役物が開動作した後に閉動作した際にその閉動作後の閉状態にて前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出された場合には,当該閉動作後の所定時間においては遊技球の払い出しを許可し,」という構成を追加する補正事項(以下「補正事項オ1」という。)は,どのような払い出し手段を有するか特定する補正であるが,補正前の請求項1及び請求項2には,払い出し手段に関する構成は記載されていない。
補正前の発明と補正後の発明とを比較すると,補正後の発明は払い出し手段を有するので,本願明細書の【課題を解決するための手段】の記載である段落【0008】に記載された「前記可動役物制御手段による制御によって前記可動役物が開動作したことに基づいて,前記遊技球通過領域を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出されると,遊技球を払い出す払い出し手段を有し,前記払い出し手段は,前記可動役物制御手段による制御によらずに前記可動役物が開動作したことに基づいて,前記遊技球通過領域を遊技球が通過しても,遊技球を払い出さない」という効果を奏する点で相違するから,解決しようとする課題が同一であるとはいえない。
以上のことから,補正事項イ及び補正事項オ1は,特許法第17条の2第4項第2号に規定する限定的減縮を目的とする補正には該当しない。
また,補正事項イ及び補正事項オ1は,特許法第17条の2第4項第1号に規定する請求項の削除,特許法第17条の2第4項第3号に規定する誤記の訂正,特許法第17条の2第4項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しない。
よって,補正事項イ及び補正事項オ1は,特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

ウ 補正事項ウについて
補正事項ウは,「可動役物を開放させる」手段が「可動役物開放制御手段」であると限定するものであるから,特許法第17条の2第4項第2号に規定する限定的減縮を目的とするものに該当する。

エ 補正事項エについて
補正事項エは,上記(2)において既に検討しているように,「可動役物は,・・・その閉鎖状態において,前記始動入賞口への遊技球の入賞を不可能とする始動入賞口可動役物を含み」という記載を,実質的に「可動役物は,・・・その閉鎖状態において,前記始動入賞口への遊技球の入賞を困難(可能)とする始動入賞口可動役物を含み」という記載に変更するものであるから,特許法第17条の2第4項第2号に規定する限定的減縮を目的とする補正には該当しない。
また,補正事項エは,特許法第17条の2第4項第1号に規定する請求項の削除,特許法第17条の2第4項第3号に規定する誤記の訂正,特許法第17条の2第4項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しない。
よって,補正事項エは,特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

オ 補正事項オの残りについて
補正事項オは,上記イで検討した補正事項オ1以外に,「その遊技球の通過による前記図柄の変動表示を行わないよう」という記載を「その遊技球の通過を契機とした前記図柄の変動表示を行わないよう」とする補正事項(以下「補正事項オ2」という。)を含むものである。
補正事項オ2は,「その遊技球の通過による前記図柄の変動表示を行わないよう」という記載を,同じ意味内容である「その遊技球の通過を契機とした前記図柄の変動表示を行わないよう」という記載に補正したものにすぎない。

カ 補正事項カについて
補正事項カは,始動入賞口を遊技球が通過したことを報知する内容を,より具体的に特定するものであるが,「遊技球通過情報が入力されると」「報知する」構成,「報知手段」を有する構成を削除するものであるから,特許法第17条の2第4項第2号に規定する限定的減縮を目的とする補正には該当しない。
また,補正事項エは,特許法第17条の2第4項第1号に規定する請求項の削除,特許法第17条の2第4項第3号に規定する誤記の訂正,特許法第17条の2第4項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しない。

次に,補正事項カが「所定期間内において,前記可動役物制御手段による制御による前記始動入賞口可動役物の開動作が行われていないにもかかわらず,前記始動入賞口を遊技球が所定個数通過したことが前記検出手段によって検出された場合,入球異常に係る報知を行う」という記載を請求項1に追加する補正であるとして,補正の目的を検討する。
補正前の請求項1には報知手段に関する構成は記載されておらず,補正前の発明と補正後の発明とを比較すると,補正後の発明は入賞異常に係る報知を行う構成を有するので,本願明細書の【課題を解決するための手段】の記載である段落【0008】に記載された「かかる構成では,遊技機の制御によって可動役物が開動作しないと,遊技球が遊技球通過領域を通過しても,賞球が行われないようにしている遊技機であっても,遊技球通過領域を遊技球が通過したことを確実に報知することができる。」という効果を奏する点で相違するから,解決しようとする課題が同一であるとはいえない。
以上のことから,補正事項カは,特許法第17条の2第4項第2号に規定する限定的減縮を目的とする補正には該当しない。
また,補正事項カは,特許法第17条の2第4項第1号に規定する請求項の削除,特許法第17条の2第4項第3号に規定する誤記の訂正,特許法第17条の2第4項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しない。
よって,補正事項カは,特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の各請求項に係る発明は,平成24年7月11日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり,特に,請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
遊技盤に形成された始動入賞口を遊技球が通過したことを検出する検出手段と,
前記検出手段により前記遊技球を検出したことを契機として抽選を行う抽選手段と,
前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出された場合に,図柄の変動表示を開始し,その後,前記変動表示を開始した図柄を停止表示させる図柄表示手段と,
前記遊技盤に発射された遊技球を,前記遊技盤に形成された前記始動入賞口へ案内するために開閉動作する可動役物と,
前記可動役物の開閉動作を制御する可動役物制御手段と,
前記遊技盤に配置され,遊技球が通過可能な普通図柄作動ゲートと,
前記普通図柄作動ゲートを遊技球が通過したことを契機として抽選を行う普通図柄抽選部と,
前記可動役物制御手段による制御によらずに前記可動役物が開動作したときに,前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出されると,前記始動入賞口を遊技球が通過したことを示す遊技球通過情報を出力する遊技球通過情報出力手段と,を有し,
前記可動役物制御手段が前記普通図柄抽選部による抽選結果が当たりの場合に前記可動役物を開放させると共に,前記可動役物が開動作しないと,前記遊技盤に発射された遊技球が,その可動役物によって案内される前記始動入賞口を通過しないようにされた遊技機であって,
前記可動役物は,前記遊技盤に発射された遊技球を,前記始動入賞口へ案内するために開閉動作すると共に,その閉鎖状態において前記始動入賞口への遊技球の入賞を不可能とする始動入賞口可動役物を含み,
前記図柄表示手段は,前記可動役物制御手段による制御によらずに前記始動入賞口可動役物が開動作したときに,前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出された場合には,その遊技球の通過による前記図柄の変動表示を行わないよう制御することを特徴とする遊技機。」

2 先願に記載された発明
原査定の拒絶の理由(平成25年4月2日付け拒絶理由通知)に先願6として引用された特願2006-282008号(特開2008-93363号)(以下「先願」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。
(a)「【0033】
図1に示すように,パチンコ遊技機1は,額縁状に形成されたガラス扉枠2を有する。ガラス扉枠2の下部表面には打球供給皿(上皿)3がある。打球供給皿3の下部には,打球供給皿3に収容しきれない遊技球を貯留する余剰球受皿4と遊技球を発射する打球操作ハンドル(操作ノブ)5が設けられている。ガラス扉枠2の背面には,遊技盤6が着脱可能に取り付けられている。なお,遊技盤6は,それを構成する板状体と,その板状体に取り付けられた種々の部品とを含む構造体である。また,遊技盤6の前面には,打ち込まれた遊技球が流下可能な遊技領域7が形成されている。」
(b)「【0040】
また,第1始動入賞口13の真下には,第2始動入賞口14が形成されている。そして,第2始動入賞口14には開閉動作を行う可変入賞球装置15が設けられている。可変入賞球装置15が物理的に閉じている状態のときは第2始動入賞口14に遊技球が入賞せず,可変入賞球装置15が物理的に開いている状態のときに第2始動入賞口14に遊技球が入賞可能となる。可変入賞球装置15は,ソレノイド16によって開閉される。可変入賞球装置15が開いた状態になることによって,遊技球が第2始動入賞口14に入賞し易くなり(始動入賞し易くなり),遊技者にとって有利な状態になる。第2始動入賞口14に入賞した遊技球は,遊技盤6の背面に導かれ,第2始動口スイッチ14aによって検出される。」
(c)「【0042】
可変表示装置9の真上には,普通図柄表示器10が設けられている。普通図柄表示器10は,普通図柄と呼ばれる複数種類の識別情報(例えば,「○」および「×」)を可変表示する。
【0043】
ゲート32に遊技球が通過しゲートスイッチ32aで検出されると,普通図柄表示器10の表示の可変表示が開始される。この実施の形態では,左右のランプ(点灯時に図柄が視認可能になる)が交互に点灯することによって可変表示が行われ,例えば,可変表示の終了時に左側のランプが点灯すれば当りとなる。そして,普通図柄表示器10における停止図柄が所定の図柄(当り図柄)である場合に,可変入賞球装置15が所定回数,所定時間だけ開いた状態になる。すなわち,可変入賞球装置15の状態は,普通図柄の停止図柄が当り図柄である場合に,遊技者にとって不利な状態から有利な状態に変化する。普通図柄表示器10の近傍には,ゲート32を通過した球数を表示する4つのLEDによる表示部を有する普通図柄保留記憶表示器41が設けられている。ゲート32への遊技球の通過がある毎に,普通図柄保留記憶表示器41は点灯するLEDを1増やす。そして,普通図柄表示器10の可変表示が開始される毎に,点灯するLEDを1減らす。
【0044】
遊技盤6には,複数の入賞口29,30,33,39が設けられ,遊技球の入賞口29,30,33,39への入賞は,それぞれ入賞口スイッチ29a,30a,33a,39aによって検出される。各入賞口29,30,33,39は,遊技球を受け入れて入賞を許容する領域として遊技盤6に設けられる入賞領域を構成している。なお,第1始動入賞口13や第2始動入賞口14,大入賞口も,遊技球を受け入れて入賞を許容する入賞領域を構成する。遊技盤6の遊技領域7の左右周辺には,遊技中に点滅表示される装飾ランプ25が設けられ,下部には,入賞しなかった打球が取り込まれるアウト口26がある。また,遊技領域7の外側の左右上部には,所定の音声出力として効果音や音声を発声する2つのスピーカ27が設けられている。遊技領域7の外周には,天枠ランプ28a,左枠ランプ28bおよび右枠ランプ28cが設けられている。さらに,遊技領域7における各構造物(大入賞口等)の周囲には装飾LEDが設置されている。天枠ランプ28a,左枠ランプ28b,右枠ランプ28cおよび装飾用LEDは,遊技機に設けられている装飾発光体の一例である。」
(d)「【0046】
遊技機には,遊技者が打球操作ハンドル5を操作することに応じて駆動モータを駆動し,駆動モータの回転力を利用して遊技球を遊技領域7に発射する打球発射装置(図示せず)が設けられている。打球発射装置から発射された遊技球は,遊技領域7を囲むように円形状に形成された打球レールを通って遊技領域7に入り,その後,遊技領域7を下りてくる。遊技球が第1始動入賞口13または第2始動入賞口14に入り第1始動口スイッチ13aまたは第2始動口スイッチ14aで検出されると,特別図柄の可変表示を開始できる状態であれば(例えば,大当り遊技終了または前回の可変表示の終了),特別図柄表示器8において特別図柄の可変表示(変動)が開始されるとともに,可変表示装置9において飾り図柄の可変表示が開始される。特別図柄の可変表示を開始できる状態でなければ,特別図柄保留記憶表示器18についての保留記憶数を1増やす。
【0047】
特別図柄表示器8における特別図柄および可変表示装置9の飾り図柄の可変表示は,所定時間が経過したときに停止する。停止時の停止図柄が大当り図柄のうちの確変図柄(後述する突然確変図柄を除く。)または非確変図柄になると,大当り遊技状態(確変大当りまたは非確変大当り(通常大当りともいう))に移行する。すなわち,一定時間(例えば29秒)が経過するまで,または,所定個数(例えば,10個)の遊技球が大入賞口に入賞するまで特別可変入賞装置が開放される。なお,特別可変入賞装置が開放されてから一定期間経過するまで,または,所定個数(例えば,10個)の打球が大入賞口に入賞するまでが大当り遊技状態における1ラウンドである。この実施の形態では,停止図柄が確変図柄(後述する突然確変図柄を除く。)または非確変図柄になったことにもとづいて大当り遊技状態に移行されたときは,大当り遊技状態が15ラウンド継続される。」
(e)「【0077】
また,ゲートスイッチ32a,第1始動口スイッチ13a,第2始動口スイッチ14a,カウントスイッチ23,入賞口スイッチ29a,30a,33a,39aからの検出信号を遊技制御用マイクロコンピュータ560に与える入力ドライバ回路58も主基板31に搭載されている。また,可変入賞球装置15を開閉するソレノイド16,および大入賞口を形成する特別可変入賞球装置20を開閉するソレノイド21を遊技制御用マイクロコンピュータ560からの指令に従って駆動する出力回路59も主基板31に搭載されている。」
(f)「【0105】
初期化処理の実行(ステップS10?S15)が完了すると,CPU56は,メイン処理で,表示用乱数更新処理(ステップS17)および初期値用乱数更新処理(ステップS18)を繰り返し実行する。表示用乱数更新処理および初期値用乱数更新処理を実行するときには割込禁止状態に設定し(ステップS16),表示用乱数更新処理および初期値用乱数更新処理の実行が終了すると割込許可状態に設定する(ステップS19)。この実施の形態では,表示用乱数とは,特別図柄の停止図柄を決定するための乱数や変動パターンを決定するための乱数であり,表示用乱数更新処理とは,表示用乱数を発生するためのカウンタのカウント値を更新する処理である。また,初期値用乱数更新処理とは,初期値用乱数を発生するためのカウンタのカウント値を更新する処理である。この実施の形態では,初期値用乱数とは,普通図柄に関して当りとするか否か決定するための乱数を発生するためのカウンタ(普通図柄当り判定用乱数発生カウンタ)等の,カウント値の初期値を決定するための乱数である。後述する遊技の進行を制御する遊技制御処理(遊技制御用マイクロコンピュータ560が,遊技機に設けられている可変表示装置,可変入賞球装置,球払出装置等の遊技用の装置を,自身で制御する処理,または他のマイクロコンピュータに制御させるために指令信号を送信する処理,遊技装置制御処理ともいう)において,普通図柄当り判定用乱数のカウント値が1周(普通図柄当り判定用乱数の取りうる値の最小値から最大値までの間の数値の個数分歩進したこと)すると,そのカウンタに初期値が設定される。」
(g)「【0108】
また,CPU56は,正規の時期以外の時期において大入賞口に遊技球が入賞したことを検出した場合や,正規の時期以外の時期において第2始動入賞口に遊技球が入賞したことを検出した場合に,異常入賞の報知を行わせるための処理を行う(ステップS23:異常入賞報知処理)。」
(h)「【0137】
次に,遊技制御用マイクロコンピュータ560は,遊技盤6に設けられている第2始動入賞口14に遊技球が入賞したことを検出するための第2始動口スイッチ14aがオンしていたら,すなわち遊技球が第2始動入賞口14に入賞する始動入賞が発生していたら(ステップS315),保留記憶数(始動入賞記憶数)が上限値(保留記憶数=4)に達しているかどうかを確認する(ステップS316)。
【0138】
保留記憶数が上限値に達していないときは(ステップS316のN),遊技制御用マイクロコンピュータ560は,ソフトウェア乱数(大当り種別決定用乱数等を生成するためのカウンタの値等)およびランダムR(大当り判定用乱数)を抽出し,それらを,抽出した乱数値として保留記憶数カウンタの値に対応する保留記憶バッファにおける保存領域に格納する処理を実行する(ステップS317)。ステップS317においても,遊技制御用マイクロコンピュータ560は,ソフトウェア乱数としてランダム1?ランダム3を抽出するとともに,ハードウェア乱数として乱数回路503のカウント値を読み出すことによってランダムRを抽出する。」
(i)「【0184】
次いで,遊技制御用マイクロコンピュータ560は,乱数格納バッファから大当り判定用乱数を読み出し(ステップS57),大当り判定処理モジュールを実行する(ステップS58)。大当り判定モジュールは,あらかじめ決められている大当り判定値と大当り判定用乱数値とを比較し,それらが一致したら大当りとすることに決定する処理を実行するプログラムである。ここで,大当り判定では,遊技状態が確変状態(確変時短状態を含む)の場合は,遊技状態が非確変状態(通常遊技状態および時短状態)の場合よりも,大当りとなる確率が高くなるように構成されている。具体的には,あらかじめ大当り判定値の数が多く設定されている高確率大当り判定テーブルと,大当り判定値の数が高確率大当り判定テーブルよりも少なく設定されている低確率大当り判定テーブルとを設けておく。そして,遊技制御用マイクロコンピュータ560は,遊技状態が確変状態(および確変時短状態)であるか否かを確認し,遊技状態が確変状態であるときは,高確率大当り判定テーブルを使用して大当りの判定処理を行い,遊技状態が通常遊技状態および時短状態であるときは,低確率大当り判定テーブルを使用して大当りの判定処理を行う。このような構成により,確変状態(および確変時短状態)のときの方が通常遊技状態および時短状態のときよりも大当りとなる確率が高くなる。」
(j)「【0316】
普通図柄停止処理(ステップS102):遊技制御用マイクロコンピュータ560は,普通図柄プロセスタイマがタイムアウトしたか否かを確認し,タイムアウトしていたら,普通図柄の停止図柄が当り図柄であるかどうかを確認する。当り図柄でなければ(はずれ図柄であれば),普通図柄プロセスフラグの値を普通図柄通常処理(ステップS100)を示す値(具体的には「0」)に更新する。一方,普通図柄の停止図柄が当り図柄であれば,普通図柄プロセスタイマに普通電動役物作動時間をセットし,タイマをスタートさせる。また,現在の遊技状態が高ベース状態であるか否かを確認し,高ベース状態であれば,高ベース状態のときの普通電動役物(可変入賞球装置15)の開放パターンを選択し,低ベース状態であれば,低ベース状態のときの普通電動役物(可変入賞球装置15)の開放パターンを選択し,選択した開放パターンを設定する。そして,普通図柄プロセスフラグの値を普通電動役物作動処理(ステップS103)を示す値(具体的には「3」)に更新する。
【0317】
普通電動役物作動処理(ステップS103):遊技制御用マイクロコンピュータ560は,普通図柄プロセスタイマがタイムアウトしていないことを条件に,普通電動役物(可変入賞球装置15)への遊技球の入賞個数(第2始動入賞口14への入賞個数)をカウントする普通電動役物入賞カウント処理を実行し,また,設定された開放パターンで普通電動役物の開放を行う(可変入賞球装置15の開閉動作を実行する)普通電動役物開放パターン処理を実行する。そして,普通図柄プロセスタイマがタイムアウトすると,普通図柄プロセスフラグの値を普通図柄通常処理(ステップS100)を示す値(具体的には「0」)に更新する。」
(k)「【0370】
ステップS261では,遊技制御用マイクロコンピュータ560は,普通図柄プロセスフラグの値が3であるか否か確認する(ステップS261)。普通図柄プロセスフラグの値が3である状態は,普通電動役物(可変入賞球装置15)が開状態であると判断される状態(可変入賞球装置15が物理的に開いている状態のときと,可変入賞球装置15が物理的に閉鎖されてから所定のインターバル期間を経過するまでの状態のときとを含む)である。そのような状態であれば(ステップS261のY),第2始動入賞口14に遊技球が入賞する可能性があるので,第2始動入賞口14への異常入賞の確認処理を行わずに異常入賞報知処理を終了する。
【0371】
普通図柄プロセスフラグの値が3でない状態は(ステップS261のN),普通電動役物(可変入賞球装置15)が開状態以外のの状態と判断される状態である。このような状態のときに第2始動入賞口14に遊技球の入賞があれば,その入賞は異常入賞である可能性がある。従って,以下に示す第2始動入賞口14への異常入賞の確認処理を行う。
【0372】
すなわち,普通図柄プロセスフラグの値が3でなければ(ステップS261のN),遊技制御用マイクロコンピュータ560は,スイッチオンバッファの内容をレジスタにロードする(ステップS262)。そして,遊技制御用マイクロコンピュータ560は,ロードしたスイッチオンバッファの内容と第2始動口スイッチ入力ビット判定値(80(H),図48参照)との論理積をとる(ステップS263)。スイッチオンバッファの内容が80(H)であったとき,すなわち第2始動口スイッチ14aがオンしているときには,論理積の演算結果は80(H)になる。第2始動口スイッチ14aがオンしていないときには,論理積の演算結果は,0(00(H))になる。
【0373】
論理積の演算結果が0でない場合には(ステップS264のN),第2始動入賞口14が開状態以外の状態(所定のインターバル期間の状態を含む)であるにもかかわらず,第2始動入賞口14に遊技球が入賞した場合である。この場合,遊技制御用マイクロコンピュータ560は,入賞累積数カウンタの値を1加算するとともに(ステップS264A),加算後の入賞累積数カウンタの値が所定値(本例では5)以上であるか否かを確認する(ステップS264B)。所定値以上である場合には,遊技制御用マイクロコンピュータ560は,第2始動入賞口14への異常入賞が生じたと判定し,異常入賞報知フラグをセットするとともに(ステップS264C),演出制御基板80に,異常入賞報知1指定コマンドを送信する制御を行う(ステップS265,S266)。すなわち,遊技制御用マイクロコンピュータ560は,異常入賞報知1指定コマンド送信テーブルのアドレスをポインタにセットし(ステップS265),コマンドセット処理を実行する(ステップS266)。一方,論理積の演算結果が0である場合(ステップS264のY),または入賞累積数カウンタの値が所定値以上でない場合(ステップS264BのN)には,第2始動入賞口14への異常入賞が生じていないと判定し,異常入賞報知1指定コマンドを送信する制御を行わずに異常入賞報知処理を終了する。」
(l)「【0571】
実施の形態3.
上記の実施の形態1では,第2始動入賞口14への異常入賞が生じたことが検出されたときでも,特別図柄表示器8における特別図柄の変動や可変表示装置9における飾り図柄の変動は継続して実行されるように構成されていた。従って,不正に第2始動入賞口14に遊技球を入賞させた場合(例えば,普通図柄が当り図柄になっていないのに不正に可変入賞球装置15を開放させ,第2始動入賞口14に遊技球を入賞させたような場合)であっても,その始動入賞により大当りが発生してしまい,不正に出球が獲得させてしまうことが生じ得る。そこで,この実施の形態3では,第2始動入賞口14への異常入賞が生じたことが検出されたときに,所定のタイミングで特別図柄の変動および飾り図柄の変動を停止するように構成している。
【0572】
図90は,実施の形態3における特別図柄プロセス処理を示すフローチャートである。特別図柄プロセス処理において,遊技制御用マイクロコンピュータ560は,まず,第2始動入賞口14または大入賞口への異常入賞が発生したと判定したことにもとづいて,異常入賞報知を実行することを決定したことを示す異常入賞報知フラグがセットされたかどうか確認する(ステップS319A)。ここで,異常入賞報知フラグは,大入賞口への異常入賞が検出されたとき(図51のステップS258A),または第2始動入賞口14への異常入賞が検出されたとき(図51のステップS264C)にセットされる。
【0573】
異常入賞報知フラグがセットされているときは(ステップS319AのY),遊技制御用マイクロコンピュータ560は,特別図柄表示器8において特別図柄の変動が行われているかどうか,具体的には特別図柄プロセスフラグの値が特別図柄変動中処理(ステップS302)を示す値(「2」)であるかどうかを判定する(ステップS319B)。特別図柄プロセスフラグの値が特別図柄変動中処理を示す値(「2」)であるときは(ステップS319BのY),ステップS311以降の処理を実行する。すなわち,特別図柄表示器8において特別図柄の変動を継続して実行させる。一方,特別図柄プロセスフラグの値が特別図柄変動中処理を示す値(「2」)でないときは(ステップS319BのN),特別図柄プロセス処理を終了させる。すなわち,特別図柄表示器8において特別図柄の変動制御を停止させる。このような構成により,大入賞口または第2始動入賞口14への異常入賞が検出された時点で,特別図柄の変動中でないときは,直ちに特別図柄の変動が禁止され,特別図柄の変動中であったときは,特別図柄の変動を継続させ,次の特別図柄の変動が禁止されることになる。
【0574】
図91は,実施の形態3における演出制御プロセス処理を示すフローチャートである。演出制御プロセス処理において,演出制御用マイクロコンピュータ100は,まず,異常報知中フラグがセットされたかどうか確認する(ステップS809A)。異常報知中フラグがセットされているときは(ステップS809AのY),演出制御用マイクロコンピュータ100は,可変表示装置9において飾り図柄の変動が行われているかどうか,具体的には演出制御プロセスフラグの値が飾り図柄変動中処理(ステップS802)を示す値(「2」)であるかどうかを判定する(ステップS809B)。演出制御プロセスフラグの値が飾り図柄変動中処理を示す値(「2」)であるときは(ステップS809BのY),飾り図柄変動中処理(ステップS802)を実行する。すなわち,可変表示装置9において飾り図柄の変動を継続して実行させる。一方,演出制御プロセスフラグの値が飾り図柄変動中処理を示す値(「2」)でないときは(ステップS809BのN),演出制御プロセス処理を終了させる。すなわち,可変表示装置9において飾り図柄の変動制御を停止させる。このような構成により,異常入賞報知1指定コマンドまたは異常入賞報知2指定コマンドを受信した時点で,飾り図柄の変動中でないときは,直ちに飾り図柄の変動が禁止され,飾り図柄の変動中であったときは,飾り図柄の変動を継続させ,次の飾り図柄の変動が禁止されることになる。
【0575】
以上のように,この実施の形態3によれば,大入賞口または第2始動入賞口14への異常入賞の検出にもとづいて特別図柄表示器8における特別図柄の変動および可変表示装置9における飾り図柄の変動を禁止する制御を実行するので,不正行為によって大入賞口または第2始動入賞口14への入賞を発生させたような場合(例えば,普通図柄が当り図柄になっていないのに可変入賞球装置15を開放させて遊技球を第2始動入賞口14に入賞させるような場合)であっても,その入賞にもとづいて大当りが発生するのを確実に防止することができる。」
(n) 上記(c)の記載を参酌すると,図1には,遊技盤6に配置されたゲート32が図示されている。

上記の事項を総合すると,先願には,次の発明が記載されていると認められる(以下「先願発明」という。)。
「遊技盤6に設けられている第2始動入賞口14に遊技球が入賞したことを検出する第2始動口スイッチ14aと,
第2始動口スイッチ14aがオンしたら,大当り判定用乱数を抽出し,あらかじめ決められている大当り判定値と大当り判定用乱数値とを比較し,それらが一致したら大当りとすることに決定する処理を実行する遊技制御用マイクロコンピュータ560と,
遊技球が第2始動入賞口14に入り第2始動口スイッチ14aで検出されると,特別図柄の可変表示(変動)が開始され,所定時間が経過したときに停止する特別図柄表示器8と,遊技球が第2始動入賞口14に入り第2始動口スイッチ14aで検出されると,飾り図柄の可変表示が開始され,所定時間が経過したときに停止する可変表示装置9と,
遊技盤6に設けられる遊技領域7に発射された遊技球を,開いた状態になることによって,第2始動入賞口14に入賞し易くなるように開閉される可変入賞球装置15と,
可変入賞球装置15を開閉するソレノイド16を駆動する指令を出力する遊技制御用マイクロコンピュータ560と,
遊技盤6に配置され,遊技球が通過するゲート32と,
ゲート32に遊技球が通過しゲートスイッチ32aで検出されると,普通図柄表示器10の表示の可変表示が開始され,可変表示の終了時に左側のランプが点灯すれば当りとなる手段と,
普通図柄が当り図柄になっていないのに不正に可変入賞球装置15を開放させ,第2始動入賞口14に遊技球を入賞させた場合のように,第2始動入賞口14が開状態以外の状態であるにもかかわらず,第2始動入賞口14に遊技球が入賞して第2始動口スイッチ14aがオンした場合,第2始動入賞口14への異常入賞が生じたと判定し,演出制御基板80に異常入賞報知1指定コマンドを送信する遊技制御用マイクロコンピュータ560と,を有し,
遊技制御用マイクロコンピュータ560は,普通図柄の停止図柄が当り図柄であれば,可変入賞球装置15の開閉動作を実行し,可変入賞球装置15が物理的に閉じている状態のときは第2始動入賞口14に遊技球が入賞しないパチンコ遊技機1であって,
可変入賞球装置15は,遊技盤6に設けられる遊技領域7に発射された遊技球を,可変入賞球装置15が開いた状態になることによって,第2始動入賞口14に入賞し易くなるように開閉されると共に,可変入賞球装置15が物理的に閉じている状態のときは第2始動入賞口14に遊技球が入賞しない可変入賞球装置15であり,
遊技制御用マイクロコンピュータ560は,第2始動入賞口14への異常入賞が発生したと判定したことにもとづいて,第2始動入賞口14への異常入賞が検出された時点で,特別図柄表示器8において特別図柄の変動中でないときは,直ちに特別図柄の変動が禁止され,特別図柄表示器8において特別図柄の変動中であったときは,特別図柄の変動を継続させ,次の特別図柄の変動が禁止されるように制御し,演出制御用マイクロコンピュータ100は,異常入賞報知1指定コマンドを受信した時点で,可変表示装置9において飾り図柄の変動中でないときは,直ちに飾り図柄の変動が禁止され,可変表示装置9において飾り図柄の変動中であったときは,飾り図柄の変動を継続させ,次の飾り図柄の変動が禁止されるように制御するパチンコ機1。」

3 対比
本願発明と先願発明とを対比する。

(1)先願発明の「遊技盤6」,「第2始動入賞口14」及び「第2始動口スイッチ14a」は,それぞれ,本願発明の「遊技盤」,「始動入賞口」及び「検出手段」に相当する。
また,本願明細書の段落【0043】に「普通電動役物104が開放すると,遊技球が第2の始動入賞口112bを通過(入賞)することが可能になる。」と記載されているとおり,始動入賞口に「入賞すること」と「通過すること」は同義であるから,先願発明の「第2始動入賞口14に遊技球が入賞したこと」が本願発明の「始動入賞口を遊技球が通過したこと」に相当する。
したがって,先願発明の「遊技盤6に設けられている第2始動入賞口14に遊技球が入賞したことを検出する第2始動口スイッチ14a」は,本願発明の「遊技盤に形成された始動入賞口を遊技球が通過したことを検出する検出手段」に相当する。

(2)先願発明の「遊技制御用マイクロコンピュータ560」は,本願発明の「抽選手段」に相当する。
また,先願発明の「遊技制御用マイクロコンピュータ560」は,「大当り判定用乱数を抽出し,あらかじめ決められている大当り判定値と大当り判定用乱数値とを比較し,それらが一致したら大当りとすることに決定する」から,本願発明の「抽選を行う」に相当する構成を有している。
したがって,先願発明の「第2始動口スイッチ14aがオンしたら,大当り判定用乱数を抽出し,あらかじめ決められている大当り判定値と大当り判定用乱数値とを比較し,それらが一致したら大当りとすることに決定する処理を実行する遊技制御用マイクロコンピュータ560」は,本願発明の「前記検出手段により前記遊技球を検出したことを契機として抽選を行う抽選手段」に相当する。

(3)先願発明の「特別図柄」及び「飾り図柄」は,本願発明の「図柄」に,先願発明の「特別図柄表示器8」及び「可変表示装置9」は,本願発明の「図柄表示手段」に相当する。
したがって,先願発明の「遊技球が第2始動入賞口14に入り第2始動口スイッチ14aで検出されると,特別図柄の可変表示(変動)が開始され,所定時間が経過したときに停止する特別図柄表示器8」及び「遊技球が第2始動入賞口14に入り第2始動口スイッチ14aで検出されると,飾り図柄の可変表示が開始され,所定時間が経過したときに停止する可変表示装置9」は,本願発明の「前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出された場合に,図柄の変動表示を開始し,その後,前記変動表示を開始した図柄を停止表示させる図柄表示手段」に相当する。

(4)先願発明の「可変入賞球装置15」は,本願発明の「可動役物」に相当する。
また,先願発明の「遊技盤6に設けられる遊技領域7に発射された遊技球を,開いた状態になることによって,第2始動入賞口14に入賞し易くなるように開閉される可変入賞球装置15」において,図1を参酌すると開いた状態になっているとき遊技球を第2始動入賞口14に案内することは明らかであるから,先願発明の当該構成は本願発明の「前記遊技盤に発射された遊技球を,前記遊技盤に形成された前記始動入賞口へ案内するために開閉動作する可動役物」に相当する。

(5)先願発明の「遊技制御用マイクロコンピュータ560」は,本願発明の「可動役物制御手段」に相当する。
また,先願発明の「遊技制御用マイクロコンピュータ560」は,「可変入賞球装置15を開閉するソレノイド16を駆動する指令を出力する」から,本願発明の「前記可動役物の開閉動作を制御する」に相当する構成を有している。
したがって,先願発明の「可変入賞球装置15を開閉するソレノイド16を駆動する指令を出力する遊技制御用マイクロコンピュータ560」は,本願発明の「前記可動役物の開閉動作を制御する可動役物制御手段」に相当する。

(6)先願発明の「ゲート32」は,本願発明の「普通図柄作動ゲート」に相当する。
したがって,先願発明の「遊技盤6に配置され,遊技球が通過するゲート32」は,本願発明の「前記遊技盤に配置され,遊技球が通過可能な普通図柄作動ゲート」に相当する。

(7)先願発明の「ゲート32に遊技球が通過しゲートスイッチ32aで検出されると,普通図柄表示器10の表示の可変表示が開始され,可変表示の終了時に左側のランプが点灯すれば当りとなる手段」において,可変表示の終了時に右側のランプが点灯すれば当りとならないことは明らかであり,左右のランプのうちどちらのランプが点灯するかにより当りになるか否かを決めているから,先願発明の当該構成は,本願発明の「前記普通図柄作動ゲートを遊技球が通過したことを契機として抽選を行う普通図柄抽選部」に相当する。

(8)先願発明の「異常入賞報知1指定コマンド」及び「遊技制御用マイクロコンピュータ560」は,それぞれ,本願発明の「遊技球通過情報」及び「遊技球通過情報出力手段」に相当する。
また,先願発明の「遊技制御用マイクロコンピュータ560」は,「普通図柄が当り図柄になっていないのに不正に可変入賞球装置15を開放させ,第2始動入賞口14に遊技球を入賞させた場合のように,第2始動入賞口14が開状態以外の状態であるにもかかわらず,第2始動入賞口14に遊技球が入賞して第2始動口スイッチ14aがオンした場合,第2始動入賞口14への異常入賞が生じたと判定し,演出制御基板80に異常入賞報知1指定コマンドを送信する」から,本願発明の「前記可動役物制御手段による制御によらずに前記可動役物が開動作したときに,前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出されると,前記始動入賞口を遊技球が通過したことを示す遊技球通過情報を出力する」に相当する構成を有している。
したがって,先願発明の「普通図柄が当り図柄になっていないのに不正に可変入賞球装置15を開放させ,第2始動入賞口14に遊技球を入賞させた場合のように,第2始動入賞口14が開状態以外の状態であるにもかかわらず,第2始動入賞口14に遊技球が入賞して第2始動口スイッチ14aがオンした場合,第2始動入賞口14への異常入賞が生じたと判定し,演出制御基板80に異常入賞報知1指定コマンドを送信する遊技制御用マイクロコンピュータ560」は,本願発明の「前記可動役物制御手段による制御によらずに前記可動役物が開動作したときに,前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出されると,前記始動入賞口を遊技球が通過したことを示す遊技球通過情報を出力する遊技球通過情報出力手段」に相当する。

(9)先願発明の「パチンコ遊技機1」は,本願発明の「遊技機」に相当する。
したがって,先願発明の「遊技制御用マイクロコンピュータ560は,普通図柄の停止図柄が当り図柄であれば,可変入賞球装置15の開閉動作を実行し,可変入賞球装置15が物理的に閉じている状態のときは第2始動入賞口14に遊技球が入賞しないパチンコ遊技機1」は,本願発明の「前記可動役物制御手段が前記普通図柄抽選部による抽選結果が当たりの場合に前記可動役物を開放させると共に,前記可動役物が開動作しないと,前記遊技盤に発射された遊技球が,その可動役物によって案内される前記始動入賞口を通過しないようにされた遊技機」に相当する。

(10)先願発明の「可変入賞球装置15」は,本願発明の「始動入賞口可動役物」に相当する。
したがって,先願発明の「可変入賞球装置15は,遊技盤6に設けられる遊技領域7に発射された遊技球を,可変入賞球装置15が開いた状態になることによって,第2始動入賞口14に入賞し易くなるように開閉されると共に,可変入賞球装置15が物理的に閉じている状態のときは第2始動入賞口14に遊技球が入賞しない可変入賞球装置15であり」は,本願発明の「前記可動役物は,前記遊技盤に発射された遊技球を,前記始動入賞口へ案内するために開閉動作すると共に,その閉鎖状態において前記始動入賞口への遊技球の入賞を不可能とする始動入賞口可動役物を含み」に相当する。

(11)先願発明の「遊技制御用マイクロコンピュータ560は,第2始動入賞口14への異常入賞が発生したと判定したことにもとづいて,第2始動入賞口14への異常入賞が検出された時点で,特別図柄表示器8において特別図柄の変動中でないときは,直ちに特別図柄の変動が禁止され,特別図柄表示器8において特別図柄の変動中であったときは,特別図柄の変動を継続させ,次の特別図柄の変動が禁止されるように制御し」及び「演出制御用マイクロコンピュータ100は,異常入賞報知1指定コマンドを受信した時点で,可変表示装置9において飾り図柄の変動中でないときは,直ちに飾り図柄の変動が禁止され,可変表示装置9において飾り図柄の変動中であったときは,飾り図柄の変動を継続させ,次の飾り図柄の変動が禁止されるように制御する」は,本願発明の「前記図柄表示手段は,前記可動役物制御手段による制御によらずに前記始動入賞口可動役物が開動作したときに,前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出された場合には,その遊技球の通過による前記図柄の変動表示を行わないよう制御する」に相当する。

(12)上記(1)?(11)から,本願発明と刊行物1発明とは,
「遊技盤に形成された始動入賞口を遊技球が通過したことを検出する検出手段と,
前記検出手段により前記遊技球を検出したことを契機として抽選を行う抽選手段と,
前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出された場合に,図柄の変動表示を開始し,その後,前記変動表示を開始した図柄を停止表示させる図柄表示手段と,
前記遊技盤に発射された遊技球を,前記遊技盤に形成された前記始動入賞口へ案内するために開閉動作する可動役物と,
前記可動役物の開閉動作を制御する可動役物制御手段と,
前記遊技盤に配置され,遊技球が通過可能な普通図柄作動ゲートと,
前記普通図柄作動ゲートを遊技球が通過したことを契機として抽選を行う普通図柄抽選部と,
前記可動役物制御手段による制御によらずに前記可動役物が開動作したときに,前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出されると,前記始動入賞口を遊技球が通過したことを示す遊技球通過情報を出力する遊技球通過情報出力手段と,を有し,
前記可動役物制御手段が前記普通図柄抽選部による抽選結果が当たりの場合に前記可動役物を開放させると共に,前記可動役物が開動作しないと,前記遊技盤に発射された遊技球が,その可動役物によって案内される前記始動入賞口を通過しないようにされた遊技機であって,
前記可動役物は,前記遊技盤に発射された遊技球を,前記始動入賞口へ案内するために開閉動作すると共に,その閉鎖状態において前記始動入賞口への遊技球の入賞を不可能とする始動入賞口可動役物を含み,
前記図柄表示手段は,前記可動役物制御手段による制御によらずに前記始動入賞口可動役物が開動作したときに,前記始動入賞口を遊技球が通過したことが前記検出手段によって検出された場合には,その遊技球の通過による前記図柄の変動表示を行わないよう制御することを特徴とする遊技機。」
である点で一致し,相違点はない。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,先願発明と同一であり,しかも,本願発明の発明者が先願発明の発明者と同一であるとも,また,本願の出願時に,その出願人が先願発明の出願人と同一であるとも認められないので,特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-04 
結審通知日 2015-02-10 
審決日 2015-02-23 
出願番号 特願2006-323268(P2006-323268)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (A63F)
P 1 8・ 572- Z (A63F)
P 1 8・ 561- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大浜 康夫  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 瀬津 太朗
赤木 啓二
発明の名称 遊技機  
代理人 梶 俊和  

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